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特開2024-177699電力変換装置および電力変換装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177699
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241217BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20241217BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/48 M
H01L23/36 D
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095979
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 達也
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆一
(72)【発明者】
【氏名】新 一貴
(72)【発明者】
【氏名】北尾 政義
【テーマコード(参考)】
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5F136BC03
5F136DA27
5F136FA03
5H770AA21
5H770AA22
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770PA22
5H770QA04
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】3相インバータ回路の電流経路のインダクタンスを低減しつつ、複数のパワー半導体チップの温度を均等化することが可能な電力変換装置を得ること。
【解決手段】3相インバータ回路を構成した電力変換装置であって、パワー半導体モジュールは、前記3相インバータ回路の上アームと下アームとに分けて配置されたパワー半導体チップと、前記パワー半導体チップの下面電極に接合され、前記パワー半導体チップごとに個別に設けられたヒートスプレッダと、前記上アームの端に配置された前記パワー半導体チップに接合された前記ヒートスプレッダと接続され、電源の正極側と接続されたPリードと、前記上アームに複数配置された前記パワー半導体チップに接合された前記ヒートスプレッダの間を接続している相間リードと、前記下アームに複数配置された前記パワー半導体チップの上面電極に接合され、電源の負極側と接続されたNリードと、を備えた。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体モジュールとヒートシンクと制御基板を搭載して3相インバータ回路を構成した電力変換装置であって、
前記パワー半導体モジュールは、
前記3相インバータ回路の上アームと下アームとに分けて配置されたパワー半導体チップと、
前記パワー半導体チップの下面電極に接合され、前記パワー半導体チップごとに個別に設けられたヒートスプレッダと、
前記上アームの端に配置された前記パワー半導体チップに接合された前記ヒートスプレッダと接続され、電源の正極側と接続されたPリードと、
前記上アームに複数配置された前記パワー半導体チップに接合された前記ヒートスプレッダの間を接続している相間リードと、
前記下アームに複数配置された前記パワー半導体チップの上面電極に接合され、電源の負極側と接続されたNリードと、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記パワー半導体チップはすべて同じ型式の同じ形状のものであり、前記パワー半導体チップと前記ヒートスプレッダは、共通の形状に組合されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記パワー半導体チップは、前記パワー半導体モジュールの配置平面において、上下左右対称に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記パワー半導体モジュールは、前記パワー半導体チップまたは前記ヒートスプレッダに接続されたリードとして、前記Pリード、前記相間リードおよび前記Nリードに加え、各相において、前記下アームの前記パワー半導体チップの前記ヒートスプレッダから交流電力を出力するACリードと、前記上アームの前記パワー半導体チップの上面電極に接合し同じ相の前記下アームの前記ヒートスプレッダと接続しているインナーリードとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記パワー半導体モジュールは、モールド樹脂によって封止されていること特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記Pリード、前記Nリードおよび前記ACリードが前記モールド樹脂の外に端部を露出させていることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記Pリードおよび前記Nリードは、前記パワー半導体モジュールの両側からモールド樹脂の外に端部を露出させ、どちら側でも電源と接続できる構造を有することを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上アームを構成する前記パワー半導体チップに接合された前記ヒートスプレッダは、両側に前記相間リードまたは前記Pリードを有することを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記パワー