(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177678
(43)【公開日】2024-12-23
(54)【発明の名称】蓋体、蓋体付き容器、及び、蓋体と容器の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
B65D 51/16 20060101AFI20241216BHJP
B65D 77/12 20060101ALI20241216BHJP
B65D 3/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B65D51/16 110
B65D77/12 A
B65D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094749
(22)【出願日】2024-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2023095937
(32)【優先日】2023-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024044277
(32)【優先日】2024-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024058396
(32)【優先日】2024-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】722014778
【氏名又は名称】林 裕義
(72)【発明者】
【氏名】林 裕義
【テーマコード(参考)】
3E067
3E084
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA07A
3E067BB01A
3E067BB06A
3E067BC03A
3E067BC07A
3E067CA10
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA17
3E067EB27
3E067EB30
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB03
3E084CC07
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC07
3E084FA09
3E084FC01
3E084FD13
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA09
3E084LA02
3E084LA17
3E084LD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紙系の素材を用いつつ、蓋体付き容器からの内容物の漏出を防止でき且つリサイクル性を向上させる蓋体、蓋体付き容器、及び蓋体と容器の組み合わせを提供する
【解決手段】蓋体は、開口部と前記開口部を形成する縁部とを有する容器に対して取り付けられるように構成されて、前記容器に取り付けられた場合に、前記開口部を覆う天面部を有し、前記天面部は、紙系基材と、前記紙系基材を貫通する貫通部と、気相と液相とを有する混合流体から前記気相の気体と少なくとも一部の前記液相の液体とを分離可能な気液分離材と、熱可塑性を有するコーティング剤とを備え、前記気液分離材は、長繊維を含み且つ通気性を有する紙系通気シートを有し、少なくとも前記紙系通気シートの一方の面に撥液剤を配置しており、前記気液分離材は、前記貫通部の少なくとも一部を覆うように配置されており、前記コーティング剤が、前記気液分離材と前記紙系基材を接着している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と前記開口部を形成する縁部とを有する容器に対して取り付けられることが可能となるように構成されており、前記容器に取り付けられた場合に、前記開口部を覆う天面部を有し、
前記天面部は、紙系材料で構成されている紙系基材と、前記紙系基材を貫通する貫通部と、気相と液相とを有する混合流体から前記気相の気体と少なくとも一部の前記液相の液体とを分離可能な気液分離材と、熱可塑性を有するコーティング剤とを備え、
前記気液分離材は、長繊維を含み且つ通気性を有する紙系通気シートを有し、少なくとも前記紙系通気シートの一方の面に、前記紙系通気シートに対して撥液性を付与する撥液剤を配置しており、
前記気液分離材は、前記紙系基材の平面視上、前記貫通部の少なくとも一部を覆うように配置されており、
前記コーティング剤が、前記気液分離材と前記紙系基材を接着している、
蓋体。
【請求項2】
前記撥液剤は、撥水剤である、請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記紙系通気シートは、不織布である、請求項1に記載の蓋体。
【請求項4】
前記長繊維は、紙繊維である、請求項1に記載の蓋体。
【請求項5】
前記撥液剤は、前記長繊維の少なくとも一部に接着されている、請求項1に記載の蓋体。
【請求項6】
前記撥液剤は、前記紙系通気シートの内部にも配置されている、請求項1に記載の蓋体。
【請求項7】
前記気液分離材は、前記貫通部に対応して定められた位置に切込部及び/又はハーフカット部を形成されている、請求項1に記載の蓋体。
【請求項8】
前記気液分離材は、前記長繊維を主成分として含む、請求項1に記載の蓋体。
【請求項9】
請求項1に記載の蓋体と、
上端に形成された前記開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有する前記容器とを有し、
前記蓋体を前記容器に接合した、
蓋体付き容器。
【請求項10】
請求項1に記載の蓋体と、
上端に形成された前記開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有する前記容器とを有する、
蓋体と容器の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体、蓋体付き容器、及び、蓋体と容器の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
上端に開口部を形成した容器に飲食料品等(以下においては「内容物」とも言う。)を収容して蓋体を取り付けることで容器内を閉じた状態で提供することが広く行われている。
【0003】
容器に取り付けられる蓋体としては、環境負荷軽減の観点として石油原料の使用軽減の観点から、紙系の素材を用いたものを用いることが求められている。容器に蓋体を取り付ける方法としては、熱プレス等の方法を用いて蓋体を容器の上端の開口部の外周を形成する縁部に接合する方法(シール法)や、蓋を容器に嵌めこむ方法(嵌合法)が知られている。蓋体を取り付けられた容器(蓋体付き容器)から内容物を摂取するためには、特許文献1に示すように、容器の縁部から蓋体を剥がし取る(取り除く)ことや、嵌合法で容器に蓋を取付けた場合には容器から蓋を取り外すことが行われるが、それらの他にも、蓋体に貫通部を設け、貫通部に内容物を取り出すための部材(例えばストロー等)を差し込む(差し込み口を形成する)ことが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓋体が貫通部を有する場合には蓋体で容器の開口部を被覆した状態で内容物が貫通部から蓋体上へ飛び出すことを抑制する点で改善の余地がある。特に、内容物が例えば熱い飲料や冷たい炭酸飲料等といった蒸気や気体を放出するようなものである場合において、蓋体付き容器の内部の圧力上昇に伴い、放出される蒸気や気体に液体が巻き込まれた状態で内容物の液体成分が一緒に外部に漏れ出ることを抑制する点で、蓋体には、改善が要請される。
【0006】
さらに、蓋体に対しては、環境負荷軽減の観点において、石油原料の使用軽減だけでなく、リサイクル性向上が重要となっている。したがって、蓋体には、紙系素材を用いつつ、蓋体付き容器からの内容物の液体の漏出を防止でき且つリサイクル性を向上させることが要請されている。
【0007】
本発明の目的には、上記の点に鑑み、紙系の素材を用いつつ、蓋体付き容器からの内容物の漏出を防止でき且つリサイクル性を有する蓋体、蓋体付き容器、及び蓋体と容器の組み合わせを提供することがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次に示す(1)から(10)を要旨とする。
【0009】
(1)開口部と前記開口部を形成する縁部とを有する容器に対して取り付けられることが可能となるように構成されており、前記容器に取り付けられた場合に、前記開口部を覆う天面部を有し、前記天面部は、紙系材料で構成されている紙系基材と、前記紙系基材を貫通する貫通部と、気相と液相とを有する混合流体から前記気相の気体と少なくとも一部の前記液相の液体とを分離可能な気液分離材と、熱可塑性を有するコーティング剤とを備え、前記気液分離材は、長繊維を含み且つ通気性を有する紙系通気シートを有し、少なくとも前記紙系通気シートの一方の面に、前記紙系通気シートに対して撥液性を付与する撥液剤を配置しており、前記気液分離材は、前記紙系基材の平面視上、前記貫通部の少なくとも一部を覆うように配置されており、前記コーティング剤が、前記気液分離材と前記紙系基材を接着している、蓋体。
(2)前記撥液剤は、撥水剤である、上記(1)に記載の蓋体。
(3)前記紙系通気シートは、不織布である、上記(1)に記載の蓋体。
(4)前記長繊維は、紙繊維である、上記(1)に記載の蓋体。
(5)前記撥液剤は、前記長繊維の少なくとも一部に接着されている、上記(1)に記載の蓋体。
(6)前記撥液剤は、前記紙系通気シートの内部にも配置されている、上記(1)に記載の蓋体。
(7)前記気液分離材は、前記貫通部に対応して定められた位置に切込部及び/又はハーフカット部を形成されている、上記(1)に記載の蓋体。
(8)前記気液分離材は、前記長繊維を主成分として含む、上記(1)に記載の蓋体。
(9)上記(1)に記載の蓋体と、上端に形成された前記開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有する前記容器とを有し、前記蓋体を前記容器に接合した、蓋体付き容器。
(10)上記(1)に記載の蓋体と、上端に形成された前記開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有する前記容器とを有する、蓋体と容器の組み合わせ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紙系の素材を用いつつ、蓋体付き容器からの内容物の漏出を防止でき且つリサイクル性を有する蓋体、蓋体付き容器、及び蓋体と容器の組み合わせを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、第1の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための平面図である。
図1Bは、第1の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための側面図である。
図1Cは、
図1AのA-A線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
図1Dは、
図1BのB-B線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3Aは、気液分離材の一実施例を示す図である。
図3B、
図3C及び
図3Dは、繊維に対する撥液剤の付着した状態を説明するための図である。
【
図4】
図4Aから
図4Bは、第1の実施形態にかかる蓋体の他の例を説明するための平面図である。
【
図5】
図5Aは、第1の実施形態にかかる蓋体の他の例を説明するための平面図である。
図5Bは、第1の実施形態にかかる蓋体の他の例を説明するための底面図である。
図5Cは、
図5AのC-C線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6Aは、第1の実施形態の変形例5にかかる蓋体の一実施例を説明するための平面図である。
図6Bは、
図6AのD-D線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7Aは、第1の実施形態にかかる蓋体を形成するためのブランク材の一実施例を説明するための平面図である。
図7Bは、
図7AのE-E線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
図7Cは、ブランク材が賦形される工程の一実施例を説明するための図である。
図7Dは、
図7Cのブランク材について矢印DR方向を視線方向として見た場合の状態を説明するための図である。
【
図8】
図8Aは、第1の実施形態の変形例6にかかる蓋体の一実施例を説明するための平面図である。
図8Bは、
図8AのF-F線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9Aは、第1の実施形態の変形例7にかかる蓋体の一実施例を説明するための平面図である。
図9Bは、
図9AのG-G線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
図9Cは、
図9Bの一点鎖線で囲まれた領域EIを拡大した状態を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10Aは、第2の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための斜視図である。
図10Bは、
図10AのH-H線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11Aは、第3の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための斜視図である。
図11Bは、
図11AのJ-J線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12Aは、第4の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための斜視図である。
図12Bは、
図12AのK-K線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13Aは、第5の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための平面図である。
図13Bは、第5の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための背面図である。
図13Cは、
図13AのL-L線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14A及び
図14Bは、第2の実施形態にかかる蓋体を形成するためのブランク材の一実施例を説明するための平面図である。
【
図17】
図17Aは、第1の実施形態の変形例1にかかる蓋体の一実施例を説明するための平面図である。
図17Bは、第1の実施形態の変形例1にかかる蓋体の一実施例を説明するための側面図である。
図17Cは、
図17AのI-I線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図18】
図18Aは、第1の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための平面図である。
図18Bは、第1の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための側面図である。
図18Cは、
図18AのO-O線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図19】
図19Aは、第1の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための平面図である。
図19Bは、第1の実施形態にかかる蓋体の一実施例を説明するための側面図である。
図19Cは、
図19AのP-P線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図20】
図20Aは、形態A1にかかる蓋体の一実施例を表す平面図である。
図1Bは、Q-Q線縦断面の状態を表す断面図である。
【
図21】
図21Aは、
図20Aの破線で囲まれた領域XR1を拡大した状態を模式的に示す拡大断面図である。
図21Bは、
図20Bの破線で囲まれた領域XR2を拡大した状態を模式的に示す拡大断面図である。
【
図23】
図23Aは、形態A2の第1の形態例にかかる蓋体の一実施例を表す平面図である。
図23Bは、S-S線縦断面の状態を表す断面図である。
【
図24】
図24Aは、
図23Bの破線で囲まれた領域XS1を拡大した状態を模式的に示す拡大断面図である。
図24Bは、
図24Aの破線で囲まれた領域XS2を拡大した状態を模式的に示す拡大断面図である。
図24Cは、繊維の交差の一例を模式的に示す拡大平面図である。
【
図26】
図26Aは、
図26Bの破線で囲まれた領域XS3を拡大した状態を模式的に示す拡大断面図である。
図26Bは、
図26Aの破線で囲まれた領域XS4を拡大した状態を模式的に示す拡大断面図である。
図26Cは、
図26Bの破線で囲まれた領域XAを拡大した状態を模式的に示す拡大断面図である。
【
図27】
図27Aは、第1の形態例にかかる蓋体の一実施例を表す拡大断面図である。
図27Bは、第1の形態例にかかる蓋体を用いた蓋体付き容器の一実施例を表す拡大断面図である。
図27Cは、第2の形態例にかかる蓋体を用いた蓋体付き容器の蓋体の一実施例を表す拡大断面図である。
【
図30】
図30Aは、第3の形態例にかかる蓋体の一実施例を表す拡大断面図である。
図30Bは、第3の形態例にかかる蓋体を用いた蓋体付き容器の一実施例を表す拡大断面図である。
【
図31】
図31Aは、第4の形態例にかかる蓋体の一実施例を表す拡大断面図である。
図31Bは、第4の形態例にかかる蓋体を用いた蓋体付き容器の一実施例を表す拡大断面図である。
【
図32】
図32Aは、第5の形態例にかかる蓋体の一実施例を表す拡大断面図である。
図10Bは、第5の形態例にかかる蓋体を用いた蓋体付き容器の一実施例を表す拡大断面図である。
【
図33】
図33Aは、第1の形態例にかかる蓋体の一実施例を表す平面図である。
図11Bは、U-U線縦断面の状態を表す断面図である。
【
図34】実施例1の結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる一実施例等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は1.第1の実施形態、2.第2の実施形態、3.第3実施形態、4.第4実施形態、5.第5実施形態、6.適用例、7.フィルターの例、8.蓋体の形態A1、9.蓋体の形態A2の順序で行う。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
以下の説明は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容は、説明される実施形態等に限定されるものではない。また、以下の説明において、説明の便宜を考慮して前後、左右、上下等の方向を示すが、本発明の内容はこれらの方向に限定されるものではない。
