IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 共同印刷株式会社の特許一覧

特開2024-17753カード、カードセット、及びカード発行機
<>
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図1
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図2
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図3
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図4
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図5
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図6
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図7
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図8
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図9
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図10
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図11
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図12
  • 特開-カード、カードセット、及びカード発行機 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017753
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】カード、カードセット、及びカード発行機
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/382 20140101AFI20240201BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240201BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20240201BHJP
   B42D 25/387 20140101ALI20240201BHJP
【FI】
B42D25/382
C09D11/30
C09D11/322
B42D25/387
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120605
(22)【出願日】2022-07-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】小林 文人
(72)【発明者】
【氏名】狩野 真啓
(72)【発明者】
【氏名】寺田 暁
(72)【発明者】
【氏名】中坪 邦夫
【テーマコード(参考)】
2C005
4J039
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA19
2C005HB06
2C005HB09
2C005JB12
2C005JB13
2C005JB22
4J039AD09
4J039AE04
4J039BA13
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE27
4J039EA14
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】偽造の恐れを減少させつつ、コストが比較的安く、かつ固有の識別情報を有するという利点を有するカードを提供する。
【解決手段】本開示のカード510a、510b、510cは、カード基材、及びカード基材に印刷されている非可視光読み取り用印刷部を有しており、かつ非可視光読み取り用印刷部が、カードに固有の識別コード501a、501b、501cを形成している、カードである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードであって、
カード基材、及び前記カード基材に印刷されている非可視光読み取り用印刷部を有しており、かつ
前記非可視光読み取り用印刷部が、前記カードに固有の識別コードを形成している、
カード。
【請求項2】
遊戯用である、請求項1に記載のカード。
【請求項3】
前記カード基材が紙基材又はプラスチックである、請求項1に記載のカード。
【請求項4】
前記非可視光読み取り用印刷部がインクジェット印刷されている、請求項1に記載のカード。
【請求項5】
前記カード基材が、可視光読み取り用印刷領域を有し、かつ
前記可視光読み取り用印刷領域が、可視光読み取り用印刷部を受容することを予定されている、
請求項1に記載のカード。
【請求項6】
前記可視光読み取り用印刷領域以外の領域の少なくとも一部に、可視光読み取り用印刷部を有する、請求項5に記載のカード。
【請求項7】
前記カード基材が、可視光読み取り用印刷領域を有し、かつ
前記可視光読み取り用印刷領域が、可視光読み取り用印刷部を有する、
請求項1に記載のカード。
【請求項8】
前記識別コードが、前記可視光読み取り用印刷部に関係がある情報、及び前記可視光読み取り用印刷部に関係がない前記カードに固有の情報の両方を含む、請求項7に記載のカード。
【請求項9】
前記識別コードが、前記可視光読み取り用印刷部に関係がない前記カードに固有の情報のみを含む、請求項7に記載のカード。
【請求項10】
前記非可視光読み取り用印刷部が、赤外線吸収性インクによる印刷部であり、かつ
前記可視光読み取り用印刷部が、非赤外線吸収性インクによる印刷部である、
請求項5に記載のカード。
【請求項11】
前記非可視光読み取り用印刷部が、前記可視光読み取り用印刷領域と少なくとも部分的に重複している、請求項10に記載のカード。
【請求項12】
前記非可視光読み取り用印刷部が、
タングステン系赤外線吸収性顔料、
紫外線吸収性蛍光顔料、
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及び
ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂、
を含む非可視光読み取り用インクで印刷されている、
請求項1に記載のカード。
【請求項13】
前記紫外線硬化型アクリル樹脂100質量部に対して、前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を、1~150質量部含む、請求項12に記載のカード。
【請求項14】
前記非可視光読み取り用インクにおける全固形分100質量部に対して、前記タングステン系赤外線吸収性顔料を、20質量部以下含む、請求項12に記載のカード。
【請求項15】
前記非可視光読み取り用インクにおける全固形分100質量部に対して、前記紫外線吸収性蛍光顔料を、20質量部以下含む、請求項12に記載のカード。
【請求項16】
前記非可視光読み取り用インクにおける全固形分100質量部に対して、前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を、1~50質量部含む、請求項12に記載のカード。
【請求項17】
前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、アクリロイル基を複数含む、請求項12に記載のカード。
【請求項18】
前記タングステン系赤外線吸収性顔料は、
一般式(1):M
{式中、Mは、H、He、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、及びIからなる群から選ばれる1種類以上の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、x、y及びzは、それぞれ正数であり、0<x/y≦1であり、かつ2.2≦z/y≦3.0である}
で表される複合タングステン酸化物、又は、
一般式(2):W
{式中、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、y及びzは、それぞれ正数であり、かつ2.45≦z/y≦2.999である}
で表されるマグネリ相を有するタングステン酸化物、
から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項12に記載のカード。
【請求項19】
2又はそれよりも多くの請求項1~9のいずれか一項に記載の前記カードを含むカードセットであって、2又はそれよりも多くの前記カードの前記識別コードが互いに異なっている、カードセット。
【請求項20】
カード発行機であって、
前記カード発行機が、2又はそれよりも多くの請求項5又は6に記載のカードを含むカードセットを保持しており、
2又はそれよりも多くの前記カードの前記識別コードが、互いに異なっており、
前記カード発行機が、前記可視光読み取り印刷用領域に、可視光読み取り用印刷インクによって前記可視光読み取り用印刷部を印刷する、
カード発行機。
【請求項21】
カード発行機であって、
前記カード発行機が、2又はそれよりも多くのカード基材を含むカード基材セットを保持しており、
前記カード発行機が、2又はそれよりも多くの前記カード基材に、非可視光読み取り用インクによって、前記非可視光読み取り用印刷部を提供し、ここで、前記非可視光読み取り用印刷部が、固有の識別コードを形成しており
前記カード発行機が、2又はそれよりも多くの前記カード基材の前記可視光読み取り印刷用領域に、可視光読み取り用インクによって前記可視光読み取り用印刷部を提供して、2又はそれよりも多くの請求項7~9のいずれか一項に記載のカードを得、かつ
2又はそれよりも多くの前記カードの前記識別コードが、互いに異なっている、
カード発行機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カード、カードセット、及びカード発行機、特に遊戯用カード、遊戯用カードセット、及び遊戯用カード発行機に関する。
【背景技術】
【0002】
固有の識別情報を有しているカードは、様々な分野で用いられており、このようなカードとしては、クレジットカード、銀行カード、会員カード等がある。また、このようなカドでは、識別情報は一般に、2次元コードのような可視の識別コード、磁気テープ、ICチップ等に保持されており、特に偽造の恐れがある分野においては、識別情報は一般に、2次元コードのような可視の識別コードではなく、磁気テープ、ICチップ等に保持されている。
【0003】
また、固有の識別情報を有しているカードは、ネットワークを介してゲームサーバと接続してプレイするアーケードゲーム機を有するシステム等においても用いられている。
【0004】
これに関して特許文献1は、カード識別子を記憶したゲームカードと、ゲームが動作するゲーム装置と、ゲームのプレイデータをユーザごとに管理しているユーザ管理装置とから少なくとも構成される通信ゲームシステムについて開示している。
【0005】
ここでは、ゲームカードは、ゲームカードごとに異なるカード識別子を記憶する。また、ゲーム装置は、ゲームを開始する際、ゲームカードからカード識別子を読み取り、ゲームカードのカード識別子およびゲーム装置のタイプ識別子を含むプレイデータ送信要求をユーザ管理装置へ送信し、ユーザ管理装置から受信したプレイデータを用いてゲームのゲーム環境を設定する処理を実行し、ゲームを終了する際、ゲームカードのカード識別子、ゲーム装置のタイプ識別子、ゲームを終了するときのプレイデータを含むプレイデータ更新要求をユーザ管理装置へ送信する処理を実行するゲーム制御部を備える。また、ユーザ管理装置は、カード識別子に関連付けて、ゲームカードからカード識別子を読み取ったゲーム装置のタイプ識別子と、このゲーム装置で動作したゲームのプレイデータを記憶したデータベースと、ゲーム装置からプレイデータ送信要求を受信すると、プレイデータ送信要求に含まれるタイプ識別子と共に、プレイデータ送信要求に含まれるカード識別子に関連付けられているプレイデータをデータベースから検索し、データベースから検索したプレイデータをゲーム装置へ送信する処理を実行し、ゲーム装置からプレイデータ更新要求を受信すると、プレイデータ更新要求に含まれるタイプ識別子と共に、プレイデータ更新要求に含まれるカード識別子に関連付けられているプレイデータを、プレイデータ更新要求に含まれるプレイデータに更新する処理を実行するユーザ管理部を備える。
【0006】
ここで、この特許文献1では、ゲームカードを無線タグにできるとしている。
【0007】
なお、偽装防止及び/又は真贋判定用の印刷物としては様々なものが知られている。
【0008】
例えば特許文献2では、照射光に対する分光反射特性がそれぞれ異なる複数種類のインクを用いて構成される識別コードを有する偽造防止用印刷物であって、識別コードを印刷するインクと、識別コード内に混在させた真偽判定コードを印刷するインクの種類が異なることを特徴とする偽造防止用印刷物が開示されている。また、ここでは、照射光に対する分光反射特性がそれぞれ異なる複数種類のインクは、可視域波長光の照射により視覚可能なインクと可視域外波長光の照射により視覚可能なインクであってよいとしている。
【0009】
この文献によれば、このような偽造防止用印刷物によって以下のような効果が得られるとしている:
(1)真偽判定コードが識別コード内に隠蔽されており、双方のコードを別々に形成する設置スペースを要さないため、本願発明の構成を認識していない者にとっては、真偽判定コードの存在を類推することが困難である。
(2)真偽判定コードの存在を推測して、識別コード全体のコピー(複写)を行なっても、複写光源に反応するタイプのインクでないと、真偽判定コードの情報を入手することが出来ない。また、複写光源に反応するタイプのインクである場合、複写物(=非正規品)であるメッセージ表示がされることにより、偽造行為が明らかになる。
(3)製品全体を局所領域に分割して、製造工程(あるいは、印刷工程)で意図せず生成されたランダムパターンを「特徴点」として抽出した上で、僅かな個体差を基準データとの照合により判別するのではなく、意図的に潜在させておき、予め形成箇所が把握される(肉眼では不可視な)真偽判定コードを照合するため、検証プロセスは簡便である。
(4)識別コードと真偽判定コードを形成するインクの特性が異なるため、認証あるいは検証プロセスではそれぞれの情報読み取りの際、他方にノイズとして影響することがなく、検証精度は向上する。
【0010】
ところで、偽造防止の用途で用いられる機能性インクとしては、赤外線吸収性インクが知られており、例えば、有価証券の一部に不可視の印刷を施して、偽造防止の用に供されている。
【0011】
赤外線吸収性インクに配合される赤外線吸収機能を発現する顔料としては、セシウム酸化タングステン(CWO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化インジウム錫(ITO)、カーボンブラック等が存在する。中でも、赤外線吸収機能が高く、透明性が高い点から、セシウム酸化タングステン(CWO)を利用した赤外線吸収性インクの需要が高まっている。
【0012】
例えば、特許文献3には、セシウム酸化タングステン(CWO)等の複合タングステン酸化物及びマグネリ相を有するタングステン酸化物から選択される赤外線吸収性材料微粒子と、ビヒクルとを含むインクが記載されている。
【0013】
また、特許文献4には、XRDピークトップ強度の比が特定の範囲にある複合タングステン酸化物(CWO等)の超微粒子を用いた、偽造防止インク用組成物が提案されており、この組成物に蛍光材料を添加してもよいことが記載されている。
【0014】
しかしながら、特許文献3及び4に記載された赤外吸収性インクに用いられるタングステン系赤外線吸収性顔料は、洗剤等の塩基性物質の影響によって失活してしまい、赤外線吸収機能を維持できない場合があった。
【0015】
