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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177714
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/02 20060101AFI20241217BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241217BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B60P1/02 Z
G05D1/02 S
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096004
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永塚 正樹
(72)【発明者】
【氏名】草島 健人
【テーマコード(参考)】
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
3F022JJ11
3F022KK12
3F022MM05
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301BB14
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH19
5H301LL02
(57)【要約】
【課題】搬送対象の下に潜り込んで搬送対象を搬送する搬送ロボットにおいて、導入コストの増加を抑えつつ、拡張性を担保する。
【解決手段】搬送ロボットは、平面視で第1の方向を含む複数方向に走行可能な走行部を備える。また、搬送ロボットは、搬送対象を把持するための一対の把持アームと、平面視で第1の方向と直交する第2の方向に沿って一対の把持アームを直線的に案内する一対の案内装置と、を備える。さらに、搬送ロボットは、一対の把持アームを第2の方向に沿って互いに接近及び離間させる駆動部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の少なくとも一部を搬送対象の下に潜り込ませて該搬送対象を搬送する搬送ロボットであって、
前記車体に取り付けられ、平面視で第1の方向を含む複数方向に走行可能な走行部と、
前記搬送対象を把持するための一対の把持アームと、
前記車体に取り付けられ、平面視で前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って前記一対の把持アームを直線的に案内する一対の案内装置と、
前記一対の把持アームを前記第2の方向に沿って接近及び離間させる駆動部と、
を備える、
搬送ロボット。
【請求項2】
前記一対の把持アームは、各把持アームが平面視で略コの字型に形成され、且つコの字の開口部が互いに向き合うように配置される、
請求項1に記載の搬送ロボット。
【請求項3】
前記一対の把持アームの各々は、平面視で、前記第2の方向と平行に延びる第1のアーム部と、前記第1のアーム部の先端部から前記第1の方向と平行に延びる第2のアーム部と、前記第2のアーム部の先端部から前記第1のアーム部と平行に延びる第3のアーム部と、を含み、
前記第2の方向における前記第3のアーム部の長さは、前記第2の方向における前記第1のアーム部の長さより短く形成される、
請求項2に記載の搬送ロボット。
【請求項4】
前記一対の把持アームの各々に設けられ、障害物を検知する一対の障害物センサを更に備え、
前記一対の障害物センサは、平面視で、前記一対の把持アームにおいて互いに対角となる位置に配置される、
請求項2に記載の搬送ロボット。
【請求項5】
平面視で、前記一対の把持アームの各々の外側面に設けられ、障害物との接触を検知する一対の接触センサを更に備える、
請求項2に記載の搬送ロボット。
【請求項6】
前記駆動部は、
前記第2の方向に沿って延在する一対のねじ軸であって、互いに逆向きとなるねじ溝が形成される一対のねじ軸と、
前記一対のねじ軸の各々に組み付けられる一対のナットであって、前記一対の把持アームに各々連結される一対のナットと、
前記一対のねじ軸を互いに連結する回転軸及び前記回転軸を回転自在に支持するクロスローラ軸受を有し、前記回転軸を回転させるアクチュエータと、
を備える、
請求項1に記載の搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AGV(Automatic Guided Vehicle)やAMR(Autonomous Mobile Robot)等
の搬送ロボットが普及してきている。特許文献1には、走行装置及びリフタが設けられた車体を有する搬送ロボットが開示されている。この搬送ロボットは、台車等の搬送対象の下に潜り込んだ状態で、搬送対象をリフタにより持ち上げ、走行装置により走行することにより、搬送対象を搬送する。
【0003】
特許文献2には、伸縮可能な可動ピン及び走行装置が設けられた車体を有する搬送ロボットが開示されている。この搬送ロボットは、搬送対象の下に潜り込んだ状態で、搬送対象に設けられた専用の溝に可動ピンを係合させ、走行装置により走行することにより、搬送対象を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-059460号公報
【特許文献2】特開2022-149833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の搬送ロボットにおいては、搬送対象を持ち上げるために、高トルクのリフタが必要になり、それに応じて搬送対象の補強が必要なる可能性がある。また、特許文献2に記載の搬送ロボットにおいては、可動ピンと係合する専用の溝を搬送対象に設ける必要がある。よって、特許文献1及び2に記載されたような搬送ロボットを導入する際には、搬送対象の加工が必要となり、コストの増加や搬送ロボットの汎用性の低下を招く可能性がある。
【0006】
また、搬送対象を安全に搬送する上では、障害物を検知するためのセンサや障害物と接触した際の衝撃を緩和するための緩衝装置(例えば、バンパー等)を取り付けることも重要になる。しかしながら、搬送対象の下に潜り込むタイプの搬送ロボットにおいて、センサが車体に取り付けられると、搬送対象のキャスタ等によってセンサの検知範囲が制限される可能性がある。これに対し、平面視で搬送対象よりも突出するようにセンサを取り付ける方法が考えられるが、搬送対象を搬送していないときの搬送ロボットの大型化を招く可能性がある。また、緩衝装置についても、平面視で搬送対象よりも突出するように緩衝装置を搬送ロボットに取り付ける必要があり、搬送対象を搬送していないときの搬送ロボットの大型化を招く可能性がある。よって、搬送ロボットの大型化を招くことなく、センサや緩衝装置等を搬送ロボットに取り付けることができる拡張性が望まれる。