半導体モジュールは、相ごとに分割された3つのパワー半導体モジュールで構成され、各相のパワー半導体モジュールの両側から露出した前記Pリードが他の相の前記Pリードと接合されて前記相間リードを成し、各相のパワー半導体モジュールの両側から露出した前記Nリードが他の相の前記Nリードと接合されて連結された前記Nリードを成すことを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記パワー半導体モジュールの前記ヒートスプレッダは、セラミック基板上に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記ヒートスプレッダの厚さが前記リードの厚さと同じであることを特徴とする請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記ヒートシンクの上に前記パワー半導体モジュールが搭載され、前記パワー半導体モジュールの上部に前記パワー半導体モジュールを制御する制御基板が配置され、前記制御基板には、前記パワー半導体モジュールの前記リードから放出される熱を外部に放出する放熱孔が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記パワー半導体モジュールと前記制御基板を収納するケースを有し、前記ケースには、前記パワー半導体モジュールから露出した電流経路とならないリードに対し、熱を放出するケース側のバスバーが接続されていることを特徴とする請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項14】
パワー半導体モジュールとヒートシンクと制御基板を搭載して3相インバータ回路が構成された電力変換装置の製造方法であって、
パワー半導体チップをヒートスプレッダに接合する工程と、
接合された前記パワー半導体チップと前記ヒートスプレッダを配列して、
前記パワー半導体チップおよび前記ヒートスプレッダにリードを接合する工程と、
前記パワー半導体チップに回路上に信号配線を施す工程と、
前記パワー半導体チップと前記ヒートスプレッダと前記リードと前記信号配線とをトランスファー成形で樹脂モールドしてパワー半導体モジュールを製造する工程と、
前記パワー半導体モジュールのモールド樹脂から露出した前記リードの形状を成形する工程と、
前記パワー半導体モジュールにヒートシンクを接合する工程と、
前記パワー半導体モジュールと前記パワー半導体モジュールを制御する制御基板をケースに収納する工程と、
を含むことを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置および電力変換装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用のモーターを駆動する電力変換装置は、スイッチング可能なパワー半導体チップを組み合わせて構成される電力変換回路となるパワー半導体モジュール、電力変換回路を制御する制御回路、放熱用のヒートシンクなどから構成される。
電力変換装置は、バッテリー等の直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して、回転電機に供給することで、回転電機を駆動している。制御回路は、電力変換回路へパワー半導体チップをスイッチングするための制御信号を送出し、パワー半導体チップをオン・オフさせて回転電機を駆動する電力を制御する。パワー半導体チップは、パワー半導体モジュール内部にリードに接合された状態で実装され、絶縁性の部材を介して放熱用のヒートシンクなどに接続される。
【0003】
自動車に搭載される電力変換装置は、自動車の環境規制などを背景とした燃費効率の向上の要求が厳しく高出力化と小型、軽量化が求められる。その中でも、パワー半導体モジュールは、そのサイズによって金属を多量に使用するヒートシンクおよびバスバー配線などのサイズが決まるため、電力変換装置全体のサイズおよび重量に大きく影響する。そのため、パワー半導体モジュールには常に小型化が求められる。
【0004】
一方、パワー半導体チップに電力が印加されて動作する際に、パワー半導体チップの表面近くのジャンクション部で発熱が生じ、パワー半導体チップの温度が上昇する。パワー半導体チップで生じた熱は、パワー半導体モジュールの配線部材および絶縁層などを通して、ヒートシンクに放出される。パワー半導体チップの温度が過度に上昇すると、パワー半導体チップの故障、およびパワー半導体チップに電力を伝達する配線部材との接合部の劣化等の原因となるため、パワー半導体チップは設計段階で決められた許容温度以下で動作させる必要がある。
【0005】
また、パワー半導体モジュールの面積を小さくしつつ温度を抑える方法としては、パワー半導体チップで生じる発熱量を小さくすることが考えられる。パワー半導体チップの発熱は、導通損失とスイッチング損失に分けられる。導通損失はパワー半導体チップの性能と通電する電流の大きさによって主に決定される。一方、スイッチング損失はパワー半導体チップをオン・オフさせるときの電流と電圧の変化のさせ方で主に決まる損失であり、この損失にはパワー半導体チップのスイッチング速度が大きく影響する。スイッチング速度を早くするためには、パワー半導体チップをオン・オフさせるときに生じるサージ電圧を小さくする必要がある。また、このサージ電圧は、パワー半導体チップによって構成される電流の配線経路のインダクタンスが小さいほど小さくできる。結果として、パワー半導体モジュールの温度を抑えるためには、パワー半導体チップおよび接続される配線経路のインダクタンスを小さくすることが重要となる。
【0006】
