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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177560
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両用ディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/228 20060101AFI20241212BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20241212BHJP
   F16D 65/095 20060101ALI20241212BHJP
   F16D 65/097 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F16D55/228
F16D65/02 B
F16D65/095 G
F16D65/097 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024177742
(22)【出願日】2024-10-10
(62)【分割の表示】P 2022500243の分割
【原出願日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020021265
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】熱田 大樹
(57)【要約】
【課題】パッドスプリングの組み付け性の向上を図った車両用ディスクブレーキを提供する。
【解決手段】キャリパボディは、天井開口部3fの車両前進時におけるディスク回入側面のディスク半径方向内側に、パッドスプリング5を係止する係止溝3pを形成する。パッドスプリング5は、摩擦パッド4を吊持するハンガーピン13のディスク半径方向内側に当接する湾曲片5aと、湾曲片5aから車両前進時におけるディスク回入側に延出し、摩擦パッド4をディスク半径方向内側に押圧する回入側パッド弾発部5bと、湾曲片5aから車両前進時におけるディスク回出側に延出し、摩擦パッド4をディスク半径方向内側に押圧する回出側パッド弾発部5cと、回入側パッド弾発部5bの先端に設けられ、係止溝3pに係止される係止片5dとを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータを跨いで配置されるキャリパボディと、前記ディスクロータの両側部に配置される一対の摩擦パッドと、該摩擦パッドをディスク半径方向内側に付勢するパッドスプリングとを備え、前記キャリパボディは、前記ディスクロータの外周を跨ぐブリッジ部に、前記摩擦パッドを抜き差しする天井開口部を設け、前記摩擦パッドは、ディスク周方向中央部に吊下げ片を突設し、該吊下げ片に、前記天井開口部をディスク軸方向に懸架するハンガーピンを挿通することによりディスク軸方向に移動可能に吊持される車両用ディスクブレーキにおいて、
前記キャリパボディは、前記天井開口部の車両前進時におけるディスク回入側面のディスク半径方向内側に、前記パッドスプリングを係止する係止溝を備え、
前記パッドスプリングは、前記ハンガーピンのディスク半径方向内側に当接する湾曲片と、該湾曲片から車両前進時におけるディスク回入側に延出し、前記摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧する回入側パッド弾発部と、前記湾曲片から車両前進時におけるディスク回出側に延出し、前記摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧する回出側パッド弾発部と、前記回入側パッド弾発部の先端に設けられ、前記係止溝に係止される係止片とを備え、
前記回入側パッド弾発部は、摩擦パッド側に向けて凸となる湾曲状に形成され、中間部に、双方の前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接可能な長さを有する回入側当接片を備えるとともに、前記係止片は、ディスク半径方向外側に傾斜して形成されることを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記摩擦パッドは、少なくとも車両前進時におけるディスク半径方向外側面のディスク回出側に、ディスク半径方向外側に突出する突部を備え、
前記回出側パッド弾発部は、摩擦パッド側に向けて凸となる湾曲状に形成され、先端に、前記突部のディスク回入側面に当接する回出側当接片を備え、
該回出側当接片は、双方の前記摩擦パッドの前記突部のディスク回入側面に当接可能な長さを有するとともに、先端にディスク半径方向外側に突出する突出片を有していることを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