【0007】
本発明は、上記したような種々の実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送対象の下に潜り込んで搬送対象を搬送する搬送ロボットにおいて、導入コストの増加を抑えつつ、拡張性を担保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様の一つは、車体の少なくとも一部を搬送対象の下に潜り込ませて該搬送対象を搬送する搬送ロボットである。その場合の搬送ロボットは、例えば、
前記車体に取り付けられ、平面視で第1の方向を含む複数方向に走行可能な走行部と、
前記搬送対象を把持するための一対の把持アームと、
前記車体に取り付けられ、平面視で前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って前記一対の把持アームを直線的に案内する一対の案内装置と、
前記一対の把持アームを前記第2の方向に沿って接近及び離間させる駆動部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送対象の下に潜り込んで搬送対象を搬送する搬送ロボットにおいて、導入コストの増加を抑えつつ、拡張性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における搬送ロボットの概略構成を示す斜視図である。
図2】実施形態における搬送ロボットの概略構成を示す上面図である。
図3】実施形態における一対の把持アームの形状及び配置の一例を示す上面図である。
図4】実施形態における一対の把持アームの車体への取付け部分に注目した側面図である。
図5】実施形態におけるアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
図6】実施形態において一対の把持アームを互いに離間させた状態の搬送ロボットの斜視図である。
図7】実施形態において一対の把持アームを互いに離間させた状態の搬送ロボットの上面図である。
図8】実施形態において搬送対象を搬送する際の搬送ロボットの動作例を示す図である。
図9】実施形態において一対の把持アームで搬送対象を把持した状態の搬送ロボットの斜視図である。
図10】実施形態において一対の把持アームで搬送対象を把持した状態の搬送ロボットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の態様の1つである搬送ロボットは、平面視で第1の方向を含む複数方向に走行可能な走行部を備える。これにより、搬送ロボットは、平面視で第1の方向を含む複数方向に移動することができる。また、搬送ロボットは、搬送対象を把持するための一対の把持アームと、平面視で第1の方向と直交する第2の方向に沿って一対の把持アームを直線的に案内する一対の案内装置と、を備える。これにより、搬送ロボットは、一対の把持アームを、第2の方向に沿って互いに接近及び離間自在な状態で搭載することができる。さらに、搬送ロボットは、一対の把持アームを第2の方向に沿って互いに接近及び離間させる駆動部を備える。これにより、搬送ロボットは、一対の把持アームを第2の方向に沿って互いに接近及び離間させることができる。
【0012】
上記したように構成される搬送ロボットにより搬送対象を搬送する場合、走行部が、第2の方向と搬送対象の幅方向が平行(換言すると、第1の方向と搬送対象の幅方向とが直角)となり且つ搬送対象と車体が対峙する位置まで、搬送ロボットを走行させる。また、駆動部が、第2の方向における一対の把持アームの相対距離が搬送対象の幅よりも大きくなるように、一対の把持アームを離間させる。その際、一対の把持アームは、一対の案内装置により第2の方向に沿って直線的に案内されることで、互いに離間する。なお、上記した搬送ロボットの移動及び一対の把持アームの離間は、どちらが先に行われてもよく、又は同時に行われてもよい。ただし、搬送対象を搬送していないときの搬送ロボットの機動性や安全性を考慮すると、上記した搬送ロボットの移動が完了した後に、一対の把持ア
ームが離間されることが望ましい。
【0013】
次に、走行部が、搬送対象に向かって第1の方向に沿って搬送ロボットを走行させることにより、離間した状態の一対の把持アームの間に搬送対象を呼び込む。一対の把持アームの間に搬送対象が呼び込まれると、駆動部が、一対の把持アームを互いに接近させる。その際、一対の把持アームは、一対の案内装置により第2の方向に沿って直線的に案内されることで、互いに接近する。そして、一対の把持アームの相対距離が搬送対象の幅と略同等になると、搬送対象が一対の把持アームによって把持される。一対の把持アームによって搬送対象が把持されると、走行部が、搬送先へ向かって搬送ロボットを走行させる。
【0014】
本発明に係る搬送ロボットによれば、一対の把持アームで搬送対象を把持する形態で、搬送対象を搬送することができる。これにより、搬送対象をリフトアップしたり、又は搬送対象と搬送ロボットとを専用の機構で連結したりすることなく、搬送対象を搬送することができる。すなわち、補強や溝の形成等の加工が施された専用の搬送対象でなくとも、搬送することができる。その結果、搬送ロボットの汎用性を高めることができ、それに応じて搬送ロボットを導入する際のコストを少なく抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係る搬送ロボットによれば、搬送対象を搬送しないときに、一対の把持アームを互いに接近させておくことにより、搬送ロボットを小型化することができる。これにより、搬送ロボットが単体で走行する際の機動性や安全性を高めることができるとともに、搬送ロボットの収容スペースを確保し易くなる。
【0016】
本発明に係る搬送ロボットにおいて、一対の把持アームは、各把持アームが平面視で略コの字型に形成され、且つコの字の開口部が互いに向き合うように配置されてもよい。これにより、平面視で四角形状の搬送対象を把持することが可能になる。さらに、搬送対象の搬送中に、搬送対象が把持アームから抜け出たり、搬送対象の姿勢が不安定になったりすることを抑制することも可能になる。なお、一対の把持アームの形状は、上記した形状に限定されず、搬送対象の形状に応じて変更されてよい。例えば、搬送対象が平面視で円形状である場合、各把持アームが平面視で略円弧状に形成され、且つ円弧の開口部が互いに向き合うように配置されてもよい。これにより、平面視で円形状の搬送対象を、安定して把持することができる。