これらの理由から、小型、軽量、高出力の電力変換装置を得るためには、パワー半導体チップに発生する発熱量を小さくするように電流経路のインダクタンスを低減する必要がある。また、高い温度を示すパワー半導体チップが一部に集中しないように、電力変換回路を構成する複数のパワー半導体チップの温度を均等化する必要がある。
電力変換装置の小型、軽量化に向けて3相インバータ回路を搭載する構造について様々な検討がされている。3相インバータ回路を一つのパワー半導体モジュールに搭載することで、配線基板上に3相インバータ回路を実装して構成する場合に比べて、小型化が容易となる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この特許文献1に記載のパワー半導体モジュールは、一つのパワー半導体モジュールの中に6個のスイッチング可能なパワー半導体チップが搭載され、パワー半導体チップはパワー半導体モジュールの内部に設けられた4個のヒートスプレッダの上面に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-89794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示されるパワー半導体モジュールは、電気回路上の制約等によって、放熱部材として使用されるヒートスプレッダの形状が決定されており、3相インバータ回路の上アーム側の3個のパワー半導体チップが連結された1個のヒートスプレッダに搭載され、下アーム側の3個のパワー半導体チップが3個のヒートスプレッダにそれぞれ搭載されている。ヒートスプレッダの伝熱面積が異なるため、上アームと下アームでパワー半導体チップの温度がばらつく原因となっている。また、外部出力用のリードの配置などの制約で、パワー半導体モジュール内部のパワー半導体チップの配置は、上下左右に非対称であり、搭載位置に偏りがある構成となっている。この結果、温度がばらついた中で最も高い温度を示すパワー半導体チップを保護するために、電力変換装置の出力を制限することになり、所定の出力に対応しようとすると、パワー半導体チップおよびパワー半導体モジュールが大型化する原因になっている。
【0010】
本願は、上記のような従来の課題を解消するためになされたものであり、パワー半導体モジュールにおける3相インバータ回路の電流経路のインダクタンスを低減してパワー半導体チップで生じる発熱を低減し、かつ、パワー半導体モジュールをパワー半導体チップの温度を均等化するように構成することより、小型軽量でありながら高出力化を実現する電力変換装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係わる電力変換装置は、パワー半導体モジュールとヒートシンクと制御基板を搭載して3相インバータ回路を構成した電力変換装置であって、前記パワー半導体モジュールは、前記3相インバータ回路の上アームと下アームとに分けて配置されたパワー半導体チップと、前記パワー半導体チップの下面電極に接合され、前記パワー半導体チップごとに個別に設けられたヒートスプレッダと、前記上アームの端に配置された前記パワー半導体チップに接合された前記ヒートスプレッダと接続され、電源の正極側と接続されたPリードと、前記上アームに複数配置された前記パワー半導体チップに接合された前記ヒートスプレッダの間を接続している相間リードと、前記下アームに複数配置された前記パワー半導体チップの上面電極に接合され、電源の負極側と接続されたNリードと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本願によれば、パワー半導体モジュールにおける3相インバータ回路の電流経路のループが小さくなるリード配置にしてインダクタンスを低減することができるので、パワー半導体チップで生じるスイッチング損失による発熱を低減することが可能となる。また、パワー半導体チップごとにヒートスプレッダを設けた構造としたことで、パワー半導体チップごとの放熱経路の熱抵抗の違いを減らし、それよってパワー半導体チップごとの温度差を低減することが可能となる。これらの効果により、小型、軽量でありながら高出力の電力変換装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係わる電力変換装置の3相インバータ回路の構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールの構成を示す模式図である。
図3】実施の形態1に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールの電流経路を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールの図2におけるAA断面を示す断面模式図である。
図5】実施の形態1に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールの図2におけるBB断面を示す断面模式図である。
図6】実施の形態1に係わる電力変換装置の製造方法の流れを示す図である。
図7】実施の形態2に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールの構成を示す模式図である。
図8】実施の形態2に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールの図7におけるCC断面を示す断面模式図である。
図9】実施の形態3に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールの構成を示す模式図である。
図10】実施の形態3に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールの図9におけるDD断面を示す断面模式図である。
