(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177579
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】防災監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G08B17/00 L
G08B17/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024178589
(22)【出願日】2024-10-11
(62)【分割の表示】P 2022207793の分割
【原出願日】2015-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】安彦 浩二
(72)【発明者】
【氏名】松下 栄治
(72)【発明者】
【氏名】山本 崇
(72)【発明者】
【氏名】小野 武宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳大
(72)【発明者】
【氏名】城井 正広
(72)【発明者】
【氏名】溝口 英史
(72)【発明者】
【氏名】高木 幸司
(72)【発明者】
【氏名】石田 憲
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠良
(72)【発明者】
【氏名】片岡 才
(72)【発明者】
【氏名】青山 晃久
(57)【要約】
【課題】故障を検出した場合に、システムにどの程度影響するかの重み付けをもったシステム状態の表示により、発生した故障に対しユーザ側で適切に対処可能とする。
【解決手段】R型受信機10の受信機パネル12に、防災警報を表示する表示部14と故障度合を表示するシステム状態表示器20を別々に備える。システム状態表示器20は、システムに防災監視が不可能な障害が生じている場合は、防災監視が不可能な障害が生じている状態に対応する表示を行い、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じている場合は、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を行い、防災監視が不可能な障害が生じている状態に対応する表示と、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を同時に表示可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を備えた防災監視システムであって、
前記表示部は、
防災監視が不可能な障害が生じている場合は、防災監視が不可能な障害が生じている状態に対応する表示を行い、
経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じている場合は、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を行い、
前記防災監視が不可能な障害が生じている状態に対応する表示と、前記経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を同時に表示可能であることを特徴とする防災監視システム。
【請求項2】
表示部を備えた防災監視システムであって、
前記表示部は、
システム内の通信に異常又は障害が生じている場合は、システム内の通信に異常又は障害が生じている状態に対応する表示を行い、
経年劣化により前記システム内の機器に交換の必要が生じている場合は、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を行い、
前記システム内の通信に異常又は障害が生じている状態に対応する表示と、前記経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を同時に表示可能であることを特徴とする防災監視システム。
【請求項3】
表示部を備えた防災監視システムであって、
前記表示部は、
防災監視に影響を与えない外部機器に障害が生じている場合は、防災監視に影響を与えない外部機器に障害が生じている状態に対応する表示を行い、
経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じている場合は、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を行い、
前記防災監視に影響を与えない外部機器に障害が生じている状態に対応する表示と、前記経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を同時に表示可能であることを特徴とする防災監視システム。
【請求項4】
システム構成要素の状態を監視して評価する制御部を備えた防災監視システムであって、
