(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177697
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20241217BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E02F9/22 R
F15B11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095975
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正利
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】歌代 浩志
(72)【発明者】
【氏名】関野 聡
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003AC01
2D003BA01
2D003BA02
2D003BA05
2D003BB02
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003FA02
3H089AA34
3H089AA35
3H089AA45
3H089AA46
3H089AA50
3H089AA81
3H089BB01
3H089BB15
3H089CC01
3H089CC12
3H089DA02
3H089DA03
3H089DA14
3H089DB12
3H089EE31
3H089EE36
3H089FF02
3H089FF03
3H089FF06
3H089FF07
3H089FF10
3H089FF12
3H089GG02
3H089JJ01
3H089JJ07
(57)【要約】
【課題】本開示は、従来技術よりも構成を簡略化することができ、掘削作業の作業効率を向上させることが可能な作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両の制御装置は、バケットセンサから取得するバケット角θbを含む掘削パラメータに基いて掘削作業が開始されたか否かを判定する。制御装置は、掘削作業の開始を判定した場合に油圧ポンプの吐出量の上限を最大吐出量Qmaxよりも少ない制限吐出量Qlimeに制限するとともに、掘削パラメータに基いて認識した掘削作業の進展に伴って制限吐出量Qlimeを増加させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、該車体に取り付けられて掘削作業を行う作業機と、該作業機を駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプと、該油圧ポンプの吐出量を制御する制御装置と、を備える作業車両であって、
前記作業機は、前記車体に取り付けられるアームと、該アームに取り付けられるバケットと、前記作動油の供給により伸縮して前記アームを駆動させるアームシリンダと、前記作動油の供給により伸縮して前記バケットを駆動させるバケットシリンダと、前記バケットの角度であるバケット角を検出するバケット角センサと、を有し、
前記制御装置は、前記バケット角センサから取得する前記バケット角を含む掘削パラメータに基いて前記掘削作業が開始されたか否かを判定し、前記掘削作業の開始を判定した場合に前記油圧ポンプの前記吐出量の上限を最大吐出量よりも少ない制限吐出量に制限するとともに前記掘削パラメータに基いて認識した前記掘削作業の進展に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記掘削作業の開始を未判定で、少なくとも前記バケット角が所定の角度範囲内の角度になった場合に、前記掘削作業の開始を判定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記アームシリンダのボトム側の油室の圧力であるボトム圧を検出するアームシリンダ圧センサをさらに備え、
前記制御装置は、さらに前記ボトム圧が所定の下限圧力以上である場合に、前記掘削作業の開始を判定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記アームおよび前記バケットのそれぞれの操作量を検出する操作装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記アームの前記操作量または前記バケットの前記操作量が所定の閾値を超える場合に、前記掘削作業の開始を判定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記車体を前進させる走行駆動力を取得し、前記走行駆動力が所定の閾値を超える場合に、前記掘削作業の開始を判定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記掘削作業の開始を判定した後、前記バケット角が所定の解除角度以上になった場合に、前記掘削作業の終了を判定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御装置は、前記バケット角の増加を前記掘削作業の進展とみなし、前記バケット角の増加に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項8】
前記アームの角度であるアーム角を検出するアーム相対角センサをさらに備え、
前記掘削パラメータは、前記アーム角を含み、
前記制御装置は、前記アーム角の増加を前記掘削作業の進展とみなし、前記アーム角の増加に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項9】
前記掘削パラメータは、前記掘削作業の開始を判定した時点からの前記車体の走行距離を含み、
前記制御装置は、前記走行距離の増加を前記掘削作業の進展とみなし、前記走行距離の増加に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項10】
前記車体の姿勢を検出する姿勢センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記姿勢センサによって検出された前記車体の姿勢が所定の許容範囲から外れている場合に、前記掘削作業の進展に伴う前記制限吐出量の増加を中止することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から掘削作業を行うホイールローダなどの作業車両に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1では、ホイールローダの作業機を駆動する油圧装置において、油圧力は必要とするが吐出量は少量でよい場合のパワーロスを低減する技術の問題点に着目し、その解決手段として以下の制御方法を開示している(同文献、第0005段落および請求項1等を参照)。
【0003】
特許文献1に記載された制御方法は、作業車両の作業機用油圧ポンプの制御方法である。作業車両は、作業機を作動するリフトシリンダおよびチルトシリンダと、これらリフトシリンダおよびチルトシリンダに所定の圧油を供給する油圧ポンプとを備えている。この特許文献1の制御方法では、車両の走行駆動力、および/またはリフトシリンダのボトム側の油圧力、および/またはチルトシリンダの油圧力が、所定の値を越えたときに掘削作業中であると判断する。次に、油圧ポンプの容量を最大容量以下の所定容量に低減することに定め、次に、油圧ポンプの容量を所定容量に低減させる制御を行う。
【0004】
上記のような掘削作業を行う作業車両の作業機は、作業車両の車体に取り付けられるアームと、そのアームに取り付けられるバケットと、を有している。掘削作業を行う作業車両は、掘削対象物へ向けて車体を前進させ、作業機のバケットを掘削対象物へ貫入させ、アームを上昇させつつバケットを手前に回転させ、掘削対象物をバケット内に掬い込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような作業車両の掘削作業において、単位時間当たりの掘削量[ton/h]で表される作業効率を向上させるためには、一連の作業を速やかに行いつつ、バケットに掬い込む掘削対象物の量を増加させる必要がある。しかし、作業機のアームの上昇速度やバケットの回転速度(以下、「作業機の動作速度」とも記す。)が高すぎると、掘削対象物の表層部分のみがバケットに掬い込まれる所謂「浅掘り」が発生し、掘削作業における掘削量が低下して作業効率が低下する。
【0007】
作業車両のオペレータは、上記の浅掘りを回避するために、作業車両を加速させて作業機のバケットを掘削対象物に貫入させ、アームを上昇させつつバケットを手前側に回転させるアクセルペダルおよび作業機の操作レバーの操作を、精密に調整する必要がある。このような掘削作業に伴う作業車両の精密な操作は、オペレータに対する負担が大きい。また、掘削作業時の作業車両において、車体が揺れたり、作業機や掘削対象物によってオペレータの視界が遮られたりすると、オペレータの負担はさらに増大する。
【0008】
上記特許文献1に記載された作業車両の作業機用油圧ポンプの制御方法を適用し、掘削作業中に油圧ポンプの容量を所定容量に低減させることで、作業機の動作速度が制限される。これにより、浅掘りを防ぐ効果を期待できるが、掘削作業の作業時間が増加して作業効率が低下するおそれがある。一方、作業効率を向上させるために、掘削作業中に制限する油圧ポンプの所定容量を増加させると、作業機の動作速度が上昇して浅掘りのリスクが高くなる。
【0009】
さらに、特許文献1に記載された作業車両の作業機用油圧ポンプの制御方法を適用するには、油圧ポンプの容量を調整するための傾転角を制御するレギュレータや、そのレギュレータの動作を制御する比例電磁弁および油圧パイロット回路が必要となる。そのため、油圧回路の複雑性が高くなり、コストおよび油漏れのリスクも高くなる。
【0010】
本開示は、上記従来技術よりも構成を簡略化することができ、掘削作業の作業効率を向上させることが可能な作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様は、車体と、該車体に取り付けられて掘削作業を行う作業機と、該作業機を駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプと、該油圧ポンプの吐出量を制御する制御装置と、を備える作業車両であって、前記作業機は、前記車体に取り付けられるアームと、該アームに取り付けられるバケットと、前記作動油の供給により伸縮して前記アームを駆動させるアームシリンダと、前記作動油の供給により伸縮して前記バケットを駆動させるバケットシリンダと、前記バケットの角度であるバケット角を検出するバケット角センサと、を有し、前記制御装置は、前記バケット角センサから取得する前記バケット角を含む掘削パラメータに基いて前記掘削作業が開始されたか否かを判定し、前記掘削作業の開始を判定した場合に前記油圧ポンプの前記吐出量の上限を最大吐出量よりも少ない制限吐出量に制限するとともに前記掘削パラメータに基いて認識した前記掘削作業の進展に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする作業車両である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の上記一態様によれば、上記従来技術よりも構成を簡略化することができ、掘削作業の作業効率を向上させることが可能な作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示に係る作業車両の実施形態1を示す側面図。
【
図3】
図2に示す作業車両の制御装置の機能ブロック図。
【
図4】
図1の作業車両による掘削作業の一例を説明する概略図。
【
図5】
図3の制御装置による油圧ポンプの吐出量制御のフロー図。
【
図6】
図1に示す作業機のバケット角を説明する拡大図。
【
図7】
図2の油圧ポンプの吐出量とバケット角の関係を示すグラフ。
【
図8】
図2の油圧ポンプの制御指令値に対する吐出量と吐出圧の関係を示すグラフ。
【
図9】
図2の油圧ポンプのバケット角に対する吐出量と吐出圧の関係を示すグラフ。
【
図10】従来技術による油圧ポンプの定容量制御を説明するグラフ。
【
図11】従来技術による油圧ポンプの定馬力制御を説明するグラフ。
【
図12】
図1の作業車両の掘削パラメータの時間変化を示すタイムチャート。
【
図13】本開示に係る作業車両の実施形態2を示す制御装置の機能ブロック図。
【
図14】
図13に示す制御装置の掘削時上限値演算部の機能ブロック図。
【
図15】本開示に係る作業車両の実施形態3を示す制御装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示に係る作業車両の実施形態を説明する。
【0015】
[実施形態1]
図1は、本開示に係る作業車両の実施形態1を示す側面図である。本実施形態の作業車両100は、たとえば、土砂、砕石、および鉱石などの掘削対象物を掘削して、ダンプトラックなどの運搬車両のベッセルに積載する掘削作業を行うホイールローダである。作業車両100は、たとえば、車体110と、作業機120と、を備えている。
