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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177707
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241217BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241217BHJP
【FI】
A01B69/00 303F
A01B69/00 303Z
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095991
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘喜
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB13
2B043BA03
2B043BA09
2B043BB01
2B043DA04
2B043DC03
2B043EA06
2B043EA37
2B043EB04
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB16
2B043EC13
2B043EC19
2B043ED12
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】事前に消費量や残量等を確認し補給対応することで、効率的に燃料や資材を供給できる作業車両を提供することを目的とする。
【解決手段】走行経路20,22を設定しこの経路に沿って無人運転可能な作業車両100において、走行経路20,22又はその近傍に燃料補給地点F1、資材補給地点F2を設定し、単位面積あたりの燃料消費量、資材消費量を演算管理し、現時点の燃料残量、資材残量と未作業面積における燃料消費量、資材消費量を算出し、当該作業終了までに燃料不足、資材不足と判定される場合は、各要求指示信号が出力される前であっても、走行経路20,22の中に組み込まれた燃料補給地点F1、資材補給地点F2で停止するよう構成した。
【選択図】 図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路(20,22)を設定しこの経路に沿って無人運転可能な作業車両(100)において、走行経路(20,22)又はその近傍に燃料補給地点(F1)を設定し、単位面積あたりの燃料消費量を演算管理し、現時点の燃料残量と未作業面積における燃料消費量を算出し、当該作業終了までに燃料不足と判定される場合は、燃料要求指示信号が出力される前であっても、走行経路(20,22)の中に組み込まれた燃料補給地点(F1)で停止するよう構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行経路(20,22)を設定しこの経路に沿って無人運転可能な作業車両(100)において、走行経路(20,22)又はその近傍に資材補給地点(F2)を設定し、単位面積あたりの資材消費量を演算管理し、現時点の資材残量と未作業面積における資材消費量を算出し、当該作業終了までに資材不足と判定される場合は、資材要求指示信号が出力される前であっても、走行経路(20,22)の中に組み込まれた資材補給地点(F2)で停止するよう構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
GNSS位置情報取得手段(102)と画像データ処理手段(305)を備え、GNSS位置情報によって圃場(H)エリアを取得し、この圃場(H)エリア内に作業種類や作業機に応じた理論ルート(A)を生成し、障害物等(11,16,17)の撮像データに基づいて回避必要ルート(C1,C2…)を生成して前記理論ルート(A)に合成し、ルート接続を行い自動運転ルートとしての詳細ルート(B)を生成する請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタのような作業車両に関し、特に自動運転経路の生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両において、作業対象領域を設定する領域設定部と、作業対象領域を網羅する走行経路を、読み出し可能に格納し、作業車両の走行中、収穫物の排出要求や燃料補給要求に基づいて、走行すべき走行経路を選択する構成が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-68284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、作業車両の走行中、収穫物の排出要求や燃料補給要求に基づいて、走行すべき走行経路を選択することで、作業途中での走行経路を変更することができる。
