(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177558
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
B60J 10/50 20160101AFI20241212BHJP
B60J 10/16 20160101ALI20241212BHJP
B60J 10/27 20160101ALI20241212BHJP
B60J 10/88 20160101ALI20241212BHJP
B60J 10/18 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
B60J10/50
B60J10/16
B60J10/27
B60J10/88
B60J10/18
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024177696
(22)【出願日】2024-10-10
(62)【分割の表示】P 2022007095の分割
【原出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌利
(72)【発明者】
【氏名】清水 康広
(57)【要約】
【課題】ドアガラスの振動を効率的に流して散逸させることが可能なガラスランを提供する。
【課題を解決するための手段】
底壁20と、車外側側壁30と、車内側側壁40を基本骨格とし、基本骨格がドアフレーム3に取付けられ、ドアガラス4の昇降をガイドするガラスラン10であって、ガラスラン10の車外側側壁30の車内側には、ドアガラス4に摺接すると共に、車外側側壁30より硬度が高い硬質部31が形成され、硬質部31の厚さをt1、硬質部31と車外側側壁30の厚さの和をTとした時、t1は、0.4T以上、1.0T以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、
前記車外側側壁の車内側には、前記ドアガラスに摺接すると共に、前記車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、
前記硬質部の厚さをt1、前記硬質部と前記車外側側壁の厚さの和をTとした時、
t1は、0.4T以上、1.0T以下であることを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、
前記車外側側壁の車内側には、前記ドアガラスに摺接すると共に、前記車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、
前記硬質部の厚さをt1、前記硬質部と前記車外側側壁の厚さの和をTとした時、
t1は、0.4T以上、1.0T未満であり、
前記硬質部の車外側にインサートが埋設されていることを特徴とするガラスラン。
【請求項3】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、
前記車外側側壁の車内側には、前記ドアガラスに摺接すると共に、前記車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、
前記車外側側壁の前記硬質部の車外側にのみインサートが埋設されていることを特徴とするガラスラン。
【請求項4】
前記インサートは、金属板、ワイヤーキャリア、又はワイヤー芯材である請求項2又は請求項3に記載のガラスラン。
【請求項5】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、
前記車外側側壁の車内側には、前記ドアガラスに摺接する硬質部が形成され、
前記車外側側壁の前記硬質部と接続する部分には、半硬質材で構成される半硬質材部が形成され、前記半硬質材部の硬度は、前記硬質部より小さく、前記半硬質材部以外の前記車外側側壁より大きいことを特徴とするガラスラン。
【請求項6】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、
前記車外側側壁の車内側には、前記ドアガラスに摺接すると共に、前記車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、
前記硬質部は、前記ドアガラスに摺接する部分と、前記車外側側壁内とに分割して形成されることを特徴とするガラスラン。
【請求項7】
前記車外側側壁内に形成される前記硬質部は、前記車外側側壁の車外側に露出するように形成される請求項6に記載のガラスラン。
【請求項8】
前記硬質部の車内側表面には、凸状のリブが形成されている請求項6又は請求項7に記載のガラスラン。
【請求項9】
車外側に露出する前記硬質部は、前記ドアフレームに面で当接している請求項6又は請求項7に記載のガラスラン。
【請求項10】
車外側に露出する前記硬質部は、突出部として形成されている請求項6又は請求項7に記載のガラスラン。
【請求項11】
