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特開2024-177716液体吐出チップ、液体吐出用ウエハ、および液体吐出チップの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177716
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】液体吐出チップ、液体吐出用ウエハ、および液体吐出チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20241217BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B41J2/16 507
B41J2/14 605
B41J2/14 603
B41J2/16 503
B41J2/16 511
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096007
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】平本 篤司
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF93
2C057AG31
2C057AP22
2C057AP25
2C057AP34
2C057BA13
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】歩留まりの低下を抑制した液体吐出チップを提供すること。
【解決手段】液体吐出チップは、液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体をエネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている。第一流路の壁面および第二流路の壁面にそれぞれ凹部が形成され、凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方について、第一流路基板>第二流路基板である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出チップであって、
前記第一流路の壁面および前記第二流路の壁面にそれぞれ凹部が形成され、
前記凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方について、前記第一流路基板>前記第二流路基板である、液体吐出チップ。
【請求項2】
前記第一流路基板の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方は、前記第二流路基板の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方の1.5倍以上であり、かつ10倍以下である、請求項1に記載の液体吐出チップ。
【請求項3】
前記第二流路基板の前記第二流路の壁面に、二種類以上の深さおよび幅のうちの少なくとも一方を有する凹部が形成され、
前記第二流路基板における前記第一流路基板との接合面を第一面とし、前記第一面と反対の面を第二面としたとき、
前記第二流路において、第一面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方<第二面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方、
である、請求項1に記載の液体吐出チップ。
【請求項4】
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出チップであって、
前記第一流路および前記第二流路のうちの少なくとも一方の壁面に、二種類以上の深さおよび幅のうちの少なくとも一方を有する凹部が形成され、
前記第一流路基板および第二流路基板における接合面をそれぞれ第一面とし、前記第一面と反対の面を第二面としたとき、第一面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方<第二面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方、
である、液体吐出チップ。
【請求項5】
前記第一流路基板および前記第二流路基板のうちの少なくとも一方における前記第一面側の凹部の深さをD1、凹部の幅をW1とし、
前記第一面側から前記第二面側へむかって凹部の深さをD1、D2、・・・、Dn、幅をW1、W2、・・・、Wnとし、nが3以上であるとき、
D1<D2<・・・<DnまたはW1<W2<・・・<Wnである、請求項4に記載の液体吐出チップ。
【請求項6】
前記第一面側の凹部の深さをD1、幅をW1とし、前記第二面側の凹部の深さをDn、幅をWnとしたとき、Dn>2D1またWn>2W1である、請求項4に記載の液体吐出チップ。
【請求項7】
前記凹部は、開口部の内周を前記第一流路基板と前記第二流路基板とが積層する積層方向に連続して形成されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出チップ。
【請求項8】
前記凹部の深さは同一条件でエッチングされた壁面の平均深さであり、前記凹部の幅は同一条件でエッチングされた壁面の平均幅である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出チップ。
