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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177531
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】雨水排水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/068 20060101AFI20241212BHJP
   E04D 13/08 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E04D13/068 503A
E04D13/08 301A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024176980
(22)【出願日】2024-10-09
(62)【分割の表示】P 2021088936の分割
【原出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 舞
(57)【要約】
【課題】下屋よりも上方の屋根からの雨水が流れる縦管からの雨水で下屋の軒樋が破損することを防止でき、地上に雨水を導く縦樋の数も少なくし易い雨水排水構造を提供すること。
【解決手段】雨水排水構造1が、下屋の軒先に取り付けられ、貫通孔50a及び落とし口72を有する軒樋10と、下屋よりも上方の屋根からの雨水を流下させる上流側竪樋5と、貫通孔50aの下方に垂設される垂設管20及び落とし口72からの水を下方に流動させる分岐管25を有する下流側竪樋70を備える。垂設管20が、分岐管25の片側端部が接続されて上流側竪樋5からの雨水と分岐管25からの雨水とを合流させると共に上流側竪樋5よりも大径になっている枝管28を有する。上流側竪樋5の少なくとも一部が、貫通孔50aに対して相対移動可能な状態で貫通孔50a内に遊嵌されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下屋を備える建物に設置されて雨水を排水する雨水排水構造であって、
前記下屋の軒先に取り付けられ、貫通孔及び落とし口を有する軒樋と、
前記下屋よりも上方の屋根からの雨水を流下させる上流側竪樋と、
前記貫通孔の下方に垂設される垂設管、及び前記落とし口からの水を下方に流動させる分岐管を有し、前記上流側竪樋からの雨水と前記落とし口からの雨水とを合流して流下させる下流側竪樋と、を備え、
前記垂設管は、前記分岐管の片側端部が接続されて上流側竪樋からの雨水と前記分岐管からの雨水とを合流させると共に、前記上流側竪樋よりも大径になっている合流部を有し、
前記上流側竪樋の少なくとも一部が、前記貫通孔に対して相対移動可能な状態で前記貫通孔内に遊嵌されている、雨水排水構造。
【請求項2】
前記軒樋は、前記軒樋の高さ方向に延在する筒状部を有し、
前記貫通孔は、前記筒状部に設けられる、
請求項1に記載の雨水排水構造。
【請求項3】
前記垂設管の上端部が前記筒状部の下端部に接続されて固定されている、
請求項2に記載の雨水排水構造。
【請求項4】
前記垂設管の上端が、前記筒状部の下端より上方に位置する、
請求項2又は3に記載の雨水排水構造。
【請求項5】
前記垂設管の上端部が、前記軒樋の底壁下面に接触している、
請求項1、2又は4に記載の雨水排水構造。
【請求項6】
前記上流側竪樋が、前記合流部内に挿入されている挿入部を含む、請求項1から5のいずれか1つに記載の雨水排水構造。
【請求項7】
前記垂設管の上端部の内径が、合流部の最大内径よりも小さくなっており、
前記垂設管の上端部の建物の壁部からの出寸法と前記合流部の建物の壁部からの出寸法とが略一致するように、前記垂設管の上端部の径中心が前記合流部の最大内径部の径中心に対して偏芯している、