図11】実施の形態4に係わる電力変換装置のパワー半導体モジュールにヒートシンク、制御基板およびケースを実装した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
実施の形態1に係わる電力変換装置は、耐震性能、耐久性能、絶縁性能などの高い信頼性への要求に対応するため、パワー半導体チップを実装したヒートスプレッダの実装面およびリードをモールド樹脂で封止するトランスファーモールド型のパワー半導体モジュールおよびヒートシンクを有している。
また、電力変換装置は、スイッチング可能なパワー半導体チップを組み合わせて構成される電力変換回路、電力変換回路を制御する制御回路、電流検知用の電流センサーなどから構成される。電力変換装置は、バッテリー等の直流電源から供給される直流電力を所望の交流電力に変換して、回転電機に供給することで、回転電機を駆動している。制御回路は、電力変換回路へパワー半導体チップをスイッチングするための制御信号を送出し、パワー半導体チップをオン・オフさせて回転電機を駆動する電力を制御する。パワー半導体チップは、電力が印加されて動作する際に、パワー半導体チップの表面近くのジャンクション部で発熱が生じ、パワー半導体チップの温度が上昇する。パワー半導体チップで生じた熱は、ヒートスプレッダおよびリードなどの配線部材および絶縁層などを通して、ヒートシンクに放出される。
【0015】
パワー半導体チップの温度が過度に上昇すると、パワー半導体チップの故障、およびパワー半導体チップに電力を伝達する配線部材との接合部の劣化等の原因となるため、パワー半導体チップは設計段階で決められた許容温度以下で動作させる必要がある。このため、電力変換装置のパワー半導体チップからの放熱性を向上させることが小型、軽量化、高出力化、故障回避の観点で重要となる。伝熱工学の観点から考えると、パワー半導体チップおよび熱伝導部材のサイズなど、伝熱面積を大きくすれば、放熱性は向上するが、小型、軽量化さらにはコスト低減の要求に相反するため、パワー半導体チップの面積を小さくしつつ、パワー半導体チップの温度を抑えることが必要である。
【0016】
ハイブリッド自動車または電気自動車用などの高い信頼性が求められるパワー半導体チップでは、チップの温度を常に許容温度以下で動作させるために、パワー半導体チップの表面に温度センサーを備えるもの、または温度を推定する根拠となる電流センサーを備えるものがある。電力変換装置は、これらのセンサーを利用してモーターを駆動させるための電力変換回路を構成する複数のパワー半導体チップの中で最も温度が高い温度検出値をもとに温度保護として出力制限する機能を備えている。
【0017】
また、パワー半導体チップの面積を小さくしつつ温度を抑えるためには、パワー半導体チップで生じる発熱量を小さくすることが考えられる。パワー半導体チップのスイッチング損失による発熱を抑制するため、パワー半導体モジュールおよび接続される配線経路のインダクタンスをいかに小さくするかが重要となる。
小型、軽量、高出力な電力変換装置を得るためには、パワー半導体チップに発生する損失を小さくするための電流経路のインダクタンスを低減しつつ、電力変換回路を構成する複数のパワー半導体チップの温度を均等化する必要がある。
【0018】
図1は、実施の形態1による電力変換装置の電力変換回路となる3相インバータ回路の構成を示す模式図である。また、図2は、実施の形態1による電力変換装置のパワー半導体モジュールの構成を示す模式図である。電力変換装置100のパワー半導体モジュール1は、スイッチング可能なパワー半導体チップ2と、パワー半導体チップ2を搭載するヒートスプレッダ3と、パワー半導体チップ2に電力を供給するリード4とを、モールド樹脂5で封止したトランスファーモールド型の構造を備える。
【0019】
また、パワー半導体モジュール1は直流電源7を3相交流電力に変換する3相インバータ回路10を構成し、負荷となるモーター8を駆動する。3相インバータ回路10はパワー半導体チップ2を上アーム11の3個と下アーム12の3個に分離して相ごとに配置して構成される。上アーム11のパワー半導体チップ2と下アーム12のパワー半導体チップ2は相ごとに接続され、その間から交流電力が出力される。
【0020】
本願の電力変換装置100におけるパワー半導体モジュール1は、絶縁性、耐震性、長期信頼性などの高い信頼性要求に答えるため、パワー半導体チップ2の実装面をモールド樹脂5で封止している。また、高い出力性能に対応するためパワー半導体チップ2は、パワー半導体チップ2で生じた熱を拡散するためのヒートスプレッダ3の上に接合部材を介して接続されている。パワー半導体モジュール1の内部に、複数個のパワー半導体チップ2が搭載されている。
また、トランスファーモールド型のパワー半導体モジュール1の製造過程は、ヒートスプレッダ3上に、パワー半導体チップ2を実装し、すべてのリード4がつながっており同電位になっているリードフレームを接続することで配線経路を接続し、モールド樹脂5で封止して一体化した後に、リードフレームの不要な部分を切り落とすことでリード4を個別に切離し、パワー半導体モジュール1の内部の回路を構成している。
【0021】
パワー半導体チップ2は、上面と下面にそれぞれ上面電極と下面電極を備える。実施の形態1のパワー半導体チップ2には、MOSFET、RC-IGBT(逆導通IGBT)またはIGBTが適用可能である。MOSFETおよびRC-IGBTは、スイッチング可能なパワー半導体チップであるとともに、MOSFETであれば内部に寄生ダイオードを備え、RC-IGBTであればダイオード領域を備えるため、パワー半導体チップに別途並列接続するフリーホイールダイオード(FWD)が不要である。また、パワー半導体チップ2は、チップ上面にチップ上面電極とは別の、ゲート部とゲート電極を備える。