【請求項9】
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出ヘッド用ウエハであって、
前記第一流路基板および前記第二流路基板のうちの一方の切断予定線上に未開口の溝が形成され、他方の基板の切断予定線上に貫通口が形成され、
前記第一流路の壁面および前記第二流路の壁面、ならびに、前記溝および前記貫通口に、それぞれ凹部が形成され、
前記凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方について、前記第一流路基板>前記第二流路基板である、液体吐出ヘッド用ウエハ。
【請求項10】
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出ヘッド用ウエハであって、
前記第一流路基板および前記第二流路基板のうちの一方の切断予定線上に未開口の溝が形成され、他方の基板の切断予定線上に貫通口が形成され、
前記第一流路および前記第二流路のうちの少なくとも一方の壁面、ならびに、前記溝および前記貫通口に、二種類以上の深さおよび幅のうちの少なくとも一方を有する凹部が形成され、
前記第一流路基板および第二流路基板における接合面をそれぞれ第一面とし、前記第一面と反対の面を第二面としたとき、第一面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方<第二面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方、
である、液体吐出用ウエハ。
【請求項11】
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合される液体吐出チップの製造方法であって、
前記第一流路の壁面および前記第二流路の壁面にそれぞれ凹部を形成する工程を有し、
前記凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方について、前記第一流路基板>前記第二流路基板である、液体吐出チップの製造方法。
【請求項12】
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合される液体吐出チップの製造方法であって、
前記第一流路および前記第二流路のうちの少なくとも一方の壁面に、二種類以上の深さおよび幅のうちの少なくとも一方を有する凹部を形成する工程を有し、
前記第一流路基板および第二流路基板における接合面をそれぞれ第一面とし、前記第一面と反対の面を第二面としたとき、第一面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方<第二面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方、
である、液体吐出チップの製造方法。
【請求項13】
前記凹部は、ボッシュプロセスを用いて形成される、請求項11または12に記載の液体吐出チップの製造方法。
【請求項14】
前記ボッシュプロセスの条件として、前記凹部の深さD1、D2、D3・・・Dnのエッチングステップの時間をE1、E2、E3、・・・Enとしたとき、En>・・・>E3>E2>E1である、請求項13に記載の液体吐出チップの製造方法。
【請求項15】
前記第一流路基板および前記第二流路基板のうちの一方の切断予定線上に未開口の溝が形成され、他方の基板の切断予定線上に貫通口が形成されており、
前記切断予定線に沿ってレーザー光を照射することにより、前記第一流路基板の内部または前記第一流路基板と第二流路基板の内部に変質部を形成し、前記変質部に応力を加えることで、前記基板を切断して分割することで複数の前記液体吐出チップを製造する工程をさらに有する、請求項11に記載の液体吐出チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出チップ、液体吐出用ウエハ、および液体吐出チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流路となる溝または貫通孔が形成された部材同士を接合することでMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスが製作されている。MEMSデバイスの一例として、記録メディアに対し液体を吐出する液体吐出チップが知られている。
【0003】
液体吐出チップは、液体を吐出する為のエネルギを与えるエネルギ発生素子を備えている。エネルギ発生素子としてはヒータ素子のような液体を加熱および沸騰させる素子、または、ピエゾ素子のような体積変化を利用して液体に圧力を加える素子が挙げられる。
【0004】
液体をエネルギ発生素子へ供給する流路は、流路となる溝または孔が形成された部材を複数積層されたもの、および、積層後に流路となる溝または孔を形成するものが知られている。これら部材の積層は、接着剤を介した接合で積層される。
【0005】
また、これらのMEMSデバイスは、ウエハと呼ばれる基板に複数形成されており、基板を切断して複数の液体吐出チップに分割される。基板を切断する手法としては、レーザーステルスダイシングと呼ばれる手法がある。この手法では、基板内部にレーザー光を集光させることで内部を変質させ、基板に外力を加えることで変質部を起点とした亀裂を連続させて基板を切断する(以降、割断という)ことが行われる。
