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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177550
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガスタービンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/40 20060101AFI20241212BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20241212BHJP
   F02C 7/224 20060101ALI20241212BHJP
   F02C 7/236 20060101ALI20241212BHJP
   F23J 7/00 20060101ALI20241212BHJP
   F23K 5/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F02C9/40 A
F02C7/22 A
F02C7/224
F02C7/236
F23C99/00 317
F23K5/04 E ZAB
F23K5/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024177455
(22)【出願日】2024-10-09
(62)【分割の表示】P 2022580659の分割
【原出願日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2021021753
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】武石 裕行
(72)【発明者】
【氏名】三浦 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】柚木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】平田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】林 明典
(72)【発明者】
【氏名】萩田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】谷村 聡
(57)【要約】
【課題】アンモニアを安定燃焼させつつも、NOxの生成を抑制することができる。
【解決手段】燃料供給設備は、液体アンモニアが流れる主アンモニアラインと、前記主アンモニアラインの端に接続され、加熱媒体と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させる気化器と、前記気化器に接続され、前記気化器で気化したアンモニアである気体アンモニアを燃料としてガスタービンの燃焼器に導く気体アンモニアラインと、前記気化器で前記加熱媒体と熱交換されていない液体アンモニアを燃料として、前記燃焼器に導く液体アンモニアラインと、前記気体アンモニアラインから前記気体アンモニアを前記燃焼器に導く第一状態と、前記液体アンモニアラインから前記液体アンモニアを前記燃焼器に導く第二状態との間でアンモニア供給状態を切り替えることができる切替器と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体アンモニアを貯留可能なアンモニアタンクに接続されている主アンモニアラインと、
前記主アンモニアライン中に設けられ、前記アンモニアタンクからの前記液体アンモニアを昇圧可能な主アンモニアポンプと、
前記主アンモニアラインの端に接続され、加熱媒体と前記主アンモニアポンプで昇圧された前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させることができる気化器と、
前記気化器に接続され、前記気化器で気化したアンモニアである気体アンモニアを燃料としてガスタービンの燃焼器に導くことができる気体アンモニアラインと、
前記主アンモニアポンプで昇圧された液体アンモニアであって、前記気化器で前記加熱媒体と熱交換されていない液体アンモニアを燃料として、前記燃焼器に導くことができる液体アンモニアラインと、
前記気体アンモニアラインから前記気体アンモニアを前記燃焼器に導く第一状態と、前記液体アンモニアラインから前記液体アンモニアを前記燃焼器に導く第二状態とを含む複数の状態の間でアンモニア供給状態を切り替えることができる切替器と、
を備える、
燃料供給設備。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給設備において、
前記切替器は、前記気体アンモニアラインからの前記気体アンモニアと前記液体アンモニアラインからの前記液体アンモニアとを前記燃焼器に導く第三状態と、前記第一状態と、前記第二状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替えることができる、
燃料供給設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料供給設備において、
さらに、前記燃焼器に供給される前記燃料の流量を調節する流量調節弁を備える、
燃料供給設備。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料供給設備において、
前記液体アンモニアラインの端は、前記主アンモニアライン中であって、前記主アンモニアポンプと前記気化器との間の位置に接続されている、
燃料供給設備。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料供給設備において、
前記切替器は、前記第一状態を実現するために、前記主アンモニアポンプで昇圧された前記液体アンモニアを前記気化器に導く状態と、前記第二状態を実現するために、前記主アンモニアポンプで昇圧された前記液体アンモニアを前記液体アンモニアラインに導かない状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替えることができる弁である、
燃料供給設備。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の燃料供給設備において、
さらに、前記液体アンモニアライン中に設けられ、前記液体アンモニアラインを流れる前記液体アンモニアを昇圧可能な液体アンモニアポンプと、
前記気体アンモニアライン中に設けられ、前記気体アンモニアラインを流れる前記気体アンモニアを昇圧可能な気体アンモニア圧縮機と、
を備える、
燃料供給設備。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料供給設備において、
前記気体アンモニアラインは、前記液体アンモニアラインを兼ね、
前記切替器は、前記第一状態を実現するために、前記加熱媒体を前記気化器に導く状態と、前記第二状態を実現するために、前記加熱媒体を前記気化器に導かない状態と、の間で前記加熱媒体の供給状態を切り替える加熱媒体弁である、
燃料供給設備。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料供給設備において、
さらに、外部から前記ガスタービンの要求出力を受け付け、前記要求出力に応じて、前記第一状態と前記第二状態とを含む複数の状態のうちの一の状態を定め、前記切替器に対して、前記一の状態になるよう指示する制御装置を備える、
燃料供給設備。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の燃料供給設備と、
前記燃料供給設備からの前記燃料を圧縮空気中で燃焼させて、燃焼ガスを生成する前記燃焼器と、
を備える、
燃料燃焼設備。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料燃焼設備において、
前記燃焼器は、
前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスをタービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、
前記燃焼室内に前記燃料及び圧縮空気を噴射可能な燃焼器本体と、
を有し、
前記燃焼器本体は、前記燃焼室内に前記燃料を噴射可能な燃料ノズルを有し、
前記燃料ノズルは、前記気体アンモニアラインに接続され、前記気体アンモニアラインを流れてきた前記気体アンモニアを前記燃焼室内に噴射可能な気体燃料流路と、前記液体アンモニアラインに接続され、前記液体アンモニアラインを流れてきた前記液体アンモニアを前記燃焼室内に噴射可能な液体燃料流路と、を有する、
燃料燃焼設備。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の燃料供給設備と、
前記ガスタービンと、
を備え、
前記ガスタービンは、
空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、
前記燃料供給設備からの前記燃料を前記圧縮空気中で燃焼させて、燃焼ガスを生成する前記燃焼器と、
前記燃焼ガスで駆動可能なタービンと、
を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項12】
請求項11に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記燃焼器は、