【0017】
一対の把持アームが、各把持アームが平面視で略コの字型に形成され且つコの字の開口部が互いに向き合うように配置される構成においては、各把持アームは、平面視で、第2の方向と平行に延びる第1のアーム部と、第1のアーム部の先端部から第1の方向と平行に延びる第2のアーム部と、第2のアーム部の先端部から第1のアーム部と平行に延びる第3のアーム部とを含み、第2の方向における第3のアーム部の長さが、第2の方向における第1のアーム部の長さより短く形成されてもよい。これにより、一対の把持アームの間に搬送対象を呼び込む際に、一対の把持アームを離間させる量を少なく抑えることができる。よって、搬送対象の周囲のスペースが比較的狭い場合であっても、搬送対象の呼び込み及び把持を行うことが可能になる。
【0018】
また、一対の把持アームが、各把持アームが平面視で略コの字型に形成され且つコの字の開口部が互いに向き合うように配置される構成においては、平面視で一対の把持アームにおける互いに対角となる位置に一対の障害物センサが配置されてもよい。その際、各障害物センサとして、自身を中心とする270度以上の範囲に存在する障害物を検知可能なセンサを用いてよい。これにより、障害物センサの取付け数を最小限に抑えつつ、死角の発生を抑制することができる。よって、障害物センサの取付けに対する拡張性を担保することができる。なお、障害物センサとしては、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)、デプスセンサ、又はカメラ等を使用してもよい。
【0019】
また、一対の把持アームには、障害物センサに代えて又は加えて、障害物との接触を検知する一対の接触センサが取り付けられてよい。その際、接触センサは、平面視で一対の把持アームの外側面に設けられるものとする。これにより、本発明に係る搬送ロボットが搬送対象を搬送する際には、平面視で搬送対象よりも外側に接触センサが位置することになるため、搬送対象が障害物と接触することを抑制しつつ、障害物との接触を検知することができる。よって、接触センサの取付けに対する拡張性を担保することができる。
【0020】
なお、上記した接触センサに代えて又は加えて、一対の把持アームの外側面にバンパー等の緩衝装置を取り付けることもできる。接触センサと緩衝装置を併用する場合、平面視で緩衝装置の外側面に接触センサが取り付けられればよい。これにより、本発明に係る搬送ロボットが搬送対象を搬送する際には、平面視で搬送対象よりも外側に緩衝装置が位置することになるため、搬送対象が障害物と接触することを抑制することができるとともに、障害物と接触した際の衝撃を緩和することができる。
【0021】
また、平面視で一対の把持アームの内側面に接触センサが取り付けられてもよい。これにより、一対の把持アームの把持動作(一対の把持アームを互いに接近させる動作)において、接触センサが搬送対象との接触を検知したことをトリガにして、駆動部が自動的に一対の把持アームの把持動作を停止させることも可能になる。
【0022】
本発明に係る搬送ロボットにおいて、駆動部は、第2の方向に沿って延在する一対のねじ軸であって、互いに逆向きとなるねじ溝が形成される一対のねじ軸と、一対のねじ軸の各々に組み付けられる一対のナットであって、一対の把持アームに各々連結される一対のナットと、一対のねじ軸を互いに連結する回転軸及び該回転軸を回転自在に支持するクロスローラ軸受を有し、回転軸を回転させるアクチュエータと、を備えてよい。これにより、1つのアクチュエータで一対の把持アームを互いに接近及び離間させることができる。また、ねじ軸のスラスト荷重をクロスローラ軸受で負荷することができるため、一対のねじ軸の回転精度を高めつつ、アクチュエータの耐久性を担保することも可能になる。
【0023】
なお、一対の把持アームの各々は、第1の方向における長さを可変に構成されてもよい。これにより、一対の把持アームの第1の方向における長さを、搬送対象の奥行きに応じて変更することができる。その結果、搬送ロボットの汎用性をより一層高めることができる。
【0024】
また、一対の把持アームの何れかには、ディスプレイ装置又はスピーカ等を備えた操作パネルを取り付けることも可能である。その際、搬送ロボットの周囲にいる人に対して、搬送ロボットの進行方向を示す画面又は音声をディスプレイ装置又はスピーカから出力させてもよい。これにより、走行中の搬送ロボットの周辺にいる人に対して、注意喚起を促すこともできる。
【0025】
<実施形態>
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
(搬送ロボットの概略構成)
本実施形態では、本発明に係る搬送ロボットを、物を積載するカートの搬送に適用する例について説明する。図1は、搬送ロボット1の斜視図である。図2は、搬送ロボット1の上面図である。搬送ロボット1は、図1及び図2に示すように、略長方体形状の車体10、4つのメカナムホイール11、及び一対の把持アーム12A-12Bを備える。
【0027】
なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を定義し、このXYZ直交座標系を参照しつつ搬送ロボット1の構成要素の配置等を説明する。本実施形態においては、車体10の長手方向(図1中の左下から右上へ向かう方向)をX軸方向(本発明の「第2の方向」に相当する。)と定義し、車体10の短手方向(図1中の右下から左上へ向かう方向)をY軸方向(本発明の「第1の方向」に相当する。)と定義し、X軸方向及びY軸方向と直交する方向(鉛直方向又は高さ方向)をZ軸方向と定義する。
【0028】
4つのメカナムホイール11は、Y軸方向と平行な軸周りに回転するように、車体10に取り付けられる。4つのメカナムホイール11は、互いに独立して回転方向及び回転速度が制御可能に構成される。これにより、4つのメカナムホイール11は、X軸方向及びY軸方向を含む複数方向に搬送ロボット1を平行移動させることができる。また、4つのメカナムホイール11は、搬送ロボット1を旋回、信地旋回、及び超信地旋回させることもできる。このように構成される4つのメカナムホイール11は、本発明に係る「走行部」に相当する。