前記硬質部の厚さをt1、前記硬質部と前記車外側側壁の厚さの和をT、前記硬質部の 前記ドアガラスに摺接する部分の厚さをt2、前記車外側側壁内側の厚さをt3とした時 、t2+t3=t1であり、t1は、0.4T以上、1.0未満である請求項6又は請求項7に記載のガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両のドアに形成されたドアフレームに取付けられるガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両の静粛性向上は、乗員の快適性が高められるので、商品力向上のアピール度が高い。又、今後急速に普及が進むことが予想される電気自動車においては、従来搭載されているエンジンが無くなるので、そのエンジン音が無くなることによって残存する主な騒音は、ロードノイズと風切音が顕在化する。したがって、それらの低減技術の必要性が従来以上に高まっている。
【0003】
風切音は、走行時の風が車両に当たって車室外で発生する音が車体を透過して車室内に届く音である。その透過経路では、車室内の乗員の耳の位置に近いドアガラスの寄与が最も大きいことが分かっており、ドアガラスの板厚増加やアコースティックガラスの設定等の対策が行われているが、重量増とコストアップが障害になっている。
【0004】
ところで、ドアガラス以外にも、ドアガラスとドアフレームとの間のシール材であるガラスランにおいて、特に1kHz以上の高周波数域において騒音の低減が可能であり、この低減効果の増大化検討が行われている。
【0005】
我々は、風切音による騒音を低減する技術として、ドアガラスの振動エネルギーをドアガラスに当接する部品に効率的に流して散逸させる、いわゆるインピーダンスマッチングを利用して振動を低減することに着目し、特許文献1において、騒音の低減を実現した。
【0006】
特許文献1の技術を、
図8に基づいて説明する。ガラスラン10は、底壁20、車外側側壁30及び車内側側壁40を基本骨格とし、チャンネル状(断面が略コ字形)に形成されている。
【0007】
車外側側壁30の車内側には、車内側に突出してドアガラス4に摺接すると共に車外側側壁30より硬度が高い肉厚部31が形成されている。又、肉厚部31の車内側表面には、複数本の凸状のリブ32が長手方向に連続して平行に形成されている。
【0008】
車外側側壁30に形成した肉厚部31にドアガラス4を摺接させ、肉厚部31の硬度を車外側側壁30より高くすることにより、ドアガラス4と肉厚部31との剛性差が小さくなり、インピーダンスマッチングによりドアガラス4の振動を肉厚部31に効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0009】
又、肉厚部31の車内側表面には、複数本の凸状のリブ32を長手方向に連続して平行に形成することにより、ドアガラス4の昇降時に肉厚部31に埃、チリや異物などが噛み込まれ、それに伴う異音の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1においては、肉厚部の車内側にチリや異物等の噛み込み防止用の凸状のリブ32が形成されているので、ドアガラス4とガラスラン10の肉厚部31との当接は、面接触ではなく、線接触(断面では点接触)になる。その結果、肉厚部による剛性アップの効果が十分発揮されず、風切音による騒音の低減効果が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接すると共に、車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、硬質部の厚さをt1、硬質部と車外側側壁の厚さの和をTとした時、t1は、0.4T以上、1.0T以下であることを特徴とするガラスランである。
【0013】
請求項1の本発明では、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接すると共に車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、硬質部の厚さをt1、硬質部と車外側側壁の厚さの和をTとした時、t1は、0.4T以上、1.0T以下であるので、硬質部を厚く形成することによりガラスランの剛性を増大させることができ、硬質部の車内側に凸状のリブが形成されている場合であっても、硬質部の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。t1が0.4T未満の場合は、硬質部を含むガラスランの車外側側壁の剛性の増大が十分ではなく、硬質部の効果を十分発揮させることが難しい。
【0014】
なお、t1が1.0T未満の場合は、硬質部を1つの塊として形成してもよく、ドアガラスに摺接する部分と、硬質部の車外側の車外側側壁内とに分割して形成してもよい。車外側側壁内に分割して形成する場合は、例えば、車外側側壁の内部に埋設する場合、車外側側壁の車外側に露出するように形成する場合、左記場合の両方を含む場合が考えられる。