【0006】
特許文献1には、割断時における切断精度を向上させるため、基板の結晶方位に対して傾斜した切断予定線上に溝を形成する技術が開示さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-228605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術を用いて切断予定線上に溝を形成する場合、接着剤が切断予定線上の溝内または流路内等に流入することがある。そして、チップ割断後に、接着剤の塊が残留し、歩留まりを低下させる虞がある。
【0009】
本開示は、歩留まりの低下を抑制した液体吐出チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る液体吐出チップは、液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出チップであって、前記第一流路の壁面および前記第二流路の壁面にそれぞれ凹部が形成され、前記凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方について、前記第一流路基板>前記第二流路基板である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、歩留まりの低下を抑制した液体吐出チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】液体吐出ヘッド用ウエハの断面模式図である。
図2】切断予定線DL部分の拡大図である。
図3】割断後のチップを並べた平面図である。
図4図1におけるα部を示す拡大図である。
図5図1におけるα部を示す拡大図である。
図6図1におけるα部を示す拡大図である。
図7図1におけるα部を示す拡大図である。
図8図1におけるα部を示す拡大図である。
図9】第一流路基板の製造工程を示す図である。
図10】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図11】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図12】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図13】接合工程を示す図である。
図14】接合工程を示す図である。
図15】製造された液体吐出ヘッド用ウエハを示す図である。
図16】実施例1のまとめを示す図である。
図17】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図18】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図19】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図20】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図21】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図22】実施例2のまとめを示す図である。
図23】第一流路基板の製造工程を示す図である。
図24】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図25】第二流路基板の製造工程を示す図である。
図26】実施例3のまとめを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は本開示事項を限定するものでなく、また以下の実施の形態で説明されている特徴の組み合わせすべてが本開示の解決手段に必須のものとは限らない。尚、同一の構成要素には同一の参照番号を付す。
【0014】
<<第1実施形態>>
<歩留まり低下の説明>
以下、本実施形態の説明に先立って、歩留まりが低下する例をより詳細に説明する。図1は、液体吐出ヘッド用ウエハ100の断面模式図である。図2は、切断予定線DL部分の拡大図である。図3は、割断後のチップ115を並べた平面図である。本明細書では、割断前のものを液体吐出ヘッド用ウエハ(または単にウエハ)といい、割断後のものを液体吐出チップ(または単にチップ)という。
【0015】
図1に示すように、切断予定線DL上に溝103が形成された第一流路基板111と、切断予定線上に貫通孔121が形成された第二流路基板112とを、接着剤110を介した接合で形成する。この場合、接合により押し出された接着剤110が切断予定線DL上の溝103内に流入する。流入した接着剤110は、図2(a)に示すように溝103の角部の毛管力によって第一流路基板111の壁面を這いあがり集結する。レーザーに対して吸収を持たない接着剤110の場合、接着剤110がレーザーで改質できず、チップ115に割断後に塊となる。このように塊になった接着剤の凝集力によって、接着剤は、図2(b)に示すように塊113のままチップ側面に付随する。
【0016】
図3は、平面視においてチップ115を見た図である。チップ側面に付随した接着材の塊113は、図3(b)に示すように平面視においてチップ外形からはみ出している。図3(a)に示すようにチップ115を連続して直線上に並べるインライン配置ヘッドにおいてチップ側面からはみ出した接着剤の幅をW4、インライン配置ヘッドにおけるチップ間隔をW3とする。W4>W3の場合、隣接するチップ115とチップ側面からはみ出した接着剤の塊113とが干渉し、チップ115をマウントすることができない。