【0005】
しかしながら、収穫物の排出要求や燃料補給の要求にて、設定された排出位置や補給位置に向かう経路を設定するが、引き返し等の無駄な走行経路になる可能性がある。特に資材補給では、予定された経路以外を走行したり、同じ経路を複数回走行はできない場合がある。
【0006】
本発明は、事前に燃料消費量や燃料残量等を確認し補給対応することで、上記の欠点解消できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、走行経路20,22を設定しこの経路に沿って無人運転可能な作業車両100において、走行経路20,22又はその近傍に燃料補給地点F1を設定し、単位面積あたりの燃料消費量を演算管理し、現時点の燃料残量と未作業面積における燃料消費量を算出し、当該作業終了までに燃料不足と判定される場合は、燃料要求指示信号が出力される前であっても、走行経路20,22の中に組み込まれた燃料補給地点F1で停止するよう構成した。
【0008】
請求項2に記載の発明は、走行経路20,22を設定しこの経路に沿って無人運転可能な作業車両100において、走行経路20,22又はその近傍に資材補給地点F2を設定し、単位面積あたりの資材消費量を演算管理し、現時点の資材残量と未作業面積における資材消費量を算出し、当該作業終了までに資材不足と判定される場合は、作業車両100の資材要求指示信号が出力される前であっても、走行経路20,22の中に組み込まれた資材補給地点F2で停止するよう構成した。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、GNSS位置情報取得手段102と画像データ処理手段305を備え、GNSS位置情報によって圃場Hエリアを取得し、この圃場Hエリア内に作業種類や作業機に応じた理論ルートAを生成し、障害物等11,16,17の撮像データに基づいて回避必要ルートC1,C2…を生成して前記理論ルートAに合成し、ルート接続を行い自動運転ルートとしての詳細ルートBを生成する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、現時点の燃料残量又は資材残量と未作業領域演算手段とを備え、未作業領域の面積を演算して現時点の燃料残量又は資材残量で賄えるか否か判定し、燃料又は資材不足とされるときは、燃料又は資材要求指示信号が出力される以前であっても燃料補給地点F1又は資材補給地点F2で停止信号を出力して燃料又は資材補給するものであるから、圃場の単位面積の消費量を算出し、予定された作業経路終了まで燃料又は資材補給無しで可能か否かを判定し、事前に燃料又は資材補給を行うことによって、引き返し走行等の無駄な走行をなくすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によると、請求項1又は請求項2に記載の効果に加え、従来障害物のある外周形状をベースにルート生成するため複雑な外周形状に対する演算処理が必要になり、演算能力やメモリー等が高度になり原価高になるが、本発明によると、圃場Hの障害物回避に対する演算のみとなり、演算等のボリュームが小さく構成でき制御部内の演算能力等を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態にかかる農用トラクタの側面図である。
図2】管理システムのブロック図である。
図3】管理端末と複数の圃場との位置関係を示す模式図である。
図4】圃場の外周経路を記録する模式図である。
図5】枕地走行経路及び往復走行経路の一例を示す図である。
図6】(A)、(B)障害物状況と走行経路一例を示す模式図である。
図7】撮像装置の物体分析に関するフローチャートである。
図8】作物列ライン情報に基づく走行経路生成を示す図である。
図9】作業経路の設定に関するフローチャートである。
図10】燃料補給に関するフローチャートである。
図11】(A)、(B)、(C)燃料補給・資材補給による作業経路一例を示す模式図である。
図12】資材補給に関するフローチャートである。
