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特開2024-177690鋼管先受け工法、削孔機械及び鋼管持上装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177690
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】鋼管先受け工法、削孔機械及び鋼管持上装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20241217BHJP
   E21B 7/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095967
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523067137
【氏名又は名称】DSIニッシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391066157
【氏名又は名称】ドリルマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】西島 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】永井 敏実
(72)【発明者】
【氏名】小川 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D054
2D129
【Fターム(参考)】
2D054AB07
2D054AC20
2D054FA07
2D054GA10
2D129AA09
2D129AB08
2D129AB09
2D129AB20
2D129DA22
2D129DC15
2D129DC42
2D129EA02
2D129EA05
2D129EA21
2D129EB29
2D129EB39
2D129EC03
2D129EC06
(57)【要約】
【課題】施工の効率を向上する。
【解決手段】トンネル1の掘進方向前方の地山3に鋼管5を継ぎ足しながら打ち込む鋼管先受け工法である。削孔しながらガイドセル21に設置した鋼管5を地山3に打ち込むことが可能な削孔装置20を用いて、トンネル1の切羽2における所定位置から鋼管5を打ち込む打込工程と、打込工程の完了後に削孔装置20を打込工程での位置に維持した状態とし、鋼管5を持ち上げ可能な鋼管持上装置15によって新たな鋼管5を持ち上げてガイドセル21に設置する設置工程と、打込工程により打ち込んだ鋼管5と、設置工程によりガイドセル21に設置した新たな鋼管5と、を連結する連結工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの掘進方向前方の地山に鋼管を継ぎ足しながら打ち込む鋼管先受け工法において、
削孔しながらガイドセルに設置した鋼管を前記地山に打ち込むことが可能な削孔装置を用いて、前記トンネルの切羽における所定位置から鋼管を打ち込む打込工程と、
前記打込工程の完了後に前記削孔装置を前記打込工程での位置に維持した状態とし、鋼管を持ち上げ可能な鋼管持上装置によって新たな鋼管を持ち上げて前記ガイドセルに設置する設置工程と、
前記打込工程により打ち込んだ鋼管と、前記設置工程により前記ガイドセルに設置した前記新たな鋼管と、を連結する連結工程と、を含むことを特徴とする鋼管先受け工法。
【請求項2】
トンネルの地山に鋼管を継ぎ足しながら打ち込むことが可能な削孔機械であって、
削孔しながらガイドセルに設置した鋼管を前記地山に打ち込むことが可能な削孔装置と、
前記鋼管を打ち込む位置にある前記削孔装置へ新たな鋼管を持ち上げて前記ガイドセルに設置することを可能とする鋼管持上装置と、を備えることを特徴とする削孔機械。
【請求項3】
作業員が搭乗可能であるとともに、前記鋼管を打ち込む位置にある前記削孔装置に隣接した位置へ移動可能なマンゲージを備え、
前記マンゲージに、前記鋼管持上装置を備えることを特徴とする請求項2に記載の削孔機械。
【請求項4】
前記削孔装置は、
前記ガイドセルに、前記打ち込んだ鋼管と、前記新たな鋼管と、を連結するための連結装置を備え、
前記鋼管を打ち込む際に、当該鋼管の端部が前記連結装置における連結可能な位置に達したことを検出可能な検出手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の削孔機械。
【請求項5】
前記ガイドセルに設置された前記新たな鋼管の端部を、前記連結装置における連結可能な位置に送り出すための送出手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の削孔機械。
【請求項6】
請求項2に記載の削孔機械に用いられる鋼管持上装置であって、
前記鋼管を搭載可能な搭載部と、