前記制御部は、評価対象とする前記システム構成要素について、少なくとも1段階の故障状態と、前記故障状態に至る以前の状態であって所定の経年劣化が認められる状態と、前記故障状態ではなく且つ前記所定の経年劣化も認められない状態との何れであるかを評価することを特徴とする防災監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警戒区域に引き出された信号線に接続した火災感知器やガス漏れ検知器からの信号を受信機で受信して火災警報やガス漏れ警報を出力する防災監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R型として知られた防災監視システムにおいては、R型受信機から引き出された伝送線に例えば伝送機能を備えた火災感知器を接続し、受信機から火災感知器に一定周期で一括AD変換コマンドを送信して煙濃度や温度などのセンサデータを検出し、続いて、火災感知器のアドレスを指定したポーリングコマンドの送信によりセンサデータを応答受信し、受信したセンサデータを所定の閾値と比較し、閾値を超えたときに火災と判断し、音響や表示灯によって火災警報を出力し、併せて火災を検出した感知器アドレスから火災発生場所を表示している。
【0003】
また、P型として知られた防災監視システムにおいては、P型受信機から引き出された感知器回線にオンオフ型感知器や発信機を接続して回線単位に火災を監視しており、オンオフ型感知器で火災を検出した場合に回線に流れる発報電流をP型受信機で検出して、音響や表示灯によって火災警報を出力し、併せて地区表示灯を点灯して火災発生地区を表示している。
【0004】
このような防災監視システムの受信機にあっては、システムの状態表示のため、受信機の故障、感知器を含む端末機器の故障、端末機器を接続している配線異常等を監視しており、システム内での故障や異常を検出すると、受信機に設けた障害代表灯を点灯すると共に障害警報音を出力して知らせるようにしている。
【0005】
このように受信機で障害が報知された場合には、受信機に設けた液晶パネル又はLED等の表示器により故障個所や故障内容を表示し、これを見て防災担当者等は必要な対処を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08-255294号公報
【特許文献2】特開2009-087111号公報
【特許文献3】特開平07-262474号公報
【特許文献4】特開2010-272023号公報
【特許文献5】特開平06-003482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の防災監視システムにあっては、システムで発生した個々の故障の発生箇所や故障内容は表示するが、発生した故障に直ぐに対処しないと監視機能が失われて人命に影響があるのか、それとも後日の対応で問題ないのかが、システムを構成している機器に不慣れなユーザでは判断できず、適切な対処に手間取るという問題がある。
【0008】
また、故障がどの程度の影響を及ぼすか判断できないユーザは、不安に駆られることから、後日の対応で問題ない場合にも、保守メーカに緊急呼出を行い、軽度の故障であっても例えば深夜に対応することもあり、保守メーカの業務負担となっている。
【0009】
本発明は、故障を検出した場合に、システムにどの程度影響するかの重み付けをもったシステム状態の表示により、発生した故障に対しユーザ側で適切に対処可能とする防災監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表示部を備えた防災監視システムであって、
表示部は、
防災監視が不可能な障害が生じている場合は、防災監視が不可能な障害が生じている状態に対応する表示を行い、
経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じている場合は、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を行い、
防災監視が不可能な障害が生じている状態に対応する表示と、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を同時に表示可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明は、表示部を備えた防災監視システムであって、
表示部は、
システム内の通信に異常又は障害が生じている場合は、システム内の通信に異常又は障害が生じている状態に対応する表示を行い、
経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じている場合は、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を行い、
システム内の通信に異常又は障害が生じている状態に対応する表示と、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を同時に表示可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明は、表示部を備えた防災監視システムであって、