図13】異常検出に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面に基づき説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施態様に係る作業車両管理システムの作業車両100の構成を示す略側面図である。作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13を走行可能な農作業用の車両であり、車体前部には、ボンネット107に覆われたエンジン105が配設され、このエンジン105の回転動力を複数の変速装置を介して前輪103及び後輪104に伝達することで走行できるように構成されている。また、エンジン105の後方には、操縦部106が設けられており、操縦部106後方の車体後部には往復隣接作業走行範囲13を耕耘可能な作業機140が取り付けられている。
【0015】
操縦部106には、作業者が操作するステアリングハンドルと操縦席とを備えているキャビンが設けられている。また、キャビンの天井であるキャビンルーフ108にはGNSS受信機102が設けられており、人工衛星170から所定の時間間隔で電波を受信して作業車両100の位置を測定することができるように構成されている。
【0016】
作業車両100の車体後部には、上側にあるトップリンク145aと下側にある左右のロアリンク145bとからなる3点リンク機構145が設けられており、これに作業機140が連結されている。作業機140は耕耘作業機とされ、圃場の土を耕す耕耘爪146と、耕耘爪146の上方を覆うロータリカバー147と、ロータリカバー147の後部で上下動自在に支持されるリヤカバー148とが設けられる。
【0017】
3点リンク機構145のロアリンク145bには、リフトアーム142を介して作業機昇降シリンダ141が接続されており、作業機昇降シリンダ141を伸縮させることによりロアリンク145bを上下させることができるように構成されている。
【0018】
以下、作業車両100が作業機140を下ろした状態で、往復隣接作業走行範囲13の土を耕しながら走行することを作業走行と呼ぶ。
【0019】
図2は、本発明の好ましい実施態様に係る作業車両管理システム1の構成を示すブロック図である。作業車両100は、図1のGNSS受信装置102が受信した電波から自機の位置情報を取得する位置情報取得手段である位置情報取得部301と、車両の自律走行を制御する自動運転ECU302と、車両の走行及び作業機の操作を制御する車両ECU303とを備えており、車両ECU303は、通信網をなすクラウドCと相互に通信を行う通信部304と、画像データ処理手段305と、位置情報や地形情報から走行経路を算定する経路算定部306とを備えている。
【0020】
したがって、作業車両100は、位置情報取得部301により取得した自機の位置情報を、所定時間毎に、通信部304を介してクラウドCに送信して格納することができ、また、クラウドCに格納された情報を取得することができるように構成されている。
【0021】
また、画像データ処理手段305は、全方位カメラ311、3Dライダー312等の撮像手段の検出結果により作業車両100の前方の障害物等を認識する。
【0022】
遠隔管理装置200は、携帯可能な電子演算機器であり、管理ユーザにより操作可能な管理端末201によって構成されている。管理端末201は、クラウドCと相互に通信可能な通信機202と、管理端末201を制御する端末制御部204とを備えている。したがって、管理ユーザは、管理端末201を所持することにより、通信機202を介してクラウドCと情報のやり取りをすることができる。併せて管理端末201自身の自己位置を測定する測位装置205を備えて、自己位置情報を取得することができ、また通信機202を介して送信できる。
【0023】
このように、作業車両100と遠隔管理装置200とがクラウドCを媒介して通信可能に構成されているので、管理ユーザは、遠隔管理装置200により、作業車両100の状態を監視したり、指令を送ったりすることができ、遠隔的に作業車両100を管理することが可能になる。
【0024】
クラウドCには管理サーバ320が設けられており、この管理サーバ320には圃場やその周辺の地形情報を格納する地形情報データベース322と、作業車両100の位置情報を格納する位置情報データベース323とが記録されている。したがって、管理ユーザは、管理サーバ320にアクセスし、地形情報データベース322および位置情報データベース323を参照することにより、作業車両100と圃場との位置関係を把握することができる。
【0025】
図3は、管理区域10における、管理端末201と、複数の往復隣接作業走行範囲13との位置関係を示す模式図であり、管理区域10には複数の往復隣接作業走行範囲13(A1~An)が設けられており、それぞれの往復隣接作業走行範囲13で走行車両100(V1~Vn)が作業走行するように構成されている。各往復隣接作業走行範囲13は管理通路12に接しており、出入口11から作業車両100が出入りできるように構成されている。