請求項1から6のいずれか1つに記載の雨水排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、下屋を備える建物において雨水を排水する雨水排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水排水構造としては、特許文献1に記載されているものがある。図10に示すように、その雨水排水構造601は、這樋と称されて下屋620に沿うように配置される筒状の樋体604を有する。この筒状の樋体604は、階上屋根610に降り注いだ雨水を下方に案内するのに用いられる。この筒状の樋体604の下端は、略L字型に屈曲し、屈曲した部分の先端は、下屋(階下屋根)620の軒樋605内に配置される。この雨水排水構造601は、階上屋根610の雨水を階下の軒樋605に合流させて排水するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-71871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雨水排水構造601では、階上屋根610に降り注いだ雨水を下屋620の軒樋605に放出するようになっているので、雨水を階上屋根610から直接地上まで導く縦樋を削減でき、地上付近に位置すると邪魔になり易い縦樋の数を少なくし易い。しかし、雨水排水構造601において、排水量が多くなって、雨水が筒状の樋体604内を隙間が少ない状態で通過してサイフォン現象が発生すると、下屋の軒樋605が上方から合流する雨水の高い水圧によって破損する虞があり、軒樋605内の雨水が跳ね上がって軒樋605から溢れる虞もある。
【0005】
そこで、本開示の目的は、下屋よりも上方の屋根からの雨水が流れる縦管からの雨水で下屋の軒樋が破損することを防止でき、地上に雨水を導く縦樋の数も少なくし易い雨水排水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る雨水排水構造は、下屋を備える建物に設置されて雨水を排水する雨水排水構造であって、下屋の軒先に取り付けられ、貫通孔及び落とし口を有する軒樋と、下屋よりも上方の屋根からの雨水を流下させる上流側竪樋と、貫通孔の下方に垂設される垂設管、及び落とし口からの水を下方に流動させる分岐管を有し、上流側竪樋からの雨水と落とし口からの雨水とを合流して流下させる下流側竪樋と、を備え、垂設管は、分岐管の片側端部が接続されて上流側竪樋からの雨水と分岐管からの雨水とを合流させると共に、上流側竪樋よりも大径になっている合流部を有し、上流側竪樋の少なくとも一部が、貫通孔に対して相対移動可能な状態で貫通孔内に遊嵌されている。
【0007】
なお、本明細書において、鉛直方向に関する文言、例えば、水平方向、上方、下方、上側、下側等が用いられた場合、その文言は、雨水排水構造が下屋を有する建物に適切に設置された状態で表現されているものとする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る雨水排水構造によれば、下屋よりも上方の屋根からの雨水が流れる縦管からの雨水で下屋の軒樋が破損することを防止でき、地上に雨水を導く縦樋の数も少なくし易い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る雨水排水構造を側方から見たときの側方図であり、雨水排水構造の立壁のみを断面で示している側方図である。
図2】雨水排水構造における立壁周辺の拡大斜視図である。
図3】立壁の中心軸と軒樋の幅方向とを含む平面で、雨水排水構造における立壁周辺を切断したときの断面図である。
図4】変形例の雨水排水構造における図1に対応する側方図である。
図5】他の変形例の雨水排水構造における図1に対応する側方図である。
図6】別の変形例の雨水排水構造における図1に対応する側方図である。
図7】第2実施形態の雨水排水構造における図1に対応する側方図である。
図8】第2実施形態の雨水排水構造の下流側竪樋を鉛直方向上側から見たときの模式平面図であり、垂設管の上端の内径と、枝管において分岐管が接続されている箇所の内径とを説明するための模式図である。
図9】(a)は、第2実施形態の雨水排水構造の下流側竪樋を、図8に矢印Aで示す方向から見たときの下流側竪樋の側面図であり、(b)は、垂設管の上端部の径中心が枝管の最大内径部の径中心に対して偏芯していない点のみが(a)に示す下流側竪樋と異なる下流側竪樋における(a)に対応する側面図である。