図1、
図2の例では、Z軸方向を上下方向(上側が+Z方向、下側が-Z方向)、X軸方向を前後方向(前側が+X方向、後ろ側が-X方向)、Y軸方向を左右方向(右側が+Y方向、左側が-Y方向)とし、これに基づき説明を行う。これは、
図3から
図33についても同様である。
【0014】
図1等の各図に示す各層の大きさや厚みの相対的な大小比率は便宜上の記載であり、実際の大小比率を限定するものではない。これらの方向に関する定めや大小比率については、
図2から
図33の各図についても同様である。
【0015】
本発明にかかる蓋体は、コーヒーカップのような各種の飲料物のような流動体を入れる容器(カップ)に対して用いられる蓋体を例として挙げて説明するが、飲料物を入れる容器の蓋体に限定されるものではなく、飲料物以外にも液体を有する食料品を収容する容器の蓋体としても適用することが可能である。また、本発明に係る蓋体は、飲食物以外に、液体を有する各種物品を収容することのできる容器に適用することが禁止されない。さらに、以下においては、本発明に係る蓋体は、平面視したときの形状が円形状であるものの例を用いて説明するが、蓋体の形状は平面視したときに円形状であるものに限定されることはなく、楕円形状、矩形状、三角形状などの多角形状、面取り矩形状、面取り多角形状等、円形状以外の各種の形状にも適用することができる。ただし、本発明の効果をより高める観点からは、蓋体は、混合流体又はそれを有するものを内容物とする容器に装着されるものであることが好ましい。
【0016】
なお、本明細書において、混合流体とは、気体を有する気相と液体を有する液相とを有する流体を示し、気泡を有する液体(この場合、気相は気泡内の気体となり液相は気泡の周囲を取り巻く液体で構成される)や、気体中にエアロゾル状の液滴を有する(分散した)流体(この場合、気相はエアロゾル状の液滴を取り巻く気体となり液相は液滴を形成する液体で構成される)を例示することができる。
【0017】
[1.第1実施形態]
[1-1 蓋体]
本発明の第1実施形態にかかる蓋体10は、
図15等を用いて後述するように容器101の開口部102の縁部103に取り付けた(嵌め合つけた)状態で(蓋体付き容器150の用途で)用いることができるものである。蓋体10は、蓋体10の対向面側に、開口部102を有する容器101に対して縁部103に接する接触領域Rを形成することが可能となるように形成されている。
【0018】
本明細書において、蓋体10の対向面73とは、露出面72に対して背反するほうの面を示し、蓋体10の露出面72とは、蓋体付き容器150の状態で外側に露出する方の面を示す。したがって、対向面73とは、蓋体10の本体40の面のうち、蓋体付き容器150の状態で容器101に向かい合う方をむいた面を示す。蓋体10を構成する各部の説明においても、例えば天面部11等の面についても、蓋体10の露出面72と同様の方向を向いた面を単に露出面と称呼し、蓋体10の対向面73と同様の方向を向いた面を単に対向面と称呼することがある。
【0019】
蓋体10は、天面部11を有する。
図1Aから
図1Dに示す例では、蓋体10は、天面部11を有する本体40を備えている。なお、蓋体10の本体40は、必要に応じて、
図1Aか
図1Dの例に示すように、さらに曲がり部12と側壁部13を有している。なお、
図1C等に示す、側壁部13や小壁部14や重なり部20等の構成(断面構造等)は、一例であり、これに限定されない。重なり部20の構造(小壁部14の重なり方)は、
図1Cに示す断面の形成を避けるように形成されてもよい。
【0020】
(天面部)
天面部11は、
図1Aから
図1Dに示すように、蓋体10を容器101に取り付けた(装着した)場合に、容器101の開口部102を覆う部分となる。天面部11の形状は、容器101の形状に応じて定められてよく、円形状、楕円形状、三角形状、矩形状、多角形状、面取り形状などを例示することができる。
【0021】
(天面部の材質)
天面部11は、シート状の基材を有する。天面部11の材質(シート状の基材の材質)は、紙系素材、プラスチック、金属などを採用することが可能であるが、リサイクル性の観点、及び蓋体10の保形性と環境への配慮(石油資源の使用軽減)の両立性の観点からは紙系素材であることが好適である。したがって、天面部11は、紙系素材で構成されている紙系基材41(紙系素材を材質とした用いられたシート状の基材)を有することが好適である。なお、
図1の例では、天面部11のほか、側壁部13と曲がり部12の材質が、紙系素材を有すること(すなわち蓋体10の全体が、紙系素材を有すること)が好適である。
【0022】
紙系素材としては、繊維原料のスラリーを網上に抄き取り、乾燥ないし押圧乾燥、抄紙してシート状にして得られる、いわゆる紙や、パルプ系繊維等からなる原料シートを粉砕機で粉砕して得られる粉砕パルプ等の開繊繊維原料を空気流によって積繊し、積繊体の繊維相互をバインダーで固定して得られるいわゆるエアレイドシート等、植物繊維、その他の繊維を膠着させて製造される所謂紙類や、これらを複数枚積層したもの等が挙げられる。
【0023】
また、紙系素材としては、パルプだけからなるもののほか、非パルプ系の天然繊維や合成繊維、再生繊維等の繊維を含むものであっても良いが、パルプを主成分とする(50質量%以上含む)ことが好ましく、70質量%以上含むものがより好ましく、更に80質量%以上含むものが好ましいが、特にパルプ100質量%からなるものが好ましい。紙系素材は、木箔等の木質系素材等、さらにはアルミ箔等の素材との複合材料も用いることができるが、複合材料とする場合、複合材料全体としてパルプを50質量%以上含有することが好ましく、特に80質量%以上のパルプを含むものが好ましい。パルプ含有分の高いほど、紙系素材が生分解されやすくなるため好ましい。蓋体10の材質は、紙系素材を含む積層体でも好ましく用いられることができる。
【0024】
紙系素材は、繊維原料で構成されたシート材料であり、コーティング剤等の層(コート層)の形成をシート材料の表面全体に形成することについては避けたられたものを好適に用いられる。シート材料の表面全面を覆うようなコート層の形成が避けられていることで、リサイクル性により適した蓋体を形成することができる。ただし、溶剤等で溶解可能なコーティング剤を用いる場合には、紙系素材にコート層を形成することが禁止されない。
【0025】
紙系素材は、パルプ等の繊維材料の他に、主成分とならない範囲で各種樹脂が含まれることを禁止されないが、紙系素材が各種樹脂を含む場合においては、各種樹脂の中でも環境汚染の問題の少ない生分解性樹脂が選択されることが好適である。生分解性樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)やPHA系共重合体等の微生物生産系生分解性樹脂;酢酸セルロース等のセルロース誘導体やトウモロコシデンプン等の澱粉を主原料とした澱粉系樹脂等の天然物系生分解性樹脂;ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸/ポリカプロラクトン共重合体、ポリ乳酸/ポリエーテル共重合体等の乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)等のサクシネート系樹脂、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール(PVA)等の化学合成系生分解性樹脂等、その他、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、生分解性ポリオレフィン(商品面:Biorecover、商品名;Cra Drop等)が挙げられる。
【0026】
また、蓋体10においては、天面部11は、紙系素材を貫通する貫通部17と、気液分離材42と、熱可塑性を有するコーティング剤48とを備える。
【0027】
(貫通部)
天面部11において、貫通部17が形成されている。
図1の例では、本体40の天面部11において、貫通部17はおおむね中心CTに対してより近い位置に形成されている。ただしこれは一例であり、貫通部17の位置はこれに限定されるものではない。開口部102を覆う部分とは、開口部102の少なくとも一部を覆う部分であり、後述するように差し込み口16のような部分的に開口可能となる部分を有する場合が含まれる。
【0028】
貫通部17は、蓋体10の一方面から他方面まで(露出面72から対向面73)上下方向(天面部11の厚み方向)に切り込まれた構造(貫通させた構造)を有しており、いわゆる切込構造形成部である。切込構造形成部は、スリット状に形成されている部分である。貫通部17の形状は、特に限定されず、
図1の例では十字形状に形成されているが、これらは、一例であり、貫通部17の形状を限定するものではない。貫通部17の形状は、C字状でも、U字状でも、そのほかの形状に形成されてよい。
【0029】
貫通部17の形状は上記したスリット状に形成されている場合に限定されない。貫通部17は、環状に形成されてもよい。この場合、貫通部17は、本体40を形成する部材(天面部11を形成する部材)(紙系素材等)を押し広げた孔部分でもよいし、本体40を形成する部材を打ち抜き加工を施した部分でもよい。
【0030】
(差し込み口)
図1の例では、天面部11には、外部からストローなどを差し込む差し込み口16が形成されており、この差し込み口16が、貫通部17で形成された構造部分となっている。すなわち、
図1の例では、貫通部17が、外部からストローなどを差し込む差し込み口16として機能させる構造部分を形成している。
【0031】
貫通部17は、差し込み口16を形成する構造に限定されず、蓋体付き容器150の状態で容器101の内圧を下げる通気孔を形成する構造であってもよい。ただし、後述するような飲み口を形成すための開口(天面部11の内側に形成される開口)を形成する構造(小開口部とその小開口部の開閉可能な小蓋部とを有する構造)は、除かれるものとする。
【0032】
蓋体10は、本体40の天面部11に気液分離材42を備える。気液分離材42は、通気性シートの機能を有する。気液分離材42は、少なくとも天面部11の面のうち容器101との対向面73側に配置されている。通気性シートとは、通気性シートの一方面(蓋体10の対向面73)側を向いた面から他方面(蓋体10の露出面72)側に向けられた面(本体40に向かいあう面)に向かって、炭酸等の気体や蒸気(水蒸気等)を通過させることができる程度の通気性を有するシートを示す。炭酸等の気体や蒸気(水蒸気等)は、「気体等」との用語で総称されることがある。
【0033】
(気液分離材)
気液分離材42は、気相と液相とを有する混合流体から気相の気体と少なくとも一部の液相の液体とを分離可能なシート材である。気液分離材42を構成するシート材としては、紙系通気シート43が好適に用いられる。
【0034】
(紙系通気シート)
紙系通気シート43は、繊維43Aを含み且つ通気性を有するシート(繊維シート)である。紙系通気シート43の繊維としては、長繊維が含まれることが好ましい。紙系通気シート43は、長繊維を主成分とすることが、強度の観点からは好ましい。紙系通気シート43が長繊維を含む場合、長繊維としては、紙繊維が好適に採用される。主成分とするとは、紙系通気シートを構成する繊維のうち50質量%以上が長繊維であることを示す。
【0035】
紙系通気シート43を形成する繊維43Aは、いわゆる紙繊維(パルプ繊維)を好適に用いられる。したがって、気液分離材は、気液分離紙と称呼可能な部材であることが好適である。パルプ繊維は、木材パルプの繊維、非木材パルプの繊維等を例示することができる。木材パルプ及び非木材パルプはいずれについても、バージンパルプであることが繊維長さを比較的長い状態で保てる観点からは好ましい。また、パルプ繊維について、木材パルプの中でも、湿潤強度に優れる原紙が得られることから未晒クラフトパルプ(UKP)、晒クラフトパルプ(BKP)、またはそれらの組み合わせであることが好ましい。未晒パルプは、漂白されていない木材パルプを示す。晒パルプは漂白工程を経た木材パルプを示す。晒パルプの漂白方法としては、アルカリ、塩素、次亜塩素酸ナトリウム等を使用する漂白方法や、二酸化塩素等を使用する漂白方法(ECF(Elementary Chlorine Free)漂白法)や、酸素、過酸化水素、オゾン等を使用する漂白方法(TCF(Total Chlorine Free)漂白法)等を例示することができる。非木材パルプについては、リンターパルプ、ケナフパルプ、バガスパルプ、パンブーパルプ、麻パルプなどが例示される。
【0036】
また、長繊維は、洋紙を形成するために通常使用されるパルプ繊維の中でも比較的繊維の長さの短い広葉樹パルプ(L材)の繊維長さ(おおむね1mm程度が通常とされる)以上の繊維を示すものとする。長繊維としては、このようなパルプ繊維のうち湿潤強度に優れる紙系通気シートを得る観点から、針葉樹パルプ(N材)から得られる木材パルプの繊維が好ましい。ただし、紙系通気シート43に含まれる繊維43Aは、平均的に上述した繊維長さなるような材質のものが用いられればよく、広葉樹パルプ(L材)の繊維長さ以下のものが含まれる場合を完全に排除するものではない。すなわち、紙系通気シート43には、長繊維よりも繊維長さの短い短繊維が混在してもよい。具体的には、例えば、紙系通気シートは、針葉樹パルプの繊維を含むことが好ましく、広葉樹パルプの繊維を含むことが排除されていなくてよい。
【0037】
(不織布シート)
紙系通気シート43は、不織布シートが好適に用いられる。不織布シートとは、JIS L0222に不織布として定義されている、「繊維が一方向又はランダムに配向されており、交絡、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮絨フェルトを除く。」ものを示す。紙系通気シート43を構成する不織布は、上述したような繊維(パルプ繊維等)を用いて水等を利用して繊維を漉くことで得られる。紙系通気シート43は、不織布が用いられていることで、製造コストを削減することができるととも、隣り合う繊維43Aの間に隙間を確保することが容易となる。
【0038】
(撥液剤)
気液分離材42は、少なくとも紙系通気シート43の一方の面に、紙系通気シート43に対して撥液性を付与可能な撥液剤44を配置した構造を有する。紙系通気シート43に対して撥液剤44を配置した構造とは、
図2Bに示すように、紙系通気シート43を形成する繊維に撥液剤44が接している構造を示す。少なくとも一部の撥液剤44は、長繊維の少なくとも一部に接着されている。紙系通気シート43を形成する繊維43Aは長繊維を主成分とすることが好ましい観点から、気液分離材42は、撥液剤44が紙系通気シート43の長繊維に付着した状態を有することが好適である。
【0039】
撥液剤44は、紙系通気シート43の表面やその近傍に位置する繊維43Aに配置されている場合に限定されず、紙系通気シート43の内部(紙系通気シート43の厚み方向に沿って表面よりも内側の位置)にも配置されていてもよい。この場合、混合流体に含まれる液体の一部が紙系通気シート43のやや内部に侵入してきても液体の通過を規制することができる。
【0040】
撥液剤44は、繊維43Aに密着した状態を維持できる程度に繊維43Aに付着していればよい。
図2Bの例では、撥液剤44が、粒状にて繊維43Aの表面に付着した例を示しているが、
図2C、
図2Dに示すように、撥液剤44が、繊維43Aの表面の面方向に広がるように付着してもよいし、撥液剤44の層が繊維43Aの表面を覆うように付着してもよい。また、撥液剤44は、繊維43Aの表面のみならず、繊維43Aの内部に浸透してもよい(図示しない)。
【0041】
(撥液剤の種類)
撥液剤44は、蓋体付き容器150の状態で容器101内に収容される内容物の液体の種類に応じて定められていることが好ましい。内容物の液体が水を含む場合、撥液剤44は、撥水剤が好適に用いられる。撥水剤としては、特に限定されないが、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤、ワックス類等を用いることができる。
【0042】
(撥液剤としての撥水剤の付着方法)
撥水剤の付着方法は、紙系通気シートに撥水化処理を施す方法を示すことができる。撥水化処理の方法は、特に限定されず、例えば、処理液に紙系通気シートを浸漬し、浸漬された紙系通気シートを引き上げた後、乾燥させる方法を挙げることができる。また、撥水化処理の方法は、紙系通気シートの表面に処理液を塗布する方法を挙げることができる。なお、塗布する方法としては、具体的に印刷法等を例示することができる。印刷法としては、ロールコート、スプレーコート等のコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷等を例示することができる。
【0043】
(気液分離材の位置)
蓋体10においては、気液分離材42は、天面部11の平面視上、貫通部17の少なくとも一部を覆うように配置されている。これにより、容器101の空間部105と貫通部17との間に気液分離材42が配置された状態を形成することができ、容器101に収容された内容物の混合流体が上方向移動しても直接的に貫通部17に到達してしまう虞を抑制することができる。
【0044】
(切込部)
気液分離材42は、貫通部17に対応して定められた位置に切込部45が形成されていることが好適である。ただし、このことは、蓋体10において気液分離材42に切込部45が省略されることを禁止するものではない。蓋体付き容器150において、貫通部17を差し込み口16としてストロー等を外部から差し入れた際に、貫通部17を通過したストロー等の先端が気液分離材42の切込部45の位置から気液分離材42を下方向に通過しやすくなる。なお、
図1の例では、差し込み口16の中央位置またはその近傍に切込部45が位置しているが、ストロー等の先端が気液分離材42を通過できるような構造であれば、
図3Aに示すように、切込部45が差し込み口16の中央位置から外れた位置に形成されていてもよい。また、
図1の例では、切込部45が一文字状に形成されており、差し込み口16を形成する貫通部17が十字状(クロス状)に形成されており、切込部45の切り込み方向を貫通部17の切り込み方向からずれた方向(互いに位相の異なる方向)としている。これにより、容器101内の混合流体が切込部45を通過して貫通部17をさらに通過してしまう虞を抑制することができる。なお、容器101内の混合流体が切込部45を通過する虞を抑制する観点から切込部45にかえて、気液分離材42は、
図3Bに示すように、ハーフカット部46を形成していることが好ましい。気液分離材42は、貫通部17に対応して定められた位置にハーフカット部46が形成されていることとなる。
【0045】
また、切込部45の形状は、差し込み口16を形成する貫通部17の形状と異なっている場合に限定されず、切込部45の形状は、
図5Aから
図5Cに示すように、差し込み口16を形成する貫通部17の形状と同じでもよい。ただし、この場合においても、
図5Aから
図5Cに示すように、切込部45の切り込み方向を貫通部17の切り込み方向からずれた方向(互いに位相の異なる方向)となっていることが好ましい(
図5Aから
図5Cでは、切込部45の切り込み方向を天面部11の面内で45度回転させた方向が貫通部17の切り込み方向となる。)。なお、切込部45の形状が、差し込み口16を形成する貫通部17の形状と異なっている場合に、切込部45の形状が、差し込み口16を形成する貫通部17の形状と部分的にも全く一致しない形状でもよい。例えば、切込部45の形状が曲線状の切り込み(例えばC字状)で形成され、差し込み口16を形成する貫通部17が直線状の切り込み(例えばクロス状)で形成されてもよい。