【0022】
パワー半導体チップ2の材料としては、Siのみならず、SiC、SiN、GaN、GaAsなどの化合物半導体も使用可能である。またパワー半導体チップ2の上面電極は、リード4により接続されており、はんだなどの導電性部材で接合するためのめっき層など、はんだ付けできる仕様を備える。また、パワー半導体モジュール1に搭載する複数のスイッチング可能なパワー半導体チップ2は、すべて型式、サイズが同一の仕様のものを搭載する。パワー半導体チップ2を共通化することで、発熱量のばらつきを抑えてチップ間の温度を均等化するとともに、製造時の搭載ミスを防止して生産性が良くなる。また、パワー半導体チップ2の上面電極には温度センサーが搭載されている。この温度センサーは、パワー半導体チップ2の微細構造が形成される半導体プロセスにおいて形成される微小なサイズのダイオードである。このダイオードに一定の電流を通電した場合、ダイオードの温度が上昇するのに従ってダイオードの入出力間で生じる電圧が低下する。この温度と電圧の関係を利用して、パワー半導体チップ2の温度を検出する。
【0023】
リード4は、銅またはアルミを基材にした合金の板材を配線パターン形状に成形したリードフレームから構成される。このリードフレームはモールド樹脂5で封止される工程の後に、不要な部分を切り落とされることで、パワー半導体モジュール1内の配線経路を形成するリード4となる。リード4は、電力と熱を伝達する経路となっており、要求性能に合わせて電気伝導率と熱伝導率が高い材料を使用する。
【0024】
図2に示すように、リード4は、パワー半導体チップ2の上面電極もしくはヒートスプレッダ3と接続するか、端部となる一端もしくは両端をモールド樹脂5から外に露出させるかして、パワー半導体モジュール1の通電経路を形成している。パワー半導体モジュール1は、リード4の種類として、Pリード41、Nリード42、ACリード43、相間リード411、インナーリード44を備える。Pリード41が電源の正極側、Nリードが電源の負極側に、電力変換装置100の構成部品であるインバータ側バスバー等を介して接続される。ACリード43は、モーター8の3相交流回路の巻き線コイルと配線部材を介して接続される。Pリード41とNリード42は、直流電源7と接続する部分を、パワー半導体モジュール1のモールド樹脂5の外周の同一の面から端部を外に露出している。
【0025】
モールド樹脂5は、パワー半導体チップ2、ヒートスプレッダ3、リード4、絶縁層9などを内部に包み込むように配置される。モールド樹脂5は、リードフレーム上に部品を実装した後に、トランスファー成形により設置される。前述のとおり、モールド樹脂5でパワー半導体チップ2、ヒートスプレッダ3、リードフレーム、絶縁層9を一体化した後に、リードフレームの不要な部分が切り落とされてリード4が形成され、リード4のモールド樹脂5からの延出部を曲げることによってパワー半導体モジュール1が構成される。モールド樹脂5は、絶縁性の放熱フィラーを含んでおり、パワー半導体チップ2で生じた熱がモールド樹脂5のフィラーへ拡散することで、温度を低減させる作用を備えている。
【0026】
絶縁層9は、主に絶縁性のフィラーと接着剤で構成される。フィラーにはセラミックから構成される微細な粒子を使用する。接着剤にはエポキシ樹脂などの熱硬化性の樹脂を使用する。絶縁層9の厚さは、要求される絶縁性能と放熱性能をもとに選択した100um~数百umに設定される。絶縁層9は、銅箔9aの上に塗工した状態でトランスファー成形工程に持ち込まれる。
【0027】
図3は、実施の形態1によるパワー半導体モジュール1の電流経路Iを示す模式図である。モールド樹脂5の外周の同一の面から外に露出したPリード41とNリード42を始点と終点として、3相インバータ回路10の上アーム11のパワー半導体チップ2と、下アーム12のパワー半導体チップ2が、それぞれ一列に並ぶように配置されている。また、上アーム11と下アーム12のパワー半導体チップ2がパワー半導体モジュール1の上下及び左右に対しそれぞれ線対称の位置に搭載されている。さらに、下アーム12を構成するパワー半導体チップ2の上面電極に連結された1個のNリード42が接続されている。
このように構成したことにより、図中の破線で示す電流経路Iのループを小さくでき、配線のインダクタンスが小さくなる。この結果、パワー半導体モジュール1は、搭載するパワー半導体チップ2で生じるスイッチング損失を小さくすることができ、パワー半導体チップ2の発熱による温度上昇を小さくできる。
【0028】
図4は、実施の形態1における電力変換装置100によるパワー半導体モジュール1の図2におけるAA断面を示す断面模式図である。また図5は、実施の形態1によるパワー半導体モジュール1の図2におけるBB断面を示す断面模式図である。3相インバータ回路10を構成するパワー半導体チップ2がそれぞれ1つのヒートスプレッダ3の上に搭載されている。また、上アームを構成するパワー半導体チップ2を搭載するヒートスプレッダ3が、他の相の上アーム11のヒートスプレッダ3と相間リード411で接続されている。相間リード411で上アーム11のヒートスプレッダ3同士を接続することで、上アーム11のヒートスプレッダ3を個々のパワー半導体チップ2ごとに設けることができる。下アーム12と同様に、パワー半導体チップ2ごと別々のヒートスプレッダ3として形成しつつ、パワー半導体モジュール1の電源の正極側の接続部となるPリード41を1カ所に集約することができる。このように集約した構成にしたことにより、パワー半導体モジュール1は、上アーム11のヒートスプレッダ3ごとに電源の正極側接続部となるPリード41を設置するように構成した場合に比べて小型化が容易になる。