表示部は、
防災監視に影響を与えない外部機器に障害が生じている場合は、防災監視に影響を与えない外部機器に障害が生じている状態に対応する表示を行い、
経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じている場合は、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を行い、
防災監視に影響を与えない外部機器に障害が生じている状態に対応する表示と、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を同時に表示可能であることを特徴とする。
【0013】
本発明は、システム構成要素の状態を監視して評価する制御部を備えた防災監視システムであって、
制御部は、評価対象とするシステム構成要素について、なくとも1段階の故障状態と、故障状態に至る以前の状態であって所定の経年劣化が認められる状態と、故障状態ではなく且つ所定の経年劣化も認められない状態との何れであるかを評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(基本的な効果)
本発明は、表示部を備えた防災監視システムであって、表示部は、防災監視が不可能な障害が生じている場合は、防災監視が不可能な障害が生じている状態に対応する表示を行い、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じている場合は、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を行い、防災監視が不可能な障害が生じている状態に対応する表示と、経年劣化によりシステム内の機器に交換の必要が生じた状態に対応する表示を同時に表示可能であるため、故障が発生した場合に、システム状態表示器の表示を見ることで、ユーザにおいて直ぐに対処が必要な故障であるか否かが容易に分かり、適切な対処により故障を修復することで、故障による影響を最小限に食い止めることができる。また、軽度の故障が発生した場合にも、ユーザはこれを容易に見分けることができ、不安に駆られて深夜等の緊急呼出し等を行うようなことが低減し、保守メーカの業務負担を低減可能とする。
【0015】
(故障に対するランク又は点数の割当てによる評価)
また、制御部は、システム構成要素の故障種別に応じて故障度合を示す所定のランク又は所定の点数を割当て、システム構成要素の故障を検出した場合に、検出した故障に割当てられたランク又は点数に応じてシステム状態表示器に故障度合を表示するようにしたため、故障度合をランク又は点数で定数的に評価して、故障の程度に応じたシステム状態の表示を可能とする。
【0016】
(故障に対するランク又は点数の変更による効果)
また、制御部は、設定操作に基づき、システム構成要素の故障種別に応じて故障度合を示すランク又は点数の割当てを変更可能としたため、故障内容に対応して故障度合を示すランクや点数を必要に応じて適宜に変更することができる。
【0017】
(故障に対するランク又は点数の割当てによる評価1の効果)
また、制御部は、システム構成要素の故障を含む状態を検出した場合に、所定のランク又は点数を含む少なくとも1段階の故障と、システム構成要素に経年劣化が発生して次の点検時に交換を必要とする、故障の次のランク又は点数の高い経年劣化と、システム構成要素に故障が起きていない最低ランク又は最小点の故障なしとの何れかの段階に分類し、分類した段階に割り当てられたランク又は点数に応じてシステム状態表示器に故障度合を表示するようにしたため、所定のランク又は点数となる故障であれば、即刻対応が必要と判断でき、経年劣化ではではシステムとしては正常な状態にあると判断して問題なく、更に、最小ランク又は最低点の故障なしは、完全に正常な状態と判断できる。
【0018】
(故障に対するランク又は点数の割当てによる評価の効果)
また、制御部は、システム構成要素の故障を含む状態を検出した場合に、受信機による防災監視ができない最高ランク又は最高点数の第1故障と、受信機による防災監視は可能であるが、信号線に故障がある第1故障の次に高いランク又は点数の第2故障と、受信機による防災監視が可能で、信号線も正常であるが、受信機に対し外部機器から障害情報が入力している第2故障の次に高いランク又は点数の第3故障と、システム構成要素に経年劣化が発生して次の点検時に交換を必要とする第3故障の次に高いランク又は点数の第4故障と、システム構成要素に故障が起きていない最低ランク又は最小点の故障なしとの何れかの段階に分類し、分類した段階に割り当てられたランク又は点数に応じてシステム状態表示器に故障度合を表示するようにしたため、最高ランク又は最高点の第1故障であれば、即刻対応が必要と判断でき、次にランク又は点数の高い第2故障であれば、後日対応を判断でき、次にランク又は点数の低い第3故障であれば、余裕を持った対応で良いと判断でき、次のランク又は点数の低い第4故障であれば、次の定期点検まで対応は必要ないと判断でき、また、第4故障ではシステムとしては正常な状態にあると判断して問題なく、更に、最小ランク又は最低点の故障なしは、故障が全くない完全に正常な状態と判断できる。