【0017】
また、チップ側面に付随した塊113は、工程中に脱離することも考えられ、その脱離した接着剤がチップに付着することで歩留まりを低下させる虞がある。
【0018】
さらに、溝103に限らず第一流路基板111に形成された流路102(第一流路ともいう)または第二流路基板112に形成された貫通孔123(第二流路ともいう)の壁面も、はみ出した接着剤110が壁面を這い伝わる。流路102では、吐出口10への微細な流路を、壁面を這いあがった接着剤が埋めてしまい閉塞させてしまう懸念がある。一方、貫通孔123では、接合面とは反対の面に、壁面を這い下がってきた接着剤110が付着してしまい、歩留まりを低下させてしまう虞がある。
【0019】
以下で説明する実施形態では、接着剤110を介した接合を行う基板において、溝または貫通孔内への流入した接着剤の壁面への這い伝わりを抑制する構成を説明する。即ち、歩留まりのよい液体吐出チップとその製造方法を説明する。
【0020】
<構成>
以下、図1を再度参照して、本実施形態における液体吐出ヘッド用ウエアおよびチップの例を説明する。液体吐出ヘッド用ウエハ100は、第一流路基板111と第二流路基板112とを、接着剤110を介した接合にて形成される。
【0021】
第一流路基板111には、図1に示すように液体を吐出するために利用されるエネルギ発生素子1が形成されている。エネルギ発生素子1としては発熱抵抗体または圧電素子が挙げられる。なお、エネルギ発生素子1に電力を供給する配線および電極接続用のパッド等は不図示である。また、図1は模式図であり、エネルギ発生素子1の数および配置などの詳細も割愛した図になっている。
【0022】
図1に示すように第一流路基板111における切断予定線DL上の一部には未貫通孔103が形成されている。未貫通孔103は、第一流路基板111において、吐出口10の層を形成しない面(図1の例では、-Z方向の面)から形成される。
【0023】
第二流路基板112において、液体をエネルギ発生素子へ供給する貫通孔123と、切断予定線DL上に形成する貫通孔121との形成方法としては、様々な手法を適用可能である。例えば、基板の片面からドライエッチングで反対面まで貫通させる方法、および、非貫通孔を片面から形成して基板をバックグラインドまたはCMPにより薄化することで貫通させる手法などが挙げられる。
【0024】
これら貫通孔および未貫通孔の形成は、反応性イオンエッチングの一種であるボッシュプロセスで行われる。ボッシュプロセスとは、コーティングとエッチングとを交互に行うことによって基板に垂直なエッチング溝を形成する手法である。このボッシュプロセスの特徴として、エッチングによって形成された壁面には、図4に示す特徴的なスキャロップと呼ばれる貝殻状の形状が形成されることが挙げられる。スキャロップは、壁面に連続して形成されている凹部200であり、開口部の内周を、第一流路基板111と第二流路基板112とが積層する積層方向に連続して形成されている。
【0025】
図4(a)は、図1におけるα部を示す拡大図である。図4(b)は、図4のIVB部を示す拡大図である。図4では、スキャロップ深さDを示している。より詳細には、二種類のスキャロップ深さD1とD2とを示している。尚、D1およびD2は、図面においては下付き文字で示している(以下、本明細書において同様に表記するものとする)。スキャロップ深さは、スキャロップが形成される前の状態の壁面から、スキャロップが形成されることで生じた深さである。図4の例では、スキャロップが形成される前の状態の壁面から、スキャロップが形成されることで生じたX方向の距離でもある。本実施形態では、基板の接合面を第一面とし、接合面ではない面を第二面とする。このとき、第二流路基板112における第一面側の壁面のスキャロップ深さD1<第二流路基板112における第二面側の壁面のスキャロップ深さD2とする。スキャロップ深さは、同一条件でエッチングされる壁面のスキャロップの平均深さで定義され、スキャロップ深さは、エッチング時間が短ければ浅く、エッチング時間が長ければ深く形成される。
【0026】
同様に、図4では、スキャロップ幅Wを示している。より詳細には、2つのスキャロップ幅W1とW2とを示している。スキャロップ幅は、スキャロップが形成されることで生じた幅である。図4の例では、スキャロップが形成されることで生じたZ方向の距離でもある。本実施形態では、第二流路基板112における第一面側の壁面のスキャロップ幅W1<第二流路基板112における第二面側の壁面のスキャロップ幅W2とする。スキャロップ幅は、スキャロップ深さと同様に、同一条件でエッチングされる壁面のスキャロップの平均幅で定義され、スキャロップ幅は、エッチング時間が短ければ短く、エッチング時間が長ければ長く形成される。
【0027】
スキャロップが形成された壁面は、接着剤110を介した接合の際に、はみ出した接着剤110が伝う。スキャロップ深さD1の区間(以下、D1区間という)は、はみ出した接着剤110が伝い流れやすいようにスキャロップ深さ0.2μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。さらに伝い流れた先であるスキャロップ深さD2の区間(以下、D2区間という)では、はみ出した接着剤110を伝い流れにくくさせ、第二面に接着剤が露出することを抑制する。D1区間から伝い流れてきた接着剤110を止めるためにはスキャロップ深さ0.5μm以上が好ましく、より好ましくは1.0μm以上である。即ち、D2>2D1であることが好ましい。同様に、W2>2W1であることが好ましい。