【0046】
(繊維間隙間部)
気液分離材42は、紙系通気シート43の繊維43Aに撥液剤44を付着させた状態でも、通気性を維持し、複数の隣り合う繊維43Aの間に繊維間隙間部47が存在している。蓋体10においては、この繊維間隙間部47は、後述するコーティング剤48が入り込むことが可能となるように形成されている。
【0047】
(コーティング剤)
蓋体10においては、コーティング剤48が、気液分離材42と紙系基材41を接着している。コーティング剤48は、気液分離材42を固定可能となるように本体40の天面部11に設けられていればその領域を特に限定されなくてもよいが、リサイクル性を確実にする観点等から、本体40の天面部11の対向面73側の所定領域に限定的に設けられていることが好適である。コーティング剤48を設けられる領域は、上述した気液分離材42を配置する領域に対応した領域に定められる。
図1Aから
図1Dの例では、コーティング剤48を設けられる領域は、気液分離材42の外周縁よりもやや内側の領域で且つ、貫通部17に対応した領域の外側に対応した環状の領域として定められている。ただしこれは、一例であり、コーティング剤48を設けられる領域は、気液分離材42と紙系基材41を接着することができるように形成されていればよく、非環状であってもよい。ただし、気液分離材42の外周端縁から気液分離材42と紙系基材41との間に混合流体が侵入する虞を抑制する観点からは、コーティング剤48を設けられる領域は環状であることが好ましい。なお、気液分離材42と紙系基材41を接着する観点からは、気液分離材42と紙系基材41とが対向する領域の全面にコーティング剤48が設けられることも考えられるが、この場合、気液分離材42の全面がコーティング剤48で固定されるため気液分離材42の緩衝性が低減しやすくなり、混合流体の流速が大きい場合に、混合流体に含まれる液体の一部が気液分離材42を通過する虞を生じやすくなることが考えられる。この観点からも、コーティング剤48を設けられる領域は環状等のような一部分であることが好ましい。
図1の例では、蓋体10には、蓋体10の平面視上(Z軸方向を視線方向とした場合)、コーティング剤48を設けられる領域の内側に非接合部82が存在している。非接合部82では、天面部11と気液分離材42との間に隙間83が存在してもよいし、天面部11と気液分離材42とが接していてもよい(隙間83が省略されてもよい)。
【0048】
(コーティング剤の種類)
コーティング剤48の種類は、熱可塑性を有するものであれば特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂などを例示することができる。具体的には、コーティング剤としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を例示することができる。コーティング剤が熱可塑性を有することで、ヒートシール法や、超音波接合法等を用いて気液分離材42と紙系基材41とをコーティング剤48を介して接合することができる。気液分離材42と紙系基材41とが接合した部分を分離紙接合部49と称呼する。なお、プラスチック材料の使用を減じる観点からは、コーティング剤は、非プラスチック製の樹脂を用いられていていることが好ましい。
【0049】
(分離紙接合部の強さ)
なお、蓋体10においては、気液分離材42に上記したように繊維間隙間部47が形成されており、分離紙接合部49はコーティング剤48が繊維間隙間部47に入り込んだ構造を有することが好ましい。また、分離紙接合部49におけるコーティング剤48が繊維間隙間部47に入り込む程度は、常温常圧下(25℃、1気圧下で)、気液分離材42とコーティング剤48とを分離しようとした場合に、気液分離材42及び/又はコーティング剤48に破壊(内部破壊)が生じる程度であることが好ましい。なお、コーティング剤48と紙系基材41に関しても、常温常圧下(25℃、1気圧下で)、紙系基材41とコーティング剤48とを分離しようとした場合に、紙系基材41及び/又はコーティング剤48に破壊が生じる程度であることが好ましい。したがって、分離紙接合部49における気液分離材42と紙系基材41とが接合した部分の接合力は、常温常圧下(25℃、1気圧下で)、気液分離材42とコーティング剤48との間や紙系基材41とコーティング剤48との間で層間剥離を生じる程度ではなく、気液分離材42、紙系基材41及びコーティング剤48などの各部の破壊を伴う程度の強さであることが好ましい。
【0050】
図1Aから
図1Dに示す蓋体10の例では、上述したように、本体40は天面部11の他に側壁部13と曲がり部12とを有しており、天面部11と側壁部13は、曲がり部12で連続している。
【0051】
(曲がり部)
曲がり部12は、天面部11の外周縁を取り巻くように形成されており、天面部11と側壁部13の境界を形成する部分となっている。曲がり部12は、蓋体10を容器101に取付けた場合に側壁部13が容器101の側壁104や縁部103に対向するように形成されている。
図1Aから
図1Dの例では、曲がり部12は、折れ曲がり構造を有しているが、後述するように曲がり部12は、折り曲がり構造を有する場合に限定されない。また、「天面部11と側壁部13の境界を形成する部分」には、その部分自体が境界をなす場合、その部分の内部や端部に境界が定められる場合(天面部11及び/又は側壁部13の一部が曲がり部12を兼ねる場合)のいずれも含むものとする。
図1Aから
図1Dの場合は、曲がり部12が天面部11と側壁部13の境界位置に形成されており、曲がり部12を境界として天面部11と側壁部13が画されている。天面部11と側壁部13の境界は、曲がり部12の中央に定められる。曲がり部12が
図8Aから
図8B等を用いて後述するように湾曲構造を有する場合には、曲がり部12は、湾曲した範囲で特定される部分で構成され、天面部11と側壁部13の境界は、曲がり部12のおおむね中央で定められる。これは後述する張出部226が曲がり部12を形成する場合についても同様であるものとする。
【0052】
(側壁部)
側壁部13は、天面部11の外周端11Aに沿って、環状に形成されている。側壁部13は、後述する複数の小壁部14を有し、且つ、隣り合う小壁部14を部分的に重ねた重なり部20を有している。重なり部20には、隣り合う小壁部14を接合する小壁接合部15が形成されている。
【0053】
(側壁部の全体形状)
側壁部13の形状は特に限定されるものではないが、
図1Aから
図1Dの例では、側壁部13の全体形状として、上下方向に沿って、曲がり部12から小壁部14の前端に向かう方向(-Z方向)で、先細りする形状となっている。ここにいう先細りする形状とは、蓋体10の平面視上、側壁部13の横断面(XY平面に平行な平面で側壁部13を切断した状態を想定した場合にも認められる側壁部13の横断面)で、曲がり部12の近傍位置における側壁部13の横断面の内側に、曲がり部12よりも下方側の所定位置での側壁部13の横断面が形成されているような形状であることを示しており、
図1Aから
図1Dの例では、側壁部13の横断面が曲がり部12の位置から離れるほど小さくなるように形成されている。なお、側壁部13の形状については、側壁部13の内周面13Aについての形状と、側壁部13の外周面13Bについての形状があるが、
図1Aから
図1Dの例に示すように、いずれの形状についても先細りする形状に該当することが好ましい。
【0054】
(小壁部)
蓋体10は、複数の小壁部14を有しており、複数の小壁部14は、曲がり部12を介して天面部11に連なるように形成されている。小壁部14は、基端部31と前端縁部32を有し、基端部31が曲がり部12に位置しており、前端縁部32が側壁部13の下端を形成している。
図1Aから
図1Dの例では、基端部31は、側壁部13の上端を形成しているが、これは一例である。
【0055】
また小壁部14の外周縁のうち基端部31と前端縁部32を除く部分が、側端部33を形成している。側端部33の形状は後述する重なり部20を形成可能であれば特に限定されないが、後述するブランク材50の状態で隣り合う小壁部14の一方の側端部33とその一方の側端部33に向かい合う他方の側端部33とが互いに平行する形状に形成されていることが好ましい。また、
図1の例では、側端部33の形状は、後述するブランク材50の平面視上において、ブランク材50の中心(
図7Aにおいて位置CB)から外方向(ブランク材50の径方向)に延びる直線状に形成されている。小壁部14は、後述するブランク材50においては個々の折り代部51で構成される。なお、
図7Aの例に示すブランク材50を賦形して
図1Aの蓋体10を形成した場合の例では、ブランク材50の中心CBが、おおむね蓋体10の中心CTの位置となっている。
【0056】
小壁部14は、天面部11の外周端11Aを取り巻くように形成されている。すなわち、複数の小壁部14は、曲がり部12に沿って天面部11の周方向に並ぶように形成されている。また、天面部11の周方向に隣り合う小壁部14が部分的に重なり合っている。隣り合う小壁部14の重なり合う構造は、天面部11の周方向に並ぶ全ての小壁部14について同じ構造であってよい。例えば、小壁部14の側端部33のうち
図1Bの-X方向側の側端部33を第1側端部33Aとし、+X方向側の側端部33を第2側端部33Bとし(小壁部14の側端部33をみた場合に第1側端部33Aから第2側端部33Bに向かう方向が天面部11の周方向を時計回りとなる方向に一致するように第1側端部33A、第2側端部33Bを定める)。このとき、
図1の例に示すように、第1側端部33Aが側壁部13の内周面13A側に位置し、第2側端部33Bが側壁部13の外周面13B側に位置するように、隣り合う小壁部14の重なり合う構造が定められている。なお、これは、一例であり、隣り合う小壁部14の重なり合う構造を限定するものではない。
【0057】
図1Bや
図1Dの例では、小壁部14は、容器101に取り付けられた状態で容器101に向けられる方の面として内面部34と、その内面部34に対して逆面側の面を外面部35とを有し、小壁部14の内面部34のうち露出する部分が、側壁部13の内周面13Aを形成する。また、
図1Bや
図1Dの例では、小壁部14の外面部35のうち露出する部分が、側壁部13の外周面13Bを形成する。
【0058】
小壁部14の形状は、特に限定されるものではないが、少なくとも一部の小壁部14の幅が基端部31よりも前端縁部32のほうが大きくなるような形状であることが好ましい。この場合、
図1Bの例に示すように、小壁部14の幅WNが基端部31から前端縁部32に向かって徐々に大きくなるような形状であることが好ましい。このような形状として、小壁部14の形状は、扇形状を例示することができる。
【0059】
小壁部14は、内面部34と外面部35の少なくとも一方面側の表面に樹脂層(熱可塑性樹脂層が好ましい)が形成されていることが好ましい。この場合、後述するブランク材50から蓋体10を成形する際に加熱処理や超音波溶着処理等を施すことで重なり部20に小壁接合部15を容易に形成することができる。これは、蓋体10の材質として(ブランク材50の材質として)少なくとも一方の表面に樹脂層を形成したシート材を用いることで実現することができる。なお、シート材の例としては、具体的に、紙系素材で形成された層(例えば、紙)と、樹脂層との積層構造を有するもの(例えばコート紙)が挙げられる。
【0060】
(重なり部)
側壁部13には、重なり部20が形成されている。重なり部20は、隣り合う小壁部14の一部が重なりあった構造で定められる部分である。
図1Aから
図1Dの例では、上述したように小壁部14を構成する面のうち、容器101に取り付けられた状態で容器101に向けられる方の面を内面部34とし、その内面部34に対して逆面側の面を外面部35とした場合、重なり部20は、一方の小壁部14の内面部34と他方の小壁部14の外面部35とが向かい合った部分として定められる。
図1Aから
図1Dの例では、隣り合う前記小壁部14を第1の小壁部14Aと第2の小壁部14Bとした場合(例えば、第1の小壁部14Aから第2の小壁部14Bに向かう方向が時計回りとなるように第1の小壁部14Aと第2の小壁部14Bを定めた場合)に、第1の小壁部14Aの内面部34と、第2の小壁部14Bの外面部35とが向かい合っている。
【0061】
重なり部20の領域は、特に限定されるものではないが、小壁部14の基端部31から前端縁部32に向かって重なり部20の幅が大きくなる部分を有する、ことが好ましい。
図1Aから
図1Dの例では、重なり部20の領域は、小壁部14の基端部31から前端縁部32に向かって重なり部20の幅WKが徐々に大きくなっているような形状である。このように重なり部20の領域WKが形成されていると、後述する小壁接合部15の形成領域も重なり部20の領域と同様となるように形成することが容易となり、小壁接合部15による効果を高めた構造を形成することが容易となる。重なり部20の幅(
図1Bにおいては、幅WK)とは、小壁部14の基端部31の2つの端部31A、31Bを結ぶ直線Mを想定した場合に、重なり部20の面に沿った領域の長さのうち、その直線Mと並行な方向の長さを示すものとする。
【0062】
(小壁接合部)
重なり部20では、重なり部20を構成する小壁部14の向かい合う面が互いに接合しており、この接合した部分が小壁接合部15となっている。
図1Aから
図1Dの例では、第1の小壁部14Aの外面部35と、第2の小壁部14Bの内面部34とを接合した部分として定められる。小壁接合部15が形成されていることで、隣り合う小壁部14が互いに自由な動き生じることを規制することができ、側壁部13の全体形状が安定化しやすくなる。特に、ブランク材の賦形によってブランク材を構成する部分が密集して形成される従来のような細かな皺や襞のような皺状構造と異なり、小壁接合部15は、面接合する部分となっているため、側壁部13の形状がより安定化しやすくなる。なお、このことは、小壁接合部15の他に従来の皺状構造をさらに形成することを禁止するものではない。
【0063】
小壁接合部15の形成領域は、側壁部13を構成する小壁部14が基端部31を軸として自由に回動することを抑制できる程度の領域であれは、特に限定されるものではない。ただし、蓋体10の形状安定性を維持しつつ、曲がり部12から遠い位置で(側壁部13の下端に近い位置で)側壁部13に変形を生じにくく、さらに側壁部13の下端よりも曲がり部12の近傍で側壁部13に比較的変形を生じることができるようにする観点からは、小壁接合部15の幅WDが、曲がり部12から小壁部14の前端に向かって大きくなる部分を有することが好ましい。このとき、重なり部20の形成領域も同様であることが好ましい。この場合、重なり部20の形成にあわせて重なり部20に熱融着処理(加熱処理等)や超音波溶着処理を施すことで、重なり部20と小壁接合部15とをおおむね同時に形成することができる。小壁接合部15の幅(
図1においては、幅WD)とは、小壁接合部15の面に沿った領域の長さのうち、上述した直線Mと並行な方向の長さを示すものとする。なお、小壁接合部15となる小壁部14の向かい合う面が互いに接合している構造は、小壁部14を接着などにより固定して部分として形成される。具体的に、向かい合う小壁部14の少なくとも一方且つうち少なくとも重なり部20の少なくとも一部に対応する部分に接着剤や樹脂(熱可塑性樹脂)を配置し、接着剤や樹脂を介して固定された部分であってよい。
【0064】
図1Aから
図1Dの例では、小壁接合部15の幅WDが、小壁部14の基端部31から前端縁部32に向かって徐々に大きくなるなっている。このような小壁接合部15の形成領域として、おおむね扇型状の形成領域(扇型を部分的に重ねた形状)を例示することができる。
【0065】
[1-2 蓋体用ブランク材と製造方法]
図1Aから
図1Dに示すように、本発明においては、蓋体10は天面部11と側壁部13の面方向が異なっていることで全体として立体的形状を有する。このような蓋体10の立体的形状は、例えば、成形装置等を用いて蓋体用ブランク材を蓋体10の形状に対応した形状に変形する(賦形する)ことで実現することが可能である。なお、本明細書においては、蓋体用ブランク材を単にブランク材と称呼することがある。
【0066】
(蓋体用ブランク材)
蓋体用ブランク材(ブランク材50)は、蓋体10に対応するブランク材50である。例えば、
図1Aから
図1Dの例に示す蓋体10についてのブランク材50は、蓋体10に応じて定められた形状に形成されたシート状の構造体で構成される。ブランク材50の材質は、蓋体10の材質と同じ材質のものを定められる。なお、ブランク材50がシート状である場合には、蓋体10の形状や構成に対応して例えば後述するように貫通部17やタブ部材19等を対応する位置に設けたものが含まれる。
【0067】
(第1の対応部と第2の対応部)
ブランク材50は、
図7Aに示すように、第1の対応部52と第2の対応部53を有する。ところでブランク材50のうち蓋体10の天面部11となる部分に対応する部分が、第1の対応部52であり、側壁部13となる部分に対応する部分が第2の対応部53となる。
【0068】
図1Aに示す蓋体10に対応するブランク材50は、
図7Aに示すように、紙系基材41としての円形のシート材55に気液分離材42を配置したシート材料で形成されているものを挙げることができる。ブランク材50は、シート材55の外周縁から内側に向かった複数の切り込み部54を有し、
図7Aの例の場合にはシート材55の外周縁に沿って隣り合う切り込み部54の間の部分がブランク材50の賦形の際に曲げられる折り代部51となる。折り代部51の組み合わせ(集合体)で構成される部分が第2の対応部53を形成している。なお、この折り代部51が、
図7Bに示すように矢印FD方向に折り曲げられることで、ブランク材50が蓋体10へと形状変化された際には、折り代部51は小壁部14をなす(あるいは小壁部の一部をなす)。なお、
図7A等は、ブランク材50の一例であり、例えば、ブランク材50は、切り込み部54の奥端の位置よりもさらに中心側の所定位置で折りまげられるように構成されてもよい。
【0069】
(蓋体の製造方法)
蓋体10は、例えば、蓋体成形装置等でブランク材50を蓋体10の形状に対応した形状に賦形することで製造することができる。蓋体成形装置としては、雄型と雌型の一対の金型を有する装置を例示することができる(図示しない)。雄型と雌型を離間して、雄型と雌型の間にブランク材50を配置し、型締めすることで賦形することができる。このとき、ブランク材50が第2の対応部53の内端(第1の対応部52と第2の対応部53の境界)やその近傍で折り曲げられ、その際に
図7Dに示すように隣り合う折り代部51に重なり合う構造(重なり部20)が形成される。重なり部20の幅等の条件は、金型の形状や蓋体成形装置の制御等を調整することで定めることができる。なお、ブランク材50の賦形により、第1の対応部52が天面部11となり、第2の対応部53が、側壁部13となる。
図7Aの例では、第2の対応部53を形成する折り代部51は、小壁部14となる。そして、この例では、第1の対応部52と第2の対応部53の境界がおおむね曲がり部12となる。
【0070】
なお、
図1のように蓋体10の側壁部13が先細り形状を有する場合には、型締めを実現する観点からは、雄型と雌型の少なくとも一方が分割可能な型であることが好ましい。
【0071】