これに対して、特許文献5には、タングステン系赤外線吸収性顔料と、一定量の溶媒と、溶媒に可溶なアクリル系樹脂と、紫外線硬化型樹脂とを混合してインクを作製することで、タングステン系赤外線吸収性顔料に、洗剤等の塩基性物質に対する耐性(洗濯耐性)を付与することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2017-192639号公報
【特許文献2】特開2019-188756号公報
【特許文献3】国際公開第2016/121801号
【特許文献4】国際公開第2017/104855号
【特許文献5】特開2020-050690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記のように、固有の識別情報を有しているカードは、様々な分野で用いられており、特に偽造の恐れがある分野においては、識別情報は一般に、2次元コードのような可視の識別コードではなく、磁気テープ、ICチップ等に保持されている。
【0018】
しかしながら、磁気テープ、及びICチップ、特にICチップは、比較的コストが高いので、使用用途が限定されるという問題があった。
【0019】
したがって、例えば、カードを用いてプレイするアーケードゲーム機では、ユーザを識別するために用いられるカードとしてICチップ付きのプラスチック製カードを使用し、キャラクター等の絵柄が印刷されたカードとしては、ICチップを有さない紙又はプラスチック製のカードを使用することが一般的である。
【0020】
しかしながら、この場合、ICチップを有さない紙又はプラスチック製のカードは、固有の識別情報を有していないので、同一の絵柄が印刷されたカード同士は同一の役割を有することになり、コレクション性やプレイ性が不十分なことがあった。他方で、同一の絵柄が印刷された複数のカードに互いに異なる可視の識別コードを印刷してそれぞれに固有の識別情報を持たせる場合、カードの偽造の恐れがあった。
【0021】
本開示は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、本開示者らは、コストが比較的安く、かつ固有の識別情報を有しているカードを提供することを第1の課題とする。
【0022】
また、偽造防止の分野においては、セシウム酸化タングステン(CWO)をはじめとする赤外線吸収性材料を用いて印刷された印刷物を用いることが知られている。
【0023】
このような赤外線吸収性材料を用いて印刷された印刷物は、真贋判定に際して、赤外線カメラ等の専用の機器が必要となる。このため、機密性が高い一方で、機器導入コストが膨大となり、複数箇所において真贋判定を実施しようとすると、費用が大きくなる状況となっていた。
【0024】
そこで、本開示者らは、真贋判定において、赤外線吸収性の評価を実施する前に、一般的に安価な機器である紫外線(UV)照射装置を用いて、偽造防止の一次評価を実施することを想起した。
【0025】
具体的には、インク用組成物を、赤外線吸収機能を発現する顔料に加えて、紫外線(UV)を吸収して発光する蛍光顔料を含むものとする。そして、この組成物を用いて印刷された印刷物を作製して、これを真正の印刷物とする。
【0026】
真贋判定対象の印刷物に対しては、一次評価として、紫外線(UV)照射装置を用いた評価を実施し、偽造品のおそれがあると評価されたものに対してのみ、二次評価として、赤外線カメラ等の専用の機器による赤外線吸収性の評価を実施する。
【0027】
また、上記のような二段階による評価は、よりセキュリティ性の高い判定が必要となる印刷物に対しても、適用することができる。
【0028】
しかしながら、このようなインク組成物、すなわち、タングステン系赤外線吸収性顔料に加えて、紫外線(UV)吸収能を有する蛍光顔料を含有するインク組成物は、これら顔料の相互作用により、蛍光顔料の洗濯耐性が大きく低下する傾向にあった。
【0029】
本開示は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、赤外線吸収性及び紫外線吸収性の両者を有することによって優れた偽造防止性及び/又は真贋判定性を示すとともに、耐塩基性、特に洗濯耐性に優れた印刷物を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本開示者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。
【0031】
そして、非可視光読み取り用印刷部が固有の識別コードを形成しているカードによって、上記の第1の課題を解決できることを見いだし、本開示を完成させるに至った。
【0032】
また、特定の可視光読み取り用印刷部及び非可視光読み取り用印刷部を用いると共に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を、タングステン系赤外線吸収性顔料及び紫外線吸収性蛍光顔料とともに用いたインク組成物を用いると、上記の第2の課題を解決できることを見出し、本開示を完成させるに至った。
【0033】
すなわち、本開示は、以下のとおりである。
【0034】
〈態様1〉
カードであって、
カード基材、及び前記カード基材に印刷されている非可視光読み取り用印刷部を有しており、かつ
前記非可視光読み取り用印刷部が、前記カードに固有の識別コードを形成している、
カード。
〈態様2〉
遊戯用である、態様1に記載のカード。
〈態様3〉
前記カード基材が紙基材又はプラスチックである、態様1又は2に記載のカード。
〈態様4〉
前記非可視光読み取り用印刷部がインクジェット印刷されている、態様1~3のいずれか一項に記載のカード。
〈態様5〉
前記カード基材が、可視光読み取り用印刷領域を有し、かつ
前記可視光読み取り用印刷領域が、可視光読み取り用印刷部を受容することを予定されている、
態様1~4のいずれか一項に記載のカード。
〈態様6〉
前記可視光読み取り用印刷領域以外の領域の少なくとも一部に、可視光読み取り用印刷部を有する、態様5に記載のカード。
〈態様7〉
前記カード基材が、可視光読み取り用印刷領域を有し、かつ
前記可視光読み取り用印刷領域が、可視光読み取り用印刷部を有する、
態様1~4のいずれか一項に記載のカード。
〈態様8〉
前記識別コードが、前記可視光読み取り用印刷部に関係がある情報、及び前記可視光読み取り用印刷部に関係がない前記カードに固有の情報の両方を含む、態様7に記載のカード。
〈態様9〉
前記識別コードが、前記可視光読み取り用印刷部に関係がない前記カードに固有の情報のみを含む、態様7に記載のカード。
〈態様10〉
前記非可視光読み取り用印刷部が、赤外線吸収性インクによる印刷部であり、かつ
前記可視光読み取り用印刷部が、非赤外線吸収性インクによる印刷部である、
態様5~9のいずれか一項に記載のカード。
〈態様11〉
前記非可視光読み取り用印刷部が、前記可視光読み取り用印刷領域と少なくとも部分的に重複している、態様5~10のいずれか一項に記載のカード。
〈態様12〉
前記非可視光読み取り用印刷部が、
タングステン系赤外線吸収性顔料、
紫外線吸収性蛍光顔料、
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及び
ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂、
を含む非可視光読み取り用インクで印刷されている、
態様1~11のいずれか一項に記載のカード。
〈態様13〉
前記紫外線硬化型アクリル樹脂100質量部に対して、前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を、1~150質量部含む、態様12に記載のカード。
〈態様14〉
前記非可視光読み取り用インクにおける全固形分100質量部に対して、前記タングステン系赤外線吸収性顔料を、20質量部以下含む、態様12又は13に記載のカード。
〈態様15〉
前記非可視光読み取り用インクにおける全固形分100質量部に対して、前記紫外線吸収性蛍光顔料を、20質量部以下含む、態様12~14のいずれか一項に記載のカード。
〈態様16〉
前記非可視光読み取り用インクにおける全固形分100質量部に対して、前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を、1~50質量部含む、態様12~15のいずれか一項に記載のカード。
〈態様17〉
前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、アクリロイル基を複数含む、態様12~15のいずれか一項に記載のカード。
〈態様18〉
前記タングステン系赤外線吸収性顔料は、
一般式(1):M
{式中、Mは、H、He、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、及びIからなる群から選ばれる1種類以上の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、x、y及びzは、それぞれ正数であり、0<x/y≦1であり、かつ2.2≦z/y≦3.0である}
で表される複合タングステン酸化物、又は、
一般式(2):W
{式中、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、y及びzは、それぞれ正数であり、かつ2.45≦z/y≦2.999である}
で表されるマグネリ相を有するタングステン酸化物、
から選ばれる少なくとも1種以上である、態様12~17のいずれか一項に記載のカード。
〈態様19〉
2又はそれよりも多くの態様1~18のいずれか一項に記載の前記カードを含むカードセットであって、2又はそれよりも多くの前記カードの前記識別コードが互いに異なっている、カードセット。
〈態様20〉
カード発行機であって、
前記カード発行機が、2又はそれよりも多くの態様5又は6に記載のカードを含むカードセットを保持しており、
2又はそれよりも多くの前記カードの前記識別コードが、互いに異なっており、
前記カード発行機が、前記可視光読み取り印刷用領域に、可視光読み取り用印刷インクによって前記可視光読み取り用印刷部を印刷する、
カード発行機。
〈態様21〉
カード発行機であって、
前記カード発行機が、2又はそれよりも多くのカード基材を含むカード基材セットを保持しており、
前記カード発行機が、2又はそれよりも多くの前記カード基材に、非可視光読み取り用インクによって、前記非可視光読み取り用印刷部を提供し、ここで、前記非可視光読み取り用印刷部が、固有の識別コードを形成しており
前記カード発行機が、2又はそれよりも多くの前記カード基材の前記可視光読み取り印刷用領域に、可視光読み取り用インクによって前記可視光読み取り用印刷部を提供して、2又はそれよりも多くの態様7~9のいずれか一項に記載のカードを得、かつ
2又はそれよりも多くの前記カードの前記識別コードが、互いに異なっている、
カード発行機。
【発明の効果】
【0035】
本開示のカードは、非可視光読み取り用印刷部が固有の識別コードを有していることによって、偽造の恐れを減少させつつ、コストが比較的安く、かつ固有の識別情報を有するという利点を提供できる。
【0036】
また、本開示のカードの非可視光読み取り用印刷部がタングステン系赤外線吸収性顔料、紫外線吸収性蛍光顔料、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及びウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂を含む非可視光読み取り用インクで印刷されている態様では、本開示のカードは、赤外線吸収性及び紫外線吸収性の両者を有することによって優れた偽造防止性及び/又は真贋判定性を示すとともに、耐塩基性、特に洗濯耐性に優れている。したがって、本開示の印刷物は、衣類と共に洗濯されてしまった場合にも、その耐塩基性により、赤外線吸収機能及び紫外線吸収機能を維持することができ、したがって優れた偽造防止性及び/又は真贋判定性を維持することができる。
【0037】
また、この態様では、本開示のカードは、赤外線吸収性及び紫外線吸収性の両者を有する。そのため、真偽不明のカードに対する真贋判定を実施する際に、一般的に安価な機器である紫外線(UV)照射装置を用いて一次評価(例えば、識別コードに基づくコード情報の確認及び/又は目視による蛍光の有無の確認)を実施し、偽造品のおそれのある場合、セキュリティ性が求められる場合等においてのみ、二次評価として、赤外線カメラ等の専用の機器による赤外線吸収性の評価を実施することができる。
【0038】
すなわち、この態様では、本開示のカードを真正のカードとすれば、真偽不明のカードについての真贋判定を一次評価及び二次評価からなる二段階評価とし、一次評価である簡易な紫外線(UV)吸収性評価によって、二次評価を実施する対象物を限定することができる。そのため、本開示によれば、真贋判定の利便性が向上するとともに、高価な赤外線評価装置の導入コストを抑制することができ、真贋判定の活用場面を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本開示のカードの1つの態様を示す概念図である。
図2図2は、本開示のカードの他の態様を示す概念図である。
図3図3は、本開示のカードを用いるゲームシステムの構成を示す概略構成図である。
図4図4は、本開示のカード発行機におけるカード印刷の1つの態様を示す概念図である。
図5図5は、本開示のカード発行機におけるカード印刷の他の態様を示す概念図である。
図6図6は、本開示のカードの1つの態様を示す概念図である。
図7図7は、本開示のカードの他の1つの態様を示す概念図である。
図8図8は、本開示の真贋判定用端末の構成を示す概略構成図である。
図9図9は、本開示の真贋判定用端末の制御の1つの態様を示すフローチャートである。
図10図10は、本開示の真贋判定用端末の制御の他の1つの態様を示すフローチャートである。
図11図11は、本開示の真贋判定用システムで用いられる真贋判定用サーバの構成を示す概略構成図である。
図12図12は、本開示の真贋判定システムの1つの態様を説明するためのシーケンス図である。
図13図13は、本開示の真贋判定システムの他の1つの態様を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本開示のカード、カードセット、及びカード発行機について、図面を参照しつつ特定の態様について説明するが、本開示はこれらの態様に限定されるものではない。また、以下では、本開示のカードのための、真贋判定用端末、真贋判定用ソフトウェア、及び真贋判定用システムについて、図面を参照しつつ特定の態様について説明するが、本開示はこれらの態様に限定されるものではない。
【0041】
《カード》
本開示のカードは、カード基材、及びカード基材に印刷されている非可視光読み取り用印刷部を有しており、かつ非可視光読み取り用印刷部が、カードに固有の識別コードを形成している。
【0042】
このような本開示のカードによれば、非可視光読み取り用印刷部が固有の識別コードを有していることによって、偽造の恐れを減少させつつ、コストが比較的安く、かつ固有の識別情報を有するという利点を提供できる。
【0043】
本開示のカードは、図1又は図2に示すようなものであってよい。
【0044】
具体的には、図1で示される態様では、図1(a)で示される第1のカード510aは、非可視光読み取り用印刷部で形成されている第1の固有の識別コード501aを有しており、図1(b)で示される第2のカード510bは、非可視光読み取り用印刷部で形成されている第2の固有の識別コード501bを有しており、図1(c)で示される第3のカード510cは、非可視光読み取り用印刷部で形成されている第3の固有の識別コード501cを有している。ここで、第1~第3の固有の識別コード501a、501b、501cは、互いに異なるものである。
【0045】
また、図2で示される態様では、図2(a)で示される第1のカード520aは、非可視光読み取り用印刷部で形成されている第1の固有の識別コード501a、及び随意の可視光読み取り用印刷部で形成されている第1の絵柄及び/又は文字情報502aを有している。また、図2(b)で示される第2のカード520bは、非可視光読み取り用印刷部で形成されている第2の固有の識別コード501b、及び随意の可視光読み取り用印刷部で形成されている第2の絵柄及び/又は文字情報502bを有している。また、図2(c)で示される第3のカード520cは、非可視光読み取り用印刷部で形成されている第3の固有の識別コード501c、及び随意の可視光読み取り用印刷部で形成されている第3の絵柄及び/又は文字情報502cを有している。ここで、第1~第3の固有の識別コード501a、501b、501cは、互いに異なるものである。これに対して、随意の第1~第3の絵柄及び/又は文字情報502a、502b、502cは、互いに異なるものであっても、同じものであってもよい。