【0019】
(複数故障に対し最高ランク又は最高点数により状態表示の効果)
また、制御部は、システム構成要素について複数の故障を検出した場合、検出した複数の故障の中の最高ランク又は最高点数に応じてシステム状態表示器に故障度合を表示するようにしたため、複数の故障の中で優先順位の最も高い故障によるシステム状態を表示することができる。
【0020】
(複数故障に対しランク又は点数の合計により状態表示の効果)
また、制御部は、システム構成要素について複数の故障を検出した場合、検出した複数の故障の合計点数に応じてシステム状態表示器に故障度合を表示するようにしたため、例えば低い点数の故障が複数発生していた場合、発生している故障より点数の高い故障に相当するシステム状態の表示となり、低いランク又は点数の故障であっても、複数発生していることでシステムとしての危険度が高いことから、故障度合を高くして適切な対応を可能とする。
【0021】
(防災警報時の状態表示停止による効果)
また、制御部は、受信機から防災警報を出力した場合に、システム状態表示器により故障度合の表示を停止するようにしたため、火災警報が出されている場合に、システム状態表示器による故障度合の表示は必要なく、警報表示を混乱させる可能性があることから、システム状態表示器を停止して表示を消す。
【0022】
(故障度合に応じた表示数又は表示量の増加する表示器の効果)
また、システム状態表示器は、故障度合の増加に応じて表示数又は表示量が増大する表示要素を備えるようにしたため、故障度合を例えばLEDの表示数や、バーグラフによる表示面積の拡大により表示することで、その表示を見てどの程度の故障であるか直観的に判断することを可能とする。
【0023】
(故障度合の増加に応じて寒色系から暖色系に変化する表示器の効果)
また、システム状態表示器は、故障度合の増加に応じて寒色系の安全色から暖色系の危険色に表示色を変化させ、例えば、システム状態表示器は、故障度合の増加に応じて、緑色又は青色から黄色を経て赤色に表示色を変化させるようにしたため、システム状態表示器の表示色によって、どの程度の故障であるか直観的に判断することを可能とする。
【0024】
(メーター表示器による故障度合の表示の効果)
また、システム状態表示器を、故障度合の増加に応じて指針の振れ幅または回転角が増加するメーター表示器とするようにしたため、指針の位置で故障度合が容易に判断できる。
【0025】
(単一表示灯の表示色による故障度合の表示の効果)
また、システム状態表示器は、単一の表示灯を備え、故障度合に応じて表示灯の表示色を変化させるようにしたため、システム状態の表示がシンプルとなり、表示色を見るだけで故障度合が容易に判断できる。
【0026】
(点滅周期による故障度合の表示の効果)
また、システム状態表示器は、故障度合に応じて表示灯の点滅周期を変化させるようにしたため、例えば故障度合の増加に応じて点滅周期を短くするよう制御することで、受信機による防災監視ができないような重大な故障であれば、表示灯が短周期で連続的に点滅し、緊急に対処を必要とするシステム状態にあることが容易に判断できる。
【0027】
(故障度合に応じた故障の表示形態を変化させる制御の効果)
また、制御部は、受信機に設けた液晶表示器による故障情報の表示形態を、故障度合の増加に応じて変化させるようにしたため、例えば液晶表示器に表示した故障情報の文字色、文字サイズ<やフォント等を故障度合の増加に応じて変化させることで、ユーザに対し故障度合がどの程度のものかを強くアピールし、発生した故障の見分けをより容易なものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】R型防災監視システムの概要を示したブロック図
【
図3】システム状態表示器を取り出して示した説明図
【
図4】故障度合とランク及び点数の関係を一覧で示した説明図
【
図5】システム表示器のランクA,B,C,D,Eによるシステム状態の表示を示した説明図
【
図6】メーター型のシステム表示器によるランクA~Eのシステム状態の表示を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
[防災監視システムの概要]
(R型受信機)
図1はR型防災受信盤を示した説明図である。
図1に示すように、R型受信機10は建物の防災センタや管理人室等に設置されており、伝送機能を備えた火災感知器や中継器を介して接続したガス漏れ検知器等のセンサを伝送路により接続して火災やガス漏れ等の異常を監視し、また、地区音響装置等の制御機器を伝送路に接続して制御動作可能としている。
【0030】