また、ブランク材50の賦形と同時に小壁接合部15を形成する観点からは、蓋体成形装置には小壁接合部15を形成するための接合機構が設けられていることが好ましい。接合機構としては、少なくとも重なり部20の一部を加熱する加熱処理を実施することができるように構成された加熱機構や、重なり部20の一部に超音波溶着処理を施すことができるように構成された超音波溶着機構などを例示することができる。なお、加熱処理で小壁接合部15を形成する観点からは、重なり部20をなす部分について、加熱処理前の段階で予め接着剤や樹脂が配置されていることが好適である。
【0072】
[1-3 作用及び効果]
容器に取り付けられる蓋体では、天面部に貫通部が形成されており、蓋体付き容器の状態で容器の内容物に液体が存在していると、液体と気体を有する混合流体が貫通部から容器の外部に漏れ出す虞があった。特に、蓋体付き容器に収容された液体が、熱い液体や炭酸を含ませた液体である場合には、蓋体付き容器内に蒸気や炭酸などの気体が充満し、これらの気体が蓋体の貫通部から外部に噴き出る。そして、蓋体付き容器が動かされると、容器内での液体の動きに伴って液体の液面が波立つことがあり、波立った液体の一部が容器の外部に噴き出ようとする気体の流れに巻き込まれて気体とともに捲き上げられ貫通部から外部に噴き出てしまうことがある。
【0073】
さらに、蓋体においては、環境負荷軽減の観点から石油原料の使用軽減が求められており、石油原料の使用軽減の観点からできるだけ紙系材料を用いることが要請されている。また、同じく環境負荷軽減の観点から、蓋体においてはリサイクル性向上が重要となっている。したがって、蓋体には、紙系素材を用いつつ、蓋体付き容器からの内容物の漏出を防止でき且つリサイクル性を向上させることが要請されている。
【0074】
本発明の蓋体10によれば、混合流体FWから気体FGAと液体FLIとを分離する構成として特別な構成を有することで蓋体付き容器150からの内容物の漏出を防止できるようになっている。例えば、
図2Aに示すように、容器101の内部から混合流体FWが気液分離材42に衝突すると、気体FGAは気液分離材42の繊維間隙間部47をすり抜けて外部に進行するが、液体FLIは、気液分離材42の繊維43Aに配置された撥液剤44ではじかれやすくなる。そして液体FLIの自重等によってふたたび容器101の下方へと脱落する。これにより、蓋体10によれば、混合流体FWから気体FGAと液体FLIとを分離することが可能となる。また、混合流体の勢いが強く、液体FLIが気液分離材42の内部に向かって繊維間隙間部47にやや入り込んでも、液体FLIが繊維43Aに衝突し、液滴が砕かれるとともに勢いを削がれる。そして、気液分離材42の内部に撥液剤44が配置されていた場合には、やがて気液分離材42の内部の撥液剤44ではじかれ、液体FLIの自重等によってふたたび混合流体FWの液体FLIが容器101の下方へと脱落しやすくなる。
【0075】
また、特に、本発明の蓋体10によれば、気体FGAと液体FLIとを分離する構成が気液分離材42であり、且つ、天面部11が紙系基材41で構成されていることで、蓋体10の両面(露出面72と対向面73)にパルプ繊維が露出した状態を形成することができる。このため、リサイクル時にパルプ繊維を効率的に開繊することができ、さらに樹脂成分とパルプ繊維とを容易に分離することができるようになることから、本発明の蓋体10によれば、リサイクル性をより向上させることが容易となる。
【0076】
図1Aから
図1Dの例に示す蓋体では、側壁部13が天面部11に連続する複数の小壁部14を部分的に重ねた構造を有しており、シート状のブランク材50の賦形で天面部11と側壁部13を形成することができるような構造となっている。また、本発明の蓋体は、側壁部13の面方向(周方向)に小壁接合部15が広がっているため、側壁部に襞や皺状の構造を有する従来の蓋よりも、側壁部13に対して面方向に広がる力が作用しても側壁部13が外方向に不可逆的に広がってしまう虞を抑制することができる。すなわち、蓋体10の側壁部13の内周面13Aの大きさよりも、やや寸法の大きな容器101に対して蓋体10を装着した際に、蓋体10の側壁部13に対して側壁部13を広げる方向の力(側壁部13を周方向に広げる力)が作用しても、側壁部13が不可逆的に広がってしまう状態が生じにくく、容器101に蓋体10をしっかりと装着した状態を維持することが容易となり、蓋体10の側壁部13が意図せずに伸び広がって蓋体付き容器150の密閉性を損ねる虞も抑制される。
【0077】
側壁部に襞や皺状の構造を有する従来の蓋では、側壁部を構成する部材は皺の形成箇所で連続している(切れ目がないあるいは少ない)。本発明の蓋体では、隣り合う小壁部14は切断されており、側壁部13では小壁部14の側端面が重なり部20の側端と形成する。このため、本発明の蓋体として、側壁部に襞や皺状の構造を有する従来の蓋と同じ断面径を有するものを形成する場合において、従来の蓋体についての側壁部を形成する部材が相互に対面接触する対面接触領域(皺や襞を形成する部分の対面接触領域)の全面積をARA1とし、本発明の蓋体における重なり部20の総面積をARA2とした場合に、ARA1よりもARA2の方が大きくなる。すなわち従来の蓋体で皺や襞を接合させた場合の接合面積よりも重なり部20に形成される小壁接合部15の総面積のほうを大きくすることができ、この点においても、本発明の蓋体は、従来の蓋体よりもより側壁部13の形状を安定化することができる。
【0078】
[1-4 蓋体の変形例]
(変形例1)
第1の実施形態にかかる蓋体においては、気液分離材42の形状は、特に限定されない。気液分離材42、例えば、
図17Aから
図17Cに示すような矩形状でもよい(変形例1)。この形態を、第1の実施形態の変形例1と称呼する。
図17Aは、第1の実施形態の変形例1の一実施例を説明するための平面図である。
図17Bは、第1の実施形態の変形例1の一実施例を説明するための側面図である。
図17Cは、第1の実施形態の変形例1の一実施例を説明するための断面図である。
【0079】
(変形例2)
第1の実施形態にかかる蓋体においては、重なり部20を形成する隣り合う小壁部14の重なり合う構造は
図1の例とは異なる構造であってもよい
【0080】
(変形例3)
第1の実施形態にかかる蓋体10においては、曲がり部12は、屈曲形状を有する場合(折り曲がり形状を有する場合)に限定されず、湾曲形状を有してもよい。
【0081】
(変形例4)
第1の実施形態にかかる蓋体10は、側壁部13が上述したような曲がり部12から離れる方向(
図1B、
図1C等では下方向(-Z方向))に先細りした形状となるように形成されている場合に限定されない(変形例7)。第1の実施形態にかかる蓋体10は、例えば、側壁部13が先太りした形状となるように形成されもよい。また、第1の実施形態にかかる蓋体10は、例えば、側壁部13が横断面径を一定とするような形状(先細りも先太りもしない形状)となるように形成されもよい。第1の実施形態にかかる蓋体10は、例えば、側壁部13が部分的に拡径した形状や部分的に縮径した形状となるように形成されもよい。第1の実施形態にかかる蓋体10では、側壁部13がフレア形状(ラッパ型に広がる形状)となる形状であってもよい。
【0082】
(変形例5)
第1の実施形態にかかる蓋体10においては、
図6Aから
図6Bに示すように、天面部11に、貫通部17の他に、飲み口を形成する飲み口形成構造18が形成されてもよい(変形例5)。
図6Aから
図6Bは、第1の実施形態の変形例5にかかる蓋体10の天面部11の一実施例を説明するための平面図である。
図6A、
図6Bでは、飲み口形成構造18は、小開口部18A、小開口部18Aを覆う小蓋部18B、小開口部18Aの周囲を形成するベース部18D及び、小蓋部18Bを持ち上げる際の回転軸となるヒンジ部18Cで形成されている。小蓋部18Bはヒンジ部18Cを軸としてベース部18Dから持ち上げられると、小開口部18Aが露出する。この露出した小開口部18Aが飲み口となる。なお、飲み口形成構造18が形成されている場合には、
図6Aや
図6Bに示すように、小蓋部18Bにタブ部材19が取付けられていることが好ましい。
【0083】
第1の実施形態の変形例5にかかる蓋体10においては、飲み口形成構造18の小蓋部18Bを避けて天面部11の下面11Bに気液分離材42が配置されていることが好ましい。気液分離材42が小蓋部18Bを避けて配置されていることで、
図6Bの破線で示すように小蓋部18Bがヒンジ部18Cを軸として引き上げられても(
図6Bでは、タブ部材19の引き上げに伴って小蓋部18Bが引き上げられる)、小開口部18Aの近傍に気液分離材42の繊維43Aの切れ端が位置する状態を生じにくく、使用者が小開口部18Aに口を当てても繊維43Aに切れ端が使用者の口にあたりにくくなり、繊維43Aが使用者の口に触れることに伴う使用者の不快感を抑制することができる。
【0084】
(変形例6)
第1の実施形態にかかる蓋体10において、曲がり部12と側壁部13が設けられている場合に、
図8Aから
図8Bに示すように、曲がり部12が張出部226で構成されてもよい。また、張出部226の端部(内端部228A、外端部228B)のうち側壁部13に近いほうの端部(外端部228B)またはその近傍で凸部225が形成されていてもよい(変形例6)。この形態を、第1の実施形態の変形例6と称呼する。
図8Aは、第1の実施形態の変形例6の一実施例を示す平面図である。
図8Bは、第1の実施形態の変形例6の一実施形態を示す断面図である。
図8Aから
図8Bの例では、気液分離材42は、天面部11の一部の領域且つ天面部11のうち貫通部17を含む所定の領域に対して向かいあうように配置されている。
【0085】
(張出部)
図8Aから
図8Bに示す第1の実施形態の変形例6にかかる蓋体10の一例では、天面部11の外周端側の所定の領域が斜め上方向に突出した構造(張り出した構造)として張出部226が形成されているが、張出部226の張出方向は、上方向でもよいし、横方向(天面部11の平面方向)であってもよい。また、張出部226の内面226A側は、没入した部分(没入部227)となっている。没入部227の形状は、張出部226の形状に対応した形状となっている。これは、ブランク材50から蓋体10を形成する際の金型の形状に応じて実現することができる。没入部227の大きさは、容器101の縁部103を嵌め合わることができる程度の大きさであることが好ましい。没入部227の大きさがこのような大きさであると、蓋体付き容器150として蓋体10を用いた場合に、縁部103が没入部227におおむね入り込み、縁部103の外側端部分(
図20の例では縁部103のうちの外側周面部111)を没入部227に面接触させることが可能であり、容器101の縁部103にてしっかりと蓋体10を装着することが容易となる。
【0086】
(凸部)
図8Aから
図8Bの例に示すように、側壁部13に凸部225が形成されていてもよい。凸部225は、例えば、側壁部13の所定の位置に内側方向(中心CT方向、側壁部13の外周面13Bから内周面13Aに向かう方向)に突出した部分として定められる。凸部225は、側壁部13の内周面を周回するように条状に形成されている凸条部であることが好ましい。側壁部13の内周面側で凸部225の凸型構造が形成され、側壁部13の外周面13B側では凸型構造の形成された位置に対応する位置に凹部224が形成されてよい。このような構造が形成されていることで、側壁部13の形状をより安定化させることができる。
【0087】
(変形例7)
第1の実施形態の変形例6にかかる蓋体10においては、
図9Aから
図9Cに示すように、天面部11のみならず曲がり部12から張出部226及び凸部225まで、気液分離材42が配置されてもよい(変形例7)。この形態を、第1の実施形態の変形例7と称呼する。
図9Aは、第1の実施形態の変形例6の一実施例を示す平面図である。
図9Bは、第1の実施形態の変形例6の一実施形態を示す断面図である。
図9Cは、一点鎖線で示す領域EIの部分を拡大した状態を示す図である。
図9Aから
図9Cの例では、気液分離材42は、天面部11のうち貫通部17を含む所定の領域に対して向かいあう部分から、張出部226の内面側の領域、及び凸部225の内面側(容器101との対向面側)の突端近傍の位置まで連続的に配置されている。第1の実施形態の変形例5にかかる蓋体10によれば、蓋体付き容器150として蓋体10を用いた場合に、容器101の縁部103と張出部226の内面226A側との間に気液分離材42が存在した状態となり、縁部103と張出部226の内面226A側との間から液体が漏れる虞をより効果的に抑止することができる。
【0088】
(変形例8)
第1の実施形態にかかる蓋体10においては、気液分離材42を構成する紙系通気シート43は、
図2Aの例に示すように特におおまかな方向性を持たずに(配向することが規制された状態で)繊維43Aが配置されていてもよいが、
図2Bの例に示すように、繊維がおおむね所定の方向を向けられた状態で配置されてもよい(変形例8)。繊維43Aがおおまかに配向づけられた形態を、第1の実施形態の変形例8と称呼する。
図2Bは、第1の実施形態の変形例8の一実施例における気液分離材42を示す図である。
【0089】
気液分離材42を構成する紙系通気シート43に含まれる繊維43Aにおいては、複数の繊維43Aが配向している場合、繊維43Aの配向性は、おおむね一方向でもよいし、
図2Bに示すようにおおむね複数の方向(二方向等)でもよい。ここに繊維43Aが特定の方向に配向する場合は、全ての繊維43Aが特定の方向を長手方向とするように整列している場合に限定されず、繊維43Aの一部についてその長手方向が特定の方向からずれている場合も含まれる。また、紙系通気シート43は、紙系通気シート43の面方向に異なる位置における繊維密度の観点で、繊維密度の差(繊維密度の粗密)を有するものであってもよい。また、紙系通気シート43は、紙系通気シート43が繊維密度の差(繊維密度の粗密)を有するものである場合、紙系通気シート43の表面の形状について繊維密度が高い部分が凸部となり、繊維密度が低い部分が凹部となるような凹凸が形成されてもよい。
図2Bの例では、繊維密度の高い部分がおおむね格子状に形成されており、繊維密度の高い部分の周囲に繊維密度の低い部分が存在している。
【0090】
(変形例9)
第1の実施形態にかかる蓋体10においては、コーティング剤48の配置範囲は、気液分離材42と天面部11との対面する領域に限定されず、
図18Aから
図18Cに示すようその領域から外れた領域にもコーティング剤48の配置範囲が存在してもよい(変形例9)。この形態を、第1の実施形態の変形例9と称呼する。
図18Aから
図18Cは、第1の実施形態の変形例9の一実施例を示す図である。
図18Aから
図18Cでは、コーティング剤48は、差し込み口16の形成部分を除き、天面部11の全域となっており、コーティング剤48の一部で気液分離材42と天面部11とが接合されることで分離紙接合部49が形成されている。
【0091】
(変形例10)
第1の実施形態にかかる蓋体10においては、リサイクル性の観点を効果として重視すると、コーティング剤48の配置範囲はできる限り少ないほうが好ましいが、蓋体10の堅牢性の観点と堅牢な構造部に気液分離材42を安定的に接着する効果を重視した場合においては、コーティング剤48の配置範囲は気液分離材42と天面部11の一方面側の領域に限定されず、
図19Aから
図19Cに示すように天面部11の両面に形成されることも禁止されない(変形例9)。この形態を、第1の実施形態の変形例10と称呼する。
図19Aから
図19Cは、第1の実施形態の変形例10の一実施例を示す図である。
図19Aから
図19Cでは、コーティング剤48は、天面部11の対向面73と露出面72の両面の両面に配置されている。さらに、側壁部13に対応する部分までコーティング剤48が配置されてもよい。
図19Aから
図19Cでは、コーティング剤48の配置領域は、差し込み口16の形成部分を除き、天面部11の両面の全域となっており、コーティング剤48の一部で気液分離材42と天面部11とが接合されることで分離紙接合部49が形成されている。なお、変形例10にかかわらず、リサイクル性の観点からは、コーティング剤48が天面部11の両面に形成された場合にあっても、天面部11の一部にはコーティング剤48の非形成領域が存在することが好ましい。
【0092】
[2 第2の実施形態][2-1 構成]
第2の実施形態にかかる蓋体10Aは、
図10A、
図10Bに例示するように、天面部11と曲がり部12と側壁部13を有する。天面部11には、貫通部17や気液分離材42が設けられているが、第1の実施形態と同様でよいため、説明を省略する。
図10A、
図10Bは、第2の実施形態にかかる蓋体の一実施例を示す斜視図、断面図である。
図10Bにおいて、符号274は、容器101に取り付けられた場合に、容器101の縁部103に接する部分に対応する。符号274Aは、天面部11と縁部103が接する部分、符号274Bは、側壁部13と縁部103が接する部分を示す。このことは、
図11から
図13についても同様とする。
【0093】
第2の実施形態にかかる蓋体10Aにおいて、側壁部13は、天面部11の外周端に沿って、環状に形成されており、第1の実施形態で示した小壁部14や重なり部20の構成が省略されている。側壁部13は、下側に向かって(-Z方向に向かって)先細りする(横断面内径が小さくなる(縮径する))ように形成されているが、このような側壁部13を先細り形状とする点については第1の実施形態でも説明したように好ましい一例を示したものであり、側壁部13の形状をこれに限定するものではない。
【0094】
第2の実施形態にかかる蓋体10Aは、天面部11と側壁部13とが別体の部材で形成され、さらに天面部11を形成する部材と側壁部13を形成する部材とを接着することで具体的に製造することができる。
【0095】
例えば、第2の実施形態の蓋体10Aの形成例については、
図14A、
図14Bに示すように、天面部11を形成するための第1の部分231を有する天蓋部形成部材222と、側壁部13を形成するための側壁部形成部材223とが準備される。天蓋部形成部材222の第1の部分231外端部(外縁端部)に第2の部分232として側壁部形成部材223に接合可能に構成された接合代230が延設されている。天蓋部形成部材222の接合代230を側壁部形成部材223の上端部に接着することで、天蓋部形成部材222と側壁部形成部材223を接合することによって、曲がり部12を形成する。このとき蓋体10が形成される。この場合、ブランク材としては、
図14Aや
図14B等に示すように、天蓋部形成部材222と側壁部形成部材223を形成するためのブランク材(それぞれ第1のブランク材251、第2のブランク材252と称呼する)を用いることができる。天蓋部形成部材222を形成するための第1のブランク材251は、天面部11の形状に接合代230を合わせた形状に形成されたシート材が用いられてよい。第1のブランク材251には、貫通部17や気液分離材42が設けられていることが好適である。第2のブランク材252は、側壁部13の形状に応じた形状とされ、例えば側壁部13が先端に向かって縮径または拡径する形状である場合、扇状に形成された(部分扇型形状に形成された)シート材が用いられてよい。第2のブランク材252の両端の端縁部253、253を接合して、側壁部13を形成する側壁部形成部材223を得ることができる。
【0096】
[2-2 作用及び効果]第2の実施形態にかかる蓋体10Aによれば、第1の実施形態と同様に、貫通部17からの混合流体を構成する液体の漏れ出しを抑制でき且つリサイクル性に優れた蓋体を得ることができる。
【0097】
[3 第3の実施形態][3-1 構成]