【0046】
本開示のカードは、遊戯用のカード、特にアーケードゲームで使用されるカードであってよい。
【0047】
本開示のカードがアーケードゲームで使用される遊戯用のカードである場合、例えば図3に示すように、固有の識別コード並びに所定のキャラクター絵柄及び/又は文字情報を有するカード1001を、カード発行機1002で発行し、その際に、固有の識別コード並びに所定のキャラクター絵柄及び/又は文字情報に関する情報を、インターネット1000を介してゲームサーバ1003に記録しておくことができる。これによれば、カード1001の識別コードを読み取る機能を有するアーケードゲーム機1004で、カードを使用してプレイする際に、そのカード1001に関する情報を、アーケードゲーム機1004がインターネット1000を介してゲームサーバ1003から取得することができる。なお、この場合、カード発行機1002とアーケードゲーム機1004とは、一体となっていても、別体となっていてもよい。
【0048】
また、この場合、ユーザの所有するスマートフォン、パーソナルコンピュータ、ゲーム専用機等のユーザ端末1005でゲームをプレイして成長させたキャラクターを、固有の識別コードでカードに紐付けることもできる。すなわち、例えば、ユーザ端末1005でゲームをプレイして成長させたキャラクターに関する情報を、インターネット1000を介してゲームサーバ1003に保存しておき、カード発行機1002でカードを発行する際に、ゲームサーバ1003に保存されたキャラクターに関する情報とカード1001の固有の識別コードとを紐付けることができる。これによれば、ユーザが、カード1001を用いてアーケードゲーム機1004でプレイする際に、アーケードゲーム機1004が、ゲームサーバ1003に保存されたキャラクターに関する情報を、インターネット1000を介して、ゲームサーバ1003から受け取ることができる。
【0049】
ここで、識別コードに紐づけてゲームサーバに保存できる情報としては、下記を挙げることができる:
ゲーム内(すなわち、ユーザ端末内やアーケードゲーム内でのゲーム)でカードを初めて入手した際に紐づける情報、例えばユーザID、カードの種類、同一カードの所持枚数(1枚目、2枚目等)・キャラクターの能力固有値、
各種媒体のゲームのプレイ状況を反映して更新していく育成情報、例えばキャラクターの育成情報(レベル、職業、ステータス等)、装備情報、装飾品情報、色、形状(特に肌や髪の色、髪型)等。
【0050】
本開示のカードは、固有の識別コードが付与されたカードなので、従来出来なかった個別の育成情報を管理することができ、さらに育成済みのカードの所有者変更(交換)が出来る。カードの所有者情報の紐づけを変えることで、紐づいている育成情報を維持したまま、所有者を変えることができる。これにより、入手難易度によるレア度合の価値に加え、育成情報のレア度合が価値になり、プレイバリューやコレクション性が向上する。すなわち、本開示のカードは固有の識別コードが付与されたカードなので、ユーザ情報及びキャラクターの育成情報をカードに紐付けることができ、また実物のカードの所有者の変更に伴って、カードに紐付けられた所有者の情報も変更することができる。
【0051】
これに対して、従来は、ゲーム内にてユーザ同士のキャラクターの交換(すなわち特定の育成情報に紐付けられたキャラクターの交換)は可能であったが、カードを通じて育成情報を交換することはできなかった。
【0052】
また、本開示のカードがアーケードゲームで使用される遊戯用のカードである場合、非可視光読み取り印刷部は、読取装置の場所によって、印刷する面を変えてよい。例えば、アーケードゲームのプレイ盤上にカードを置いて個別識別する場合には、読取装置がプレイ盤の下部にあり、下からカードを識別する為、カードの裏面に識別コードを印刷する。読取装置が上部にある場合、おもて面に識別コードを印刷する。また、両面に印刷してあってもよい。これによれば、プレイ盤等の読取装置によってカードの位置情報をリアルタイムで読取ることで、ゲームに活用できる(例:サッカーゲーム・戦争ゲームの陣地取り)。
【0053】
本開示のカードのカード基材は、紙基材又はプラスチックであってよい。また、本開示のカードでは、非可視光読み取り用印刷部がインクジェット印刷されていてよい。
【0054】
本開示に関して「非可視光読み取り用印刷部」は、非可視光読み取り用インクで印刷された部分を意味しており、具体的には例えば、赤外線吸収性顔料、紫外線吸収性蛍光顔料、又はそれらの組み合わせを含有する非可視光読み取り用インクで印刷された部分を意味している。
【0055】
また、本開示に関して「非可視光読み取り用印刷部」又は「非可視光読み取り用インク」は、可視光での読み取りが不可能又は実質的に困難であるものであり、したがって通常のカメラで画像を取得すること、及び目視で視認することが、不可能又は実質的に困難である。この「非可視光読み取り用印刷部」又は「非可視光読み取り用インク」は、赤外線吸収性顔料、例えばタングステン系赤外線吸収性顔料を含有することができ、その場合には、赤外線カメラを利用して読み取ることができる。また、この「非可視光読み取り用印刷部」又は「非可視光読み取り用インク」は、紫外線吸収性蛍光顔料を含有することができ、その場合には、紫外線を照射することによって発生する蛍光を、通常のカメラを利用して読み取ること、又は目視で確認することができる。「赤外線吸収性顔料」、「紫外線吸収性蛍光顔料」、及び「非可視光読み取り用インク」の例については、下記の「《非可視光読み取り用インク》」の欄を参照することができる。
【0056】
本開示に関して「識別コード」は、1次元コード又は2次元コードであってよい。1次元コードとしては、具体的には、CODE39、CODE128、JAN、ITF等のバーコードが挙げられ、2次元コードとしては、具体的には、QRコード、PDF417、データマトリックス、CPコード、MaxiCode等が挙げられる。また、本開示に関して「識別コード」は、これら一般的な識別コードに限定されず、模様、又はその一部が1次元コード又は2次元コードとして機能するものであってもよい。なお、本開示に適用できる識別コードは、余白部及びコード部を含むものであるが、識別コードを基材に印刷、印字等で形成する際は、コード部のみを形成すればよい。つまり、この場合は、基材自体が余白部となる。
【0057】
また、本開示に関して「カードに固有の識別コード」は、個々のカード毎に異なる識別コードを意味しており、この「カードに固有の識別コード」によれば、可視光読み取り用印刷部が互いに同じ複数のカードを互いに区別して識別することが可能になる。
【0058】
特に、「カードに固有の識別コード」は、カードに印刷されるべき可視光読み取り用印刷部又はカードに印刷されている可視光読み取り用印刷部に依存しない、カードに固有のコード情報を含むことができる。すなわち、「カードに固有の識別コード」は、カードに印刷されるべき可視光読み取り用印刷部又はカードに印刷されている可視光読み取り用印刷部とは独立の、カードに固有のコード情報を含むことができ、それによって可視光読み取り用印刷部が互いに同じ複数のカードを互いに区別して識別することが可能になる。
【0059】
より特に、「カードに固有の識別コード」は、カードに印刷されるべき可視光読み取り用印刷部又はカードに印刷されている可視光読み取り用印刷部に関する情報を含まないことができる。すなわち、「カードに固有の識別コード」は、カードに印刷されるべき可視光読み取り用印刷部又はカードに印刷されている可視光読み取り用印刷部とは独立の、カードに固有のコード情報からなることができ、それによって可視光読み取り用印刷部が互いに同じ複数のカードを互いに区別して識別することが可能になる。
【0060】
また、本開示に関して「コード情報」は、識別コードが有する情報を意味しており、特に識別コードをデコードして得られる情報を意味している。
【0061】
〈未印刷カード〉
1つの態様において、本開示のカードでは、カード基材が、可視光読み取り用印刷領域を有し、かつ可視光読み取り用印刷領域が、可視光読み取り用印刷部を受容することを予定されている。すなわち、1つの態様において、本開示のカードは、図1で示すような、可視光読み取り用印刷領域に可視光読み取り用印刷部を印刷する前のカード510a、510b、510cであってよい。ただし、この場合、本開示のカードは、少なくとも一部に、可視光読み取り用印刷部を有していてもよい。他方で、本開示のカードは、可視光読み取り用印刷部を有さないカード、すなわちブランクカード又はホワイトカードとも呼ばれる印刷用カードであってもよい。
【0062】
この態様のカードでは、可視光読み取り用印刷領域以外の領域の少なくとも一部に、可視光読み取り用印刷部を有することができる。
【0063】
なお、本開示のカードに関して、カードの印刷内容の種類は、カードの識別が不可能な可視光読み取り用印刷部(例えば、対戦相手にカードを識別されぬようにゲームカードの裏面に印刷された固定の絵柄やカードの周りを囲む枠の絵柄、ロット番号等)と、カードを識別可能な可視光読み取り用印刷部(例えば、カードのおもて面に印刷された、キャラクターの絵柄・ステータス情報・カード番号等)とがある。したがって、未印刷の可視光読み取り用印刷領域は、おもて面及び裏面のどちらにあってもよい。
【0064】
したがって、この態様では、可視光読み取り用印刷領域が、カードを識別可能な可視光読み取り用印刷部を受容することを予定されている領域であり、かつ可視光読み取り用印刷領域以外の領域が、カードを識別不可能な可視光読み取り用印刷部が予め印刷されている領域であってよい。これによれば、特にカード発行機で使用者の指示に応じてカードを発行する場合に、カード発行のスピードを上げることができる。
【0065】
この態様において、可視光読み取り用印刷部は、非赤外線吸収性インクによる印刷部であってよい。この場合には、可視光読み取り用印刷部が、非可視光読み取り用印刷部の読み取りを妨げないようにすることができる。したがって、この場合には、非可視光読み取り用印刷部が、可視光読み取り用印刷領域と少なくとも部分的に重複しているようにすることもできる。
【0066】
なお、本開示に関して、「可視光読み取り用印刷部」は、可視光読み取り用インクで印刷される予定の部分又は可視光読み取り用インクで印刷されている部分であってよく、可視光読み取り用インクとしては、通常のプロセスインク、すなわちシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクを用いることができる。
【0067】
また、可視光読み取り用インクは、「非赤外線吸収性インク」、すなわち赤外線を吸収せず又は実質的に吸収せずに、赤外線吸収インクで印刷された識別コードの上に印刷したときに、赤外線吸収性インクで印刷された識別コードの読み取りを妨げないインクであってよい。したがって、可視光読み取り用インクは具体的には、カーボンブラック顔料を含有していないインクであってよい。
【0068】
黒色の非赤外線吸収性可視光読み取り用インクは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を混合された混色黒インクとして得ることができる。可視光読み取り用インクが非赤外線吸収性インクである場合、赤外線画像を取得する際に、可視光読み取り用インクで印刷された部分を読み取らずに、非可視光読み取り用インクで印刷された部分のみを読み取ることができる。
【0069】
〈印刷済カード〉
また、1つの態様において、本開示のカードでは、カード基材が、可視光読み取り用印刷領域を有し、かつ可視光読み取り用印刷領域が、可視光読み取り用印刷部を有する。すなわち、1つの態様において、本開示のカードは、可視光読み取り用印刷領域に可視光読み取り用印刷部が印刷された後のカードであってよい。
【0070】
また、この態様において、識別コードは、可視光読み取り用印刷部に依存しないカードに固有の情報を含むことができる。また、識別コードは、可視光読み取り用印刷部に関する情報を含まないことができる。
【0071】
この態様において、可視光読み取り用印刷部は、非赤外線吸収性インクによる印刷部であってよい。この場合には、可視光読み取り用印刷部が、非可視光読み取り用印刷部の読み取りを妨げないようにすることができる。したがって、この場合には、非可視光読み取り用印刷部が、可視光読み取り用印刷領域と少なくとも部分的に重複しているようにすることもできる。
【0072】
《カードセット》
本開示のカードセットは、2又はそれよりも多くの本開示のカードを含むカードセットであって、2又はそれよりも多くの本開示のカードの識別コードが互いに異なっているカードセットである。
【0073】
本開示のカードセットは、そこに組まれている2又はそれよりも多くの本開示のカードの、非可視光読み取り用印刷部によって形成されている識別コードが互いに異なっていることによって、非可視光、例えば赤外光及び/又は紫外光を用いて、そこに組まれている2又はそれよりも多くの本開示のカードを互いに識別することができる。すなわち、本開示のカードセットに組まれている2又はそれよりも多くの本開示のカードは、可視光による観察、すなわち例えば目視による観察を行わずに、互いに識別することができる。
【0074】
また、本開示のカードセットに含まれる本開示のカードは、図1で示されるような未印刷のカードであっても、図2で示されるような印刷済のカードであってもよい。
【0075】
《カード発行機》
〈第1の態様〉
本開示のカード発行機は、第1の態様において、
カード発行機が、2又はそれよりも多くの本開示のカードを含むカードセットを保持しており、
2又はそれよりも多くのカードの識別コードが、互いに異なっており、
カード発行機が、可視光読み取り印刷用領域に、可視光読み取り用印刷インクによって可視光読み取り用印刷部を印刷する、
カード発行機である。
【0076】
ここで、この態様において、カード発行機に保持されているカードは、可視光読み取り用印刷部を印刷予定のカードであり、特に可視光読み取り用印刷部を有さないカード、すなわちブランクカード又はホワイトカードとも呼ばれる印刷用カードであってもよい。
【0077】
例えば図4に示すように、この態様のカード発行機610の使用においては、まず、始めに、2又はそれよりも多くのカード基材400a、400b、400cを含むカード基材セットを提供し、このカード基材に、非可視光読み取り用インクによって、非可視光読み取り用印刷部を提供して、可視光読み取り用印刷部を印刷予定のカード510a、510b、510cを提供する。ここで、非可視光読み取り用印刷部は、カードに固有の識別コード501a、501b、501cを形成している。
【0078】
このようにして得た固有の識別コード501a、501b、501cを有する印刷予定のカード510a、510b、510cのセットを、カード発行機610に提供する。その後、カード発行機が、カード510a、510b、510cのそれぞれの可視光読み取り印刷用領域に、可視光読み取り用印刷インクによって、可視光読み取り用印刷部で形成される絵柄等502a、502b、502cを印刷する。これによれば、固有の識別コード501a、501b、501c及び絵柄等502a、502b、502cを有しているカード520a、520b、520cを提供することができる。ここでは、カード520a、520b、520cの識別コード501a、501b、501cが、互いに異なっており、それによってカード520a、520b、520cを互いに識別することができる。
【0079】
なお、カード発行機は、随意に、非可視光画像取得部を有し、それによって非可視光読み取り用印刷部で形成されている識別コードを読み取って、識別コードと、可視光読み取り用印刷インクによって印刷する可視光読み取り用印刷部とを紐付け、その紐付け情報を、インターネットを介してゲームサーバに提供することができる。
【0080】