R型受信機10は箱形の筐体前面に扉構造の受信機パネル12を配置している。受信機パネル12には、表示部14、操作部16、プリンタ18を配置している。操作部16の上側には露出してスイッチを配置し、下側には開閉自在な子扉17の内側にスイッチを配置している。
【0031】
表示部14には火災代表灯、ガス漏れ代表灯、外部機器の障害を示す諸表示灯等を設けている。
【0032】
操作部16には、火災・ガス漏れ断定スイッチ、音響停止スイッチ、地区音響一時停止スイッチ等を外部に露出して設けている。また、操作部16の子扉17の内側には、復旧スイッチ、地区音響一斉鳴動スイッチ、一括連動停止スイッチ等を設けており、通常監視状態では子扉17を閉じており、必要な場合に子扉17を下側に開いてスイッチ操作を行う。
【0033】
プリンタ18はR型受信機10で火災警報、ガス漏れ警報等のイベントを行った場合にイベント発生時刻とイベント内容を印字出力する。
【0034】
これに加え本実施形態にあっては、R型受信機10の受信機パネル12にシステム状態表示器20を設けている。システム状態表示器20には、R型受信機10で監視して評価した、受信機自体、火災感知器やガス漏れ検知器等の検出器及び伝送路を含むシステム構成要素の故障度合を表示する。
【0035】
このためシステム状態表示器20の表示を見ることで、故障が発生した場合に、ユーザにおいて直ぐに対処が必要な故障であるか否かが容易に分かり、適切な対処により故障を修復することで、故障による影響を最小限に食い止めることができる。また、軽度の故障が発生した場合にも、ユーザはシステム状態表示器20の表示から軽度の故障であることを容易に見分けることができ、不安に駆られて深夜等の緊急呼出し等を行うようなことが低減し、保守メーカの業務負担を低減可能とする。
【0036】
(防災監視システム)
図2はR型防災監視システムの概要を示したブロック図である。
図2において、R型受信機10には、制御部22,伝送部24、表示部14、操作部16、警報部26、移報部28及びシステム状態表示器20を設けている。
【0037】
R型受信機10からは施設の警戒エリアに向けて伝送線30が引き出され、伝送線30に対し検知器としてアナログ感知器32を接続している。
【0038】
また伝送線30には中継器34が接続され、中継器34から引き出された感知器回線36にオンオフ感知器38及び発信機40を接続している。また別の中継器34にはガス漏れ検知器42を接続している。
【0039】
アナログ感知器32及び中継器34は、R型受信機10との間で情報を双方向伝送する伝送機能を備えており、R型受信機10を含めて固有のアドレスが予め割り当てられている。1つの伝送線30に接続できるアナログ感知器32及び中継器34の数は、例えば最大アドレス数が256アドレスの場合、受信機アドレスを除くことから、255台以下のアナログ感知器32及び中継器34を接続することができる。
【0040】
R型受信機10の制御部22は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により所定の受信機制御を行う。
【0041】
R型受信機10からアナログ感知器32及び中継器34に対する下り信号は電圧モードで伝送している。この電圧モードの信号は、伝送線30の電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0042】
これに対しアナログ感知器32及び中継器34からの上り信号は電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、伝送線30に伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号が受信機に伝送される。
【0043】
R型受信機10の制御部22による受信制御は次のようになる。R型受信機10は、通常の監視時にあっては、端末アドレスを順次指定した正常監視用のポーリングコマンドを送信しており、アナログ感知器32及び中継器34は自己の設定アドレスに一致するポーリングコマンドを受信すると正常監視応答を行う。このためR型受信機10にあっては、ポーリングコマンドに対し応答がなかったアナログ感知器32または中継器34を障害として故障を検出することができる。
【0044】
またR型受信機10は、すべての端末アドレスに対するポーリングコマンドの送信周期ごとに一括AD変換コマンドを繰り返し送信している。アナログ感知器32はR型受信機10からの一括AD変換コマンドを受信すると、検出している煙濃度や温度などのアナログ検出データをサンプリングし、予め定めた火災レベルと比較している。
【0045】
アナログ感知器32でサンプリングしたアナログ検出データが火災レベルを超えた場合には、R型受信機10に対しポーリングコマンドに対する応答タイミングで割込信号を送信する。この割込信号は、応答ビット列をオール1とするような通常は使用されない信号を送る。
【0046】