図10】従来の雨水排水構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、本明細書で、「略~」という要件は、人がだいたい~のように見えれば満たされる。例を挙げれば、「略鉛直方向に延在する」という要件は、人が鉛直方向に延在していると認識できれば満たされる。
【0011】
また、以下の説明で、鉛直方向に関係する文言、例えば、水平方向、上側、下側、水平、上方、又は下方等を用いた場合、その文言は、雨水排水構造1,101,201,301,401,501が、建物に適切に設置されている状態で表現されている。また、以下の説明で、特別な説明を行わずに、単に2つの管を接続すると言及した場合、2つの管は、接着剤や圧入部等で構成される固定部によって接続されているものとする。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る雨水排水構造1を側方から見たときの側方図であり、雨水排水構造1の立壁50のみを断面で示している側方図である。この雨水排水構造1は、図10で図示した建物と同様の構造を有する建物、すなわち、階上屋根と、階上屋根よりも下方に位置する下屋(階下屋根)を含む建物に設置される。
【0013】
図1に示すように、雨水排水構造1は、上流側竪樋5、軒樋10、及び下流側竪樋70を備える。軒樋10は、軒樋本体15と、筒状部としての立壁50を有する。軒樋本体15は、下屋の軒先に沿って延在し、下屋に降り注いだ雨を収容する。軒樋本体15は、その延在方向の間隔をおいた複数個所において耳部11a,11b(図3参照)を図示しない吊金具を用いて下屋の軒先に固定することで軒先に設置される。
【0014】
図示しないが、上流側竪樋5は、雨水排水構造1が設置されている建物に図10に示す排水管構造と同様の構造で設置されている。詳しくは、雨水排水構造1は、上流側竪樋5を備え、上流側竪樋5は、階上屋根の軒樋から建物の壁部に沿って鉛直方向下方に延びる上側排水管(図10に参照番号603で示す排水管に対応する排水管)を含む。また、上流側竪樋5は、その上側排水管に接続されると共に下屋に沿うように下側に延びる下側排水管(図10に参照番号604で示す排水管に対応する排水管)を含む。
【0015】
階上屋根に降り注いだ雨水は、上流側竪樋5に案内されることで、建物の壁部に沿って鉛直方向下側に流下し、その後、下屋に沿うように下屋の軒先周辺まで流下する。上流側竪樋5の下側端部は、延在方向を変更する配管部、例えば、図示しない45°エルボ等を含む。このことから、図1に示すように、上流側竪樋5の下側端部5aは、略鉛直方向に延在する。下側端部5aの一部は、立壁50の内周面に対して遊嵌している状態で立壁50内に収容される。
【0016】
軒樋本体15は、その底板部14に貫通孔14aを有する。立壁50は、軒樋本体15における貫通孔14aの縁部に取り付けられる。立壁50は、筒状の形状を有し、略鉛直方向(軒樋本体15の高さ方向)に延在する。立壁50は、軒樋本体15内の雨水が貫通孔14aを介して外部に漏れることを抑制する。立壁50の構造については、後で図2図3を用いて詳細に説明する。
【0017】
下流側竪樋70は、垂設管20、及び分岐管25を有する。垂設管20は、立壁50の貫通孔50aの下方に垂設される。詳しくは、垂設管20は、軒樋本体15の下側から地上まで略鉛直方向に延在して、階上屋根に降り注いだ雨水を地上に案内するのに用いられる。垂設管20は、第1縦管22、接続管26、合流部を構成する枝管28、及び第2縦管30を含む。それらの管22,26,28,30は、塩化ビニル等の樹脂材料で構成されてもよく、鋳鉄等の金属材料で構成されてもよい。
【0018】
第1縦管22は、略鉛直方向に延在する。第1縦管22の上端部の内周面は、立壁50の下側端部の外周面に固定されて接続される。これにより、立壁50内を流れる雨水が、外部に漏れることを防止でき、軒樋10の貫通孔14aを通過した雨水が外部に漏れることを略防止できる。接続管26は、略鉛直方向に延在する。接続管26は、その上端部が、第1縦管22の下端部に接続される。第1縦管22及び接続管26の夫々は、VP管やVU管等で構成される。
【0019】