前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、
前記燃焼室内に前記燃料及び前記圧縮空気を噴射可能な燃焼器本体と、
を有し、
前記燃焼器本体は、前記燃焼室内に前記燃料を噴射可能な燃料ノズルを有し、
前記燃料ノズルは、前記気体アンモニアラインに接続され、前記気体アンモニアラインを流れてきた前記気体アンモニアを前記燃焼室内に噴射可能な気体燃料流路と、前記液体アンモニアラインに接続され、前記液体アンモニアラインを流れてきた前記液体アンモニアを前記燃焼室内に噴射可能な液体燃料流路と、を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のガスタービンプラントにおいて、
さらに、前記タービンから排気された前記燃焼ガスである排気ガスの熱を利用して蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラで発生した蒸気の一部又は前記排熱回収ボイラで加熱された水の一部を前記加熱媒体として、前記気化器に導く加熱媒体ラインと、
を備える、
ガスタービンプラント。
【請求項14】
請求項11又は12に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記気化器は、前記加熱媒体としての前記タービンから排気された前記燃焼ガスである排気ガスと前記主アンモニアポンプで昇圧された前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させることができる、
ガスタービンプラント。
【請求項15】
液体アンモニアを貯留しているアンモニアタンクからの前記液体アンモニアを昇圧するアンモニア昇圧工程と、
加熱媒体と前記アンモニア昇圧工程で昇圧された前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させる気化工程と、
前記気化工程で気化したアンモニアである気体アンモニアを燃料としてガスタービンの燃焼器に導く第一状態と、前記アンモニア昇圧工程で昇圧された液体アンモニアであって、前記気化工程で前記加熱媒体と熱交換されていない液体アンモニアを燃料として、前記燃焼器に導く第二状態とを含む複数の状態の間で、アンモニア供給状態を切り替える切替工程と、
を実行する、
燃料供給方法。
【請求項16】
請求項15に記載の燃料供給方法において、
前記切替工程では、前記気体アンモニアと前記液体アンモニアとを前記燃焼器に導く第三状態と、前記第一状態と、前記第二状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替える、
燃料供給方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の燃料供給方法において、
さらに、前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する流量調節工程を実行する、
燃料供給方法。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか一項に記載の燃料供給方法において、
前記気化工程は、前記アンモニア昇圧工程で昇圧された前記液体アンモニアが流入すると共に、前記加熱媒体が流入し、前記液体アンモニアと前記加熱媒体とを熱交換させる気化器により実行され、
前記切替工程では、前記第一状態を実現するために、前記アンモニア昇圧工程で昇圧された前記液体アンモニアを前記気化器に導く状態と、前記第二状態を実現するために、前記アンモニア昇圧工程で昇圧された前記液体アンモニアを前記気化器に導かない状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替える、
燃料供給方法。
【請求項19】
請求項15から17のいずれか一項に記載の燃料供給方法において、
前記気化工程は、前記アンモニア昇圧工程で昇圧された前記液体アンモニアが流入すると共に、前記加熱媒体が流入し、前記液体アンモニアと前記加熱媒体とを熱交換させる気化器により実行され、
前記切替工程では、前記第一状態を実現するために、前記加熱媒体を前記気化器に導く状態と、前記第二状態を実現するために、前記加熱媒体を前記気化器に導かない状態と、の間で前記加熱媒体の供給状態を切り替える、
燃料供給方法。
【請求項20】
請求項15から19のいずれか一項に記載の燃料供給方法において、
さらに、外部から前記ガスタービンの要求出力を受け付け、前記要求出力に応じて、前記第一状態と前記第二状態とを含む複数の状態のうちの一の状態を定め、前記切替工程で前記一の状態を実行させる切替制御工程を実行する、
燃料供給方法。
【請求項21】
請求項15から20のいずれか一項に記載の燃料供給方法において、
さらに、前記ガスタービンから排気された排気ガスの熱を利用して蒸気を発生させる蒸気発生工程を実行し、
前記気化工程では、前記蒸気発生工程で発生した前記蒸気の一部、又は、前記蒸気発生工程の実行過程で生成された温水を前記加熱媒体として用いる、
燃料供給方法。
【請求項22】
請求項15から20のいずれか一項に記載の燃料供給方法において、
前記気化工程では、前記ガスタービンから排気された排気ガスを前記加熱媒体として用いる、
燃料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンの燃料としてアンモニアを供給する燃料供給方法、燃料供給設備、及びこの燃料供給設備を備える燃料燃焼設備、及びガスタービンプラントに関する。
本願は、2021年2月15日に、日本国に出願された特願2021-021753号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えている。以下の特許文献1には、燃焼器に供給する燃料として、アンモニアを用いる例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/181002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアをガスタービンの燃料として用いる場合、アンモニアを形成する窒素の一部がNOxになる。このため、アンモニアをガスタービンの燃料として用いる場合、このNOxの生成量を少なくすることが望まれる。また、アンモニアをガスタービンの燃料として用いる場合であっても、天然ガス等をガスタービンの燃料として用いる場合と同様、アンモニアをできる限り安定燃焼させることが望まれる。
【0005】
そこで、本開示は、アンモニアをガスタービンの燃料として用いる場合、ガスタービンの起動時から定格負荷運転時まで、アンモニアを安定供給し、且つアンモニアを安定燃焼させつつも、NOxの生成を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための一態様としての燃料供給設備は、
液体アンモニアを貯留可能なアンモニアタンクに接続されている主アンモニアラインと、前記主アンモニアライン中に設けられ、前記アンモニアタンクからの前記液体アンモニアを昇圧可能な主アンモニアポンプと、前記主アンモニアラインの端に接続され、加熱媒体と前記主アンモニアポンプで昇圧された前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させることができる気化器と、前記気化器に接続され、前記気化器で気化したアンモニアである気体アンモニアを燃料としてガスタービンの燃焼器に導くことができる気体アンモニアラインと、前記主アンモニアポンプで昇圧された液体アンモニアであって、前記気化器で前記加熱媒体と熱交換されていない液体アンモニアを燃料として、前記燃焼器に導くことができる液体アンモニアラインと、前記気体アンモニアラインから前記気体アンモニアを前記燃焼器に導く第一状態と、前記液体アンモニアラインから前記液体アンモニアを前記燃焼器に導く第二状態とを含む複数の状態の間でアンモニア供給状態を切り替えることができる切替器と、を備える。
【0007】
本態様では、燃焼器に気体アンモニアを導くことも、燃焼器に液体アンモニアを導くことも可能である。ガスタービンの運用を考えた際、起動時、外部からエネルギーが供給されない限り、気体アンモニアを燃焼器に所定圧力にて供給することができない。このため、起動時には、液体アンモニアを燃焼器に供給することが好ましい。一方、燃焼器の燃料ノズルから燃料として気体アンモニアを噴射した場合、NOxの生成を抑えることができる。ところで、低燃料流量時には、燃料の失火の可能性が高いが、アンモニアの流量自体が少ないためにNOxの生成量は少ない。逆に、多燃料流量時には、燃料の失火の可能性が低いが、アンモニアの流量自体が多いため、NOxの生成量は多い。そこで、低燃料流量時には、燃料の失火の可能性を低くして燃料の安定燃焼を図るために、燃焼器に液体アンモニアを導く。また、多燃料流量時には、NOxの生成を抑えるために、燃焼器に気体アンモニアを導く。この結果、本態様では、起動時に、液体アンモニアを燃焼器に供給することで、外部から熱エネルギー供給がなくても、燃料としてのアンモニアを燃焼器に供給することができる。さらに、本態様では、起動時から定格運転時にわたって、アンモニア以外の燃料を使用せずに、アンモニアを安定燃焼させつつも、NOxの生成を抑制することができる。
【0008】
前記目的を達成するための一態様としての燃料燃焼設備は、