中継器34も、R型受信機10からの一括AD変換コマンドに基づき、感知器回線36に接続しているオンオフ感知器38あるいはガス漏れ検知器42の受信状態をサンプリングし、火災発報あるいはガス漏れを検出した場合には、R型受信機10に対し割込信号を送信する。
【0047】
R型受信機10は、アナログ感知器32または中継器34からの割込信号を受信すると、グループ検索コマンドを発行し、火災を検出したアナログ感知器32または中継器34を含むグループからの割込応答を受信してグループを判別する。
【0048】
続いて、判別したグループに含まれる個々のアナログ感知器や中継器に対し、順次アドレスを指定したポーリングを行い、アナログデータや火災発報データなどの火災応答を受けることで、火災を検出したアナログ感知器32または中継器34の感知器アドレスを認識し、火災警報動作を行うことになる。
【0049】
(システム構成要素の故障監視)
また、R型受信機10の制御部22は、受信機自体、伝送線30、アナログ感知器32、中継器34、更には、移報部28を介して接続している外部機器を含むシステム構成要素の故障を監視している。
【0050】
R型受信機10の故障監視としては、例えば予備電源異常、予備電源電圧異常、受信機内メモリ異常、受信機内通信異常、受信機内ユニット異常、プリンタ異常、プリンタ用紙切れ等がある。更に、R型受信機10の故障監視には、システムを構成する機器の耐用年数を管理しており、耐用年数が近づいた場合に経年劣化を判断する。
【0051】
伝送線30の故障監視としては、伝送線断線障害、伝送線終端障害、シリアル通信異常等がある。アナログ感知器32や中継器34の故障監視としては、アドレス重複、端末外れ、内部異常等がある。更に、外部機器の故障監視として、R型受信機10に諸表示入力を行っている例えば消火ポンプ設備からの障害情報の入力がある。
【0052】
(システム状態表示器と故障度合の評価)
図3は
図1のR型受信機に設けたシステム状態表示器を取り出して示した説明図、
図4は故障項目と故障度合を示すランク及び点数の関係を一覧で示した説明図である。
【0053】
図3に示すように、本実施形態のシステム状態表示器20は、故障度合の増加を示す表示要素として、故障度合の高い方から低い方に向けた順番(右から左に向かう順番)に、LED等を用いた第1故障表示器46a、第2故障表示器46b、第3故障表示器46c、第4故障表示器46d及び故障なし表示器46eを配列しており、その上側に故障による危険度の強さを示す危険度番号45として1~5の数値を表示し、その下側にシステム状態が安全側(OK)にどの程度の度合いあることを示す三角形の安全表示マーカ48とシステム状態が危険側(NG)にどの程度の度合あるかを示すことを示す三角形の危険表示マーカ50を設けている。
【0054】
また、第1故障表示器46aの表示色は赤色、第2故障表示器46bの表示色は橙色、第3故障表示器46cの表示色は黄色、第4故障表示器46dの表示色は薄い緑色又は青色、故障なし表示器46eの表示色は濃い緑色又は青色とし、危険度が低い場合、即ち安全度が高い場合は緑又は青の寒色系の表示色とし、危険度が高い場合は、黄色、橙色、赤色の暖色系の表示色とする。
【0055】
本実施形態では、
図4に示すように、R型受信機10の制御部22は、防災監視システムで検出する故障項目を、その内容に応じて例えば5段階の故障度合を示すランクと点数に分けている。
【0056】
第1故障は、受信機による防災監視ができず、人命に影響を生ずる可能性のある最高ランクAで最高点数10点の故障となる。この第1故障には、R型受信機10の予備電源異常、予備電源電圧異常、受信機内メモリ異常、受信機内通信異常、受信機内ユニット異常、伝送線30の伝送線断線障害、アナログ感知器32や中継器34のアドレス重複、端末外れ、内部異常等が含まれる。
【0057】
第2故障は、受信機による防災監視は可能であるが、信号線に異常がある故障であり、第1故障の次に高いランクBで点数3点の故障となる。この第2故障には、伝送線30の伝送線終端障害、シリアル通信異常等が含まれる。
【0058】
第3故障は、受信機による防災監視が可能であり、信号線も正常であるが、受信機に対し外部機器から障害情報が入力している場合や即対応をする必要のないプリンタ用紙切れ等の故障であり、第2故障の次に高いランクC及び点数2点の故障となる。
【0059】
第4故障は、受信機による防災監視が可能であり、信号線も正常であり、外部機器からの障害情報の入力もないが、システム構成要素に経年劣化が発生して次の点検時に交換を必要とする故障であり、第3故障の次に高いランクDで点数1点の故障となる。この第4故障は、防災監視システムとしては正常に機能しており、システムとしての危険度は極めて低い状態にある。
【0060】
故障なしは、システム構成要素に故障が全く起きておらず、最低ランクEで最小点0点の故障となり、システム状態としては全く問題のない危険度ゼロの状態である。
【0061】
また、R型受信機10の制御部22は、所定の設定操作により、