【0015】
ここで、「ガラスランの剛性」は、ドアガラスでガラスランを押圧した時の押圧部位の変位量に対するガラスランからの反力の増加量で表される。したがって、「ガラスランの剛性が増大する」とは、変位と反力との関係において、その傾き(勾配)が大きくなることをいう。
請求項2の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接すると共に、車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、硬質部の厚さをt1、硬質部と車外側側壁の厚さの和をTとした時、t1は、0.4T以上、1.0T未満であり、硬質部の車外側にインサートが埋設されていることを特徴とするガラスランである。
【0016】
請求項3の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接すると共に車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、車外側側壁の硬質部の車外側にのみインサートが埋設されていることを特徴とするガラスランである。
【0017】
請求項3の本発明では、ガラスランの車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接すると共に、車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、車外側側壁の硬質部の車外側にのみインサートが埋設されているので、硬質部とインサートが埋設された車外側側壁によって、ガラスランの剛性を増大させることができ、硬質部の車内側に凸状のリブが形成されている場合であっても、硬質部の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【0018】
請求項4の本発明は、請求項2又は請求項3の発明において、インサートは、金属板、ワイヤーキャリア、又はワイヤー芯材であるガラスランである。
【0019】
請求項4の本発明では、インサートは、金属板、ワイヤーキャリア、又はワイヤー芯材であるので、ガラスランを成形する際に共押出成形によって、車外側側壁内に薄肉の板状として埋設することができる。その結果、ガラスランの剛性を増大させることができ、硬質部の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【0020】
ここで、ワイヤーキャリアとは、芯材としての細いワイヤーを一定な幅間でジグザグに屈曲させ、長手方向に複数の糸で芯材保持することにより長尺状の薄肉板状片としたものである。
【0021】
請求項5の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接する硬質部が形成され、車外側側壁の硬質部と接続する部分には、半硬質材で構成される半硬質材部が形成され、半硬質材部の硬度は、硬質部より小さく、半硬質材部以外の車外側側壁より大きいことを特徴とするガラスランである。
【0022】
請求項5の本発明では、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接する硬質部が形成され、車外側側壁の硬質部と接続する部分には、半硬質材で構成される半硬質材部が形成され、半硬質材部の硬度は、硬質部より小さく、半硬質材部以外の車外側側壁より大きいので、硬質部が形成される部分の車外側側壁の剛性を増大させることができる。その結果、ガラスランの剛性が増大するので、硬質部の車内側に凸状のリブが形成されている場合であっても、硬質部の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
請求項6の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接すると共に、車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、硬質部は、ドアガラスに摺接する部分と、車外側側壁内とに分割して形成されることを特徴とするガラスランである。
請求項7の本発明は、請求項6の発明において、車外側側壁内に形成される硬質部は、車外側側壁の車外側に露出するように形成されるガラスランである。
請求項8の本発明は、請求項6又は請求項7の発明において、硬質部の車内側表面には、凸状のリブが形成されているガラスランである。
請求項9の本発明は、請求項6又は請求項7の発明において、車外側に露出する硬質部は、ドアフレームに面で当接しているガラスランである。
請求項10の本発明は、請求項6又は請求項7の発明において、車外側に露出する硬質部は、突出部として形成されているガラスランである。
請求項11の本発明は、請求項6又は請求項7の発明において、硬質部の厚さをt1、硬質部と車外側側壁の厚さの和をT、硬質部の ドアガラスに摺接する部分の厚さをt2、前記車外側側壁内側の厚さをt3とした時 、t2+t3=t1であり、t1は、0.4T以上、1.0未満であるガラスランである。
