(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177590
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】溶融金属浴の一連の温度値を決定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20241212BHJP
G01J 5/0821 20220101ALI20241212BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20241212BHJP
F27B 3/28 20060101ALI20241212BHJP
G01N 25/02 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
G01J5/00 101D
G01J5/0821
F27D21/00 G
F27B3/28
G01N25/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024179248
(22)【出願日】2024-10-11
(62)【分割の表示】P 2023531696の分割
【原出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】20211288.4
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】598083577
【氏名又は名称】ヘレーウス エレクトロ-ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro-Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B-3530 Houthalen,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ヴリエルベルゲ、ミシェル
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値を決定するための改善された方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値を決定するための方法及びシステムに関する。本発明による方法は、溶融金属浴の温度が測定間で変化する複数回の繰り返し測定に特に適していることが証明されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するための方法であって、
(a)溶融金属浴の予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(b)前記溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給する工程と、
(c)時間ステップΔtを定義する工程と、
(d)将来の時点t(n)を選択し、前記時点t(n)での前記溶融金属浴の温度値Tpred(n)を予測する工程と、
(e)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける前記提供されたデータセットから、前記予測温度値Tpred(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択する工程と、
(f)前記測定プロファイルMP(n)を時点t(n)で適用して、測定温度値Tmes(n)を取得する工程と、
(g)前記測定温度値Tmes(n)、前記モデルF(t)及び前記時間ステップΔtに基づいて、前記溶融金属浴の予測温度値Tpred(n+1)を計算する工程と、
(h)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける前記提供されたデータセットから、前記予測温度値Tpred(n+1)に対応する測定プロファイルMP(n+1)を選択する工程と、
(i)前記測定プロファイルMP(n+1)を時点t(n+1)で適用して、測定温度値Tmes(n+1)を取得する工程であって、t(n+1)は
t(n+1)=t(n)+Δtによって定義される工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶融金属は溶鋼である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述する前記モデルF(t)は線形関数である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記温度推移を記述する前記モデルF(t)は前の測定に基づく、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述する前記モデルF(t)は動作パラメータに基づく、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述する前記モデルF(t)は、
(i)溶融金属浴の特性を前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移に関するモデルF(t)の記録データに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)前記溶融金属浴の特性を提供する工程と、
(iii)溶融金属浴の特性を溶融金属浴の前記経時的な温度推移に関するモデルF(t)の記録データに関連付ける前記提供されたデータセットから、前記溶融金属浴の前記特性に対応するモデルF(t)を受信する工程と、
を含む方法によって導出される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記時間ステップΔtの長さは、
(i)動作パラメータを時間ステップΔtの長さに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)動作パラメータを提供する工程と、
(iii)前記動作パラメータに関する前記提供されたデータセットから、前記時間ステップΔtの長さを受信する工程と、
を含む方法によって導出される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記時間ステップΔtの前記長さの前記選択は、工程(f)の前記測定温度値Tmes(n)に基づく、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定プロファイルMPは、
(i)前記光学コアワイヤを、その前端が前記溶融金属浴の表面の上方にある状態で提供する工程と、
(ii)少なくとも1つの送り速度vfedで、t0からt2までの時間にわたって、前記光学コアワイヤの前記前端を前記溶融金属浴に向かって、かつ前記溶融金属浴の前記表面の下方に送る工程であって、前記光学コアワイヤの前記前端は、t1からt2までの時間にわたって前記溶融金属浴の前記表面の下方にある、工程と、
(iii)t1からt2までの測定時間内に温度情報を取得する工程と、
(iv)前記光学コアワイヤを速度vretで前記溶融金属浴の上方の位置まで後退させる工程と、
のうちの少なくとも1つを定義する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記測定プロファイルMPは、t1からt2までの静止時間内の更なる工程を定義し、そのt1からt2まで間、前記光学コアワイヤの前記前端の前記送りは一時停止されるか、又は前記光学コアワイヤの前記前端は低速で送られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