前記一態様としての燃料供給設備と、前記燃料供給設備からの前記燃料を圧縮空気中で燃焼させて、燃焼ガスを生成する前記燃焼器と、を備える。
【0009】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンプラントは、
前記一態様としての燃料供給設備と、前記ガスタービンと、を備える。前記ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、前記燃料供給設備からの前記燃料を前記圧縮空気中で燃焼させて、燃焼ガスを生成する前記燃焼器と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービンと、を有する。
【0010】
前記目的を達成するための一態様としての燃料供給方法は、
液体アンモニアを貯留しているアンモニアタンクからの前記液体アンモニアを昇圧するアンモニア昇圧工程と、加熱媒体と前記アンモニア昇圧工程で昇圧された前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させる気化工程と、前記気化工程で気化したアンモニアである気体アンモニアを燃料としてガスタービンの燃焼器に導く第一状態と、前記アンモニア昇圧工程で昇圧された液体アンモニアであって、前記気化工程で前記加熱媒体と熱交換されていない液体アンモニアを燃料として、前記燃焼器に導く第二状態とを含む複数の状態の間で、アンモニア供給状態を切り替える切替工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様では、アンモニアを安定燃焼させつつも、NOxの生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る第一実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図2】本開示に係る一実施形態における燃料ノズルの断面図である。
図3】本開示に係る一実施形態における燃料供給方法の実行手順を示すフローチャートである。
図4】本開示に係る一実施形態における時間経過に伴う燃料の流量パーセントの変化を示すグラフである。
図5】本開示に係る一実施形態における燃空比とNOx濃度との関係を示すグラフである。
図6】本開示に係る第二実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図7】本開示に係る第三実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図8】本開示に係る第一変形例における時間経過に伴う燃料の流量パーセントの変化を示すグラフである。
図9】本開示に係る第二変形例におけるガスタービンプラントの系統図である。
図10】本開示に係る第三変形例におけるガスタービンプラントの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る各種実施形態及び各種変形例について、図面を用いて説明する。
【0014】
「第一実施形態」
以下、本開示に係るガスタービンプラントの第一実施形態について、図1図5を用いて説明する。
【0015】
本実施形態のガスタービンプラントは、図1に示すように、ガスタービン10と、ガスタービン10からの排気ガス中に含まれるNOx分を分解する脱硝装置20と、脱硝装置20から流出した排気ガスの熱を利用して蒸気を発生させる排熱回収ボイラ21と、排熱回収ボイラ21からの排気ガスを外部に排気する煙突22と、排熱回収ボイラ21からの蒸気で駆動する蒸気タービン23と、蒸気タービン23からの蒸気を水に戻す復水器24と、復水器24内の水を排熱回収ボイラ21に送るポンプ25と、ガスタービン10に燃料を供給する燃料供給設備40と、制御装置60と、を備える。なお、脱硝装置20は、排熱回収ボイラ21内に配置されていてもよい。
【0016】
ガスタービン10は、空気Aを圧縮する圧縮機14と、圧縮機14で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器15と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン16と、を備える。
【0017】
圧縮機14は、ロータ軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ14rと、この圧縮機ロータ14rを覆う圧縮機ケーシング14cと、この圧縮機ケーシング14cの吸込み口に設けられている吸気量調節機(以下、IGV(inlet guide vane)とする)14iと、を有する。IGV14iは、制御装置60からの指示に従い圧縮機ケーシング14c内に吸い込まれる空気の流量を調節する。
【0018】
タービン16は、燃焼器15からの燃焼ガスにより、ロータ軸線Arを中心として回転するタービンロータ16rと、このタービンロータ16rを覆うタービンケーシング16cと、を有する。タービンロータ16rと圧縮機ロータ14rとは、同一のロータ軸線Arを中心として回転可能に相互に連結されて、ガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機のロータが接続されている。
【0019】
ガスタービン10は、さらに、中間ケーシング12を備える。中間ケーシング12は、ロータ軸線Arが延びている方向で、圧縮機ケーシング14cとタービンケーシング16cとの間に配置され、圧縮機ケーシング14cとタービンケーシング16cとを連結する。この中間ケーシング12内には、圧縮機14から吐出された圧縮空気が流入する。
【0020】
燃焼器15は、中間ケーシング12に固定されている。この燃焼器15は、内部に燃焼室15sを形成する燃焼筒(又は尾筒)15cと、燃焼室15s内に燃料及び圧縮空気を噴射する燃焼器本体15bと、を備える。燃焼室15sを形成する燃焼筒15cは、燃焼室形成器を成す。燃焼室15s内では、燃料が圧縮空気内で燃焼する。燃料の燃焼で生成された燃焼ガスは、燃焼室15sを流れて、タービン16に送られる。燃焼器本体15bは、燃焼室15s内に燃料を噴射する燃料ノズル15nを有する。
【0021】
脱硝装置20には、アンモニアが供給される。この脱硝装置20は、このアンモニアを用いて、ガスタービン10からの排気ガス中に含まれるNOxを窒素と水蒸気とに分解する。
【0022】
排熱回収ボイラ21と復水器24とは、給水ライン26で接続されている。この給水ライン26には、復水器24内の水を排熱回収ボイラ21に送るポンプ25が設けられている。排熱回収ボイラ21と蒸気タービン23とは、主蒸気ライン27で接続されている。排熱回収ボイラ21は、ガスタービン10からの排気ガスの熱を利用して、給水ライン26からの水を蒸気にする。この蒸気は、主蒸気ライン27を介して、蒸気タービン23に送られる。蒸気タービン23のロータには、例えば、発電機のロータが接続されている。蒸気タービン23から排気された蒸気は、復水器24で水に戻される。
【0023】
燃料供給設備40は、アンモニアタンク41と、主アンモニアライン42と、流量調節弁43と、主アンモニアポンプ44と、気化器45と、気体アンモニアライン46と、液体アンモニアライン47と、切替器48と、気体アンモニア圧縮機51と、液体アンモニアポンプ52と、加熱媒体ライン53と、加熱媒体弁54と、加熱媒体回収ライン55と、を有する。
【0024】
アンモニアタンク41には、液体アンモニアNHLが貯留される。主アンモニアライン42は、このアンモニアタンク41に接続されている。この主アンモニアライン42には、アンモニアタンク41からの液体アンモニアNHLを昇圧する主アンモニアポンプ44と、主アンモニアライン42を流れるアンモニアの流量を調節する流量調節弁43と、が設けられている。主アンモニアライン42の端は、気化器45のアンモニア入口に接続されている。
【0025】
気化器45は、加熱媒体である蒸気と液体アンモニアNHLとを熱交換させて、液体アンモニアNHLを加熱し気化させる熱交換器である。気化器45の媒体入口には、加熱媒体ライン53の一端が接続されている。この加熱媒体ライン53の他端は、主蒸気ライン27に接続されている。この加熱媒体ライン53には、加熱媒体ライン53を流れる蒸気の流量を調節する加熱媒体弁54が設けられている。気化器45の媒体出口には、加熱媒体回収ライン55の一端が接続されている。この加熱媒体回収ライン55の他端は、復水器24に接続されている。なお、加熱媒体回収ライン55の他端は、復水器24ではなく、排熱回収ボイラ21中の水が流れる部分に接続されてもよい。
【0026】
気化器45のアンモニア出口には、気体アンモニアライン46の一端が接続されている。この気体アンモニアライン46の他端は、燃焼器15の燃料ノズル15nに接続されている。この気体アンモニアライン46には、ここを流れる気体アンモニアNHGを昇圧する気体アンモニア圧縮機51が設けられている。
【0027】
液体アンモニアライン47の一端は、主アンモニアライン42中で、主アンモニアポンプ44と気化器45との間の位置に接続されている。液体アンモニアライン47の他端は、燃焼器15の燃料ノズル15nに接続されている。この液体アンモニアライン47には、ここを流れる液体アンモニアNHLを昇圧する液体アンモニアポンプ52が設けられている。
【0028】
流量調節弁43は、主アンモニアライン42中で、液体アンモニアライン47との接続位置と主アンモニアポンプ44との間の位置に設けられている。この流量調節弁43は、主アンモニアライン42を流れる液体アンモニアNHLの流量を調節することで、燃焼器15に供給される燃料の流量を調節する。