【0016】
車体110は、たとえば、前部車体111と後部車体112とがセンタージョイント113を介して屈曲可能に連結されたアーティキュレート操舵式または車体屈曲式のものを採用することができる。前部車体111には、左右の前輪101と、作業機120が取り付けられている。後部車体112には、左右の後輪102が取り付けられるとともに、前部に運転室103が設けられ、後部に機器収容室104が設けられている。
【0017】
また、車体110は、たとえば、幅方向において、中央に設けられたセンタージョイント113の両側に、一対のステアリングシリンダ114を有している。ステアリングシリンダ114は、たとえば、作動油が供給されることで伸縮する油圧シリンダである。ステアリングシリンダ114は、たとえば、ピストンロッドの先端が前部車体111に連結され、その反対側のシリンダの底部が後部車体112に連結されている。
【0018】
これにより、一対のステアリングシリンダ114のうちの一方が伸長して他方が収縮することで、前部車体111が後部車体112に対して左右に屈曲する。また、
図1では図示を省略するが、車体110は、たとえば、前輪101および後輪102を制動するブレーキを作動させる油圧シリンダであるブレーキシリンダ115と、駐車ブレーキを作動させる油圧シリンダである駐車ブレーキシリンダ116とを有している(
図2参照)。
【0019】
作業機120は、たとえば、車体110を構成する前部車体111に取り付けられて土砂などの掘削対象物の掘削作業を行う多関節型の作業装置である。作業機120は、たとえば、アーム121と、バケット122と、アームシリンダ123と、バケットシリンダ124と、を有している。
【0020】
アーム121は、たとえば、リフトアームとも呼ばれ、車体110の前方部分である前部車体111に、車体110の幅方向に平行な回転軸を介して取り付けられ、その回転軸を中心に上下方向に回動する。作業機120は、たとえば、一対のアーム121を備えている。一対のアーム121は、たとえば、車体110の幅方向に離隔して配置され、長手方向の中央部で作業車両100の幅方向に延びる連結部によって連結されている。
【0021】
バケット122は、たとえば、車体110に取り付けられたアーム121の基端部とは反対側のアーム121の先端部に、車体110の幅方向に平行な回転軸を介して取り付けられている。バケット122の底部には、Zリンク式またはベルクランク式のリンク機構が連結されている。バケット122は、リンク機構を介して動力が伝達されると、アーム121の先端部の回転軸を中心に上下方向に回動する。
【0022】
アームシリンダ123は、たとえば、作動油が供給されることで伸縮する油圧シリンダである。作業機120は、たとえば、一対のアームシリンダ123を備えている。一対のアームシリンダ123は、たとえば、ピストンロッドの先端部が一対のアーム121の長手方向の中央部に回動可能に連結され、その反対側のシリンダの底部が前部車体111の幅方向の両側に回動可能に連結されている。これにより、一対のアームシリンダ123が伸縮すると、一対のアーム121が上下に回動する。
【0023】
バケットシリンダ124は、たとえば、作動油が供給されることで伸縮する油圧シリンダである。バケットシリンダ124は、たとえば、ピストンロッドの先端部がリンク機構のベルクランクに回動可能に連結され、その反対側のシリンダの底部が前部車体111の幅方向の中央部に回動可能に連結されている。これにより、バケットシリンダ124が伸縮すると、リンク機構を介してバケット122に動力が伝達され、バケット122が上下に回動する。
【0024】
図2は、
図1の作業車両100のシステム構成図である。作業車両100は、
図1に示す各構成に加えて、たとえば、
図2に示す油圧ポンプ105A,105B,105Cと、制御装置200と、を備えている。また、作業車両100は、油圧ポンプ105A,105B,105Cから各油圧シリンダへ供給される作動油の圧力、流量、および方向を制御する作業機制御部131、ブレーキ制御部132、およびステアリング制御部133を有している。
【0025】
また、作業車両100は、たとえば、バッテリ106と、インバータ107A,107Bと、モータ108A,108Bと、バッテリコントローラ109とを有している。これらの機器と、前述の油圧ポンプ105A,105B,105C、作業機制御部131、ブレーキ制御部132、およびステアリング制御部133は、たとえば、
図1に示す機器収容室104に収容されている。
【0026】
バッテリ106は、たとえば、リチウムイオン二次電池等の蓄電池によって構成されている。バッテリ106は、たとえば、充電されて蓄えられた電力を、インバータ107A,107Bを介してモータ108A,108Bへ供給する。バッテリコントローラ109は、たとえば、制御装置200から入力されるバッテリ動作指令に基いてバッテリ106を制御する。
【0027】
走行用のインバータ107Aは、バッテリ106から直流電力の供給を受け、制御装置200から入力される走行駆動トルク指令に基いて走行用のモータ108Aに電力を供給し、走行用のモータ108Aを制御する。走行用のインバータ107Aと作業用のインバータ107Bとは、直流母線によって接続されている。
【0028】
作業用のインバータ107Bは、バッテリ106から直流電力の供給を受け、制御装置200から入力される回転速度指令に基いて作業用のモータ108Bを制御することで、油圧ポンプ105A,105B,105Cの回転速度を制御する。インバータ107Bは、制御装置200から入力される回転速度指令値と、モータ108Bの回転速度とが一致するようにモータ108Bへ供給される電力を制御する。
【0029】
モータ108A,108Bは、たとえば、
図1に示す車体110に支持されている。走行用のモータ108Aは、たとえば、バッテリ106からインバータ107Aを介して電力の供給を受け、アクスル、デファレンシャル装置、プロペラシャフトなどを含む動力伝達装置を介して左右の前輪101および左右の後輪102を回転させる。作業用のモータ108Bは、たとえば、バッテリ106からインバータ107Bを介して電力の供給を受け、油圧ポンプ105A,105B,105Cを駆動させる。
【0030】
油圧ポンプ105A,105B,105Cは、たとえば、
図1に示す機器収容室104に収容されている。油圧ポンプ105A,105B,105Cは、モータ108Bが出力するトルクによって駆動されて作動油を吐出する。油圧ポンプ105Aは、たとえば、アームシリンダ123およびバケットシリンダ124へ供給される作動油の圧力、流量、および方向を制御する作業機制御部131を介して、アームシリンダ123およびバケットシリンダ124へ作動油を供給する。
【0031】
油圧ポンプ105Aは、たとえば、斜板式または斜軸式の可変容量形のピストンポンプであり、レギュレータが設けられている。レギュレータは、油圧ポンプ105Aの吐出圧が所定値を超えて上昇すると、それに応じて油圧ポンプ105Aの傾転角(容量、押しのけ容積に相当)を減少させ、油圧ポンプ105Aの吸収トルクが設定値(ポンプ吸収トルク上限値)を超えないように制御する。油圧ポンプ105Aから吐出される作動油の流量すなわち吐出量は、レギュレータの制御によって決定される油圧ポンプ105Aの容量とモータ108Bの制御によって決定される回転速度とに比例する。
【0032】
油圧ポンプ105Bは、たとえば、ブレーキシリンダ115および駐車ブレーキシリンダ116へ供給される作動油の圧力、流量、および方向を制御するブレーキ制御部132を介して、ブレーキシリンダ115および駐車ブレーキシリンダ116へ作動油を供給する。油圧ポンプ105Cは、たとえば、ステアリングシリンダ114へ供給される作動油の圧力、流量、および方向を制御するステアリング制御部133を介して、ステアリングシリンダ114へ作動油を供給する。
【0033】
また、作業車両100は、たとえば、オペレータが着席する運転室103内の座席の周囲に配置され、オペレータによる操作を受け付ける操作装置140を備えている。操作装置140は、たとえば、前後進切替装置141と、アーム操作装置142と、バケット操作装置143と、アクセル操作装置144と、ブレーキ操作装置145と、駐車ブレーキ操作装置146と、ステアリング操作装置147と、モード切替スイッチ148と、吐出量調整ダイヤル149と、を含む。
【0034】
前後進切替装置141は、たとえば、オペレータが作業車両100の前進(F)、待機(N)、または後進(R)のいずれかの状態を選択するためのスイッチまたはレバーであり、オペレータによって選択された状態を制御装置200へ出力する。アーム操作装置142およびバケット操作装置143は、それぞれ、アームおよびバケットを操作するためのアームレバーおよびバケットレバーと、それらの操作量を検出して制御装置200へ出力するセンサとを備えている。
【0035】
アクセル操作装置144およびブレーキ操作装置145は、それぞれ、アクセルペダルおよびブレーキペダルと、それらの操作量を検出して制御装置200へ出力するセンサとを備えている。駐車ブレーキ操作装置146は、たとえば、オペレータが駐車ブレーキの作動と解除を切り替えるための操作スイッチを備え、駐車ブレーキの作動または解除の状態を示す信号を制御装置200へ出力する。ステアリング操作装置147は、たとえば、ステアリングホイールと、その操作量を検出して制御装置200へ出力するセンサとを備えている。
【0036】
モード切替スイッチ148は、たとえば、オペレータが作業車両100の掘削作業の自動モードまたは手動モードを選択するための操作スイッチである。モード切替スイッチ148は、たとえば、自動モードが選択されると自動モードフラグFmをオン(Fm=1)にし、手動モードが選択されると自動モードフラグFmをオフ(Fm=0)にして、選択されたモードに対応する自動モードフラグFmを制御装置200へ出力する。
【0037】
吐出量調整ダイヤル149は、たとえば、オペレータが油圧ポンプ105Aの設定上限吐出量Qlimsを選択するための操作ダイヤルである。吐出量調整ダイヤル149は、オペレータによって選択された最大吐出量Qmax以下の設定上限吐出量Qlimsに対応する指示値Cd(0<Cd≦1)を、制御装置200へ出力する。指示値Cdは、設定上限吐出量Qlimsが最大吐出量Qmaxと等しい場合に最大値(Cd=1)となる。
【0038】
また、作業車両100は、作業車両100の各種の状態を検出する複数の状態検出センサ150を備えている。状態検出センサ150は、たとえば、車速センサ151と、アーム相対角センサ152と、バケット相対角センサ153と、モータ回転速度センサ154と、トルクセンサ155と、電流センサ156と、ポンプ回転速度センサ157と、を含む。また、状態検出センサ150は、たとえば、吐出圧センサ158A,158B,158Cと、アームシリンダ圧センサ158Dと、を含む。また、状態検出センサ150は、たとえば、姿勢センサ159を含む。
【0039】
車速センサ151は、たとえば、作業車両100の動力伝達装置を構成する軸の回転速度を検出するロータリーエンコーダであり、検出した軸の回転速度またはそれに応じた作業車両100の速度を表す信号を制御装置200へ出力する。アーム相対角センサ152およびバケット相対角センサ153は、それぞれ、作業車両100の基準面RP(
図6参照)に対するアーム121の角度およびアーム121に対するバケット122の角度を検出して制御装置200へ出力する。基準面RPについては、
図6を参照して後述する。
【0040】
アーム相対角センサ152およびバケット相対角センサ153は、それぞれ、車体110とアーム121の連結軸およびアーム121とバケット122との連結軸に設けられたポテンショメータである。モータ回転速度センサ154は、たとえば、油圧ポンプ105A,105B,105Cを駆動するモータ108Bの回転速度を検出し、検出した回転速度に応じた信号を制御装置200へ出力する。
【0041】
トルクセンサ155および電流センサ156は、それぞれ、作業車両100を走行させる駆動力を発生するモータ108Aのトルクおよび電流を検出し、検出したトルクおよび電流に応じた信号を制御装置200へ出力する。ポンプ回転速度センサ157は、たとえば、アームシリンダ123およびバケットシリンダ124へ作動油を供給する油圧ポンプ105Aの回転速度を検出して、検出した回転速度に応じた信号を制御装置200へ出力する。
【0042】
吐出圧センサ158A,158B,158Cは、それぞれ、油圧ポンプ105A,105B,105Cの作動油の吐出圧を検出し、検出した吐出圧に応じた信号を制御装置200へ出力する。アームシリンダ圧センサ158Dは、たとえば、アームシリンダ123のボトム側の油室の圧力であるボトム圧を検出し、検出したボトム圧に応じた信号を制御装置200へ出力する。
【0043】
姿勢センサ159は、たとえば、3軸ジャイロセンサおよび加速度センサによって構成されている。姿勢センサ159は、たとえば、ロール角θr、ピッチ角θp、およびヨー角θyを含む車体110の姿勢情報θvを検出して制御装置200へ出力する。