第3の実施形態にかかる蓋体10Bは、
図11A、
図11Bに示すように、天面部11と側壁部13とを有する点及び容器101に嵌合可能である点では第1の実施形態と同様である。また、第3の実施形態において、天面部11には、貫通部17や気液分離材42が設けられているが、第1の実施形態や第2の実施形態と同様でよいため、説明を省略する。
図11A、
図11Bは、第3の実施形態にかかる蓋体の一実施例を示す斜視図、断面図である。
【0098】
第3の実施形態にかかる蓋体10Bは、側壁部13の一部が天面部11の上側と下側に延び出た構成を有している。側壁部13は、環状(筒状を含む)の形状を有し、上部壁205と下部壁206とを有している。下部壁206は、天面部11の下側に延び出た部分であり、上部壁205は、側壁部13のうち下部壁206を除く部分で構成される。
図11A、
図11Bの例では、側壁部13は、下側に向かって先細りするように形成されている。また、
図11A、
図11Bの例では、天面部11の所定の位置に貫通部17が形成されているがこれは一例である。
【0099】
(天蓋部と側壁部それぞれを形成する部材)第3の実施形態では、第2の実施形態にも示したように、天面部11と側壁部13とが別体の部材で形成されている。蓋体10Bは、
図11A、
図11Bの例では、上述した別体の部材として天蓋部形成部材222と側壁部形成部材223を有し、天蓋部形成部材222と側壁部形成部材223とを接合する接合部を有する。
【0100】
(天蓋部形成部材)天蓋部形成部材222は、天面部11に対応する第1の部分(天蓋部形成部材222の第1の部分231)と、第1の部分231の外周端から延び出た第2の部分(天蓋部形成部材222の第2の部分232)とを有しており、第2の部分232は、第2の実施形態に示した接合代230となっている。
図11Aの例では、天蓋部形成部材222の第2の部分232は、蓋体10の状態で第1の部分231の外周端から斜め上方向又は直上方向に立ち上がる部分(立ち上がり部)となっており、側壁部形成部材223に第2の部分232が接合された状態で第2の部分232は側壁部13の一部となっている。
【0101】
(側壁部形成部材)側壁部形成部材223は、環状(筒状を含む)に形成されており、上部壁205を形成する部分(上部形成部)と下部壁206を形成する部分(下部形成部)とを有する。上部形成部は、天蓋部形成部材222の第2の部分232となる接合代230に対して少なくとも外面側で接する部分(第1接触壁部233)を有する。
【0102】
図11A、
図11Bの例では、上部壁205(上部形成部)は、第1接触壁部233と、天蓋部形成部材222の第2の部分232となる接合代230に対して内面側で接する部分(第2接触壁部234)と、さらに第1接触壁部233及び第2接触壁部234を繋ぐ連続部235とを有し、連続部235は、天蓋部形成部材222の第2の部分となる接合代230の上端面を覆っている。第2接触壁部234の下端は、天蓋部形成部材222の第1の部分231の上面側に位置しており、
図11A、
図11Bの例では、第1の部分231からやや離間している。ただし、これは、一例であり。第2接触壁部234の下端は、天蓋部形成部材222の第1の部分231の上面側に接触していてもよい。
【0103】
図11A、
図11Bの例では、下部壁206(下部形成部)は、第1接触壁部233の下端を基端として下方向(
図11A、
図11Bでは斜め下方向)に延び出た部分となっている。下部壁206(下部形成部)は、例えば、上下方向の位置に関して天蓋部形成部材222の第1の部分231の下面の下側に位置していることが好適である。
【0104】
(ブランク材)第3の実施形態にかかる蓋体10Bは、ブランク材の加工によって形成することができる。ブランク材としては、天蓋部形成部材222と側壁部形成部材223を形成するためのブランク材(第2の実施形態で上述したようにそれぞれ第1のブランク材、第2のブランク材と称呼する)を用いることができる。
【0105】
天蓋部形成部材222を形成するための第1のブランク材は、第2の実施形態で上述した第1のブランク材251と同様のものを用いられよく、天面部11の形状にさらに接合代230を合わせた形状に形成されたシート材が用いられてよい。天蓋部形成部材222は、第1のブランク材を折り曲げ成形することによって、天面部11に対応する第1の部分231と立ち上がり部(接合代となる第2の部分232)とを形成することが好ましい。すなわち、第2の部分232は、第1のブランク材を第1の部分231の周縁の位置(接合代230の基端)で上側に曲げることで形成されていることが好ましい。
【0106】
側壁部形成部材223を形成するための第2のブランク材は、第2の実施形態で上述した第2のブランク材252と同様のものを用いられてよく、扇状に形成されたシート材が用いられてよい。第2のブランク材の端縁部を接合して環状体を形成する、環状体の上端側の部分を、連続部235に対応する位置で内側に折り返すことで、第1接触壁部233と第2接触壁部234と連続部235を形成するとともに、上部形成部(上部壁205に対応する構造部)を形成することができ、さらに下部形成部(下部壁206に対応する構造部)を形成することができる。上部形成部と下部形成部の形成により、側壁部形成部材223が形成される。なお、少なくとも第1接触壁部233と第2接触壁部234では、接合代230に接着される。
図11Bの例では、第1接触壁部233と第2接触壁部234と連続部235が接合代230に接着され、接着部が形成される。
【0107】
なお、蓋体10Bの製造のあたっては、第2のブランク材から形成された上述した環状体の状態で天蓋部形成部材222との接合を行うことが好ましい。すなわち天蓋部形成部材222の接合代230(第2の部分232)の下端が、環状体の内周面のうち、下部形成部と上部形成部の境界位置(上部壁205と下部壁206の境界位置)に位置合わせされ、接合代230を環状体の内周面に対面させる。さらに、上述したように環状体における連続部235に対応する位置で環状体の上端側の部分を内側に折り返すことで、接合代230を上端側から被覆する。そして、第1接触壁部233と第2接触壁部234に挟まれるように接合代230を側壁部形成部材223となる環状体に接合する。これにより、側壁部形成部材223が形成されるとともに蓋体10Bが得られる。
【0108】
[3-2 作用及び効果]第3の実施形態にかかる蓋体10Bによれば、第1の実施形態と同様に、貫通部17からの混合流体を構成する液体の漏れ出しを抑制でき且つリサイクル性に優れた蓋体を得ることができる。
【0109】
[4 第4の実施形態][4-1 構成]
第4の実施形態にかかる蓋体10Cは、
図12A、
図12Bに示すように、天面部11と側壁部13とを有する点及び容器に嵌合可能である点では第2の実施形態と同様である。また、第4の実施形態において、天面部11には、貫通部17や気液分離材42が設けられているが、第1の実施形態や第2の実施形態と同様でよいため、説明を省略する。
図12A、
図12Bは、第4の実施形態にかかる蓋体の一実施例を示す斜視図、断面図である。
【0110】
第4の実施形態にかかる蓋体10Cは、側壁部13の一部が天面部11の上側と下側に延び出た構成を有している。側壁部13は、環状(筒状を含む)の形状を有し、上部壁205と下部壁206とを有している。下部壁206は、天面部11の下側に延び出た部分であり、上部壁205は、側壁部13のうち下部壁206を除く部分で構成される。
図12A、
図12Bの例では、側壁部13は、下側に向かって先細りするように形成されている。また、
図12A、
図12Bの例では、天面部11の所定の位置に貫通部17が形成されているがこれは一例である。
【0111】
(天蓋部と側壁部それぞれを形成する部材) 第4の実施形態では、第2の実施形態や第3の実施形態に示したように、天面部11と側壁部13とが別体の部材で形成されている。蓋体10Cは、
図12A、
図12Bの例では、上述した別体の部材として天蓋部形成部材222と側壁部形成部材223を有し、天蓋部形成部材222と側壁部形成部材223とを接合する接合部を有する。
【0112】
(天蓋部形成部材)天蓋部形成部材222は、天面部11に対応する第1の部分(天蓋部形成部材222の第1の部分231)と、第1の部分231の外周端から延び出た第2の部分(天蓋部形成部材222の第2の部分232)とを有しており、第2の部分232は、第2の実施形態に示した接合代230となっている。
図12Aの例では、天蓋部形成部材222の第2の部分は、第1の部分231の外周端から斜め下方向又は直下方向に延びる部分(垂れ下がり部)となっており、側壁部形成部材223に第2の部分232が接合された状態で第2の部分232は側壁部13の一部となっている。
【0113】
(側壁部形成部材)側壁部形成部材223は、環状(筒状を含む)に形成されており、上部壁205を形成する部分(上部形成部)と下部壁206を形成する部分(下部形成部)とを有する。下部形成部は、天蓋部形成部材222の第2の部分232となる接合代230に対して少なくとも外面側で接する部分(下部第1接触壁部237)を有する。
【0114】
図12A、
図12Bの例では、下部形成部は、下部第1接触壁部237と、天蓋部形成部材222の第2の部分232となる接合代230に対して内面側で接する部分(下部第2接触壁部238)と、さらに下部第1接触壁部237及び下部第2接触壁部238を繋ぐ下端側連続部239とを有し、下端側連続部239は、天蓋部形成部材222の第2の部分232となる接合代230の下端面を覆っている。下部第2接触壁部238の上端は、天蓋部形成部材222の第1の部分231の下面(対向面73)側に位置しており、
図12A、
図12Bの例では、第1の部分231から離間していることが好ましい。、第1の部分と下部第2接触壁部238の上端との間に、容器101の縁部103(例えば、カール部の外周面の一部)が入り込むことが可能であることが好ましい。
【0115】
図12A、
図12Bの例では、上部壁205(上部形成部)は、下部第1接触壁部237の上端を基端として上方向(
図12Bでは、ななめ上方向)に延び出た部分となっている。上部壁205(上部形成部)は、例えば、上下方向の位置に関して天蓋部形成部材222の第1の部分231の上面の上側に位置していることが好適である。
図12A、
図12Bの例に示すように、上部形成部は、その上端側にカール部(側壁上端カール部236)が形成されていることが好ましい。この場合、上部形成部の上端に、ブランク材(側壁部形成部材223を形成するための第2ブランク材)の端面が露出した状態が形成されることを抑制することができ、使用者がブランク材の端面に口を添えて、容器101内の内容物を摂取する場合にあっても、使用者がブランク材の端面に口を接触させることに伴う不快感を抑制することができる。また、側壁上端カール部236が形成されていることで、側壁部13におけるブランク材の端面に対応する部分に液体が接触しにくくなる。
【0116】
(ブランク材)第4の実施形態にかかる蓋体10Cは、ブランク材の加工によって形成することができる。ブランク材としては、天蓋部形成部材222と側壁部形成部材223を形成するためのブランク材(第2の実施形態で上述したようにそれぞれ第1のブランク材、第2のブランク材と称呼する)を用いることができる。第1のブランク材及び第2のブランク材からなぐ群から選ばれた少なくとも1つのブランク材は、第2の実施形態で上述したように上述したブランク材と同様に形成されてよい。
【0117】
天蓋部形成部材222を形成するための第1のブランク材は、第2の実施形態で上述した第1のブランク材251と同様のものを用いられてよく、天面部11の形状にさらに接合代230を合わせた形状に形成されたシート材が用いられてよい。天蓋部形成部材222は、第1のブランク材を折り曲げ成形することによって、天面部11に対応する第1の部分231と、接合代230となる第2の部分232とを形成することが好ましい。すなわち、第2の部分232は、第1のブランク材を第1の部分231の周縁の位置で下方向に曲げることで形成されていることが好ましい。
【0118】
側壁部形成部材223を形成するための第2のブランク材は、第2の実施形態で上述した第2のブランク材252と同様のものを用いられてよく、扇状に形成されたシート材が用いられてよい。第2のブランク材の端縁部を接合して環状体を形成する。そして環状体の下端側の部分を、下端側連続部239に対応する位置で内側に折り返すことで、下部第1接触壁部237と下部第2接触壁部238と下端側連続部239を形成するとともに、下部形成部(下部壁206)を形成することができ、さらに上部形成部(上部壁205)を形成することができる。下部形成部と上部形成部の形成により、側壁部形成部材223が形成される。
【0119】
なお、蓋体10Cの製造のあたっては、第2のブランク材から形成された上述した環状体の状態で天蓋部形成部材222との接合を行うことが好ましい。天蓋部形成部材222の接合代230(第2の部分232)の上端が、環状体の内周面のうち、下部形成部と上部形成部の境界位置(上部壁205と下部壁206の境界位置)に位置合わせされ、接合代230を環状体の内周面に対面させる。さらに、上述したように環状体における下端側連続部239に対応する位置で環状体の下端側の部分を内側に折り返すことで、接合代230を下端側から被覆する。そして、下部第1接触壁部237と下部第2接触壁部238に挟まれるように接合代230を下部形成部(側壁部形成部材223を形成する環状体)に接合する(接着する)。これにより、側壁部形成部材223が形成されるとともに蓋体10Cが得られる。
【0120】
[4-2 作用及び効果]第4の実施形態にかかる蓋体10Cによれば、第1の実施形態と同様に、貫通部17からの混合流体を構成する液体の漏れ出しを抑制でき且つリサイクル性に優れた蓋体を得ることができる。
【0121】
上述した、第1の実施形態から第4の実施形態にかかる蓋体10、10A、10B、10Cは、後述する蓋体付き容器150の状態で、容器101に対して嵌合することで蓋体10と容器との接触部151を形成可能なものとなっている。本発明に適用可能な蓋体10は、このようなものに限定されず、次の第5の実施形態で述べるように、蓋体10が容器101に対して接合されることで接触部151を形成できるようなものであってもよい。この場合には、接触部151は、容器101と蓋体10とが相互に接着(粘着を含む)される部分となっていており、蓋体10と容器101とを分離するためには接触部151で蓋体10と容器101とを剥離することになる。
【0122】
[5 第5の実施形態][5-1 構成]
第5の実施形態にかかる蓋体10Dは、
図13Aから
図13Cに示すように、本体40を有する。本体40は、曲がり部12と側壁部13を省略されている点を除き、第1の実施形態で説明したように天面部11を形成している。第5の実施形態にかかる蓋体10Dは、蓋体付き容器150の状態で容器101に対して例えばヒートシール等で接合される(接着される)ものである。
【0123】
蓋体10は、接合領域対応部95Aを有する。また、蓋体10は、
図13Aに示すように、蓋領域対応部95Bと外側領域対応部95Cと、を有している。蓋領域対応部95Bは、開口部102を被覆する部分で構成される。外側領域対応部95Cは、蓋領域対応部95Bよりも外側部分で構成される。
【0124】
(接合領域対応部)
接合領域対応部95Aは、蓋体10Dのうち容器101の縁部103に沿って容器101に接合される領域に対応する部分である。すなわち、接合領域対応部95Aは、接触領域R(第5の実施形態に関しては容器101の縁部103に向かい合う領域且つ容器101に接合される領域)に対応した蓋体10Dの部分である。接合領域対応部95Aは、蓋体付き容器150においては、蓋体10Dのうち蓋体10Dと容器101との接触部151を形成する部分である。具体的には、蓋体10Dの平面視上(
図13Aから
図13Cの例ではZ軸方向(上下方向)を視線方向とした場合)、接触領域Rを形成する部分が接合領域対応部95Aとして定められる。接合領域対応部95Aは、通常、
図15Aに示すように環状に形成されている。特に、
図13Aに示すように、容器101の縁部103がおおむね円環状に形成されている場合には、接触領域Rが円環状となり、接合領域対応部95Aについても蓋体10の平面視上、おおむね円環状となる。接合領域対応部95Aの外縁は、接触領域Rの外縁の位置に応じて定められる。接合領域対応部95Aの外縁は、蓋体10の外周縁に位置していてもよいし(この場合、接合領域対応部95Aと外側領域対応部95Cが一致する)、
図13Aの例に示すように蓋体10の外周縁よりも内側に位置してもよい。蓋体10と容器101との接触領域Rが連続的に形成されていない場合には、隣り合う接触領域Rで挟まれた部分且つ縁部103に向かい合う部分についても後述する接合領域対応部95Aに含まれるものとする。
【0125】
(蓋領域対応部)
蓋領域対応部95Bは、開口部102を被覆する部分で構成される部分である。蓋領域対応部95Bは、
図13Aの例では、蓋体10のうち接合領域対応部95Aから内側の部分となっている。蓋領域対応部95Bは、蓋体付き容器150において開口部102を覆う部分となっている。なお、開口部102を覆う部分とは、開口部102の少なくとも一部を覆う部分であり、後述するように差し込み口16のような部分的に開口可能となる部分を有する場合が含まれる。
【0126】
(外側領域対応部)
なお、
図13Aの例に示すように、蓋体10の蓋領域対応部95Bの外側の部分は、外側領域対応部95Cであり、接合領域対応部95Aと同じ部分又は接触領域Rを含む部分となる。
【0127】
蓋体10の本体40においては、蓋領域対応部95Bは、蓋領域対応部95Bの外周縁である周端縁74から内側に貫通部17を有する。ただし、このことは貫通部17の一部が蓋領域対応部95Bの外側に形成されていることを禁止するものではない。貫通部の構成は、第1の実施形態と同様であるから詳細な説明を省略する。
【0128】
図13Aから
図13Cの例に示す蓋体10の本体40(天面部11)においては、蓋領域対応部95Bに対面するように気液分離材42が配置されている。蓋体10を対向面73側から露出面72に向」かう方向を視線方向とした場合に、第1の実施形態から第4の実施形態と同様に、気液分離材42は、貫通部17を覆うように配置される。気液分離材42と天面部11とがコーティング剤48で固定されている。気液分離材42、天面部11、コーティング剤48、及び貫通部17は、第1の実施形態で説明したことと同様であるから詳細な説明を省略する。
【0129】
[5-2 作用及び効果] 第5の実施形態にかかる蓋体10Dによれば、第1の実施形態と同様に、貫通部17からの混合流体を構成する液体の漏れ出しを抑制でき且つリサイクル性に優れた蓋体を得ることができる。
【0130】
[6.適用例]
(適用例1)
第1の実施形態から第4の実施形態の蓋体が用いられる場合には、蓋体は、
図15A、
図15Bに示すように蓋体付き容器150に用いることができる。
図15Aは、第1の実施形態にかかる蓋体10を、上端に形成された開口部102を有する容器101の開口部102の外周を形成する縁部103に取り付けた実施例を示す図である。この例では、蓋体10を縁部103に係止させた実施例が示されている。
図15Bは、
図15AのC-C線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
図15A、
図15Bを用いて蓋体付き容器150について説明を続ける。
【0131】
(蓋体付き容器)