【発明の効果】
【0023】
ガラスランの車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接すると共に、車外側側壁の車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、硬質部の厚さをt1、硬質部と車外側側壁の厚さの和をTとした時、t1は、0.4T以上、1.0T以下であるので、硬質部を厚く形成することによりガラスランの剛性を増大させることができ、硬質部の車内側に凸状のリブが形成されている場合であっても、硬質部の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【0024】
又、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接すると共に、車外側側壁より硬度が高い硬質部が形成され、車外側側壁の硬質部の車外側にのみインサートが埋設されているので、硬質部、インサートが埋設された車外側側壁によって、ガラスランの剛性を増大させることができ、硬質部の車内側に凸状のリブが形成されている場合であっても、硬質部の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【0025】
又、車外側側壁の車内側には、ドアガラスに摺接する硬質部が形成され、車外側側壁の硬質部と接続する部分には、半硬質材で構成される半硬質材部が形成され、半硬質材部の硬度は、硬質部より小さく、半硬質材部以外の車外側側壁より大きいので、硬質部が形成される部分の車外側側壁の剛性を増大させることができる。その結果、ガラスランの剛性が増大するので、硬質部の車内側に凸状のリブが形成されている場合であっても、硬質部の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】
図1のドアフレームに用いるガラスランを示す正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態のガラスランであり、(a)は、
図1のX-X線に対応する断面図であり、(b)は、
図1のY-Y線に対応する断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態のガラスランであり、(a)は、
図1のX-X線に対応する断面図であり、(b)は、
図1のY-Y線に対応する断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態のガラスランであり、(a)は、
図1のX-X線に対応する断面図であり、(b)は、
図1のY-Y線に対応する断面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態のガラスランであり、(a)は、
図1のX-X線に対応する断面図であり、(b)は、
図1のY-Y線に対応する断面図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態のガラスランであり、(a)は、
図1のX-X線に対応する断面図であり、(b)は、
図1のY-Y線に対応する断面図である。
【
図8】先行技術におけるガラスランであり、
図1のX-X線に対応する断面図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態について
図1から
図3に基づいて説明する。
図1は自動車の左側のフロントドア1を車外側からみた正面図を示す。このフロントドア1を構成するドア本体2の上部には、ドアフレーム3が装着されている。このドアフレーム3とドア本体2の上端縁とにより窓開口が形成されている。窓開口の内周縁及びドア本体2の内部にはガラスラン10が取付られ、ドアガラス4の昇降動作を案内するようになっている。なお、本発明は、左側のフロントドア1のみならず、右側のフロントドア、左右のリヤドアにも適用可能である。又、ドアガラスの昇降するスライドドアにも適用可能である。
【0028】
図2はガラスラン10のみを簡略化して車外側からみた正面図である。このガラスラン10はドアフレーム3の横枠部に対応する第1の押出成形部11と、フロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13とにより構成されている。第1の押出成形部11の前端部は第2の押出成形部12の上端部に対し第1の型成形部14により接続されている。又、第1の押出成形部11の後端部は第3の押出成形部13の上端部に対し第2の型成形部15により接続されている。
【0029】
図3(a)は、
図1のX-X線に対応する断面図であり、
図3(b)は、
図1のY-Y線に対応する断面図である。ガラスラン10は、底壁20、車外側側壁30及び車内側側壁40を基本骨格とし、チャンネル状(断面が略コ字形)に形成されている。底壁20と車外側側壁30、車内側側壁40の連結部は、車外側及び車内側の溝部21、21により自由状態で展開可能に連結されている。