【0026】
管理端末201は、どの往復隣接作業走行範囲13にどの作業車両100が作業しているかを特定する圃場特定手段を備えており、図2に示したクラウドCを介して管理サーバ320にアクセスし、地形情報データベース322に格納されている各往復隣接作業走行範囲13(A1~An)の位置情報と、位置情報データベース323に格納されている作業車両100(V1~Vn)の位置情報とを比較参照することで、往復隣接作業走行範囲13が位置する範囲に存在する作業車両100を特定し、作業車両Vx(x=1,2,・・・,n)と、その作業車両Vxが作業している圃場Ax(x=1,2,・・・,n)とを対応付けることができるように構成されている。
【0027】
ここで、管理端末201において、端末制御部204は、測位装置203により、クラウドCを介して図2に示した地形情報データベース322から管理区域10の管理通路12と、往復隣接作業走行範囲13(A1~An)とのそれぞれの地形情報を取得することができる。さらに、管理端末201の現在位置から管理通路12を通って往復隣接作業走行範囲13の出入り口11の位置に達する経路(L1~Ln)を算出して、これらの経路(L1~Ln)の距離から、所定の速度における往復隣接作業走行範囲13(A1~An)への移動時間T(T1~Tn)を算出可能に構成されている。
【0028】
図4は、圃場Hの枕地走行を記録する作業車両100の様子を示す模式図であり、図5は、圃場H内を作業走行する作業車両100の様子を示す略平面図である。
【0029】
図5に示されるよう、水路15や畦に囲まれ、この水路15や畦による外周Pe形状で区画される圃場Hは、往復隣接作業走行範囲13と、枕地走行範囲14に設定される。作業車両100の圃場間移動用通路12に対し、出入口11によって走行車両100が出入り可能に構成されている。枕地走行範囲14は、走行車両100が走行可能であり、往復隣接作業走行範囲13の外を周回するための枕地走行経路22に基づいて作業走行することによりこの枕地走行範囲14を耕耘処理できる。
【0030】
自動運転ルートの演算は次のように行う。すなわち、管理サーバ320の地形情報データベースをもとに、GNSS位置情報に基づき作成された圃場の最外周Peに基づく位置情報としての圃場エリアが呼び出される。
【0031】
そして、作業車両100は、地形情報データベース322に記録された外周Pe形状情報による枕地走行経路22の経路情報及び地形情報データベース322に記録された往復隣接作業走行範囲13の地形情報を取得することができるように構成されている。
【0032】
地形情報記録モードにより作業車両100が作成した枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とは、クラウドCを介して管理サーバ320に送信され、枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とを受け取った管理サーバ320は、その情報を地形情報データベース322に記録する。これにより、作業車両100は、クラウドCを介して管理サーバ320にアクセスすることで、任意のタイミングで枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とを取得することができる。作業車両100は、例えば、エンジン105を起動した際に、圃場形状取得手段によって、枕地走行経路22の経路情報及び往復隣接作業走行範囲13の地形情報を取得する。
【0033】
このように、作業車両100が地形情報記録モードを備えていることにより、あらかじめ往復隣接作業走行範囲13を測量して地形情報を取得しておく必要がなく、任意の往復隣接作業走行範囲13での作業車両100に作業走行をさせるために必要な手間を軽減することができる。
【0034】
なお、図5に示されるように、作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13内を作業走行するにあたり、図2に示した経路算定部306により往復隣接作業走行範囲13の地形情報と作業車両100の作業幅wとに基づいて往復隣接作業走行範囲13を作業走行するための経路である往復走行経路20を算定する。往復隣接作業走行範囲13を万遍なく耕耘するように作業走行するには、往復隣接作業走行範囲13の幅を作業幅wで割った数の分だけ往復隣接作業走行範囲13を直進すればよいので(図5では8回)、往復走行経路20は、往復隣接作業走行範囲13上を直進する直進経路と、往復隣接作業走行範囲13を出て枕地14で旋回し往復隣接作業走行範囲13に戻る旋回経路とにより、往復隣接作業走行範囲13を往復するように算定される。以下、往復走行経路20が往復隣接作業走行範囲13の端と交差する点を圃場端点21a(P1~P8)、21b(Q1~Q8)と呼ぶ。