測定プロファイルMPの工程(ii)における前記送りは、少なくとも2つの送り速度vfed1及びvfed2を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定プロファイルMP(n+1)の前記送り速度vfed(n+1)は、前記測定プロファイルMP(n)の前記送り速度vfed(n)よりも大きい、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
t1からt2までの前記時間の前記長さは、測定プロファイルMP(n)におけるよりも測定プロファイルMP(n+1)における方が短い、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)における前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述する前記モデルF(t)の供給は、以下の工程(b1)~(b4):
(b1)予測温度Tpredと測定温度値Tmesとの間の最大温度差ΔTmaxを定義する工程と、
(b2)最大温度ステップサイズΔTstepを定義する工程と、
(b3)前記測定温度値Tmes(n)と前記予測温度Tpred(n)との差ΔT(n)を前記最大差ΔTmaxと比較する工程と、
(b4)モデルF(t)を供給する工程であって、
F(t)=Tpred(n)+ΔTstep
(ΔT(n)が前記定義された最大温度差ΔTmaxより大きい場合)
である、工程と、
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するためのシステムであって、装置及びモジュールを備え、前記モジュールは前記装置と相互作用するように適合されており、前記装置は光学コアワイヤ及び検出器を含む、システムにおいて、
前記モジュールは、記憶ユニット、処理ユニット、及び制御ユニットを含み、前記記憶ユニットは
(a1)溶融金属浴の予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供するための記憶要素と、
(a2)前記溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給するための記憶要素と、
(a3)時間ステップΔtを定義するための記憶要素と、
を含み、
前記処理ユニットは、
(b1)将来の時点を選択し、前記将来の時点での前記溶融金属浴の温度Tpredを予測するための処理要素と、
(b2)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度Tpredに対応する測定プロファイルMPを選択するための処理要素と、
(b3)測定温度値Tmes、モデルF(t)、及び時間ステップΔtに基づいて、前記溶融金属浴の予測温度Tpredを計算するための処理要素と、
を含み、
前記制御ユニットは、
(c1)ある時点で測定プロファイルMPを適用して測定温度値Tmesを取得するための制御要素、
を含む、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値を決定するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冶金容器内の溶融金属浴の温度は、金属製造プロセス中の重要なパラメータであり、得られる製品の品質を決定する。溶融金属浴、特に電気アーク炉(EAF)の融解環境における鉄又は鋼の温度を測定するための可能な手段は、金属管によって囲まれた光ファイバを溶融金属中に浸漬する工程を含む。金属管によって囲まれた光ファイバは、しばしば、光学コアワイヤとも呼ばれる。
【0003】
溶融金属浴の温度を測定するために、光学コアワイヤを冶金容器内に送ることができる。光学コアワイヤの前端は溶融金属浴内に浸漬され、その途中で最初に高温雰囲気に遭遇し、続いてスラグ層に遭遇し、次に溶融金属浴に遭遇する。光学コアワイヤの一部分が溶融金属浴の表面の下方に浸漬されると、光ファイバは、溶融金属から受け取った熱放射を検出器、例えばパイロメータに伝達することができる。溶融金属浴の温度を求めるために、適切な計器を検出器と関連付けることができる。この測定中、光学コアワイヤの浸漬された部分は、溶融金属浴によって部分的に又は完全に消耗され得る。温度測定が終了すると、光学コアワイヤの先端を溶融金属浴から後退させることができる。後退された光学コアワイヤの先端は、次の温度測定のための新しい前端となる。
【0004】
このような装置は、一連の浸漬サイクルの形態のオンデマンド温度測定及び半連続温度測定に適している。操作者は、冶金容器に近接した過酷な環境に直接介入することなく、温度測定値を取得することができる。
【0005】
正確な測定値を提供するためには、測定値が取得されている間、光ファイバの浸漬された前端付近で黒体状態が確保されなければならない。ファイバは、金属浴表面の下方の十分な深さまで、かつ液体金属浴の温度を代表する容器内の位置に浸漬されなければならない。一方、深い浸漬は、光学コアワイヤにかかる浮力を増加させ、測定シーケンス中の光学コアワイヤの消耗を増加させる。
【0006】
いくつかの先行技術文献は、温度測定のデータ品質を改善するための金属被覆光ファイバの送り方法を開示している。
【0007】
例えば、米国特許出願公開第2007-268477号明細書は、測定サイクル中に送り速度が調整される送り方法を開示している。最初の送り段階中に熱応答が記録され、次の第2の段階における検出温度の変化と比較される。この方法は有益であることが証明されている。他方で、この方法はかなりの量の光学コアワイヤを消耗させ、測定精度は依然として更に改善の余地があり得ることが分かっている。これは、光学コアワイヤが溶融金属浴にほとんど浸漬されず、融解炉の環境又はスラグ層に遭遇する初期段階に起因し得る。特に、一連の温度を測定したい場合には、これらの要因がより顕著になる。
【0008】
米国特許出願公開第2018-180484号明細書は、複数の測定サイクルに適し、追加の機器を必要とせずに溶融金属浴の温度を測定する方法を開示している。提案された送り方式は、2つの送り速度とこれに続く静止時間とを含み、その後、温度測定が実施される。この方法は、一方では、以前に知られていた問題のいくつかを解決する。しかし他方、この方法は、金属製造プロセス中に絶えず変化する条件、特に、最適な温度測定プロトコルの選択に影響を及ぼす溶融金属の温度上昇に対処していない。
【0009】
従来技術を考慮すると、複数の測定サイクルにわたって高い精度を提供し、光学コアワイヤの消耗を最小限に抑える測定方法及びシステムが必要とされている。
【0010】
したがって、本発明の目的は、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値を決定するための改善された方法を提供することである。特に、目的の1つは、測定精度が改善された方法を提供することである。更に、一連の測定中の光学コアワイヤの消耗を最小限に抑えることを可能にする装置を提供することも目的とする。
【0011】
本発明の更なる目的は、本発明の方法を実行するための改良されたシステムを提供することである。
【0012】
これらの目的は、独立請求項において定義される主題によって達成される。
【0013】
本発明は、光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するための方法であって、
(a)溶融金属浴の予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(b)溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給する工程と、
(c)時間ステップΔtを定義する工程と、
(d)将来の時点t(n)を選択し、時点t(n)での溶融金属浴の温度値Tpred(n)を予測する工程と、
(e)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度値Tpred(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択する工程と、