ディスクロータを跨いで配置されるキャリパボディと、前記ディスクロータの両側部に配置される一対の摩擦パッドと、該摩擦パッドをディスク半径方向内側に付勢するパッドスプリングとを備え、前記キャリパボディは、前記ディスクロータの外周を跨ぐブリッジ部に、前記摩擦パッドを抜き差しする天井開口部を設け、前記摩擦パッドは、ディスク周方向中央部に吊下げ片を突設し、該吊下げ片に、前記天井開口部をディスク軸方向に懸架するハンガーピンを挿通することによりディスク軸方向に移動可能に吊持される車両用ディスクブレーキにおいて、
前記キャリパボディは、前記天井開口部の車両前進時におけるディスク回入側面のディスク半径方向内側に、前記パッドスプリングを係止する係止溝を備え、
前記パッドスプリングは、前記ハンガーピンのディスク半径方向内側に当接する湾曲片と、該湾曲片から車両前進時におけるディスク回入側に延出し、前記摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧する回入側パッド弾発部と、前記湾曲片から車両前進時におけるディスク回出側に延出し、前記摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧する回出側パッド弾発部と、前記回入側パッド弾発部の先端に設けられ、前記係止溝に係止される係止片とを備え、
前記回入側パッド弾発部は、中間部に、前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接する回入側当接片を備えるとともに、前記湾曲片から前記回入側当接片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回入側第1傾斜片と、前記回入側当接片から前記係止片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、前記回入側第1傾斜片よりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回入側第2傾斜片とを備え、前記回入側当接片は、双方の前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接可能な長さを有するとともに、幅方向中央部に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜して形成され、前記係止片は、ディスク半径方向外側に傾斜して形成されることを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項4】
前記摩擦パッドは、少なくとも車両前進時におけるディスク半径方向外側面のディスク回出側に、ディスク半径方向外側に突出する突部を備え、
前記回出側パッド弾発部は、先端に前記突部のディスク回入側面に当接する回出側当接片を備えるとともに、湾曲片側に、先端側に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回出側第1傾斜片と、該回出側第1傾斜片の先端から前記回出側当接片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、前記回出側第1傾斜片よりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回出側第2傾斜片とを備え、前記回出側当接片は、双方の前記摩擦パッドの前記突部のディスク回入側面に当接可能な長さを有するとともに、先端にディスク半径方向外側に突出する突出片を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記湾曲片は、ディスク回出側の端部が、ディスク回入側の端部よりディスク半径方向外側に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項6】
前記湾曲片は、ディスク回出側の端部にディスク回出側に延出する平面部を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項7】
前記回入側パッド弾発部と前記回出側パッド弾発部のいずれか一方に、取り付け方向を示す指標を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二輪車等の走行車両に用いられる車両用ディスクブレーキに関し、詳しくは、ディスクロータの両側部に1本のハンガーピンを用いて吊持される摩擦パッドのガタつきをパッドスプリングで抑制する車両用ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクロータの両側部に1本のハンガーピンを用いて吊持される摩擦パッドを備えた車両用ディスクブレーキとして、キャリパボディのブリッジ部に摩擦パッドを抜き差しする天井開口部を設け、天井開口部を通してディスク軸方向に懸架されたハンガーピンに、摩擦パッドのディスク周方向中央部に突設した吊下げ片を挿通し、摩擦パッドをディスク軸方向に移動可能に吊持するとともに、摩擦パッドの裏板とブリッジ部とハンガーピンとに亘って、摩擦パッドのガタ付きを抑制するパッドスプリングを係着したものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3729583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のパッドスプリングは、ハンガーピンのディスク半径方向内側面に当接する湾曲片と、摩擦パッドの吊下げ片のディスク半径方向外側面を覆うカバー片とでハンガーピンを挟むようにして組み付けられることから、パッドスプリングの組み付けに手間が掛かっていた。
【0005】
そこで本発明は、パッドスプリングの組み付け性の向上を図った車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキは、ディスクロータを跨いで配置されるキャリパボディと、前記ディスクロータの両側部に配置される一対の摩擦パッドと、該摩擦パッドをディスク半径方向内側に付勢するパッドスプリングとを備え、前記キャリパボディは、前記ディスクロータの外周を跨ぐブリッジ部に、前記摩擦パッドを抜き差しする天井開口部を設け、前記摩擦パッドは、ディスク周方向中央部に吊下げ片を突設し、該吊下げ片に、前記天井開口部をディスク軸方向に懸架するハンガーピンを挿通することによりディスク軸方向に移動可能に吊持される車両用ディスクブレーキにおいて、前記キャリパボディは、前記天井開口部の車両前進時におけるディスク回入側壁のディスク半径方向内側に、前記パッドスプリングを係止する係止溝を備え、前記パッドスプリングは、前記ハンガーピンのディスク半径方向内側に当接する湾曲片と、該湾曲片から車両前進時におけるディスク回入側に延出し、前記摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧する回入側パッド弾発部と、前記湾曲片から車両前進時におけるディスク回出側に延出し、前記摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧する回出側パッド弾発部と、前記回入側パッド弾発部の先端に設けられ、前記係止溝に係止される係止片とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、前記回入側パッド弾発部は、摩擦パッド側に向けて凸となる湾曲状に形成され、中間部に、双方の前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接可能な長さを有する回入側当接片を備えるとともに、前記係止片は、ディスク半径方向外側に傾斜して形成されると好ましい。
【0008】
さらに、前記摩擦パッドは、少なくとも車両前進時におけるディスク半径方向外側面のディスク回出側に、ディスク半径方向外側に突出する突部を備え、前記回出側パッド弾発部は、摩擦パッド側に向けて凸となる湾曲状に形成され、先端に、前記突部のディスク回入側面に当接する回出側当接片を備え、該回出側当接片は、双方の前記摩擦パッドの前記突部のディスク回入側面に当接可能な長さを有するとともに、先端にディスク半径方向外側に突出する突出片を有していると好適である。
【0009】
また、前記回入側パッド弾発部は、中間部に、前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接する回入側当接片を備えるとともに、前記湾曲片から前記回入側当接片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回入側第1傾斜片と、前記回入側当接片から前記係止片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、前記回入側第1傾斜片よりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回入側第2傾斜片とを備え、前記回入側当接片は、双方の前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接可能な長さを有するとともに、幅方向中央部に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜して形成され、前記係止片は、ディスク半径方向外側に傾斜して形成されると好ましい。
【0010】