【0029】
切替器48は、気体アンモニアライン46から気体アンモニアNHGを燃焼器15の燃料ノズル15nに導く第一状態と、液体アンモニアライン47から液体アンモニアNHLを燃焼器15の燃料ノズル15nに導く第二状態と、気体アンモニアライン46からの気体アンモニアNHGと液体アンモニアライン47からの液体アンモニアNHLとを燃焼器15の燃料ノズル15nに導く第三状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替える。この切替器48は、気体アンモニア流量調節弁48gと液体アンモニア流量調節弁48iとを有する。気体アンモニア流量調節弁48gは、主アンモニアライン42中で、液体アンモニアライン47との接続位置と気化器45との間の位置に設けられている。この気体アンモニア流量調節弁48gは、主アンモニアライン42から気化器45に流入する液体アンモニアNHLの流量を調節することで、気体アンモニアライン46を経て燃焼器15に供給される気体アンモニアNHGの流量を調節する。液体アンモニア流量調節弁48iは、液体アンモニアライン47に設けられている。液体アンモニア流量調節弁48iは、液体アンモニアライン47を流れる液体アンモニアNHLの流量を調節する。
【0030】
第一状態は、液体アンモニア流量調節弁48iを閉状態に、気体アンモニア流量調節弁48gを開状態にすることで実現できる。第二状態は、液体アンモニア流量調節弁48iを開状態に、気体アンモニア流量調節弁48gを閉状態にすることで実現できる。第三状態は、液体アンモニア流量調節弁48iと気体アンモニア流量調節弁48gとを共に半開状態にすることで実現できる。
【0031】
切替器48は、気体アンモニア流量調節弁48g及び液体アンモニア流量調節弁48iの替りに、一つの三方弁でも代替できる。この場合、三方弁は、主アンモニアライン42と液体アンモニアライン47との接続位置に設けられる。この三方弁は、気化器45に流入する液体アンモニアNHLの流量と、液体アンモニアライン47に流入する液体アンモニアNHLの流量との比を調節する。
【0032】
本実施形態において、燃料燃焼設備は、燃料供給設備40と燃焼器15とを備える。
【0033】
制御装置60は、外部からガスタービン10の要求出力を受け付け、この要求出力に応じて、流量調節弁43及び切替器48の動作を制御する。この制御装置60は、コンピュータである。制御装置60は、ハードウェア的には、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUのワークエリアになるメモリ等の主記憶装置と、ハードディスクドライブ装置等の補助記憶装置と、キーボードやマウス等の入力装置と、表示装置と、を有する。この制御装置60は、例えば、補助記憶装置に記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、機能する。
【0034】
燃焼器15の燃料ノズル15nは、図2に示すように、ノズル軸線Anを周りに筒状の内筒31と、ノズル軸線Anを周りに筒状で内筒31の外周側に配置されている外筒32と、を有する。ここで、ノズル軸線Anが延びている方向を軸線方向Daとし、この軸線方向Daの両側のうち、一方側を後側Dab、他方側を前側Dafとする。内筒31の前側Dafの端の位置と外筒32の前側Dafの端の位置とは、軸線方向Daにおける位置が実質的に同じである。内筒31の内周側は液体燃料流路33を形成する。液体燃料流路33は、液体燃料入口33iと液体燃料噴射口33oとを有する。液体燃料流路33の後側Dabの端は、液体燃料入口33iを成し、液体燃料流路33の前側Dafの端は、液体燃料噴射口33oを成す。液体燃料入口33iには、液体アンモニアライン47が接続されている。内筒31の外周側と外筒32の内周側との間は、気体燃料流路34を形成する。気体燃料流路34は、気体燃料入口34iと気体燃料噴射口34oとを有する。外筒32の外周面中で外筒32の後側Dabの部分には、開口が形成されている。この開口が気体燃料流路34の気体燃料入口34iを成し、気体燃料流路34の前側Dafの端が気体燃料噴射口34oを成す。気体燃料入口34iには、気体アンモニアライン46が接続されている。外筒32の外周側であって、外筒32の前側Dafの端からは、前側Dafに向かって圧縮機14からの圧縮空気Acomが燃焼用空気として流れる。
【0035】
次に、図3に示すフローチャートに従って、以上で説明したガスタービンプラントにおける燃料供給方法の手順について説明する。
【0036】
この燃料供給方法では、アンモニア昇圧工程S1と、流量調節工程S2と、切替制御工程S3と、蒸気発生工程S4と、気化工程S5と、切替工程S6と、を実行する。
【0037】
アンモニア昇圧工程S1では、主アンモニアポンプ44がアンモニアタンク41から主アンモニアライン42に流入した液体アンモニアNHLを昇圧する。流量調節工程S2では、流量調節弁43が主アンモニアライン42を流れる液体アンモニアNHLの流量を調節する。この液体アンモニアNHLの流量調節により、燃焼器15に供給される燃料の流量が調節される。制御装置60は、ガスタービン10の要求出力を受け付ける。制御装置60は、この要求出力に応じて、燃焼器15に供給される燃料の流量を定める。燃料の流量は、要求出力と正の相関性を有するように定められる。すなわち、要求出力が大きくなると、燃料の流量が多くなるよう、燃料の流量が定められる。制御装置60は、燃焼器15に供給される燃料の流量が定めた流量になるよう、流量調節弁43に指示する。
【0038】
切替制御工程S3では、制御装置60が、燃料供給状態として第一状態と第二状態と第三状態とのうち、いずれか一の状態を定め、この一の状態になるよう切替器48に指示する。
【0039】
図4を参照して、制御装置60による燃料供給状態の定める方法について説明する。ガスタービン10への燃料供給量は、起動時から定格運転時になるまでの間、時間経過に伴って次第に増加する。また、前述したように、要求出力が定格出力より小さい出力の場合に、燃焼器15に供給される燃料の流量は、要求出力が定格出力の場合に、燃焼器15に供給される燃料の流量よりも少ない。ここで、要求出力が定格出力のときの燃料の流量パーセントを100%とすると、起動前の燃料の流量パーセントは0%になる。また、要求出力が定格出力より小さい予め定められた出力のときの燃料の流量パーセントをα%とする。
【0040】
制御装置60は、要求出力に応じて定めた燃料の流量パーセントが0%より大きくα%より小さい、少燃料流量の場合、第一状態、第二状態及び第三状態のうち、第二状態を選択する。この第二状態は、前述したように、液体アンモニアNHLのみを燃料として燃料ノズル15nに導く状態である。要求出力に応じて定めた燃料の流量パーセントがα%の場合、第一状態、第二状態及び第三状態のうち、前述したように、第三状態を選択する。この第三状態は、液体アンモニアNHLと気体アンモニアNHGとを燃料として燃料ノズル15nに導く状態である。要求出力に応じて定めた燃料の流量パーセントがα%より大きい、多燃料流量の場合、第一状態、第二状態及び第三状態のうち、第一状態を選択する。この第一状態は、前述したように、気体アンモニアNHGのみを燃料として燃料ノズル15nに導く状態である。制御装置60は、この選択した一の状態になるよう、切替器48に指示する。
【0041】
蒸気発生工程S4では、排熱回収ボイラ21がガスタービン10からの排気ガスと水とを熱交換させて、水を蒸気にする。
【0042】
気化工程S5は、切替制御工程S3で、燃料供給状態として第一状態又は第三状態が定められた場合に実行され、燃料供給状態として第二状態が定められた場合には実行されない。気化工程S5では、気化器45で、液体アンモニアNHLが加熱媒体により加熱されて、気化する。加熱媒体である蒸気は、蒸気発生工程S4で発生した蒸気の一部が用いられる。
【0043】
切替工程S6では、第一状態、第二状態及び第三状態のうち、制御装置60から指示された一の状態になるよう、切替器48が動作する。
【0044】
例えば、制御装置60から第一状態が指示された場合、切替器48が有する気体アンモニア流量調節弁48gと液体アンモニア流量調節弁48iとのうち、気体アンモニア流量調節弁48gが開になり、液体アンモニア流量調節弁48iが閉になる。この結果、液体アンモニアNHLが主アンモニアライン42及び気体アンモニア流量調節弁48gを介して、気化器45に導かれ、ここで気体アンモニアNHGになる。この気体アンモニアNHGは、気体アンモニアライン46及び気体アンモニア圧縮機51を介して、燃焼器15に導かれる。一方、主アンモニアポンプ44で昇圧された液体アンモニアNHLは、液体アンモニアライン47に流入しない。よって、多燃料流量時に実行させる第一状態では、気体アンモニアNHGのみが燃料として燃焼器15の燃料ノズル15nに供給される。この気体アンモニアNHGは、燃料ノズル15nの気体燃料流路34を流れ、気体燃料噴射口34oから燃焼筒15c内に噴射される。
【0045】