前記搭載部をワイヤーロープにより吊るとともに、当該ワイヤーロープを巻き上げることで前記搭載部を上昇させることが可能な巻上装置と、を備え、
前記巻上装置は、
巻き上げ可能な範囲における最上部まで前記搭載部を巻き上げた状態において当該搭載部と嵌合し、当該搭載部の揺動を抑制する嵌合部を備えることを特徴とする鋼管持上装置。
【請求項7】
前記搭載部は、
搭載した前記鋼管を当該搭載部に固定する固定手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の鋼管持上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管先受け工法、削孔機械及び鋼管持上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを掘進する際の地山の補強方法として、削孔装置によってトンネルの掘進方向前方の地山に鋼管を継ぎ足しながら打ち込む鋼管先受け工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-156117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋼管を継ぎ足す際には、削孔装置を施工位置から地面へ降ろして新たな鋼管を積み込み、再び施工位置へ戻す作業が必要であるため施工の効率が低下していた。また、施工位置へ戻した際には、先に打ち込んだ鋼管との位置合わせが必要であり、施工の効率が低下していた。本発明の目的は、施工の効率を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
トンネルの掘進方向前方の地山に鋼管を継ぎ足しながら打ち込む鋼管先受け工法において、
削孔しながらガイドセルに設置した鋼管を前記地山に打ち込むことが可能な削孔装置を用いて、前記トンネルの切羽における所定位置から鋼管を打ち込む打込工程と、
前記打込工程の完了後に前記削孔装置を前記打込工程での位置に維持した状態とし、鋼管を持ち上げ可能な鋼管持上装置によって新たな鋼管を持ち上げて前記ガイドセルに設置する設置工程と、
前記打込工程により打ち込んだ鋼管と、前記設置工程により前記ガイドセルに設置した前記新たな鋼管と、を連結する連結工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、
トンネルの地山に鋼管を継ぎ足しながら打ち込むことが可能な削孔機械であって、
削孔しながらガイドセルに設置した鋼管を前記地山に打ち込むことが可能な削孔装置と、
前記鋼管を打ち込む位置にある前記削孔装置へ新たな鋼管を持ち上げて前記ガイドセルに設置することを可能とする鋼管持上装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の削孔機械であって、
作業員が搭乗可能であるとともに、前記鋼管を打ち込む位置にある前記削孔装置に隣接した位置へ移動可能なマンゲージを備え、
前記マンゲージに、前記鋼管持上装置を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の削孔機械であって、
前記削孔装置は、
前記ガイドセルに、前記打ち込んだ鋼管と、前記新たな鋼管と、を連結するための連結装置を備え、
前記鋼管を打ち込む際に、当該鋼管の端部が前記連結装置における連結可能な位置に達したことを検出可能な検出手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の削孔機械であって、
前記ガイドセルに設置された前記新たな鋼管の端部を、前記連結装置における連結可能な位置に送り出すための送出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、
請求項2に記載の削孔機械に用いられる鋼管持上装置であって、
前記鋼管を搭載可能な搭載部と、
前記搭載部をワイヤーロープにより吊るとともに、当該ワイヤーロープを巻き上げることで前記搭載部を上昇させることが可能な巻上装置と、を備え、
前記巻上装置は、
巻き上げ可能な範囲における最上部まで前記搭載部を巻き上げた状態において当該搭載部と嵌合し、当該搭載部の揺動を抑制する嵌合部を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の鋼管持上装置であって、
前記搭載部は、
搭載した前記鋼管を当該搭載部に固定する固定手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、施工の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】施工中のトンネルに削孔機械を配置した状態を説明する図である。
図2】鋼管持上装置により鋼管を持ち上げた状態を説明する図である。
図3】鋼管持上装置により鋼管を持ち上げた状態を説明する図である。
図4】セントラライザーの斜視図である。