枝管28は、二股に分岐するT字継手(90°Y管)で構成され、異なる2つの経路で上方から流下してきた雨水を合流させる機能を有する。枝管28は、略鉛直方向に延びる主管部28aと、枝管部28bを有し、枝管部28bは、主管部28aの延在方向の中央部から略水平方向に延在する。主管部28aの上側端部は、接続管26の下側端部に接続され、第2縦管30の上端部は、主管部28aの下端部に接続される。第2縦管30は、鉛直方向に延在して、主管部28aからの雨水を地上55まで案内する。
【0020】
上流側竪樋5の下側端部5aの一部は、立壁50の内周面に遊嵌している状態で立壁50内に収容され、下側端部5aの内径は、立壁50の内径よりも小さくなっている。一方、第1縦管22の上端部の内周面は、立壁50の下側端部の外周面に固定されている。したがって、第1縦管22の内径を下側端部5aの内径よりも大きくできる。第1縦管22の内径、主管部28aの内径、及び第2縦管30の内径は、下側端部5aの内径よりも大きくなっている。
【0021】
垂設管20の内径が下側端部5aの内径よりも大きくなっているので、雨水が上流側竪樋5内を隙間が少ない状態で通過してサイフォン現象が発生したとしても、第1縦管22内を流れる雨水の水圧を下げることができる。よって、枝管部28bから流れてきた雨水が主管部28aを流れてきた雨水の水圧で跳ね返されて第2縦管30側に流れにくくなることを抑制でき、枝管部28bからの雨水を第2縦管30側に円滑に流動させることができる。
【0022】
更には、そのような構造によって、垂設管20の内径を上流側竪樋5の下側端部5aの内径よりも大きくできるので、垂設管20の一部を内径を拡大して水圧を低減するための拡径部(インクリーザ)で構成する必要がない。したがって、垂設管が拡径部を有する構造との比較において、垂設管20の長さを短くできて、雨水排水構造1をコンパクトなものにでき、雨水排水構造1の製造コストも低減できる。また、垂設管20が拡径管を有さないので、軒樋10の下側に位置して視認し易い垂設管20の外径が略変化しないようにできる。よって、スタイリッシュで美観に優れる垂設管20を構築できる。
【0023】
軒樋10は、軒樋本体15に設置された落とし口72を有する。また、分岐管25は、縦樋継手74、エルボ78、及び呼び樋80を有する。軒樋本体15の底板部14には、上記貫通孔14aとは別の貫通孔14bが設けられている。落とし口72は、貫通孔14bを貫通するように配置され、軒樋本体15から下側に突出する略円筒状の下側部分(図示せず)を有する。落とし口72の下側部分には雄ねじが設けられている。
【0024】
縦樋継手74は、環状部材であり、上側端部に径方向に広がる円環状のフランジ74aを有する。縦樋継手74は、内周面に雌ねじを有する。落とし口72の下側部分の雄ねじに縦樋継手74の雌ねじを螺号して、縦樋継手74を落とし口72の上側部分72a側に締め付ける。そして、縦樋継手74のフランジ74aと落とし口72の上側部分72aとで貫通孔14bの環状の縁部を上下両側から挟むことで、落とし口72及び縦樋継手74を軒樋本体15に固定する。
【0025】
エルボ78の上端部は、縦樋継手74の下端部に接続される。本実施形態では、エルボ78は、90°エルボで構成される。エルボ78は、鉛直上方からの雨水の流れ方向を水平方向に変更する。呼び樋80の第1端部は、エルボ78の下端部に接続される。呼び樋80は、VP管やVU管等で構成され、略水平方向に延在する。呼び樋80の第2端部は、枝管28の枝管部28bに接続される。呼び樋80は、エルボ78からの雨水を枝管部28bに案内し、枝管28内に合流させる。なお、2つの経路で流下してきた雨水が合流する周辺箇所、すなわち、主管部28aの高さ位置の中点から、地上までの鉛直方向長さtは、如何なる長さでもよいが、3m以上の長さであると好ましい。
【0026】
落とし口72及び分岐管25の設置により、下屋からの雨水を、軒樋本体15、落とし口72、分岐管25、及び枝管部28bを介して第2縦管30内に案内できる。よって、垂設管20内を流下してきた階上屋根からの雨水と、分岐管25内を流下してきた下屋の軒樋10からの雨水を、同じ第2縦管30を介して地上まで案内でき、その結果、地上付近の縦樋の数を少なくできる。