蓋体付き容器150は、容器101と蓋体10とが接触する接触部151を有しており、接触部151を形成する蓋体10の領域が接触領域Rとなる。蓋体10は容器101に嵌合することで取付ることができる。(適用例1)の説明では、第1の実施形態にかかる蓋体10を蓋体付き容器150に使用した場合を例として説明する。
【0132】
容器101は、上方向にむかって径が太くなるような(下方向に向かって先細りするような)筒状の側壁104と底部107を有し内部に空間部105を形成する容器本体110と、容器本体110の上端(側壁104の上端)で開口した開口部102を有する。図示しないが、容器101の開口部102は円形状に形成されている。ただし、ここに示す容器101は一例であり、容器101の構成を限定するものではない。たとえば、容器101は開口部102を矩形状に形成されてもよい。容器101は、蓋体10で開口部102を被覆できるものであればよい。ただしこのような場合には、蓋体10の形状を容器101の形状に合わせた形状(例えば矩形状)とされることが好ましい。
【0133】
図15A、
図15B等に示す容器101では、開口部102の縁部103は、フランジ部を有している。フランジ部は、容器本体110を形成する部材を外向きに巻きまわされたカール部108であってもよいし、外側方向に平面上に延びる部分(つば部)として形成されてもよい。
【0134】
容器101の内部(空間部105)に収納されるものは、特に限定されず、例えば液体状のもの、固形状のものと液体を含むもの、液体に気体を混合や溶解させたもの(炭酸水など)、またはそれらの組み合わせなどを例示することができるが、気体と液体とを含む混合流体を内容物とする(または内容物に含む)場合に本発明の蓋体は特に効果を発揮することが可能である。すなわち、液体等の流動体を内容物とする場合に容器の開口部から外方向に混合流体が吹き上げられてくる場合があり、容器内から混合流体を構成する液体が漏れ出すという問題が生じる。
【0135】
蓋体付き容器150においては、気体と液体とを分離する特別の構造が設けられているため、容器101内から混合流体を構成する液体が漏れ出すという問題が抑制される。さらに、気体と液体とを分離する特別の構造が、気液分離材42という紙材料で構成されており、天面部11も紙材料で形成されているため、蓋体のリサイクル性を向上することができる。
【0136】
(適用例2)
蓋体10として、第5の実施形態の蓋体10Dが用いられる場合には、蓋体付き容器150は、接触部151を形成する蓋体10の領域(接触領域R)で、蓋体10は容器101に接合することで容器101に蓋体10Dを取り付けることができる。接合方法としては、超音波溶着やヒートシール法等を用いることができる。容器101の縁部103には一般的に樹脂層が形成されていることが多く、このような場合には、蓋体10と容器101との間に特に、接着剤となる物質を介在させなくとも蓋体10Dと容器101を超音波溶着やヒートシール法などの方法を用いて接合することができる。ただし、このことは、蓋体10Dと容器101とが接触する接触部151が、蓋体10Dと容器101との間に接着剤となる物質(例えばデンプン糊等)を用いて接着することで形成されることを禁止するものではない。
【0137】
(適用例3)
本発明にかかる蓋体10は、開口部102を有する容器101との組み合わせとされてもよい。
【0138】
[7.フィルターの例]
容器の内容物として液体を他の成分から分離するフィルターには、紙を用いたものとして、ろ紙等が存在しているが、ろ紙等は、液体と個体とを分離するものであり、一般的に、外部に噴き出そうとする「気体と液体の混合流体」を対象とするものではなかった。本発明の蓋体10に使用される気液分離材42は、気体と液体の混合流体を対象としたフィルターとして用いることができる。このようなフィルターは、気体と液体の混合流体から気体をおおむね分離することができる。
【0139】
これまで説明したように、本発明は、このような多くの態様に対して適用することができる。また、上記した以外の態様の店舗や包材用部材の提供方法に対しても適用することが可能である。以上、本発明に係る蓋体について詳細に説明したが、上記したのは本発明係る蓋体を例示したに過ぎず、これらに限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更してよい。また、上記した発明の構成は、それぞれの例の発明の構成を独立して用いてもよいし、それぞれの例の発明の構成を適宜組み合わせて適用してもよい。
【0140】
次に、蓋体の形態としての形態Aについてさらに説明を続ける。形態Aとは、第5の実施形態の蓋体10Dから気液分離材42を省略した構造を有する蓋体の形態を示す。
【0141】
上述した、第5の実施形態にかかる蓋体10Dの例(
図13Aから
図13Cに示す一例)について、天面部11のうち接合領域対応部95Aでは、気液分離材42の配置が避けられている。第1の実施形態で示すように、天面部11は、紙系素材で構成されている紙系基材41を有することが好ましく、紙系基材41にはコーティング層の形成が避けられていることが好ましい。天面部11が、紙系素材で構成され、且つコーティング層の形成が避けられている場合、天面部11のうち少なくとも接合領域対応部95Aは、紙系素材を構成する繊維が表面に露出した状態となる。上述の適用例2でも述べたように容器101の縁部103に一般的に形成される樹脂層を活用して、ヒートシール法や超音波溶着法等の方法等の各種の接着方法を用いることによって蓋体10Dと容器101とを接着する場合、天面部11のうち少なくとも接合領域対応部95Aで紙系素材を構成する繊維が表面に露出していると、容器101の樹脂層を構成する樹脂の種類による蓋体10Dと容器101との接着性の低下の影響を抑えつつ、蓋体10Dと容器101との接着を実現することができる。また、接合領域対応部95Aにおいて紙系素材を構成する繊維が表面に露出していると、蓋体10Dと容器101との接着を強固とすることができる。そして、このような効果は、蓋体10Dから気液分離材42を省略した場合についても実現することができる。さらに、蓋体10Dから気液分離材42を省略した場合の蓋体は、リサイクル性をさらに向上させることができ、すなわちこのような蓋体は、リサイクル性の観点において第1の実施形態等を同様の効果を得ることができる。また、蓋体を構成する紙系素材に液体を吸収及び/又は付着させることで蓋体付き容器からの内容物の液体の漏出を多少抑えることも可能である。
【0142】
そこで、上述したように第5の実施形態の蓋体10Dから気液分離材42を省略した構造を有する蓋体の形態を形態Aと称呼し、形態Aの例として、形態A1と形態A2について説明を続ける。本明細書においては、形態A1と形態A2の両形態を区別しない場合には、形態Aの称呼を用いた総称する。以下の形態Aの説明について、形態A1、形態A2、形態Aの適用例の順に説明する。
【0143】
[8.蓋体の形態(形態A1)]
[8-1 構成]
形態A1にかかる蓋体300Aは、
図20Aから
図20Bに示すように、第5の実施形態の蓋体10Dから気液分離材42を省略した構造となっている。すなわち、形態A1にかかる蓋体300Aは、蓋体10Dから気液分離材42を省略した他の構成については、第5の実施形態と同じ構成を有してよい。形態A1にかかる蓋体300Aは、本体290を有する。本体290は、気液分離材42を省略されている点を除き、第5の実施形態における本体40と同様の構造を有してよい。形態A1では、本体290は、天面部291を有しており、天面部291は、第5の実施形態でも説明した天面部11と同様に紙系基材41を有する。形態A1にかかる蓋体300Aは、蓋体付き容器150の状態で容器101に対して例えばヒートシール等で接合される(接着される)ものである。すなわち、形態A1にかかる蓋体300Aは、繊維として複数の紙繊維を有する紙系基材41を有する本体290を備え、上端に形成された開口部102と前記開口部102の外周を形成する縁部103とを有し且つ表面に樹脂層(樹脂コート層)を有する容器101に対して接合可能(樹脂コート層を介して接触可能)に形成される。前記本体290は、前記容器101の前記縁部103に沿って前記容器に接合させようとする領域として定められた接合領域に対応する接合領域対応部295Aを有し、前記紙系基材41の前記表面を露出した部分を有し、且つ、少なくとも前記接合領域対応部5Aの少なくとも一部(紙系基材41の前記表面を露出した部分)に前記樹脂コート層(容器101の樹脂コート層)が接着することができるように構成されている、
【0144】
なお、図 の例では、本体290においては、貫通部の構成が省略されているが、形態A1にかかる蓋体300Aについては、貫通部の構成が省略されている場合に限定されるものではない。また、
図20A、
図20Bには、符号298、299が記載されているが、符号298は、露出面、符号299は対向面を示す。露出面298は、第1の実施形態から第5の実施形態に示す露出面72と同様に定義され、対向面299は、第1の実施形態から第5の実施形態に示す対向面73と同様に定義される。また、
図20A、
図20Bには、符号RNが記載されているが、符号RNは、接合領域を示す。接合領域RNは、第5の実施形態に示す接触領域Rと同様のエリアにて定めることができる。
図20A、
図20Bに示す符号CTは、蓋体300Aの中心(中央位置)である。
【0145】
上述したように、形態A1にかかる蓋体300Aの本体290は、第1の実施形態等でも説明した紙系基材41、すなわち紙系素材で構成されている紙系基材41を有することが好ましい。形態A1にかかる蓋体300Aでは、本体290を構成するために用いる紙系基材41にはコーティング層の形成が避けられていることが好ましい。本体290は、紙系基材41で構成され、且つコーティング層の形成が避けられていることが好適である。上述したように、本体290が、紙系基材41で構成され、且つコーティング層の形成が避けられている場合、本体290の天面部291のうち少なくとも接合領域対応部295Aは、紙系素材を構成する繊維が表面に露出した状態となる。なお、
図20A、
図20Bの例では、接合領域対応部295Aだけでなく蓋領域対応部295Bについても紙系素材を構成する繊維が表面に露出している。
【0146】
図20A、
図20Bの例では、接合領域対応部295Aのほか蓋領域対応部295Bが本体290に存在しており、蓋領域対応部295Bは、第5の実施形態で説明した接合領域対応部95A及び蓋領域対応部95Bと同様に定められる。したがって、形態A1の説明では、接合領域対応部295A及び蓋領域対応部295Bの説明を省略する。また、
図20A、
図20Bには、外側領域対応部295Cが示されている。外側領域対応部295Cは、第5の実施形態で説明した外側領域対応部95Cと同様に定められる。したがって、形態A1の説明では、外側領域対応部295Cの説明を省略する。
【0147】
(凹凸)
本体290の天面部291のうち紙系素材を構成する繊維が表面に露出した状態となっている部分では、
図21A、
図21Bに示すように、天面部291の表面に、微細な凹凸292が多数形成される。本体290を形成するために用いられる紙系基材41においては、紙系基材41を構成する繊維が様々な方向や形状(湾曲形状や折れ曲がり形状)等を有した状態で、これらの繊維が重なり合う。このため本体290の表面の位置によって繊維の重なり合う状態に違いを生じる。微細な凹凸292は、本体290の表面の位置の違いによって相対的に突出した部分292Aや、相対的に陥没した部分292Bが形成されることに伴い形成される部分となっている。すなわち凹凸292が部分292Aと部分292Bの組み合わせで構成される。なお、
図21Aでは、部分292Aと部分292Bに対応する領域がそれぞれ異なるハッチングで表示され、部分292Aと部分292Bのおおむね境界として定める部分(部分292Aの突出端と部分292Bの陥没端との中間部分(本体290の厚み方向を基準とした中間部分))が実線で表示されている。
図21A、
図21Bは、それぞれ
図20Aの破線で囲まれた領域XR1、
図20Bの破線で囲まれた領域XR2を拡大した状態を示すが、拡大率は統一されていない。
【0148】
[8-2 作用及び効果]
蓋体が蓋体付き容器に適用される場合、容器は、一般的に容器本体の内面側に樹脂層が形成される。容器本体は、側壁を形成するための第1のブランク材を筒状に形成した筒状体とし、且つ、底部を形成するための第2のブランク材を筒状体の内周面側の所定位置に配置することで形成することができるものである。第1のブランク材の2つの側端部を重ねて筒状に形成した筒状体の形状を固定するために側端部を固定する際、樹脂層(樹脂コート層)が用いられることがある。この場合、第1のブランク材という1つの部材における異なる2つの場所を固定するために樹脂コート層が用いられるため、異なる部材の接着性を考慮する必要性が認識されなかった。容器と蓋体とを別体で形成した場合には、容器と蓋体との接着は、異なる部材の接着に該当するため、接着性の考慮が要請される。従来の蓋体では、蓋体に樹脂層を設け、容器と蓋体との接着を行うことが考えられてきた。この場合、特定の容器と蓋体については接着性が高いが、別の容器と蓋体との接着性については低下するという課題を生じていた。
【0149】
これに対して、形態A1にかかる蓋体300Aによれば、容器101の縁部103に一般的に形成される樹脂層を活用して、ヒートシール法や超音波溶着法等の方法等の各種の接着方法を用いることによって、
図22A、
図22Bに示すように、接合領域対応部295Aで容器101を接着した状態をより確実に形成することができる。接合領域対応部295Aのうち容器101との対向面側が樹脂層でコーティングされている場合には、容器101の樹脂層を構成する樹脂の種類による蓋体300Aと容器101との接着性の低下の影響を考慮する必要があるが、接合領域対応部295Aにおいて紙系素材を構成する繊維が表面に露出した状態であることで、蓋体300Aと容器101との接着性の低下の影響を抑えることが可能となる。なお、
図22Bには、破線で囲まれた領域XRAの部分を拡大した状態もあわせて示す。
【0150】
図20A、
図20Bに示す形態A1にかかる蓋体300Aの例では、少なくとも接合領域対応部295Aにおいて、
図21A、
図21Bに示すように紙系基材41を構成する繊維が表面に露出した状態となり、且つ、繊維が表面に露出した部分で凹凸292が形成されている。
図20A、
図20Bに示す例では、さらに蓋領域対応部295Bについても紙系基材41を構成する繊維が表面に露出した状態となり、且つ、繊維が表面に露出した部分で凹凸292が形成されている。形態A1にかかる蓋体300Aによれば、
図22A、
図22Bに示すように、容器101の縁部103に一般的に形成される樹脂層(樹脂コート層120)と接合領域対応部295Aとが接する場合に、樹脂層(樹脂コート層120)と凹凸292とが接触するため、本体290の表面に凹凸292が存在しない場合に比較して、樹脂層と接合領域対応部295Aとの接触面積が広くなり、樹脂層と接合領域対応部295Aとがより強く接着した状態が形成される。
【0151】
次に形態A2について述べる。具体的には、形態A2についての第1の形態例から第5の形態例を挙げて説明する。
【0152】
[9 蓋体の形態(形態A2)]
[9-1.形態A2についての第1の形態例]
[(1)構造]
形態A2にかかる蓋体300Bは、蓋本体(本体303)を有する。本体303は、容器本体410を備えた容器401の容器本体410に対して接着性物質302を介して接合可能に形成される。容器本体410は、
図25A、
図25Bに示すように、上端に形成された開口部402と開口部402の外周を形成する縁部403とを有する。
図25A、
図25Bは、
図23Aから
図23Bに示す蓋体300Bを容器401に接合した蓋体付き容器450の例を示す斜視図、断面図である。蓋体300Bは、縁部403に沿って接合されて用いることができるものである。蓋体300Bにおいて、蓋体300Bの平面視上、縁部103に接合される領域を接合領域RAと呼ぶ。
図23Aは、蓋体300Bの一実施例を示す平面図である。
図23Bは、
図23AのA-A線縦断面の状態を示す断面図である。なお、容器401としては、開口部402の縁部403に可撓性を有するものがより好ましく用いられる。ただし、これらのことは容器401が、金属製の容器など可撓性の少ないあるいはほとんど認められないような容器であることを禁止するものではない。
【0153】
接合領域RAは、
図23Aから
図23Bの例では、容器401の開口部402に応じた形状で開口部402に沿っておおむね環状に形成される領域に対応している。接合領域RAは、上記した第5の実施形態や形態A1等の接触領域Rと同様の領域として定めることができる。
【0154】
形態A2の説明において、上記した第1の実施形態や形態A1等と同様に、本体303と容器本体410とを接着性物質302を介して接合させた状態を想定した場合に、本体303の面のうち、容器401に対する対向面となるほうの面を対向面373(蓋体付き容器450の状態で容器401に向かい合う方をむいた面)とし、対向面373に背反する面を露出面372(蓋体付き容器450の状態で外側に露出する方の面)と称呼する。
【0155】
本体303のほか、蓋体300Bや蓋領域対応部305B等の他の構成についても、露出面372と同様の方向を向いた面を露出面と称呼し、対向面373と同様の方向を向いた面を対向面と称呼することがある。
【0156】
(本体)
本体303は、繊維306として複数の紙繊維306Aを有する紙系基材304を有する。紙系基材304を有するとは、紙系基材304を含む、又は紙系基材304から形成されることを示す。本体303は、その表面に確実に紙繊維306Aを露出させる観点からは、紙系基材304から形成されることが好適である。本体303は、例えば紙系基材304で構成されたシートを所定の形状に成形した(加工した)ブランク材を製造することによって得ることができる。
【0157】
(繊維)
なお、繊維306とは、紙系基材304の平面視上、電子顕微鏡又は光学顕微鏡を用いて拡大倍率50倍程度で観察した場合に細長い形状を有するものとして認識することができる程度の構造物を示すものとする。
【0158】
(紙系基材)
紙系基材304は、上記した第1の実施形態や形態A1等の紙系基材41と同様に構成されてよいが、繊維306として複数の紙繊維306Aを有するシートであることが好適である。紙繊維306Aは、パルプから形成された繊維を示す。「パルプ」には、パルプ繊維及びパルプを原料とする繊維(再生繊維等)を含む。紙系基材304は、紙繊維だけからなるもののほか、非パルプ系の天然繊維や合成繊維、再生繊維等の繊維を含むものであっても良いが、紙繊維を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むものがより好ましく、更に80質量%以上含むものが好ましいが、特に紙繊維100質量%からなるものが好ましい。紙系基材は、紙繊維の他に、不織布、木箔等の木質系素材等、さらにはアルミ箔等の素材との複合材料も用いることができるが、複合材料とする場合、複合材料全体として紙繊維を50質量%以上含有することが好ましく、特に80質量%以上の紙繊維を含むものが好ましい。紙繊維含有比率の高いほど、紙系基材304が生分解されやすくなるため好ましい。
【0159】