図5】セントラライザーの斜視図である。
図6】本発明に係る鋼管先受け工法の工程を説明する図である。
図7】本発明に係る鋼管先受け工法の工程を説明する図である。
図8】本発明に係る鋼管先受け工法の工程を説明する図である。
図9】本発明に係る鋼管先受け工法の工程を説明する図である。
図10】本発明に係る鋼管先受け工法の工程を説明する図である。
図11】本発明に係る鋼管先受け工法の工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態はAGF工法に代表されるような鋼管先受け工法に係るものであり、図1に示すような削孔機械10により、トンネル1の切羽2から掘進方向前方の地山3を削孔しながら鋼管5を打ち込むことで地山3を補強するものである。この鋼管先受け工法では、鋼管5は複数本を継ぎ足しながら打ち込むようにしており、先の鋼管5の打ち込みが完了した後に新たな鋼管5を先の鋼管5に連結し、再度打ち込むことを繰り返すことで所望の長さの鋼管5を地山3に打ち込むようになっている。
【0015】
削孔機械10は、トンネル1の地面4を走行可能な走行台車11を備え、作業員が搭乗可能なマンゲージ14と、削孔しながら鋼管5を前記地山に打ち込むことが可能な削孔装置20と、を備える。
マンゲージ14と削孔装置20は、走行台車11にブーム12を介して設けられており、ブーム12を動作することにより移動可能となっている。
マンゲージ14と削孔装置20は、走行台車11の左右に一組ずつ設けられており、走行台車11の右側に設けられたマンゲージ14と削孔装置20により主に切羽2の右側部分の施工を行い、走行台車11の左側に設けられたマンゲージ14と削孔装置20により主に切羽2の左側部分の施工を行うようになっている。
【0016】
マンゲージ14の側部であってトンネル1の側壁に近い側となる側部には、継ぎ足すための鋼管5を削孔装置20へ持ち上げるための鋼管持上装置15が設けられている。鋼管持上装置15は、マンゲージ14の中心よりも走行台車11に近い側である後側に設けられており、マンゲージ14の中心に対して切羽2から離れた位置となるように設けられている。
図2図3に示すように鋼管持上装置15は、鋼管5を搭載可能な搭載部60と、ワイヤーロープ68を介して搭載部60を吊り上げることが可能な巻上装置70と、を備える。
【0017】
搭載部60の下部には、鋼管5を下側から支持可能な支持爪61が鋼管5の延在方向に並ぶように3本設けられている。支持爪61は、削孔装置20が位置する側へ延出するように設けられており、削孔装置20が位置する側へ鋼管5を出し入れ可能とされている。
また、両端の支持爪61の間に位置する支持爪61は、両端の支持爪61の中間地点よりも切羽2に近い前側となる位置に設けられている。
【0018】
鋼管持上装置15はマンゲージ14に設けられているので、搭乗した作業員に近い位置で鋼管5の設置や確認を行うことができ、施工の効率を向上させることができる。また、鋼管持上装置15はマンゲージ14の中心よりも切羽2から離れた後側に設けられており、搭乗した作業員は鋼管持上装置15の前側からの方が作業や確認を行いやすいことから、両端の支持爪61の中間地点よりも前側にずらして設けられている。
【0019】
また、前側の端部に位置する支持爪61の側部には搭載した鋼管5の脱落を防止するための固定部材62が設けられている。この固定部材62は、鋼管5の外径より大きい内径を有するリング状の部材を上下に分割することで、下側の部材である下半部62aと、上側の部材である上半部62bとに分かれた構造となっている。
【0020】
下半部62aは側面が支持爪61の側部に固定されており、鋼管5を搭載した際に下半部62aの上に鋼管5が位置するようになっている。
下半部62aと上半部62bにおけるマンゲージ14に近い側の端部は、搭載する鋼管5の延在方向に沿う回動軸を有するヒンジを介して接続されており、上半部62bが鋼管5の上側から退避した状態と、鋼管5の上側に掛け渡された状態とに変換可能となっている。
また、下半部62aと上半部62bにおけるマンゲージ14から遠い側の端部には、下半部62aと上半部62bとを着脱可能に連結する連結部材62cが設けられており、上半部62bを鋼管5の上側に掛け渡した状態で下半部62aと連結することで鋼管5を搭載部60に固定できるようになっている。このような固定部材62を備えることで鋼管5の搭載部60からの脱落を防止でき、安全に施工を行うことが可能となる。
【0021】
搭載部60の上部には、ワイヤーロープ68を掛けるための掛通部65が設けられている。掛通部65は、鋼管5の延在方向に沿うように設けられた角柱状の部材であり、両端部にワイヤーロープ68を案内するプーリー66が設けられている。
巻上装置70から延出するワイヤーロープは、掛通部65の一端のプーリー66の下側を通って他端のプーリー66の下側に至り、さらに巻上装置70へ至るように掛けられている。これにより、搭載部60が鋼管5の延在方向に並ぶ2本のワイヤーロープ68により吊り下げられた状態となり、鋼管5の水平方向の回転を抑制するようにしている。