カード発行機における印刷方式としては、ダイレクト印画方式(券面にデザイン用のリボンを直接熱で転移させる方式)、昇華再転写印画方式(フィルムに熱でデザイン用のリボンから一次転移させ、フィルムを熱でカード券面に二次転移させる方式)、インクジェット印刷方式等を用いることができる。
【0081】
本開示のカードが遊戯用カード、特にアーケードゲームで用いられるカードである場合、アーケードゲームで遊ぶ際に、プレイに使用するカードを印刷することができる。特に、この場合、各種媒体のゲームのプレイ状況を反映して更新していく育成情報、例えばキャラクターの育成情報(レベル、職業、ステータス等)、装備情報、装飾品情報、色、形状(特に肌や髪の色、髪型)等を反映させた絵柄を可視光読み取り印刷部として印刷してよい。
【0082】
これによれば、ユーザ特有の育成情報を反映させることができ、従来にはないコレクション性が向上する。なお、従来は、識別コードとユーザIDが紐づいてさえいれば、ゲーム上では育成情報を反映させたキャラクター等でプレイすることができたが、ユーザが所有するカードには育成情報を反映させることができなかった。これに対して、本開示のこの態様では、印刷の際に育成情報を反映させたキャラクター等をカード化できるため、ユーザは、ユニークなカードを所持することができる。
【0083】
〈第2の態様〉
本開示のカード発行機は、第2の態様において、
カード発行機が、2又はそれよりも多くのカード基材を含むカード基材セットを保持しており、
カード発行機が、2又はそれよりも多くのカード基材に、非可視光読み取り用インクによって、非可視光読み取り用印刷部を提供し、ここで、非可視光読み取り用印刷部が、固有の識別コードを形成しており
カード発行機が、2又はそれよりも多くのカード基材の可視光読み取り印刷用領域に、可視光読み取り用インクによって可視光読み取り用印刷部を提供して、2又はそれよりも多くの本開示のカードを得、かつ
2又はそれよりも多くのカードの識別コードが、互いに異なっている、
カード発行機である。
【0084】
ここで、この態様において、カード発行機に保持されているカード基材は、印刷部を有さない未印刷カード基材であってよい。
【0085】
例えば図5に示すように、この態様のカード発行機620の使用においては、まず、始めに、2又はそれよりも多くのカード基材400a、400b、400cのセットをカード発行機620に提供する。その後、カード発行機620が、2又はそれよりも多くのカード基材400a、400b、400cに、非可視光読み取り用インクによって、固有の識別コード501a、501b、501cを形成している非可視光読み取り用印刷部を提供する。また、その後、カード発行機620が、2又はそれよりも多くのカード基材の可視光読み取り印刷用領域に、可視光読み取り用インクによって、絵柄等502a、502b、502cを形成している可視光読み取り用印刷部を提供する。これによれば、固有の識別コード501a、501b、501c及び絵柄等502a、502b、502cを有しているカード520a、520b、520cを提供することができる。ここでは、カード520a、520b、520cの識別コード501a、501b、501cが、互いに異なっており、それによってカード520a、520b、520cを互いに識別することができる。
【0086】
なお、カード発行機は、随意に、非可視光画像取得部を有し、それによって非可視光読み取り用印刷部で形成されている識別コードを読み取って、識別コードと、可視光読み取り用印刷インクによって印刷する可視光読み取り用印刷部とを紐付け、その紐付け情報を、インターネットを介してゲームサーバに提供することができる。
【0087】
カード発行機における印刷方式、本開示のカードが遊戯用カード、特にアーケードゲームで用いられるカードである態様の説明については、本開示のカード発行機の第1の態様に関する記載を参照できる。
【0088】
《非可視光読み取り用インク》
上記のように、非可視光読み取り用インクは、赤外線吸収性顔料、例えばタングステン系赤外線吸収性顔料を含有することができ、その場合には、赤外線カメラを利用して読み取ることができる。また、非可視光読み取り用インクは、紫外線吸収性蛍光顔料を含有することができ、その場合には、紫外線を照射することによって発生する蛍光を、通常のカメラを利用して読み取ること、又は目視で確認することができる。
【0089】
非可視光読み取り用インクは、1つの態様において、タングステン系赤外線吸収性顔料、紫外線吸収性蛍光顔料、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及びウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂、を含む。以下では、この態様について以下で詳細に説明するが、本開示のカードのために使用できる非可視光読み取り用インクはこれに限定されるものではない。特に例えば、本開示のカードのために使用できる非可視光読み取り用インクは、以下で詳細に説明する非可視光読み取り用インクの成分のうちの、紫外線吸収性蛍光顔料を含有しないインク、すなわちタングステン系赤外線吸収性顔料、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及びウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂を含むインクであってもよい。
【0090】
ここで、本開示において、「紫外線硬化型樹脂」とは、紫外線照射装置から照射される紫外線のエネルギーと光重合開始剤により、重合又は架橋等によって硬化する材料を意味し、モノマー、オリゴマー、又はプレポリマーの形態であってよい。
【0091】
非可視光読み取り用インクは、タングステン系赤外線吸収性顔料を含むことで、赤外線吸収性能を有するカードを提供することができる。また、紫外線吸収性蛍光顔料を含むことで、紫外線吸収性能を有するカードを提供することができる。更に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を含むことで、紫外線硬化性能を有するとともに、耐塩基性、特に洗濯耐性に優れた、カードを実現することができる。
【0092】
赤外線吸収性能を付与するタングステン系赤外線吸収性顔料は、ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂を主成分とする従来のインクに対して分散させようとしても、顔料がインク中で沈降したり、あるいは、顔料を含む分散体が紫外線硬化型インクと分離したりして、印刷用のインクとして用いるのは困難であった。
【0093】
また、紫外線吸収性能を付与する紫外線吸収性蛍光顔料は、ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂を主成分とする従来のインクに含有させた場合には、単独では、耐塩基性、特に洗濯耐性に優れた、カードを実現することができる。しかしながら、タングステン系赤外線吸収性顔料とともに分散させたインクとすると、その洗濯耐性は大きく損なわれる状況となっていた。
【0094】
更に、洗濯耐性を付与する紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、粘度が高い。このため、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を成分として含む組成物は、そのままでは、インクジェットインクとしては使用することができなかった。
【0095】
これに対して、本開示者らは、低粘度であり、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂との相溶性の高い紫外線硬化型アクリル樹脂を用いれば、タングステン系赤外線吸収性顔料が良好に分散できるとともに、タングステン系赤外線吸収性顔料の存在下であっても紫外線吸収性蛍光顔料の機能を維持することができ、更に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂に起因するインク粘度の増大を抑制することができ、これらの結果、実用的なインクを実現できることを見出した。
【0096】
理論に拘束されるものではないが、上記のような効果は、以下のメカニズムによって発現すると考えられる。
【0097】
このインクは、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を含有していることによって、ウレタン結合による水素結合の形成が可能である。したがって、タングステン系赤外線吸収性顔料及び紫外線吸収性蛍光顔料は、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂との間に水素結合を形成して被覆される。これらの顔料は、樹脂に被覆されることによって、インク中の分散性が向上するとともに、カードとしたときの耐塩基性、特に洗濯耐性が向上する。また、樹脂による被覆によって、タングステン系赤外線吸収性顔料と紫外線吸収性蛍光顔料との相互作用が低減されて、紫外線吸収性蛍光顔料の機能が維持される。更に、このインクは、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂と相溶性の高い紫外線硬化型アクリル樹脂を含有しているので、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂同士の水素結合の形成が阻害されて、インクの粘度の上昇が抑制されると考えられる。
【0098】
非可視光読み取り用インクの粘度は、約25℃の温度において、300mPa・s以下、150mPa・s以下、80mPa・s以下、又は60mPa・s以下であってよく、10mPa・s以上、又は15mPa・s以上であってよい。
【0099】
なお、非可視光読み取り用インクを、インクジェット用インクとして用いる場合には、インクの粘度は、60mPa・s以下であることが好ましく、40mPa・s以下、30mPa・s以下であってよく、20mPa・s以下が特に好ましい。
【0100】
<タングステン系赤外線吸収性顔料>
非可視光読み取り用インクは、タングステン系赤外線吸収性顔料を、必須成分として分散している。非可視光読み取り用インクは、タングステン系赤外線吸収性顔料を含むことで、赤外線吸収性能を有するカードを提供することができる。
【0101】
本開示に用いられるタングステン系赤外線吸収性顔料としては、特に限定されるものではなく、インクの分野で用いられている公知の顔料を適用することができる。
【0102】
タングステン系赤外線吸収性顔料としては、例えば、一般式(1):M{式中、Mは、H、He、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、及びIからなる群から選ばれる1種類以上の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、x、y及びzは、それぞれ正数であり、0<x/y≦1であり、かつ2.2≦z/y≦3.0である}で表される複合タングステン酸化物、又は一般式(2):W{式中、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、y及びzは、それぞれ正数であり、かつ2.45≦z/y≦2.999である}で表されるマグネリ相を有するタングステン酸化物から選ばれる1種以上の赤外線吸収性顔料であってもよい。
【0103】
このようなタングステン系赤外線吸収性顔料は、例えば、特開2005-187323号公報に説明されている、複合タングステン酸化物又はマグネリ相を有するタングステン酸化物の製法により、製造することができる。
【0104】
一般式(1)で表される複合タングステン酸化物には、元素Mが添加されている。この為、一般式(1)におけるz/y=3.0の場合も含めて、自由電子が生成され、近赤外光波長領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、波長1000nm付近の近赤外線を吸収する材料として有効である。
【0105】
特に、元素Mとしては、近赤外線吸収性材料としての光学特性及び耐候性を向上させる観点から、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、及びSnからなる群から選ばれる1種類以上とすることができる。
【0106】
一般式(1)で表される複合タングステン酸化物は、シランカップリング剤で処理されていてもよい。一般式(1)で表される複合タングステン酸化物をシランカップリング剤処理することによって、得られるカードの近赤外線吸収性及び可視光波長領域における透明性を高めることができる。
【0107】
元素Mの添加量を示すx/yの値が0より大きいことにより、十分な量の自由電子が生成され、近赤外線吸収効果を十分に発揮することができる。なお、自由電子の供給量は、元素Mの添加量が多いほど増加して、近赤外線吸収効果は上昇する。しかし、自由電子の供給量は、通常は、x/yの値が1程度で飽和する。x/yの値が1以下である場合には、顔料含有層中における不純物相の生成を防ぐことが可能となる。
【0108】
x/yの値は、0.001以上、0.2以上、又は0.30以上であってもよく、0.85以下、0.5以下、又は0.35以下であってもよい。x/yの値は、特に、約0.33とすることができる。
【0109】
一般式(1)及び(2)において、z/yの値は、酸素量の制御の水準を示す。一般式(1)で表される複合タングステン酸化物において、z/yの値が2.2≦z/y<3.0の関係を満たす場合には、一般式(2)で表されるタングステン酸化物と同じ酸素制御機構が働く。このことに加えて、一般式(1)で表される複合タングステン酸化物では、z/y=3.0の場合でさえも、元素Mの添加による自由電子の供給がある。一般式(1)において、z/yの値は、2.45≦z/y≦3.0の関係を満たすようにしてもよい。
【0110】
一般式(1)で表される複合タングステン酸化物は、六方晶の結晶構造を含むか、又は六方晶の結晶構造からなることが好ましい。一般式(1)で表される複合タングステン酸化物が、六方晶の結晶構造を有する場合、顔料の可視光波長領域の透過が大きくなり、かつ近赤外光波長領域の吸収が大きくなる。そして、元素Mの陽イオンは、六方晶の空隙に配置されて存在する。
【0111】
ここで、一般には、イオン半径の大きな元素Mを添加したときに、六方晶が形成される。具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Sn、Li、Ca、Sr、Fe等のイオン半径の大きい元素を添加したときに、六方晶が形成され易い。しかしながら、一般式(1)で表される複合タングステン酸化物における元素Mは、これらの元素に限定されるものではなく、WO単位で形成される六角形の空隙に、添加元素Mが存在していればよい。
【0112】
六方晶の結晶構造を有する一般式(1)で表される複合タングステン酸化物が、均一な結晶構造を有する場合には、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下とすることができ、0.30以上0.35以下とすることができ、特に約0.33とすることができる。x/yの値が約0.33となることで、添加元素Mが、実質的に全ての六角形の空隙に配置されると考えられる。
【0113】
また、六方晶以外では、正方晶又は立方晶のタングステンブロンズであってもよい。一般式(1)で表される複合タングステン酸化物は、結晶構造によって、近赤外光波長領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶、正方晶、六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光波長領域の吸収が少ないのは、六方晶、正方晶、立方晶の順である。このため、可視光波長領域の光をより透過して、近赤外光波長領域の光をより吸収したい場合には、六方晶のタングステンブロンズを用いてもよい。
【0114】
一般式(2)で表されるマグネリ相を有するタングステン酸化物においては、z/yの値が2.45≦z/y≦2.999の関係を満たす、所謂「マグネリ相」は、安定性が高く、近赤外光波長領域の吸収特性も高い顔料となる。