【0028】
スキャロップ深さが深い壁面と浅い壁面とを比べたとき、はみ出した接着剤110はスキャロップ深さが浅い方へ優先的に流れ伝わる。はみ出した接着剤110は、スキャロップの窪みの中を毛管力によって横方向に伝わり窪みを満たしていく。スキャロップ深さが浅いと満たす為に必要な接着剤110が少なく、次のスキャロップの窪みへと流れ伝わる。一方で、スキャロップ深さが深いと満たす為に必要な接着剤110は、浅い場合に比べて多く必要となり、相対的に流れ伝わる量が減る。
【0029】
以上、スキャロップ深さを例に説明したが、スキャロップ幅も同様である。スキャロップ幅が長い壁面と短い壁面とを比べたとき、はみ出した接着剤110はスキャロップ幅が長い方へ優先的に流れ伝わる。はみ出した接着剤110は、スキャロップの窪みの中を毛管力によって横方向に伝わり窪みを満たしていく。スキャロップ幅が短いと満たす為に必要な接着剤110が少なく、次のスキャロップの窪みへと流れ伝わる。一方で、スキャロップ幅が長いと満たす為に必要な接着剤110は、短い場合に比べて多く必要となり、相対的に流れ伝わる量が減る。
【0030】
本実施形態では、D1区間は、スキャロップ幅W1の区間であり、D2区間はスキャロップ幅W2の区間である。はみ出した接着剤110が伝い流れやすいようにスキャロップ幅0.2μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。さらに伝い流れた先であるD2区間では、はみ出した接着剤110を伝い流れにくくさせ、第二面に接着剤が露出することを抑制する。D1区間から伝い流れてきた接着剤110を止めるためにはスキャロップ幅0.5μm以上が好ましく、より好ましくは1.0μm以上である。
【0031】
尚、本実施形態では、スキャロップ深さと幅とが区間内で同じ値である例を説明したが、スキャロップ深さと幅とが区間内で異なる値であってもよい。また、本実施形態では、スキャロップ深さと幅との両方を例に説明したが、いずれか一方が本実施形態で説明した関係を有していればよい。以下では、説明を簡略化するため、主にスキャロップ深さを例に挙げて説明することとするが、スキャロップ幅についても同様の説明とすることができる。
【0032】
以上説明したような構成とすることで、第一流路基板111に形成された未貫通孔103の壁面に流れ伝わる接着剤の量が、第二流路基板112に形成された貫通孔121の壁面、特にスキャロップ深さD1の区間を伝うことで相対的に減少する。この結果、未貫通孔103の底部(プラスZ方向)に接着剤110が溜まることを抑制することができる。また、図4は、第一流路基板111の未貫通孔103と、第二流路基板112の貫通孔121との壁面を例に説明したが、第一流路基板111の貫通孔と、第二流路基板112の貫通孔との壁面であっても同様の構成とすることができる。尚、D1区間の長さおよびD2区間の長さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。はみ出す接着剤110の量およびエッチング時間等を鑑みて、各区間の長さは適宜決定される。
【0033】
尚、図4の例では、第一流路基板111の壁面のスキャロップ深さは、任意のサイズであるが、D1よりも深くなるように構成されているものとする。第二流路基板112の壁面に接着剤110が流れ伝わるようにするためである。
【0034】
図5および図6は、変形例を示す図である。図5および図6は、図1におけるα部を示す拡大図である。図4の例では、第二流路基板112の壁面を対象として説明したが、図5および図6に示すように第一流路基板111の壁面、ならびに、第一流路基板111および第二流路基板112の双方の壁面を対象としてもよい。
【0035】
図5は、第一流路基板111における第一面側の壁面のスキャロップ深さD1<第一流路基板111における第二面側の壁面のスキャロップ深さD2である例を示している。図5の例の場合、はみ出した接着剤110は、第一流路基板111におけるD1区間を伝い流れることになる。しかしながら、さらに伝い流れた先であるD2区間では、はみ出した接着剤110を伝い流れにくくさせ、第二面(または未貫通孔103の底部)に接着剤110が露出することを抑制することができる。
【0036】
図6は、図4で説明した第二流路基板112と図5で説明した第一流路基板111とを組み合わせた例である。即ち、図6は、第一流路基板111および第二流路基板112における第一面側の壁面のスキャロップ深さD1<第一流路基板111および第二流路基板112における第二面側の壁面のスキャロップ深さD2である例を示している。図6の例でも、はみ出した接着剤110は、第一流路基板111および第二流路基板112におけるD1区間を伝い流れることになる。しかしながら、さらに伝い流れた先であるD2区間では、はみ出した接着剤110を伝い流れにくくさせ、第二面(または未貫通孔103の底部)に接着剤110が露出することを抑制することができる。
【0037】