また、制御装置60から第二状態が指示された場合、切替器48が有する気体アンモニア流量調節弁48gと液体アンモニア流量調節弁48iとのうち、気体アンモニア流量調節弁48gが閉になり、液体アンモニア流量調節弁48iが開になる。この結果、液体アンモニアNHLは、液体アンモニアライン47、液体アンモニア流量調節弁48i及び液体アンモニアポンプ52を介して、燃焼器15に導かれる。一方、主アンモニアポンプ44で昇圧された液体アンモニアNHLは、気化器45に導かれない。よって、少燃料流量時に実行させる第二状態では、液体アンモニアNHLのみが燃料として燃焼器15の燃料ノズル15nに供給される。この液体アンモニアNHLは、燃料ノズル15nの液体燃料流路33を流れ、液体燃料噴射口33oから燃焼筒15c内に噴射される。
【0046】
また、制御装置60から第三状態が指示された場合、切替器48が有する気体アンモニア流量調節弁48gと液体アンモニア流量調節弁48iとの両方が半開になる。この結果、液体アンモニアNHLが主アンモニアライン42及び気体アンモニア流量調節弁48gを介して、気化器45に導かれ、ここで気体アンモニアNHGになる。この気体アンモニアNHGは、気体アンモニアライン46及び気体アンモニア圧縮機51を介して、燃焼器15に導かれる。また、液体アンモニアNHLは、液体アンモニアライン47にも流入し、この液体アンモニアライン47、液体アンモニア流量調節弁48i及び液体アンモニアポンプ52を介して、燃焼器15に導かれる。よって、少燃料流量と多燃料流量との間のα%燃料流量時に実行させる第三状態では、液体アンモニアNHLと気体アンモニアNHGとの両方が燃料として燃焼器15の燃料ノズル15nに供給される。この気体アンモニアNHGは、燃料ノズル15nの気体燃料流路34を流れ、気体燃料噴射口34oから燃焼筒15c内に噴射される。また、この液体アンモニアNHLは、燃料ノズル15nの液体燃料流路33を流れ、液体燃料噴射口33oから燃焼筒15c内に噴射される。
【0047】
ところで、図4に示すように、少燃料流量時から、α%燃料流量時を経て、多燃料流量時に移行する場合、α%燃料流量時が所定時間以上維持される。α%燃料流量時に実行させる第三状態では、この所定時間中、液体アンモニア流量調節弁48iが時間経過に伴って徐々に閉り、燃焼器15に導かれる液体アンモニアNHLの流量が時間経過に伴って徐々に少なくなる。この第三状態では、この所定時間中、気体アンモニア流量調節弁48gが時間経過に伴って徐々に開き、燃焼器15に導かれる気体アンモニアNHGの流量が時間経過に伴って徐々に多くなる。また、多燃料流量時から、α%燃料流量時を経て、少燃料流量時に移行する場合も、α%燃料流量時が所定時間以上維持される。α%燃料流量時に実行させる第三状態では、この所定時間中、気体アンモニア流量調節弁48gが時間経過に伴って徐々に閉り、燃焼器15に導かれる気体アンモニアNHGの流量が時間経過に伴って徐々に少なくなる。この第三状態では、この所定時間中、液体アンモニア流量調節弁48iが時間経過に伴って徐々に開き、燃焼器15に導かれる液体アンモニアNHLの流量が時間経過に伴って徐々に多くなる。
【0048】
アンモニアをガスタービン10の燃料として用いる場合、アンモニアを形成する窒素の一部がNOxになる。このNOxの生成量は、燃料として用いられるアンモニアの流量と燃空比に依存する。燃料として用いられるアンモニアの流量が多くなれば、NOxの生成量は多くなり、燃料として用いられるアンモニアの流量が少なくなれば、NOxの生成量は少なくなる。また、燃焼ガス中のNOx濃度は、図5に示すように、燃空比がある値rのときに、最大になる。このNOx濃度は、燃空比がある値rより小さくなるに連れて次第に低くなる。また、このNOx濃度は、燃空比がある値rより大きくなるに連れて次第に低くなる。
【0049】
そこで、本実施形態では、燃空比の値が、NOx濃度が所定値cより高くなる所定燃空比範囲R内の値にならないよう、燃空比が制御される。この燃空比の制御は、制御装置60が実行する。制御装置60は、前述したように、要求出力に応じて燃料の流量を定める。そして、制御装置60は、定めた燃料流量に基づき、IGV14iの開度を定め、この開度をIGV14iに指示する。このとき、制御装置60は、定めた燃料流量と圧縮機14が吸い込む空気の流量との比である燃空比の値が、前述の所定燃空比範囲R内の値にならないよう、IGV14iの開度を定める。
【0050】
以上のように、本実施形態では、燃焼器15に気体アンモニアNHGを導くことも、燃焼器15に液体アンモニアNHLを導くことも可能である。燃焼器15の燃料ノズル15nから燃料として液体アンモニアNHLを噴射した場合、失火等が抑制され、燃料を安定燃焼させることができる。一方、燃焼器15の燃料ノズル15nから燃料として気体アンモニアNHGを噴射した場合、NOxの生成を抑えることができる。ところで、低燃料流量時には、燃料の失火の可能性が高いが、アンモニアの流量自体が少ないためにNOxの生成量は少ない。逆に、多燃料流量時には、燃料の失火の可能性が低いが、アンモニアの流量自体が多いため、NOxの生成量は多い。そこで、本実施形態では、前述したように、低燃料流量時には、燃料の失火の可能性を低くして燃料の安定燃焼を図るために、燃焼器15に液体アンモニアNHLを導く。また、本実施形態では、多燃料流量時には、NOxの生成を抑えるために、燃焼器15に気体アンモニアNHGを導く。よって、本実施形態では、起動時に、液体アンモニアを燃焼器に供給することで、外部から熱エネルギー供給がなくても、燃料としてのアンモニアを燃焼器に供給することができる。さらに、本実施形態では、起動時から定格運転時にわたって、アンモニア以外の燃料を使用せずに、アンモニアを安定燃焼させつつも、NOxの生成を抑制することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、前述したように、燃空比の値が、NOx濃度が所定値cより高くなる所定燃空比範囲R内の値にならないよう、燃空比が制御される。よって、本実施形態では、この観点からも、NOxの生成を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、ガスタービン10から排気された燃焼ガスが、脱硝装置20を経た後、煙突22から外部に排出される。このため、本実施形態では、NOxの排出量を抑制することができる。
【0053】
燃焼器15に気体アンモニアNHGのみが導かれている状態から、燃焼器15に液体アンモニアNHLのみを導く状態に移行する場合、逆に、燃焼器15に液体アンモニアNHLのみが導かれている状態から、燃焼器15に気体アンモニアNHGのみを導く状態に移行する場合、突然、燃焼器15の燃料ノズル15nから噴射される燃料の相が変化すると、燃料の安定燃焼性が損なわれる。本実施形態の燃料ノズル15nは、液体燃料流路33と気体燃料流路34とを有し、液体アンモニアNHLと気体アンモニアNHGとを同時に噴射することができる。また、本実施形態では、第一状態から第二状態に移行する過程、又は第二状態から第一状態に移行する過程で、液体アンモニアNHLと気体アンモニアNHGとの両方を燃料として燃焼器15の燃料ノズル15nに導く。このため、本実施形態では、以上のような移行過程での燃料の安定燃焼性を確保することができる。
【0054】
「第二実施形態」
以下、本開示に係るガスタービンプラントの第二実施形態について、図6を用いて説明する。
【0055】
本実施形態のガスタービンプラントは、第一実施形態のガスタービンプラントと同様、ガスタービン10と、脱硝装置20と、排熱回収ボイラ21と、蒸気タービン23と、復水器24と、ポンプ25と、燃料供給設備40aと、制御装置60と、を備える。但し、本実施形態の燃料供給設備40aは、第一実施形態の燃料供給設備40と異なる。
【0056】
本実施形態の燃料供給設備40aは、第一実施形態の燃料供給設備40と同様、アンモニアタンク41と、主アンモニアライン42と、主アンモニアポンプ44と、気化器45と、気体アンモニアライン46と、液体アンモニアライン47と、切替器48と、加熱媒体ライン53と、加熱媒体弁54と、加熱媒体回収ライン55と、を有する。但し、本実施形態の燃料供給設備40aは、第一実施形態の燃料供給設備40における、流量調節弁43と、気体アンモニア圧縮機51と、液体アンモニアポンプ52と、を有していない。このため、本実施形態では、切替器48を構成する液体アンモニア流量調節弁48iと気体アンモニア流量調節弁48gとが、第一実施形態における流量調節弁43の機能も担う。また、本実施形態では、主アンモニアポンプ44が、気体アンモニア圧縮機51及び液体アンモニアポンプ52の機能も担う。
【0057】
本実施形態の燃料供給設備40aは、前述したように、第一実施形態の燃料供給設備40における、流量調節弁43と、気体アンモニア圧縮機51と、液体アンモニアポンプ52と、を有していない。このため、本実施形態では、第一実施形態よりも、設備製造コストを抑えることができる。
【0058】
「第三実施形態」
以下、本開示に係るガスタービンプラントの第三実施形態について、図7を用いて説明する。
【0059】
本実施形態のガスタービンプラントは、第一実施形態及び第二実施形態のガスタービンプラントと同様、ガスタービン10と、脱硝装置20と、排熱回収ボイラ21と、蒸気タービン23と、復水器24と、ポンプ25と、燃料供給設備40bと、制御装置60と、を備える。但し、本実施形態の燃料供給設備40bは、第一実施形態及び第二実施形態の燃料供給設備40,40aと異なる。
【0060】