【0035】
ところで、作業車両100は、圃場の形状を示す地形情報を取得する圃場形状取得手段を備えている。その前提として、作業車両100は、あらかじめ、図2の位置情報取得部301で現在位置を測定しながら枕地走行経路22を走行し、経路算定部306(図2)が、走行した経路の位置情報をつなげることにより、圃場外周の情報を作成できる。つまり、前記外周Peにほぼ沿うものであるが、現実には出入口11、電柱16、排水路17等が存在して実作業においてはこれらを迂回設定するため、枕地走行経路22の経路情報において走行した経路が囲む範囲を計算して回避必要ルートCm(m=1,2…)を作成し、これらの情報を、クラウドCを介して、地形情報データベース322に記録する地形情報記録モードを備えている。
【0036】
そして、前記外周Peに基づき作成された枕地走行経路22の経路情報において、外周Peに代えて前記の回避必要ルートCmに基づく外周Prに合成して自動運転ルートが生成される。
【0037】
上記自動運転ルートの生成について詳述する。圃場内を無人運転するルートは、まずGNSS位置情報に基づく圃場エリア、つまり圃場Hの最外周Peに基づく位置情報データにより、作業や作業機に応じた理論ルートAを生成し、これを基準に詳細ルートB生成を行うよう構成している。すなわち、圃場Hの最外周Peと3Dマップに基づく圃場エリアデータと比較する。この圃場エリアデータは、前記画像データ処理手段305が入力された撮像データを分析することにより、障害物の有り状況を取り込んだデータであって、上記の理論ルートAで作業車両100が障害物等に接触する危険がある場所の回避必要ルートC1,C2…を生成し、前記理論ルートAに合成し、ルート接続を行い自動運転ルートとしての詳細ルートBを生成するものである。従来障害物のある外周形状をベースにルート生成するため複雑な外周形状に対するルール作りが必要になり、演算能力やメモリー等が高度になり原価高になるが、上記のように構成すると、圃場Hの障害物回避に対する演算のみとなり、演算等のボリュームが小さく構成できECU内の演算能力等を小さくできる。
【0038】
また、圃場間移動を無人運転するルートについて説明する。耕うん終了ポイント付近で、作業車両の作業計画に基づき次の圃場H2までの3DマップデータとGNSS位置情報に基づきマップマッチングを行うことで、圃場間走行ルートDを生成し、作業車両100の操舵ECUはGNSS位置情報に基づく2次元の走行ルートのみのデータを取得し圃場間を無人運転で移動する。圃場間走行ルートDの生成に3Dマップデータに基づく障害物回避含めたルート生成ができるとともに、操舵ECUの自動操舵の場面ではデータ量の少ないルート情報での運転となる為、自動操舵の運転演算を簡素化でき、演算処理時間を少なくでき、演算未了により停止させる等の恐れがない。
【0039】
圃場間走行ルートDの生成において、3Dマップに基づく障害物有データとしての走行路データと比較し、理論ルートDmで作業車両100が障害物等に接触する危険がある場所の回避必要ルートE1,E2…を生成し、理論圃場間走行ルートDmに合成し、ルート接続を行い自動運転ルートとしての圃場間走行ルートDを生成するものである。このように構成すると、走行ルートの障害物回避に対する演算のみとなり、演算等のボリュームが小さく構成できECU内の演算能力等を小さくできる。
【0040】
前記の圃場H内の詳細ルート経路Bに基づく無人走行作業車両の運転システムにおいて、今回走行する際事前に取得した詳細ルートBに基づく3Dマップデータと今回取得した3Dライダーデータを比較するようにし、静止障害物と判断するデータに相違が認識される場合は、詳細ルートBの3Dマップデータを更新するよう構成するとよい。すなわち、走行ルートの障害物のうち植物等は日々成長し形状が変化するので、走行する際回避の必要となる範囲が異なってくる場合があり、このような変化を走行するたびに観察し取得データと比較して、3Dマップを最新状態に変更することで3Dマップを適正状態に更新管理できる。なお、3Dライダー312は、作業車両100の前方のレーザー画像検出と、検出した物体との測距ができ、作業車両100の前方の物体とその距離を検出して、検出信号を運転制御部Cに送出する。
【0041】
この更新した3Dマップデータを、管理するクラウドCに送信し他の作業車両と共有するように構成すると、便利である。
【0042】