接着剤110の例を説明する。接着剤110としては、基板に対して密着性が高い材料が好適に用いられる。また、接着剤110としては、気泡などの混入が少なく塗布性が高い材料が好ましく、また接着剤110の厚さを薄くしやすい低粘度な材料が好ましい。接着剤110は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、およびウレタン樹脂からなる群より選択されるいずれかの樹脂を含むことが好ましい。接着剤110の硬化方式としては、熱硬化方式、および紫外線遅延硬化方式が挙げられる。なお、基板のいずれかに紫外線透過性がある場合は、紫外線硬化方式も使用できる。
【0038】
接着剤110を塗布する手法としては、基板による接着剤転写法が挙げられる。具体的には、転写用基材を準備し、スピン塗布法またはスリット塗布法により転写用基板上に接着剤を薄く均一に塗布する。その後、塗布した接着剤上に、第一流路基板111の接着面を接触させることにより、接着剤110を第一流路基板111の接着面のみに転写することができる。転写用基材の大きさとしては、第一流路基板111と同寸法以上であることが好適である。基材としては、シリコンもしくはガラス、PETもしくはPEN、または、PIなどのフィルムが好適に用いられる。また、直接接着剤を第一流路基板111へ形成する手法として、スクリーン印刷またはディスペンス塗布が挙げられる。ここでは、第一流路基板111に接着剤110を塗布する例を説明したが、第二流路基板112に接着剤110を塗布してもよい。
【0039】
接着剤110を塗布した第一流路基板111と、第二流路基板112とは、接合装置内で所定の温度まで基板を加温した後、所定の時間及び圧力で加圧することで接合が行われる。時間及び圧力などの接合パラメータは、接着材料に応じて適切に設定される。接合部への気泡の混入を抑制することから真空中で接合することが好適である。
【0040】
接着剤110が熱硬化型の場合は、接合装置内で硬化するまで加温させてもよい。また、基板接合体を接合後に取り出して、別途オーブンなどで加温することで硬化を促進させてもよい。接着剤110が紫外線遅延型の場合、接合前に予め接着剤110に紫外線を規定量で照射した後に接合する。接合後、基板接合体をさらに加温することで十分に硬化を促進させることが好ましい。接着剤110が紫外線硬化型の場合は、基板同士の接合後に紫外線透過性を有する基板越しに接着剤110へ紫外線を規定量で照射して硬化させる。接合後、基板接合体をさらに加温することで十分に硬化を促進させることが好ましい。
【0041】
接合が完了した流路基板に対して、図1に示すように、流路層3およびノズル層2を形成し、液体吐出ヘッド用ウエハ100が完成する。そして、液体吐出ヘッド用ウエハ100を、レーザーを用いたステルスダイシングでチップ個片化することで液体吐出チップ115を得ることができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、歩留まりの低下を抑制した液体吐出チップを提供することができる。即ち、本実施形態では、流路壁面の接着剤110の這い上がりおよび下がり量を制御することで、歩留りのよい液体吐出チップを製造することができる。
【0043】
<<第2実施形態>>
第1実施形態では、スキャロップ深さが2段階(D1およびD2)に設けられる例を説明した。本実施形態では、スキャロップ深さがn段階(nは3以上とする)で設けられる例を説明する。尚、nを2とした場合には、二種類以上のスキャロップ深さが設けられることになり、第1実施形態を包含するものとなる。本実施形態では、nは3以上であるものとする。尚、第1実施形態で説明したように、スキャロップ深さを例に挙げて説明するが、スキャロップ幅でも同様である。
【0044】
図7は、本実施形態における、図1のα部を示す拡大図である。図7では、第二流路基板112においてn段階のスキャロップ深さが設けられている例を示している。尚、第1実施形態の変形例でも説明したように、第一流路基板111においてn段階のスキャロップ深さが設けられていてもよい。第一流路基板111および第二流路基板112の双方のそれぞれにおいて、n段階のスキャロップ深さが設けられていてもよい。
【0045】
図7では、第二流路基板112において、第一面側の壁面のスキャロップ深さをD1として、第二面へ向かって、スキャロップ深さD2、D3、・・・Dn-1、Dnとしたとき、D1<D2<D3<・・・<Dn-1<Dnとする例を示している。スキャロップ深さを急激に変更すると、エッチングの条件のバランスが崩れ変更界面で形状異常を起こす虞がある。本実施形態のようにスキャロップ深さを段階的に多段階で変化させることで、エッチング条件の急激な変化を避け、形状異常なく壁面を形成することができる。例えば、スキャロップ深さD1、D2、D3・・・Dnのエッチングステップの時間をE1、E2、E3、・・・Enとしたとき、En>・・・>E3>E2>E1とすることで上記のスキャロップ深さを形成することができる。
【0046】
各区間の長さは、任意の長さとすることができるが、はみ出した接着剤110の這いあがりを抑制するためには、両端の区間(D1とDn)の役割が重要である。中間の区間(D2、D3、・・・Dn-1)は、加工する際に求められる繋ぎ区間であるため、中間の区間の長さは、両端の区間の長さに比べて短くしてよい。
【0047】
尚、第一流路基板111の場合にも、第一面側の壁面のスキャロップ深さをD1として、第二面へ向かって、スキャロップ深さD2、D3、・・・、Dn-1、Dnとしたとき、D1<D2<D3<・・・<Dn-1<Dnとすればよい。第一流路基板111の場合でも第二流路基板112の場合でも、Dn>2D1であることが好ましい。