【0030】
(底壁20)
底壁20は、略板状に形成され、底壁20の内面(ドアガラス4側)には、複数本の底壁凹部22が長手方向に連続して平行に形成されている。又、
図3(a)では、底壁20の外面には、底壁シールリップ23が形成され、底壁シールリップ23は、ドアフレーム3に形成されたチャンネル状(断面が略コ字形)のドアフレーム溝部5に当接して、底壁20とドアフレーム溝部5との間をシールしている。
【0031】
(車外側)
図3(a)において、車外側側壁30の車外側には、底壁20との連結部近傍と車外側側壁30の先端部方向に、ドアフレーム溝部5に係止される第1車外側保持リップ33と第2車外側保持リップ34が形成され、第1車外側保持リップ33と第2車外側保持リップ34によって、屈曲して形成されているドアフレーム溝部5を保持している。
【0032】
車外側側壁30の車外側側壁先端部39には、ドアガラス4方向で且つ底壁20とは反対側に向けてカバーリップ36が形成されている。カバーリップ36はドアガラス4の車外側面と当接し、雨水や埃の硬質部31への侵入を抑制すると共に後述する硬質部31の劣化を防止する。又、ドアガラス4とのシール性を向上させる。
【0033】
カバーリップ36の付け根部分には、車外側に向けて係止部35が形成され、ピラーガーニッシュ6の端部を固定するとともにピラーガーニッシュ6とドアガラス4の表面との間の隙間をシールしている。
【0034】
図3(b)において、車外側側壁30の中間部分の車外側には、突出部55が形成されている。又、車外側側壁30には、車外側側壁先端部39から車内外側且つ底壁20側に延設され、車内側の側面がドアガラス4に摺接する車外側シールリップ38が形成されている。車外側シールリップ38は、後述する硬質部31には当接しない。
【0035】
図3(a)と、
図3(b)における車外側側壁30の突出部55の車外側は、ドアフレーム溝部5に面で接している。面で接することにより、ドアガラス4とドアフレーム溝部5に挟まれる車外側側壁30の剛性を増加させることができる。
【0036】
(車内側)
図3(a)において、車内側側壁40の車外側には、車内側側壁先端部47と底壁20との間から車外側且つ底壁20側に延設され、車外側の側面がドアガラス4に摺接する車内側シールリップ41が形成されている。車内側シールリップ41は、ドアガラス4が車外側側壁30の硬質部31と車内側シールリップ41に摺接する時のドアガラス4が受ける車外側及び車内側からの反力について、車内側の方が車外側より大きくなり、ドアガラス4の硬質部31側への押圧力が増大するように設計されている。
【0037】
車内側側壁40の車外側であり、車内側シールリップ41より底壁20側には、車内側シールリップ41とは反対方向に向けて、サブリップ42が形成されている。サブリップ42は、その先端部分が車内側シールリップ41の車内側側面に当接し、車内側シールリップ41がドアガラス4の車内側を車外側に向けて押圧することをサポートする。
【0038】
車内側側壁40の車内側には、底壁20との連結部近傍と車内側側壁40の先端部方向には湾曲部を有するドアフレーム溝部5の湾曲部分に係止される第1車内側保持リップ43と第2車内側保持リップ44が形成されている。又、第1車内側保持リップ43と第2車内側保持リップ44の間には、当接リップ45が形成されている。第1車内側保持リップ43、第2車内側保持リップ44と当接リップ45によって、車内側側壁40が湾曲したドアフレーム溝部5に保持されている。
【0039】
車内側側壁40の車内側側壁先端部47には、車内側に向けてカバーリップ46が形成されている。カバーリップ46は、ドアフレーム溝部5に当接し、雨水や埃、騒音の侵入を防止すると共にドアフレーム溝部5とのシール性を向上させる。
【0040】
一方、
図3(b)においては、車内側側壁40の車内側には、ドアフレーム溝部5の湾曲部分に係止される第1車内側保持リップ43と第2車内側保持リップ44が形成されており、又、車内側側壁40の車内側側壁先端部47には、車内側に向けてカバーリップ46が形成され、第2車内側保持リップ44とカバーリップ46により車内側側壁40が湾曲したドアフレーム溝部5に保持されている。
【0041】
(硬質部31)
図3(a)と
図3(b)に示すように、車外側側壁30の車内側には、車内側に突出してドアガラス4に摺接すると共に車外側側壁30より硬度が高い硬質部31が形成されている。車外側側壁30に形成した硬質部31にドアガラス4を摺接させ、硬質部31の硬度を車外側側壁30より高くすることにより、ドアガラス4と硬質部31との剛性差が小さくなり、インピーダンスマッチングによりドアガラス4の振動を硬質部31に効率的に流して散逸させることができ、風切音による騒音を低減することができる。
【0042】