また、掛通部65は、支持爪61の上側に重なるように設けられており、鋼管5を搭載した状態で搭載部60を持ち上げた際に、鋼管5の重量と搭載部60の重量とのバランスによって支持爪61が略水平となるようにされている。
【0022】
巻上装置70は、本体部71がマンゲージ14に固定されており、上部にワイヤーロープ68を巻き上げるための巻上機72を備えている。
巻上機72は、ワイヤーロープ68を巻き取るドラムと、ドラムを回転駆動するモーターと、を備え、モーターによりドラムを回転させることでワイヤーロープ68の巻き取り及び繰り出しを行うことができる。
【0023】
巻上機72のドラムから延出したワイヤーロープ68は、搭載部60の2つのプーリー66の下側を通り、端部は巻上装置70の本体部71に固定されている。これにより、ドラムを回転させることで、搭載部60を上下に移動させることが可能とされている。
また、巻上機72の下方には、下側に開口した溝状の嵌合部73が設けられている。図3に示すように、この嵌合部73には、巻き上げ可能な範囲における最上部まで搭載部60を巻き上げた状態において搭載部60の掛通部65が嵌合するようになっており、搭載部60の揺動を抑制して削孔装置20への鋼管5の設置を容易にすることができる。
【0024】
図1図6に示すように、削孔装置20は、削孔方向に沿って延在するガイドセル21と、ガイドセル21に沿って移動可能なドリフター30及びセントラライザー40と、ガイドセル21の削孔側にある端部に設けられた連結装置22と、を備える。
ガイドセル21の上部には、削孔を行うためのドリフター30と、鋼管5を支持するセントラライザー40が延在方向に沿って移動可能に配されており、削孔の進行に伴いこれらが削孔側の端部へ移動するようになっている。
ドリフター30の出力軸31には鋼管5の内部に挿通されたロッド23が接続されており、ロッド23の削孔側にある端部にはビット24が接続されている。ドリフター30を駆動することによりビット24が駆動し、回転及び打撃により地山3を削孔することができる。
【0025】
また、ドリフター30には、ガイドセル21に設置した新たな鋼管5を削孔方向へ送り出すことが可能な送出手段32が設けられている。送出手段32は、鋼管5の端部を保持可能な略半円形の保持部33を有している。略半円形の保持部33はマンゲージ14に対向する方向に開口しており、鋼管持上装置15により持ち上げた新たな鋼管5の受け入れが容易となるようにされている。
【0026】
保持部33は、油圧シリンダーやモーターなどの駆動源によって削孔方向に沿って動作することが可能となっていて、図10に示すように退縮した状態と、図11に示すように伸長した状態と、に変換可能となっている。これにより、新たな鋼管5の削孔側にある端部を連結装置22内の所定位置に送り込むことができる。
このような送出手段32を備えることで、高所で作業員が鋼管5を動かす作業を行わなくてよくなり、作業員の負担を軽減することができるとともに安全に施工を行うことが可能となる。
【0027】
図6に示すように、ガイドセル21の後端部にはレーザー距離計26が設けられている。ドリフター30の後端部にはターゲット34が設けられており、レーザー距離計26により図中に破線で示すようにターゲット34までの距離Lを測定可能となっている。このレーザー距離計26により、鋼管5を打ち込む際に当該鋼管5の端部が連結装置22における連結可能な位置に達したことを検出することが可能となっている。また、レーザー距離計26は、振動を吸収するインシュレーターを挟んでガイドセル21に取り付けられており、施工時の振動が測定に影響しないようにしている。
このように、鋼管5の端部が連結装置22における連結可能な位置に達したことを検出可能な検出手段を備えることで、作業員が目視により鋼管5の位置を確認しなくても良くなり、作業員の負担を軽減することができるとともに安全に施工を行うことが可能となる。また、施工の精度を高めることができる。
【0028】
図4図5に示すようにセントラライザー40は、ガイドセル21の上を移動可能な移動体41に取り付けられた台座42と、係止片47と、を備える。
台座42には2つの支持部材43が削孔方向に沿って間隙部44を挟んで並ぶように配されている。支持部材43の上面には、設置される鋼管5が嵌る円弧状の凹部45が形成されている。
【0029】
係止片47は、円弧状をした板状の部材であり、支持部材43の間に設けられた間隙部44に配されている。係止片47には板面を貫通するように円弧状のスリット48が形成されている。支持部材43の間隙部44側の面には図示しない案内軸が設けられており、この案内軸がスリット48に挿通されることで、係止片47がスリット48の延在方向に沿って円弧を描くようにスライド移動可能となっている。すなわち、セントラライザー40は、鋼管5を保持可能な係止片47を、鋼管5の周方向に沿って移動可能となっている。