【0027】
図2は、雨水排水構造1における立壁周辺の拡大斜視図であり、図3は、立壁50の中心軸と軒樋本体15の幅方向とを含む平面で、雨水排水構造1における立壁周辺を切断したときの断面図である。図2に示すように、立壁50は、筒状構造を有し、上流側竪樋5の下側端部5aの一部を全周に亘って覆っている。図3に示すように、立壁50の上端53は、鉛直方向(軒樋本体15の高さ方向)に関して、軒樋10において吊具を係止する耳部11a,11bの下端17近傍に位置する。ここで、高さ方向に関して、耳部11a,11bの下端17近傍を、耳部11a,11bの下端17よりも2cm高い位置から耳部11a,11bの下端17よりも5cm低い位置までの高さ範囲として定義してもよい。
【0028】
図3に示すように、立壁50は、第1立壁52と、第2立壁62を有する。第1立壁52は、軒樋10内において上流側竪樋5の下側端部5aを全周に亘って覆う第1立壁部54を含む。また、第1立壁52は、第1立壁部54の下端部に繋がる環状の上縁接触部56を含む。環状の上縁接触部56は、軒樋本体15の底面19において貫通孔14aの周囲に位置する上側環状縁部13に接触する。また、第1立壁52は、上縁接触部56の径方向の内方側の端部から貫通孔14aを通過して軒樋本体15よりも下側まで延在する第2立壁部58を含む。第2立壁部58は、軒樋本体15よりも下側に位置する部分に雄ねじ58aを有している。
【0029】
一方、第2立壁62は、軒樋10の下面において貫通孔14aの周囲に位置する下側環状縁部16に接触する環状の下縁接触部64を含む。また、第2立壁62は、下縁接触部64の径方向の内方側の端部から下側に延在すると共に雄ねじ58aに螺号する雌ねじ66aを有する第3立壁部66を有する。第1立壁52の上縁接触部56を、軒樋本体15の上側環状縁部13に当接させた状態で、第2立壁62の第3立壁部66の雌ねじ66aを鉛直方向下側から雄ねじ58aに締め込む。
【0030】
このようにして、軒樋本体15の底板部14において貫通孔14aの周縁に位置する環状の周縁部を、第1立壁52の上縁接触部56と第2立壁62の下縁接触部64とで挟持することで、貫通孔14aからの水漏れを防止しながら立壁50を軒樋本体15の底板部14に取り付ける。上流側竪樋5の下側端部5aは、立壁50に固定されず、立壁50の内周面に対して遊嵌されている。また、上流側竪樋5の下側端部5aは、垂設管20にも固定されず、垂設管20の内周面に対しても遊嵌されている。図3に示す例では、上流側竪樋5の下側端部5aの下端5bが枝管28内まで到達している。換言すると、上流側竪樋5が、枝管28内に挿入される挿入部5cを有している。
【0031】
以上、雨水排水構造1は、下屋を備える建物に設置されて雨水を排水する構造である。雨水排水構造1は、下屋の軒先に取り付けられ、貫通孔50a及び落とし口72を有する軒樋10と、下屋よりも上方の屋根からの雨水を流下させる上流側竪樋5を備える。また、雨水排水構造1は、貫通孔50aの下方に垂設される垂設管20、及び落とし口72からの水を下方に流動させる分岐管25を有する下流側竪樋70を備える。下流側竪樋70は、上流側竪樋5からの雨水と落とし口72からの雨水とを合流して流下させる。垂設管20は、分岐管25の片側端部が接続されて上流側竪樋5からの雨水と分岐管25からの雨水とを合流させると共に上流側竪樋5よりも大径になっている枝管(合流部)28を有する。そして、上流側竪樋5の少なくとも一部が、貫通孔50aに対して相対移動可能な状態で貫通孔50a内に遊嵌されている。
【0032】
本開示によれば、下屋よりも上方の階上屋根に降り注いだ雨水を流下させる上流側竪樋5の少なくとも一部が、軒樋10に設けられた貫通孔50a内に遊嵌されるので、階上屋根に降り注いだ雨水が軒樋本体15内に流入することがない。したがって、階上屋根からの雨水が流れる上流側竪樋5からの雨水で下屋の軒樋10が破損することを防止できる。
【0033】