【0029】
なお、走行部の構成は、上記した例に限定されず、少なくともX軸方向及びY軸方向へ搬送ロボット1を平行移動させることが構成であればよい。例えば、搬送ロボット1の走行部は、複数のオムニホイールで構成されてもよい。また、走行部は、既知のAMR(Autonomous Mobile Robot)やAGV(Automatic Guided Vehicle)等と同様に構成されて
もよい。
【0030】
一対の把持アーム12A-12Bは、X軸方向に沿って互いに接近及び離間自在に車体10に取り付けられる。一対の把持アーム12A-12Bの接近及び離間は、後述するアクチュエータ14により行われる。一対の把持アーム12A-12B及びアクチュエータ14の詳細については後述する。
【0031】
本実施形態における搬送ロボット1は、一対の把持アーム12A-12Bを互いに離間させた状態で、カート20の下に潜り込むことにより、一対の把持アーム12A-12Bの間にカート20を呼び込む。搬送ロボット1は、一対の把持アーム12A-12Bの間にカート20を呼び込んだ状態で、一対の把持アーム12A-12Bを互いに接近させることにより、カート20を把持する。搬送ロボット1は、一対の把持アーム12A-12Bでカート20を把持した状態で走行することにより、カート20を任意の搬送先まで搬送する。
【0032】
本実施形態における搬送ロボット1によれば、カート20をリフトアップしたり、又はカート20と搬送ロボット1を専用の機構で連結したりすることなく、カート20を搬送することができる。すなわち、本実施形態における搬送ロボット1によれば、カート20に加工等を施す必要がない。よって、搬送ロボット1の汎用性を高めることができ、それに応じて搬送ロボット1の導入コストの増加を抑制することができる。
【0033】
(把持アーム)
ここで、本実施形態の搬送ロボット1に搭載される把持アーム12A-12Bについて、図3に基づいて説明する。図3は、一対の把持アーム12A-12Bの形状及び配置の一例を示す上面図である。
【0034】
一対の把持アーム12A-12Bは、図3に示すように、平面視で、Y軸方向と平行な仮想直線を基準として線対称となるように配置される。以下では、一対の把持アーム12A-12Bのうち、X軸方向側(図3中の右側)に配置される把持アーム12Aを第1の把持アーム12Aと称し、X軸方向と反対側(図3中の左側)に配置される把持アーム1
2Bを第2の把持アーム12Bと称する。ただし、第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12Bを総称する際には、把持アーム12A-12Bと記す。
【0035】
第1の把持アーム12Aは、X軸方向(図3中の右方向)に延びる第1のアーム部120Aと、第1のアーム部120Aの先端部(X軸方向側の端部)からY軸方向(図3中の上方向)に延びる第2のアーム部121Aと、第2のアーム部121Aの先端部(Y軸方向側の端部)からX軸方向とは反対向き(図3中の左方向)に延びる第3のアーム部122Aと、を含んで構成される。すなわち、第1の把持アーム12Aは、平面視で、略コの字型形状に構成される。
【0036】
第2の把持アーム12Bは、X軸方向とは反対向き(図3中の左方向)に延びる第1のアーム部120Bと、第1のアーム部120Bの先端部(X軸方向とは反対側の端部)からY軸方向(図3中の上方向)に延びる第2のアーム部121Bと、第2のアーム部121Bの先端部(Y軸方向側の端部)からX軸方向(図3中の右方向)に延びる第3のアーム部122Bと、を含んで構成される。すなわち、第2の把持アーム12Bは、平面視で、略コの字を反転させた形状に構成される。
【0037】
把持アーム12A-12Bは、第1のアーム部120Aと第1のアーム部120BとがX軸方向と平行な仮想の同一直線上に配置されるように、車体10に取り付けられる。第2のアーム部121Aと第2のアーム部121Bとは、Y軸方向における長さが互いに同じになるように構成される。なお、第1のアーム部120Aと第1のアーム部120Bとは、X軸方向の長さが互いに同じであってもよく、又は互いに異なっていてもよい。同様に、第3のアーム部122Aと第3のアーム部122Bとは、X軸方向の長さが互いに同じであってもよく、又は互いに異なっていてもよい。
【0038】
ただし、第1の把持アーム12Aにおいて、第3のアーム部122Aは、X軸方向における長さが第1のアーム部120Aより短くなるように形成されることが好ましい。一例では、第3のアーム部122Aは、図3に示すように、第2のアーム部121AのY軸方向側の端部からX軸方向とは反対向き(図3中の左方向)に少しでも突出していればよい。同様に、第2の把持アーム12Bにおいて、第3のアーム部122Bは、X軸方向における長さが第1のアーム部120Bより短く形成されることが好ましい。これにより、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bとの間にカート20を呼び込む際に、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bとを離間させる量を少なく抑えることができる。よって、カート20の周囲のスペースが比較的狭い場合であっても、カート20の呼び込み及び把持を行うことが可能になる。
【0039】
ここで、把持アーム12A-12Bは、断面形状が矩形の板状に形成されてもよい。その際、把持アーム12A-12Bは、図1に示すように、上面及び下面の幅が側面の高さより大きくなる板状に形成されてもよい。また、把持アーム12A-12Bは、上面及び下面の幅よりも側面の高さが大きくなる板状に形成されてもよい。ただし、把持アーム12A-12Bの形状は、実施の形態に応じて柔軟に変更可能である。
【0040】
また、本実施形態では、第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12Bには、第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bが各々取り付けられる。図3に示す例では、第1の障害物センサ30Aは、第1の把持アーム12Aにおける第1のアーム部120Aと第2のアーム部121Aとの間の角部に取り付けられる。第2の障害物センサ30Bは、第2の把持アーム12Bにおける第2のアーム部121Bと第3のアーム部122Bとの間の角部に取り付けられる。
【0041】
なお、第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bの取付け位置は、図3