本体303や紙系基材304は、各種樹脂が含まれていないことが好適であるが、各種樹脂が含まれることを完全には禁止されるものではない。ただし、本体303や紙系基材304が各種樹脂を含む場合においては、環境負荷軽減の観点からは、蓋体300Bの全質量に対する質量比率で1質量%未満であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましい。また、本体303や紙系基材304は、各種樹脂が含まれる場合あっても、各種樹脂の中でも環境汚染の問題のより少ない生分解性樹脂が選択されることが好ましい。生分解性樹脂としては、上述した第1実施形態にかかる蓋体10の説明においても述べたが、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)やPHA系共重合体等の微生物生産系生分解性樹脂;酢酸セルロース等のセルロース誘導体やトウモロコシデンプン等の澱粉を主原料とした澱粉系樹脂等の天然物系生分解性樹脂;ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸/ポリカプロラクトン共重合体、ポリ乳酸/ポリエーテル共重合体等の乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)等のサクシネート系樹脂、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール(PVA)等の化学合成系生分解性樹脂等、その他、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、生分解性ポリオレフィン(商品面:Biorecover、商品名;Cra Drop等)が挙げられる。
【0160】
蓋体300Bにおいて、本体303は、容器101の縁部103に沿って容器101に接合させようとする領域として定められた接合領域RAに対応する接合領域対応部305Aと、接合領域対応部305Aから内側(
図23において中央位置(中心CT)に向かう方向側)の部分で構成される蓋領域対応部305Bとを有する。本体3は、
図23に示すように、蓋領域対応部305Bの外側の部分として定められる外側領域対応部305Cを有してよい。接合領域対応部305A、蓋領域対応部305B及び外側領域対応部305Cは、次に述べるように、上記した第5の実施形態や形態A1等のそれぞれ接合領域対応部95A、蓋領域対応部95B及び外側領域対応部95Cと同様の部分として定めることができる。
【0161】
(接合領域対応部)
接合領域対応部305Aは、上述したように蓋体300Bのうち容器401の縁部403に沿って容器401に接合される領域に対応する部分である。すなわち、接合領域対応部305Aは、接合領域RA(容器401の縁部403に向かい合う領域且つ容器401に接合される領域)に対応した蓋体300Bの部分である。接合領域対応部305Aは、蓋体付き容器150においては、蓋体300Bのうち蓋体300Bと容器401との接合部451を形成する部分である。具体的には、蓋体300Bの平面視上(
図23の例ではZ軸方向(上下方向)を視線方向とした場合)、接合領域RAを形成する部分が接合領域対応部305Aとして定められる。接合領域対応部305Aは、通常、
図23に示すように環状に形成されている。特に、
図23に示すように、容器401の縁部403がおおむね円環状に形成されている場合には、接合領域RAが円環状となり、接合領域対応部305Aについても蓋体300Bの平面視上、おおむね円環状となる。接合領域対応部305Aの外縁は、接合領域RAの外縁の位置に応じて定められる。接合領域対応部305Aの外縁は、蓋体300Bの外周縁に位置していてもよいし(この場合、接合領域対応部305Aと外側領域対応部305Cが一致する)、
図23の例に示すように蓋体300Bの外周縁よりも内側に位置してもよい。蓋体300Bと容器401との接合領域RAが連続的に形成されていない場合には、隣り合う接合領域RAで挟まれた部分且つ縁部403に向かい合う部分についても後述する接合領域対応部305Aに含まれるものとする。
【0162】
(蓋領域対応部)
蓋領域対応部305Bは、開口部402を被覆する部分で構成される部分である。蓋領域対応部305Bは、
図23Aの例では、蓋体300Bのうち接合領域対応部305Aから内側の部分となっている。蓋領域対応部305Bは、蓋体付き容器450において開口部402を覆う部分となっている。なお、開口部402を覆う部分とは、開口部402の少なくとも一部を覆う部分であり、後述するように差し込み口319のような部分的に開口可能となる部分を有する場合が含まれる。
【0163】
(外側領域対応部)
なお、
図23Aの例に示すように、蓋体300Bの蓋領域対応部305Bの外側の部分は、外側領域対応部305Cであり、接合領域対応部305Aと同じ部分又は接合領域RAを含む部分となる。
【0164】
(受入れ構造)
紙系基材304は、繊維306を重ねた構造を有するため、その表面に
図24Aに示すような細かな凹凸構造307を有することがある。紙系基材304には、凹凸構造307の少なくとも一部に、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において接着性物質302が紙系基材304の表面に配置された繊維306(対向面373側で露出する繊維)よりも露出面372側に向かって入り込むことができるような受入れ構造308を有する。
【0165】
受入れ構造308としては、重畳構造309を例示することができる。重畳構造309のような受入れ構造308は、紙系基材304の製造時において紙系基材304を構成する繊維306の密度・坪量や交絡の強さを制御すること等で形成することが可能である。また、重畳構造309のような受入れ構造308は、紙系基材304の表面(特に、対向面373側の面)をやや荒らす処理(粗面化する処理)を施すことで形成されてもよい。
【0166】
(重畳構造)
紙系基材304は、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において接着性物質302が紙系基材304の表面に配置された繊維306よりも露出面372側に向かって入り込むことができるように繊維306が重なった構造(蓋体300Bの平面視上において繊維306の少なくとも一部が重なるような配置となる構造)として定められる重畳構造309(繊維の非密着部を有する重畳構造)を有してもよい。重畳構造309は、例えば、
図24Cに示すように間隔を有した状態で交差する繊維306、306の交差部分に形成されることや、
図24Bの例に示すように部分的に互いに接する繊維306、306が徐々に離間する部分等に形成される。
【0167】
蓋体300Bにおいては、
図24Bに示すように、紙系基材304の重畳構造309の少なくとも一部が、接合領域対応部305Aの表面のうち対向面373側の面の少なくとも一部に露出している。
【0168】
(受入れ構造の分布)
対向面373において、受入れ構造308は、
図29Cに示すように接合領域対応部305Aの一部に集中して存在している場合に限定されず、
図29Aに示すように接合領域対応部305Aの領域のおおむね全域に存在してもよい(接合領域対応部305Aの表面全域に分散的に存在してもよい)。また、受入れ構造308は、さらに蓋領域対応部305Bの少なくとも一部の領域に存在してもよい。また、紙系基材304の受入れ構造308は、
図29Bに示すように蓋領域対応部305Bのおおむね全域にも存在してもよい(蓋領域対応部305Bの表面全域に分散的に存在してもよい)。なお、
図29Aから
図29Cにおいて、符号P1、P2、P3、P4・・・で示す点に対応する位置が、受入れ構造308の位置を示すものとする。
【0169】
(立ち上がり構造)
紙系基材304は、繊維306が立ち上がった構造として形成される立ち上がり構造310を有してもよい。立ち上がり構造310は、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において接着性物質302が紙系基材304の表面に配置された繊維306よりも露出面372側に向かって入り込むことができるように形成されていることが好ましい。
【0170】
蓋体300Bにおいては、紙系基材304の立ち上がり構造310の少なくとも一部が、接合領域対応部305Aの表面のうち対向面373側の面の少なくとも一部に露出していることが好適である。
【0171】
立ち上がり構造310の分布は、受入れ構造308の分布と同様に、接合領域対応部305Aの一部に集中して存在している場合に限定されず、接合領域対応部305Aの表面のおおむね全域に存在してもよい(接合領域対応部305Aの表面全域に分散的に存在してもよい)。また、立ち上がり構造は、さらに蓋領域対応部305Bの少なくとも一部の領域に存在してもよい。また、紙系基材の立ち上がり構造310は、接合領域対応部305Aの他に、蓋領域対応部305Bのおおむね全域にも存在してもよい(蓋領域対応部305Bの表面全域に分散的に存在してもよい)。
【0172】
立ち上がり構造310の一部が、上記した重畳構造309を兼ねてもよい。また、立ち上がり構造310が、後述する第1の繊維部311と第2の繊維部312の位置関係や形状に応じて上記した重畳構造309に繋がっていてもよい。
図27Aの例では、第2の繊維部312は、その一方端側の所定部分BCは重畳構造309を形成する部分となり、所定部分BCと他方端側の所定部分FRは立ち上がり構造310を形成する部分となっている。立ち上がり構造310は、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において、
図27Bに示すように維持されてもよいし、
図27Cを参照しながら後述する第2の実施形態でも示すように崩されてもよい。
【0173】
また立ち上がり構造310は、全体として上記した重畳構造309を兼ねてもよい。例えば、
図24Bの例では、露出面372側に位置する繊維306で構成される第1の繊維部311(後述する第2の繊維部312よりも内側にある繊維)と、第1の繊維部311よりも紙系基材304の厚み方向に沿って対向面373側に位置する繊維で構成される第2の繊維部312(紙系基材304の表面に配置された繊維)を有している。そして、紙系基材304の表面に配置された繊維(第2の繊維部312)が、第2の繊維部312よりも内側にある繊維(第1の繊維部311)に対して斜め方向(やや-Z方向側)に立ち上がっており(立ち上がり構造310が形成されており)(
図24Bの図面上においては、斜め下方向に垂れており)、本体303の平面視上においては第1の繊維部311と第2の繊維部312が少なくとも一部で重なった状態となっている(重畳構造309が形成されている)。したがって、第1の繊維部311と第2の繊維部312で形成された構造が、立ち上がり構造310と重畳構造309のいずれも形成する。
【0174】
図24Bの例では、第1の繊維部311と第2の繊維部312の間に隙間314が形成されており、隙間314は、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において接着性物質302が紙系基材304の表面に配置された繊維306(
図24Bでは第2の繊維部312)よりも露出面372側(
図24Bでは第1の繊維部311側)に向かって入り込むことができる程度の大きさとなっている。
【0175】
なお、
図24Bの例は、第1の繊維部311と第2の繊維部312は一つ形成されているが、蓋体300Bの平面視上(本体303の平面視上)、第1の繊維部311と第2の繊維部312は、隙間314を形成したエリアを重畳エリア(
図28A、
図28Bにおいて符号OVLで示す)とした場合に、
図28Bに示すように、重畳エリアOVLに位置する第2の繊維部312が複数存在してもよい(
図28Bにおいては、第2の繊維部312として第2―1の繊維部312A、第2-2の繊維部312B、第2-3の繊維部312Cが形成される)。また、
図28Aに示すように、重畳エリアOVLに位置する第1の繊維部311として、第2の繊維部312とともに隙間314を形成する繊維部が複数存在してもよい(
図28Aにおいては、第1の繊維部311として第1―1の繊維部311A、第1-2の繊維部311B、第1-3の繊維部311Cが形成される)。
【0176】
(接着剤物質)
接着性物質302は、本体303と容器本体410とを接着することができる物質である。接着性物質302としては、熱可塑性樹脂等の樹脂や接着剤等を例示することができる。接着性物質302は、容器本体に予め形成された樹脂層420(樹脂コート層)であることがより好ましい。ただし、このことは、接着性物質302が、本体303や容器本体410とは別に本体303と容器本体410との間に介在させる物質であることを禁止するものではない。一般的に、樹脂層420としては、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いられることが多く、接着性物質302が容器本体に予め形成された樹脂層420(樹脂コート層)であることで、ヒートシール法で蓋体300Bと容器401とを接着させる場合に、樹脂層420で蓋体300Bと容器401とを接着させることができる。すなわち樹脂層420を接着性物質302として機能させることが可能である。
【0177】
(表面粗さ)
紙系基材304は、少なくとも一部の接合領域対応部305Aにおける表面粗さ(最大高さRz)(μm)が所定の値以上であることが好ましい。紙系基材304の面において表面粗さが異なる場合、表面粗さの大きい面は、対向面373を形成することが好ましい。本体303を構成する紙系基材304の表面粗さが大きなものを採用される場合、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において接着性物質302が紙系基材304の表面に配置された繊維306と接着性物質302との接触面積をより大きくすることができ、蓋体300Bと容器401との接合力を高めることができる。
【0178】
[(2) 作用及び効果]
従来、カップ等の容器類や蓋等に例示される包装用部材は、特許文献である特開2021-84646号公報に示すように、これまでコストや成形性等の観点でプラスチック製のものを汎用されてきた。プラスチックについては、環境負荷の大きさが問題となっている。特に、石油系の合成樹脂等といった通常の合成プラスチックには廃棄処分後において自然分解されずに自然界に長期間残ってしまう課題が認められていた。この課題に対して、包装用部材の素材としてプラスチックを使用する場合においても、生分解性プラスチックを用いることが検討されてきた。しかしながら、生分解性プラスチックは、通常の合成プラスチックと比較した場合に、自然分解性を有するものの、コスト面での改善を強く要請される。こうした点に鑑み、包装用部材には、プラスチックに比べて環境負荷の少ない素材(非プラスチック系素材)として紙系の素材を用いることが検討されている。紙系の素材を用いて包装用部材を得る方法としては、例えば、紙系基材に基づきブランク材を得て、ブランク材の加工によって包装用部材を得るという方法が挙げられる。
【0179】
包装用部材が蓋体であり、蓋体が紙系基材としてのシート(紙シート)から形成されたブランク材を加工することで得られたものである場合においては、耐水性を向上させるために両面に樹脂層を形成したシートで蓋体を形成することも考えられる。しかしながら、容器の表面には、通常、容器の防水用に樹脂層として樹脂コート層が形成されているため、樹脂層を構成する樹脂材料の材質によっては樹脂コート層を構成する樹脂との接着性が損なわれ、シール法で容器と蓋体とを接着することが困難になる虞を生じうる。したがって、容器の表面に形成された樹脂コート層を構成する樹脂の種類が多様化しても容器と蓋体とをヒートシール法で接着することを可能とする点で改善の余地がある。すなわち、蓋体には、容器の表面に形成された樹脂層(樹脂コート層)を構成する樹脂の種類が多様であってもシール法で容器と蓋体とを接着することを可能とする点で改善を要請されてきた。
【0180】
このような従来の技術や改善の要請は、形態Aにかかる蓋体いずれに対しても対応することである。そして、形態Aにかかる蓋体(例えば、上述した形態A1の蓋体や形態A2の蓋体)によれば、容器の表面に形成された樹脂層(樹脂コート層)を構成する樹脂の種類が多様であってもシール法で容器と蓋体とを接着することが可能となる。
【0181】
そして、形態A2にかかる蓋体300Bによれば、蓋体300Bの本体303が紙系基材304から構成され、更に重畳構造9を有しているため、蓋体300Bを容器401に取り付ける際にヒートシール法が適用された場合に、容器401の縁部403表面に形成された樹脂層420を構成する樹脂が、紙系基材304の表面に配置された繊維306よりも露出面372側に向かって入り込み、さらに重畳構造309に露出した繊維(例えば第2の繊維部312)に接合することができ、樹脂層420と蓋体300Bとの接着状態をより高めることも可能となる。すなわち、非プラスチック系の素材としてのヒートシール性を有する紙系基材を用いた蓋体を得ることができる。さらには、後述する適用例でも述べるように、非プラスチック系の素材としてのヒートシール性を有する紙系基材を用いた蓋体を用いた蓋体付き容器や、蓋体と容器の組み合わせを得ることができるようになる。
【0182】
[(3) 変形例]
(変形例1)
第1の形態例にかかる蓋体300Bには、適宜加工を施されてもよい。加工の内容としては、例えば、本体303に機能を付与するための構成を追加することや、本体303に別の部材を接合させること等を例示することができる。
【0183】
第1の形態例にかかる蓋体300Bには、例えば、
図33A、
図33Bに示すように、差し込み口319が形成されてもよい。このように構成された蓋体の例を、第1の実施形態の変形例1と称呼する。
図33A、
図33Bは、第1の実施形態の変形例1にかかる蓋体300Bの一実施例を模式的に示す平面図、断面図である。また
図33Bは、
図33AのC-C線縦断面の状態を模式的に示す図である。
【0184】
(差し込み口)
差し込み口319は、蓋体300Bを蓋体付き容器450に使用された場合において外部から容器401内に各種の部材を差し込み可能な構造部であり、差し込み可能な部材としては例えばストロー等が例示される。差し込み口319は、少なくとも蓋領域対応部305Bに形成されており、
図33A、
図33Bの例では、貫通部で形成されている。貫通部は、本体303の一方面(露出面372)から他方面(対向面373)まで上下方向(厚み方向、Z軸方向)に切り込まれた構造(貫通させた構造)を有しており、いわゆる切り込み部318である。なお、この貫通部は、ガス抜き部として機能させることができる。ここに、ガス抜き部とは、蓋体300Bの一方面側から他方面側(対向面373側から露出面372側)に気体を通過させることができる部分を示す。
【0185】
(変形例2)
第1の形態例にかかる蓋体300Bにおいては、定められてた領域に対して撥水化処理を施されてもよい(変形例2)。
【0186】
(撥水化処理)
第1の形態例の変形例2で適用可能な撥水化処理は特に限定されず、例えば、処理液に紙系基材304を浸漬し、浸漬された紙系基材304を引き上げた後、乾燥させる方法を挙げることができる。また、撥水化処理は、紙系基材304の表面に処理液を塗布する方法を挙げることができる。なお、塗布する方法としては、具体的に印刷法等を例示することができる。印刷法としては、ロールコート、スプレーコート等のコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷等を例示することができる。
