(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177701
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ロータリーダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/14 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
F16F9/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095981
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃史
(72)【発明者】
【氏名】志村 良太
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA44
3J069EE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シールがシール溝から脱落することを防止する。
【解決手段】ベーンに形成されるシール溝が、流体室の一端を閉塞する第1端壁と対向する前記ベーンの第1端面に形成される第1の溝と、前記流体室の他端を閉塞する第2端壁と対向する前記ベーンの第2端面に形成される第2の溝と、前記流体室の周壁と対向する前記ベーンの先端面に形成され、前記第1の溝と前記第2の溝を接続する第3の溝と、シャフトと前記ベーンの境界において軸方向に延在し、前記第1の溝と前記第2の溝を接続する第4の溝から成り、シールが、前記第1乃至第3の溝に装着され、前記ベーンと前記第1端壁の間、前記ベーンと前記第2端壁の間及び前記ベーンと前記周壁の間に形成される隙間をシールするシール部分(31)と、前記第4の溝に装着され、前記シール部分の両端を接続する接続部分(32)から成る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの周囲に形成される流体室と、前記シャフトから突出し、前記流体室に設置されるベーンと、前記ベーンに形成されるシール溝と、前記シール溝に装着されるシールを備え、
前記シール溝が、前記流体室の一端を閉塞する第1端壁と対向する前記ベーンの第1端面に形成される第1の溝と、前記流体室の他端を閉塞する第2端壁と対向する前記ベーンの第2端面に形成される第2の溝と、前記流体室の周壁と対向する前記ベーンの先端面に形成され、前記第1の溝と前記第2の溝を接続する第3の溝と、前記シャフトと前記ベーンの境界において軸方向に延在し、前記第1の溝と前記第2の溝を接続する第4の溝から成り、
前記シールが、前記第1乃至第3の溝に装着され、前記ベーンと前記第1端壁の間、前記ベーンと前記第2端壁の間及び前記ベーンと前記周壁の間に形成される隙間をシールするシール部分と、前記第4の溝に装着され、前記シール部分の両端を接続する接続部分から成るロータリーダンパ。
【請求項2】
前記シール部分が、前記シール部分に生じる張力により、前記第1乃至第3の溝に装着される請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記ベーンの第1及び第2端面がそれぞれ平面であり、前記ベーンの先端面が前記ベーンの第1及び第2端面に接続する曲面であり、前記第3の溝の底が前記第1の溝の底及び前記第2の溝の底となだらかに接続しており、前記シール部分が、前記シール部分に生じる張力により、前記第1乃至第3の溝に装着される請求項1に記載のロータリーダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトの周囲に形成される流体室と、前記シャフトから突出し、前記流体室に設置されるベーンと、前記ベーンに形成されるシール溝と、前記シール溝に装着されるシールを備えるロータリーダンパが知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1は、前記シール溝が、前記流体室の一端を閉塞する第1端壁と対向する前記ベーンの第1端面に形成される第1の溝と、前記流体室の他端を閉塞する第2端壁と対向する前記ベーンの第2端面に形成される第2の溝と、前記流体室の周壁と対向する前記ベーンの先端面に形成され、前記第1の溝と前記第2の溝を接続する第3の溝から成り、前記シールが、前記第1乃至第3の溝に連続して装着されるロータリーダンパを開示している(特許文献1の