に例示した位置に限定されず、第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12Bにおいて互いに対角となる位置であればよい。例えば、第1の把持アーム12Aにおける第2のアーム部121Aと第3のアーム部122Aとの間の角部に第1の障害物センサ30Aが取り付けられ、且つ第2の把持アーム12Bにおける第1のアーム部120Bと第2のアーム部121Bとの間の角部に第2の障害物センサ30Bが取り付けられてもよい。
【0042】
第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bは、搬送ロボット1の周囲に位置する障害物を検知するセンサである。第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bとしては、自身を中心とする270度以上の範囲に位置する障害物を検知可能なセンサを使用することが好ましい。斯様な第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bとしては、LiDAR、デプスセンサ、又はカメラ等を利用することができる。
これにより、平面視で、搬送ロボット1を中心とする360度の範囲に位置する障害物を、第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bにより検知することができる。
【0043】
また、本実施形態では、第2の把持アーム12Bには、図1及び図2に示すように、フレーム17を介して操作パネル18が取り付けられる。フレーム17は、第1の把持アーム12Aの上面からZ軸方向に立設される複数の支柱とそれら支柱間に架設される梁とを組み合わせて構成されてもよい。図1及び図2に示す例では、フレーム17は、平面視で略L字型形状に構成されているが、略L字型形状に限定されず、平面視で第2の把持アーム12Bより内側に突出しない形状であればよい。
【0044】
操作パネル18は、オペレータ等がカート20の搬送に必要な情報を入力するための機器である。カート20の搬送に必要な情報としては、搬送対象となるカート20の位置、搬送先の位置、搬送経路、搬送タイミング、及びカート20の幅等を例示することができる。これにより、搬送ロボット1は、操作パネル18に入力された情報に従ってメカナムホイール11やアクチュエータ14を制御することで、カート20の搬送を行うことができる。なお、操作パネル18は、搬送ロボット1の走行中に、搬送ロボット1の周辺に位置する人に対して注意喚起を促す画面や音声を出力するように構成されてもよい。一例として、操作パネル18は、搬送ロボット1の通行を示す情報や搬送ロボット1の進行方向を示す情報を、文字や記号で画面表示したり又は音声出力したりしてもよい。
【0045】
(把持アームの取付け構造)
次に、把持アーム12A-12Bの車体10への取付け構造について、図4に基づいて説明する。図4は、車体10における把持アーム12A-12Bの取付け部分に注目した側面図である。
【0046】
図4に示すように、第1の把持アーム12Aの第1のアーム部120Aの下面には、X軸方向に延在する第1の軌道レール123Aが敷設される。第1の軌道レール123Aには、該第1の軌道レール123Aの長手方向に沿って直線的に相対移動可能に第1のキャリッジ15Aが組み付けられる。一例として、第1のキャリッジ15Aは、第1の軌道レール123Aの転動溝を転動しつつ該第1のキャリッジ15A内の循環路を循環する多数の転動体(ボール又はローラ等)を介して、軌道レール16に組み付けられる。
【0047】
第1のキャリッジ15Aは、車体10の上面に固定される。これにより、第1の把持アーム12Aの第1のアーム部120Aが、第1の軌道レール123A及び第1のキャリッジ15Aによって直線的に案内されることで、X軸方向に沿って進退自在となる。その結果、第1の把持アーム12A全体が、X軸方向に沿って進退自在な状態で車体10に支承されることになる。
【0048】
また、第2の把持アーム12Bの第1のアーム部120Bの下面には、X軸方向に延在する第2の軌道レール123Bが敷設される。第2の軌道レール123Bには、該第2の軌道レール123Bの長手方向に沿って直線的に相対移動可能に第2のキャリッジ15Bが組み付けられる。第2のキャリッジ15Bの第2の軌道レール123Bへの組み付け方法は、第1のキャリッジ15Aと同様でよい。
【0049】
第2のキャリッジ15Bは、車体10の上面に固定される。これにより、第2の把持アーム12Bの第1のアーム部120Bが、第2の軌道レール123B及び第2のキャリッジ15Bによって直線的に案内されることで、X軸方向に沿って進退自在となる。その結果、第2の把持アーム12B全体が、X軸方向に沿って進退自在な状態で車体10に支承されることになる。
【0050】
なお、軌道レール123A-123B及びキャリッジ15A-15Bは、第1のアーム部120Aと第1のアーム部120BとがX軸方向と平行な仮想の同一直線上に位置決めされるように、車体10に取り付けられる。さらに、軌道レール123A-123Bの第1のアーム部120A-120Bへの取付け及びキャリッジ15A-15Bの車体10への取付けは、把持アーム12A-12Bの地上高がカート20のキャスタ210を除いた部分(物を積載する部分)の最低地上高よりも高くなる方法で行われる。一例として、キャリッジ15A-15Bの取付け位置を車体10の上面より嵩上げするための土台部を車体10に設け、当該土台部にキャリッジ15A-15Bが取り付けられてもよい。
【0051】
また、車体10には、X軸方向に沿って延在する一対のねじ軸13A-13Bが取り付けられる。その際、一対のねじ軸13A-13Bは、X軸方向と平行な仮想の同一直線上に直列に配置され、後述のアクチュエータ14を介して互いに一体的に回転可能に連結される。本実施形態では、一対のねじ軸13A-13Bは、互いにねじ溝が反対向き(左右ねじ)となるように形成される。
【0052】
なお、以下では、一対のねじ軸13A-13Bのうち、X軸方向側(図4中の右側)に位置するねじ軸13Aを第1のねじ軸13Aと称し、X軸方向とは反対側(図4中の左側)に位置するねじ軸13Bを第2のねじ軸13Bと称する。ただし、第1のねじ軸13Aと第2のねじ軸13Bとを総称する際には、ねじ軸13A-13Bと記す。
【0053】