【0187】
処理液は、撥水化剤を有する液を例示することができる。撥水化剤は、例えば、フッ素系撥水化剤や、ワックス類などを例示することができる。
【0188】
[9-2 形態A2についての第2の形態例]
[(1)構造]
第2の形態例にかかる蓋体300Bは、
図27Cに示すように、紙系基材304の立ち上がり構造310を形成する第2の繊維部312が本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた場合において第2の繊維部312が第1の繊維部311側に曲がって重畳構造309を形成するような構成を有する他の点については、第1の形態と同じ構成を有する。
図27Cは、第2の形態例の一例を説明するための拡大断面である。
【0189】
(第2の繊維部)
第2の繊維部312は、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させる前の状態では、
図27Aに示すように、第1の繊維部311から離れる方向(
図27Aではやや-Z方向)に立ち上がった部分(
図27Aにおいては、図面上、斜めに垂れた部分)を有する。第2の繊維部312は、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた場合には、
図27Cに示すように、全体的に第1の繊維部311側に近づきつつも、第1の繊維部311と第2の繊維部312との隙間314は存在した状態となる。本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた場合では、第1の繊維部311と第2の繊維部312とで重畳構造309が形成される。なお、本第1の繊維部311と第2の繊維部312との間に形成される隙間314の大きさに関しては、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させる前後いずれにおいても、接着性物質302が隙間314内に向かって入り込むことができる程度の大きさが維持される。
【0190】
[(2) 作用及び効果]
第2の形態例にかかる蓋体によれば、第1の形態例と同様の効果が得られる。
【0191】
[9-3 形態A2についての第3の形態例]
[(1) 構造]
第3の形態例にかかる蓋体300Bは、
図30A、
図30Bに示すように、紙系基材304の立ち上がり構造310を形成する第1の繊維部311と第2の繊維部312の間に空間部315が形成された構成を有する他の点については、第1の形態例と同じ構成を有する。
図30A、
図30Bは、第3の形態例の一例を説明するための拡大断面図である。
【0192】
(空間部)
空間部315は、外部から樹脂(接着性物質302等)を受入れ可能な開口部分を有している。
図30Aの例では、図面を記載する紙面の表裏方向に開口部分が形成されており、紙面の面方向においては、第1の繊維部311と第2の繊維部312で空間部315は、閉じた空間となっている。第3の実施形態では、空間部315の大きさは、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において接着性物質302が開口部分から空間部315内に向かって入り込むことができる程度の大きさとなっている。
【0193】
[(2) 作用及び効果]
第3の形態例にかかる蓋体によれば、第1の形態例と同様の効果が得られる。
【0194】
[9-4 形態A2についての第4の形態例]
[(1) 構造]
第4の形態例にかかる蓋体300Bは、
図31A、
図31Bに示すように、第1の繊維部311と第2の繊維部312が繋がっており、且つ、前記第1の繊維部311と第2の繊維部312で枝分かれ部316が形成されている他の点については、第1の形態例と同じ構成を有する。
図31A、
図31Bは、第4の形態例の一例を説明するための拡大断面図である。
【0195】
(枝分かれ部)
枝分かれ部316は、外部から樹脂を受入れ可能(接着性物質302等)な開口部分を有している。
図31Aの例では、第1の繊維部311と第2の繊維部312の隙間314の一方端を開口させており、隙間314の他方端側が第1の繊維部311と第2の繊維部312の繋がる部分(連結部316A)となっている。また、枝分かれ部316は、重畳構造309を兼ねている。第3の実施形態では、枝分かれ部316に形成される第1の繊維部311と第2の繊維部312の隙間314は、重畳構造309と同様に、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において接着性物質302が紙系基材304の表面に配置された隙間314内に向かって入り込むことができる程度の大きさとなっている。
【0196】
[(2) 作用及び効果]
第4の形態例にかかる蓋体によれば、第1の形態例と同様の効果が得られる。
【0197】
[9-5 形態A2についての第5の形態例]
[(1) 構造]
第5の形態例にかかる蓋体300Bは、
図32A、
図32Bに示すように、紙系基材304の重畳構造309を形成する第1の繊維部311と第2の繊維部312の間に第3の繊維部313が介在する構成を有する他の点については、第1の形態例と同じ構成を有する。第5の形態例では、第1の繊維部311と第3の繊維部313の隙間(第1の隙間314A)及び第3の繊維部313と第2の繊維部312の隙間(第2の隙間314B)のいずれについても、本体303を容器本体410に接着性物質302を介して接合させた状態において接着性物質302が紙系基材304の表面に配置された繊維306よりも露出面372側に向かって(すなわち第1の隙間314A内及び第2の隙間314B内に)入り込むことができる程度の大きさとなっている。
【0198】
[(2) 作用及び効果]
第5の形態例にかかる蓋体300Bによれば、第1の形態例と同様の効果が得られる。
【0199】
本発明にかかる蓋体においては、上記した第1の形態例から第5の形態例に示した構成は適宜組み合わされてもよい(共存してもよい)。すなわち、本発明にかかる蓋体においては、例えば、第1の形態例に示す第1の繊維部と第2の繊維部の構成と、第2の形態例に示す第1の繊維部と第2の繊維部の構成が共存してもよい。
【0200】
[9-6 形態A2の蓋体の適用例]
上記のように説明した蓋体300Bは、
図25A、
図25Bに示すように蓋体付き容器450に用いることができる。
図25Aは、蓋体300Bを、上端に形成された開口部402を有する容器401の開口部402の外周を形成する縁部403に接合させた実施例を示す斜視図である。
図25Bは、
図25Aの線縦断面の状態を模式的に示す断面図である。
図25A、
図25Bを用いて蓋体付き容器450について説明を続ける。
【0201】
(蓋体付き容器)
蓋体付き容器450は、容器401と蓋体300Bとが接合する接合部451を有しており、接合部451を形成する蓋体300Bの領域が接合領域RAとなる。蓋体300Bと容器401との接合方法は特に限定されず、熱融着法(ヒートシール)等の接合方法と適宜用いることができる。以下では第1の実施形態にかかる蓋体300Bを蓋体付き容器450に使用した場合を例として説明する。
【0202】
容器401は、上方向にむかって径が太くなるような(下方向に向かって先細りするような)筒状の側壁404と底部407を有し内部に空間部405を形成する容器本体410と、容器本体410の上端(側壁404の上端)で開口した開口部402を有する。図示しないが、容器401の開口部402は円形状に形成されている。ただし、ここに示す容器401は一例であり、容器401の構成を限定するものではない。たとえば、容器401は開口部402を矩形状に形成されてもよい。容器401は、蓋体300Bで開口部402を被覆できるものであればよい。また、容器401の内部(空間部405)に収納されるものは、特に限定されず、例えば液体状のもの、またはそれらと固形状のものの組み合わせなどを例示することができる。
【0203】
図25A等に示す容器101では、開口部402の縁部403は、フランジ部を有している。フランジ部は、容器本体410を形成する部材を外向きに巻きまわされたカール部408であってもよいし、外側方向に平面上に延びる部分(つば部)として形成されてもよい。
【0204】
容器401においては 容器本体410は、少なくとも縁部403の表面に樹脂層420を形成していることが好ましい。
図26Cの例では、容器本体410の内周面406から縁部403の表面まで全域的に樹脂層420が形成されている。この場合、樹脂層420は、接着性物質302として機能することが可能となるような樹脂であることが好ましい。このように構成されている場合、樹脂層420を接着性物質302として機能させることができる。すなわち、容器401の上に別途準備された接着剤等を塗布することなく蓋体をヒートシール等で容器401に接着することが可能である。なお、容器本体410に樹脂層420が形成されている場合、少なくとも縁部403の表面に樹脂層420を形成していればよく、容器本体410の内周面406には樹脂層420が省略されてよい。また、容器本体410は、紙繊維を有するシート材を加工することにより形成されたものであってもよい。このような場合、
図26B等にも示すように、容器本体410は、紙繊維などの繊維421を有する。
【0205】
また、蓋体300Bは、開口部402を有する容器401との組み合わせとされてもよい。
【0206】
形態A2の蓋体300Bについて、実施例を挙げて更に説明を続ける。
【実施例0207】
実施例1
図23に示すような蓋体と、容器を準備し、ヒートシール法を用いて蓋体付き容器を得た。容器としては、紙繊維を有するシート材を加工することにより形成された容器本体に対して縁部の表面及び内周面の領域(全領域)に連続的に樹脂層を形成しているものが用いられた。容器の形状は、
図25A、
図25Bに示すような形状のものが採用された。ヒートシール法の適用時の温度は200℃とした。
【0208】
得られた蓋体付き容器における縁部と蓋体との接合部分について電子顕微鏡(拡大倍率は100倍)で観察した。結果を
図34に示す。
図34中、符号A1は、容器の容器本体を示し、符号B1は、蓋体の本体を示す。符号C1は、樹脂層を示し、符号C2は樹脂層を構成する樹脂を示す。符号B2、B3は、第1の繊維部、第2の繊維部を示し、符号B4は隙間を示す。これにより、蓋体を構成する繊維(第1の繊維部B2と第2の繊維部B3)の隙間B4に樹脂層C1を構成する樹脂C2が入り込んでいることが確認され、また、樹脂層C1が接着性物質として機能していることが確認された。
【0209】
これまで説明したように、本発明に係る蓋体は、このような多くの態様(実施形態1から5や形態A)の蓋体に対して適用することができる。また、上記した以外の態様の蓋体(蓋体10、蓋体300A、蓋体300B等)に対しても適用することが可能である。以上、本発明に係る蓋体について詳細に説明したが、上記したのは本発明係る蓋体を例示したに過ぎず、これらに限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更してよい。また、上記した蓋体の構成は、それぞれの例の蓋体の構成を独立して用いてもよいし、それぞれの例の蓋体の構成を適宜組み合わせて適用してもよい。例えば、形態A2に示す構成と第5の実施形態とが組み合わされてもよい。
【0210】
以上の本明細書の説明に基づき、本発明は、次の[E1]から[E11]に示す構成を採用されてよい。
[E1]開口部と前記開口部を形成する縁部とを有する容器に対して取り付けられることが可能となるように構成されており、前記容器に取り付けられた場合に、前記開口部を覆う天面部を有し、
前記天面部は、紙系材料で構成されている紙系基材と、前記紙系基材を貫通する貫通部と、気相と液相とを有する混合流体から前記気相の気体と少なくとも一部の前記液相の液体とを分離可能な気液分離材と、熱可塑性を有するコーティング剤とを備え、
前記気液分離材は、長繊維を含み且つ通気性を有する紙系通気シートを有し、少なくとも前記紙系通気シートの一方の面に、前記紙系通気シートに対して撥液性を付与する撥液を配置しており、
前記気液分離材は、前記紙系基材の平面視上、前記貫通部の少なくとも一部を覆うよう
に配置されており、
前記コーティング剤が、前記気液分離材と前記紙系基材を接着している、
蓋体。
[E2]前記撥液剤は、撥水剤である、上記[E1]に記載の蓋体。
[E3]前記紙系通気シートは、不織布である、上記[E1]又は[E2]に記載の蓋体。
[E4]前記長繊維は、紙繊維である、上記[E1]から[E3]のいずれか1つに記載の蓋体。
[E5]前記撥液剤は、前記長繊維の少なくとも一部に接着されている、上記[E1]から[E4]のいずれか1つに記載の蓋体。
[E6]前記撥液剤は、前記紙系通気シートの内部にも配置されている、上記[E1]から[E5]のいずれか1つに記載の蓋体。
[E7]前記気液分離材は、前記貫通部に対応して定められた位置に切込部及び/又はハーフカット部を形成されている、上記[E1]から[E6]のいずれか1つに記載の蓋体。
[E8]前記気液分離材は、前記長繊維を主成分として含む、上記[E1]から[E7]のいずれか1つに記載の蓋体。
[E9]上記[E1]から[E8]のいずれか1つに記載の蓋体と、
上端に形成された前記開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有する前記容器とを有し、
前記蓋体を前記容器に接合した、
蓋体付き容器。
[E10]上記[E1]から[E8]のいずれか1つに記載の蓋体と、
上端に形成された前記開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有する前記容器とを有する、
蓋体と容器の組み合わせ。
【0211】
以上の本明細書の説明に基づき、本明細書には、本発明として、次の[F1]から[F17]に示す気液分離材が把握される。
[F1]紙系材料で構成されている紙系基材と、前記紙系素材を貫通する貫通部と、気相と液相とを有する混合流体から前記気相の気体と少なくとも一部の前記液相の液体とを分離可能な気液分離材と、熱可塑性を有するコーティング剤とを備えた気液分離材。
[F2]前記撥液剤は、撥水剤である、上記[F1]に記載の気液分離材。
[F3]前記紙系通気シートは、不織布である、上記[F1]又は[F2]に記載の気液分離材。
[F4]前記長繊維は、紙繊維である、上記[F1]から[F3]のいずれか1つに記載の気液分離材。
[F5]前記撥液剤は、前記長繊維の少なくとも一部に接着されている、上記[F1]から[F4]のいずれか1つに記載の気液分離材。
[F6]前記撥液剤は、前記紙系通気シートの内部にも配置されている、上記[F1]から[F5]のいずれか1つに記載の気液分離材。
[F7]前記気液分離材は、前記長繊維を主成分として含む、上記[F1]から[F6]のいずれか1つに記載の気液分離材。
【0212】
また、本明細書の形態A(形態A1及び形態A2)にかかる蓋体に関する説明に基づき、本発明は、次に示す[G1]から[G7]の構成を採用されてよい。
[G1]
上端に形成された開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有する容器本体を備えた容器の前記容器本体に対して接着性物質を介して接合可能に形成され、且つ、繊維として複数の紙繊維を有する紙系基材を有する本体を備え、
前記本体は、前記容器の前記縁部に沿って前記容器に接合させようとする領域として定められた接合領域に対応する接合領域対応部と、前記接合領域対応部から内側の部分で構成される蓋領域対応部とを有し、
前記本体と前記容器本体とを前記接着性物質を介して接合させた状態を想定し、前記本体の面のうち、前記容器に対向する面となるほうの面を対向面とし、前記対向面に背反する面を露出面とした場合に、
前記紙系基材は、前記本体を前記容器本体に前記接着性物質を介して接合させた状態において前記接着性物質が前記紙系基材の表面に配置された前記紙繊維よりも前記露出面側に向かって入り込むことができるように前記紙繊維が重なった重畳構造を有し、
前記紙系基材の前記重畳構造の少なくとも一部が、前記接合領域対応部の表面のうち前記対向面側の面の少なくとも一部に露出している、
蓋体。
上端に形成された開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有する容器本体を備えた容器の前記容器本体に対して接着性物質を介して接合可能に形成され、且つ、繊維として複数の紙繊維を有する紙系基材を有する本体を備え、
前記本体は、前記容器の前記縁部に沿って前記容器に接合させようとする領域として定められた接合領域に対応する接合領域対応部と、前記接合領域対応部から内側の部分で構成される蓋領域対応部とを有し、
前記本体と前記容器本体とを前記接着性物質を介して接合させた状態を想定し、前記本体の面のうち、前記容器に対向する面となるほうの面を対向面とし、前記対向面に背反する面を露出面とした場合に、
前記紙系基材は、前記本体を前記容器本体に前記接着性物質を介して接合させた状態において前記接着性物質が前記紙系基材の表面に配置された前記紙繊維よりも前記露出面側に向かって入り込むことができるように前記紙繊維が重なった重畳構造を有し、
前記紙系基材の前記重畳構造の少なくとも一部が、前記接合領域対応部の表面のうち前記対向面側の面の少なくとも一部に露出している、
蓋体。
[G2]
前記紙系基材の前記重畳構造は、前記露出面側に位置する前記繊維で構成される第1の繊維部と、前記第1の繊維部よりも前記紙系基材の厚み方向に沿って内側に位置する前記繊維で構成される第2の繊維部と、前記第1の繊維部と前記第2の繊維部の間に形成された空間部を有し、
前記本体を前記容器本体に前記接着性物質を介して接合させた場合に、少なくとも一部の前記空間部に前記接着性物質が入り込む、
上記[G1]に記載の蓋体。
[G3]
前記紙系基材の前記重畳構造は、前記露出面側に位置する前記繊維で構成される第1の繊維部と、前記第1の繊維部よりも前記紙系基材の厚み方向に沿って前記対向面側に位置する前記繊維で構成される第2の繊維部とを有し、
前記第1の繊維部と前記第2の繊維部が繋がっており、
前記第1の繊維部と前記第2の繊維部で枝分かれ部が形成されている
上記[G1]または[G2]に記載の蓋体。
[G4]
上記[G1]から[G3]のいずれか1つに記載の蓋体と、
上端に形成された前記開口部を有する前記容器本体を備えた前記容器と、有し、
前記蓋体を前記容器に前記接着性物質を介して接合した、
蓋体付き容器。
[G5]
前記容器本体は、少なくとも前記縁部の表面に樹脂層を形成しており、
前記接着性物質は、前記樹脂層を構成する樹脂である、
上記[G4]に記載の蓋体付き容器。
[G6]
上記[G1]から[G3]のいずれか1つに記載の蓋体と、
上端に形成された前記開口部を有する前記容器本体を備えた前記容器と、有し、
前記容器本体は、少なくとも前記縁部の表面に樹脂層を形成しており、
前記樹脂層は、前記接着性物質として機能することが可能となるような樹脂である、
蓋体と容器の組み合わせ。
[G7]
繊維として複数の紙繊維を有する紙系基材を有する本体を備え、
上端に形成された開口部と前記開口部の外周を形成する縁部とを有し且つ表面に樹脂コート層をする容器に対して接合可能に形成されており、
前記本体は、前記容器の前記縁部に沿って前記容器に接合させようとする領域として定められた接合領域に対応する接合領域対応部を有し、前記紙系基材の前記表面を露出した部分を有し、且つ、少なくとも前記接合領域対応部の少なくとも一部に前記樹脂コート層が接着することができるように構成されている、
蓋体。