【0029】
また、本実施の形態によるパワー半導体モジュール1は、ヒートスプレッダ3の1個に搭載されるパワー半導体チップ2が1相分の片側アーム分のチップのみとなるため、上下アームでパワー半導体チップ2とヒートスプレッダ3の構成が同一にできる。これにより、パワー半導体モジュール1はパワー半導体チップ2の放熱性を均一にできるため、チップ間の温度ばらつきが低減できる。また、パワー半導体モジュール1は、ヒートスプレッダ3の形状を共通にできるため部品の種類が削減できるとともに、構造の共通化により生産性が向上する。
ヒートスプレッダ3は、銅もしくは、銅を主材とした合金で構成されている。ヒートスプレッダ3は、片側の面にパワー半導体チップ2が接合部材を介して搭載されている。ヒートスプレッダ3は3相インバータ回路10の配線経路としての機能も兼ねているが、相間リード411が上アーム11のヒートスプレッダ3と接続するため、パワー半導体モジュール1のパワー半導体チップ2とヒートスプレッダ3の組合せは、上アーム11、下アーム12ともにパワー半導体チップ2ごとに同じ構成にすることができる。
【0030】
また、本実施の形態では、例として1つのパワー半導体モジュール1の内部は3相インバータ回路10を構成する例を示したが、少なくとも3相インバータ回路10の1相分を構成するパワー半導体チップ2を搭載し、図2に示したように、パワー半導体モジュール1は、パワー半導体モジュール1の配置平面の中心に対して、パワー半導体チップ2が上下左右対称な位置に配置されていることを特徴とする。これにより、パワー半導体チップ2の間の距離が同じになり、接続部材などを含めて、規則的な配置になり放熱性が均一化され、パワー半導体チップ2の間の温度差が縮小する効果がある。すなわち、3相インバータ回路10を複数個のパワー半導体モジュール1で構成する場合において、パワー半導体モジュール1は、電流経路のインダクタンスを低減するとともに、回路を構成する複数のパワー半導体チップ2のそれぞれに対し、放熱性を均等化することが可能である。
【0031】
3相インバータ回路10の上アーム11用のヒートスプレッダ3に搭載する相間リード411またはPリード41が、すべての上アーム11用のヒートスプレッダ3の両側に配置されおり、片側をヒートスプレッダ3と接続しない相間リード411がPリード41として機能する。パワー半導体モジュール1は、相間リード411またはPリード41がヒートスプレッダ3の両側に設置されていることで、ヒートスプレッダ3の両側の方向での放熱性のばらつきが低減され、チップ内温度分布、およびチップ間温度分布を小さくできる。
【0032】
3相インバータ回路10の下アーム12用のヒートスプレッダ3に搭載されるパワー半導体チップ2の上面電極に接続されるNリード42の両側が、パワー半導体チップ2のモールド樹脂5の対向する側面からそれぞれ外に突き出すように形成されており、突き出したリードの一端が、電源の負極側に接続するために使用される。パワー半導体モジュール1は、下アーム12のパワー半導体チップ2の上に接続されるNリード42の両側がモールド樹脂5の外に突き出すように配置されていることで、左右方向での放熱性のばらつきが低減され、チップ内温度分布、およびチップ間温度分布を小さくできる。
【0033】
図2のパワー半導体モジュール1の構成においても示されているように、パワー半導体モジュール1の両側にモールド樹脂5から露出したPリード41とNリード42が設けられる。その一端に電源が接続されるが、反対側にも電源を接続することが可能である。また、電源が接続されない側も同じ構造を持たせることで、パワー半導体モジュール1は回路を構成するパワー半導体チップ2の放熱性を均等化することができる。
【0034】
図6は、実施の形態1による電力変換装置100の製造方法の主な流れを示す図である。まず、ステップS1でパワー半導体チップ2の下面電極にヒートスプレッダ3を接合した組合せを必要数作成する。つぎにステップS2で、組合されたパワー半導体チップ2とヒートスプレッダ3を3相インバータ回路10の形に配列して、Pリード41、Nリード42、相間リード411、ACリード43、インナーリード44を備えるリードフレームによって、これらのリード4をリードフレームに繋げたままでパワー半導体チップ2およびヒートスプレッダ3と接合する。ステップS3で制御用信号およびセンサー信号など回路上必要な信号配線をし、ステップS4でパワー半導体チップ2とヒートスプレッダ3とリード4と信号配線とをトランスファー成形により樹脂モールドしてパワー半導体モジュール1を製造する。つぎにステップS5にて、パワー半導体モジュール1から露出しているリード4の形状を成形し、リードフレームの不要な接続部分を切り落とす。ステップS6でパワー半導体モジュール1にヒートシンクを接合する。最後にステップS7にてパワー半導体モジュール1に制御基板を接続し、ケースに収納して完成する。
【0035】