一方、走行路ルート上にある静止障害物で、地面高さ上に存在する静止障害物は、それに基づく停車等の障害物接触回避処理は行うが(図6(A))、3Dマップ自体の更新データとはしないよう構成する。走行ルート上に障害物が有った場合、一時停車している車両等の可能性が高いと判断できるためである(同図(B))。なお、この場合はこの部分の3Dマップ更新は行わないことで適正な更新ができる。また、道路端より適宜の高さ上方へ引いた仮想ラインより外側にはみ出して位置する物体形状の変化を認識したときは3Dマップを更新するよう構成する。これによって走行ルート外にあって日々形状変化し得る樹木等を更新マップとの比較で適正な判断が可能になる。さらに判断した静止障害物情報の3Dマップ情報と同時刻のカメラ情報を記憶するよう構成し、後に管理者がデータを確認することでマップデータ変更が可能に構成すると、管理者はマップの変更処理の適否を判断の上、マップ変更処理を行うことができる。
【0043】
以上、圃場内での3Dライダー312とマップデータの比較による変化は、常に3Dマップデータを更新するようにし、農道等の走行路においては必要な更新を判断しながら行う。圃場に関しては、栽培作物等で常に環境変化があり、作物列等をマップに基づき運転する場合は過去走行した時の最新画像データは参考活用でき、常に更新しておくことで次工程作業時の有効活用ができる。
【0044】
前記のように、3次元で認識できる3Dライダー312を車両に搭載することによって、圃場間走行経路や作業を行う圃場で検知した周辺画像を元に3Dマップを作成し無人運転に活用できる。すなわち、圃場間走行経路3Dマップは、事前に経路を走行して取得した3Dデータにより生成する構成とし、圃場3Dマップは、事前に既定の圃場内に配置されている際の3Dライダーで検知した周辺画像を元に3Dマップを作成する構成としている。
【0045】
そして、3Dマップは作業車両100が走行等している際の路面位置相当(タイヤ接地面位置)のGNSS位置情報と紐づけした位置情報で管理するよう構成している。この際3Dマップには手動入力等で、静止障害物等の作業阻害要因となる物体位置を追加する事ができるように構成してもよい。また作成した3Dマップデータは、作業車両100側記憶装置及び/又はクラウドで管理する構成し、作業車両100の操舵を司る制御部は都度必要なデータを取得して使用できる構成としてもよい。
【0046】
更に、作業車両100の必要データ取得タイミングは、圃場間移動開始前、圃場間移動終了時等作業が変化するタイミングとするとよい。そして圃場間移動開始前の操舵ECUの取得データは、次圃場までの走行ルートを取得するものであり、圃場間移動終了時の操舵ECU307の取得データは、次圃場のデータを取得するものである。
【0047】
図7には、撮像データによって障害物を検知した場合の物体分析フローを示すもので、最初に移動物体か否か判定され、所定寸法より大きいか否かなどを基準として電柱等、作業道具等、自動車等、人間を各判断できる。
【0048】
次いで、圃場Hの外周Pe形状の生成方法について、取得する画像データに位置データを紐づけして生成する方法について説明する。図5の例においては、圃場Hのエリア情報、すなわち外周Pe形状、は全ての作物列を含み、作物最外周より外側にほぼ多角形形状となるエリアの頂点の位置情報を記憶しこれら頂点を結んだラインの内側を作物エリア情報として設定し、この作物エリア情報の外側に圃場Hエリア情報を生成するものである。したがってこの圃場Hエリア情報は実圃場エリアとほぼ同等の外形ラインを多数点の位置情報で形成し、多数点を接続したラインの内側を圃場エリア情報として設定することができる。
【0049】
一方、作物列ライン情報を生成し自動運転ルート生成に活用することができる。すなわち図8において、地図データに基づく圃場Hエリア内に、作物生育中画像データに基づき作物列ラインP情報を生成するものであり、各々の作物の上空画像の中央付近の点の位置情報を重ね合わせた位置情報付き地図データを収集し、各点群データを結ぶことでライン情報として生成するものである。具体的には各々の作物の上空画像の中央付近を通過するラインを描画しその描画情報と重ね合わせた位置情報付き地図データにより作物ラインP情報として生成することにより、作物生育中画像データに基づいた作物列ラインP情報を生成できる。
【0050】
また、装着する作業機情報に基づき作物列ラインS情報を活用した作業自動運転ルート(通常直線に近い長手方向の自動走行ライン)を各々生成する。そして作業機条件(作業機幅)や車両条件(トレッド等)を組み入れて、作業自動運転ルート同士を結ぶ旋回自動運転ルートを形成し、作業車両100が作業を行うための自動運転ルートとするものである。
【0051】