さらに、前記摩擦パッドは、少なくとも車両前進時におけるディスク半径方向外側面のディスク回出側に、ディスク半径方向外側に突出する突部を備え、前記回出側パッド弾発部は、先端に前記突部のディスク回入側面に当接する回出側当接片を備えるとともに、湾曲片側に、先端側に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回出側第1傾斜片と、該回出側第1傾斜片の先端から前記回出側当接片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、前記回出側第1傾斜片よりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回出側第2傾斜片とを備え、前記回出側当接片は、双方の前記摩擦パッドの前記突部のディスク回入側面に当接可能な長さを有するとともに、先端にディスク半径方向外側に突出する突出片を備えていると好適である。
【0011】
また、前記湾曲片は、ディスク回出側の端部が、ディスク回入側の端部よりディスク半径方向外側に配置されると好ましい。
【0012】
さらに、前記湾曲片は、ディスク回出側の端部にディスク回出側に延出する平面部を備えていると良い。
【0013】
また、前記回入側パッド弾発部と前記回出側パッド弾発部のいずれか一方に、取り付け方向を示す指標を設けると好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用ディスクブレーキによれば、パッドスプリングは、湾曲片をハンガーピンのディスク半径方向内側に当接させ、係止片をキャリパボディの係止溝に係止させることによりキャリパボディに容易に組み付けることができる。また、この組付により、回入側パッド弾発部と回出側パッド弾発部が、摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧し、摩擦パッドのガタ付きを抑制する。
【0015】
また、回入側パッド弾発部は、摩擦パッド側に向けて凸となる湾曲状に形成され、中間部に、双方の前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接可能な長さを有する回入側当接片を備えるとともに、係止片は、ディスク半径方向外側に傾斜して形成したことにより、摩擦パッドをディスク半径方向内側と、ディスク回出側とに押圧し、摩擦パッドのガタ付きを良好に抑制することができる。さらに、係止片をディスク半径方向外側に傾斜させたことにより、パッドスプリングをキャリパボディに確実に係止させることができる。また、回入側パッド弾発部を湾曲状に形成することにより、弾発力を備えた回入側パッド弾発部を容易に形成することができる。
【0016】
さらに、摩擦パッドは、少なくとも車両前進時におけるディスク半径方向外側面のディスク回出側に、ディスク半径方向外側に突出する突部を備え、回出側パッド弾発部は、摩擦パッド側に向けて凸となる湾曲状に形成され、先端に、突部のディスク回入側面に当接する回出側当接片を備え、回出側当接片は、双方の摩擦パッドの突部のディスク回入側面に当接可能な長さを有するとともに、先端にディスク半径方向外側に突出する突出片を有することにより、回出側パッド弾発部が、摩擦パッドをディスク回出側とディスク半径方向内側とに付勢する。摩擦パッドがディスク回出側に付勢されることにより、摩擦パッドは、予め、キャリパボディに設けたトルク受面に当接した状態となり、摩擦パッドとトルク受面とが当接して発生させる当接音を防止することができる。また、摩擦パッドがディスク半径方向内側に付勢されることにより、摩擦パッドのガタ付きを抑制することができる。さらに、回出側パッド弾発部を湾曲状に形成することにより、弾発力を備えた回出側パッド弾発部を容易に形成することができる。
【0017】
また、回入側パッド弾発部は、中間部に、摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接する回入側当接片を備えるとともに、湾曲片から回入側当接片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回入側第1傾斜片と、回入側当接片から係止片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、回入側第1傾斜片よりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回入側第2傾斜片とを備え、回入側当接片は、双方の摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接可能な長さを有するとともに、幅方向中央部に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜して形成され、係止片は、ディスク半径方向外側に傾斜して形成されることにより、摩擦パッドをディスク半径方向内側と、ディスク回出側とに押圧し、摩擦パッドのガタ付きを良好に抑制することができる。さらに、係止片をディスク半径方向外側に傾斜させたことにより、パッドスプリングをキャリパボディに確実に係止させることができる。また、回入側第1傾斜片や、回入側第2傾斜片の傾斜角度や長さを変更することにより、弾発力の設定や設定変更を容易に行うことができる。