図4に示したシステム構成要素の故障種別に応じて故障度合を示すランク又は点数の割当てを、必要に応じて変更することができる。
【0062】
(故障度合の評価と表示)
図5はシステム状態表示器のランクA,B,C,D,Eによる表示を示した説明図である。
【0063】
図5(A)は、
図4の故障度合における最高ランクAで最高点数10点の第1故障が検出された場合のシステム状態の表示であり、第1故障表示器46a,第2故障表示器46b及び第3故障表示器46cの3つが点灯又は点滅しており、システム状態が最も高い危険度の状態にあり、検出している故障に対する即対応を必要とする。
【0064】
図5(B)は、
図4の故障度合におけるランクBで点数3点の第2故障が検出された場合のシステム状態の表示であり、第2故障表示器46b及び第3故障表示器46cの2つが点灯又は点滅しており、即対応は必要ないが、速やかな対応を必要とする状態にある。
【0065】
図5(C)は、
図4の故障度合におけるランクCで点数2点の第3故障が検出された場合のシステム状態の表示であり、第3故障表示器46cのみが点灯又は点滅しており、外部機器の障害やプリンタ紙切れといった軽度の故障であり、放置しておくことは適切でないので、可能な限り速やかに対応すれば良い。
【0066】
図5(D)は、
図4の故障度合におけるランクDで点数1点の第4故障が検出された場合のシステム状態の表示であり、第4故障表示器46dのみが点灯又は点滅しており、対応に時間的な余裕があることから、例えば耐用年数の近づいた機器を調べ、交換等の対応を検討すれば良い。
【0067】
図5(E)は、
図4の故障度合におけるランクEで点数0点の故障なしが検出された場合のシステム状態の表示であり、第4故障表示器46dと故障なし表示灯46eの2つが点灯又は点滅しており、システムは完全に正常な状態にある。
【0068】
(複数故障に対しランク又は点数の合計により状態表示)
R型受信機10の制御部22は、システム構成要素について複数の故障を検出した場合、検出した複数の故障の合計点数に応じてシステム状態表示器20に故障度合を表示するようにしても良い。
【0069】
制御部22で例えば
図4の第3故障と第4故障を検出した場合には、それぞれの点数である2点と1点を加えた3点を求め、1ランク上の第2故障に相当する故障度合をシステム状態表示器20に表示する。これにより低い点数の故障であっても、複数発生していることでシステムとしての危険度が高いことから、故障度合を高くしたシステム状態の表示により、適切な対応を可能とする。
【0070】
(防災警報時の状態表示停止)
R型受信機10の制御部22は、火災警報又はガス漏れ警報を出力した場合には、システム状態表示器20による故障度合の表示を停止して表示を消す制御を行う。このように防災警報が出力された場合に、システム状態表示器20の表示を消すことで、火災やガス漏れ等の防災警報による表示を、システム状態表示器20の表示により、混乱させることを防止する。
【0071】
例えば、火災警報が出力されたときに、システム状態表示器20に例えば
図5(A)のような別の感知器の故障に起因したシステム状態の表示があると、故障による誤報と判断してしまう恐れもあり、システム状態表示器20の表示を消して、このような混乱を防止する。
【0072】
(メーター表示器による故障度合の表示)
図6はメーター型のシステム状態表示器による故障度合を示すランクA~Eの表示を示した説明図である。
【0073】
図6(A)に示すように、本実施形態のシステム状態表示器60は、メーターパネルにリング状目盛62を設け、リング状目盛62は
図4の第1故障乃至第4故障及び故障なしに対応した危険度1~5の領域62e~62aに分割しており、故障度合の増加に応じて回転するメーター指針64を設けている。
【0074】
メーター型のシステム状態表示器60による表示動作は、
図6(A)乃至(E)に示すように、検出した第1故障乃至第4故障及び故障なしによる故障度合の評価に基づき、メーター指針64を評価結果に対応したリング状目盛62の対応する危険度5~1の領域64e~64aを指し示すように回転し、メーター指針64の位置から直観的にシステムの危険度を把握して故障検出によるシステム状態を認識できる。
【0075】
また、メーター型のシステム状態表示器60は、アナログメータであっても良いし、デジタルメーターであっても良い。また、メーター指針64による表示に加え、メーターパネルの背景色を、危険度1~5に応じて、緑色又は青色、薄い緑色又は青色、黄色、橙色、赤色と変化させても良い。
【0076】
[本発明の変形例]
(P型受信機)
上記の実施形態は、R型の防災監視システムを例にとっているが、P型の防災監視システムについても、同様に、P型受信機にシステム状態表示器を設け、故障度合に応じて危険度及び又は安全度の表示を行うようにしても良い。
【0077】
(ランク又は点数の割当てによる評価)
