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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017754
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ケーブル解体工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H02G1/12 060
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120607
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】522029914
【氏名又は名称】株式会社明星電気商会
(71)【出願人】
【識別番号】399039719
【氏名又は名称】東日本電気エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高麗 徳行
(72)【発明者】
【氏名】市倉 庸宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸司
【テーマコード(参考)】
5G353
【Fターム(参考)】
5G353AB10
5G353BA08
5G353CA01
5G353DA01
5G353EA12
(57)【要約】
【課題】 簡易にケーブルを解体することが可能なケーブル解体工具を提供する。
【解決手段】 ケーブル25は、ボビン7の前後において、ケーブル送りローラ9、ケーブル支持部3bで支持され、上方からは上部ガイド5a、5bで押さえられる。引き裂き紐27の端部をボビン7のピン15に固定する。この状態で、引き出し駆動部を動作させて、ボビン7を一方向に回転させる。ボビン7の回転によって、引き裂き紐27がボビン7に巻き取られ、ケーブル25から引き裂き紐27を引き出すことができる。この際、前述したように、ボビン7の回転動作とケーブル送りローラ9の回転動作が同期するため、ケーブル送りローラ9がボビン7とともに回転する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルに内蔵される引き裂き紐によってケーブルを解体するケーブル解体工具であって、
ケーブルが支持されるケーブル支持部と、
ケーブルから引き裂き紐を引きだす引き裂き紐引き出し部と、
前記引き裂き紐引き出し部の引き出し動作を行わせる引き出し駆動部と、
を具備し、
前記ケーブル支持部にケーブルを配置した状態で、前記引き出し駆動部を駆動させることで、前記ケーブル支持部で支持されたケーブルに沿って、引き裂き紐を前記引き裂き紐引き出し部で引き出すことが可能であることを特徴とするケーブル解体工具。
【請求項2】
前記引き裂き紐引き出し部はボビンであり、前記引き出し駆動部で前記ボビンを回転させることで、引き裂き紐を前記ボビンに巻き付けてケーブルから引き裂き紐を引き出すことが可能であることを特徴とする請求項1記載のケーブル解体工具。
【請求項3】
前記ケーブル支持部には、ケーブル解体工具に対して相対的にケーブルを送り出すことが可能なケーブル送りローラが配置され、前記ケーブル送りローラが前記引き裂き紐引き出し部と連動して動作することで、ケーブルに沿ってケーブル解体工具が相対的に移動しながら引き裂き紐を前記引き裂き紐引き出し部で引き出すことが可能であることを特徴とする請求項1記載のケーブル解体工具。
【請求項4】
前記引き裂き紐引き出し部は、ケーブルの周方向に移動可能であり、工具の周方向の向きを変えることなく、前記引き裂き紐引き出し部による引き裂き紐の引き出し方向を、ケーブルの周方向の任意の方向に変更可能であることを特徴とする請求項1記載のケーブル解体工具。
【請求項5】
ケーブル解体工具の下方には、ケーブル解体工具をケーブルに対して相対的に移動させることが可能な工具移動手段が設けられることを特徴とする請求項1記載のケーブル解体工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き裂き紐を有するケーブルの解体工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば通信ケーブル等として、ケーブルコアと、このケーブルコアの外周に金属層をもつ管状に形成されたラミネートテープと、このラミネートテープの外周に被覆されたポリエチレン等の樹脂製シースとを含むものが知られている。