(f)測定プロファイルMP(n)を時点t(n)で適用して、測定温度値Tmes(n)を取得する工程と、
(g)測定温度値Tmes(n)、モデルF(t)及び時間ステップΔtに基づいて、溶融金属浴の予測温度値Tpred(n+1)を計算する工程と、
(h)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度値Tpred(n+1)に対応する測定プロファイルMP(n+1)を選択する工程と、
(i)測定プロファイルMP(n+1)を時点t(n+1)で適用して、測定温度値Tmes(n+1)を取得する工程であって、t(n+1)は
t(n+1)=t(n)+Δtによって定義される工程と、
を含む、方法を提供する。
【0014】
更に、本発明は、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するためのシステムであって、システムは、装置及びモジュールを備え、モジュールは、装置と相互作用するように適合され、装置は、光学コアワイヤ及び検出器を含み、モジュールは、記憶ユニット、処理ユニット、及び制御ユニットを含み、
記憶ユニットは、
(a1)溶融金属浴の予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供するための記憶要素と、
(a2)溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給するための記憶要素と、
(a3)時間ステップΔtを定義するための記憶要素と、
を含み、
処理ユニットは、
(b1)将来の時点を選択し、将来の時点での溶融金属浴の温度Tpredを予測するための処理要素と、
(b2)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度Tpredに対応する測定プロファイルMPを選択するための処理要素と、
(b3)測定温度値Tmes、モデルF(t)、及び時間ステップΔtに基づいて、溶融金属浴の予測温度Tpredを計算するための処理要素と、
を含み、
制御ユニットは、
(c1)ある時点で測定プロファイルMPを適用して測定温度値Tmesを取得するための制御要素と、
を含む、システムを提供する。
【0015】
より好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。好ましい実施形態は、個別に実現されても任意の可能な組み合わせで実現されてもよい。
【0016】
本発明による方法は、溶融金属浴の温度が測定間で変化する複数回の繰り返し測定に特に適していることが証明されている。特に、温度は通常、継続的な加熱により上昇する。驚くべきことに、測定のデータ品質は、測定値を取得するために適用される測定プロファイルに依存することが分かった。特に、溶融金属浴内への光学コアワイヤの送りは、品質に影響を及ぼすことが確認されている。本発明の方法は、溶融金属浴の広範な温度に対して適合する測定プロトコルを用いて温度値を決定することを可能にする。加えて、本発明の方法は、光学コアワイヤ及びその前端の信頼性の高い位置決めを可能にすることで、光学コアワイヤの消耗を最小限に抑えて正確な温度値を取得することを更に可能にする。本明細書で使用される「消耗」という用語は、例えば、溶融金属浴による、及び溶融金属浴への、光学コアワイヤの融解及び溶解、光学コアワイヤ全体又はその異なる部分の分解又は燃焼などの光学コアワイヤの損壊を指す。
【0017】
本発明は、一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するための方法を提供する。一連の温度値は、本明細書では、少なくとも1回繰り返される決定を説明するために使用される。一連の温度値は、少なくとも温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を含む。Tmes(n)及びTmes(n+1)以外に、更なる温度値を決定してもよい。
【0018】
本出願を通して、温度又は温度値に関する変数は、大文字のTで言及され、一方、一般的な時点、時間の長さ又は時間に関する変数は、小文字のtで言及される。
【0019】
一般的な変数を定義する際には、指定された添え字、すなわち(n)又は(n+1)などを有さない変数が使用される。特定の文脈でこの変数を指す際には、指定された添え字を有する変数が使用される。例えば、Tmesは、測定温度値Tmesの一般的な定義を指し、Tmes(n)は、特定の測定温度値を指す。
【0020】
本発明によれば、温度値は、温度を測定することによって決定することができる。温度測定は、例えば、単一点測定であってもよいし、複数点測定及び可能な関連データ処理であってもよい。
【0021】
測定温度値Tmes(n)は、特定の時点t(n)での測定によって取得された温度値として理解される。したがって、測定温度値Tmes(n+1)は、特定の時点t(n+1)で取得された温度値である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「溶融金属浴」という用語は、容器内の溶融物を説明する。当業者に知られている「溶融金属浴」の代替用語は、「金属溶融物」である。溶融金属浴の溶融金属は特に限定されない。好ましい実施形態によれば、溶融金属は溶鋼である。溶融金属浴という用語は、例えばそれぞれの金属の非溶融部分を含む任意の固体部分又は気体部分の存在を除外しない。溶融金属浴はスラグ層で覆われていてもよい。
【0023】
金属溶融物の温度は異なり、通常、金属の組成及び融解プロセスの段階に依存する。好ましい実施形態によれば、溶融金属浴の温度は1500~1800℃の範囲内であり、より好ましくは1500~1700℃の範囲内である。
【0024】
溶融金属浴は、光学コアワイヤを送るのに適した入り口を含む容器内に収容されてもよい。そのような入り口は、容器を覆う側壁パネル又は屋根に配置されてもよい。
【0025】
本発明によれば、少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)は、光学コアワイヤを備える装置を用いて決定される。好ましくは、光学コアワイヤは、金属管によって側方から取り囲まれた光ファイバである。好ましくは、光ファイバは、柔軟で透明なファイバである。光ファイバは、ファイバの2つの端部の間で、特にIR波長範囲内の光を伝送する手段として使用されることが最も多い。好ましくは、光ファイバは、ガラス又はプラスチック、より好ましくは石英ガラスから形成される。好ましくは、光ファイバは、グレーデッドインデックスファイバ及びシングルモードステップインデックスファイバからなる群から選択される。
【0026】
光ファイバを取り囲む金属管は、光ファイバを完全に取り囲んでもよいが、ケーシングが光ファイバを完全に取り囲まないように少なくとも部分的に開いてもよい。
【0027】
好ましくは、光ファイバを取り囲む金属管の金属は、鉄又は鋼、好ましくはステンレス鋼である。
【0028】
好ましい実施形態では、光学コアワイヤの線密度は、25~80g/mの範囲内、より好ましくは35~70g/mの範囲内である。線密度は、単位長さ当たりの質量によって定義される。
【0029】
好ましくは、光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管によって側方から取り囲まれており、すなわち、少なくとも2つの金属管が光ファイバを側方から取り囲んでいる。好ましくは、光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管の中心に配置される。
【0030】