【0115】
一般式(1)で表される複合タングステン酸化物及び一般式(2)で表されるマグネリ相を有するタングステン酸化物は、近赤外光波長領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調が青色系から緑色系となる物が多い。
【0116】
非可視光読み取り用インクに用いられるタングステン系赤外線吸収性顔料の分散粒子径は、特に限定されるものではなく、形成されるインクの使用目的によって、適宜選定することができる。
【0117】
透明性を有するインクを形成したい場合には、体積平均で2000nm以下の分散粒子径を有するタングステン系赤外線吸収性顔料を用いることが好ましい。分散粒子径が2000nm以下であれば、可視光波長領域における透過率(反射率)のピークと、近赤外光波長領域における吸収とのボトムの差が大きくなるため、可視光波長領域の透明性を有する近赤外線吸収顔料となる。更に、分散粒子径が2000nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することがないため、可視光波長領域における視認性を保持しつつ、同時に、効率良く透明性を保持することができる。
【0118】
更に、可視光波長領域における透明性を重視したい場合には、粒子による散乱を考慮することが好ましい。具体的には、タングステン系赤外線吸収性顔料の体積平均の分散粒子径を、200nm以下とすることが好ましく、さらには100nm以下、50nm以下、又は30nm以下であってもよい。
【0119】
タングステン系赤外線吸収性顔料の分散粒子径が200nm以下となる場合には、幾何学散乱又はミー散乱が低減し、レイリー散乱領域となる。レイリー散乱領域では、散乱光は分散粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い、散乱は低減して透明性が向上する。更に、タングステン系赤外線吸収性顔料の分散粒子径が100nm以下となる場合には、散乱光は非常に少なくなる。したがって、光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径は小さい方が好ましい。
【0120】
一方、タングステン系赤外線吸収性顔料の分散粒子径が、1nm以上、3nm以上、5nm以上、又は10nm以上であれば、工業的な製造が容易となる傾向にある。
【0121】
なお、タングステン系赤外線吸収性顔料の体積平均の分散粒子径は、ブラウン運動中の微粒子にレーザー光を照射し、そこから得られる光散乱情報から粒子径を求める、動的光散乱法のマイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0122】
非可視光読み取り用インクにおいて、タングステン系赤外線吸収性顔料の含有量は、特に限定されるものではないが、非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対して、タングステン系赤外線吸収性顔料を、20質量部以下含むことが好ましい。非可視光読み取り用インク中のタングステン系赤外線吸収性顔料の含有量をこの範囲とすると、顔料の分散性が良好となり、インク粘度の過度の上昇が抑制され、更にインクの製造コストが抑制される。
【0123】
非可視光読み取り用インクにおけるタングステン系赤外線吸収性顔料の含有量は、非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対して、20質量部以下、15質量部以下、14質量部、12質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、又は3質量部以下であってもよい。
【0124】
また、非可視光読み取り用インクにおけるタングステン系赤外線吸収性顔料の含有量は、非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、又は5.0質量部以上であってもよい。
【0125】
<紫外線吸収性蛍光顔料>
非可視光読み取り用インクは、紫外線吸収性蛍光顔料を、必須成分として分散している。非可視光読み取り用インクは、紫外線吸収性蛍光顔料を含むことで、紫外線吸収性能を有するカードを提供することができる。
【0126】
本開示に用いられる紫外線吸収性蛍光顔料は、紫外光で励起し、低いエネルギー準位に戻るときに、スペクトルのピークが青、緑、赤等にある可視光を蛍光発光するものである。本開示においては、紫外線を吸収して蛍光を発する物質であれば、特に限定されるものではなく、インクの分野で用いられている公知の顔料を適用することができる。
【0127】
また、紫外線吸収性蛍光顔料は、有機顔料であっても、無機顔料であってもよい。耐侯性に優れる観点からは、無機顔料を用いることが好ましい。一方で、透明性を確保して不可視性を高くしたい場合には、少量の添加でも十分な蛍光を発する有機顔料が好ましい。
【0128】
有機系の紫外線吸収性蛍光顔料としては、ルモゲンLイエロー、ルモゲンブリリアントイエロー、ルモゲンブリリアントグリーン等が挙げられる。また、無機系の蛍光顔料としては、M-Alで表される化合物(Mは、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる化合物を母結晶にすると共に、賦活剤としてユウロピウム(Eu)を添加して、共賦活剤としてジスプロシウム(Dy)を添加して得られた蛍光顔料)等を挙げることができる。
【0129】
市販品を用いることもでき、有機系の紫外線吸収性蛍光顔料としては、例えば、ルミコール(登録商標)1000(日本蛍光化学株式会社、キナゾロン誘導体)等が挙げられる。無機系の紫外線吸収性蛍光顔料としては、例えば、根本特殊化学社製のD1164等が挙げられる。
【0130】
非可視光読み取り用インクにおいて、紫外線吸収性蛍光顔料の含有量は、特に限定されるものではなく、有機系顔料を用いるか無機系顔料を用いるかに応じて、適宜設定することができる。
【0131】
非可視光読み取り用インクにおける紫外線吸収性蛍光顔料の含有量は、非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対して、20質量部以下、15質量部以下、14質量部、12質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、又は3質量部以下であってもよい。非可視光読み取り用インク中の紫外線吸収性蛍光顔料の含有量をこの範囲とすると、顔料の分散性が良好となり、インク粘度の過度の上昇が抑制され、更にインクの製造コストが抑制される。
【0132】
また、非可視光読み取り用インクにおける紫外線吸収性蛍光顔料の含有量は、非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、4.0質量部以上、又は5.0質量部以上であってもよい。
【0133】
<紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂>
非可視光読み取り用インクは、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を、必須成分として含む。紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を含むことで、紫外線硬化性能を有するとともに、耐塩基性、特に洗濯耐性に優れたカードを与えることが可能となる。
【0134】
本開示に用いられる紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂としては、特に限定されるものではなく、ウレタン結合と、アクリル酸から誘導されるアクリロイル基とを有する重合体であればよい。
【0135】
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、分子鎖にアクリロイル基を有することで、紫外線による硬化が可能となる。また、分子鎖にウレタン結合を有することで、他の分子との間に、水素結合を形成することができる。その結果、耐塩基性、特に洗濯耐性に優れたカードを与えることが可能となる。
【0136】
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が有するアクリロイル基は、アクリル酸から誘導される基である。アクリル酸は、単官能タイプであっても、多官能タイプであってもよい。
【0137】
本開示に用いられる紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、アクリロイル基を複数含むものであることが好ましい。紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が有するアクリロイル基の数は、2以上、3以上、4以上、6以上、9以上であってもよい。
【0138】
アクリロイル基の数が3以上である場合には、分子間で架橋を形成することができるため、耐塩基性、特に洗濯耐性を、更に向上させることが可能となる。
【0139】
また、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が有するウレタン結合は、イソシアネート基とヒドロキシ基とを反応させて形成される。本開示に用いられる紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が有するウレタン結合は、芳香族系のイソシアネート化合物から形成されるものであっても、脂肪族系のイソシアネート化合物から形成されるものであっても、いずれでもよい。
【0140】
また、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂におけるウレタン結合を形成するためのヒドロキシ基を有する化合物は、ポリエーテル系、ポリエステル系のいずれであってもよく、また、ポリマーであっても、低分子量のジオール等であってもよい。
【0141】
すなわち、本開示に用いられる紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、ある程度の分子量を有するポリマーであっても、オリゴマーであっても、プレポリマーであってもよい。
【0142】
非可視光読み取り用インクにおいて、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対して、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を、1~50質量部含むことが好ましい。
【0143】
非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対する紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂の割合が上記の範囲であれば、非可視光読み取り用インクは、粘度が適度であり、十分な紫外線硬化性能を有するとともに、十分な耐塩基性、特に洗濯耐性に優れたカードを与えることが可能となる。
【0144】
また、非可視光読み取り用インクにおける紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂の含有量は、非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対して、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、又は25質量部以上であってもよい。
【0145】
非可視光読み取り用インクにおける紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂の含有量は、非可視光読み取り用インクの全固形分100質量部に対して、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下、又は25質量部以下であってもよい。
【0146】
また、非可視光読み取り用インクにおいて、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、後記する必須成分の1つである、紫外線硬化型アクリル樹脂100質量部に対して、1~150質量部であることが好ましい。
【0147】
紫外線硬化型アクリル樹脂100質量部に対する紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂の配合量が上記の範囲であれば、非可視光読み取り用インクにおいて、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂に起因する粘度の上昇が抑制される。
【0148】
紫外線硬化型アクリル樹脂100質量部に対する、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂の配合量は、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上、100質量部以上、110質量部以上、120質量部以上、130質量部以上、140質量部以上、又は、150質量部以上であってもよい。
【0149】
紫外線硬化型アクリル系樹脂100質量部に対する、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂の配合量は、200質量部以下、190質量部以下、180質量部以下、170質量部以下、160質量部以下、150質量部以下、140質量部以下、130質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、又は50質量部以下であってもよい。
【0150】
<ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂>
非可視光読み取り用インクは、ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂を、必須成分として含む。ウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂は、タングステン系赤外線吸収性顔料及び紫外線吸収性蛍光顔料を良好に分散するとともに、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂に起因する粘度の上昇を抑制する作用を有する。
【0151】
したがって、非可視光読み取り用インクにおいて、ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂は、低粘度であり、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂との相溶性の高い材料である。
【0152】
ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂は、低粘度である必要性から、単量体、オリゴマー、又はプレポリマーであることが好ましく、特に単量体が好ましい。
【0153】
本開示に用いられるウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂となる単量体としては、特に限定されるものではなく、紫外線硬化型インクに使用されている公知のアクリル系単量体を用いることができる。
【0154】
そのようなアクリル系単量体としては、エチレン性不飽和結合を有するアクリレートを挙げることができ、本開示においては、単官能アクリレート、又は多官能アクリレートのいずれであってもよい。これらを併用することも可能である。
【0155】
単官能アクリレートとしては、例えば、カプロラクトンアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコールジアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルフリコールアクリル酸安息香酸エステル、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ-ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ-トリエチレングリコールアクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸等が挙げられる。