また、落とし口72及び分岐管25によって、軒樋10からの雨水を軒樋10よりも下側の位置で垂設管20内を流れる雨水に合流させることができる。したがって、階上屋根に降り注いだ雨水を地上55に案内する垂設管20を用いて下屋の軒樋10内の雨水を地上に案内することができ、階上屋根に降り注いだ雨と、下屋に降り注いだ雨の両方を、枝管28の下端部に接続された共通の第2縦管30を用いて地上に案内することができる。よって、地上付近に位置すると邪魔になり易い縦樋の数も少なくできる。
【0034】
更には、上流側竪樋5の少なくとも一部を、貫通孔50aに対して相対移動可能な状態で貫通孔50a内に遊嵌させる構造を採用しているので、上流側竪樋5の厳密な位置合わせを行う必要がなく、雨水排水構造1の施工性を良好なものにできる。
【0035】
また、軒樋10は、軒樋10の高さ方向に延在する立壁(筒状部)50を有してよく、貫通孔50aは、立壁50に設けられてもよい。
【0036】
本構成によれば、立壁50によって、上流側竪樋5内を流下する階上屋根に降り注いだ雨水と、軒樋本体15内を流れる雨水とを明確に分離でき、上流側竪樋5からの雨水で下屋の軒樋10が破損することを更に確実に防止できる。
【0037】
また、垂設管20の上端部が立壁50の下端部に接続されて固定されてもよい。
【0038】
本構成によれば、立壁50内を下方に流動する略全ての雨水を垂設管20内に流入させることができ、軒樋10における立壁周辺からの水漏れを略防止できる。
【0039】
また、上流側竪樋5が、枝管28内に挿入されている挿入部5cを含んでもよい。
【0040】
本構成によれば、上流側竪樋5からの雨水を垂設管20内で放出することができる、よって、上流側竪樋5からの雨水の挙動を安定させ易く、上流側竪樋5からの雨水を円滑に流下させ易い。
【0041】
なお、上記雨水排水構造1では、上流側竪樋5の下端5bが、枝管(合流部)28内に位置する場合について説明した。しかし、図4、すなわち、変形例の雨水排水構造101における図1に対応する側方図に示すように、上流側竪樋105の下端105bは、垂設管20における枝管(合流部)28よりも下側の箇所に位置してもよい。このようにすれば、上流側竪樋105からの雨水と落とし口72からの雨水が枝管28内で衝突することを防止でき、それよりも下方で衝突させることができるので、落とし口72からの雨水が上流側竪樋105からの雨水との衝突によって逆流することを防止でき、2つの経路からの雨水を円滑に下方に流下させることができる。
【0042】
また、図5、すなわち、他の変形例の雨水排水構造201における図1に対応する側方図に示すように、上流側竪樋205の下端205bは、垂設管20よりも上方に位置してもよく、立壁50内に位置してもよい。このようにすれば、上流側竪樋205の長さを低減できるので、上流側竪樋205の製造コストを低減でき、ひいては、雨水排水構造201の製造コストを低減できる。
【0043】
また、垂設管20の上端部が立壁50の下端部に接続されて固定される場合について説明した。しかし、垂設管の上端部は立壁の下端部に接続されなくてもよく、当該下端部に固定されてなくてもよい。また、この場合において、図6、すなわち、別の変形例の雨水排水構造301における図1に対応する側方図に示すように、垂設管320の上端320aが、立壁50の下端より上方に設けられてもよい。また、垂設管320の上端部320bが、軒樋10の底壁下面29に接触してもよい。なお、垂設管320は、図示しない吊金具を用いて建物(図示せず)において鉛直方向に延在する壁部に固定されることで略鉛直方向に延在する。垂設管320の設置位置は、垂設管320の固定時に精密に調整されることができる。
【0044】
本構成によれば、垂設管320の上端320aが立壁50の下端より上方に位置している。したがって、図6に示すように、立壁50の下端部の外周面を垂設管320内に収容することで、立壁50を垂設管320に接続(固定)しなくても、立壁50内を通過する雨水が外部に漏れることを防止できる。
【0045】
また、垂設管320の上端部320bが、軒樋10の底壁下面29に接触して、垂設管320の上端部320bと軒樋10の底壁下面29との間に隙間が存在しない。よって、雨水排水構造301をコンパクトに構成できるだけでなく、スタイリッシュで美観に優れるものにできる。
【0046】