【0044】
制御装置200は、たとえば、作業車両100の全体の制御を行うメインコントローラであり、一つ以上のマイクロコンピュータによって構成されている。制御装置200は、たとえば、動作回路としてのCPU201と、記憶装置としてのROM202およびRAM203と、入力インタフェース204および出力インタフェース205と、を有している。なお、バッテリコントローラ109も、制御装置200と同様に、動作回路、記憶装置、および入出力インタフェースを備えた一つ以上のマイクロコントローラによって構成することができる。
【0045】
制御装置200は、たとえば、アーム操作装置142、バケット操作装置143、ステアリング操作装置147等から入力される操作量に基いて、作業用のモータ108Bの回転速度指令値を算出し、制御指令値をインバータ107Bへ出力する。具体的には、制御装置200は、アーム操作量、バケット操作量、ステアリング操作量、および油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdに基き、作業機120の要求動力を算出し、その要求動力に基き、作業用のモータ108Bの回転速度指令値を算出する。
【0046】
なお、制御装置200は、たとえば、アーム操作量およびバケット操作量にそれぞれ所定の係数を乗じて第1および第2の回転速度指令値を算出し、これらのうち大きい方を作業用のモータ108Bの回転速度指令値として採用してもよい。また、制御装置200は、モータ回転速度センサ154によって検出されたモータ108Bの回転速度をインバータ107Bへ出力してもよく、その検出された回転速度に基いて回転速度指令値を算出してもよい。
【0047】
また、制御装置200は、たとえば、アーム操作装置142およびバケット操作装置143から入力される操作方向および操作量に基いて、作業機制御部131へ作業機制御指令を出力する。また、制御装置200は、たとえば、ブレーキ操作装置145および駐車ブレーキ操作装置146から入力される信号に基いて、ブレーキ制御部132へブレーキ制御指令を出力する。また、制御装置200は、たとえば、ステアリング操作装置147から入力される操作方向および操作量に基いて、ステアリング制御部133へステアリング制御指令を出力する。
【0048】
作業機制御部131は、たとえば、制御装置200からの作業機制御指令に基いて、油圧ポンプ105Aから供給される作動油の圧力、流量、および方向を制御して、アームシリンダ123およびバケットシリンダ124を作動させる。ブレーキ制御部132は、たとえば、制御装置200からのブレーキ制御指令に基いて、油圧ポンプ105Bから供給される作動油の圧力、流量、および方向を制御して、ブレーキシリンダ115および駐車ブレーキシリンダ116を作動させる。
【0049】
ステアリング制御部133は、たとえば、制御装置200からのステアリング制御指令に基いて、油圧ポンプ105Cから供給される作動油の圧力、流量、および方向を制御して、ステアリングシリンダ114を作動させる。作業機制御部131、ブレーキ制御部132、および、ステアリング制御部133は、たとえば、作動油の圧力、流量、および方向を制御する方向制御弁やその方向制御弁を制御するためのパイロット圧を生成する電磁弁を有している。
【0050】
以上のような構成により、作業車両100のオペレータがアーム操作装置142を操作すると、アームシリンダ123が伸縮してアーム121が上下に回動してバケット122を上昇および下降させる。また、オペレータがバケット操作装置143を操作すると、バケットシリンダ124が伸縮してバケット122が前後に回動してクラウド動作およびダンプ動作を行う。また、オペレータがアクセル操作装置144を操作すると、走行用のモータ108Aが駆動されてトランスミッションを介して前輪101および後輪102を回転させ、作業車両100が前進および加速する。
【0051】
また、オペレータがステアリング操作装置147を操作するとステアリングシリンダ114が伸縮して前部車体111が後部車体112に対してセンタージョイント113を中心に左右に枢動して作業車両100が方向転換する。また、オペレータがブレーキ操作装置145または駐車ブレーキ操作装置146を操作すると、ブレーキシリンダ115または駐車ブレーキシリンダ116が伸縮して前輪101および後輪102を制動する。
【0052】
また、オペレータが前後進切替装置141を操作して後進(R)を選択した状態でアクセル操作装置144を操作すると、前輪101および後輪102が後進方向に回転し、作業車両100が後進する。なお、オペレータが前後進切替装置141を操作して待機(N)を選択した状態では、アクセル操作装置144を操作しても前輪101および後輪102は回転せず、作業車両100は走行しない。
【0053】
以上のように、本実施形態の作業車両100には、たとえば、走行用のモータ108Aを含む電動式の走行駆動装置と、作業用のモータ108Bおよび油圧ポンプ105A,105B,105Cを含む電動油圧式の油圧駆動装置とが搭載されている。作業車両100の走行駆動装置と油圧駆動装置とは、バッテリ106の電力によって互いに独立して駆動される。
【0054】
また、オペレータがモード切替スイッチ148を操作して自動モードを選択すると、後述するバケット角θbを含む掘削パラメータに基いて、油圧ポンプ105Aの吐出量の上限が最大吐出量Qmaxよりも少ない制限吐出量Qlimeに制限される。また、オペレータがモード切替スイッチ148を操作して手動モードを選択すると、油圧ポンプ105Aの吐出量の上限は、バケット角θbを含む掘削パラメータによっては制限されなくなる。
【0055】
なお、オペレータは、吐出量調整ダイヤル149を操作して油圧ポンプ105Aの吐出量の上限を、最大吐出量Qmaxよりも少ない設定上限吐出量Qlimsに制限することができる。この場合、モード切替スイッチ148によって手動モードが選択されると、油圧ポンプ105Aの吐出量の上限が、設定上限吐出量Qlimsに制限される。一方、モード切替スイッチ148によって自動モードが選択されると、油圧ポンプ105Aの吐出量の上限は、掘削パラメータに基く制限吐出量Qlimeと設定上限吐出量Qlimsのうち、少ない方に制限される。すなわち、自動モードの選択時に掘削パラメータの変動に対する105Aの吐出量の上限を調節することができる。
【0056】
図3は、
図2に示す作業車両100の制御装置200の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御装置200は、たとえば、作業判定部210と、掘削時上限値演算部220と、通常時上限値演算部230と、指令値演算部240と、を有している。これらの制御装置200の各部は、たとえば、CPU201によってROM202に記憶されたプログラムを実行することで実現される制御装置200の各機能を表している。
【0057】
図4は、
図1に示す作業車両100によって行われる基本的な掘削作業の一例を説明する概略的な側面図である。掘削作業を行う作業車両100は、まず、
図4の(a)に示すように、地表面に積み上げられた土砂、砕石、または鉱石などの掘削対象物ETから離れた位置で、バケット122の側面を地表面に概ね平行にして近接させた突入姿勢を取り、掘削対象物ETへ向けて前進する。その後、
図4の(b)に示す掘削作業の序盤において、作業車両100は、前進した勢いでバケット122を掘削対象物ETに貫入させつつ、バケット122を上昇させ始める。
【0058】
その後、
図4の(c)に示す掘削作業の中盤以降において、作業車両100は、さらに前進してバケット122を掘削対象物ETにより深く貫入させつつ、アーム121およびバケット122を動作させ、バケット122で掘削対象物ETを掬い取る。その後、
図4の(d)に示す掘削作業の終盤において、作業車両100は、バケット122で掬い取った掘削対象物ETがこぼれ落ちないように、バケット122を運転室103側へ回転させて開口部を上方へ向けるクラウド動作を行う。以上により、作業車両100による一回の掘削作業が終了する。
【0059】
以上のような掘削作業の終了後、作業車両100は、たとえば、以下のような積込作業を行う。作業車両100は、地表面に積み上げられた掘削対象物ETから離れるように後進してから、ダンプトラックなどの運搬車両に向かって前進する。このとき、作業車両100は、たとえば、バケット122を上昇させつつ、運搬車両に向かって前進する。作業車両100は、運搬車両に接近して停車すると、バケット122を前方側へ回動させて開口部を下方へ向けるダンプ動作を行い、バケット122内の掘削対象物ETを落下させて運搬車両のボディまたはベッセルに積み込む。以上のような積込作業の終了後、作業車両100は、たとえば、
図4の(a)に示す元の位置に戻る。
【0060】
以上のような作業車両100の掘削作業と積込作業を含む一連の作業は、作業車両100の全作業時間の大部分を占めている。そのため、作業車両100の作業効率を向上させるためには、この一連の作業の効率を向上させることが有効である。なお、作業車両100の作業効率は、たとえば、掘削作業と積込作業を含む一連の作業において、単位時間あたりに運搬車両に積み込んだ掘削対象物ETの重量、すなわち[ton/h]で表すことができる。したがって、作業車両100の作業効率[ton/h]が高いほど、短時間でより多くの掘削対象物ETを掘削することができる。
【0061】
図5は、
図3の制御装置200による油圧ポンプ105Aの吐出量制御の一例を示すフロー図である。制御装置200は、たとえば、作業車両100の電源スイッチまたはキースイッチがオンにされると、所定の初期設定を行った上で、
図5に示す処理フローを開始して所定の周期で繰り返し実行する。なお、制御装置200は、たとえば、初期設定において、後述する掘削作業開始条件の成立時にオンになる掘削作業フラグFLをオフにする。
【0062】
制御装置200は、
図5に示す処理フローを開始すると、掘削作業フラグFLを設定する処理P1を実行する。この処理P1において、制御装置200は、掘削作業開始条件または掘削作業終了条件が成立しているか否かを判定し、その判定結果に基いて掘削作業フラグFLをオンまたはオフに設定する。
【0063】
図6は、
図1に示す作業車両100のバケット角θbを説明する拡大図である。たとえば、
図5に示す処理P1において、
図3に示す作業判定部210は、少なくとも
図6に示すバケット角θbを含む掘削パラメータに基いて、掘削作業開始条件または掘削作業終了条件が成立しているか否かを判定する。ここで、バケット角θbは、たとえば、
図6に示すように、基準面RPに対するバケット122の前方側の側面122fの角度である。
【0064】
基準面RPは、たとえば、作業車両100の姿勢を表す基準となる仮想的な面であり、作業車両100が水平である場合に水平になる。そのため、作業車両100の前輪101および後輪102が接地している地面が凹凸のない平坦な平坦であれば、基準面RPは地面に平行になる。したがって、アーム相対角センサ152が検出するアーム121の角度は、地面に対するアーム121の相対角(傾斜角)に相当するといえる。
【0065】
バケット122の側面122fの先端部には、バケットツース122tが取り付けられている。バケットツース122tの底面は、たとえば、バケット122の前方側の側面122fに平行になっている。バケット122の側面122fが基準面RPに平行な状態において、バケット角θbは0[°]である。
【0066】
バケット角θbは、たとえば、バケット122のクラウド動作による後方側への回動に伴って増加し、バケット122のダンプ動作による前方側への回動に伴って減少する。制御装置200は、たとえば、アーム相対角センサ152によって検出された基準面RPに対するアーム121の角度と、バケット相対角センサ153によって検出されたアーム121に対するバケット122の角度とに基いてバケット角θbを算出する。すなわち、バケット角θbを検出するバケット角センサは、たとえば、アーム相対角センサ152およびバケット相対角センサ153を含む。
【0067】
図5に示す処理P1において、
図3に示す作業判定部210は、たとえば、少なくとも以下の条件1Aおよび条件2Aが満たされた場合に、掘削作業開始条件が成立したことを判定する。また、作業判定部210は、条件1Aおよび条件2Aに加えて以下の条件3Aおよび5Aが満たされた場合、または、条件1Aから条件5Aまでのすべてが満たされた場合に、掘削作業開始条件が成立したことを判定してもよい。作業判定部210は、掘削作業開始条件が成立したことを判定すると、掘削作業フラグFLをオフ(FL=0)からオン(FL=1)に切り替える。
【0068】
条件1A:掘削作業フラグFLがオフに設定されている。
条件2A:アーム相対角センサ152およびバケット相対角センサ153の検出結果に基くバケット角θbが、所定の角度範囲内(下限角度θbl以上、上限角度θbh以下)である。
条件3A:アームシリンダ圧センサ158Dの検出結果に基くアームシリンダ123のボトム圧Paが、所定の下限圧力Pal以上である。