ここで使用されるラミネートテープとしては、例えば、薄板状のステンレス等の金属層と、この金属層に積層されたポリオレフィン系樹脂からなる融着樹脂層とからなる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-182540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様に、金属層を設けることで、例えば鉄道等の軌道脇にケーブルを敷設するような場合でも、ネズミによる咬害等を抑制することが可能となる。一方、ケーブルの接続や分岐の際には、所定長さの外部保護層とラミネートテープ(金属層)を引き裂き、内部の導線を取り出す必要がある。このため、ケーブルには金属層の内周側にあらかじめ引き裂き紐を配置しておき、ケーブルを解体する際には、この引き裂き紐を引っ張ることで、外部保護層や金属層を引き裂くことができる。
【0005】
図8は、一般的なケーブル100の構造の一例を示す図である。複数の導線101によってケーブルコアが構成され、必要に応じて抑え巻き部材によって一体化される。ケーブルコアの外周には、金属テープ層103が配置される。金属テープ層103は、金属ラミネートテープを縦添え巻きすることで形成される。なお、金属テープ層103は、必要に応じて波付加工が施される。例えば、ケーブル100の長手方向に対して山谷が繰り返され、山部と谷部のそれぞれが周方向に連続するように形成される。
【0006】
金属テープ層103の外周には樹脂製の保護層105が形成される。また、金属テープ層103とケーブルコアとの間には、引き裂き紐107が配置される。なお、ケーブル断面としては図示した例には限られない。
【0007】
図9は、このようなケーブル100の内部の導線101を取り出すために、解体する工程を示す図である。まず、ケーブル100の所定の位置で工具を用いて保護層105および金属テープ層103を、輪切りにして、内部の引き裂き紐107を取り出す。取り出された引き裂き紐107を例えばペンチ等に巻き付けて引き出すことで、金属テープ層103と保護層105とを長手方向に沿って破断させて、解体することができる。
【0008】
ここで、引き裂き紐107をケーブルの引き裂き方向に対してほぼ垂直に引っ張れることができれば(図中矢印X方向)、最も引き裂き抵抗が小さくなる。この際の引き裂き抵抗に対して、引き裂き紐107の引っ張り強度は十分に大きいため、引き裂き紐107によってケーブル100を解体することができる。しかし、作業者のスキルや熟練度により、引き裂き紐107をケーブル100に対して多少斜めに引っ張ってしまう場合がある(図中矢印Y方向)
【0009】
このように、引き裂き紐107を斜めに引っ張ってしまうと、引き裂いた後の金属テープ層103のエッジで引き裂き紐107がこすれてしまい、引き裂き紐107の破断の恐れがある。また、前述したように、引き裂き紐107による引き裂き作業には、ある程度の力が必要であるため、作業者の負担となっていた。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、簡易にケーブルを解体することが可能なケーブル解体工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明は、ケーブルに内蔵される引き裂き紐によってケーブルを解体するケーブル解体工具であって、ケーブルが支持されるケーブル支持部と、ケーブルから引き裂き紐を引きだす引き裂き紐引き出し部と、前記引き裂き紐引き出し部の引き出し動作を行わせる引き出し駆動部と、を具備し、前記ケーブル支持部にケーブルを配置した状態で、前記引き出し駆動部を駆動させることで、前記ケーブル支持部で支持されたケーブルに沿って、引き裂き紐を前記引き裂き紐引き出し部で引き出すことが可能であることを特徴とするケーブル解体工具である。
【0012】
前記引き裂き紐引き出し部はボビンであり、前記引き出し駆動部で前記ボビンを回転させることで、引き裂き紐を前記ボビンに巻き付けてケーブルから引き裂き紐を引き出すことが可能であってもよい。
【0013】
前記ケーブル支持部には、ケーブル解体工具に対して相対的にケーブルを送り出すことが可能なケーブル送りローラが配置され、前記ケーブル送りローラが前記引き裂き紐引き出し部と連動して動作することで、ケーブルに沿ってケーブル解体工具が相対的に移動しながら引き裂き紐を前記引き裂き紐引き出し部で引き出すことが可能であることが望ましい。
【0014】
前記引き裂き紐引き出し部は、前記ケーブル支持部の周方向に移動可能であり、工具の周方向の向きを変えることなく、前記引き裂き紐引き出し部による引き裂き紐の引き出し方向を、ケーブルの周方向の任意の方向に変更可能であってもよい。
【0015】
ケーブル解体工具の下方には、ケーブル解体工具をケーブルに対して相対的に移動させることが可能な工具移動手段が設けられてもよい。