【0018】
さらに、摩擦パッドは、少なくとも車両前進時におけるディスク半径方向外側面のディスク回出側に、ディスク半径方向外側に突出する突部を備え、回出側パッド弾発部は、先端に突部のディスク回入側面に当接する回出側当接片を備えるとともに、湾曲片側に、先端側に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回出側第1傾斜片と、該回出側第1傾斜片の先端から回出側当接片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、回出側第1傾斜片よりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回出側第2傾斜片とを備え、回出側当接片は、双方の摩擦パッドの突部のディスク回入側面に当接可能な長さを有するとともに、先端にディスク半径方向外側に突出する突出片を備えていることにより、摩擦パッドは、予め、キャリパボディに設けたトルク受面に当接した状態となり、摩擦パッドとトルク受面とが当接して発生させる当接音を防止することができる。また、摩擦パッドがディスク半径方向内側に付勢されることにより、摩擦パッドのガタ付きを抑制することができる。また、回出側第1傾斜片や、回出側第2傾斜片の傾斜角度や長さを変更することにより、弾発力の設定や設定変更を容易に行うことができる。
【0019】
さらに、摩擦パッドにディスク半径方向外側に突出する突部を設け、回出側パッド弾発部は、突部のディスク回入側面に当接する回出側当接片を設けたことにより、該回出側パッド弾発部は、摩擦パッドをディスク回出側とディスク半径方向内側とに付勢する。摩擦パッドがディスク回出側に付勢されることにより、摩擦パッドは、予め、キャリパボディに設けたトルク受面に当接した状態となり、摩擦パッドとトルク受面とが当接して発生させる当接音を防止することができる。さらに、摩擦パッドがディスク半径方向内側に付勢されることにより、摩擦パッドのガタ付きを抑制することができる。
【0020】
さらに、湾曲片のディスク回出側の端部をディスク回入側の端部よりディスク半径方向外側に配置したことにより、組み付け時に応力が掛かる湾曲片のディスク回入側の端部と、車両振動時及び制動時に応力が掛かる湾曲片のディスク回出側の端部のディスク半径方向の位置をずらすことができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0021】
また、湾曲片のディスク回出側の端部にディスク回出側に延出する平面部を設けたことにより、パッドスプリングの湾曲片よりもディスク回出側で発生する応力が湾曲片に集中することを抑制でき、パッドスプリングの耐久性の向上を図ることができる。
【0022】
さらに、回入側パッド弾発部と前記回出側パッド弾発部のいずれか一方に、取り付け方向を示す指標を設けたことにより、パッドスプリングの誤組を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの正面図である。
図2】同じく車両用ディスクブレーキの平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図1のIV-IV断面図である。
図5】本発明の一形態例を示すパッドスプリングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至図5は、本発明の車両用ディスクブレーキの一形態例を示す図である。なお、矢印Aは、車両前進時に車輪と一体に回転するディスクロータの回転方向であり、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0025】
本形態例の車両用ディスクブレーキ1は、図示しない車輪と一体に回転するディスクロータ2と、該ディスクロータ2の一側で車体に取り付けられるキャリパボディ3と、該キャリパボディ3の作用部3a,3aの間に、ディスクロータ2を挟んで対向配置される一対の摩擦パッド4,4と、該摩擦パッド4,4のガタ付きを抑制するパッドスプリング5とを備えている。
【0026】
キャリパボディ3はブリッジ部3bの中間部で分割された一対のキャリパ半体3c,3cを連結ボルト6,6で一体に連結して形成されている。ブリッジ部3bは、ディスク回入側ブリッジ部3dと、ディスク回出側ブリッジ部3eと、ディスク回入側ブリッジ部3dとディスク回出側ブリッジ部3eとの間に設けられ、摩擦パッド4,4を抜き差しする天井開口部3fとを備えている。作用部3a,3aには、ディスクロータ側が開口したシリンダ孔7が2個ずつ対向して形成され、各シリンダ孔7には、ピストン8がピストンシール9を介して収容され、各シリンダ孔7の底部と各ピストン8との間には、作動液が供給される液圧室10がそれぞれ画成されている。
【0027】