条件4A:トルクセンサ155または電流センサ156の検出結果に基く走行用のモータ108Aの走行駆動力Fcが、所定の駆動力下限値Fc0以上である。
条件5A:アーム操作装置142に入力されたアーム121の上昇側の操作量Laが所定の操作量下限値La0以上であるか、または、バケット操作装置143に入力されたバケット122のクラウド動作側の操作量Lbが所定の操作量下限値Lb0以上である。
【0069】
条件2Aの下限角度θblおよび上限角度θbh、条件3Aの下限圧力Pal、条件4Aの駆動力下限値Fc0、ならびに、条件5Aの操作量下限値La0,Lb0は、たとえば、掘削作業の実験を行うことなどにより求められる。より具体的には、掘削対象物ETにバケット122が貫入し始めた時点を掘削作業の開始時点とし、その掘削作業の開始時点におけるバケット角θb、ボトム圧Pa、および走行駆動力Fcに基いて、各条件における閾値が定められてROM202に記憶されている。
【0070】
より詳細には、バケット角θbの下限角度θblは、たとえば、-10[°]以上かつ-5[°]以下の負の値(θbl<0)が採用される。また、バケット角θbの上限角度θbhは、たとえば、10[°]以上かつ20[°]以下の正の値(θbh>0)が採用される。また、アームシリンダ123のボトム圧Paの下限圧力Palは、たとえば、ボトム圧Paの最大許容値の10[%]以上かつ30[%]以下の値が採用される。
【0071】
また、アーム操作装置142およびバケット操作装置143の操作量下限値La0,Lb0は、それぞれ、アーム操作装置142およびバケット操作装置143の最大操作量の5[%]程度の値を採用することができる。また、走行駆動力Fcの駆動力下限値Fc0は、たとえば、走行駆動力Fcの最大値の10[%]以上かつ40[%]以下の値を採用することができる。なお、走行用のモータ108Aによって発生する走行駆動力Fcは、たとえば、以下の式(1)によって求めることができる。
【0072】
Fc=(Tm・λ/Dt)・c ・・・(1)
【0073】
上記の式(1)において、Tmは、走行用のモータ108Aの出力トルク(走行駆動トルク)であり、λは、総合減速比であり、Dtは、駆動輪の直径であり、cは、単位換算のための係数である。なお、総合減速比λは、走行用のモータ108Aの回転速度と駆動輪の回転速度の比であり、たとえば、トランスミッションの変速比に減速比(デファレンシャル比)を乗じることによって算出される。また、走行駆動トルクTmは、トルクセンサ155によって検出してもよく、電流センサ156によって検出される電流に基いて算出してもよく、アクセル操作装置144の操作量から算出してもよい。
【0074】
一方、
図5に示す処理P1において、
図3に示す作業判定部210は、たとえば、少なくとも上記の条件2Aが満たされていない場合に、掘削作業開始条件が成立していないことを判定する。作業判定部210は、たとえば、掘削作業フラグFLがオフの状態で、掘削作業開始条件が成立していないことを判定すると、掘削作業フラグFLをオフの状態に維持する。
【0075】
また、
図5に示す処理P1において、
図3に示す作業判定部210は、たとえば、以下の条件1Bおよび条件2Bが満たされた場合に、掘削作業終了条件が成立したことを判定し、掘削作業フラグFLをオンからオフへ切り替える。一方、作業判定部210は、たとえば、以下の条件1Bが満たされ、条件2Bが満たされない場合に、掘削作業終了条件が成立していないことを判定し、掘削作業フラグFLをオンに維持する。
【0076】
条件1B:掘削作業フラグFLがオンに設定されている。
条件2B:バケット角θbが所定の解除角度θbc以上である。
【0077】
条件2Bの解除角度θbcは、たとえば、
図4の(d)に示すような掘削作業の終了時点のバケット角θbを実験などによって測定し、その測定されたバケット角θbに基いて定められ、ROM202に記憶されている。解除角度θbcは、たとえば、前述の掘削作業開始条件の条件2Aにおける上限角度θbhよりも大きい25[°]以上かつ40[°]以下の角度が採用される(θbc>θbh)。
【0078】
図5に示すように、処理P1が終了して掘削作業フラグFLが設定されると、制御装置200は、次の処理P2を実行する。この処理P2において、掘削時上限値演算部220は、掘削作業中の油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeを算出する。この処理P2において、掘削時上限値演算部220は、たとえば、バケット角θbを含む掘削パラメータに基いて、油圧ポンプ105Aの最大吐出量Qmaxよりも少ない制限吐出量Qlimeを算出する。
【0079】
図7は、
図2の油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeとバケット角θbとの関係の一例を示すグラフである。
図5に示す処理P2において、掘削時上限値演算部220は、たとえば、バケット角センサからの信号に基づくバケット角θbと、
図7に示すような制限吐出量Qlimeとバケット角θbとの関係を示す相関マップM1に基いて、制限吐出量Qlimeを算出する。このような相関マップM1は、たとえば、計算または実験に基いて決定され、予めROM202に記憶されている。なお、
図7の相関マップM1は、油圧ポンプ105Aの回転速度が掘削作業中の目標回転速度であることを想定した吐出量の制御線図である。
【0080】
図7に示す相関マップM1では、バケット角θbが初期バケット角θb0以上かつ最終バケット角θb3以下の範囲内において、バケット角θbの増加に伴って制限吐出量Qlimeが増加している。より詳細には、相関マップM1において、バケット角θbが初期バケット角θb0以下である場合、制限吐出量Qlimeは、たとえば、最大吐出量Qmaxの10%から30%程度の初期制限吐出量Qlim0に制限される。
【0081】
バケット角θbが初期バケット角θb0から増加して中盤バケット角θb1になると、制限吐出量Qlimeは、初期制限吐出量Qlim0よりも増加した中盤制限吐出量Qlim1になる。さらに、バケット角θbが中盤バケット角θb1から増加して終盤バケット角θb2になると、制限吐出量Qlimeは、中盤制限吐出量Qlim1よりも増加した終盤制限吐出量Qlim2になる。さらに、バケット角θbが終盤バケット角θb2から増加して最終バケット角θb3以上になると、制限吐出量Qlimeは、たとえば、最大吐出量Qmaxと等しくなる。
【0082】
初期バケット角θb0は、たとえば、
図4の(a)および(b)に示すように、作業車両100のバケット122を掘削対象物ETに貫入させる姿勢に対応している。初期バケット角θb0は、たとえば、
図6に示すように、基準面RPに対して-5[°]以上かつ5[°]以下の角度を採用することができる。中盤バケット角θb1、終盤バケット角θb2、および最終バケット角θb3は、たとえば、
図4の(c)および(d)に示すように、掘削作業の中盤以降のバケット122で掘削対象物ETを掬い取る動作に対応している。最終バケット角θb3は、たとえば、
図6に示すように、基準面RPに対して30[°]以上かつ50[°]以下の角度を採用することができる。
【0083】
なお、
図5に示す処理P2において、たとえば、作業車両100のオペレータは、吐出量調整ダイヤル149を用いて油圧ポンプ105Aの作動油の設定上限吐出量Qlimsを選択することも可能である。この場合、掘削時上限値演算部220は、たとえば、バケット角θbおよび相関マップM1に加えて、吐出量調整ダイヤル149から入力される設定上限吐出量Qlimsに対応する指示値Cd(0<Cd≦1)を参照する。
【0084】
指示値Cdは、設定上限吐出量Qlimsが最大吐出量Qmaxに設定された場合に、最大値(Cd=1)となる。掘削時上限値演算部220は、たとえば、最大吐出量Qmaxに指示値Cdを乗じた設定上限吐出量Qlimsと、バケット角θbおよび相関マップM1に基く制限吐出量Qlimeとを比較して、小さい方を掘削作業中の油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeとして設定する。
【0085】
また、
図5に示す処理P2において、
図3に示す制御装置200の通常時上限値演算部230は、たとえば、掘削作業中を除く通常時における油圧ポンプ105Aの吐出量上限値Qlimnを算出する。通常時上限値演算部230は、たとえば、最大吐出量Qmaxに吐出量調整ダイヤル149から入力される指示値Cdを乗じることで、掘削作業中を除く通常時における油圧ポンプ105Aの吐出量上限値Qlimnを算出する。
【0086】
その後、制御装置200は、たとえば、
図5に示す処理P3を実行する。この処理P3において、
図3に示す制御装置200の指令値演算部240は、掘削作業フラグFLのオン、オフに基いて作業車両100が掘削作業中か否かを判定するとともに、自動モードフラグFmのオン、オフに基いて自動モードか否かを判定する。
【0087】
具体的には、指令値演算部240は、掘削作業フラグFLがオン(FL=1)であり、かつ、自動モードフラグFmがオン(Fm=1)である条件を満たすか否かを判定する。この条件を満たす場合、作業車両100は、掘削作業中であり、自動モードに設定されている。自動モードフラグFmは、前述のように、オペレータがモード切替スイッチ148を操作して、自動モードを選択するとオン(Fm=1)になり、手動モードを選択するとオフ(Fm=0)になる。
【0088】
図5に示すように、処理P3において、指令値演算部240により上記の条件を満たすこと(YES)、すなわち、掘削作業フラグFLと自動モードフラグFmの双方がオンであることが判定されると、制御装置200は、次の処理P4を実行する。この処理P4において、指令値演算部240は、たとえば、掘削作業中における油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeを、油圧ポンプ105Aの制御指令値を演算するための吐出量上限値Qlimに設定し(Qlim=Qlime)、次の処理P6を実行する。
【0089】
一方、処理P3において、指令値演算部240により上記の条件を満たさないこと(NO)、すなわち、掘削作業フラグFLと自動モードフラグFmの少なくとも一方がオフであることが判定されると、制御装置200は、次の処理P5を実行する。この処理P5において、指令値演算部240は、たとえば、掘削作業中を除く通常時における油圧ポンプ105Aの吐出量上限値Qlimnを、油圧ポンプ105Aの制御指令値を演算するための吐出量上限値Qlimに設定し(Qlim=Qlimn)、次の処理P6を実行する。
【0090】
この処理P6において、指令値演算部240は、たとえば、処理P4または処理P5で設定された油圧ポンプ105Aの吐出量上限値Qlimに基いて制御指令値Ncmdを算出する。以下、
図8および
図9を参照して、
図5に示す処理P6を説明する。ここでは、油圧ポンプ105Aの傾転角が最大であり、掘削作業中を除く通常時の油圧ポンプ105Aの吐出量上限値Qlimと、最大吐出量Qmaxとが、等しい場合を想定する。
【0091】
図8は、
図3に示す指令値演算部240から出力される制御指令値Ncmdを変化させたときの油圧ポンプ105Aの吐出量Qdと吐出圧Pdとの関係を示すグラフである。
図9は、自動モードフラグFmと掘削作業フラグFLが同時にオンになる自動モードでの掘削作業中にバケット角θbを変化させたときの油圧ポンプ105Aの吐出量Qdと吐出圧Pdとの関係を示すグラフである。
【0092】
図8に示すように、制御指令値Ncmdが100%である場合、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdは、実線で示すように、油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdに応じて調整される。制御指令値Ncmdが減少するにつれて、油圧ポンプ105Aの回転速度が低減し、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdも減少する。このため、制御指令値Ncmdが減少するにつれて、吐出圧Pdに応じた吐出量Qdが減少する。
【0093】
図5に示す処理P6において、指令値演算部240は、たとえば、前の処理P4,P5で設定した吐出量上限値Qlimと、吐出圧センサ158Aによって検出される吐出圧Pdと、
図8に示す制御特性とに基いて制御指令値Ncmdを算出する。制御指令値Ncmdを調整することで、油圧ポンプ105Aの回転速度が制御される。
【0094】
油圧ポンプ105Aの回転速度を制御する制御指令値Ncmdは、たとえば、油圧ポンプ105Aの吐出量上限値Qlim、押しのけ容量q、および容積効率ηvに基いて、以下の式(2)によって求めることができる。なお、式(2)において、cdは単位換算のための係数である。
【0095】
Ncmd={Qlim/(q・ηv)}・cd ・・・(2)
【0096】
指令値演算部240によって算出される制御指令値Ncmdは、
図2および