【0048】
スキャロップ幅も同様であり、第一面側の壁面のスキャロップ深さをW1として、第二面へ向かって、スキャロップ幅W2、W3、・・・、Wn-1、Wnとしたとき、W1<W2<W3<・・・<Wn-1<Wnとすればよい。また、Wn>2W1であることが好ましい。
【0049】
尚、上述したように、エッチング条件の急激な変化を避けるためには、第一面側の壁面のスキャロップ深さをD1として、第二面へ向かって、スキャロップ深さD2、D3、・・・Dn-1、Dnとする。このとき、D1<D2<D3<・・・<Dn-1<Dnとすることが好ましいが、この限りではない。中間帯である一部の区間においてスキャロップ深さが逆転していてもよい。
【0050】
<<第3実施形態>>
本実施形態では、第一流路基板111と第二流路基板112との壁面のスキャロップ深さが相対的に異なる例を説明する。より詳細には、第一流路基板111の未貫通孔103の壁面のスキャロップ深さをDaとし、第二流路基板112の貫通孔121の壁面のスキャロップ深さをDbとしたとき、Da>Dbとする例を説明する。尚、第1実施形態で説明したように、スキャロップ深さを例に挙げて説明するが、スキャロップ幅でも同様である。
【0051】
図8は、本実施形態における、図1のα部を示す拡大図である。図8に示すように、第一流路基板111の未貫通孔103の壁面のスキャロップ深さDaの方が、第二流路基板112の貫通孔121の壁面のスキャロップ深さDbよりも深く構成されている。スキャロップ深さが深い壁面と浅い壁面とを比べたとき、はみ出した接着剤110はスキャロップ深さが浅い方へ優先的に流れ伝わる。はみ出した接着剤110はスキャロップの窪みの中を毛管力によって横方向に伝わり窪みを満たしていく。スキャロップ深さが浅いと満たす為に必要な接着剤が少なく、次のスキャロップの窪みへと流れ伝わる。一方で、スキャロップ深さが深いと満たす為に必要な接着剤は浅い場合に比べて多く必要となり、相対的に流れ伝わる量が減る。以上のことからDa>Dbとすることで、未貫通孔103の壁面よりも貫通孔121の壁面の方が、よりはみ出した接着剤110が流れ伝わり、未貫通孔103の底部への接着剤溜まりを抑制することができる。一例として、Daは、Dbの1.5倍以上であり、かつ10倍以下であるものとすることができる。上述したように、スキャロップ幅も同様とすることができる。
【0052】
尚、本実施形態は、第1実施形態または第2実施形態で説明した例と組み合わせてもよい。即ち、第一流路基板111の壁面のスキャロップ深さDa>第二流路基板112のスキャロップ深さDbの関係が維持されていればよく、各基板において複数の段階の深さが形成されていてもよい。また、第2実施形態で説明したように、多段階のスキャロップ深さを構成する場合、第一流路基板111と第二流路基板112とで、段階を変えてもよい。
【0053】
また、第2実施形態に関連して、第一流路基板111および第二流路基板112の双方の全体から見て、n段階のスキャロップ深さが設けられていてもよい。この場合であっても、第一流路基板111の壁面のスキャロップ深さDa>第二流路基板112のスキャロップ深さDbの関係が維持されていればよい。例えば、第一流路基板111および第二流路基板112の境界部分でのスキャロップ深さは、逆転していてもよい。後述するように、第一流路基板111と第二流路基板112とは別々にエッチングがされる。このため、第一流路基板111および第二流路基板112の双方の全体から見て、n段階のスキャロップ深さが設けられている場合、第一流路基板111および第二流路基板112の境界部分でのスキャロップ深さは、逆転していてもよい。複数段のスキャロップ深さが形成されている場合、全体として見た場合に、その平均が第一流路基板111の壁面のスキャロップ深さDa>第二流路基板112のスキャロップ深さDbとなっていればよい。
【0054】
<<実施例>>
以下、第1実施形態から第3実施形態で説明した各実施形態の実施例を説明する。実施例1は第1実施形態に対応し、実施例2は第2実施形態に対応し、実施例3は第3実施形態に対応する。実施例では、液体吐出用ウエハ(液体吐出チップ)の製造方法を説明する。
【0055】
<実施例1>
図9から図16を用いて実施例1を説明する。図9は、第一流路基板111の製造工程を示す図である。図10図11、および図12は、第二流路基板112の製造工程を示す図である。図13および図14は、接合工程を示す図である。図15は、製造された液体吐出ヘッド用ウエハ100を示す図である。図16は、実施例1のまとめを示す図である。
【0056】
まず、図9(a)に示すように、第一流路基板111を用意する。第一流路基板111には、液滴を吐出する為に利用されTaSiNからなるエネルギ発生素子1と、そのエネルギ発生素子1を駆動する電気回路(不図示)と、電気接続基板に電気的に接続される電気接続部(不図示)とが形成されている。このような第一流路基板111を用意した。基板はシリコンで構成され、研削装置によって基板厚さが625μmになるまで薄加工した。
【0057】
このように用意した第一流路基板111に、流路102と切断予定線上の未貫通孔103とを形成した。具体的には、図9(b)に示すように、接合面側に、流路102と切断予定線上の未貫通孔103とに対応したエッチングマスクレジスト130を、フォトリソグラフィー技術を用いて形成した。