一方の作用部3aのディスク回入側とディスク回出側とには、ディスク半径方向の取付ボス部3g,3gが形成され、各取付ボス部3gにはディスク半径方向の取付ボルト挿通孔3hがそれぞれ形成され、該取付ボルト挿通孔3hに挿通した取付ボルト(図示せず)を車体側に設けたキャリパ取付部にねじ込むことにより、キャリパボディ3が車体に取り付けられる。また、ディスク回出側ブリッジ部3eには、作動液を液圧室10,10に導入するユニオン孔11と、作動液中に混入するエアを排出するブリューダスクリュ12とが設けられている。
【0028】
各作用部3a,3aには、摩擦パッド4,4を収容する摩擦パッド収容部3i,3iがそれぞれ形成される。各摩擦パッド収容部3iは、天井開口部3fのディスク回入側面3jよりもディスク半径方向内側に形成される回入側トルク受面3kと、天井開口部3fのディスク回出側面3mよりもディスク半径方向内側に形成される回出側トルク受面3nとを備えている。さらに、ディスク回入側ブリッジ部3dのディスク軸方向中央部のディスク半径方向内側には、パッドスプリング5を係止する係止溝3pが形成されている。また、各作用部3a,3aのディスク半径方向外側で、且つ、ディスク回転方向中央部には、天井開口部3fを挟んで、ハンガーピン13を装着する隆状部3q,3qが形成されている。
【0029】
摩擦パッド4,4は、ディスクロータ2の側面と摺接するライニング4aと、1本のハンガーピン13を介してキャリパボディ3に保持される裏板4bとから成っている。ライニング4aが取り付けられる裏板4bの本体部4cは、回入側トルク受面3kと回出側トルク受面3nとの間隔よりもやや幅狭に形成され、ディスク半径方向外側面4dには、中央部に、ピン孔4eを備えた吊下げ片4fが、ディスク回転方向両側部に、ディスク半径方向外側に向けて突出する突部4g,4gがそれぞれ突設されている。
【0030】
天井開口部3fから差し込まれた摩擦パッド4は、裏板の本体部4cが摩擦パッド収容部3iに収容され、天井開口部3fを通して作用部3a,3aの隆状部3q,3qにディスク軸方向へ架設されるハンガーピン13を、吊下げ片4fのピン孔4eに挿通して、ディスク軸方向へ移動可能に吊持される。さらに、裏板4bとディスク回入側ブリッジ部3dとハンガーピン13とに亘ってパッドスプリング5が係着される。
【0031】
パッドスプリング5は、ハンガーピン13のディスク半径方向内側に当接する湾曲片5aと、該湾曲片5aからディスク回入側に延出し、摩擦パッド4,4をディスク半径方向内側に押圧する回入側パッド弾発部5bと、湾曲片5aからディスク回出側に延出し、摩擦パッド4,4をディスク半径方向内側とディスク回出側とに押圧する回出側パッド弾発部5cと、回入側パッド弾発部5bの先端に設けられ、係止溝3pに係止される係止片5dとを備えている。
【0032】
回入側パッド弾発部5bは、中間部に、摩擦パッド4,4のディスク半径方向外側面に当接する回入側当接片5eを備えるとともに、湾曲片5aから回入側当接片5eに向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回入側第1傾斜片5fと、回入側当接片5eから係止片5dに向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、回入側第1傾斜片5fよりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回入側第2傾斜片5gとを備えている。また、回入側当接片5eは、双方の摩擦パッド4,4のディスク半径方向外側面4d,4dに当接可能な長さを有するとともに、幅方向中央部に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜して形成されている。また、係止片5dは、ディスク半径方向外側に傾斜して形成されている。
【0033】
回出側パッド弾発部5cは、先端に、摩擦パッド4,4に設けたディスク回出側の突部4g,4gのディスク回入側面4h,4hに当接する回出側当接片5hを備えるとともに、湾曲片5a側から、先端側に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回出側第1傾斜片5iと、該回出側第1傾斜片5iの先端から回出側当接片5hに向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、回出側第1傾斜片5iよりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回出側第2傾斜片5jとを備えている。また、回出側当接片5hの中間部には、幅方向に突出する指標5kが設けられている。回出側当接片5hは、双方の摩擦パッド4,4の突部4g,4gのディスク回入側面4h,4hに当接可能な長さを有するとともに、先端にディスク半径方向外側に突出する突出片5mを備えている。
【0034】