図3に示すように、インバータ107Bに入力される。インバータ107Bは、入力された制御指令値Ncmdに応じて作業用のモータ108Aの回転数を制御する。すなわち、インバータ107Bは、モータ108Aの回転数を制御することで、モータ108Aの出力軸に機械的に連結された油圧ポンプ105Aの回転速度を制御する。
【0097】
たとえば、モータ108Aの出力軸と油圧ポンプ105Aの入力軸とが直接的に連結されている場合には、制御指令値Ncmdがそのまま作業用のモータ108Aの回転速度指令値となる。また、モータ108Aの出力軸と油圧ポンプ105Aの入力軸とがギアを介して連結されている場合には、制御指令値Ncmdにギア比を乗じた値が作業用のモータ108Aの回転速度指令値となる。
【0098】
図9は、
図2の油圧ポンプ105Aのバケット角θbの変化に対する吐出量Qdと吐出圧Pdの関係を示すグラフである。たとえば、掘削作業フラグFLおよび自動モードフラグFmがオンにされると、前述の処理P4において油圧ポンプ105Aの吐出量上限値Qlimが制限吐出量Qlimeに制限される。この場合、指令値演算部240は、
図5に示す処理P6において、油圧ポンプ105Aの吐出量上限値Qlimが、
図7の相関マップM1およびバケット角θbに基いて算出された制限吐出量Qlimeを超えないように、制御指令値Ncmdを算出する。
【0099】
図4の(b)に示すような掘削作業の序盤で、たとえば、
図6に示すバケット角θbが基準面RPに対して-5[°]以上かつ5[°]以下の初期バケット角θb0である場合には、
図7に示すように、制限吐出量Qlimeが初期制限吐出量Qlim0となる。このため、指令値演算部240は、
図5に示す処理P6において、
図9に示すように、油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdの増減に関わらず、吐出量Qdが初期制限吐出量Qlim0を超えないように、制御指令値Ncmdを算出する。
【0100】
その後、
図4の(b)から(c)に示すような掘削作業の中盤で、たとえば、
図6に示すバケット角θbが初期バケット角θb0よりも大きい中盤バケット角θb1に増加すると、
図7に示すように、制限吐出量Qlimeが初期制限吐出量Qlim0よりも増加して中盤制限吐出量Qlim1となる。このため、指令値演算部240は、
図5に示す処理P6において、
図9に示すように、油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdの増減に関わらず、吐出量Qdが中盤制限吐出量Qlim1を超えないように、制御指令値Ncmdを算出する。
【0101】
さらに、
図4の(c)から(d)に示すような掘削作業の終盤で、たとえば、
図6に示すバケット角θbが中盤バケット角θb1よりも大きい終盤バケット角θb2に増加すると、
図7に示すように、制限吐出量Qlimeが中盤制限吐出量Qlim1よりも増加して終盤制限吐出量Qlim2となる。このため、指令値演算部240は、
図5に示す処理P6において、
図9に示すように、油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdの増減に関わらず、吐出量Qdが終盤制限吐出量Qlim2を超えないように、制御指令値Ncmdを算出する。なお、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdが一定になるように調整できる範囲は、油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdが最大吐出圧Pmaxを超えない範囲である。
【0102】
処理P6が終了すると、制御装置200は、
図5に示す処理フローを終了させ、次の制御周期で処理P1から処理P6までを繰り返し実行する。走行駆動力Fc、ボトム圧Pa、バケット角θb、指示値Cd、吐出圧Pdなど、作業状態の判定や油圧ポンプ105Aの制御指令値Ncmdの演算に使用される各種のパラメータは、たとえば、制御装置200により、操作装置140および状態検出センサ150からの信号に基いて所定の制御周期で繰り返し演算される。
【0103】
以下、従来技術との対比に基いて本実施形態の作業車両100の作用を説明する。
【0104】
図4の(a)から(d)に示すような作業車両100の掘削作業において、単位時間当たりの掘削量[ton/h]で表される作業効率を向上させるためには、一連の作業を速やかに行いつつ、バケット122に掬い込む掘削対象物ETの量を増加させる必要がある。しかし、作業機120のアーム121の上昇速度やバケット122の回転速度、すなわち作業機120の動作速度が高すぎると、掘削対象物ETの表層部分のみがバケット122に掬い込まれる所謂「浅掘り」が発生し、掘削作業における掘削量が低下して作業効率が低下する。
【0105】
図10は、従来技術による油圧ポンプ105Aの定容量制御における吐出圧Pdと吐出量Qdとの関係を示すP-Q線図である。油圧ポンプ105Aの定容量制御では
図10に示すように、掘削作業時に油圧ポンプ105Aの吐出量Qdを、たとえば、最大吐出量Qmaxの50%など、最大吐出量Qmaxよりも低い所定値に低減する。この従来の定容量制御によれば、
図4の(a)から(b)に示すような掘削作業の序盤で作業機120の動作速度が低減され、浅掘りを抑制する効果が期待できる。
【0106】
しかしながら、この従来の定容量制御では、
図4の(c)から(d)に示すようにバケット122が掘削対象物ETに対して十分に貫入した掘削作業の中盤以降においても、作業機120の動作速度が低減されるため、掘削作業に要する時間が長くなる。また、バケット122が掘削対象物ETに対して必要以上に貫入し、前輪101および後輪102の空転、作業車両100のストール、または作業機120の圧力リリーフなどが発生して、掘削作業に要する時間が長くなるおそれもある。
【0107】
このような課題を解消するために、
図10に示す最大吐出量Qmaxよりも低い吐出量Qdの所定値をより高い値に設定すると、
図4の(a)から(b)に示すような掘削作業の序盤で作業機120の動作速度が必要以上に上昇し、浅掘りのリスクが発生する。また、オペレータは、浅掘りを防止するために複雑で精密な操作を行う必要があり、オペレータに対する負担が大きく、オペレータの集中力が低下して掘削作業の作業効率が低下するおそれがある。
【0108】
図11は、従来技術による油圧ポンプ105Aの定馬力制御における吐出圧Pdと吐出量Qdとの関係を示すP-Q線図である。油圧ポンプ105Aの定馬力制御では、たとえば、
図11に示すように、掘削作業時に油圧ポンプ105Aの吸収トルクの設定値(ポンプ吸収トルク上限値)を最大値の50%などの所定値に低減する。すなわち、油圧ポンプ105Aの出力(=吐出量Qd×吐出圧Pd)の上限値が最大馬力の50%などの所定値に設定される。
【0109】
しかしながら、この従来の定馬力制御は、
図4の(a)から(b)に示すような掘削作業の序盤で、掘削対象物ETから作業機120に作用する反力が小さく油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdが低い場合、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdはほとんど低減されない。そのため、バケット122の上昇速度は、ほとんど低減されず、浅掘りのリスクが発生する。また、オペレータは、浅掘りを防止するために複雑で精密な操作を行う必要があり、オペレータに対する負担が大きく、オペレータの集中力が低下して掘削作業の作業効率が低下するおそれがある。
【0110】
また、この従来の定馬力制御は、
図4の(c)から(d)に示す掘削作業の中盤以降では、掘削対象物ETから作業機120に作用する反力が大きく、油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdが高くなり、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdが必要以上に低減されてしまう。その結果、掘削作業の中盤以降で作業機120の動作速度が著しく低減し、作業効率が低下するおそれがある。
【0111】
以上のとおり、従来の定容量制御および定馬力制御は、いずれも作業効率の観点で改善の余地がある。本願の発明者らは、作業車両100による掘削作業におけるオペレータの操作、油圧ポンプ105Aの制御、および作業効率[ton/h]の向上について鋭意研究を重ねた結果、従来技術の課題を解決する本実施形態の作業車両100の以下の態様を見出した。
【0112】
本実施形態の作業車両100は、前述のように、車体110と、その作業車両100に取り付けられて掘削作業を行う作業機120と、その作業機120を駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプ105Aと、その油圧ポンプ105Aの吐出量Qdを制御する制御装置200と、を備える。作業機120は、車体110に取り付けられるアーム121と、そのアーム121に取り付けられるバケット122と、を有している。また、作業機120は、上記作動油の供給により伸縮してアーム121を駆動させるアームシリンダ123と、上記作動油の供給により伸縮してバケット122を駆動させるバケットシリンダ124と、を有している。さらに、作業機120は、バケット122の角度であるバケット角θbを検出するバケット角センサとしてのアーム相対角センサ152およびバケット相対角センサ153を有している。制御装置200は、そのバケット角θbセンサから取得するバケット角θbを含む掘削パラメータに基いて掘削作業が開始されたか否かを判定する。また、制御装置200は、掘削作業の開始を判定した場合に、
図7に示すように、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdの上限を最大吐出量Qmaxよりも少ない制限吐出量Qlimeに制限するとともに、掘削パラメータに基いて認識した掘削作業の進展に伴って制限吐出量Qlimeを増加させる。
【0113】
このような構成により、本実施形態の作業車両100によれば、掘削作業中にオペレータがアーム操作装置142およびバケット操作装置143の操作量を一定にしていても、掘削作業の序盤で作業機120の動作速度を十分に低減することができる。これにより、
図4の(b)から(c)までの掘削作業の序盤で、バケット122の上昇タイミングが性急になることが防止されるだけでなく、バケット122の上昇速度の過剰な増加が抑制され、掘削対象物ETの表層部のみが掘削される浅掘りが防止される。
【0114】
これにより、本実施形態の作業車両100のオペレータは、たとえば、バケット122が掘削対象物ETに貫入された直後に、アーム操作装置142、バケット操作装置143、およびアクセル操作装置144を最大操作範囲まで操作する簡易掘削操作が可能になる。これにより、掘削作業におけるオペレータの負担を軽減し、オペレータの集中力を持続させ、掘削作業の効率を向上させることができる。なお、簡易掘削操作は、たとえば、掘削作業が所定の段階まで進展して終了したときに解除される。
【0115】
また、
図4の(c)から(d)までの掘削作業の中盤から終盤では、掘削作業の進展に伴って作業機120の動作速度を上昇させ、掘削作業に要する時間を短縮することができる。また、掘削作業の序盤から終盤にかけて作業機120の動作速度を上昇させることで、バケット122が掘削対象物ETに過剰に貫入することが防止され、前輪101と後輪102の空転、作業車両100のストール、および作業機120の圧力リリーフが防止される。
【0116】
また、本実施形態の作業車両100は、前述の特許文献1に記載された作業車両と比較して油圧回路を簡略化することが可能になり、コストおよび油漏れのリスクを低減することができる。したがって、本実施形態によれば、従来技術よりも構成を簡略化することができ、掘削作業の作業効率を向上させることが可能な作業車両100を提供することができる。
【0117】
図12は、
図1の作業車両100の掘削パラメータおよびその他のパラメータの時間変化を示すタイムチャートである。本実施形態の作業車両100において、掘削パラメータは、少なくともバケット角θbを含む。
図12の(a)は、アクセル操作装置144、アーム操作装置142、およびバケット操作装置143のそれぞれの操作量であるアクセル操作量Ra、アーム操作量La、およびバケット操作量Lbの時系列変化を、それぞれ、実線、破線、および一点鎖線で示している。
【0118】
図12の(b)から(f)は、それぞれ、本実施形態の作業車両100の油圧ポンプ105Aの吐出圧Pd、モータ108Bの回転速度Ni、油圧ポンプ105Aの吐出量Qd、アーム121の角度であるアーム角θa、およびバケット角θbの時系列変化を実線で示している。また、
図12の(d)から(f)では、比較例として、それぞれ、従来の定容量制御における油圧ポンプ105Aの吐出量Qd、アーム角θa、およびバケット角θbを破線で示している。
【0119】
なお、