【0156】
2官能アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。
【0157】
3官能以上のアクリレートとしては、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0158】
更に、アクリル系オリゴマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート等が挙げられる。
【0159】
<その他の成分>
非可視光読み取り用インクは、必須成分となるタングステン系赤外線吸収性顔料、紫外線吸収性蛍光顔料、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及びウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂以外に、その他の任意の成分を含んでいてもよい。
【0160】
その他の成分としては、特に限定されるものではなく、紫外線硬化型インクの分野に適用されている、公知の物質を用いることができる。例えば、光重合開始剤や、希釈用の溶剤、分散剤、カップリング剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0161】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、紫外線照射によって活性酸素等のラジカルを発生する化合物である。非可視光読み取り用インクに光重合開始剤を用いる場合には、必須成分である、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及びウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂を光重合させることができれば、その種類は特に限定されるものではなく、従来から紫外線硬化型インクに使用されている光重合開始剤から適宜選択して用いることができる。
【0162】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン類;ベイゾイン、ベイゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベイゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインジメチルケタール、ベンゾインパーオキサイド等のベンゾイン類;2,4,6-トリメトキシベンゾインジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホフィンオキサイド類;ベンジル及びメチルフェニル-グリオキシエステル;ベンゾフェノン、メチル-4-フェニルベンゾフェノン、o-ベンゾイルベンゾエート、2-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド、アクリル-ベンゾフェノン、3,3’4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン類;テトラメチルチウラムモノスルフィド;アゾビスイソブチロニトリル;ジ-tert-ブチルパーオキサイド;10-ブチル-2-クロロアクリドン;2-エチルアントラキノン;9,10-フェナントレンキノン;カンファキノン;チタノセン類、並びにこれらの組合せ等が挙げられる。
【0163】
また、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の光重合開始助剤を、光重合開始剤と併用しても用いてもよい。
【0164】
光重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及びウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル系樹脂の合計100質量部に対して、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、又は5質量部以上であってもよく、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、又は6質量部以下であってもよい。
【0165】
(溶剤)
非可視光読み取り用インクには、分散や粘度調整等を目的として、溶媒が含まれていてもよい。溶剤としては、このインクに含まれる材料を分散又は溶解するものであれば、特に限定されるものではない。
【0166】
例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ノルマルヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類といった、各種の有機溶媒を挙げることができる。
【0167】
非可視光読み取り用インクにおいて、溶媒を適用する場合には、1種単独であっても、2種類以上を混合した混合溶媒であってもよい。また、インク組成物の調製の際に、それぞれの成分を分散又は希釈するために用いられた溶媒をそのまま持ち込んで混合してもよい。更に、インクとなる組成物を調製した後に、インク組成物の粘度を低下させる目的で、希釈用の溶媒を添加してもよい。
【0168】
例えば、タングステン系赤外線吸収性顔料を含む分散体を構成する第1の溶媒、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂溶液を構成する第2の溶媒、及びウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂の溶液を構成する第3の溶媒を混合する態様が挙げられ、それぞれの溶媒は、同一でも異なっていてもよく、更に、1種単独の溶媒であっても、2種以上からなる混合溶媒であってもよい。
【0169】
非可視光読み取り用インクにおける溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、非可視光読み取り用インク100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、3質量部以上、又は5質量部以上であってもよく、50質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、又は1質量部以下であってもよい。
【0170】
(分散剤)
タングステン系赤外線吸収性顔料のインク中への分散性を高めるために、非可視光読み取り用インクには、分散剤が含有されていてもよい。分散剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有している化合物を挙げることができる。これらの官能基は、タングステン系赤外線吸収性顔料の表面に吸着し、タングステン系赤外線吸収性顔料の凝集を防ぐことで、インク中においてタングステン系赤外線吸収性顔料を均一に分散させる機能を有する。
【0171】
インクにおける分散剤の含有量は、非可視光読み取り用インク100質量部に対して、0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、又は2.0質量部以上であってもよく、15質量部以下、10質量部以下、8.0質量部以下、5.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、又は1.5質量部以下であってもよい。
【0172】
《非可視光読み取り用インクの製造方法》
非可視光読み取り用インクの製造方法は、特に限定されるものではなく、インクを形成する際に用いられる公知の手法を適用することができる。
【0173】
例えば、タングステン系赤外線吸収性顔料及び第1の溶媒を含む分散体と、紫外線吸収性蛍光顔料である粉末と、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂又は当該樹脂と第2の溶媒とを含む組成物と、ウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂とを混合する方法が挙げられる。
【0174】
更に、インクの粘度を低下させる目的で、希釈用溶媒を混合して粘度を調節する工程が含まれていてもよい。
【0175】
この場合、希釈用溶媒は、インクとなる組成物を得る前に、タングステン系赤外線吸収性顔料の分散体、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂又は当該樹脂と第2の溶媒とを含む組成物、及びウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂の少なくともいずれかに混合してもよく、あるいは、インクとなる組成物を調整した後に、組成物に混合してもよい。
【0176】
《非可視光読み取り用インクの印刷方式》
非可視光読み取り用インクの印刷方式は、特に限定されるものではない。一般的な印刷インクとして使用することができ、例えば、フレキソ印刷インク、活版印刷インク、オフセット印刷インク、凹版印刷インク、グラビア印刷インク、スクリーン印刷インク、インクジェット印刷インク、熱転写リボン等として使用することができる。
【0177】
これらの中では、カードの真贋判定に使用することから、ダイレクト印画方式や昇華再転写印画方式のための熱転写リボン、インクジェット印刷方式のためのインクとして使用することが好ましい。
【0178】
特に、非可視光読み取り用インクは、高粘度のインクであっても微細なパターンを形成することが可能となる、高粘度液対応のインクジェットヘッドを使用した、インクジェット用インクとすることができる。
【0179】
《真贋判定機能付きカード》
以下では、本開示のカードに真贋判定機能を付与する場合について説明するが、本開示のカードは、このような真贋判定機能を必須の構成とするものではない。
【0180】
本開示のカードは、1つの態様において、
可視光読み取り用インクで印刷された可視光読み取り用印刷部、及び
非可視光読み取り用インクで印刷された非可視光読み取り用印刷部
を有しており、
可視光読み取り用印刷部、及び非可視光読み取り用印刷部が、少なくとも部分的に重複して重複印刷部を形成している。
【0181】
また、この態様において、本開示のカードは、可視光読み取り用印刷部によって形成されている(すなわち可視光読み取り用印刷部に含まれている)第1の識別コード、非可視光読み取り用印刷部によって形成されている第2の識別コード、及び重複印刷部によって形成されている第3の識別コードのうちの少なくとも2つを有している。特に本開示のカードは、少なくとも第3の識別コードを有している。
【0182】
ここで、非可視光読み取り用インクは、
赤外線吸収性顔料、特にタングステン系赤外線吸収性顔料、
紫外線吸収性蛍光顔料、
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、及び
ウレタン結合を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂、
を含んでいてよい。
【0183】
図6で説明される本開示のカードの1つの態様では、
可視光読み取り用インクで印刷された可視光読み取り用印刷部によって形成されている第1の識別コード1、
非可視光読み取り用インクで印刷された非可視光読み取り用印刷部によって形成されている第2の識別コード2、及び
可視光読み取り用印刷部及び非可視光読み取り用印刷部の重複部である重複印刷部によって形成されている第3の識別コード3、
が示されている。
【0184】
このカードで用いられている可視光読み取り用インクは、可視光で読み取り可能なものであり、したがって通常のカメラで画像を取得すること、及び目視で視認することができる。
【0185】
図6に示す態様)
図6に示す態様では、図6(a)に示すように、可視光読み取り可能な第1の識別コード1、及び非可視光読み取り可能な第2の識別コード2が、紙等の基材に印刷されている。
【0186】
したがって、この識別コードを有する基材の可視光画像(図6(b1))及び紫外線蛍光画像(図6(c1))を取得すると、可視光画像(図6(b1))から第1の識別コード1を取得することができ、また紫外線蛍光画像(図6(c1))から第2の識別コード2を取得することができる。さらに、これらの画像を組み合わせて参照することによって、これらの識別コードの重複部によって形成されている第3の識別コード3を取得することができる。
【0187】
同様に、この識別コードを有する基材の可視光画像(図6(b2))及び赤外線画像(図6(c2))を取得すると、可視光画像(図6(b2))から第1の識別コード1を取得することができ、また赤外線画像(図6(c2))から第2の識別コード2を取得することができる。さらに、これらの画像を組み合わせて参照することによって、これらの識別コードの重複部によって形成されている第3の識別コード3を取得することができる。
【0188】
すなわち、例えば、この図6に示す態様では、基材の可視光画像(図6(b1))及び紫外線蛍光画像(図6(c1))を取得して得られる第1~第3の識別コードに基づいて、このカードが真正のカードであるか否かの一次評価をし、更に、基材の可視光画像(図6(b2))及び紫外線画像(図6(c2))を取得して得られる第1~第3の識別コードに基づいて、このカードが真正のカードであるか否かの二次評価をすることができる。
【0189】
したがって、真贋判定対象のカードに対しては、一次評価として、紫外線(UV)照射装置を用いた評価を実施し、偽造品のおそれがあると評価されたものに対してのみ、二次評価として、赤外線カメラ等の専用の機器による赤外線吸収性の評価を実施することができる。なお、一次評価では、紫外線蛍光画像(図6(c1))から第2の識別コード2を取得せずに、蛍光の有無のみを目視で確認することもできる。
【0190】
図7に示す態様)
図7に示す態様では、図7(a)に示すように、可視光読み取り可能な模様(識別コードではない)1’、及び非可視光読み取り可能な第2の識別コード2が、紙等の基材に印刷されている。
【0191】
したがって、この識別コードを有する基材の可視光画像(図7(b1))及び紫外線蛍光画像(図7(c1))を取得すると、紫外線蛍光画像(図7(c1))から第2の識別コード2を取得することができる。さらに、これらの画像を組み合わせて参照することによって、これらの識別コードの重複部によって形成されている第3の識別コード3’を取得することができる。なお、この図7で示す態様の識別コード3’は、模様の特定の位置が特定されることによって、識別コードとして機能するものである。
【0192】
同様に、この識別コードを有する基材の可視光画像(図7(b2))及び赤外線画像(図7(c2))を取得すると、赤外線画像(図7(c2))から第2の識別コード2を取得することができる。さらに、これらの画像を組み合わせて参照することによって、これらの識別コードの重複部によって形成されている第3の識別コード3’を取得することができる。
【0193】
すなわち、例えば、この図7に示す態様では、基材の可視光画像(図7(b1))及び紫外線蛍光画像(図7(c1))を取得して得られる第2及び第3の識別コードに基づいて、このカードが真正のカードであるか否かの一次評価をし、更に、基材の可視光画像(図7(b2))及び紫外線画像(図7(c2))を取得して得られる第2及び第3の識別コードに基づいて、このカードが真正のカードであるか否かの二次評価をすることができる。
【0194】
したがって、図6の態様と同様に、真贋判定対象のカードに対しては、一次評価として、紫外線(UV)照射装置を用いた一次評価を実施し、偽造品のおそれがあると評価されたものに対してのみ、二次評価として、赤外線カメラ等の専用の機器による赤外線吸収性の評価を実施することができる。なお、一次評価では、紫外線蛍光画像(図7(c1))から第2の識別コード2を取得せずに、蛍光の有無のみを目視で確認することもできる。
【0195】
《真贋判定用端末》
本開示の真贋判定用端末は、真贋判定機能を有する本開示のカードの真贋判定をするための端末である。
【0196】
この本開示の真贋判定用端末は、
可視光読み取り用印刷部の可視光画像を取得する可視光画像取得部、