第1のねじ軸13Aには、第1のすべりナット16Aが組み付けられる。第1のすべりナット16Aは、第1の把持アーム12Aの第1のアーム部120Aと連結される。また、第2のねじ軸13Bには、第2のすべりナット16Bが組み付けられる。第2のすべりナット16Bは、第2の把持アーム12Bの第1のアーム部120Bと連結される。
【0054】
アクチュエータ14は、第1のねじ軸13A及び第2のねじ軸13Bを一体的に回転させる。第1のねじ軸13Aと第2のねじ軸13Bはねじ溝の向きが互いに反対であるため、それら第1のねじ軸13A及び第2のねじ軸13Bがアクチュエータ14によって一体的に回転させられた場合に、第1のすべりナット16Aと第2のすべりナット16BがX軸方向に沿って互いに反対向きに移動する。つまり、アクチュエータ14による第1のねじ軸13A及び第2のねじ軸13Bの回転方向を変えることで、第1のすべりナット16Aと第2のすべりナット16Bを互いに接近及び離間させることができる。これに伴い、第1のすべりナット16Aに連結される第1の把持アーム12Aと、第2のすべりナット16Bに連結される第2の把持アーム12BとをX軸方向に沿って互いに接近及び離間させることができる。
【0055】
ここで、ねじ軸13A-13B及びアクチュエータ14は、図1及び図4に示すように、車体10におけるY軸方向とは反対側の側方であって、且つ車体10の上面より低い位
置に配置されるように、車体10に取り付けられることが望ましい。これにより、搬送ロボット1における把持アーム12A-12B以外の部位の最高地上高を可能な限り低くすることができる。その結果、車体10をカート20の下に潜り込ませる際に、把持アーム12A-12B以外の部位がカート20と干渉することを抑制することができる。さらに、カート20のキャスタ210を除いた部分(物を積載する部分)の最低地上高が比較的低い場合であっても、車体10をカート20の下に潜り込ませることが可能になる。
【0056】
(アクチュエータ)
次に、アクチュエータ14の構成について、図5に基づいて説明する。図5は、アクチュエータ14周辺の拡大断面図である。一例では、アクチュエータ14は、シャフト140を回転駆動する電動モータである。本実施形態では、シャフト140は、クロスローラ軸受141を介して回転自在にハウジング142に支持される。シャフト140のX軸方向側(図5中の右側)の端部は、第1のリジットカップリング142Aを介して第1のねじ軸13Aと連結される。また、シャフト140のX軸方向とは反対側(図5中の左側)の端部は、第2のリジットカップリング142Bを介して第2のねじ軸13Bと連結される。
【0057】
上記したように構成されるアクチュエータ14がシャフト140を回転させると、第1のねじ軸13A及び第2のねじ軸13Bがシャフト140と一体的に回転する。第1のねじ軸13Aと第2のねじ軸13Bは互いにねじ溝の向きが反対であるため、第1のねじ軸13Aに組み付けられている第1のすべりナット16Aと第2のねじ軸13Bに組み付けられている第2のすべりナット16BがX軸方向に沿って互いに反対向きに移動し、それに伴って第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12BがX軸方向に沿って互いに反対向きに移動する。
【0058】
ここで、図1及び図2に示した例では、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bが互いに最も接近した状態になっている。この状態でアクチュエータ14がシャフト140を第1の回転方向に回転駆動すると、図6及び図7に示すように、第1のすべりナット16A及び第2のすべりナット16BがX軸方向に沿って互いに離間し、それに伴って第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12BもX軸方向に沿って互いに離間する。また、図6及び図7に示すように第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12Bが互いに離間した状態で、アクチュエータ14がシャフト140を第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転駆動すると、第1のすべりナット16A及び第2のすべりナット16BがX軸方向に沿って互いに接近し、それに伴って第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12BもX軸方向に沿って互いに接近する。これにより、1つのアクチュエータ14で第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12Bを互いに接近及び離間させることができる。
【0059】
上記したように第1の把持アーム12A及び第2の把持アーム12Bを互いに接近及び離間させる際には、第1のねじ軸13A及び第2のねじ軸13Bのスラスト荷重がアクチュエータ14のシャフト140に作用するが、斯様なスラスト荷重をクロスローラ軸受141で負荷することで、第1のねじ軸13A及び第2のねじ軸13Bの回転精度を高めつつ、アクチュエータ14の耐久性を担保することができる。
【0060】
(実施形態の作用効果)
ここで、本実施形態の作用効果について、図8から図10に基づいて説明する。図8は、カート20を把持アーム12A-12Bにより把持する際の搬送ロボット1の動作を示す図である。図9は、把持アーム12A-12Bがカート20を把持した状態の搬送ロボット1を示す斜視図である。図10は、把持アーム12A-12Bがカート20を把持した状態の搬送ロボット1の側面図である。
【0061】
所定の場所に置かれているカート20を把持アーム12A-12Bにより把持する場合には、まず、図8中(a)に示すように、メカナムホイール11が、搬送ロボット1のX軸方向とカート20の幅方向とが平行となり且つカート20と車体10とが対峙する位置まで、搬送ロボット1を走行させる。なお、搬送ロボット1がカート20を搬送していないとき(搬送ロボット1が単体で走行するとき)は、図1及び図2を用いて示したように、把持アーム12A-12Bが互いに最も接近した状態に制御される。これにより、単体で走行している搬送ロボット1が、周囲の人の通行を妨げたりすることを抑制することができる。さらに、搬送ロボット1が狭い通路等を走行することも可能になるため、単体で走行する搬送ロボット1の走行経路の選択肢を増やすこともできる。
【0062】