図12に示す例では、本実施形態の作業車両100と比較例におけるオペレータの操作は同一であり、掘削作業中の油圧ポンプ105Aの傾転角は一定値であることを想定している。また、作業車両100のオペレータは、たとえば、掘削作業を開始する前に、モード切替スイッチ148を操作して自動モードを選択し、掘削作業を開始時に前述の簡易掘削操作を行う。
【0120】
時刻t0までは、オペレータはアクセル操作装置144を操作せず、アクセル操作量Raはゼロのままであり、作業車両100は停止または微速前進している。時刻t0において、オペレータがアクセル操作装置144を操作することで、アクセル操作量Raが増加して走行駆動力Fcが増加し、作業車両100が掘削対象物ETへ向けた前進および加速を開始する。この段階では、作業機120のバケット122が掘削対象物ETに貫入していないため、油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdは低い状態を維持している。
【0121】
また、この段階では、オペレータはアーム操作装置142およびバケット操作装置143を操作せず、アーム操作量Laおよび操作量Lbはゼロであり、作業機120はアーム121が下降してバケット122のツースが掘削対象物ETを向く突入姿勢を維持している。この突入姿勢で、アーム角θaおよびバケット角θbは小さく、
図6に示すように、バケット122の前方側の側面122fは、地表面の近傍に位置して地表面とおおむね平行になっている。
【0122】
時刻t1において、突入姿勢を維持した作業機120のバケット122が掘削対象物ETに貫入すると、アームシリンダ123のボトム圧Paおよび油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdが上昇する。さらに、時刻t2において、オペレータがアーム操作装置142を操作することで、アーム操作量Laが急増し、アーム121が上方に回動してバケット122が上昇を開始し、掘削作業フラグFLがオフからオンに切り替わる。この時刻t2までオペレータはバケット操作装置143を操作せず、操作量Lbはゼロのままである。
【0123】
また、本実施形態の作業車両100は、
図12の(d)に示すように、時刻t2において、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdが、掘削作業の序盤の制限吐出量Qlimeである初期制限吐出量Qlim0に制限されている。また、
図12の(c)に示すように、作業用のモータ108Bの回転速度Niも、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdに応じて初期上限値Nlim0まで上昇している。この初期上限値Nlim0は、たとえば、最大回転速度Nmaxの半分程度の中間回転速度Nmidよりも低い。
【0124】
その後、時刻t3において、オペレータがバケット操作装置143をクラウド側へ操作することで、バケット122の操作量Lbが急増する。その結果、モータ108Bの回転速度Niが増加して、油圧ポンプ105Aの吐出圧Pdおよび吐出量Qdが増加し、バケットシリンダ124に作動油が供給され、バケット122が回動してバケット角θbが増加する。その後、バケット角θbが徐々に増加して掘削対象物ETがバケット122内に掬い込まれ、バケット角θbの増加に伴って油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeが増加することで、モータ108Bの回転速度Niおよび吐出量Qdが増加していく。
【0125】
その後、時刻t5よりも前に、バケット角θbが最終バケット角θb3に達し、油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeが最大吐出量Qmaxと等しくなる。その後、モータ108Bの回転速度Niが最大回転速度Nmaxに達すると、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdは、最大吐出量Qmaxまで上昇する。その後、時刻t5において、オペレータは、アーム操作装置142およびバケット操作装置143を操作してアーム操作量Laおよび操作量Lbがゼロにすることで、掘削作業を終了させる。
【0126】
一方、
図12の(d)に破線で示す比較例の定容量制御では、時刻t2において、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdは、初期制限吐出量Qlim0よりも多く、最大吐出量Qmaxの半分程度である所定の吐出量Qmidまで増加している。その後、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdは、時刻t5まで所定の吐出量Qmidに維持され、アーム角θaおよびバケット角θbがほぼ一定の時間変化率で上昇していく。
【0127】
そのため、本実施形態の作業車両100は、時刻t2から時刻t4まで、
図12の(d)に実線で示す油圧ポンプ105Aの吐出量Qdが、破線で示す比較例の油圧ポンプ105Aの吐出量Qdよりも少なくなっている。また、本実施形態の作業車両100は、時刻t4から時刻t5まで、
図12の(d)に実線で示す油圧ポンプ105Aの吐出量Qdが、破線で示す比較例の油圧ポンプ105Aの吐出量Qdよりも多くなっている。
【0128】
また、本実施形態の作業車両100は、時刻t4まで、
図12の(e)および(f)に実線で示すアーム角θaおよびバケット角θbの上昇速度(時間変化率)が、破線で示す比較例のアーム角θaおよびバケット角θbの上昇速度よりも低い。また、本実施形態の作業車両100は、時刻t4以降の掘削作業の中盤から終盤にかけて、実線で示すアーム角θaおよびバケット角θbの上昇速度が時間の経過とともに増加し、破線で示す比較例のアーム角θaおよびバケット角θbの上昇速度よりも高くなっている。
【0129】
したがって、本実施形態の作業車両100によれば、オペレータによる簡易掘削操作に対し、掘削作業の序盤で作業機120の動作速度を十分に低減させて浅掘りを抑制することができる。また、本実施形態の作業車両100によれば、掘削作業の序盤で油圧ポンプ105Aの吐出量Qdが比較例よりも減少することで、作業機120で消費する動力を必要最小限に抑制し、その分、走行駆動力Fcを増加させて掘削作業の効率を向上させることができる。
【0130】
これに対し、比較例の従来の定容量制御では、掘削作業の序盤で作業機120の動作速度を十分に低減させることができず、浅掘りのリスクが発生し、それを回避する操作を行うオペレータの負担が増大する。その結果、比較例の従来の定容量制御では、本実施形態の作業車両100と比較して、掘削作業の効率が低下するおそれがある。
【0131】
また、本実施形態の作業車両100によれば、オペレータによる簡易掘削操作に対し、掘削作業の中盤から終盤にかけて作業機120の動作速度を十分に増加させて作業時間を短縮するとともに、バケット122の掘削対象物ETに対する過剰な貫入を抑制できる。したがって、本実施形態の作業車両100によれば、オペレータの負担を軽減しつつ、掘削作業の効率向上と燃費向上を実現させることができ、未熟なオペレータでも熟練したオペレータに近い作業効率を実現することができる。
【0132】
一方、比較例の従来の定容量制御では、掘削作業の中盤から終盤にかけて作業機120の動作速度を十分に上昇させることができない。そのため、掘削作業にかかる時間が長くなるだけでなく、バケット122が掘削対象物ETに過剰に貫入するおそれがある。その結果、従来の定容量制御では、作業車両の車輪の空転、ストール、作業機の圧力リリーフなどが発生して、掘削作業の作業効率が低下するおそれがある。また、掘削対象物ETに対するバケット122の過剰な貫入を回避する操作を行うオペレータの負担が増大する。
【0133】
さらに、本実施形態の作業車両100によれば、オペレータの簡易掘削操作により掘削作業時の操作装置140の操作回数が減少することで、操作装置140、作業機120、走行用のモータ108A、およびトランスミッションなどの物理的な負荷が減少する。したがって、これらの装置の耐用期間を延長することできる。
【0134】
また、本実施形態の作業車両100によれば、油圧ポンプ105Aの容量を制御するための電磁比例弁、レギュレータ、ならびに、これらを動作させる電気回路および油圧回路が不要になる。そのため、従来の油圧ポンプ105Aの容量を制御する技術と比較して、油圧回路の部品点数が削減されて構成が簡素化され、油圧回路のコスト低減と、環境負荷の原因となる油漏れのリスクを低減することが可能になる。
【0135】
また、本実施形態の作業車両100において、制御装置200は、前述の条件1Aおよび条件2Aのように、掘削作業の開始を未判定で、少なくともバケット角θbが下限角度θbl以上、上限角度θbh以下の所定の角度範囲内の角度になった場合に、掘削作業の開始を判定する。このように、制御装置200が掘削作業の開始を判定する条件に、バケット角θbが所定の角度範囲内であることを含めることで、作業機120が掘削対象物ETにバケット122を貫入させる姿勢になっていることを判定できる。
【0136】
また、本実施形態の作業車両100は、前述のように、アームシリンダ123のボトム側の油室の圧力であるボトム圧Paを検出するアームシリンダ圧センサ158Dをさらに備えている。また、制御装置200は、前述の条件1Aおよび条件2Aに加えて、前述の条件3Aのように、ボトム圧Paが所定の下限圧力Pal以上である場合に、掘削作業の開始を判定する。このように、制御装置200が掘削作業の開始を判定する条件にボトム圧Paが所定の下限圧力Pal以上であることを含めることで、バケット122が掘削対象物ETに貫入されて掘削作業が開始されたことを、より正確に判定することができる。
【0137】
また、本実施形態の作業車両100は、前述のように、アーム121およびバケット122のそれぞれの操作量La,Lbを検出する操作装置140をさらに備えている。また、制御装置200は、前述の条件1Aおよび条件2Aに加えて、前述の条件5Aのように、アーム121の操作量Laまたはバケット122の操作量Lbが所定の閾値を超える場合に、掘削作業の開始を判定する。このように、制御装置200が掘削作業の開始を判定する条件に操作量Laまたは操作量Lbが所定の閾値を超えることを含めることで、オペレータの操作装置140の操作に基いて、掘削作業が開始されたことをより正確に判定することができる。
【0138】
また、本実施形態の作業車両100において、制御装置200は、車体110を前進させる走行駆動力Fcを取得し、前述の条件1Aおよび条件2Aに加えて、前述の条件4Aのように、走行駆動力Fcが所定の閾値を超える場合に、掘削作業の開始を判定する。このように、制御装置200が掘削作業の開始を判定する条件に走行駆動力Fcが所定の閾値を超えることを含めることで、作業車両100が掘削対象物ETに向けて前進する掘削作業の開始をより正確に判定することができる。
【0139】
なお、作業車両100は、たとえば、登坂走行または地面を平坦にならす整地作業において、バケット角θbが条件2Aの所定の角度範囲内となり、走行駆動力Fcが条件4Aの所定の閾値を超える場合がある。しかし、登坂走行および整地作業では、アームシリンダ123のボトム圧Paが条件3Aの下限圧力Palを超えることはなく、アーム121およびバケット122のそれぞれの操作量La,Lbが条件5Aのしきい値を超えることもない。したがって、ボトム圧Paの条件3Aまたは操作量La,Lbの条件5Aを掘削作業の開始を判定する条件に含めることで、登坂走行および整地作業における掘削作業開始の誤判定を防止することができる。
【0140】
また、作業車両100は、たとえば、ダンプトラックなどの運搬車両に掘削対象物ETを積み込む積込作業において、バケット角θbが条件2Aの所定の角度範囲内となり、アームシリンダ123のボトム圧Paが条件3Aの下限圧力Palを超える可能性がある。しかし、積込作業のような定置作業では、作業車両100の走行駆動力Fcが条件4Aの所定の閾値を超えることはない。したがって、走行駆動力Fcの条件4Aを掘削作業の開始を判定する条件に含めることで、積込作業などの定置作業における掘削作業開始の誤判定を防止することができる。
【0141】
また、本実施形態の作業車両100において、制御装置200は、前述のように掘削作業の開始を判定した後、バケット角θbが所定の解除角度θbc以上になった場合に、掘削作業の終了を判定する。これにより、制御装置200は、作業機120が掘削対象物ETを運搬する運搬姿勢になったことを判定し、掘削作業の終了を判定することができる。掘削作業中を除く通常の状態において、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdは、制限吐出量Qlimeに制限されない。
【0142】
したがって、掘削作業の終了後に、作業車両100を運搬車両へ向かって走行させる際に、バケット122を十分な速度で上昇させることができる。また、作業車両100がバケット122内の掘削対象物ETを運搬車両に積み込む際に、バケット122を十分な速度で前方へ回動させてダンプ動作を行うことができる。これにより、作業車両100の掘削作業終了後の作業効率を向上させることができる。
【0143】