非可視光読み取り用印刷部の非可視光画像を取得する非可視光画像取得部、
可視光画像から第1の識別コードを認識して第1のコード情報を取得する第1の処理部、非可視光画像から第2の識別コードを認識して第2のコード情報を取得する第2の処理部、並びに可視光画像及び非可視光画像から第3の識別コードを認識して第3のコード情報を取得する第3の処理部のうちの少なくとも2つ、並びに
コード情報に基づく真贋判定結果を表示する表示部
を有し、非可視光画像取得部が、非可視光画像として、赤外線画像及び紫外線蛍光画像の少なくとも一方を取得する。
【0197】
本開示の真贋判定用端末では、好ましくは、カードが、少なくとも、第3の識別コードを有しており、かつ真贋判定用端末が、少なくとも、第3の処理部を有している。また、本開示の真贋判定用端末では、好ましくは、可視光読み取り用インクが、非赤外線吸収性インクである。
【0198】
本開示の真贋判定用端末は、スマートフォン、タブレット、ハンディターミナル、パーソナルコンピュータ、POS(ポイント・オブ・セールス)レジ等であってよい。
【0199】
図8は、本開示の真贋判定用端末100の構成を概略的に示す図である。
【0200】
図8で示すように、本開示の真贋判定用端末100は、外部通信インターフェース(外部通信I/F)110、画像取得部120、ストレージ130、表示部140、プロセッサ190a、及びメモリ190bを有する。
【0201】
真贋判定用端末100の画像取得部120は、可視光読み取り用印刷部の可視光画像を取得する可視光画像取得部、及び非可視光読み取り用印刷部の非可視光画像を取得する非可視光画像取得部として機能するものである。
【0202】
具体的には、画像取得部120が可視光画像を取得する可視光画像取得部として機能するためには、画像取得部120は通常のカメラとしての機能を有することができる。非可視光画像取得部は、非可視光画像として、赤外線画像及び紫外線蛍光画像の少なくとも一方を取得するものである。したがって、また、画像取得部120が非可視光画像を取得する非可視光画像取得部として機能するためには、画像取得部120は、赤外線カメラであってよく、かつ/又は紫外線を撮影対象に照射することによって発生する蛍光を撮影する通常のカメラであってよい。なお、画像取得部120は、可視光画像、赤外線画像、及び紫外線蛍光画像のうちの2つ又はすべてを撮影できる単一の画像取得部であっても、それらのうちのいずれか1つのみを撮影できる画像取得部の2以上の組み合わせであってもよい。
【0203】
その可視光画像取得部及び非可視光画像取得部は、外付けの画像取得部であっても、内蔵の画像取得部であってもよい。画像取得部は外付けである場合、真贋判定用端末100の他の部分との接続は、有線又は無線で行うことができる。有線の場合、USBケーブル、ライトングケーブル等を用いて接続を行うことができる。また、無線の場合、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi等を用いて接続を行うことができる。
【0204】
真贋判定用端末100のプロセッサ190aは、必要に応じてメモリ190bと共に、可視光画像から第1の識別コードを認識して第1のコード情報を取得する第1の処理部、非可視光画像から第2の識別コードを認識して第2のコード情報を取得する第2の処理部、並びに可視光画像及び非可視光画像から第3の識別コードを認識して第3のコード情報を取得する第3の処理部として機能する。なお、プロセッサ190aは、第1~第3の処理部の処理部のうちの2又はすべてとして機能する単一のプロセッサであっても、それらのうちのいずれか1つのみとして機能するプロセッサの2以上の組み合わせであってもよい。
【0205】
具体的には、プロセッサ190aは、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有し、各種処理を実行する。なお、プロセッサ190aは、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサによる処理の詳細については、下記で図9及び図10に関して説明する。
【0206】
また、メモリ190bは、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROM)であってよい。メモリ190bは、プロセッサ190aにおいて実行されるプログラム、プロセッサ190aによって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0207】
真贋判定用端末100の外部通信インターフェース110は、真贋判定用端末に搭載された無線通信アンテナ又は真贋判定用端末に接続されたケーブルを介して、真贋判定用端末100とサーバとの間の通信を可能とする機器であってよい。外部通信インターフェース110は、例えば、データ通信モジュール(DCM(Data communication module))を含む。データ通信モジュールは、インターネットを介して、サーバと通信するものであってよい。
【0208】
真贋判定用端末100のストレージ装置130は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)又は光記録媒体を有する。ストレージ装置130は、各種データを記憶し、例えばプロセッサ190aが各種処理を実行するためのコンピュータプログラム等を記憶する。コンピュータプログラムは、光記録媒体又は磁気記録媒体のような記録媒体に記録されて配布されてもよく、またインターネットを介して配布されてもよい。
【0209】
真贋判定用端末100は、ヒューマンマシンインタフェース(HMI(Human Machine Interface))を備えることができる。HMIは、真贋判定用端末100とその使用者との間で情報の入出力を行う入出力装置である。HMIは、例えば、情報を表示するディスプレイ、音を発生させるスピーカ、使用者が入力操作を行うための操作ボタン又はタッチスクリーン、使用者の音声を受信するマイクロフォン等を含む。HMIは特に、表示部120、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等であってよい。
【0210】
本開示の真贋判定用端末による真贋判定は、図9及び図10のフローチャートで示すようにして行うことができる。
【0211】
具体的には、図9のフローチャートで示す態様では、判定を開始し(S10)、可視光画像取得部で可視光読み取り用印刷部の可視光画像を取得し(S21)、非可視光画像取得部で非可視光読み取り用印刷部の非可視光画像を取得し(S22)、そして第1の処理部で可視光画像から第1のコード情報を取得すること、第2の処理部で非可視光画像から第2のコード情報を取得すること、及び第3の処理部で可視光画像及び非可視光画像から第3のコード情報を取得することのうちの2つを実施する(S32)。
【0212】
その後、取得した2つのコード情報のうちの1つで真贋判定を行い(S41)、コード情報が真正であると判定された場合には、カードが真正であるとの仮判定を行い、次のステップ(S42)に進む。また、この真贋判定ステップ(S41)において、コード情報が真正であることが示されない場合、又は前のステップ(S32)において有意な識別コードが取得できていなかった場合には、カードが非真正であると判定して(S52)、処理を終了する(S60)。
【0213】
前の真贋判定ステップ(S41)でカードが真正であるとの仮判定がされた場合、取得した2つのコード情報のうちの他の1つで真贋判定を行い(S42)、コード情報が真正であると判定された場合には、カードが真正であるとの判定を行い、処理を終了する(S60)。また、この真贋判定ステップ(S42)において、コード情報が真正であることが示されない場合、又は前のステップ(S32)において有意な識別コードが取得できていなかった場合には、カードが非真正であると判定して(S52)、処理を終了する(S60)。
【0214】
すなわち、図9のフローチャートで示す態様では、2つの段階でカードが真正であるか否かを判断することができる。また、この態様は、非可視光画像として、赤外線画像及び紫外線蛍光画像の少なくとも一方を用いて実施することができる。
【0215】
図9のフローチャートで示す態様では、第1~第3の識別コードのうちの2つを取得し、それに基づいて真贋判定を行っているのに対して、図10のフローチャートで示す態様では、第1~第3の識別コードのすべてを取得し、それに基づいて真贋判定を行っている。
【0216】
具体的には、図10のフローチャートで示す態様では、判定を開始し(S10)、可視光画像取得部で可視光読み取り用印刷部の可視光画像を取得し(S21)、非可視光画像取得部で非可視光読み取り用印刷部の非可視光画像を取得し(S22)、そして第1の処理部で可視光画像から第1のコード情報を取得すること、第2の処理部で非可視光画像から第2のコード情報を取得すること、及び第3の処理部で可視光画像及び非可視光画像から第3のコード情報を取得することのすべてを実施する(S33)。
【0217】
その後、取得した3つのコード情報のうちの1つで真贋判定を行い(S41)、コード情報が真正であると判定された場合には、カードが真正であるとの仮判定を行い、次のステップ(S42)に進む。また、この真贋判定ステップ(S41)において、コード情報が真正であることが示されない場合、又は前のステップ(S33)において有意な識別コードが取得できていなかった場合には、カードが非真正であると判定して(S52)、処理を終了する(S60)。
【0218】
前の真贋判定ステップ(S41)でカードが真正であるとの仮判定がされた場合、取得した3つのコード情報のうちの他の1つで真贋判定を行い(S42)、コード情報が真正であると判定された場合には、カードが真正であるとの仮判定を行い、次のステップ(S43)に進む。また、この真贋判定ステップ(S42)において、コード情報が真正であることが示されない場合、又は前のステップ(S33)において有意な識別コードが取得できていなかった場合には、カードが非真正であると判定して(S52)、処理を終了する(S60)。
【0219】
前の真贋判定ステップ(S42)でカードが真正であるとの仮判定がされた場合、取得した3つのコード情報のうちの残りの1つで真贋判定を行い(S43)、コード情報が真正であると判定された場合には、カードが真正であるとの判定を行い(S51)、処理を終了する(S60)。また、この真贋判定ステップ(S43)において、コード情報が真正であることが示されない場合、又は前のステップ(S33)において有意な識別コードが取得できていなかった場合には、カードが非真正であると判定して(S52)、処理を終了する(S60)。
【0220】
すなわち、図10のフローチャートで示す態様では、3つの段階でカードが真正であるか否かを判断することができる。また、この態様は、非可視光画像として、赤外線画像及び紫外線蛍光画像の少なくとも一方を用いて実施することができる。
【0221】
なお、カードが真正であるか否かの判定は、端末が真正のコード情報に関するデータベースをストレージに有する場合には、そのデータベースに基づいて行うことができ、また端末が外部通信インターフェースを有する場合には、外部通信インターフェースを介して真正のコード情報に関するデータベースを有するサーバにアクセスして行うことができる。また、カードが真正であるか否かの判定は、コード情報が予め定められたルールに沿っているかを判断することによって行うこともできる。
【0222】
《真贋判定用ソフトウェア》
本開示の真贋判定用ソフトウェアは、本開示の真贋判定用端末のための真贋判定用ソフトウェアであって、
可視光画像取得部に可視光読み取り用印刷部の可視光画像を取得させ、
非可視光画像取得部に非可視光読み取り用印刷部の非可視光画像を取得させ、かつ
第1の処理部に可視光画像から第1の識別コードを認識させて第1のコード情報を取得させること、第2の処理部に非可視光画像から第2の識別コードを認識させて第2のコード情報を取得させること、及び第3の処理部に可視光画像及び非可視光画像から第3の識別コードを認識させて第3のコード情報を取得させることのうちの少なくとも2つを行わせる。
【0223】
本開示の真贋判定用ソフトウェアの詳細については、本開示の真贋判定用端末に関する記載を参照できる。
【0224】
《真贋判定用システム》
本開示の真贋判定用システムは、
本開示の真贋判定用端末、並びに
真贋判定装置と通信可能に設けられ、コード情報を真贋判定用端末から受信し、受信したコード情報に基づいて真贋判定を行い、真贋判定の結果を真贋判定用端末に送信する、サーバ、
を備えている。
【0225】
これによれば、本開示のカード、及び/又は本開示のカードと共に流通する製品のトレーサビリティを改良することができる。
【0226】
本開示の真贋判定用システムでは、好ましくは、サーバが、更に、真贋判定に関する情報を、受信したコード情報に関連付けて、データベースに記録する。ここで、この「真贋判定に関する情報」としては、流通過程情報、例えば真贋判定がなされた日時、回数、端末のIDを挙げることができる。
【0227】
これによれば、本開示のカードのトレーサビリティを改良することができる。特に、端末によるコード読取を流通の各過程で行うことで、流通管理に活用できる。例えば、流通拠点での入出荷時、店舗での販売時に読み取ることで、偽造品の流入を防ぎ、流通履歴を記録することが可能である。また、横流し、盗難のような不正流通が発生した際、不正流通品を入手し、コードを読み取ることで、どの段階で正規ルートを外れたか追跡することが出来る。
【0228】
なお、従来、不正流通品は、出所が分からないようにロットナンバーやシリアルナンバーが削り取られる等の改ざんが行われていた。これに対して、本開示のカードを使用すれば、コードが目視で確認できない為、改ざんされるリスクを著しく低下させることが出来る。仮に気づかれたとしても、材料が非常に限定されるため、偽造も困難である。仮に、タングステン系赤外線吸収性顔料以外の材料(例えば、赤外線吸収性と透明性が比較的低いアンチモンドープ酸化スズ(ATO)系赤外線吸収性顔料、スズドープ酸化インジウム(ITO)系赤外線吸収性顔料等)を用いたインクを使用して不可視コードを作製した場合、目視で見えてしまうという問題がある。
【0229】
本開示の真贋判定用システムは、好ましくは
2又はそれよりも多くの真贋判定用端末を含み、
真贋判定用端末のうちの第1の真贋判定用端末が、非可視光画像として、赤外線画像及び紫外線蛍光画像の少なくとも一方のみ、特に紫外線蛍光画像のみを取得し、
真贋判定用端末のうちの第2の真贋判定用端末が、非可視光画像として、赤外線画像及び紫外線蛍光画像の両方、又は赤外線画像及び紫外線蛍光画像のうちの、第1の真贋判定用端末では得ていない方を取得する。
【0230】
これによれば、第1の真贋判定用端末を一次的な真贋判定装置として用い、かつ第2の真贋判定用端末を二次的な真贋判定装置として用いることによって、真贋判定を二段階でより慎重に行うことができる。また、紫外線蛍光画像は、紫外線ライトを用いて比較的容易に得ることができるので、第1の真贋判定用端末を紫外線蛍光画像のみを取得する端末とすることによって、通常は第1の真贋判定用端末で真贋判定をしておき、より慎重な真贋判定が必要になったときに、赤外線画像を取得できる第2の真贋判定用端末を用いて、真贋判定を行うことができる。
【0231】
図11は、本開示の真贋判定用端末システムで用いられるサーバ200の構成を概略的に示す図である。
【0232】
図11で示すように、本開示の真贋判定用サーバ200は、外部通信インターフェース(外部通信I/F)210、ストレージ230、プロセッサ290a、及びメモリ290bを有する。
【0233】
真贋判定用サーバ200のプロセッサ290aは、必要に応じてメモリ290bと共に、真贋判定装置から受信したコード情報に基づいて真贋判定を行い、真贋判定の結果を真贋判定用端末に送信する。
【0234】
真贋判定用サーバ200で用いる外部通信インターフェース(外部通信I/F)210、ストレージ230、プロセッサ290a、及びメモリ290bの詳細については、真贋判定用端末に関する記載を参照できる。
【0235】
この本開示の真贋判定用システムによる真贋判定は、図12のシーケンス図で示すようにして行うことができる。
【0236】