本実施形態の燃料供給設備40bは、第一実施形態の燃料供給設備40と同様、アンモニアタンク41と、主アンモニアライン42と、流量調節弁43と、主アンモニアポンプ44と、気化器45と、気体アンモニアライン46と、切替器48bと、加熱媒体ライン53と、加熱媒体弁54と、加熱媒体回収ライン55と、を有する。但し、本実施形態の燃料供給設備40bは、気体アンモニアライン46が第一実施形態における液体アンモニアライン47を兼ねる。このため、本実施形態の燃料供給設備40bは、気体アンモニアライン46に対して独立した液体アンモニアライン47は存在しない。よって、本実施形態の燃料供給設備40bは、第二実施形態の燃料供給設備40aと同様、気体アンモニア圧縮機51と、液体アンモニアポンプ52と、を有していない。また、本実施形態の切替器48bは、加熱媒体弁54を有し、第一実施形態及び第二実施形態の切替器48のように、液体アンモニア流量調節弁48i及び気体アンモニア流量調節弁48gを有していない。
【0061】
本実施形態では、第二状態を実現する場合、加熱媒体弁54を閉じる。この結果、加熱媒体である蒸気は、気化器45に導かれず、気化器45に主アンモニアライン42からの液体アンモニアNHLが流入しても、加熱媒体で加熱されず、液体アンモニアNHLの状態のまま、この気化器45から流出する。この液体アンモニアNHLは、液体アンモニアライン47を兼ねる気体アンモニアライン46を介して、燃焼器15の燃料ノズル15nに導かれる。
【0062】
また、本実施形態では、第一状態を実現する場合、加熱媒体弁54を開ける。この結果、加熱媒体である蒸気は、気化器45に導かれ、気化器45に主アンモニアライン42からの液体アンモニアNHLが流入すると、加熱媒体で加熱され、気化した後、この気化器45から流出する。この気体アンモニアNHGは、液体アンモニアライン47を兼ねる気体アンモニアライン46を介して、燃焼器15の燃料ノズル15nに導かれる。
【0063】
以上のように、本実施形態の燃料供給設備40bは、気体アンモニアライン46が液体アンモニアライン47を兼ねるため、第一実施形態及び第二実施形態よりも、設備製造コストを抑えることができる。
【0064】
なお、本実施形態の燃料供給設備40bは、気体アンモニアライン46に対して独立した液体アンモニアライン47は存在しないため、本実施形態の燃料ノズル15nは、第一実施形態及び第二実施形態のように、二種類の燃料流路を有しておらず、一種類の燃料流路のみを有する。
【0065】
排熱回収ボイラ21では、水を蒸気にする過程で、温水が生成される。そこで、以上の各実施形態で、液体アンモニアNHLとの熱交換対象である加熱媒体として、この温水を用いてもよい。
【0066】
「第一変形例」
第一実施形態では、図4を用いて説明したように、少燃料流量時から、α%燃料流量時を経て、多燃料流量時に移行する場合、及び、多燃料流量時から、α%燃料流量時を経て、少燃料流量時に移行する場合には、α%燃料流量時が所定時間以上維持される。しかしながら、以上のような移行時に、α%燃料流量を所定時間以上維持しなくてもよい。
【0067】
ここで、図8に示すように、燃料流量パーセントがα%より大きく100%より小さい燃料パーセントをβ%とする。また、ガスタービン10への燃料供給量が、起動時から定格運転時になるまでの間、時間経過に伴ってリニアに増加するとする。よって、起動時から定格運転時になる過程におけるα%燃料流量時からβ%燃料流量時の間も、ガスタービン10への燃料供給量が、時間経過に伴ってリニアに増加するとする。
【0068】
本変形例では、燃料流量パーセントがα%より小さい少燃料流量時に、第二状態を実行し、燃料流量パーセントがβ%より大きい多燃料流量時に、第一状態を実行し、燃料流量パーセントがα%以上でβ%以下のときに、第三状態を実行する。
【0069】
少燃料流量時から多燃料流量時に移行する場合、燃料流量パーセントがα%以上でβ%以下のときに実行される第三状態では、液体アンモニア流量調節弁48iが時間経過に伴って徐々に閉り、燃焼器15に導かれる液体アンモニアNHLの流量が時間経過に伴って徐々に少なくなる。一方、気体アンモニア流量調節弁48gが時間経過に伴って徐々に開き、燃焼器15に導かれる気体アンモニアNHGの流量が時間経過に伴って徐々に多くなる。また、多燃料流量時から少燃料流量時に移行する場合、燃料流量パーセントがα%以上でβ%以下のときに実行される第三状態では、気体アンモニア流量調節弁48gが時間経過に伴って徐々に閉り、燃焼器15に導かれる気体アンモニアNHGの流量が時間経過に伴って徐々に少なくなる。一方、液体アンモニア流量調節弁48iが時間経過に伴って徐々に開き、燃焼器15に導かれる液体アンモニアNHLの流量が時間経過に伴って徐々に多くなる。
【0070】
「第二変形例」
以上の各実施形態では、液体アンモニアNHLとの熱交換対象である加熱媒体として、排熱回収ボイラ21で生成された蒸気又は温水を用いる。しかしながら、液体アンモニアNHLとの熱交換対象である加熱媒体として、排熱回収ボイラ21内を流れる排気ガスを用いてもよい。そこで、液体アンモニアNHLとの熱交換対象である加熱媒体として、排熱回収ボイラ21内を流れる排気ガスを用いる変形例について、図9を用いて説明する。
【0071】
本変形例の燃料供給設備40cは、第一実施形態の燃料供給設備40の変形例である。本変形例における気化器45には、排熱回収ボイラ21内を流れる排気ガスの一部が導かれる。このため、本変形例における気化器45の媒体入口には、加熱媒体ライン53cの一端が接続され、この加熱媒体ライン53cの他端は、排熱回収ボイラ21に接続されている。この加熱媒体ライン53cには、加熱媒体ライン53cを流れる排気ガスの流量を調節する加熱媒体弁54cが設けられている。気化器45の媒体出口には、加熱媒体回収ライン55cの一端が接続されている。この加熱媒体回収ライン55cの他端は、例えば、煙突22に接続されている。なお、加熱媒体回収ライン55cの他端は、煙突22ではなく、排熱回収ボイラ21中で、加熱媒体ライン53cの他端が接続されている位置よりも、下流側の位置に接続してもよい。ここでの下流側は、排熱回収ボイラ21内を流れる排気ガスの流れに対する下流側である。
【0072】
「第三変形例」
以上の第二変形例の燃料供給設備40cは、排熱回収ボイラ21外に気化器45を配置し、この気化器45に排熱回収ボイラ21内を流れる排気ガスを導くように構成した燃料供給設備である。しかしながら、図10に示すように、気化器としての伝熱管45dを排熱回収ボイラ21内に配置し、この伝熱管45d内に液体アンモニアNHLを流し、この液体アンモニアNHLを排熱回収ボイラ21内であって伝熱管45d外を流れる排気ガスで加熱してもよい。この燃料供給設備40dの場合、主アンモニアライン42の端が伝熱管45dの一端に接続され、気体アンモニアライン46の一端が伝熱管45dの他端に接続される。
【0073】
なお、この第三変形例の燃料供給設備40d及び第二変形例の燃料供給設備40cは、第一実施形態の燃料供給設備40の変形例であるが、第二実施形態の燃料供給設備40a及び第三実施形態の燃料供給設備40bにおいても、第三変形例又は第二変形例と同様に、液体アンモニアNHLとの熱交換対象である加熱媒体として、排熱回収ボイラ21内を流れる排気ガスを用いてもよい。
【0074】
以上、本開示の実施形態及び変形例について詳述したが、本開示は上記実施形態及び上記変形例に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0075】
「付記」
以上の実施形態における燃料供給設備は、例えば、以下のように把握される。
【0076】
(1)第一態様における燃料供給設備は、
液体アンモニアNHLを貯留可能なアンモニアタンク41に接続されている主アンモニアライン42と、前記主アンモニアライン42中に設けられ、前記アンモニアタンク41からの前記液体アンモニアNHLを昇圧可能な主アンモニアポンプ44と、前記主アンモニアライン42の端に接続され、加熱媒体と前記主アンモニアポンプ44で昇圧された前記液体アンモニアNHLとを熱交換させて前記液体アンモニアNHLを加熱して気化させることができる気化器45と、前記気化器45に接続され、前記気化器45で気化したアンモニアである気体アンモニアNHGを燃料としてガスタービン10の燃焼器15に導くことができる気体アンモニアライン46と、前記主アンモニアポンプ44で昇圧された液体アンモニアNHLであって、前記気化器45で前記加熱媒体と熱交換されていない液体アンモニアNHLを燃料として、前記燃焼器15に導くことができる液体アンモニアライン47と、前記気体アンモニアライン46から前記気体アンモニアNHGを前記燃焼器15に導く第一状態と、前記液体アンモニアライン47から前記液体アンモニアNHLを前記燃焼器15に導く第二状態とを含む複数の状態の間でアンモニア供給状態を切り替えることができる切替器48,48bと、を備える。
【0077】
本態様では、燃焼器15に気体アンモニアNHGを導くことも、燃焼器15に液体アンモニアNHLを導くことも可能である。燃焼器15の燃料ノズル15nから燃料として液体アンモニアNHLを噴射した場合、失火等が抑制され、燃料を安定燃焼させることができる。一方、燃焼器15の燃料ノズル15nから燃料として気体アンモニアNHGを噴射した場合、NOxの生成を抑えることができる。ところで、低燃料流量時には、燃料の失火の可能性が高いが、アンモニアの流量自体が少ないためにNOxの生成量は少ない。逆に、多燃料流量時には、燃料の失火の可能性が低いが、アンモニアの流量自体が多いため、NOxの生成量は多い。そこで、低燃料流量時には、燃料の失火の可能性を低くして燃料の安定燃焼を図るために、燃焼器15に液体アンモニアNHLを導く。また、多燃料流量時には、NOxの生成を抑えるために、燃焼器15に気体アンモニアNHGを導く。この結果、本態様では、アンモニアを安定燃焼させつつも、NOxの生成を抑制することができる。