また、本実施形態の作業車両100において、制御装置200は、バケット角θbの増加を掘削作業の進展とみなし、バケット角θbの増加に伴って制限吐出量Qlimeを増加させる。バケット角θbは、その他の掘削パラメータと比較して、最も掘削作業の進展との相関が良好である。したがって、バケット角θbの増加を掘削作業の進展とみなすことで、より正確に掘削作業の進展度合を把握することができる。
【0144】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記従来技術よりも構成を簡略化することができ、掘削作業の作業効率を向上させることが可能な作業車両100を提供することができる。なお、本開示に係る作業車両は、前述の実施形態1に限定されない。たとえば、前述の実施形態1では、掘削作業フラグFLがオフからオンに切り換えられた場合に、制御装置200がバケット角θbを含む掘削パラメータに基く掘削作業の進展に応じて油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeを算出する例を説明した。
【0145】
しかしながら、制御装置200は、たとえば、掘削作業フラグFLがオフからオンに切り換えられた場合に、バケット角θbに関わらず、制限吐出量Qlimeを初期制限吐出量Qlim0に設定してもよい。この場合、制御装置200は、たとえば、掘削作業フラグFLがオフからオンに切り換えられた後に、バケット角θbに変化が生じてから、バケット角θbの増加に伴って、制限吐出量Qlimeを増加させることができる。
【0146】
[実施形態2]
以下、実施形態1の
図1、
図2および
図4から
図12を参照し、
図13および
図14を用いて本開示に係る作業車両の実施形態2を説明する。本実施形態では、前述の実施形態1において説明した構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0147】
図13は、本開示に係る作業車両100の実施形態2を示す制御装置200の機能ブロック図である。本実施形態の制御装置200は、前述の作業判定部210、掘削時上限値演算部220、通常時上限値演算部230、および指令値演算部240に加えて、貫入距離演算部250を有している。
【0148】
貫入距離演算部250は、たとえば、前述の作業判定部210等と同様に、CPU201によってROM202に記憶されたプログラムを実行することで実現される制御装置200の機能を表している。また、本実施形態の作業判定部210および掘削時上限値演算部220は、それぞれ、掘削作業の開始を判定する方法および制限吐出量Qlimeの演算方法が、前述の実施形態1の作業判定部210および掘削時上限値演算部220と異なっている。
【0149】
作業判定部210は、たとえば、走行駆動力Fcと、アームシリンダ123のボトム圧Paと、バケット角θbとを含む掘削パラメータに基いて、掘削作業が開始されたか否かを判定する。すなわち、本実施形態の作業判定部210は、たとえば、
図5の処理P1において、前述の実施形態1の作業判定部210が用いた条件1Aから条件5Aのうち、条件5Aを除く条件1Aから条件4Aを用いて掘削作業が開始されたか否かを判定する。
【0150】
貫入距離演算部250は、たとえば、作業判定部210から入力される掘削作業フラグFLと、車速センサ151から入力される車速Vとに基いて貫入距離Ldを算出する。貫入距離Ldは、作業車両100が掘削対象物ETへ向けて前進して作業機120のバケット122の先端のバケットツース122tが掘削対象物ETに貫入した時点からの作業車両100の走行距離である。
【0151】
貫入距離演算部250は、作業判定部210から入力された掘削作業フラグFLがオフ(FL=0)の場合、貫入距離Ldを初期値であるゼロ(Ld=0)にリセットする。また、貫入距離演算部250は、作業判定部210から入力された掘削作業フラグFLがオン(FL=1)の場合、たとえば、車速V[m/制御周期]を制御周期ごとに積算することによって貫入距離Ldを算出する。換言すると、貫入距離演算部250は、掘削作業の開始判定時からの作業車両100の走行距離を貫入距離Ldとして算出する。
【0152】
本実施形態の掘削時上限値演算部220は、たとえば、掘削作業中の油圧ポンプ105Aの吐出量Qdの上限として、油圧ポンプ105Aの最大吐出量Qmaxよりも少ない制限吐出量Qlimeを算出する。さらに、本実施形態の掘削時上限値演算部220は、バケット角θbと、アーム角θaと、貫入距離Ldとを含む掘削パラメータに基いて認識した掘削作業の進展に伴って、制限吐出量Qlimeを増加させる。
【0153】
図14は、
図13に示す本実施形態の掘削時上限値演算部220の機能ブロック図である。本実施形態の掘削時上限値演算部220は、たとえば、第1上限値演算部221と、第2上限値演算部222と、第3上限値演算部223と、制限吐出量選択部224と、を有している。本実施形態の制御装置200のROM202には、掘削時上限値演算部220の各演算部によって使用される相関マップM1,M2,M3が記憶されている。
【0154】
相関マップM1は、前述の実施形態1の相関マップM1と同様に、バケット角θbと、掘削作業中の油圧ポンプ105Aの第1制限吐出量Qlime1との関係を規定している。第1制限吐出量Qlime1は、たとえば、バケット角θbが掘削作業の開始時の初期バケット角θb0以下での範囲では、最大吐出量Qmaxよりも少ない初期制限吐出量Qlim0に設定されている。
【0155】
また、第1制限吐出量Qlime1は、たとえば、バケット角θbが初期バケット角θb0より大きく、掘削作業の終了時の最終バケット角θb3より小さい範囲では、バケット角θbの増加に伴って増加している。また、第1制限吐出量Qlime1は、たとえば、バケット角θbが最終バケット角θb3以上の範囲では、油圧ポンプ105Aの最大吐出量Qmaxと等しくなっている。
【0156】
相関マップM2は、たとえば、アーム角θaと、掘削作業中の油圧ポンプ105Aの第2制限吐出量Qlime2との関係を規定している。第2制限吐出量Qlime2は、たとえば、アーム角θaが掘削作業の開始時の初期アーム角θa0以下の範囲では、最大吐出量Qmaxよりも少ない初期制限吐出量Qlim0に設定されている。
【0157】
また、第2制限吐出量Qlime2は、たとえば、アーム角θaが初期アーム角θa0よりも大きく、掘削作業の終了時の最終アーム角θaxより小さい範囲では、アーム角θaの増加に伴って増加している。また、第2制限吐出量Qlime2は、たとえば、アーム角θaが最終アーム角θax以上の範囲では、油圧ポンプ105Aの最大吐出量Qmaxと等しくなっている。
【0158】
相関マップM3は、たとえば、貫入距離Ldと、掘削作業中の油圧ポンプ105Aの第3制限吐出量Qlime3との関係を規定している。第3制限吐出量Qlime3は、たとえば、貫入距離Ldが掘削作業の開始直後の初期貫入距離Ld0以下の範囲では、最大吐出量Qmaxよりも少ない初期制限吐出量Qlim0に設定されている。
【0159】
また、第3制限吐出量Qlime3は、たとえば、貫入距離Ldが初期貫入距離Ld0よりも長く、掘削作業の終了時の最終貫入距離Ldxより短い範囲では、貫入距離Ldの増加に伴って増加している。また、第3制限吐出量Qlime3は、たとえば、貫入距離Ldが最終貫入距離Ldx以上の範囲では、油圧ポンプ105Aの最大吐出量Qmaxと等しくなっている。
【0160】
第1上限値演算部221は、相関マップM1を参照し、バケット角θbに基いて第1制限吐出量Qlime1を算出する。第2上限値演算部222は、相関マップM2を参照し、アーム角θaに基いて第2制限吐出量Qlime2を算出する。第3上限値演算部223は、相関マップM3を参照し、貫入距離Ldに基いて第3制限吐出量Qlime3を算出する。制限吐出量選択部224は、第1上限値演算部221、第2上限値演算部222、および第3上限値演算部223によって算出された第1制限吐出量Qlime1、第2制限吐出量Qlime2、および第3制限吐出量Qlime3のうち、最大のものを制限吐出量Qlimeとして出力する。
【0161】
以上のように、本実施形態の作業車両100は、アーム121の角度であるアーム角θaを検出するアーム相対角センサ152を備え、掘削パラメータは、アーム角θaを含む。制御装置200は、アーム角θaの増加を掘削作業の進展とみなし、アーム角θaの増加に伴って制限吐出量Qlimeを増加させる。これにより、掘削作業の中盤から終盤にかけて、作業機120の動作速度をより確実に上昇させることが可能になる。
【0162】
また、本実施形態の作業車両100において、掘削作業の進展と相関のある掘削パラメータは、掘削作業の開始を判定した時点からの車体110の走行距離である貫入距離Ldを含む。制御装置200は、上記貫入距離Ldの増加を掘削作業の進展とみなし、貫入距離Ldの増加に伴って制限吐出量Qlimeを増加させる。これにより、たとえば、掘削作業の中盤までアーム操作装置142およびバケット操作装置143が操作されない場合であっても、貫入距離Ldの増加に伴って制限吐出量Qlimeを増加させることができる。
【0163】
したがって、掘削作業の開始後にオペレータによるアーム操作装置142およびバケット操作装置143の操作が遅れた場合でも、掘削対象物ETの浅掘りを防止しつつ、バケット122を十分な速度で上昇させることが可能になる。その結果、掘削作業の中盤以降でバケット122が掘削対象物ETに過剰に貫入することが防止され、前輪101および後輪102の空転、作業車両100のストール、ならびに作業機120の圧力リリーフなどを防止することができる。
【0164】
以上説明したように、本実施形態によれば、前述の実施形態1と同様に、従来技術よりも構成を簡略化することができ、掘削作業の作業効率を向上させることが可能な作業車両100を提供することができる。なお、本開示に係る作業車両は、前述の実施形態2に限定されない。
【0165】
たとえば、前述の実施形態2では、第1制限吐出量Qlime1、第2制限吐出量Qlime2、および第3制限吐出量Qlime3のうち、最大のものを制限吐出量Qlimeとして決定する例を説明した。しかし、制限吐出量Qlimeを決定する方法は、実施形態2の例に限定されない。たとえば、第1制限吐出量Qlime1、第2制限吐出量Qlime2、および第3制限吐出量Qlime3の平均値を制限吐出量Qlimeとしてもよい。
【0166】
[実施形態3]
以下、実施形態1の
図1、
図2および
図4から
図12を参照し、
図15を用いて本開示に係る作業車両の実施形態3を説明する。本実施形態では、前述の実施形態1において説明した構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0167】
図15は、本開示に係る作業車両100の実施形態3を示す200の機能ブロック図である。本実施形態の制御装置200は、掘削時上限値演算部220が、バケット角θbと吐出量調整ダイヤル149の指示値Cdに加え、姿勢センサ159から入力される車体110の姿勢情報θvを用いて、油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeを算出する。
【0168】
より具体的には、掘削時上限値演算部220は、前述の実施形態1と同様に、吐出量調整ダイヤル149の指示値Cdに基く設定上限吐出量Qlimsを超えないように、バケット角θbと相関マップM1を用いて制限吐出量Qlimeを算出する。さらに、本実施形態の掘削時上限値演算部220は、たとえば、姿勢情報θvが所定の許容範囲から外れている場合に、掘削作業の進展に伴う制限吐出量Qlimeの増加を中止する。
【0169】
より詳細には、たとえば、制御装置200のROM202に、あらかじめ姿勢情報θvの許容範囲が記憶される。姿勢情報θvの許容範囲は、たとえば、作業車両100が安定して掘削作業を行うことができる範囲である。姿勢情報θvの許容範囲は、たとえば、ロール角θr、ピッチ角θp、およびヨー角θyのそれぞれの角度範囲を含む。掘削時上限値演算部220は、たとえば、姿勢情報θvが所定の許容範囲から外れている場合に、制限吐出量Qlimeの値を固定し、バケット角θbが増加しても制限吐出量Qlimeの値を増加させないようにする。
【0170】
以上のように、本実施形態の作業車両100は、車体110の姿勢を検出する姿勢センサ159を備えている。制御装置200は、姿勢センサ159によって検出された車体110の姿勢である姿勢情報θvが所定の許容範囲から外れている場合に、掘削作業の進展に伴う制限吐出量Qlimeの増加を中止する。
【0171】
このような構成により、本実施形態の作業車両100によれば、掘削作業中に車体110が不安定な状態で作業機120の動作速度が上昇することが防止され、安全性が向上する。より詳細には、たとえば、バケット122が掘削対象物ETに貫入し、制御装置200によって掘削作業の開始が判定された後に、車体110が傾いたり回転したりして姿勢が所定の許容範囲から外れると、掘削作業が進展しても制限吐出量Qlimeが増加しない。
【0172】