したがって、上記の作業自動運転ルートは、作物エリアQ内で形成し、旋回自動運転ルートは、作物エリアQを含む圃場Hエリア内で形成できる。また、後述の燃料補給地点F1や資材補給地点F2を圃場Hエリア内に登録可能に構成することもできる。この場合に、資材や燃料補給の判断する資材補給確認ポイントK1,K2…を設定し、資材補給が必要と判断した場合は、その既定のポイントKから地点登録された燃料補給地点F1や資材補給地点F2までの補給自動運転ルートを生成するものである。なお、資材補給確認ポイントK1,K2…は、作業自動運転ルートの往復一行程ごとに確認ポイントKを設けるのがよく、かつ一行程終了する行程端付近を確認ポイントKとして設定するとよい。ここで、資材や燃料補給の必要性は、自動運転中の対象となる資材や燃料の残量変化を作業自動運転ルートの一行程ごとに確認し、行程端の残量と一行程距離と変化量により次工程の作業継続性可否を判断するようにするとよい。
【0052】
前記補給自動運転ルートについて、圃場の長手方向位置に関し旋回ゾーンZの幅方向の範囲で横移動し資材補給地点に向けて縦移動することの組み合わせを基本にルート生成するように構成し、資材補給後は作業再開のために同ルートをもって資材補給確認ポイントまで戻り自動運転で作業再開できるようにしている。
【0053】
また、前記図5の往復隣接作業走行範囲13において、往復走行経路20が算定されると、作業車両100は、自律走行により、往復走行経路20に沿って、往復隣接作業走行範囲13の一端から他の一端まで往復しながら、圃場全体を作業走行で通過するように構成されている。
【0054】
具体的には、作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13の隅にある圃場端点21a(P1(以下、開始点P1))から往復隣接作業走行範囲13に進入すると、対向する位置にある圃場端点21b(Q1)まで直進して、一旦、往復隣接作業走行範囲13を出てから枕地14で左旋回し、隣接する圃場端点21b(Q2)から再度、往復隣接作業走行範囲13に進入する。その後、対向する位置にある圃場端点21a(P2)まで直進し、往復隣接作業走行範囲13を出てから枕地14で右旋回し、隣接する圃場端点21a(P3)から再度、往復隣接作業走行範囲13に進入する。作業車両100は、このような走行を圃場端点21a(Q8)に着くまで繰り返すことで、圃場全体を万遍なく耕耘することができる。
【0055】
次いで、図5に基づき枕地走行範囲14の枕地走行経路22について具体的に説明する。水路15や畦と往復隣接走行範囲13との間における枕地走行範囲14は、複数回の周回作業で耕耘できる範囲に設定されている。水路15や畦に近い枕地は作業者の手動操作による枕地走行運転で耕耘するものとし、枕地最内周は上記往復隣接作業自律走行に継続して自律走行する構成としている。したがって、作業者は作業車両100が管理通路12から出入口11に達すると、圃場Hの枕地走行範囲14を管理端末201に表示される枕地走行経路22に従って枕地耕耘を行い、往復隣接作業走行範囲13の圃場端点21aのうち往復隣接作業走行経路20の開始点P1へ向けて移動する。なお、出入口11を通過した後、以降は枕地走行範囲14を自律走行する構成でもよい。
【0056】
前記のように、作業車両100と遠隔管理装置200とがクラウドCを媒介して通信可能に構成されているので、管理ユーザは、遠隔管理装置200により、作業車両100の状態を監視したり、指令を送ることができ、遠隔的に作業車両100を管理するものである。そして、管理端末201は、通信機202を介してクラウドCにおける作業車両の位置および作業状況を取得して作業状況を表示し、必要な操作をもって走行車両を制御することができる。なお前記作業車両100はGNSS受信装置102が受信した電波から自機の位置情報を取得する位置情報取得手段を構成している。
【0057】
前記走行経路の設定する場合には、経路途中に燃料補給地点F1、資材補給地点F2を設定し、さらに、異常発生時の緊急避難場所を設定している(図9)。
【0058】
次いで、往復隣接作業走行経路20途中に、一定の燃料と給油する手段を備えた燃料補給地点F1と、肥料や苗等の資材を待機させた資材補給地点F2を設定し、一方作業車両100の燃料や資材の残量の検出に応じて自動運転経路を制御する。燃料補給制御について、例えば燃料残量が予め設定した量以下になると燃料要求指示信号が発信され、作業を中断して燃料補給地点F1に向けて作業車両100を走行制御する。この場合には燃料補給地点F1の位置に関わらず燃料が所定値以下に達することを前提としている。したがって燃料補給地点F1までの距離が遠いほど作業効率の低下が大きい。そこで、次のように構成する。
【0059】