【0016】
本発明によれば、引き裂き紐引き出し部を引き出し駆動部によって駆動させることで、対象となるケーブルの引き裂き紐を略一定の条件でまっすぐに引き出すことができる。このため、手作業と比較して、作業が容易であり、引き裂き紐の破断を抑制することができる。
【0017】
この際、引き裂き紐引き出し部がボビンであれば、引き出し駆動部によってボビンを回転させることで、引き出し紐をボビンに巻き付けてケーブルから引き出すことができる。
【0018】
また、ケーブル解体工具に対して相対的にケーブルを送り出すことが可能なケーブル送りローラを配置し、ケーブル送りローラを引き裂き紐引き出し部と連動して動作させることで、ケーブルに沿ってケーブル解体工具が相対的に移動しながら引き裂き紐を引き裂き紐引き出し部で引き出すことが可能である。
【0019】
また、引き裂き紐引き出し部が、ケーブル支持部の周方向に移動可能であれば、工具の周方向の向きを変えることなく、引き裂き紐引き出し部による引き裂き紐の引き出し方向を、ケーブルの周方向の任意の方向に変更可能である。
【0020】
また、ケーブル解体工具の下方には、ケーブル解体工具をケーブルに対して相対的に移動させることが可能な工具移動手段が設けられれば、工具をケーブルに対して移動させながら引き裂き紐を引き出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易にケーブルを解体することが可能なケーブル解体工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ケーブル解体工具1の構造を示す側方図。
図2】ケーブル解体工具1の構造を示す平面図。
図3】ケーブル解体工具1の構造を示す前方図。
図4】ケーブル解体工具1の構造を示す後方図。
図5】(a)~(c)は、ケーブル解体工具1のケーブル径への調整方法を示す図。
図6】ケーブル解体工具1の動作を示す概念図。
図7】ボビン7の動作を示す概念図。
図8】ケーブル100を示す図。
図9】ケーブル100の引き裂き状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1図4は、ケーブル解体工具1の構造を示す図であり、図1は側方図、図2は平面図、図3は前方図、図4は後方図である。なお、図1において、左側をケーブル解体工具1の前方、右側をケーブル解体工具1の後方とする。また、各図において、簡単のため、一部の構造の図示を省略して示す。
【0024】
ケーブル解体工具1は、ケーブルに内蔵される引き裂き紐を引き出すことでケーブルを解体するための工具である。ケーブル解体工具1は、主に、ケーブルが支持されるケーブル支持部3a、3b(図1等参照)と、ケーブルから引き裂き紐を引きだすボビン7(図1等参照)と、ボビン7による引き裂き紐の引き裂き動作を行わせる引き出し駆動部23(図2等参照)等から構成される。なお、図示した構造はケーブル解体工具1の一例を示すものであり、図示した構造には限られない。
【0025】
ボビン7は、引き裂き紐を巻き付けて回転させることで、引き裂き紐を引き出すことが可能な引き裂き紐引き出し部として機能する。例えば、ボビン7に設けられたピン15に引き裂き紐の先端を絡めておき、ボビン7を回転させて引き裂き紐をボビン7で巻きつけることで、引き裂き紐をケーブルから引き出すことができる。なお、引き裂き紐の引き出し方法の詳細は後述する。
【0026】
図2に示すように、ケーブル解体工具1には、引き裂き紐引き出し部(ボビン7)の動作を行うための引き出し駆動部23が配置される。引き出し駆動部23を駆動することで、ボビン7を回転させることができる。図示した例では、引き出し駆動部23にはレバー19が配置され、ラチェット機構により、レバー19の往復動作を行うことで、ボビン7を一方の方向に回転させることができる。なお、引き出し駆動部23は、ラチェット構造を用いたレバー19によって操作するのではなく、ダイアル式やモータ式など、ボビン7を回転させることが可能であれば、公知の他の手法を適用することができる。
【0027】
また、引き裂き紐引き出し部としては、ボビン7には限られず、引き裂き紐を所定以上の力で引っ張り出すことが可能であれば他の構造でもよい。例えば、一対のローラや無限軌道で引き裂き紐を挟み込んで一定方向に送り出してもよい。なお、引き裂き紐の引き出し作業の詳細は後述する。
【0028】
ケーブル支持部3a、3bは、解体対象となるケーブルを支持する部位である。ケーブル支持部3aは、ボビン7の後方側に配置され、ケーブル支持部3bは、ボビン7の前方側に配置される。すなわち、ケーブル支持部3a、3bは、ボビン7の前後にそれぞれ配置される。
【0029】