【0030】
また、係止片47には、スリット48の下方に板面を貫通する固定孔49が複数形成されている。支持部材43には固定孔49と対向可能な位置に固定軸46を挿通可能な挿通孔が形成されており、挿通孔と固定孔49が一致した状態で固定軸46を挿通することにより係止片47を固定できるようになっている。係止片47には固定孔49が複数設けられており、係止片47を任意の位置に固定可能となっている。この例では、係止片47の位置を図4に示す位置に固定可能な固定孔49や、図5に示す位置に固定可能な固定孔49が設けられている。さらに、係止片47の中央となる位置にあって図4図5に示す位置の中間に固定可能な固定孔49も設けられている。もちろんこれ以外の位置に固定孔49が設けられていても良い。
【0031】
ガイドセル21に鋼管5を設置する際には、係止片47を乗り越えるようにして設置するために、ガイドセル21の位置や傾きによっては係止片47が障害となって作業が行いにくくなる可能性がある。しかし、係止片47の位置を変更可能としたことでガイドセル21の位置や傾きにかかわらず作業を効率よく進めることが可能となる。
【0032】
図6に示すように連結装置22は、鋼管5を挿通可能な挿通部を有する円筒形をしており、挿通部には挿入された鋼管を中心方向へ押圧して絞り込むためのシリンダーが設けられている。
鋼管5は、一端側の所定範囲に外径が他端側の内径以下とされた小径部5aが設けられており、当該小径部5aを他の鋼管5の端部に挿入可能となっていて、連結装置22によって挿入部分を外側から絞り込むことでかしめられて2つの鋼管5が連結されるようになっている。
【0033】
次に、以上のような削孔機械10を用いた施工方法について説明する。
まず、図6に示すように、地面4に近い位置に降ろした削孔装置20のガイドセル21に1本目の鋼管5を設置する。連結装置22には先端にビット24が取り付けられた削孔ユニット25を設置し、連結装置22によって鋼管5の削孔側の端部に削孔ユニット25を連結する。さらにビット24に接続されて鋼管5の内部に挿通されたたロッド23をドリフター30の出力軸31に接続する。
そして、トンネル1の切羽2における鋼管5を打ち込む所定位置に削孔装置20を移動するとともに作業員が搭乗したマンゲージ14を削孔装置20に隣接した位置に移動し、打ち込み角度などを調整する調整作業を行う。その後、削孔しながら鋼管5を地山3に打ち込む打込工程を行う。
【0034】
打込工程においては、図6図7に破線で示すようにレーザー距離計26によってドリフター30に設けられたターゲット34までの距離Lを測定することによりドリフター30の位置を監視する。ドリフター30と鋼管5の位置は一定であるので、鋼管5の端部の位置を把握することが可能となる。
この測定結果が、図7に示すように鋼管5の端部が連結装置22における連結可能な位置に達した状態である打込完了位置となったことを示す値となることに基づき、削孔を停止して打込工程を完了する。
【0035】
次に、図8に示すように削孔装置20を打込工程での位置に維持した状態で、ドリフター30の出力軸31とロッド23の連結を解除してドリフター30を後退させる。そして、削孔装置20に隣接した位置にあるマンゲージ14に設けられた鋼管持上装置15の搭載部60を地面4に降ろし、ロッド23を挿通した新たな鋼管5を搭載部60に搭載して固定部材62により固定する。
【0036】
その後、図9に示すように鋼管5を持ち上げ、図10に示すように巻き上げ可能な範囲における最上部まで搭載部60を上昇させる。これにより嵌合部73に掛通部65が嵌合して搭載部60揺動が抑制された状態となる。
そして、新たな鋼管5をガイドセル21に設置する。新たな鋼管5は、ドリフター30側の端部が送出手段32の保持部33に保持されるように設置することで、保持部33とセントラライザー40と、により保持された状態となる。この鋼管5の設置の際に、セントラライザー40の係止片47を鋼管5の設置に支障ない状態に予め設定しておくことで作業が容易となる。さらに、固定部材62の固定を解除し、搭載部60を鋼管5から退避させて設置工程を完了する。
【0037】
設置工程の完了後、新たな鋼管5のロッド23と、打ち込んだ鋼管5のロッド23とを連結し、図11に示すようにドリフター30を削孔方向に移動させるとともに送出手段32を削孔方向に伸長し、新たな鋼管5を連結装置22における連結可能な位置に送り出す。
打込完了位置にある鋼管5の端部は、連結装置22における連結可能な位置にあり、新たな鋼管5を連結装置22における連結可能な位置に送り出すことで、新たな鋼管5の小径部5aが打ち込んだ鋼管5の端部に挿入された状態となる。この状態で連結装置22を作動させることで鋼管5が連結される。さらに、新たな鋼管5のロッド23と、ドリフター30の出力軸31とを連結して連結工程が完了する。