好ましくは、少なくとも1つの追加の金属管は、光学コアワイヤと接触していない。より好ましくは、これらの少なくとも2つの金属管の間の空隙は、気体材料もしくは固体材料又はそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で少なくとも部分的に充填される。固体材料は、好ましくは、無機材料、天然ポリマー、合成ポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。気体材料は、好ましくはガス又はガスの混合物である。より好ましくは、ガスは空気又は不活性ガスである。
【0031】
好ましい実施形態によれば、光学コアワイヤは、少なくとも1つの金属管内に配置された複数の分離要素を備え、これらの分離要素は、分離要素間に少なくとも1つの区画を形成する。ここで、「区画」という用語は、管内の異なる分離要素間の容積に関する。「分離要素」という用語は、管内に配置された、管内の容積を細分する部分に関する。好ましくは、分離要素は、管の内側に配置される円板状要素であり、円板状要素は開口部を備え、開口部を通って光学コアワイヤが延在し、開口部は光学コアワイヤを少なくとも部分的に支持することができる。分離要素の材料は、シリコーン、好ましくは二成分シリコーン、ゴム、革、コルク、金属及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0032】
光学コアワイヤは、任意選択的に、少なくとも1つの追加の層によって取り囲まれている。この少なくとも1つの追加の層を、上述の少なくとも1つの追加の金属管と置き換えてもよいし、置き換えなくてもよい。好ましい実施形態では、この少なくとも1つの追加の層は複数の部分を含み、より好ましくは、層はファイバを含む。
【0033】
更に好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加の層の材料は、織布構造、網構造、織物構造又は編物構造の形態を有する。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つの追加の層は、非金属材料、最も好ましくは有機材料を含む。
【0035】
光学コアワイヤは、上述の構成の任意の組み合わせを含み得ることを理解されたい。例えば、光学コアワイヤが追加の層及び第2の金属管によって側方から取り囲まれていることが有利であってもよい。
【0036】
本発明による方法を適用するために使用される装置は、検出器を更に含む。検出器は、光学コアワイヤの一端に結合され、光ファイバによって伝送される、特にIR波長範囲内の光信号を受信する。好ましくは、本発明の文脈における検出器は、パイロメータである。
【0037】
光学コアワイヤは、浸漬端及び反対端を有する。光学コアワイヤの前端は、光学コアワイヤの浸漬端の先端である。好ましくは、本発明による方法が適用されると、光学コアワイヤは浸漬端から反対端に向かう方向に消耗され、各測定シーケンスの後、光学コアワイヤの別の部分が浸漬端になる。すなわち、各測定シーケンスの後に、前端が新たに生成される。反対端は検出器に接続され、測定中に消耗されない。
【0038】
本発明による方法の工程(a)では、溶融金属浴の予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットが提供される。
【0039】
好ましくは、データセットは、ある種類のデータの1つの特定の値が別の種類のデータの特定の値に割り当てられるデータ対を含む。より好ましくは、データセットは、ある種類のデータの1つの特定の値がモデルやいくつかの工程のシーケンスなどに割り当てられるデータ対を含んでもよい。
【0040】
好ましくは、予測温度値Tpredは、測定によって取得されない温度値、すなわち、推定された、予想された、又は計算された温度値である。予測温度値Tpredの可能なソースは、経験的に導出された温度値である。好ましくは、溶融金属浴の経験的に導出された温度値は、金属製造プロセスの既知のプロセスパラメータと組み合わせた溶融金属浴の既知の特性に基づく。そのような特性は、例えば、溶融金属浴内に提供される金属の質量、金属の組成、又は容器の形状であり得る。この文脈におけるプロセスパラメータは、金属製造プロセスにおいて通常知られているパラメータである加熱速度又は消費エネルギーであってもよい。更に、予測温度値Tpredは、計算に基づいて導出されてもよい。好ましくは、そのような計算は、例えば、前の測定からの既知の温度値と組み合わせた目的の金属浴の温度推移のモデルに基づく。
【0041】
測定プロファイルMPは、目的の値を取得するために実施される一連の工程として理解されるべきである。本発明の文脈では、目的の値は、溶融金属浴の温度である。
【0042】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMPは、
(i)溶融金属浴の表面の上方に光学コアワイヤの前端を提供する工程と、
(ii)少なくとも1つの送り速度vfedで、t0からt2までの時間にわたって、光学コアワイヤの前端を溶融金属浴に向かって、かつ溶融金属浴の表面の下方に送る工程であって、光学コアワイヤの前端は、t1からt2までの時間にわたって溶融金属浴の表面の下方にある、工程と、
(iii)t1からt2までの測定時間内に温度情報を取得する工程と、
(iv)光学コアワイヤの前端を速度vretで溶融金属浴の上方の位置まで後退させる工程と、
のうちの少なくとも1つを定義する。
【0043】
換言すれば、測定プロファイルMPは、少なくとも工程(i)及び/又は(ii)及び/又は(iii)及び/又は(iv)を定義することが好ましい。好ましくは、測定プロファイルMPは、工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を定義する。
【0044】
t1及びt2はt0よりも遅く、t2はt1よりも遅いことを理解されたい。t1は、前端が溶融金属浴に入る時点、すなわち、前端が溶融金属浴の表面の下方に浸漬される時点である。t2は、その後に前端が溶融金属浴の表面の上方の位置に向かって後退する時点である。
【0045】
好ましくは、工程(i)、(ii)及び(iv)は連続した順序で実施される。
【0046】
好ましくは、工程(iii)は、少なくとも部分的に工程(ii)中に実施される。
【0047】
当業者であれば、「前端を供給すること」及び「前端を送ること」は、光学コアワイヤを供給すること及び送ること、すなわち、前端を有する光学コアワイヤを供給すること、及び光学コアワイヤをその前端と共に移動させることを必然的に含むことを理解するであろう。
【0048】
送り速度vfedは、前端を溶融金属浴の表面に向かって、及びその下方に送る間の平均速度を指すことを理解されたい。
【0049】
溶融金属浴の表面は、容器の周囲に面する表面であってもよく、又は、スラグ層が存在する場合には、スラグ層に面する表面であってもよい。
【0050】
温度情報を取得するために、特にIR波長範囲内で溶融金属浴によって放出され、光学コアワイヤによって検出器に搬送される放射線が記録される。放射線の強度及び/又はスペクトル情報は、検出器に接続された処理ユニットによって処理されてもよい。光学コアワイヤの前端は、好ましくは、温度が取得される時点で又は測定時間中に、溶融金属浴の表面の下方に浸漬される。
【0051】
好ましくは、温度情報は、測定温度値Tmesの決定をもたらす工程において取得される。好ましくは、測定温度値Tmesの決定は、単一のデータ点の測定又は2つ以上のデータ点の測定、すなわち、一連のデータ点の測定を含み得る。
【0052】
好ましくは、測定温度値Tmesは、一連のデータ点の平均値である。より好ましくは、測定温度値Tmesは、一連のデータ点を処理するアルゴリズムの適用に基づいて導出される。