図3に示すように、ケーブル支持部3bは、棒状の部材であり、この棒状のケーブル支持部3bを本体に形成された孔に差し込むことで本体に取り付けることができる。また、本体には、配置高さの異なる複数の孔が形成され、ケーブルのサイズに応じて、ケーブル支持部3bの挿入位置を変えることで、複数の種類のケーブルを所定の高さで支持することができる。
【0030】
また、図3に示すように、ケーブル支持部3bの上方には、上部ガイド5bが配置される。上部ガイド5bは丸棒であり、解体対象となるケーブルを、ケーブル支持部3bと上部ガイドと5bとで挟み込むことで、ケーブルの浮き上がりを防止し、ケーブルを所定の高さで支持することができる。
【0031】
また、ケーブル支持部3bと上部ガイド5bとの対向方向(上下方向)に対して直交する方向(図3の左右方向であって幅方向)には、互いに対向するようにサイドガイド17が配置される。サイドガイド17は、ガイド調整部21cによって位置を調整することができる。したがって、ガイド調整部21cによって、対向する一対のサイドガイド17同士の間隔を調整することで、異なるサイズのケーブルを両側から挟み込み、幅方向の位置決めを行うことができる。このため、工具本体に対するケーブルの幅方向の位置決めを行うことができる。
【0032】
また、図4に示すように、ケーブル解体工具1の後方側には、ユニット化されたケーブル支持部3aが設けられる。ケーブル支持部3aには、ケーブル解体工具1に対して相対的にケーブルを送り出すことが可能なケーブル送りローラ9が設けられる。すなわち、ケーブル支持部3aは、ケーブル送りローラ9を含む全体を称するものとする。ケーブル送りローラ9上に解体対象となるケーブルを配置することで、ケーブルを支持することができる。ケーブル支持部3a(ケーブル送りローラ9)の高さ調整方法と、ケーブル送りローラ9の動作については詳細を後述する。
【0033】
また、ケーブル送りローラ9の上方には、上部ガイド5aが配置される。上部ガイド5aはローラであり、解体対象となるケーブルを、ケーブル送りローラ9と上部ガイドと5aとで挟み込むことで、ケーブルの浮き上がりを防止し、ケーブルを所定の高さで支持することができる。また、上部ガイド5aは、ガイド調整部21aの操作によって、上下位置を調整することができるため、異なる径のケーブルに対しても確実に上下から挟み込んで、位置決めを行うことができる。
【0034】
図5は、ケーブル支持部3aの動作(ケーブル送りローラ9の高さ調整方法)を示す図である。ここで、詳細は後述するが、ケーブル送りローラ9は、能動的に一定の方向に回転する。また、ボビン7の回転動作とケーブル送りローラ9の回転動作は連動する。すなわち、ボビン7とケーブル送りローラ9との間には、回転力を伝達するためのギア構造やベルト構造等が配置される。
【0035】
図示した例では、ボビン7と同軸で回転するギア13aと、ギア13aの回転を伝達するギア13b、13cと、ギア13cの回転が伝達され、ケーブル送りローラ9と同軸で回転するギア13dとによってボビン7とケーブル送りローラ9とが連動して回転する。この際、ギア13cとギア13d(ケーブル送りローラ9)は、前述したケーブル支持部3aのユニットに配置される。
【0036】
図5(a)は、所定の径のケーブル25を配置した状態を示す図である。前述したように、工具の前方(図中左側)では、ケーブル25はケーブル支持部3bによって下方から支持され、上方から上部ガイド5bによって浮き上がりが防止される。この際、ケーブル支持部3bの位置と、上部ガイド5bの高さが調整される。
【0037】
同様に、工具の後方(図中右側)では、ケーブル25はケーブル支持部3a(ケーブル送りローラ9)によって下方から支持され、上方から上部ガイド5aによって浮き上がりが防止される。この際、上部ガイド5aの高さは適宜調整される。
【0038】
これに対し、図5(b)は、ケーブル25の径が図5(a)と比較して細い場合の支持状態を示す図である。前述したように、工具の前方(図中左側)では、ケーブル支持部3bの位置(高さ)を調整することで、ケーブルの位置を調整することができる。より詳細には、ケーブル支持部3bの挿入位置を、図5(a)よりも高い位置に移動させることで細径のケーブル25を所定の高さで支持することができる。
【0039】
一方、工具の後方(図中右側)において、上方は、上部ガイド5aの高さが調整される。また、下方はケーブル支持部3aを回転(図中反時計回り)させることで、ケーブル送りローラ9の高さを変えることができる。なお、ケーブル支持部3aは、例えば、図5(a)の状態と図5(b)の状態のそれぞれの位置で固定可能なピン等によって、本体に固定することができる。
【0040】