したがって、車体110が不安定な状態で作業機120の動作速度が上昇することが防止され、オペレータは、車体110の姿勢およびバケット122に掬い込まれる掘削対象物ETの量に応じて、余裕を持って掘削作業を行うことができる。その結果、車体110の姿勢が所定の許容範囲を外れた場合でも浅掘りを防止するとともに、作業車両100の安定性を向上させることができる。
【0173】
以上、図面を用いて本開示に係る作業車両の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。上述した実施形態およびその変形例は、本開示を理解し易く説明するために例示したものであり、本開示に係る作業車両は、必ずしも上述したすべての構成を備えるものに限定されない。
【0174】
また、ある実施形態または変形例の構成の一部を他の実施形態または変形例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態または変形例の構成に他の実施形態または変形例の構成を加えることも可能である。なお、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要なすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0175】
以下、前述の実施形態に係る作業車両100のいくつかの変形例を説明する。
【0176】
・変形例1
掘削作業開始条件は、前述の条件1Aから条件5Aに限定されない。
・・変形例1-1
たとえば、条件5Aおよび条件3Aは、いずれも登坂走行や整地作業において、掘削作業開始の誤判定を防止するための条件である。そのため、前述の実施形態1または実施形態2において、条件3Aに代えて条件5Aを採用してもよい。これにより、掘削作業フラグFLがオンになるタイミングの遅延を防止できる。具体的には、バケット122が掘削対象物ETに貫入したときにバケット122の底面が地面に接していると、アームシリンダ123のボトム圧Paが直ちに上昇せず、バケット操作装置143を操作した時点から条件3Aを満たすまでに所定の時間を要する場合がある。このような場合でも、条件3Aに代えて条件5Aを採用することで、掘削作業フラグFLがオンになるタイミングの遅延を防止できる。
・・変形例1-2
アームシリンダ123のボトム圧Paを用いた条件3Aに代えて、以下の条件3Aaが採用されてもよい。
条件3Aa:車体110に作用する反力Frが閾値Fr0以上である。
反力Frは、たとえば、走行駆動力Fcと車速Vに基いて、以下の運動量と力積の関係式(3)を用いて算出される。
Fr=Fc-(m・Vb-m・Va)/(tb-ta) ・・・(3)
ここで、mは作業車両100の質量であり、taは基準時刻であり、tbは基準時刻taから所定時間経過後の時刻であり、Vaは時刻taにおける作業車両100の車速Vであり、Vbは時刻tbにおける作業車両100の車速Vである。本変形例においても、変形例1-1と同様の効果を奏することができる。
・・変形例1-3
前述の条件4Aは、作業車両100が前進していることを判定するための条件であり、積込作業などの定置作業における掘削作業の開始の誤判定を回避するための条件である。そのため、条件4Aに代えて、以下の条件4Aa又は条件4Abを採用することも可能である。
条件4Aa:アクセル操作量Raが所定の閾値以上である。
条件4Ab:走行駆動トルクTmが所定の閾値以上である。
上記の条件4Aaを採用することで、アクセル操作量Ra以外にセンサを用いて状態量を検出する必要がないため、信頼性が向上する。また、前述の式(1)による演算が不要になり、演算処理を高速化することができる。
上記の条件4Abを採用することで、トランスミッションの変速比の影響が回避され、変速中であっても正確に条件の成立を判定することができる。
・・変形例1-4
前述の条件1Aから条件5Aならびに条件1Bおよび条件2Bは、それぞれ、所定時間にわたって条件が満たされた場合に、条件を満たしたことを判定してもよい。たとえば、条件3Aは、アームシリンダ123のボトム圧Paが下限圧力Pal以上である状態を所定時間にわたって維持されたこと、としてもよい。
また、制御装置200は、たとえば、述の条件1Aから条件5Aが成立している状態が所定時間継続した場合に、掘削作業フラグFLをオフからオンに切り替えてもよく、条件1Bおよび条件2Bが成立している状態が所定時間継続した場合に、掘削作業フラグFLをオンからオフに切り替えてもよい。
これにより、掘削パラメータに脈動があったり、掘削パラメータの検出値にノイズが含まれていたり、掘削作業フラグFLが切り替わる前後でオペレータによる操作が変更になったりした場合に、掘削作業フラグFLが想定していないタイミングで切り替わることが防止される。
【0177】
・変形例2
掘削作業終了条件は、前述の条件1Bおよび条件2Bに限定されない。たとえば、掘削作業終了条件が成立してからの時間が、所定の時間閾値(たとえば、5秒程度)を経過した場合に、掘削作業終了条件が成立したことを判定してもよい。時間閾値は、あらかじめROM202に記憶されている。時間閾値は、たとえば、実験等により定められる。本変形例によれば、前述の実施形態で想定した通常の掘削作業とは異なる態様の掘削作業においても、確実に掘削作業終了条件を成立させ、作業効率の低下を防止することができる。
【0178】
・変形例3
前述の実施形態では、作業機120を駆動する作業駆動装置と車体110を走行させる走行駆動装置に電力を供給する電力源がバッテリ106である例を説明した。しかしながら、電力源はバッテリ106以外であってもよい。たとえば、電力源は燃料電池を用いてもよい。また、エンジンと機械的に接続された発電電動機を用いてもよい。また、電力源の後段にコンバータを介して作業駆動装置および走行駆動装置に電力を供給する構成としてもよい。
【0179】
・変形例4
前述の実施形態では、操作装置140がオペレータによって操作されて、掘削作業、積込作業等が行われる作業車両100について説明した。しかしながら、掘削作業状態において、バケット角θbの増加に応じて油圧ポンプ105Aの制限吐出量Qlimeを増加させる制御は、自動運転の作業車両にも適用することができる。この場合、吐出量の上限値は、吐出量の目標値に相当する。
【0180】
・変形例5
前述の実施形態において、各種判定および計算に用いる値は、外乱およびノイズの影響を避けるため、移動平均処理やローパスフィルタ処理をしてもよい。たとえば、走行駆動力Fc、アームシリンダ123のボトム圧Pa、およびバケット角θbのそれぞれに移動平均処理やローパスフィルタ処理をすることで、作業判定部210の誤判定を抑制することができる。また、バケット角θbに移動平均処理やローパスフィルタ処理をすることで、制限吐出量Qlimeの脈動を抑制することができるので、作業機120の動作速度の安定性の向上を図ることができる。
【0181】
・変形例6
前述の実施形態における制御装置200の機能を表す各部は、それらの一部または全部を集積回路などのハードウェアによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0182】
100 作業車両
105A 油圧ポンプ
110 車体
120 作業機
121 アーム
122 バケット
123 アームシリンダ
124 バケットシリンダ
140 操作装置
152 アーム相対角センサ(バケット角センサ)
153 バケット相対角センサ(バケット角センサ)
158D アームシリンダ圧センサ
159 姿勢センサ
200 制御装置
Fc 走行駆動力
La 操作量
Lb 操作量
Ld 貫入距離(走行距離、掘削パラメータ)
Qd 吐出量
Qlime 制限吐出量
θa アーム角(掘削パラメータ)
θb バケット角(掘削パラメータ)
θv 姿勢情報(車体の姿勢)
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、該車体に取り付けられて掘削作業を行う作業機と、該作業機を駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプと、該油圧ポンプの吐出量を制御する制御装置と、を備える作業車両であって、
前記作業機は、前記車体に取り付けられるアームと、該アームに取り付けられるバケットと、前記作動油の供給により伸縮して前記アームを駆動させるアームシリンダと、前記作動油の供給により伸縮して前記バケットを駆動させるバケットシリンダと、前記バケットの角度であるバケット角を検出するバケット角センサと、を有し、
前記制御装置は、前記バケット角センサから取得する前記バケット角を含む掘削パラメータに基いて前記掘削作業が開始されたか否かを判定し、前記掘削作業の開始を判定した場合に前記油圧ポンプの前記吐出量の上限を最大吐出量よりも少ない制限吐出量に制限するとともに前記掘削パラメータに基いて認識した前記掘削作業の進展に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記掘削作業の開始を未判定で、少なくとも前記バケット角が所定の角度範囲内の角度になった場合に、前記掘削作業の開始を判定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記アームシリンダのボトム側の油室の圧力であるボトム圧を検出するアームシリンダ圧センサをさらに備え、
前記制御装置は、さらに前記ボトム圧が所定の下限圧力以上である場合に、前記掘削作業の開始を判定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記アームおよび前記バケットのそれぞれの操作量を検出する操作装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記アームの前記操作量または前記バケットの前記操作量が所定の閾値を超える場合に、前記掘削作業の開始を判定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記車体を前進させる走行駆動力を取得し、前記走行駆動力が所定の閾値を超える場合に、前記掘削作業の開始を判定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記掘削作業の開始を判定した後、前記バケット角が所定の解除角度以上になった場合に、前記掘削作業の終了を判定し、前記油圧ポンプの前記制限吐出量への制限を解除することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御装置は、前記バケット角の増加を前記掘削作業の進展とみなし、前記バケット角の増加に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項8】
前記アームの角度であるアーム角を検出するアーム相対角センサをさらに備え、
前記掘削パラメータは、前記アーム角を含み、
前記制御装置は、前記アーム角の増加を前記掘削作業の進展とみなし、前記アーム角の増加に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項9】
前記掘削パラメータは、前記掘削作業の開始を判定した時点からの前記車体の走行距離を含み、
前記制御装置は、前記走行距離の増加を前記掘削作業の進展とみなし、前記走行距離の増加に伴って前記制限吐出量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項10】
前記車体の姿勢を検出する姿勢センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記姿勢センサによって検出された前記車体の姿勢が所定の許容範囲から外れている場合に、前記掘削作業の進展に伴う前記制限吐出量の増加を中止することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
特許文献1に記載された制御方法は、作業車両の作業機用油圧ポンプの制御方法である。作業車両は、作業機を作動するリフトシリンダおよびチルトシリンダと、これらリフトシリンダおよびチルトシリンダに所定の圧油を供給する油圧ポンプとを備えている。この特許文献1の制御方法では、車両の走行駆動力、および/またはリフトシリンダのボトム側の油圧力、および/またはチルトシリンダの油圧力が、所定の値を越えたときに掘削作業中であると判断する。次に、油圧ポンプの容量を最大容量以下の所定容量に低減するように定め、次に、油圧ポンプの容量を所定容量に低減させる制御を行う。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
また、本実施形態の作業車両100において、制御装置200は、前述のように掘削作業の開始を判定した後、バケット角θbが所定の解除角度θbc以上になった場合に、掘削作業の終了を判定する。これにより、制御装置200は、作業機120が掘削対象物ETを運搬する運搬姿勢になったことを判定し、掘削作業の終了を判定することができる。掘削作業中を除く通常の状態において、油圧ポンプ105Aの吐出量Qdは、制限吐出量Qlimeに制限されず、掘削作業中に実行された制限吐出量Qlimeへの制限は解除される。