硬質部31の車内側表面には、複数本の凸状のリブ32が長手方向に連続して平行に形成されている。リブ32は、ドアガラス4の昇降時に硬質部31に埃、チリや異物などが噛み込まれ、それに伴う異音の発生を防止する。
【0043】
本第1の実施形態は、
図8の肉厚部31に比較して、硬質部31を厚く形成するものであり、本第1の実施形態では、硬質部31の厚さをt1、硬質部31と車外側側壁30の厚さの和をTとした時、t1=0.7Tとした。
【0044】
硬質部31を厚く形成することにより、ガラスラン10の剛性を増大させることができ、硬質部31の車内側に凸状のリブ32が形成されている場合であっても、硬質部31の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【0045】
なお、ガラスラン10の車外側側壁30の剛性を増大させる観点から、硬質部31の厚さt1は、0.4T以上であることが望ましい。又、硬質部31の厚さt1が1.0T未満の場合は、硬質部31を1つの塊として形成してもよく、硬質部31をドアガラス4に摺接する部分と、車外側側壁30内とに形成する分割して形成してもよい。硬質部31を車外側側壁30内に分割して形成する場合においては、例えば、車外側側壁30の内部に埋設する場合や車外側側壁30の車外側に露出するように形成する場合、左記場合の両方を含む場合であってもよい。
【0046】
ここで、
図3(b)は、硬質部31を1つの塊として形成し、硬質部31の厚さt1をt1=0.7Tとした形態である。一方、
図3(a)は、硬質部31をドアガラス4に摺接する部分と車外側側壁30の車外側に露出する部分に分割して形成し、ドアガラス4側の硬質部31の厚さをt2、車外側に露出する硬質部31の厚さをt3とし、それらの厚さの合計が硬質部31の厚さt1、すなわち、t1=t2+t3であり、t1=0.7Tとした形態である。なお、
図3(a)では、t2<t3に描かれているが、t2≧t3であってもよい。
【0047】
本実施形態において、硬質部31を除くガラスラン10は、IRHD(国際ゴム硬さ)が80±5のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を使用し、硬質部31は、IRHDが100±5のTPOを使用し、押出成形(共押出成形)によって作製した。なお、
図3(a)のように硬質部31を分割して形成する場合、車外側(t3の部分)の硬質部31はドアガラス4と接していないので、IRHDにおいて85から105のTPOを使用し、車内側(t2の部分)の硬質部31と異なっていてもよい。
【0048】
又、本発明の実施形態において、ガラスラン10を構成する材料としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)以外に、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成することができる。ゴムの場合は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が、熱可塑性エラストマーとしては、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態を、
図4(a)と
図4(b)に基づいて説明する。本第2の実施形態において、上記の第1の実施形態との相違点は、本第2の実施形態では、硬質部31の厚さは、
図8と同じであるが、硬質部31の車外側の車外側側壁30内には、インサート51が埋設されている点にある。
【0050】
本第2の実施形態では、厚さ0.5mmの冷間圧延鋼板(SPCC)を使用した。なお、ガラスラン10の車外側側壁30に埋設する場合、その厚さは、0.5mmから1.0mmが望ましい。又、材料は、SPCCには限定されず、アルミニウムやステンレス等の他の金属材料であってもよい。なお、金属板については、金属板に穴が形成された金属メッシュやパンチングメタルであってもよい。インサート51は、ガラスラン10と共に押出成形(共押出成形)した。
【0051】
硬質部31の車外側の車外側側壁30内に金属板のインサート51を埋設することにより、ガラスラン10の剛性を増大させることができ、硬質部31の車内側に凸状のリブ32が形成されている場合であっても、硬質部31の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【0052】
次に、本発明の第3の実施形態について
図5(a)と
図5(b)に基づいて説明する。第3の実施形態は、上記の第2の実施形態の変形例であり、ワイヤーキャリア52を埋設したものである。上記の通り、ワイヤーキャリアとは、芯材としての細いワイヤーを一定な幅間でジグザグに屈曲させ、長手方向に複数の糸で保持することで長尺状の薄肉板状片としたものである。本第3の実施形態では、芯材として直径が0.5mmの鉄材を用いた。又、芯材を保持し、長手方向の伸びを抑制する糸として、非熱溶融糸であるPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いた。