【0078】
(2)第二態様における燃料供給設備は、
前記第一態様における燃料供給設備において、前記切替器48,48bは、前記気体アンモニアライン46からの前記気体アンモニアNHGと前記液体アンモニアライン47からの前記液体アンモニアNHLとを前記燃焼器15に導く第三状態と、前記第一状態と、前記第二状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替えることができる。
【0079】
燃焼器15に気体アンモニアNHGのみが導かれている状態から、燃焼器15に液体アンモニアNHLのみを導く状態に移行する場合、逆に、燃焼器15に液体アンモニアNHLのみが導かれている状態から、燃焼器15に気体アンモニアNHGのみを導く状態に移行する場合、突然、燃焼器15の燃料ノズル15nから噴射される燃料の相が変化すると、燃料の安定燃焼性が損なわれる。そこで、本態様では、第一状態から第二状態に移行する過程、又は第二状態から第一状態に移行する過程で、第三状態を実行する。このため、本態様では、以上のような移行過程での燃料の安定燃焼性を確保することができる。
【0080】
(3)第三態様における燃料供給設備は、
前記第一態様又は前記第二態様における燃料供給設備において、さらに、前記燃焼器15に供給される前記燃料の流量を調節する流量調節弁43を備える。
【0081】
(4)第四態様における燃料供給設備は、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様における燃料供給設備において、前記液体アンモニアライン47の端は、前記主アンモニアライン42中であって、前記主アンモニアポンプ44と前記気化器45との間の位置に接続されている。
【0082】
(5)第五態様における燃料供給設備は、
前記第四態様における燃料供給設備において、前記切替器48は、前記第一状態を実現するために、前記主アンモニアポンプ44で昇圧された前記液体アンモニアNHLを前記気化器45に導く状態と、前記第二状態を実現するために、前記主アンモニアポンプ44で昇圧された前記液体アンモニアNHLを前記液体アンモニアライン47に導く状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替えることができる弁48g,48iである。
【0083】
(6)第六態様における燃料供給設備は、
前記第四態様又は前記第五態様における燃料供給設備において、さらに、前記液体アンモニアライン47中に設けられ、前記液体アンモニアライン47を流れる前記液体アンモニアNHLを昇圧可能な液体アンモニアポンプ52と、前記気体アンモニアライン46中に設けられ、前記気体アンモニアライン46を流れる前記気体アンモニアNHGを昇圧可能な気体アンモニア圧縮機51と、を備える。
【0084】
本態様では、液体アンモニアライン47を経て、燃焼器15に導かれる液体アンモニアNHLの圧力を容易に目標の圧力にすることができると共に、気体アンモニアライン46を経て、燃焼器15に導かれる気体アンモニアNHGの圧力を容易に目標の圧力にすることができる。
【0085】
(7)第七態様における燃料供給設備は、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様における燃料供給設備において、前記気体アンモニアライン46は、前記液体アンモニアライン47を兼ねる。前記切替器48bは、前記第一状態を実現するために、前記加熱媒体を前記気化器45に導く状態と、前記第二状態を実現するために、前記加熱媒体を前記気化器45に導かない状態と、の間で前記加熱媒体の供給状態を切り替える加熱媒体弁54である。
【0086】
本態様では、気体アンモニアライン46が液体アンモニアライン47を兼ねるため、ライン構成が簡単になり、設備製造コストを抑えることができる。
【0087】
(8)第八態様における燃料供給設備は、
前記第一態様から前記第七態様のうちのいずれか一態様における燃料供給設備において、さらに、外部から前記ガスタービンの要求出力を受け付け、前記要求出力に応じて、前記第一状態と前記第二状態とを含む複数の状態のうちの一の状態を定め、前記切替器48,48bに対して、前記一の状態になるよう指示する制御装置60を備える。
【0088】
燃焼器15に供給する燃料流量は、要求出力に応じて変化する。本態様の制御装置60は、要求出力に応じて、前記第一状態と前記第二状態とを含む複数の状態のうちの一の状態を定める。このため、本態様では、多燃料流量時に燃料供給状態を第一状態にし、少燃料流量時に燃料供給状態を第二状態にすることができる。
【0089】
以上の実施形態における燃料燃焼設備は、例えば、以下のように把握される。
(9)第九態様における燃料燃焼設備は、
前記第一態様から前記第八態様のうちのいずれか一態様における燃料供給設備と、前記燃料供給設備40からの前記燃料を圧縮空気Acom中で燃焼させて、燃焼ガスを生成する前記燃焼器15と、を備える。
【0090】
(10)第十態様における燃料燃焼設備は、
前記第九態様における燃料燃焼設備において、前記燃焼器15は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスをタービン16に導くことができる燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、前記燃焼室15s内に前記燃料及び圧縮空気Acomを噴射可能な燃焼器本体15bと、を有する。前記燃焼器本体15bは、前記燃焼室15s内に前記燃料を噴射可能な燃料ノズル15nを有する。前記燃料ノズル15nは、前記気体アンモニアライン46に接続され、前記気体アンモニアライン46を流れてきた前記気体アンモニアNHGを前記燃焼室15s内に噴射可能な気体燃料流路34と、前記液体アンモニアライン47に接続され、前記液体アンモニアライン47を流れてきた前記液体アンモニアNHLを前記燃焼室15s内に噴射可能な液体燃料流路33と、を有する。
【0091】
以上の実施形態におけるガスタービンプラントは、例えば、以下のように把握される。
(11)第十一態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第八態様のうちのいずれか一態様における燃料供給設備と、前記ガスタービン10と、を備える。前記ガスタービン10は、空気を圧縮して圧縮空気Acomを生成する圧縮機14と、前記燃料供給設備40からの前記燃料を前記圧縮空気Acom中で燃焼させて、燃焼ガスを生成する前記燃焼器15と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービン16と、を有する。
【0092】
(12)第十二態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記燃焼器15は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービン16に導くことができる燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、前記燃焼室15s内に前記燃料及び前記圧縮空気Acomを噴射可能な燃焼器本体15bと、を有する。前記燃焼器本体15bは、前記燃焼室15s内に前記燃料を噴射可能な燃料ノズル15nを有する。前記燃料ノズル15nは、前記気体アンモニアライン46に接続され、前記気体アンモニアライン46を流れてきた前記気体アンモニアNHGを前記燃焼室15s内に噴射可能な気体燃料流路34と、前記液体アンモニアライン47に接続され、前記液体アンモニアライン47を流れてきた前記液体アンモニアNHLを前記燃焼室15s内に噴射可能な液体燃料流路33と、を有する。
【0093】
本態様では、燃料ノズル15nから、気体アンモニアNHGと液体アンモニアNHLとを同時噴射することができる。
【0094】
(13)第十三態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十一態様又は前記第十二態様におけるガスタービンプラントにおいて、さらに、前記タービン16から排気された前記燃焼ガスである排気ガスの熱を利用して蒸気を発生させる排熱回収ボイラ21と、前記排熱回収ボイラ21で発生した蒸気の一部又は前記排熱回収ボイラ21で加熱された水の一部を前記加熱媒体として、前記気化器45に導く加熱媒体ライン53と、を備える。
【0095】
(14)第十四態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十一態様又は前記第十二態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記気化器45は、前記加熱媒体としての前記タービン16から排気された前記燃焼ガスである排気ガスと前記主アンモニアポンプ44で昇圧された前記液体アンモニアNHLとを熱交換させて前記液体アンモニアNHLを加熱して気化させることができる。
【0096】
以上の実施形態における燃料供給方法は、例えば、以下のように把握される。
(15)第十五態様における燃料供給方法は、