図3参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたロータリーダンパでは、前記シールがコの字型であるため、ロータリーダンパを組み立てるときに、前記シールが前記シール溝から脱落するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、シールがシール溝から脱落することを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、シャフトの周囲に形成される流体室と、前記シャフトから突出し、前記流体室に設置されるベーンと、前記ベーンに形成されるシール溝と、前記シール溝に装着されるシールを備え、前記シール溝が、前記流体室の一端を閉塞する第1端壁と対向する前記ベーンの第1端面に形成される第1の溝と、前記流体室の他端を閉塞する第2端壁と対向する前記ベーンの第2端面に形成される第2の溝と、前記流体室の周壁と対向する前記ベーンの先端面に形成され、前記第1の溝と前記第2の溝を接続する第3の溝と、前記シャフトと前記ベーンの境界において軸方向に延在し、前記第1の溝と前記第2の溝を接続する第4の溝から成り、前記シールが、前記第1乃至第3の溝に装着され、前記ベーンと前記第1端壁の間、前記ベーンと前記第2端壁の間及び前記ベーンと前記周壁の間に形成される隙間をシールするシール部分と、前記第4の溝に装着され、前記シール部分の両端を接続する接続部分から成るロータリーダンパを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記シール溝が、前記シャフトと前記ベーンの境界において軸方向に延在し、前記第1の溝と前記第2の溝を接続する第4の溝を有して構成され、また、前記シールが、前記第4の溝に装着され、前記シール部分の両端を接続する接続部分を有して構成されるため、前記シールが前記シール溝から脱落することを効果的に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例に係るロータリーダンパの縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施例に係るロータリーダンパの横断面図である。
【
図3】
図3は、実施例で採用したローターの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例で採用したローターの平面図である。
【
図5】
図5は、実施例で採用したローターの底面図である。
【
図6】
図6は、実施例で採用したシールの正面図である。
【
図7】
図7は、シールがシール溝に装着された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例0011】
図1及び
図2を参照すると、実施例に係るロータリーダンパは、ハウジング10と、ローター20と、シール30を有して構成されている。
【0012】
ハウジング10は、筒状の周壁11と、周壁11から突出する隔壁12と、周壁11の一端を閉塞する上部壁13と、周壁11の他端を閉塞する下部壁14を備えている。隔壁12は、ハウジング10の中に形成される2つの流体室40を隔てる仕切りである。
【0013】
流体室40は、オイル等の液状の粘性流体が注入される空間であり、ローター20を構成するシャフト21の周囲に形成されている。流体室40は、ローター20を構成するベーン22によって第1室41と第2室42の2つの室に区分けされている。
【0014】
ローター20は、シャフト21と、シャフト21から突出するベーン22を備えている。シャフト21は、ローター20に回転力を伝達する物に連結される。但し、使用態様により、ハウジング10がローター20の周りで回転する場合があり得る。この場合、シャフト21は、ローター20の回転を阻止する物に連結される。
【0015】
ベーン22は、流体室40に設置され、シャフト21の回転によって、流体室40の中で移動する。ベーン22には、ベーン22を回転方向に貫通し、粘性流体が通過する小孔23が形成されている。
【0016】
図3乃至
図5を参照すると、ベーン22には、第1の溝24a、第2の溝24b、第3の溝24c及び第4の溝24dから成るシール溝24が形成されている。
【0017】
第1の溝24aは、流体室40の一端を閉塞する第1端壁(ハウジング10を構成する上部壁13)と対向するベーン22の第1端面22aに形成されている。
【0018】
第2の溝24bは、流体室40の他端を閉塞する第2端壁(ハウジング10を構成する下部壁14)と対向するベーン22の第2端面22bに形成されている。
【0019】
第3の溝24cは、流体室40の周壁(ハウジング10を構成する周壁11)と対向するベーン22の先端面22cに形成されている。
【0020】
第1の溝24aと第2の溝24b、より詳細には、第1の溝24aの一端と第2の溝24bの一端は、第3の溝24cを介して接続されている。
【0021】
第4の溝24dは、シャフト21とベーン22の境界において軸方向に延在するように形成されている。
【0022】