【0053】
なお、芯材としては、鉄材には限定されず、他の金属であってもよく、芯材の直径も0.5mmには限定されない。ただし、ガラスラン10の車外側側壁30の車外側側壁30の剛性を増大させる観点から、直径は、0.5mmから1.0mmが望ましい。
【0054】
また、芯材を保持し、長手方向の伸びを抑制する糸についても、非熱溶融糸であるPETには限定されず、例えば、ガラスラン10にゴムのEPDMを使用する場合は、加硫炉で溶融する熱溶融糸を使用してもよい。
【0055】
硬質部31の車外側の車外側側壁30内にワイヤーキャリア52を埋設することにより、ガラスラン10の剛性を増大させることができ、硬質部31の車内側に凸状のリブ32が形成されている場合であっても、硬質部31の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【0056】
次に、本発明の第4の実施形態について
図6(a)と
図6(b)に基づいて説明する。第4の実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、ワイヤー芯材53を5本埋設したものである。芯材として直径が0.5mmの鉄材を5本使用した。なお、ワイヤー芯材53は、鉄材には限定されず、他の金属であってもよく、直径も0.5mmには限定されない。ただし、ガラスラン10の車外側側壁30の剛性を増大させる観点から、ワイヤー芯材53の直径は、0.5mmから1.0mmが望ましい。又、埋設する本数も5本には限定されないが、剛性を増大させる観点から複数本埋設することが望ましい。
【0057】
硬質部31の車外側の車外側側壁30内にワイヤー芯材53を埋設することにより、ガラスラン10の車外側側壁30の剛性を増大させることができ、硬質部31の車内側に凸状のリブ32が形成されている場合であっても、硬質部31の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させことができる。
【0058】
次に、本発明の第5の実施形態について
図7(a)と
図7(b)に基づいて説明する。第5の実施形態では、車外側側壁30において、硬質部31と接続する部分には、車外側側壁30の半硬質材で構成される半硬質材部54が形成され、半硬質材部54の硬度は、硬質部31より小さく、半硬質材部54以外の車外側側壁30より大きい。半硬質材部54は、車外側側壁30内を貫通して形成されており、ドアフレーム溝部5に面で接している。
【0059】
本実施形態において、硬質部31は、IRHD(国際ゴム硬さ)が100±5のTPOを使用し、車外側側壁30において、半硬質材部54が形成される部分は、IRHDが90±5のTPOを使用し、ガラスラン10の他の部分は、IRHDが80±5のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を使用し、押出成形によって作製した。
【0060】
車外側側壁30において、硬質部31と接続する部分には、半硬質材で構成される半硬質材部54が形成されているので、ガラスラン10の剛性を増大させることができ、硬質部31の車内側に凸状のリブ32が形成されている場合であっても、硬質部31の効果が十分発揮され、風切音による騒音の低減効果を増大させることができる。
【0061】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、上記の第1から第5の実施形態においては、硬質部31が形成される部分の車外側側壁30の剛性を増大させるために、主に硬質部31の車外側にインサート等を埋設し、硬質部31を厚肉化し、又は半硬質材部54を形成したが、硬質部31に接続する車外側のみならず、車外側側壁30の広い範囲に亘って配置、形成してもよい。この場合、ガラスラン10のドアフレーム3のドアフレーム溝部5への組付け性を考慮して、底壁20と車外側側壁30の連結部である車外側の溝部21を除く領域にそれらを配置、形成することができる。
【0063】
例えば、上記の
図3(b)、
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)と
図7(b)の実施形態のガラスラン10は、
図2における第1の押出成形部11に適用することが可能である。
【0064】
上記の第1から第5の実施形態においては、硬質部31の車内側表面に複数本の凸状のリブ32が形成されている場合について説明したが、凸状のリブ32を形成しない硬質部に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 フロントドア
2 ドア本体
3 ドアフレーム
5 ドアフレーム溝部
10 ガラスラン
20 底壁
30 車外側側壁
31 硬質部(肉厚部)
32 リブ
38 車外側シールリップ
40 車内側側壁
41 車内側シールリップ
51 インサート
52 ワイヤーキャリア
53 ワイヤー芯材
54 半硬質材部