【0053】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMPの工程(ii)における送りは、少なくとも2つの送り速度vfed1及びvfed2を含む。なお、送り速度vfed1及びvfed2は、光学コアワイヤの前端が送られる平均速度を指すことを理解されたい。
【0054】
好ましくは、測定プロファイルMPの工程(ii)における送りは、t0からt1までの間に前端が送られる送り速度vfed1と、t1からt2までの間に前端が送られる第2の送り速度vfed2とを含む。
【0055】
好ましい実施形態では、第2の送り速度vfed2は、2つ以上の送り速度を含む。
【0056】
好ましい実施形態によれば、測定プロファイルMPは、t1からt2までの静止時間内の更なる工程を定義し、その間、光学コアワイヤの前端の送りは一時停止されるか、又は光学コアワイヤの前端は低速で送られる。本明細書で使用される「前端の送りを一時停止させる」とは、前端を能動的に動かさないことを意味する。送りの一時停止又は低速での送りのいずれの代替形態においても、溶融金属浴の表面に向かう前端の位置の移動が消耗に起因してもたらされる。それにもかかわらず、前端は依然として溶融金属浴の表面の下方に浸漬されている。
【0057】
低速は、好ましくは0,2m/秒未満、より好ましくは0,1m/秒未満である。
【0058】
好ましくは、溶融金属浴の予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットは、測定プロファイルを光学コアワイヤの特性に更に関連付ける。
【0059】
好ましくは、光学コアワイヤの特性は、その線密度である。
【0060】
好ましくは、測定プロファイルMPのt0からt2までの時間の長さは、光学コアワイヤの線密度が高いほど長く定義される。
【0061】
好ましくは、測定プロファイルMPの送り速度vfedは、光学コアワイヤの線密度が高いほど低く定義される。
【0062】
本発明による方法の工程(b)では、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)が供給される。
【0063】
溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)は、時間tと温度Tとの関係を定義するモデルであり、すなわち、特定の時点t(n)における温度T(n)を予測するように適合されている。典型的な融解プロセスでは、時間は電気エネルギー入力に直接関連する。
【0064】
好ましくは、時間tはモデルF(t)に入力パラメータとして含まれるが、F(t)は入力パラメータとしての時間tから独立していてもよい。
【0065】
好ましくは、モデルF(t)は、時間と溶融金属浴の温度との関係を定義する数式、特性曲線、又は他の情報を含む。これは、溶融金属浴の物理的特性、冶金設備の特性、及び対応するモデルパラメータを記述する関係を含むことができる。
【0066】
好ましくは、溶融金属浴の物理的特性がモデルF(t)で考慮される。
【0067】
好ましくは、モデルF(t)は、数学的方法、分析方法、実験方法及びこれらの組み合わせの群から選択される方法によって導出される。
【0068】
好ましくは、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)は、記録された測定値、すなわち前の融解プロセスで取得されたデータに基づく。
【0069】
好ましい実施形態では、予測温度値Tpred又は測定温度値Tmesは、モデルF(t)の唯一の入力パラメータであってもよい。更なる例では、更なる入力パラメータ、好ましくは動作パラメータを利用することができる。
【0070】
この文脈における動作パラメータは、融解プロセスに関連するパラメータ、例えば、電気エネルギー入力又は溶融金属浴に加えられた化学的補足物の量である。
【0071】
例示的な実施形態では、温度推移F(t)を記述するモデルは線形関数である。
【0072】
好ましくは、温度推移F(t)を記述するモデルの一次導関数F’(t)は線形関数である。
【0073】
好ましい実施形態では、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)は、
(i)溶融金属浴の特性を溶融金属浴の経時的な温度推移に関するモデルF(t)の記録データに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)溶融金属浴の特性を提供する工程と、
(iii)溶融金属浴の特性を溶融金属浴の経時的な温度推移に関するモデルF(t)の記録データに関連付ける提供されたデータセットから、溶融金属浴の特性に対応するモデルF(t)を受信する工程と、
を含む方法によって導出される。
【0074】
本発明による方法の工程(c)では、時間ステップΔtが定義される。
【0075】
時間ステップΔtは、時間の長さとして理解されるべきである。
【0076】
時間ステップΔtの長さは、これ以上は制限されない。好ましくは、時間ステップΔtの長さは、5秒~3分の範囲内、より好ましくは15秒~2分の範囲内、最も好ましくは30秒~90秒の範囲内である。
【0077】
好ましくは、時間ステップΔtの長さの選択は、動作パラメータに基づく。
【0078】
好ましい実施形態では、時間ステップΔtの長さは、
(i)動作パラメータを時間ステップΔtの長さに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)動作パラメータを提供する工程と、
(iii)動作パラメータを動作パラメータに対応する時間ステップΔtの長さに関連付ける提供されたデータセットから、時間ステップΔtの長さを受信する工程と、
を含む方法によって導出される。
【0079】
好ましくは、時間ステップΔtの長さの選択は、工程(f)で決定された測定温度値Tmes(n)に基づく。
【0080】
好ましい実施形態では、時間ステップΔtは、
(i)測定温度値Tmesを時間ステップΔtの長さに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)測定温度値Tmesを測定温度値Tmes(n)に対応する時間ステップΔtの長さに関連付ける提供されたデータセットから、時間ステップΔtの長さを選択する工程と、
を含む方法によって導出される。
【0081】
好ましくは、前述の両方の実施形態で、工程(c)は工程(f)の後に実施される。
【0082】
本発明による方法の工程(d)では、将来の時点t(n)が選択され、時点t(n)での溶融金属浴の温度値Tpred(n)が予測される。
【0083】
「予測する」という用語は、本明細書では、将来の時点t(n)での将来の温度値Tpred(n)の予測を指すために使用される。換言すれば、予測温度値Tpred(n)は、この将来の時点t(n)での予想温度である。
【0084】
将来の時点t(n)の選択は、これ以上は制限されない。好ましくは、これは、金属融解プロセスのプロセスにおける特定の時点、例えば、プロセスが開始してから特定の時間が経過した後、特定の量の化学的補足物が添加された後、又は特定の量のエネルギーが消費された後に関連する。この文脈における「エネルギー消費」は、融解プロセス中に消費されるエネルギーの量、すなわち、溶融金属浴に供給されたエネルギーの量を指す。
【0085】
好ましい実施形態では、複数の時点を複数の予測温度値Tpredに関連付けるデータセットが提供され、そこから予測温度値Tpred(n)が工程(d)で選択される。最も好ましくは、データセット内の予測温度値Tpredは、経験的に導出された温度値、好ましくは、前の融解プロセスの記録された温度値を表す。
【0086】
本発明による方法の工程(e)では、予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度値Tpred(n)に対応する測定プロファイルMP(n)が選択される。
【0087】