ここで、ケーブル支持部3aの回転軸は、ギア13cの回転軸と同一軸とする。このため、ケーブル支持部3aを回転させても、ギア13cの位置は変化しない。また、ギア13cとギア13d(ケーブル送りローラ9)は、ケーブル支持部3aによって一体化しているため、ギア13bとギア13cとの相対距離は変化せず、ケーブル支持部3aを回転させても、ボビン7とケーブル送りローラ9との連動は維持することができる。
【0041】
図5(c)は、さらに細径のケーブル25を配置した状態を示す図である。この場合も同様に、工具の前方(図中左側)では、ケーブル支持部3bの挿入位置を、図5(b)よりもさらに高い位置に移動させることで細径のケーブル25を所定の高さで支持することができる。
【0042】
また、工具の後方(図中右側)においても、ケーブル支持部3aをさらに回転させてケーブル送りローラ9を上方に移動させ、上部ガイド5aをさらに少し下方に移動させることで細径のケーブル25を所定の高さで支持することができる。なお、この位置においても、ピン等によって、ケーブル支持部3aを本体に固定することができる。以上のように、ケーブルの径に応じて、ケーブルを支持する高さを変更することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、ケーブル支持部3bとケーブル送りローラ9の高さは所定の段階で行われる例を示したがこれには限られない。例えば、ケーブル支持部3bを無段階で上下動させてもよく、ケーブル支持部3aの固定を所定位置のピン構造で行うのではなく、ラチェット構造などによって、所定角度に回転させた状態で戻り回転を規制することで任意の角度で保持することが可能であってもよい。
【0044】
次に、ケーブル解体工具1によるケーブル解体方法について説明する。図6は、ケーブル25から引き裂き紐27を引き出す状態を示す概略図である。前述したように、ケーブル25は、ボビン7の前後において、ケーブル支持部3a(ケーブル送りローラ9)、ケーブル支持部3bで支持され、上方からは上部ガイド5a、5bで押さえられる。
【0045】
まず、解体対象となるケーブル25の一部から、公知の方法で引き裂き紐27を取り出す。例えば、チューブカッタなどにより、端部から10cm程度の位置で円周方向に切れ目を入れ、ペンチ等で引き裂き紐を取り出す。
【0046】
次に、引き裂き紐27の端部をボビン7のピン15に固定する。この状態で、引き出し駆動部23(図2等参照)を動作させて、ボビン7を一方向に回転させる(図中矢印A方向)。ボビン7の回転によって、引き裂き紐27がボビン7に巻き取られ、ケーブル25から引き裂き紐27を引き出すことができる。
【0047】
この際、前述したように、ボビン7の回転動作とケーブル送りローラ9の回転動作が同期するため、ケーブル送りローラ9がボビン7とともに回転する。ここで、ケーブル送りローラ9の外周面には、ケーブル25との滑りを抑制し、ケーブル25の外部保護層に噛みこむことが可能な凹凸(歯)が形成される。なお、凹凸の高さは、ケーブルの外部保護層の厚み以下である。また、ケーブル送りローラ9の回転方向は、ボビン7の回転方向とは逆向きであり、図示した例では、ケーブル送りローラ9の回転によって、ケーブル25が工具に対して相対的に前方(図中矢印C方向)に送られる。
【0048】
ここで、ギア比を調整することで、ボビン7の引き裂き紐27の引き出し速度と、ケーブル送りローラ9によるケーブル25の送り速度を一致させることができる。すなわち、ボビン7の周速度(すなわち引き裂き紐27の引き出し速度)は、ケーブル送りローラ9の周速度(すなわちケーブル25の送り速度)とほぼ一致する。このため、ケーブル解体工具1に対して、ケーブル25からの引き裂き紐27の引き出し位置は常に一定とすることができる。
【0049】
なお、実際の現場では、既設のケーブル25に対して解体作業を行う場合がある。また、太径のケーブル25の場合には、重量が大きい場合がある。この場合には、ケーブル解体工具1に対してケーブル25を軸方向に移動させることが困難である。このため、図6に示す例では、ケーブル解体工具1に対して、相対的にケーブル25が移動するが(図中矢印C)、実際にはケーブル25に対してケーブル解体工具1が逆側(図6の右側)に相対的に移動しながら解体が行われる。
【0050】
このため、図1等に示すように、ケーブル解体工具1の下部には、工具移動手段としてキャスター11が配置される。工具移動手段によって、ケーブル25が敷設された現場において、ケーブル25に対してケーブル解体工具1を相対的に容易に移動させることができる。なお。キャスター11としては、車輪キャスターであってもよくボールキャスターであってもよい。
【0051】