上記の実施形態は、第1故障乃至第4故障と故障なしの5段階に分類してランク又は点数を割り当ててシステム状態を評価しているが、他の実施形態として、R型受信機10の制御部22は、システム構成要素の故障を含む状態を検出した場合に、所定のランク又は点数を含む少なくとも1段階の故障と、システム構成要素に経年劣化が発生して次の点検時に交換を必要とする、故障の次のランク又は点数の高い経年劣化と、システム構成要素に故障が起きていない最低ランク又は最小点の故障なしとの何れかの段階に分類し、分類した段階に割り当てられたランク又は点数に応じてシステム状態表示器に故障度合を表示するようにしても良い。
【0078】
また、上記の実施形態は、システム状態を5段階に分けて評価しているが、これに限定されず、例えば、重故障、軽故障、故障なしの3段階や、それ以外の適宜の多段階に分けて評価しても良い。
【0079】
(システム状態表示器)
システム状態表示器の他の実施形態として、システム状態表示器を単一の表示灯とし、故障度合に応じて表示灯の表示色を変化させるようにしても良い。この場合の表示灯の表示色の変化は、故障度合の増加に応じて寒色系の安全色から暖色系の危険色に表示色を変化させる。
【0080】
また、システム状態表示器の他の実施形態として、故障度合に応じて表示灯の点滅周期を変化させるようにしても良い。この場合の表示灯の点滅周期の変化は、故障度合の増加に応じて点滅周期を短くするよう制御する。
【0081】
また、システム状態表示器の表示形態は上記の実施形態に限定されず、適宜の表示構成をとることができる。
【0082】
(受信機表示部の故障度合に応じた表示色制御)
また、R型受信機10の制御部22は、R型受信機10に設けた液晶パネル15の表示形態を、故障度合の増加に応じて変化させる。この表示形態の変化は、例えば液晶パネル15に表示した故障情報の文字色を、故障度合の増加に応じて寒色系の安全色から暖色系の危険色に変化させるか、故障情報の文字サイズを故障度合の増加に応じてサイズを増加に変化させるようにする。また、故障情報の文字フォントを、故障度合の増加に応じてサイズを増加に変化させても良い。更に、故障情報の文字表示色と文字サイズの両方を、故障度合の増加に応じて変化させるようにしても良い。
【0083】
このように液晶パネル15の故障情報の表示形態を、故障度合の増加に応じて変化させることで、ユーザに対し故障度合がどの程度のものかを強くアピールし、発生した故障の見分けをより容易なものする。
【0084】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0085】
10:R型受信機
12:受信機パネル
14:表示部
16:操作部
17:子扉
18:プリンタ
20,60:システム状態表示器
22:制御部
24:伝送部
26:警報部
28:移報部
30:伝送線
32:アナログ感知器
34:中継器
36:感知器回線
38:オンオフ感知器
40:発信機
42:ガス漏れ検知器
45:危険度番号
46a:第1故障表示器
46b:第2故障表示器
46c:第3故障表示器
46d:第4故障表示器
46e:故障なし表示器
48:安全表示マーカ
50:危険表示マーカ
62:リング状目盛
64:メーター指針
【手続補正書】
【提出日】2024-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム構成要素の状態を監視してシステムの故障度合を評価して出力する制御部と、
前記制御部が出力する故障度合を表示するシステム状態表示部と、
防災警報を表示する防災警報表示部と、
各種スイッチが配置された操作部と、
を備え、
前記システム状態表示部、前記防災警報表示部及び前記操作部は、受信機の同一面側に配置され、
前記システム状態表示部及び前記防災警報表示部は、同時に視認可能であることを特徴とする防災監視システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
【特許文献1】特開平08-255294号公報
【特許文献2】特開2009-087111号公報
【特許文献3】特開平07-262474号公報
【特許文献4】特開2010-272023号公報
【特許文献5】特開平06-003482号公報
【特許文献6】特開2007-286838号公報
【特許文献7】特開平11-096480号公報
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、防災監視システムであって、
システム構成要素の状態を監視してシステムの故障度合を評価して出力する制御部と、
制御部が出力する故障度合を表示するシステム状態表示部と、
防災警報を表示する防災警報表示部と、
各種スイッチが配置された操作部と、
を備え、
システム状態表示部、防災警報表示部及び操作部は、受信機の同一面側に配置され、
システム状態表示部及び防災警報表示部は、同時に視認可能であることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】