搬送ロボット1のX軸方向とカート20の幅方向とが平行となり且つカート20と車体10とが対峙する位置に到着した搬送ロボット1では、図8中(b)に示すように、アクチュエータ14が、シャフト140を第1の回転方向へ回転駆動する。これにより、第1のねじ軸13A及び第2のねじ軸13Bが、シャフト140と一体的に第1の回転方向へ回転する。それに応じて、第1のすべりナット16Aと第2のすべりナット16BがX軸方向に沿って互いに離間する。その際、第1のすべりナット16Aに連結されている第1の把持アーム12Aが、第1の軌道レール123A及び第1のキャリッジ15AによってX軸方向へ直線的に案内される。また、第2のすべりナット16Bに連結されている第2の把持アーム12Bが、第2の軌道レール123B及び第2のキャリッジ15BによってX軸方向とは反対向きに直線的に案内される。その結果、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12BがX軸方向に沿って互いに離間する。アクチュエータ14は、第3のアーム部122Aの先端部(X軸方向とは反対側の端部)と第3のアーム部122Bの先端部(X軸方向側の端部)との隙間がカート20の幅よりも大きくなるまで、シャフト140を第1の回転方向に回転させる。その際、操作パネル18に入力されたカート20の幅に応じて、シャフト140の第1の回転方向への回転量(回転角度)が決定(演算)されてもよい。
【0063】
第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bとの隙間(X軸方向における第3のアーム部122Aの先端部と第3のアーム部122Bの先端部との隙間)がカート20の幅より大きくなるまでシャフト140が第1の回転方向に回転されると、図8中(c)に示すように、4つのメカナムホイール11が、Y軸方向に平行移動するように搬送ロボット1を走行させることで、車体10の少なくとも一部をカート20の下に潜り込ませるとともに、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bとの隙間にカート20を呼び込む。
【0064】
なお、本実施形態における搬送ロボット1は、図9及び図10に示すように、把持アーム12A-12B以外の部位の最高地上高(全高)がカート20のキャスタ210を除いた部分(物を積載する部分)の最低地上高より低くなり、且つ把持アーム12A-12B以外の部分の幅(X軸方向の長さ)がカート20の幅方向に隣接する2つのキャスタ210の隙間より狭くなるように構成される。これにより、搬送ロボット1における把持アーム12A-12B以外の部位をカート20と干渉させることなく、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bとの隙間にカート20を呼び込むことができる。また、本実施形態における搬送ロボット1では、第3のアーム部122A及び第3のアーム部122BのX軸方向における長さが第1のアーム部120A及び第1のアーム部120Bよりも各々短く形成される。これにより、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bとの間にカート20を呼び込む際に、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bとを離間させる量を少なく抑えることができる。その結果、カート20の周囲のスペースが比較的狭い場合であっても、カート20の呼び込みを行うことが可能になる。
【0065】
第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bとの隙間にカート20が呼び込まれると、図8中(d)に示すように、アクチュエータ14が、シャフト140を第2の回転方向へ回転駆動する。これにより、第1のねじ軸13A及び第2のねじ軸13Bが、シャフト140と一体的に第2の回転方向へ回転する。それに応じて、第1のすべりナット16Aと第2のすべりナット16BがX軸方向に沿って互いに接近する。その際、第1のすべりナット16Aに連結されている第1の把持アーム12Aが、第1の軌道レール123A及び第1のキャリッジ15AによってX軸方向とは反対向きに直線的に案内される。また、第2のすべりナット16Bに連結されている第2の把持アーム12Bが、第2の軌道レール123B及び第2のキャリッジ15BによってX軸方向へ直線的に案内される。その結果、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12BがX軸方向に沿って互いに接近する。アクチュエータ14は、X軸方向における第2のアーム部121Aの内側面と第2のアーム部121Bの内側面との間隔がカート20の幅と略同等になるまで、シャフト140を第2の回転方向に回転させる。その際、操作パネル18に入力されたカート20の幅、及び上記図8中(b)を用いて説明したシャフト140の第1の回転方向への回転量に応じて、シャフト140の第2の回転方向への回転量(回転角度)が決定(演算)されてもよい。
【0066】
X軸方向における第2のアーム部121Aの内側面と第2のアーム部121Bの内側面との間隔がカート20の幅と略同等になるまで、シャフト140が第2の回転方向へ回転されると、図9及び図10に示すように、第1の把持アーム12Aと第2の把持アーム12Bによってカート20が把持される。その後、メカナムホイール11が、所定の搬送先まで搬送ロボット1を走行させる。その際、搬送ロボット1の推進力が把持アーム12A-12Bを介してカート20に伝達されることで、カート20のキャスタ210が搬送ロボット1の進行方向へ向かって転動する。これにより、カート20が搬送ロボット1の推進力を利用して走行する。よって、搬送ロボット1は、所定の搬送先までカート20を搬送することができる。
【0067】
本実施形態で述べた搬送ロボット1によれば、把持アーム12A-12Bでカート20を把持する形態で、カート20を搬送することができる。これにより、カート20をリフトアップしたり、又はカート20と搬送ロボット1とを専用の機構で連結したりする必要がない。すなわち、補強や溝の形成等の加工が施された専用のカートでなくても、搬送ロボット1で搬送することができる。その結果、搬送ロボット1の汎用性を高めることができ、それに応じて搬送ロボット1を導入する際のコストを少なく抑えることができる。
【0068】
また、本実施形態で述べた搬送ロボット1によれば、カート20を搬送しないときに、把持アーム12A-12Bを互いに接近させておくことにより、搬送ロボット1の小型化することができる。これにより、搬送ロボット1が単体で走行する際の機動性や安全性を高めることができるとともに、収納スペースを確保し易くすることができる。