なお、図示はしないが、垂設管の上端が、立壁の下端に対して鉛直方向に間隔をおいた状態で立壁の下端よりも下方に位置してもよい。このような場合でも、鉛直方向の上側から見たときに、立壁の下側開口の全てが垂設管の上側開口に重なるようにすることで、立壁内を通過する雨水の殆ど全てを垂設管内に流入させることができ、立壁内を通過する雨水が外部に漏れることを略防止することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の雨水排水構造401における図1に対応する側方図である。第1実施形態の雨水排水構造1では、垂設管20が拡径部を有さない場合について説明した。しかし、図7に示すように、分岐管425からの雨水をより円滑に下流側に流すことを目的として、垂設管420が拡径部435を含むようにしてもよい。詳しくは、雨水排水構造401では、垂設管420に含まれて合流部を構成する枝管428において略鉛直方向に延びる主管部428aの上側端部が拡径部435となっている。また、拡径部435は、下側に行くにしたがって内径が徐々に大きくなっている。
【0048】
図8は、雨水排水構造401の下流側竪樋470を鉛直方向上側から見たときの模式平面図であり、垂設管420の上端の内径と、枝管428において分岐管425が接続されている箇所の内径とを説明するための模式図である。図8に示すように、雨水排水構造401では、垂設管420の上端部の内径が、枝管(合流部)428の最大内径よりも小さくなっている。そして、垂設管420の上端部の建物の壁部490からの出寸法t2と枝管(合流部)428の建物の壁部490からの出寸法t3とが略一致するように、垂設管420の上端部の径中心P1が枝管428の最大内径部の径中心P2に対して偏芯している(偏芯寸法をt4で示す)。
【0049】
図9(a)は、下流側竪樋470を、図8に矢印Aで示す方向から見たときの下流側竪樋470の側面図である。また、図9(b)は、垂設管520の上端部の径中心が枝管528の最大内径部の径中心に対して偏芯していない点のみが下流側竪樋470と異なる下流側竪樋570における図9(a)に対応する側面図である。
【0050】
図9(b)に示すように、垂設管520が拡径部535を有する場合に、垂設管520の上端部の径中心を枝管528の最大内径部の径中心に対して偏芯させないようにすると、垂設管520と壁部590との距離である出寸法t5が大きく変動するので美観が損なわれる場合がある。
【0051】
これに対し、図9(a)に示すように、垂設管420が拡径部435を有する場合に、垂設管420の上端部の径中心P1を枝管428の最大内径部の径中心P2に対して偏芯させるようにすると、垂設管420と壁部490との距離である出寸法t2(t3)を略一定にできて揃えることができる。よって、スタイリッシュで美しい垂設管420を構築できる。
【0052】
なお、垂設管420が拡径部435を有する場合に、垂設管420の上端部の径中心P1を枝管428の最大内径部の径中心P2に対して偏芯させるようにすると、タイリッシュで美しい垂設管420を構築できることを説明した。しかし、図9(b)に示すように、本開示の雨水排水構造501は、垂設管520を有してもよく、垂設管520が拡径部535を有する場合に、垂設管520の上端部の径中心が枝管528の最大内径部の径中心に対して偏芯していなくてもよい。
【0053】
また、合流部を構成する枝管428の上側端部が拡径部435で構成される場合について説明した。しかし、インクリーザ(拡径部)を合流部を構成する枝管とは別部材で構成してもよく、インクリーザを垂設管における合流部の上側(上流側)に設置してもよい。
【0054】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、立壁50の上端53が、高さ方向に関して軒樋10の耳部11a,11bの下端17近傍に位置する場合について説明した。しかし、立壁の上端は、軒樋の耳部の下端近傍以外の如何なる位置に存在してもよく、例えば、軒樋の耳部の上端近傍に位置してもよく、又は、軒樋の耳部の下端近傍よりも下方に位置してもよい。
【0056】