この後、上述の打込工程、設置工程、連結工程を繰り返して所望の長さまで鋼管を打ち込む。
【0038】
以上のような鋼管先受け工法、削孔機械10及び鋼管持上装置15によれば、新たな鋼管5を削孔装置20に設置する際に、削孔装置20を地面4に降ろす必要がなく、施工の効率を向上させることができる。
また、削孔装置20を打込工程での位置に維持したまま設置工程を行うので、新たな鋼管5の設置後に削孔装置20の位置等を調整する調整作業を行う必要がなく、施工の効率を向上させることができるとともに施工の精度を向上することができる。
また、マンゲージ14に鋼管5を持ち上げる構成としたことで、マンゲージ14も削孔装置20に隣接した位置に維持したままとすることができ、施工の効率を向上させることができる。特に、先の鋼管5の打込工程が完了してから新たな鋼管5を持ち上げるので、設置工程以外ではマンゲージ14に鋼管5が載せられることがなく、施工の際に邪魔になることがない。
【0039】
なお、以上の実施形態では、巻上装置70において本体部71の上部に巻上機72を設けたが、これ以外の位置に巻上機72を設けるようにしても良い。
例えば、巻上機72の上端部が本体部71の上端部よりも低い位置となるように巻上機72を設けるようにしても良い。このようにすることで、トンネル1の壁面に近接した位置でも施工が可能となる。
このようなトンネル1の壁面に近接した施工を考慮した巻上装置70の構成として、巻き上げ可能な範囲における最上部まで搭載部60を巻き上げた状態における搭載部60の上端部の位置よりも低い位置に巻上機72を設けるようにしても良い。また、マンゲージ14の上端部よりも低い位置に巻上機72を設けるようにしても良いし、巻上装置70の上端部がマンゲージ14の上端部よりも低い位置にあるようにしても良い。
【0040】
また、新たな鋼管5を持ち上げる鋼管持上装置15として、搭載部60をワイヤーロープにより吊る巻上装置70を挙げたが、新たな鋼管5を地面4から施工位置にある削孔装置20へ持ち上げることができるものであれば良い。例えば、ブームに搭載部60を備えた構成としても良いし、搭載部60を下から持ち上げるリフトを備えた構成としても良い。また、鋼管持上装置15は、削孔機械10に設けるものに限られず、削孔機械10とは別の機械に設けられていても良い。
【0041】
また、鋼管5を打ち込む際に、当該鋼管5の端部が連結装置22における連結可能な位置である打込完了位置に達したことを検出可能な検出手段としてレーザー距離計26を用いたが、打込完了位置に達したことを検出可能なものであれば他の構成であっても良い。
例えば、ドリフター30が打込完了位置に到達したことにより電気的又は機械的な変化が発生して打込完了位置に到達したことを検出可能なセンサをガイドセル21に設けることにより検出するようにしても良い。
また、ガイドセル21の後端部に、測定用ワイヤーの引き出し長に基づき距離を測定可能な測定器を備え、ドリフター30に測定用ワイヤーを接続することで測定器とドリフター30との距離を測定し、打込完了位置に到達したことを検出するようにしても良い。
【0042】
また、搭載部60に支持爪61を3つ設けたが、2つであっても良いし、4つ以上の複数であっても良い。また、固定部材62は、いずれの支持爪61に設けられていても良いし、支持爪61以外の場所に設けられていても良く、搭載部60に鋼管5を固定できるものであればどの様なものであっても良い。また、搭載部60における鋼管5の支持方法は支持爪61によるものに限られるものではなく、鋼管5を搭載部60に保持できる構成であればどの様な構成であっても良い。
【0043】
また、打込工程、設置工程及び連結工程は、マンゲージ14に搭乗した作業員が操作を行うものとしても良いし、一部又は全部の工程をマンゲージ14に作業員が搭乗せずに削孔装置20から離れた位置からの操作により行うものとしても良い。
本実施形態の削孔機械10は、レーザー距離計26を備えるので打込工程において削孔装置20から離れた位置からでも進行状況を把握可能である。また、連結装置22及び送出手段32を備えるので、連結工程において鋼管5の連結を削孔装置20から離れた位置からでも行うことが可能である。
【0044】
また、削孔機械10及び鋼管持上装置15は、上述したような鋼管先受け工法に限られず、トンネル1の地山3に鋼管5を継ぎ足しながら打ち込む工程を含む工法であれば他の工法に対しても使用可能である。
【0045】
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 トンネル
2 切羽
3 地山
5 鋼管
10 削孔機械
14 マンゲージ
15 鋼管持上げ装置
20 削孔装置
21 ガイドセル
22 連結装置
26 レーザー距離計(検出手段)
32 送出手段
60 搭載部
62 固定部材(固定手段)
70 巻上装置
73 嵌合部
図1
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