湾曲片5aは、ディスク回出側の端部5nが、ディスク回入側の端部5pよりディスク半径方向外側に配置される。さらに、湾曲片5aは、ディスク回出側の端部にディスク回出側に延出する平面部5qを備えている。
【0035】
上述のように形成されるパッドスプリング5は、天井開口部3fからキャリパボディ3内に挿入し、係止片5dをキャリパボディ3に形成した係止溝3pに係止させ、次いで、パッドスプリング5に荷重を掛けながら、キャリパボディ3の隆状部3q,3qに形成したピン孔と、摩擦パッド4の吊下げ片4fに形成したピン孔4eとに亘ってハンガーピン13を、挿通することにより、キャリパボディ3に容易に取り付けられる。また、係止片5dをディスク半径方向外側に傾斜させたことにより、パッドスプリング5をキャリパボディ3に確実に係止させることができる。さらに、この組付により、パッドスプリング5の回入側当接片5eが裏板4b,4bのディスク半径方向外側面4d,4dに当接し、摩擦パッド4,4をディスク半径方向内側に押圧するとともに、回出側当接片5hが裏板4b,4bの突部4g,4gのディスク回入側面4h,4hに当接する。
【0036】
回入側パッド弾発部5bの回入側当接片5eは、摩擦パッド4,4のディスク半径方向外側面4d,4dに当接し、摩擦パッド4,4をディスク回出側とディスク半径方向内側とに付勢する。また、回出側パッド弾発部5cの回出側当接片5hは、突部4g,4gのディスク回入側面4h,4hに当接し、摩擦パッド4,4をディスク回出側とディスク半径方向内側とに付勢する。このように、摩擦パッド4,4がディスク回出側に付勢されることにより、摩擦パッド4,4の裏板4b,4bが、予め、回出側トルク受面3nに当接した状態となり、裏板4b,4bと回出側トルク受面3nとが当接することにより発生する当接音を抑制できる。さらに、摩擦パッド4,4がディスク半径方向内側に付勢されることにより、摩擦パッド4,4のガタ付きを抑制することができる。
【0037】
さらに、湾曲片5aは、ディスク回出側の端部5nが、ディスク回入側の端部5pよりディスク半径方向外側に配置され、組み付け時に応力が掛かる湾曲片5aのディスク回入側の端部5nと、車両振動時及び制動時に応力が掛かる湾曲片5aのディスク回出側の端部5pのディスク半径方向の位置をずらすことができ、パッドスプリング5の耐久性の向上を図ることができる。また、湾曲片5aのディスク回出側の端部5nにディスク回出側に延出する平面部5qを設けたことにより、パッドスプリング5の湾曲片5aよりもディスク回出側で発生する応力が湾曲片5aに集中することを抑制できる。さらに、回出側パッド弾発部5cに取り付け方向を示す指標5kを設けたことにより、パッドスプリング5の誤組を防止することができる。さらに、回入側第1傾斜片、回入側第2傾斜片、回出側第1傾斜片、回出側第2傾斜片の傾斜角度や長さを変更することにより、弾発力の設定や設定変更を容易に行うことができる。
【0038】
なお、本発明は上述の形態例に限るものではなく、摩擦パッドは、ディスク半径方向外側面のディスク回出側にのみ突部を設けたものでもよい。また、パッドスプリングは、湾曲片のディスク回出側の端部が、ディスク回入側の端部よりディスク半径方向外側に配置されていなくても差し支えない。さらに、湾曲片のディスク回出側の端部にディスク回出側に延出する平面部を備えていなくてもよい。また、パッドスプリングは、回入側パッド弾発部に取り付け方向を示す指標を設けてもよく、さらに、指標を設けていなくても差し支えない。
【0039】
また、パッドスプリングの回入側パッド弾発部と回出側パッド弾発部とを、摩擦パッド側に向けて凸となる湾曲状に形成してもよく、回入側パッド弾発部と回出側パッド弾発部とを湾曲状に形成することにより、パッドスプリングの成形が容易になる。
【符号の説明】
【0040】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパボディ、3a…作用部、3b…ブリッジ部、3c…キャリパ半体、3d…ディスク回入側ブリッジ部、3e…ディスク回出側ブリッジ部、3f…天井開口部、3g…取付ボス部、3h…取付ボルト挿通孔、3i…摩擦パッド収容部、3j…ディスク回入側面、3k…回入側トルク受面、3m…ディスク回出側面、3n…回出側トルク受面、3p…係止溝、3q…隆状部、4…摩擦パッド、4a…ライニング、4b…裏板、4c…本体部、4d…ディスク半径方向外側面、4e…ピン孔、4f…吊下げ片、4g…突部、4h…ディスク回入側面、5…パッドスプリング、5a…湾曲片、5b…回入側パッド弾発部、5c…回出側パッド弾発部、5d…係止片、5e…回入側当接片、5f…回入側第1傾斜片、5g…回入側第2傾斜片、5h…回出側当接片、5i…回出側第1傾斜片、5j…回出側第2傾斜片、5k…指標、5m…突出片、5n,5p…端部、5q…平面部、6…連結ボルト、7…シリンダ孔、8…ピストン、9…ピストンシール、10…液圧室、11…ユニオン孔、12…ブリューダスクリュ、13…ハンガーピン