液体アンモニアNHLを貯留しているアンモニアタンク41からの前記液体アンモニアNHLを昇圧するアンモニア昇圧工程S1と、加熱媒体と前記アンモニア昇圧工程S1で昇圧された前記液体アンモニアNHLとを熱交換させて前記液体アンモニアNHLを加熱して気化させる気化工程S5と、前記気化工程S5で気化したアンモニアである気体アンモニアNHGを燃料としてガスタービン10の燃焼器15に導く第一状態と、前記アンモニア昇圧工程S1で昇圧された液体アンモニアNHLであって、前記気化工程S5で前記加熱媒体と熱交換されていない液体アンモニアNHLを燃料として、前記燃焼器15に導く第二状態とを含む複数の状態の間で、アンモニア供給状態を切り替える切替工程S6と、を実行する。
【0097】
本態様では、前述の第一態様と同様に、アンモニアを安定燃焼させつつも、NOxの生成を抑制することができる。
【0098】
(16)第十六態様における燃料供給方法は、
前記第十五態様における燃料供給方法において、前記切替工程S6では、前記気体アンモニアNHGと前記液体アンモニアNHLとを前記燃焼器15に導く第三状態と、前記第一状態と、前記第二状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替える。
【0099】
本態様では、前述の第二態様と同様に、第一状態から第二状態に移行する過程、又は第二状態から第一状態に移行する過程で、第三状態を実行することで、以上のような移行過程での燃料の安定燃焼性を確保することができる。
【0100】
(17)第十七態様における燃料供給方法は、
前記第十五態様又は前記第十六態様における燃料供給方法において、さらに、前記燃焼器15に供給する前記燃料の流量を調節する流量調節工程S2を実行する。
【0101】
(18)第十八態様における燃料供給方法は、
前記第十五態様から前記第十七態様のうちのいずれか一態様における燃料供給方法において、前記気化工程S5は、前記アンモニア昇圧工程S1で昇圧された前記液体アンモニアNHLが流入すると共に、前記加熱媒体が流入し、前記液体アンモニアNHLと前記加熱媒体とを熱交換させる気化器45により実行される。前記切替工程S6では、前記第一状態を実現するために、前記アンモニア昇圧工程S1で昇圧された前記液体アンモニアNHLを前記気化器45に導く状態と、前記第二状態を実現するために、前記アンモニア昇圧工程S1で昇圧された前記液体アンモニアNHLを前記気化器45に導かない状態と、の間でアンモニア供給状態を切り替える。
【0102】
(19)第十九態様における燃料供給方法は、
前記第十五態様から前記第十七態様のうちのいずれか一態様における燃料供給方法において、前記気化工程S5は、前記アンモニア昇圧工程S1で昇圧された前記液体アンモニアNHLが流入すると共に、前記加熱媒体が流入し、前記液体アンモニアNHLと前記加熱媒体とを熱交換させる気化器45により実行される。前記切替工程S6では、前記第一状態を実現するために、前記加熱媒体を前記気化器45に導く状態と、前記第二状態を実現するために、前記加熱媒体を前記気化器45に導かない状態と、の間で前記加熱媒体の供給状態を切り替える。
【0103】
(20)第二十態様における燃料供給方法は、
前記第十五態様から前記第十九態様のうちのいずれか一態様における燃料供給方法において、さらに、外部から前記ガスタービンの要求出力を受け付け、前記要求出力に応じて、前記第一状態と前記第二状態とを含む複数の状態のうちの一の状態を定め、前記切替工程S6で前記一の状態を実行させる切替制御工程S3を実行する。
【0104】
燃焼器15に供給する燃料流量は、要求出力に応じて変化する。本態様では、前述の第八態様と同様に、多燃料流量時に燃料供給状態を第一状態にし、少燃料流量時に燃料供給状態を第二状態にすることができる。
【0105】
(21)第二十一態様における燃料供給方法は、
前記第十五態様から前記第二十態様のうちのいずれか一態様における燃料供給方法において、さらに、前記ガスタービン10から排気された排気ガスの熱を利用して蒸気を発生させる蒸気発生工程S4を実行し、前記気化工程S5では、前記蒸気発生工程S4で発生した前記蒸気の一部、又は、前記蒸気発生工程S4の実行過程で生成された温水を前記加熱媒体として用いる。
【0106】
(22)第二十二態様における燃料供給方法は、
前記第十五態様から前記第二十態様のうちのいずれか一態様における燃料供給方法において、前記気化工程S5では、前記ガスタービン10から排気された排気ガスを前記加熱媒体として用いる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示の一態様では、アンモニアを安定燃焼させつつも、NOxの生成を抑制することができる。
【符号の説明】
【0108】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
12:中間ケーシング
14:圧縮機
14r:圧縮機ロータ
14c:圧縮機ケーシング
14i:吸気量調節機(又はIGV)
15:燃焼器
15c:燃焼筒(又は尾筒、又は燃焼室形成器)
15s:燃焼室
15b:燃焼器本体
15n:燃料ノズル
16:タービン
16r:タービンロータ
16c:タービンケーシング
20:脱硝装置
21:排熱回収ボイラ
22:煙突
23:蒸気タービン
24:復水器
25:ポンプ
26:給水ライン
27:主蒸気ライン
31:内筒
32:外筒
33:液体燃料流路
33i:液体燃料入口
33o:液体燃料噴射口
34:気体燃料流路
34i:気体燃料入口
34o:気体燃料噴射口
40,40a,40b,40c,40d:燃料供給設備
41:アンモニアタンク
42:主アンモニアライン
43:流量調節弁
44:主アンモニアポンプ
45:気化器
45d:伝熱管(気化器)
46:気体アンモニアライン
47:液体アンモニアライン
48,48b:切替器
48g:気体アンモニア流量調節弁
48i:液体アンモニア流量調節弁
51:気体アンモニア圧縮機
52:液体アンモニアポンプ
53:加熱媒体ライン
54:加熱媒体弁
55:加熱媒体回収ライン
60:制御装置
A:空気
Acom:圧縮空気
NHG:気体アンモニア
NHL:液体アンモニア
An:ノズル軸線
Ar:ロータ軸線
Da:軸線方向
Dab:後側
Daf:前側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器と、
前記燃焼器に接続されるタービンと、
燃料である液体アンモニアを加熱する加熱部と、
前記加熱部によって加熱された前記燃料を前記燃焼器に設けた少なくとも1つの燃料ノズルに供給可能な第1燃料供給ラインと、
前記加熱部によって加熱されていない液体アンモニアを前記少なくとも1つの燃料ノズルに供給可能な第2燃料供給ラインと、
を備えるガスタービンシステム。
【請求項2】
前記加熱部は燃料である前記液体アンモニアを気化させ、
前記第1燃料供給ラインは、当該気化した気体アンモニアを前記燃料ノズルに供給可能である請求項1に記載のガスタービンシステム。
【請求項3】
燃焼器と、
前記燃焼器に接続されるタービンと、
燃料である液体アンモニアを加熱して気化させる加熱部と、
当該気化した気体アンモニアを前記燃焼器に設けた少なくとも1つの燃料ノズルに供給可能な第1燃料供給ラインと、
液体アンモニアを液体の状態のまま前記少なくとも1つの燃料ノズルに供給可能な第2燃料供給ラインと、
を備えるガスタービンシステム。
【請求項4】
前記加熱部は、
前記タービンから排気される燃焼ガスが有する熱を回収する排熱回収ボイラによって生成された水蒸気の少なくとも一部と、前記燃料とを熱交換させる熱交換器を含む請求項1又は3に記載のガスタービンシステム。
【請求項5】
前記燃料ノズルは、
前記第1燃料供給ラインが接続されており、気体アンモニアを噴射可能な気体燃料噴射口と、
前記第2燃料供給ラインが接続されており、液体アンモニアを噴射可能な液体燃料噴射口と、
を有する請求項2又は3に記載のガスタービンシステム。
【請求項6】
前記燃料ノズルは前記気体燃料噴射口と前記液体燃料噴射口から、それぞれ、気体アンモニアと液体アンモニアを同時に噴射可能である請求項5に記載のガスタービンシステム。
【請求項7】
前記燃料ノズルの前記気体燃料噴射口と前記液体燃料噴射口から、それぞれ、気体アンモニアと液体アンモニアを同時に前記燃焼器内に噴射して燃焼させる請求項5に記載のガスタービンシステム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本開示は、アンモニアを燃料とするガスタービンシステムに関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンシステムは、
燃焼器と、前記燃焼器に接続されるタービンと、燃料である液体アンモニアを加熱する加熱部と、前記加熱部によって加熱された前記燃料を前記燃焼器に設けた少なくとも1つの燃料ノズルに供給可能な第1燃料供給ラインと、前記加熱部によって加熱されていない液体アンモニアを前記少なくとも1つの燃料ノズルに供給可能な第2燃料供給ラインと、を備える。この場合、前記加熱部は燃料である前記液体アンモニアを気化させる。前記第1燃料供給ラインは、当該気化した気体アンモニアを前記燃料ノズルに供給可能である。
また、前記目的を達成するための他の態様としてのガスタービンシステムは、
燃焼器と、前記燃焼器に接続されるタービンと、燃料である液体アンモニアを加熱して気化させる加熱部と、当該気化した気体アンモニアを前記燃焼器に設けた少なくとも1つの燃料ノズルに供給可能な第1燃料供給ラインと、液体アンモニアを液体の状態のまま前記少なくとも1つの燃料ノズルに供給可能な第2燃料供給ラインと、を備える。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】