好ましい実施形態によれば、温度プロファイルMP(n)の選択は、光学コアワイヤの特性に更に関連する。
【0088】
本発明による方法の工程(f)では、測定温度値Tmes(n)を取得するために、測定プロファイルMP(n)が時点t(n)で適用される。
【0089】
測定プロファイルMP(n)を適用することにより、時点t(n)での溶融金属浴の測定温度値Tmes(n)が決定される。
【0090】
測定温度値Tmes(n)は、予測温度Tpred(n)よりも高くても低くてもよい。
【0091】
測定温度値Tmes(n)が予測温度Tpred(n)とは異なる可能性があるため、溶融金属浴の温度推移を経時的に記述するモデルF(t)における関連する時点は異なり得る。換言すれば、温度値Tmes(n)が取得される時点t(n)は、モデルF(t)における予測温度Tpred(n)の時点に必ずしも対応しない。
【0092】
本発明による方法の工程(g)では、測定温度値Tmes(n)、モデルF(t)、及び時間ステップΔtに基づいて、溶融金属浴の予測温度値Tpred(n+1)が計算される。
【0093】
換言すれば、工程(g)では、時点t(n)での測定温度値Tmes(n)の測定から時間Δt経過後の予測温度値Tpred(n+1)が得られる。予測は、測定温度値Tmes(n)及び時間ステップΔtを入力パラメータとするモデルF(t)に基づく。更に、測定温度値Tmes(n)は、時点t(n)に直接関連している。
【0094】
本発明による方法の工程(h)では、予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度値Tpred(n+1)に対応する測定プロファイルMP(n+1)が選択される。
【0095】
好ましい実施形態によれば、温度プロファイルMP(n+1)の選択は、光学コアワイヤの特性に更に関連する。
【0096】
本発明による方法の工程(i)では、測定温度値Tmes(n+1)を取得するために、測定プロファイルMP(n+1)が時点t(n+1)で適用され、t(n+1)は、
t(n+1)=t(n)+Δtによって定義される。
【0097】
測定プロファイルMP(n+1)を適用することにより、時点t(n+1)での溶融金属浴の測定温度値Tmes(n+1)が決定される。
【0098】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMP(n+1)の送り速度vfed(n+1)は、測定プロファイルMP(n)の送り速度vfed(n)よりも大きい。
【0099】
好ましくは、少なくとも2つの送り速度vfed1及びvfed2を定義する測定プロファイルMPが測定プロファイルMP(n)及び測定プロファイルMP(n+1)に適用される場合、測定プロファイルMP(n+1)の送り速度vfed2(n+1)は、測定プロファイルMP(n)の送り速度vfed2(n)よりも大きい。
【0100】
好ましくは、t1からt2までの時間の長さは、測定プロファイルMP(n)におけるよりも測定プロファイルMP(n+1)における方が短い。
【0101】
好ましくは、工程(d)~(i)は連続した順序で実施される。
【0102】
好ましくは、工程(a)は工程(d)~(i)の前に実施され、最も好ましくは工程(e)~(i)の前に実施される。
【0103】
より好ましくは、本方法は、以下の順序:
(a)-(b)-(c)-(d)-(e)-(f)-(g)-(h)-(i)、
(b)-(a)-(c)-(d)-(e)-(f)-(g)-(h)-(i)、
(b)-(c)-(a)-(d)-(e)-(f)-(g)-(h)-(i)、又は
(b)-(c)-(d)-(a)-(e)-(f)-(g)-(h)-(i)
のうちの1つで実行される。
【0104】
更に好ましい実施形態によれば、工程(b)は工程(f)の後に実施される。
【0105】
より好ましくは、本方法は、以下の順序:
(a)-(c)-(d)-(e)-(f)-(b)-(g)-(h)-(i)、又は
(c)-(a)-(d)-(e)-(f)-(b)-(g)-(h)-(i)
のうちの1つで実行される。
【0106】
更に好ましい実施形態によれば、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給する工程は、工程(b1)~(b4):
(b1)予測温度Tpredと測定温度値Tmesとの間の最大温度差ΔTmaxを定義する工程と、
(b2)最大温度ステップサイズΔTstepを定義する工程と、
(b3)測定温度値Tmes(n)と予測温度Tpred(n)との差ΔT(n)を最大差ΔTmaxと比較する工程と、
(b4)モデルF(t)を供給する工程であって、
F(t)=Tpred(n)+ΔTstep
(ΔT(n)が定義された最大温度差ΔTmaxより大きい場合)
である、工程と、
を含む。
【0107】
好ましい実施形態によれば、定義された最大温度差ΔTmaxよりもΔT(n)が小さい場合、F(t)の供給はこれ以上は制限されない。
【0108】
好ましくは、工程(b1)~(b4)を含む工程(b)は、工程(f)の後に実施される。
【0109】
好ましい実施形態によれば、本方法は、以下の順序:
(a)-(c)-(d)-(e)-(f)-[(b)-{(b1)-(b2)-(b3)-b4)}]-(g)-(h)-(i)、又は
(c)-(a)-(d)-(e)-(f)-[(b)-{(b1)-(b2)-(b3)-b4)}]-(g)-(h)-(i)
のうちの1つで実行される。
【0110】
工程(b1)~(b4)を含む好ましい実施形態による本発明の方法を適用することにより、好ましくは、最大温度ステップサイズΔTstepに基づく温度値の予測が可能になる。
【0111】
好ましくは、温度ステップサイズΔTstepは、所定の温度差である。
【0112】
本発明の方法のこの実施形態は、溶融金属浴の実際の温度と一致しない可能性が高い測定プロファイルの適用を回避することを可能にする。換言すれば、取得された実際の温度を表さない可能性が高い、第1の測定工程で取得された測定温度値に合わせることが可能である。
【0113】
好ましくは、本発明による方法は、2回以上実施される。
【0114】
本発明は更に、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するためのシステムであって、装置及びモジュールを備え、モジュールは装置と相互作用するように適合されているシステムを提供する。
【0115】
好ましくは、システムは、本発明による方法であって、
(a)溶融金属浴の予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(b)溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給する工程と、
(c)時間ステップΔtを定義する工程と、
(d)将来の時点t(n)を選択し、時点t(n)での溶融金属浴の温度値Tpred(n)を予測する工程と、
(e)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度値Tpred(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択する工程と、
(f)測定プロファイルMP(n)を時点t(n)で適用して、測定温度値Tmes(n)を取得する工程と、
(g)測定温度値Tmes(n)、モデルF(t)及び時間ステップΔtに基づいて、溶融金属浴の予測温度値Tpred(n+1)を計算する工程と、
(h)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度値Tpred(n+1)に対応する測定プロファイルMP(n+1)を選択する工程と、
(i)測定プロファイルMP(n+1)を時点t(n+1)で適用して、測定温度値Tmes(n+1)を取得する工程であって、t(n+1)は
t(n+1)=t(n)+Δtによって定義される工程と、