本実施の形態1による電力変換装置によるパワー半導体モジュール1は、各種のリード4がリードフレームで一体化されており、リードフレームの不要な部分が切り落とされることでリード4が形成されるため、生産性がよい。また、形状が高精度に形成されているリードフレームでリード4を形成することで、製造工程での部品のばらつきが小さくなり、それによる使用時の温度のばらつきが低減できる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態2の電力変換装置100は、実施の形態1における電力変換装置100の3相インバータ回路10を、1相分の回路を内部に搭載するパワー半導体モジュール1を3相分組合せて構成するものである。図7は、実施の形態2による電力変換装置100のパワー半導体モジュール1の構成を示す模式図である。また、図8は、実施の形態2による電力変換装置100のパワー半導体モジュール1の図7におけるCC断面を示す断面模式図である。なお、実施の形態1の構成機器と対応する部分は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施の形態2のパワー半導体モジュールは、パワー半導体モジュール1が3相インバータ回路10の1相分を内部に搭載するように構成され、パワー半導体モジュール1のモールド樹脂5の対向する面から外に突き出したPリード41同士、Nリード42同士を溶接部4aで接合することで3相インバータ回路10が構成されていることを特徴とする。組合されたパワー半導体モジュール1は、相ごとに分割された3つのパワー半導体モジュール1で構成され、各相のパワー半導体モジュール1の両側から露出したPリード41が他の相のPリード41と接合されて相間リード411を構成し、各相のパワー半導体モジュール1の両側から露出したNリード42が他の相のNリード42と接合されて連結されたNリード42を構成する。このようにつなぎ合わせることで、実施の形態1で示したパワー半導体モジュール1と同等の機能が実現される。
【0038】
3相インバータ回路10を1つのパワー半導体モジュール1に内蔵する構造では、3相インバータ回路10の一部を内蔵する構造に比べて、パワー半導体モジュール1が大型化する。モールド封止型のパワー半導体モジュール1では、モールド樹脂5と配線部材のリード4およびヒートスプレッダ3の線膨張係数の差から反りが生じ、反りが大きい場合、接続するヒートシンクとの間の熱抵抗が大きくなる。反りによりヒートシンクから位置が離れる部分に搭載されたパワー半導体チップ2は冷却性が悪くなるため、温度が高くなり高出力化のさらなる制約となる。また、パワー半導体モジュール1が大型化することにより、3相インバータ回路10を構成するパワー半導体チップ2の内、1つでも特性不良のパワー半導体チップ2があれば、パワー半導体モジュール1を廃却することになるなど、生産プロセスでの損失が増大する可能性がある。
【0039】
本実施の形態2の電力変換装置100におけるパワー半導体モジュール1は、パワー半導体モジュール1を複数個に分けて形成し、Pリード41とNリード42で連結する構成とすることで、パワー半導体モジュール1の1個当たりのサイズが小さくできる。また、モジュールの構成部材間の線膨張係数の差によって生じるモジュールの反りを低減することが可能となり、ヒートシンクとの接続部の接触熱抵抗等が増加するのを回避できる。また、Pリード41とNリード42が、パワー半導体モジュール1の両側から突き出ている形状の同一のパワー半導体モジュール1を複数個並べることで、リード4同士を容易に接続することができ、簡便に3相インバータ回路10が構成可能である。
【0040】
実施の形態3.
本実施の形態3の電力変換装置100は、実施の形態2における電力変換装置100のパワー半導体モジュール1のヒートスプレッダ3と絶縁層9と銅箔9aをセラミック基板に置き換えたものである。図9は、実施の形態3による電力変換装置100のパワー半導体モジュール1の構成を示す模式図である。また、図10は、実施の形態3による電力変換装置100のパワー半導体モジュール1の図9におけるDD断面を示す断面模式図である。なお、実施の形態1および実施の形態2の構成機器と対応する部分は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0041】
セラミック基板20は、セラミック板21の両側に銅合金またはアルミ合金の板を接続し1相分の上アーム11と下アーム12とを一体化したものである。なお、セラミック基板20のセラミック板21は、パワー半導体チップ2ごとに分離していてもよい。
本実施の形態3におけるパワー半導体モジュール1は、セラミック板が非常に高い信頼性を備えた絶縁性部材であるため、パワー半導体チップ2と外部との高い絶縁性を確保できる。また、セラミック板21が熱伝導率の高い部材で構成されているため、パワー半導体チップ2からヒートシンクまでの放熱経路の熱抵抗を小さくする構成が実現できる。
【0042】
本実施の形態3におけるパワー半導体モジュール1は、パワー半導体モジュール1の内部にセラミック基板20を配置し、ヒートスプレッダ3をセラミック板21の片側の面に金属パターンで形成する。また、その裏面側に銅板21aを形成することができる。これにより、高い絶縁性能の確保と、放熱性の向上を計ることができる。また、セラミック基板20で構成しても、実施の形態1および実施の形態2のような、ヒートスプレッダ3を3相インバータ回路10の1相分の上アームもしくは、1相分の下アームごとに別々に設置する構成を設けることができる。また、電流経路のインダクタンスを縮小するための各種リードの配置を実現可能であり、パワー半導体チップ2の間の温度差の縮小化が図れる。また、インダクタンスの低減によるパワー半導体チップ2の発熱量の低減ができる。さらに、電源と接続するPリード41、Nリード42のモールド樹脂5の同一側面からの露出によるパワー半導体モジュール1の小型化が実現できる。
【0043】
また、本実施の形態3におけるパワー半導体モジュール1は、セラミック基板20の配線パターンで形成されるヒートスプレッダ3の厚さと、リード4の厚さを同一に構成する。パワー半導体チップ2の上面電極と接合するリード4の厚さとパワー半導体チップ2の下面電極と接合するヒートスプレッダ3の厚さを同じにすることで、配線を流れる電流による配線自体の単位体積当たりの発熱を均等化でき、上アーム、下アーム間のチップの温度差を縮小できる。
【0044】
実施の形態4.