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータを跨いで配置されるキャリパボディと、前記ディスクロータの両側部に配置される一対の摩擦パッドと、該摩擦パッドをディスク半径方向内側に付勢するパッドスプリングとを備え、前記キャリパボディは、前記ディスクロータの外周を跨ぐブリッジ部に、前記摩擦パッドを抜き差しする天井開口部を設け、前記摩擦パッドは、ディスク周方向中央部に吊下げ片を突設し、該吊下げ片に、前記天井開口部をディスク軸方向に懸架するハンガーピンを挿通することによりディスク軸方向に移動可能に吊持されるディスクブレーキにおいて
記パッドスプリングは、前記ハンガーピンのディスク半径方向内側に当接する湾曲片と、該湾曲片から車両前進時におけるディスク回入側に延出し、前記摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧する回入側パッド弾発部と前記回入側パッド弾発部の先端に設けられ、前記天井開口部の車両前進時におけるディスク回入側面のディスク半径方向内側に係止される係止片とを備え、
前記回入側パッド弾発部中間部に、双方の前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接可能な長さを有する回入側当接片を備えることを特徴とするディスクブレーキ
【請求項2】
ディスクロータを跨いで配置されるキャリパボディと、前記ディスクロータの両側部に配置される一対の摩擦パッドと、該摩擦パッドをディスク半径方向内側に付勢するパッドスプリングとを備え、前記キャリパボディは、前記ディスクロータの外周を跨ぐブリッジ部に、前記摩擦パッドを抜き差しする天井開口部を設け、前記摩擦パッドは、ディスク周方向中央部に吊下げ片を突設し、該吊下げ片に、前記天井開口部をディスク軸方向に懸架するハンガーピンを挿通することによりディスク軸方向に移動可能に吊持されるディスクブレーキにおいて
記パッドスプリングは、前記ハンガーピンのディスク半径方向内側に当接する湾曲片と、該湾曲片から車両前進時におけるディスク回入側に延出し、前記摩擦パッドをディスク半径方向内側に押圧する回入側パッド弾発部と前記回入側パッド弾発部の先端に設けられ、前記天井開口部の車両前進時におけるディスク回入側面のディスク半径方向内側に係止される係止片とを備え、
前記回入側パッド弾発部は、中間部に、前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接する回入側当接片を備えるとともに、前記湾曲片から前記回入側当接片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜する回入側第1傾斜片と、前記回入側当接片から前記係止片に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に、前記回入側第1傾斜片よりも緩やかな傾斜角度で傾斜する回入側第2傾斜片とを備え、前記回入側当接片は、双方の前記摩擦パッドのディスク半径方向外側面に当接可能な長さを有するとともに、幅方向中央部に向けて、漸次、ディスク半径方向内側に傾斜して形成され、前記係止片は、ディスク半径方向外側に傾斜して形成されることを特徴とするディスクブレーキ
【請求項3】
前記摩擦パッドは、少なくとも車両前進時におけるディスク半径方向外側面のディスク回出側に、ディスク半径方向外側に突出する突部を備え、
前記回出側パッド弾発部は、摩擦パッド側に向けて凸となる湾曲状に形成され、先端に、前記突部のディスク回入側面に当接する回出側当接片を備え、
該回出側当接片は、双方の前記摩擦パッドの前記突部のディスク回入側面に当接可能な長さを有するとともに、先端にディスク半径方向外側に突出する突出片を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記キャリパボディは、前記天井開口部の車両前進時におけるディスク回入側面のディスク半径方向内側に、前記パッドスプリングを係止する係止溝を備え、
前記係止片は、ディスク半径方向外側に傾斜して形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記湾曲片は、ディスク回出側の端部が、ディスク回入側の端部よりディスク半径方向外側に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のディスクブレーキ
【請求項6】
前記湾曲片は、ディスク回出側の端部にディスク回出側に延出する平面部を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のディスクブレーキ
【請求項7】
前記回入側パッド弾発部と前記回出側パッド弾発部のいずれか一方に、取り付け方向を示す指標を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のディスクブレーキ