すなわち、この図12にシーケンス図を示す態様では、本開示の真贋判定用端末100は、可視光画像及び赤外線画像から、又は可視光画像及び紫外線蛍光画像から、コード情報を取得し(S110)、そして取得したコード情報を真贋判定用サーバ200に送信する(S120)。その後、真贋判定用端末100からコード情報を受け取った真贋判定用サーバ200は、このコード情報に基づいて真贋判定を行い(S210)、必要に応じて判定結果をデータベースに登録し(S220)、そして判定結果を真贋判定用端末100に送信する(S230)。真贋判定用サーバ200から判定結果を受け取った真贋判定用端末100は、その判定結果を表示装置に表示することができる(S130)。
【0237】
真贋判定用端末のうちの第1の真贋判定用端末が、非可視光画像として、紫外線蛍光画像のみを取得し、かつ真贋判定用端末のうちの第2の真贋判定用端末が、非可視光画像として、赤外線画像及び紫外線蛍光画像の両方、又は赤外線画像を取得する場合、本開示の真贋判定用システムによる真贋判定は、図13のシーケンス図で示すようにして行うことができる。
【0238】
すなわち、この図13にシーケンス図を示す態様では、始めに、第1の真贋判定用端末101は、非可視光画像としての紫外線蛍光画像からコード情報を取得し(S111)、そして取得したコード情報を真贋判定用サーバ200に送信する(S121)。その後、第1の真贋判定用端末101からコード情報を受け取った真贋判定用サーバ200は、このコード情報に基づいて真贋判定を行い(S211)、必要に応じて判定結果をデータベースに登録し(S221)、そして判定結果を真贋判定用端末101に送信する(S231)。真贋判定用サーバ200から判定結果を受け取った第1の真贋判定用端末101は、その判定結果を表示装置に表示することができる(S131)。
【0239】
また、この図13にシーケンス図を示す態様では、第2の真贋判定用端末102は、非可視光画像としての赤外線画像及び紫外線蛍光画像の両方、又は非可視光画像としての赤外線画像からコード情報を取得し(S112)、そして取得したコード情報を真贋判定用サーバ200に送信する(S122)。その後、第2の真贋判定用端末102からコード情報を受け取った真贋判定用サーバ200は、このコード情報に基づいて真贋判定を行い(S212)、必要に応じて判定結果をデータベースに登録し(S222)、そして判定結果を真贋判定用端末102に送信する(S232)。真贋判定用サーバ200から判定結果を受け取った第2の真贋判定用端末102は、その判定結果を表示装置に表示することができる(S132)。
【実施例0240】
以下、実施例及び比較例等により、本開示のカードで用いることができる非可視光読み取り用インクの例を更に詳細に説明するが、本開示はこれらによって限定されるものではない。
【0241】
<材料>
実施例及び比較例等で用いた材料を、以下に示す。
(1)タングステン系赤外線吸収性顔料
・セシウム酸化タングステン(CWO)分散液(YMS-01A-2、住友金属鉱山株式会社):CWO含有率25質量%
六方晶Cs0.33WO:25質重量%
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:58.9質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:1.86質量%
酢酸ブチル:1.74質量%
分散剤:12.5質量%
【0242】
(2)紫外線吸収性蛍光顔料
・有機蛍光顔料(ルミコール(登録商標)1000、日本蛍光化学、キナゾロン誘導体、白色粉体)
【0243】
(3)紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂
・ルクシディア(登録商標)WLS-373、DIC株式会社:アクリロイル基数6個/1分子中、樹脂分100%
・ルクシディア(登録商標)V-4260、DIC株式会社:アクリロイル基数3個/1分子中、樹脂分99%以上
・ルクシディア(登録商標)V-4263、DIC株式会社:アクリロイル基数3個/1分子中、樹脂分99%以上
【0244】
(4)ウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂
・アクリルモノマー(BESTCURE分散用UVモノマー、株式会社T&K TOKA):感光性モノマー100%
【0245】
(5)溶剤に可溶なアクリル樹脂
・アクリル樹脂(アクリディック(登録商標)A-814、DIC株式会社)
アクリル樹脂(Tg:85℃):50質量%
トルエン:42.5質量%
酢酸エチル:7.5質量%
【0246】
(6)光重合開始剤
・光ラジカル開始剤(IRGACURE(登録商標)500、BASF株式会社)
【0247】
<実施例1>
(A)タングステン系赤外線吸収性顔料として、セシウム酸化タングステン(CWO)分散液(YMS-01A-2、住友金属鉱山株式会社)を10.0g、(B)紫外線吸収性蛍光顔料(UV-FP)として、有機蛍光顔料(ルミコール(登録商標)1000、日本蛍光化学、キナゾロン誘導体、白色粉体)を2.5g、(C)紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂として、ルクシディア(登録商標)WLS-373(DIC株式会社)を5.0g、(D)ウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂として、アクリルモノマー(BESTCURE分散用UVモノマー、株式会社T&K TOKA)を30.0g、更に、(G)光重合開始剤として、IRGACURE(登録商標)500(BASF株式会社)を混合して、非可視光読み取り用インクを作製した。
【0248】
なお、(G)光重合開始剤は、(C)紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂と、ウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂との合計100質量部に対して、4質量部となるように添加した。
【0249】
<実施例2~8及び比較例1~4>
成分の配合比を表1に記載のように変更して、比較例1~4のインクを作製した。なお、(G)光重合開始剤の配合量は、実施例1と同様に、(C)紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂と、(D)ウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂との合計100質量部に対して、4質量部となるようにした。
【0250】
比較例1においては、セシウム酸化タングステン(CWO)分散液(YMS-01A-2、住友金属鉱山株式会社)と紫外線硬化型アクリル系単量体とが混ざらず、分離が起こり、セシウム酸化タングステンが沈降した。このため、インクとして用いることができなかった。
【0251】
<評価>
(カードの作製)
基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(CD942、KOLON INDUSTRIES,INC.)と、紙(OCR用紙、王子製紙株式会社)とを準備した。各実施例及び比較例で作製したインクを、それぞれの基材に、ワイヤーバーを用いて塗工量7.5g/mで塗工し、80℃で熱乾燥の後、紫外線照射により硬化し、カードを得た。得られたカードを、2.5cm×4cmのサイズにカットした。
【0252】
(赤外線反射率の測定)
得られたカードにつき、UV-vis反射スペクトル測定器(紫外可視近赤外分光光度計UH4150、株式会社日立ハイテクサイエンス)を使用し、JIS K 0115に準拠して、赤外線の反射率を測定した。各試験片について、測定回数は3回(N数=3)とした。なお、赤外線反射率は、数値が低いほど、赤外線吸収率が高いことを意味している。波長1000nmにおける赤外線反射率を、表1に示す。
【0253】
(蛍光強度の測定)
JIS K 0120に準拠して、得られたカードに対して波長365nmの光を照射し、日本分光製FP-6600を用いて蛍光強度の測定を実施した。蛍光強度は、スペクトルの波長522nmにおける値から算出した。各試験片について、測定回数は3回(N数=3)とした。結果を、表1に示す。
【0254】
なお、実施例5、6、及び8における蛍光強度測定は、使用した測定器の測定レンジに合わせるため、光線透過率約14%の減光板を使用して行った。
【0255】
(耐洗濯試験)
続いて、作成したカードに対して、耐洗濯性試験を実施した。具体的には、カードを温度90℃の水溶液に30分間浸漬した。水溶液は、蒸留水に0.5質量%の洗濯用洗剤(アタック(商標)、花王株式会社)、及び1質量%の炭酸ナトリウムを加えて調製した。浸漬後は、水洗し、乾燥させた。
【0256】
(耐洗濯試験後の赤外線反射率の測定)
耐洗濯性試験後のカードに対して、上記と同様にして、赤外線反射率を測定した。波長1000nmにおける赤外線反射率を、表1に示す。
【0257】
(耐洗濯試験後のタングステン系赤外線吸収性顔料の残存率)
耐洗濯試験前の波長1000nmにおける赤外線反射率と、耐洗濯試験後の波長1000nmにおける赤外線反射率を用いて、以下の式により、耐洗濯試験後のタングステン系赤外線吸収性顔料の残存率を求めた。結果を、表1に示す。なお、得られたタングステン系赤外線吸収性顔料の残存率は、赤外線吸収機能がどれだけ維持できたかを判断する指標となる。
顔料残存率(%)=(100-試験後の赤外線反射率)/(100-試験前の赤外線反射率)×100
【0258】
(赤外線カメラ観察)
耐洗濯性試験後のカードを、赤外線カメラにて観察した。観察に際しては、赤外線照明に波長940nmの赤外LEDを使用し、820nm以下の波長の光をカットするためのフィルターを用いた。25万画素の画素数、水平67°及び垂直47°のレンズ画角、並びに22×18mmの描画範囲の観察条件にて観察し、以下の評価基準で判定した。結果を、表1に示す。
AA:塗工部を極めてはっきり判別できる。
A:塗工部をはっきり判別できる。
B:非塗工部と塗工部とを直接対比観察すれば塗工部を判別できる。
C:非塗工部と塗工部とを直接対比観察しても塗工部を判別できない。
【0259】
(耐洗濯試験後の蛍光強度の測定)
耐洗濯性試験後のカードに対して、上記と同様にして、蛍光強度の測定を実施した。結果を、表1に示す。
【0260】
(耐洗濯試験後の紫外線吸収性蛍光顔料の残存率)
耐洗濯試験前の波長522nmにおける蛍光強度と、耐洗濯試験後の波長522nmにおける蛍光強度を用いて、以下の式により、耐洗濯試験後の紫外線吸収性蛍光顔料の残存率を求めた。結果を、表1に示す。なお、得られた紫外線吸収性蛍光顔料の残存率は、紫外線吸収性蛍光顔料がどれだけ維持できたかを判断する指標となる。
蛍光強度残存率(%)=(試験後の値)/(試験前の値)×100
【0261】
(紫外線照射観察)
耐洗濯性試験後のカードに、波長375nmのUVライトを照射し、蛍光発光の状態を、以下の評価基準で目視にて判定した。結果を、表1に示す。
A:塗工部をはっきり判別できる。
C:非塗工部と塗工部とを直接対比観察しても塗工部を判別できない。
【0262】
【表1】
【0263】
【表2】
【0264】
【表3】
【0265】
紫外線吸収性蛍光顔料のみが配合されたインクである比較例2は、耐洗濯試験の後も蛍光強度が非常に良好であるが、紫外線吸収性蛍光顔料とタングステン系赤外線吸収性顔料とを併用したインクである比較例3は、耐洗濯試験の後の蛍光強度が著しく低下している結果となった。すなわち、紫外線吸収性蛍光顔料の耐洗濯性は、タングステン系赤外線吸収性顔料の存在により、著しく低下することが判る。
【0266】
しかしながら、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を含有する実施例1~8は、耐洗濯試験の後も、赤外吸収性能及び蛍光強度の両者を維持している結果となった。これは、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が有するウレタン結合によって水素結合が形成され、タングステン系赤外線吸収性顔料の周囲及び紫外線吸収性蛍光顔料の周囲に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂による樹脂被膜が形成されたためと考えられる。
【0267】
<参考例1~10、比較参考例1~3>
成分の配合比を表2に記載のように変更して、参考例1~10、及び比較参考例1~3のインクを作製した。なお、光重合開始剤の配合量は、実施例1と同様に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂と、ウレタン基を含まない紫外線硬化型アクリル樹脂の合計100質量部に対して、4質量部となるようにした。
【0268】
比較参考例2で使用した溶剤に可溶なアクリル樹脂(アクリディック(登録商標)A-814、DIC株式会社)は、高粘度であったため、同量の酢酸エチルを用いて希釈し、その後、セシウム酸化タングステン(CWO)分散液(YMS-01A-2、住友金属鉱山株式会社)と混合して配合した。
【0269】
比較参考例1においては、セシウム酸化タングステン(CWO)分散液(YMS-01A-2、住友金属鉱山株式会社)と紫外線硬化型アクリル系単量体とが混ざらず、分離が起こり、セシウム酸化タングステンが沈降した。このため、インクとして用いることができない状況となった。
【0270】
比較参考例3においては、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂の比率が高いため、得られた組成物の粘度が高すぎて、インクとして用いることができなかった。
【0271】
<評価>
実施例1と同様にしてカードを作製し、実施例1と同様にして、耐洗濯試験前後それぞれについて、赤外線反射率の測定を実施するとともに、洗濯後のタングステン系赤外線吸収性顔料の残存率を算出した。また、実施例1と同様にして、耐洗濯性試験後のカードについて赤外線カメラにて観察し、評価を実施した。結果を、表2に示す。
【0272】
(粘度の測定)
得られたインクの粘度を、音叉振動式粘度計(SV-1A(固有振動数30Hz)、株式会社エー・アンド・デイ))を用いて、JIS Z 8803に準拠して、表2に示す温度にて測定した。なお、測定サンプルは、5mLとした。結果を、表2に示す。
【0273】
【表4】
【0274】
【表5】
【0275】
【表6】
【0276】
【表7】
【0277】
参考例1~10のタングステン系赤外線吸収性顔料の残存率は、比較参考例2と比較して、ポリエチレンテレフタレートフィルム塗工、及びOCR塗工ともに、高い数値となっており、参考例1~10は、耐洗濯性について顕著に高い効果を有する結果となった。これは、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が有するウレタン結合によって水素結合が形成され、タングステン系赤外線吸収性顔料の周囲に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂による強固な樹脂被膜が形成されたためと考えられる。
【0278】
参考例1と、参考例2及び3との比較により、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が有するアクリロイル基の数が多いほうが、ポリエチレンテレフタレートフィルム塗工、及びOCR塗工の双方ともに、タングステン系赤外線吸収性顔料の残存率が高いことが判る。これは、アクリロイル基数の多い紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂のほうが、カードを形成したときの架橋密度が高くなるため、耐洗濯性が向上していると考えられる。
【0279】
また、粘度が60mPa・s以下である参考例のインクは、インクジェットインク用として問題なく使用することができた。
【符号の説明】
【0280】
1 第1の識別コード
1’ 模様
2 第2の識別コード
3、3’ 第3の識別コード
100、101、102 本開示の真贋判定用端末
200 本開示の真贋判定用システムで用いられるサーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13