を含む、方法を実行するように構成されている。
【0116】
本発明の方法に関する好ましい実施形態については、上記の好ましい実施形態を参照されたい。
【0117】
本発明によるシステムは、装置を備え、装置は、光学コアワイヤ及び検出器を含む。光学コアワイヤ及び検出器に関する好ましい実施形態については、本発明の方法について上述した好ましい実施形態を参照されたい。
【0118】
本発明によるシステムは、モジュールを含み、モジュールは、記憶ユニット、処理ユニット、及び制御ユニットを含む。
【0119】
好ましくは、記憶ユニット、処理ユニット、及び制御ユニットは、互いに相互作用するように構成されている。
【0120】
本発明によれば、モジュールの記憶ユニットは
(a1)溶融金属浴の予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供するための記憶要素と、
(a2)溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給するための記憶要素と、
(a3)時間ステップΔtを定義するための記憶要素と、
を含む。
【0121】
本発明によれば、モジュールの処理ユニットは
(b1)将来の時点を選択し、将来の時点での溶融金属浴の温度Tpredを予測するための処理要素と、
(b2)予測温度値Tpredを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、予測温度Tpredに対応する測定プロファイルMPを選択するための処理要素と、
(b3)測定温度値Tmes、モデルF(t)、及び時間ステップΔtに基づいて、溶融金属浴の予測温度Tpredを計算するための処理要素と、
を含む。
【0122】
好ましい実施形態では、処理ユニットは、記憶ユニットに記憶された情報を処理するように構成されている。
【0123】
本発明によれば、モジュールの制御ユニットは
(c1)ある時点で測定プロファイルMPを適用して測定温度値Tmesを取得するための制御要素、
を含む。
【0124】
好ましい実施形態では、制御ユニットは、装置を制御するように構成されている。
【0125】
好ましい実施形態では、システムは送り手段を備える。本発明の文脈では、送り手段は、溶融金属浴内への光学コアワイヤの送りを可能にする手段として理解され得る。このような手段は、フィーダ、送り制御装置、ストレートナー及びガイド管からなる群から選択することができる。
【0126】
好ましい実施形態によれば、システムは、光学コアワイヤの長さに対応するコイルを更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0127】
本発明の根底にある概念は、図面に示された実施形態に関してより詳細に後述される。しかしながら、本発明は、示される正確な構成及び手段に限定されないことが理解されるべきである。ここで、
【0128】
【
図1】光学コアワイヤの様々な設計の概略断面図である。
【
図2】温度が決定される溶融金属浴を有する例示的な設備の概略図である。
【
図3】代表的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。
【
図4】別の代表的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。
【
図5】最適な送り速度と測定された浴温度との関係を示すグラフである。
【
図6】最適な浸漬時間と測定された浴温度との関係を示すグラフである。
【
図7】例示的なEAFプロセスの溶融金属浴の予想される経時的な温度推移である。
【
図8】本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるモジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0129】
図1は、本発明の例示的な実施形態による光学コアワイヤの様々な設計の概略断面図である。
図1Aは、金属管3’によって取り囲まれた光ファイバ2’を含む光学コアワイヤ1’を示す。
【0130】
図1Bは、金属管3’’によって取り囲まれた光ファイバ2’’を含む光学コアワイヤ1’’を示す。第2の金属管4’’が、金属管3’’を更に取り囲んでいる。2つの金属管の間の空隙5”は固体材料で充填されていない。すなわち、空隙はガス又はガス混合物を含んでもよい。
【0131】
図1Cは、金属管3’’’及び第2の金属管4’’’によって取り囲まれた光ファイバ2’’’を含む光学コアワイヤ1’’’を示す。2つの金属管の間の空隙5’’’は、充填材料、例えば有機材料又はEガラスからのファイバで充填されている。
【0132】
図2は、温度が決定される溶融金属浴7を有する例示的な設備6の概略図である。
【0133】
設備6は、コイル8上に少なくとも部分的に設置されて、測定を行うためにコイル8から少なくとも部分的に巻き出される光学コアワイヤ1を備える。光学コアワイヤ9の一端は、検出器10に接続されており、検出器10は、光学コアワイヤ1及び検出器10で取得されたデータを処理するためにコンピュータシステム(図示せず)に接続されることができる。溶融金属浴7は、電気アーク炉(EAF)、取鍋金属炉(LMF)、又は溶融金属処理の当業者に知られている任意の変換器であってよい容器11内に収容されている。光学コアワイヤ1は、フィーダ12によってガイド管13を通して、入り口14を有する容器11内に導入される。図示の構成は一例として使用されており、それぞれの入り口を有する屋根は本発明の前提条件ではない。
【0134】
図示の構成は、前端15が溶融金属浴MBSの表面の下方に浸漬された状態の光学コアワイヤ1の例示的な測定位置を示している。本実施形態では、溶融金属浴MBSの表面に対する光学コアワイヤ1の浸漬角度は90°である。しかしながら、この角度は、冶金設備の構造の詳細に応じて可変である。
【0135】
コイル8から容器の入り口14まで延在する光学コアワイヤ1の一部の温度は低いと考えることができ、室温から100℃までの範囲の温度であり得る。入り口14を溶融金属浴7の方向に通過すると、最初に最高1700℃又はそれ以上の高温雰囲気に遭遇し、次にスラグ層17に遭遇し、次に溶融金属浴7に遭遇する。容器への入り口14には、ガイド管13内への金属及びスラグの侵入を防止するために吹き込みランス18を設けることができる。
【0136】
溶融金属浴7の最適レベルは、各冶金容器について、その設計及び動作モードによっておおよそ知ることができる。
【0137】
温度測定値を取得するために、光学コアワイヤ1は、その前端が浸漬端15にある状態で、溶融金属浴7に向かって必要な浸漬深さまで送られる。信頼できる温度測定値を取得するために、溶融金属浴中のほぼ一定の浸漬深さで測定することが望ましくてもよい。適切な送りシステム12は、光学コアワイヤ1の送り速度を正確に制御する。
【0138】
測定シーケンスの後、溶融金属浴に浸漬された光学コアワイヤの部分19は溶融され、したがって、消耗される。この部分の長さはLCで示されている。測定が行われた後、高温雰囲気内に位置し、スラグ層を通って延びている光学コアワイヤの部分20は、コイル8の方向に送り戻され、次の測定のために再使用されてもよい。
【0139】
図3は、代表的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。x軸は時間を示し、y軸は前端の位置を示す。溶融金属浴MB
Sの表面の位置が方向付けのために示されている。測定の開始に先立って、すなわち、t0の前に、前端が開始点に配置される。これは、冶金容器の内側であってもよく、入り口、すなわち、光学コアワイヤが容器に入る点の近くに近接していてもよい。光学コアワイヤは、t0からt2までの時間にわたって、溶融金属浴に向かって及び溶融金属浴内に送り速度で送られる。この時間の長さは、典型的には数秒の範囲内である。光学コアワイヤの前端は、時点t1で溶融金属浴に入り、すなわち、t1は、前端が溶融金属浴の表面の下方に浸漬される時点である。図示のグラフでは、単一の送り速度が適用されているが、送りは、送り速度の異なるいくつかの段階を含んでもよい。送りを行わない段階、すなわち、静止段階を、別の好ましい実施形態を表す