以上、本実施形態によれば、ケーブル解体工具1のケーブル支持部3a(ケーブル送りローラ9)とケーブル支持部3bにケーブル25を配置した状態で、引き出し駆動部23を駆動させることで、ケーブル25に沿って、引き裂き紐27を引き裂き紐引き出し部で引き出すことが可能である。このため、ケーブル25の解体が容易である。また、引き裂き紐27を常に一定の方向に引き出すことが可能であるため、引き裂き紐27の破断を抑制することができる。
【0052】
また、ケーブル送りローラ9が引き裂き紐引き出し部(ボビン7)と連動して動作することで、ケーブル25に沿ってケーブル解体工具1が相対的に移動しながら引き裂き紐27を引き裂き紐引き出し部で引き出すことが可能である。このため、ケーブル解体工具1に対して、常に一定の位置で、ケーブル25から引き裂き紐27を引き出すことができる。また、ケーブル解体工具1の下方に工具移動手段(キャスター11)を配置することで、ケーブル25を動かすことなく、ケーブル解体工具1を容易に移動させることができる。
【0053】
また、ケーブル送りローラ9の外周面に凹凸(歯)を設け、上方から上部ガイド5aによってケーブル25を押さえつけることで、ケーブル25との滑りを抑制し、ケーブル解体工具1に対して確実にケーブル25を送り出すことができる。
【0054】
また、ケーブル支持部3a、3b等の高さ調整が可能であるため、径の異なるケーブル25に対しても、所定の高さで支持することができる。また、サイドガイド17によって、ケーブル解体工具1に対するケーブル25の幅方向の位置決めを行うことができる。
【0055】
なお、上述した各種のケーブル位置決め構造に代えて、またはこれらに加えて、さらに、ケーブル径に応じたケーブルガイドリング等を設けてもよい。例えば、ケーブル解体工具1の前方に、ガイドリング取り付け部を設け、ガイドリングにケーブル25を挿通することで、ケーブル25の位置決めを行うことができる。この際、対象となるケーブル25の径に応じて、ガイドリングを交換することができれば、径の異なるケーブル25にも適用することができる。
【0056】
また、引き裂き紐によって引き裂かれた直後のケーブルに対して、引き裂かれた金属テープ層を押し広げるためのローラを用いてもよい(図1等参照)。例えば、上部ガイド5bの前方側に、上方からローラをケーブルの引き裂き部に挿入することで、金属テープ層を押し広げることもできる。
【0057】
なお、解体対象となるケーブル25の断面において、必ずしも上方に引き裂き紐27が位置しておらず、また、ケーブル25を回転させることが困難な場合もある。このような場合には、引き裂き紐引き出し部(ボビン7)を、ケーブルの周方向に移動可能としてもよい。
【0058】
図7は、ボビン7をケーブル25の周囲に回転させる状態を示す概念図である。このようにすることで、ケーブル解体工具1(ケーブル支持部)の周方向の向きを変えることなく、引き裂き紐引き出し部(ボビン7)による引き裂き紐27の引き出し方向のみを、ケーブルの周方向の任意の方向に変更可能である。
【0059】
なお、この場合にはボビン7の回転軸が周方向に回転するため、ギア構造が複雑となるが、例えば傘歯車やウォームホイール等を用いて、ボビン7の回転軸をボビン7の周方向移動軸方向(図面に垂直な方向)に変換し、周方向移動軸からの偏位をフレキシブルシャフト等によって調整することで、一定の位置の回転力を、図7に示す任意の位置でのボビン7の回転力として伝達することができる。また、ギアを用いずに、ボビン7をモータ等で回転させ、ボビン7とケーブル送りローラ9の回転の同期をモータの同期で連動させてもよい。
【0060】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、ケーブル解体工具1は、電気信号ケーブルの解体には限られず、光ケーブルや光/電気の複合ケーブルなど、引き裂き紐による解体を行うケーブルであれば適用可能である。すなわち、金属層を有さないケーブルを引き裂き紐で解体するような場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1………ケーブル解体工具
3a、3b………ケーブル支持部
5a、5b………上部ガイド
7………ボビン
9………ケーブル送りローラ
11………キャスター
13a、13b、13c、13d………ギア
15………ピン
17………サイドガイド
19………レバー
21a、21c………ガイド調整部
23………引き出し駆動部
25………ケーブル
27………引き裂き紐
100………ケーブル
101………導線
103………金属テープ層
105………保護層
107………引き裂き紐
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9