実施の形態4の電力変換装置100は、実施の形態2から3に示した電力変換装置100のパワー半導体モジュール1をヒートシンク、制御基板およびケースと接続したものである。図11は、実施の形態4による電力変換装置100のパワー半導体モジュール1にヒートシンク、制御基板およびケースを実装した断面模式図(図7のCC断面に相当)である。なお、実施の形態1から実施の形態3の構成機器と対応する部分は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施の形態4の電力変換装置100は、パワー半導体モジュール1が3相インバータ回路10の上アーム11と下アーム12とが一体化された1相分を内部に搭載するように構成され、パワー半導体モジュール1のモールド樹脂5の対向する面から外に突き出したPリード41同士、Nリード42同士が溶接部4aで接合され、パワー半導体モジュール1がヒートシンク30上に搭載され、パワー半導体モジュール1の上部に制御基板31が配置されている。また、パワー半導体モジュール1の周囲には、外部からの異物の侵入を防ぐとともに、パワー半導体モジュール1の外部のバスバー33a、33bなどを固定する機能を備えるケース32が配置されている。
【0046】
制御基板31には、パワー半導体モジュール1のリード4から放出された熱量を外部に放出するための放熱孔31aが備えられている。Pリード41、Nリード42のモールド樹脂5からの露出部からパワー半導体モジュール1の熱が、パワー半導体モジュール1の周囲に放出される。この時、パワー半導体モジュール1の下面には、パワー半導体モジュール1と比較して温度が低いヒートシンク30が配置されているため、熱せられた空気は、パワー半導体モジュール1の上側の制御基板側に上昇していく。制御基板31に放熱孔31aを設置しておくことで、熱せられた空気の外部への放出Wが促進され、パワー半導体モジュール1の温度上昇が抑制される。なお、放熱孔31aの設置位置は、図2図7および図9から見て、Pリード41、Nリード42、インナーリード44、相間リード411、ACリード43、またはヒートスプレッダ3に重なる位置にあるのが望ましいがその限りではない。また、放熱孔31aの形状は、図2図7および図9から見て、円形状、楕円形状、多角形状でもよいし、制御基板31の端面から切り欠かれた形状であってもよい。
【0047】
また、本実施の形態4の電力変換装置100は、パワー半導体モジュール1が3相インバータ回路10の1相分を内部に搭載するように構成され、パワー半導体モジュール1のモールド樹脂5の対向する面から外に突き出したPリード41同士、Nリード42同士が接続されている。パワー半導体モジュール1のモールド樹脂5の外に露出したリード4の中で、他の部材との電流経路にないリード4が存在する。これらのリード4はパワー半導体モジュール1を搭載する部分の外周に配置されるケース32に搭載されたケース側のバスバー33a(図11のケース側のバスバー33a、及び図11のケース側のバスバー33aと同じ左側のPリードに接続された図示しないケース側のバスバー)と接続されている。
【0048】
このように構成することにより、本実施の形態4の電力変換装置100は、パワー半導体モジュール1のリード4が3相インバータ回路10の外部の構成部材等に接続されているかどうかで、パワー半導体チップ2で生じる熱の放熱経路が変化することを抑制できる。パワー半導体チップ2の温度の差が生じるのを回避するために、電流経路にならないリード4をケース側のバスバー33aに接続することで、3相インバータ回路10の放熱性を均等化する。これにより、電力の入出力用のインバータ側のバスバー33bに接続されたPリード41、Nリード42側のパワー半導体チップ2と、反対側に設置されたパワー半導体チップ2の温度差が拡大するのを回避することができる。
【0049】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0050】
1 パワー半導体モジュール、2 パワー半導体チップ、3 ヒートスプレッダ、4 リード、4a 溶接部、41 Pリード、411 相間リード、42 Nリード、43 ACリード、44 インナーリード、5 モールド樹脂、7 直流電源、8 モーター、9 絶縁層、9a 銅箔、10 3相インバータ回路、11 上アーム、12 下アーム、20 セラミック基板、21 セラミック板、21a 銅板、30 ヒートシンク、31 制御基板、31a 放熱孔、32 ケース、33a,33b バスバー、100 電力変換装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11