図4に示すグラフに示されているように、測定の実施中に含めることができる。温度測定値は、t1からt2までの測定時間中に取得される。信頼できる測定値を取得するためには、前端を溶融金属浴の表面の下方に浸漬しなければならない。送りの初期段階で取得された温度値は、溶融金属浴のバルク温度を表さないことが多い。t2の後に、光学コアワイヤを溶融金属浴から後退させて、表面の上方の位置に戻す。理想的には、溶融金属浴L
Cの表面下に浸漬された光学コアワイヤの部分は、t2まで消耗される。
【0140】
光学コアワイヤの浸漬部分が溶融金属浴の表面まで完全に消耗されるのに必要な時間は、溶融金属の温度及び光学コアワイヤの特性に依存する。上述の融解又は消耗挙動に影響を及ぼす光学コアワイヤの特性は、その設計及びそれを構成する材料を含む。例えば、より厚い壁厚を有する金属管は、より薄い壁厚を有する同じ材料の金属管よりも遅く融解する。溶融金属浴の温度が高いほど光学コアワイヤの消耗が速くなると予想されるので、測定プロファイルの時間の長さは、溶融金属浴の温度が高いほど短くてもよい。所与の理由から、送り方式のパラメータが、測定される温度に合わせて調整されることが有利である。
【0141】
光学コアワイヤの融解及び失透挙動は、環境からの熱伝達量に依存し、これは、前端が送られる速度に直接関連する。特に、前の測定が実施された場合には、前端を含む浸漬端の一部が既に損傷している可能性がある。熱需要ゾーンにおける前の測定シーケンス中の滞留時間が長いほど、より多くの損傷が観察され得る。本発明による方法を適用することにより、この損傷が最小限に抑えられる。
【0142】
測定プロファイルの適用中に温度値を取得するために適用される様々なパラメータが様々な測定品質をもたらすことが観察されている。測定プロファイルの測定品質は、固定設置された標準熱電対を使用して取得された測定値と比較して異なる測定精度を指す。本発明の根底にある考え方は、特定の測定プロファイルを、測定されると予想される温度に適合させることである。
図5は、測定シーケンス中に適用される最適な送り速度、すなわち、測定プロファイルの適用と取得された温度との関係を示すグラフである。この依存性は、溶融金属浴の温度に依存することが知られている、光学コアワイヤの融解及び分解挙動に関連し得る。好ましくは、前端の平均送り速度は、測定されると予想される温度が高いほど速く選択される。
【0143】
図6は、測定シーケンスにおける光学コアワイヤの前端の浸漬の最適な時間の長さ、すなわち、
図3及び
図4におけるt1とt2との間の時間の長さと、取得された温度との関係を示すグラフである。より高い浴温度とより短い浸漬時間の長さとの間の認識可能な相関関係は、光学コアワイヤが溶融金属部品内に浸漬される時間が、好ましくは、溶融金属浴の予想温度がより高いほど、より短く選択されるべきであることを示している。
【0144】
図7は、例示的なEAFプロセスの溶融金属浴の温度の予想される経時的な推移であり、一定の温度上昇を示している。この推移は、溶融金属浴の温度の推移の例示的なモデルを表す。更に、
図7は、温度予測工程が基づくパラメータと変数との関係を示す。本発明の一実施形態によれば、時点t(n)で測定が実施され、その結果、その時点の測定温度値T
mes(n)が取得される。適用される測定プロファイルは、その時点についての予想温度T
pred(n)に基づいて予め選択される。温度T
pred(n)は予測温度であるため、測定温度値T
mes(n)とは異なり得る。特に強調すべき点として、予測温度値T
pred(n)に関連する時点は、溶融金属浴の予想される温度推移を記述するモデルにおける測定温度値T
mes(n)に関連する時点t(n)に必ずしも対応しない。第1の測定温度値T
mes(n)を決定してから所定の時間Δtが経過した後に、第2の温度測定値の時点t(n+1)がt(n)よりも遅く定義される。この時点についての予想温度値T
pred(n+1)は、この第2の測定に最も適した測定プロファイルを選択するための基礎として必要とされる。この温度値は、t(n)とt(n+1)との間の時間Δt中の溶融金属浴の温度の予想される推移に基づいて予測される。
【0145】
図8は、本発明の一実施形態によるシステム30の概略図である。システム30は、本発明による方法を実行するように構成されている。特に、予測温度を、それぞれの予測温度に最適な測定品質をもたらす測定プロファイルに関連付けるデータセットを提供するように構成されている。システム30は、そのような温度を予測するように更に構成されている。更に、システム30は、時間ステップを定義するように構成されている。加えて、システム30は、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルに基づいて温度を計算するように構成されている。そのような計算された温度も、予測温度として理解されるべきである。システム30は、モデルを供給するように更に構成されている。加えて、システム30は、提供されたデータセットから測定プロファイルを選択するように構成されている。選択された測定プロファイルは、予測温度又はモデルに基づいて計算された温度のいずれかに基づく。更に、システム30は、この測定プロファイルを適用するように構成されている。
【0146】
システムは装置40を備え、装置40は、光学コアワイヤ及び検出器を含む。更に、システムはモジュール50を備える。装置40及びモジュール50は、互いに相互作用するように適合されている。すなわち、モジュールは、装置40を用いて本発明による方法を実行するように構成され、溶融金属浴の温度値の測定をもたらす。
【0147】
図9は、モジュール50の概略図をより詳細に示す。モジュール50は、記憶ユニット50、処理ユニット70、及び制御ユニット80を備える。
【0148】
以下では、本発明による例示的な条件が与えられる。
【実施例0149】
光学コアワイヤを含む装置を、
図2による代表的な電気アーク炉(EAF)設備に設置した。光学コアワイヤは、コア径が50μmのグレーデッドインデックスファイバと、外径が1,3mmのステンレス鋼管とを備えていた。この金属管付きファイバを、外径6mm、肉厚0,3mmのステンレス管に埋め込んだ。
【0150】
EAFにスクラップを装填し、融解プロセスを開始した。60MWの典型的な入力電力の場合、前の測定に基づいて、
図7に示すような温度推移が予想された。
【0151】
冶金設備の履歴データ及びEAFの消費蓄積電力に基づいて、最初の測定時の予想温度は1540℃であった。1540℃の予想温度の測定プロファイルを選択し、平均送り速度を0,4m/秒、プロファイルの時間の長さを1,0秒と定義した。取得された温度値は1560℃であり、すなわち、溶融金属浴の実際の温度の測定は、予測よりも高い温度値をもたらした。特定の冶金設備では、この温度範囲で15℃/分の温度上昇が予想された。最初の測定の2分後に次の測定を計画し、すなわち、予想温度は1590℃であった。1590℃の予想温度の測定プロファイルは、最適平均送り速度を0,5m/秒と定義し、プロファイルの時間の長さを0,75秒と定義した。1回目の測定から1分後の時点で2回目の測定プロファイルを適用した後に、1600℃の測定温度値を取得した。
【0152】
2回目の測定の1分後に3回目の測定を計画した。予想される温度推移によれば、測定されると予想される温度は1620℃であり、それぞれの測定プロファイルは、最適平均送り速度を0,8m/秒と定義し、プロファイルの時間の長さを0,54秒と定義した。取得された測定温度は1625℃であった。