第1の溝24aと第2の溝24b、より詳細には、第1の溝24aの他端と第2の溝24bの他端は、第4の溝24dを介して接続されている。
【0023】
ベーン22の第1端面22aは、平面である。ベーン22の第2端面22bも、第1端面22aと同様に、平面である。ベーン22の先端面22cは、第1端面22a及び第2端面22bに接続する曲面である。
【0024】
第1の溝24aの深さ、第2の溝24bの深さ及び第3の溝24cの深さは均一に設定されている。したがって、ベーン22の先端面22cに形成される第3の溝24cの底は、ベーン22の第1端面22aに形成される第1の溝24aの底となだらかに接続している。また、第3の溝24cの底は、ベーン22の第2端面22bに形成される第2の溝24bの底ともなだらかに接続している。
【0025】
図6を参照すると、シール30は、ゴム等の弾性材料から成り、シール部分31と接続部分32で構成されている。
【0026】
シール部分31は、第1の溝24a、第2の溝24b及び第3の溝24cに装着される部分であり、ベーン22と流体室40の第1端壁(ハウジング10を構成する上部壁13)の間、ベーン22と流体室40の第2端壁(ハウジング10を構成する下部壁14)の間及びベーン22と流体室40の周壁(ハウジング10を構成する周壁11)の間に形成される隙間をシールする役割を果たすものである。
【0027】
接続部分32は、第4の溝24dに装着される部分であり、シール部分31の両端を接続する役割を果たすものである。
【0028】
図7を参照すると、シール30は、シール部分31と接続部分32によって、ベーン22を取り囲むように取り付けられる。
【0029】
実施例に係るロータリーダンパは、上述したように、シール溝24が、シャフト21とベーン22の境界において軸方向に延在し、第1の溝24aと第2の溝24bを接続する第4の溝24dを有して構成されている。また、シール30が、第4の溝24dに装着され、シール部分31の両端を接続する接続部分32を有して構成されている。したがって、ロータリーダンパを組み立てるときに、シール部分31が第1の溝24a、第2の溝24b又は第3の溝24cから脱落しようとしても、シール部分31が接続部分32によって保持されるため、シール30がシール溝24から脱落することを効果的に防止することができる。
【0030】
また、シール部分31の長さ及び/又は接続部分32の長さを調節することによって、シール部分31に張力を生じさせることができる。実施例では、シール部分31が、シール部分31に生じる張力により、第1の溝24a、第2の溝24b及び第3の溝24cに装着されているので、ロータリーダンパを組み立てるときに、シール30がシール溝24から脱落することをより効果的に防止することができる。
【0031】
さらに、第3の溝24cの底が第1の溝24aの底及び第2の溝24bの底となだらかに接続しているため、シール部分31の全体に均一な張力を生じさせることができる。したがって、ロータリーダンパを組み立てるときに、シール30がシール溝24から脱落することをさらに効果的に防止することができる。
【0032】
実施例に係るロータリーダンパは、以下のように動作する。すなわち、シャフト21が一方向(
図2において時計回り方向)に回転するときは、ベーン22が第1室41の粘性流体を加圧する。このとき、ベーン22と第1端壁(ハウジング10を構成する上部壁13)の間、ベーン22と第2端壁(ハウジング10を構成する下部壁14)の間及びベーン22と流体室40の周壁(ハウジング10を構成する周壁11)の間に形成される隙間がシール30のシール部分31によってシールされているため、第1室41の粘性流体が第2室42へ移動するための流路は、ベーン22に形成される小孔23に限定される。その結果、ロータリーダンパは、シャフト21の回転速度を減速させる制動力を発生する。
【0033】
シャフト21が逆方向(
図2において反時計回り方向)に回転するときは、ベーン22が第2室42の粘性流体を加圧する。このときもシール部分31のシール機能によって、第2室42の粘性流体が第1室41へ移動するための流路がベーン22に形成される小孔23に限定される。その結果、ロータリーダンパは、シャフト21の回転速度を減速させる制動力を発生する。
【0034】
実施例では、粘性流体の抵抗を生じさせる小孔をベーンに形成しているが、そのような小孔を、例えば、隔壁に形成してもよい。また、小孔に代えて、隔壁などに、粘性流体の抵抗を生じさせずに粘性流体を移動させる流路を形成し、この流路にバルブを設置してもよい。バルブとして、例えば、逆止弁を設置して、ロータリーダンパを一方向性としてもよい。或いは、一方向性ロータリーダンパのバルブとして、粘性流体の流量をローターを回転させる力の大きさに対応して制限し得る負荷対応弁を設置して、制動力の大きさを負荷に応じて変化させる構成としてもよい。