すなわち、自動運転する圃場Hの作業における単位面積当たりの燃料消費量を演算する燃料消費演算手段と、現時点の燃料残量を検出する残量検知手段と、現時点の燃料残量と未作業領域演算手段とを備え、図10のフローチャートに示すように、未作業領域の面積を演算して現時点の燃料残量で賄えるか否か判定し(S102)、燃料不足とされるときは、前記燃料要求指示信号が出力される以前であっても燃料補給地点F1で停止信号を出力して燃料補給するものである(S103,S104)。このように構成すると、作業車両は作業負荷状態で燃料消費量は異なるが、圃場の単位面積の消費量を算出し、予定された作業経路終了まで燃料補給無しで可能か否かを判定し、事前に燃料補給を行うことによって、引き返し走行等の無駄な走行をなくすることができる。ここで、上記の燃料補給の状況を図10にて説明すると、燃料要求指示信号が発信される地点Tに達する前に、未作業領域の面積を演算して現時点の燃料残量で不足すると判定されるときは(前記S102)、燃料補給地点F1で停止し燃料補給するものである(図11(C))。
【0060】
図11(A)は、燃料要求指示信号が発信される地点Tから作業可能範囲を超えても燃料補給地点F1を素通りした結果、未作業域を残している。同図(B)は、燃料要求指示信号が発信される地点T以後の未作業域は残さずに作業終了している。
【0061】
また、施肥作業車両や移植作業車両等においても同様であり、図12は、資材補給地点F2を設定した場合のフローチャートである。資材の単位面積当たりの消費量を演算する資材消費演算手段と、現時点の資材残量を検出する残量検知手段と、現時点の資材残量と未作業領域演算手段とを備え、未作業領域の面積を演算して現時点の資材残量で賄えるか否か判定し、資材不足とされるときは、予め設定した資材量以下となって出力される資材要求指示信号が出力される以前であっても肥料や苗等の資材を待機させた資材補給地点F2で停止信号を出力して資材補給するものである。これによって燃料補給と同様の効果が見込まれる。
【0062】
前記燃料補給地点F1や資材補給地点F2は、走行経路20,22の途中に設定するとしたが、往復走行経路20や枕地走行経路22の近傍に設けてもよい。又図5図8においては、燃料補給地点F1と資材補給地点F2を同一地点に設定しているが、別々に設定してもよい。
【0063】
次いで、作業車両100の異常検出に基づく緊急対応について説明する。例えばエンジンの冷却水温異常、エンジンのオイル圧力異常等を検出する異常検出手段と、緊急避難場所までの距離を概算し走行可能か否か判断する判断手段と、車速低下状態で走行制御する異常時走行手段とを備え、異常検出すると判断手段が走行の可否を判断し、走行可能と判断するとエンジン回転を低回転に切替え作業車両100を低速に切替えて目的の緊急避難場所に向け自動走行状態とする。
【0064】
緊急避難場所は、例えば前記燃料補給地点F1や資材補給地点F2と共用な位置に設定することも可能である。この位置は圃場と路面に接する位置等に配備され、トラクタ等の農業機械が出入りする位置付近をとる場合が多く、トラック等で資材を運び込むこともできる。燃料補給の場合利用するが、このスペースを利用すれば、圃場での修理も可能である。異常発生時は、このスペースまで移動できれば理想的であるため、あらかじめこのエリアを走行経路に設定しておくことで、安全作業も可能であり、次工程への移行も容易に対応できる。このように異常継続の場合には緊急避難場所で停止対応するが、異常が回復すると運転再開する(図13)。
【0065】
なお、異常検出で走行不可と判断すると、作業車両100は緊急停止し緊急対応の連絡をする。走行不可と判断される異常には、作業継続に支障となる異常、例えば施肥作業における肥料詰まり、移植作業における連続欠株、燃料残量異常がある。
【0066】
また、あらかじめ走行経路上に、所定距離ごとに緊急停止位置を数か所設定しておくことも対応手段である。この緊急停止位置通過時には、各部の作業状態や作業車両の状態を確認し、異常兆候が検出されると即時停止する。ユーザの確認対応、走行許可が判断されない以上は作業継続できないという自動走行運転もある。
【符号の説明】
【0067】
11 出入口(障害物等)
16 電柱(障害物等)
17 排水路(障害物等)
20 往復走行経路(走行経路)
22 枕地走行経路(走行経路)
100 作業車両
102 GNSS受信機(GNSS位置情報取得手段)
305 画像データ処理手段
A 理論ルート
B 詳細ルート
C1,C2… 回避必要ルート
F1 燃料補給地点
F2 資材補給地点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13