また、落とし口72を縦樋継手74にねじ止めすることで、落とし口72を軒樋10の底板部14に取り付ける場合について説明した。しかし、落とし口を縦樋継手又は配管に、接着剤、ボルト締めによる固定、又は圧入による嵌合等で固定することで、排水ドレンを縦樋の底板部に取り付けてもよい。
【0057】
また、雨水排水構造1が、合流部としての90°Y管(T字継手)と、90°エルボとを含む場合について説明した。しかし、雨水排水構造は、軒樋からの雨水を軒樋よりも下側の位置で縦管内を流れる雨水に合流させることができる如何なる構造で構成されてもよく、例えば、合流部として、90°Y管の替わりに45°Y管を採用してもよく、また、90°エルボの替わりに45°エルボを用いてもよい。
【0058】
また、雨水排水構造1が、立壁(筒状部)50を有する場合について説明した。しかし、雨水排水構造は、筒状部を有さなくてもよく、例えば、上流側竪樋の下端部が軒樋の底板部に設けられた貫通孔に遊嵌されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,101,201,301,401,501 雨水排水構造、 5,105,205 上流側竪樋、 5a 下側端部、 5b,105b,205b 下端、 5c 挿入部、 10 軒樋、 14 底板部、 14a,14b 貫通孔、 15 軒樋本体、 19 底面、 20,320,420,520 垂設管、 22 第1縦管、 25,425 分岐管、 26 接続管、 28,428,528 枝管(合流部)、 28a,428a 主管部、 28b 枝管部、 29 底壁下面、 30 第2縦管、 50 立壁、 50a 貫通孔、 55 地上、 70,470,570 下流側竪樋、 72 落とし口、 74 縦樋継手、 78 エルボ、 80 呼び樋、 320a 上端、 320b 上端部、 435,535 拡径部、 490,590 壁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下屋を備える建物に設置されて雨水を排水する雨水排水構造であって、
前記下屋の軒先に取り付けられ、貫通孔及び落とし口を有する軒樋と、
前記下屋よりも上方の屋根からの雨水を流下させる上流側竪樋と、
前記貫通孔の下方に垂設される垂設管、及び前記落とし口からの水を下方に流動させる分岐管を有し、前記上流側竪樋からの雨水と前記落とし口からの雨水とを合流して流下させる下流側竪樋と、を備え、
前記垂設管は、前記分岐管の片側端部が接続されて上流側竪樋からの雨水と前記分岐管からの雨水とを合流させると共に、前記上流側竪樋よりも大径になっている合流部を有し、
前記合流部に含まれると共に略鉛直方向に延びる主管部の高さ位置の中点から地上までの鉛直方向の長さは3m以上である、雨水排水構造。
【請求項2】
前記軒樋は、前記軒樋の高さ方向に延在する筒状部を有し、
前記貫通孔は、前記筒状部に設けられる、請求項1に記載の雨水排水構造。
【請求項3】
前記垂設管の上端部が前記筒状部の下端部に接続されて固定されている、
請求項2に記載の雨水排水構造。
【請求項4】
前記垂設管の上端が、前記筒状部の下端より上方に位置する、
請求項2又は3に記載の雨水排水構造。
【請求項5】
前記垂設管の上端部が、前記軒樋の底壁下面に接触している、
請求項1、2又は4に記載の雨水排水構造。
【請求項6】
前記上流側竪樋が、前記合流部内に挿入されている挿入部を含む、
請求項1から5のいずれか1つに記載の雨水排水構造。
【請求項7】
前記筒状部は第1立壁と第2立壁を更に有し、
前記第1立壁は記貫通孔を通過し、前記軒樋本体よりも下側に延在する第2立壁部を有し、
前記第2立壁は前記軒樋の下側に位置して下側に延在する第3立壁部を有し、
前記第2立壁部と前記第3立壁部が結合する、
請求項2に記載の記載雨水排水構造。
【請求項8】
前記第2立壁部は前記軒樋本体よりも下側に位置する部分に雄ねじを有し、
前記第3立壁部は雌ねじを有し、
前記第1立壁と前記第2立壁は前記雌ねじに前記雄ねじを締め込むことで結合する、
請求項7に記載の雨水排水構造。
【請求項9】
前記垂設管が、下側に行くにしたがって内径が大きくなる拡径部を含む、
請求項1に記載の雨水排水構造。
【請求項10】
前記拡径部は、前記主管部の高さ位置の中点よりも上側に位置する、
請求項9に記載の雨水排水構造。