【0069】
また、本実施形態で述べた搬送ロボット1によれば、把持アーム12A-12Bの各々が平面視で略コの字型に形成され、且つコの字型の開口部が互いに向き合うように配置されるため、平面視で四角形状のカート20を安定して把持することができる。例えば、カート20のX軸方向の姿勢変化を第2のアーム部121A-121Bにより抑制することができるとともに、カート20のY軸方向の姿勢変化を第1のアーム部120A-120B及び第3のアーム部122A-122Bにより抑制することができる。よって、搬送ロボット1がカート20を搬送する際のカート20の姿勢変化を抑制することができる。さらに、把持アーム12A-12Bがカート20を把持した状態において、第3のアーム部122A-122Bがカート20のY軸方向への移動を規制する係止部として機能するため、搬送途中でカート20が把持アーム12A-12Bの間からY軸方向へ抜け出すことを抑制することできる。
【0070】
また、本実施形態で述べた搬送ロボット1によれば、平面視で、把持アーム12A-12Bの対角となる位置に第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bが配置される。これにより、把持アーム12A-12Bがカート20を把持した状態においては、図9(d)に示したように、平面視で、第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bは、カート20の対角線の延長線上に位置することになる。また、第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bの各々は、自身を中心とする270度の範囲に存在する障害物を検知することができる。よって、第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bは、平面視で、カート20を中心とする360度の範囲に存在する障害物を検知することができる。すなわち、障害物センサの取付け数を最小限に抑えつつ、死角の発生を抑制することができる。よって、障害物センサの取付けに対する搬送ロボット1の拡張性を担保することができる。
【0071】
また、本実施形態で述べた搬送ロボット1によれば、1つのアクチュエータ14で一対の把持アーム12A-12Bを互いに接近及び離間させることができる。また、ねじ軸13A-13Bのスラスト荷重をクロスローラ軸受141で負荷することができるため、ねじ軸13A-13Bの回転精度を高めつつ、アクチュエータ14の耐久性を担保することもできる。
【0072】
<他の実施形態>
前述した実施形態では、平面視で略コの字型形状を有する把持アーム12A-12Bを例示したが、把持アーム12A-12Bの形状は、搬送対象となるカートの形状に応じて適宜変更されてよい。把持アーム12A-12Bの各々が平面視で略円弧状に形成され且つ円弧の開口部が互いに向き合うように車体10に取り付けられてもよい。これにより、平面視で円形状のカートを安定して把持することができる。
【0073】
また、前述した実施形態では、第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bを把持アーム12A-12Bに取り付ける例について述べたが、第1の障害物センサ30A及び第2の障害物センサ30Bに代えて又は加えて、障害物との接触を検知する接触センサが把持アーム12A-12Bに取り付けられてよい。その際、接触センサは、平面視で把持アーム12A-12Bの各々の外側面に設けられてもよい。これにより、搬送ロボット1がカートを把持した状態において、平面視で、カートよりも外側に接触センサが配置されることになる。よって、カートが障害物と接触することを抑制しつつ、障害物との接触を検知することができる。その結果、接触センサの取付けに対する搬送ロボット1の拡張性を担保することができる。
【0074】
なお、上記した接触センサに代えて又は加えて、把持アーム12A-12Bの外側面にバンパー等の緩衝装置を取り付けてもよい。接触センサと緩衝装置を併用する場合、平面視で緩衝装置の外側面に接触センサが取り付けられればよい。これにより、搬送ロボット1がカートを把持した状態において、平面視で、カートよりも外側に緩衝装置が配置されることになる。よって、カートが障害物と接触することを抑制することができるとともに、障害物と接触した際の衝撃を緩和することができる。その結果、緩衝装置の取付けに対する搬送ロボット1の拡張性を担保することもできる。
【0075】
また、平面視で、把持アーム12A-12Bの内側面に接触センサが取り付けられてもよい。これにより、把持アーム12A-12Bの把持動作において、接触センサがカートとの接触を検知したことをトリガにして、アクチュエータ14が自動的にシャフト140の回転駆動を停止させることが可能になる。
【0076】
また、前述した実施形態では、第2のアーム部121A-121Bの長さが一定である
把持アーム12A-12Bを例示したが、第2のアーム部121A-121Bの長さが可変(伸縮自在)であってもよい。その際、第2のアーム部121A-121Bの伸縮は、手動で行われるようにしてもよく、又は直動アクチュエータ等を利用して機械的に行われるようにしてもよい。これにより、把持アーム12A-12BのY軸方向における長さを、カートの奥行きに応じて変更することができるため、搬送ロボット1の汎用性をより一層高めることができる。
【0077】
搬送ロボット1の搬送対象が、物を積載する部分の底面が予め編み目状に形成されるカゴ台車、又は物を積載する部分の下面に予めリブ等の凹凸が形成されるカート等である場合、車体10の上面に伸縮可能な可動ピンを取付け、把持アーム12A-12Bによって搬送対象が把持された際に当該可動ピンを上記編み目の隙間又は上記凹凸の凹部に係合させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1・・・搬送ロボット、10・・・車体、11・・・メカナムホイール、12A-12B・・・把持アーム、123A-123B・・・軌道レール、13A-13B・・・ねじ軸、14・・・アクチュエータ、15A-15B・・・キャリッジ、16A-16B・・・すべりナット、20・・・カート、30A-30B・・・障害物センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10