【0058】
次に図9(c)に示すように、ボッシュプロセスを用いて第一流路基板111の接合面から加工深さが450μmとなる様に流路102と未貫通孔103とを同時に加工した。この際のシリコンへのエッチングレートは7μm/minで、加工時間は65分となった。その後、エッチングマスクレジストを剥離した。
【0059】
次に、エネルギ発生素子1が形成されている面から、貫通流路となる箇所に開口を設けたエッチングマスクレジストを、フォトリソグラフィー技術を用いて形成した。その後、ボッシュプロセスを用いて第一流路基板111に形成された深さが450μmとなる未貫通孔が貫通するようにエッチングを行い、エッチングマスクレジストを剥離した。このようにして、図9(d)に示すように、第一流路基板111に、流路102と、未貫通の未貫通孔103とを形成した。
【0060】
次に第二流路基板112の工程を説明する。第二流路基板112として、725μmのシリコン基板を用意し、エッチングを行う面にエッチングマスクレジスト130を、フォトリソグラフィー技術を用いて形成した。次に、図10(a)および(b)に示すように、スキャロップ深さD2となる区間を、ボッシュプロセスを用いて形成した。この際のエッチング条件としては、コーティングステップにC48ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.0Pa、コイルパワー2500W、コーティング時間3.9秒とした。次にコーティング層エッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.0Pa、コイルパワー2500W、エッチング時間3.5秒とした。次にシリコンエッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量700sccm、チャンバー圧12.0Pa、コイルパワー2000W、エッチング時間10秒とした。この条件で深さ150μmまで加工を行った。この条件でのスキャロップ深さD2は1.2μmとなった。
【0061】
次に図11(a)および(b)に示すように、スキャロップ深さD1となる区間を、ボッシュプロセスを用いてD2区間に引き続き連続して形成した。この際のエッチング条件としてはコーティングステップにC48ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧6.0Pa、コイルパワー2200W、コーティング時間1.3秒とした。次にコーティング層エッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧3.5Pa、コイルパワー2200W、エッチング時間3.0秒とした。次にシリコンエッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.0Pa、コイルパワー2200W、エッチング時間1.5秒とした。この条件でD2区間と合わせて深さ330μmまで加工を行った。この条件でのスキャロップ深さD1は0.15μmとなった。
【0062】
次に図12(a)および(b)に示すように、エッチングを行っていない面から基板を厚み300μmまで研削することで、貫通孔121と貫通孔123とを形成した。
【0063】
次に接着剤転写用基材(不図示)を用意し、接着剤としてベンゾシクロブテン溶液を7μmとなるよう接着剤転写用基材にスピン塗布した。転写用基材として、PETフィルムを用いた。また塗布後に溶媒を揮発させるために100℃で5分間ベーク処理を行った。転写用基材に形成された接着剤を第一流路基板111の接合面に熱を加えながら接触させることで、図13に示すように、接着剤110を第一流路基板111に転写した。
【0064】
次に接合アライメント装置(不図示)を用いて第一流路基板111と第二流路基板112とを位置合わせしながら真空中で加熱して接合を行った。真空度は100Pa以下、温度は150℃で接合を行った。接合を完了し冷却後に第一流路基板111と第二流路基板112とを接合アライメント装置から取り出し、窒素雰囲気のオーブンにより250℃で1時間の熱処理を行い、接着剤を硬化させた。図14(a)および(b)に示すように、接合または硬化中に軟化した接着剤110の一部は、接合の際に壁面からはみ出す。そして、第二流路基板112の開口壁面のD1区間に接合の際にはみ出した接着剤110が伝い流れ、第一流路基板111の未貫通孔103の壁面へ伝い流れる量を抑制することができた。
【0065】
次に、PETフィルム上にネガ型感光性樹脂をPGMEA溶媒に溶解した物をスピンコートしオーブンによって100℃で乾燥させドライフィルム化した。このドライフィルム化したものを第一流路基板111のエネルギ発生素子形成面に転写しPETフィルムを剥離し、図15に示すように感光性樹脂層3を形成した。感光性樹脂層3に流路となるパターンを露光し、そののちPEB(Post Exposure Bake)を行い潜像状態とした。続いて同様にドライフィルムを積層させ、ノズルとなるパターンを露光した。その後、PEBを行い流路とノズルとを一括で現像することで、図15に示すようにノズル層2を形成し、液体吐出ヘッド用ウエハ100が完成した。
【0066】
次に、液体吐出ヘッド用ウエハ100を、レーザーを用いたステルスダイシングでシリコン基板内部に変質層を基板の厚み方向に複数層形成した。そして、ウエハに応力を加えることで変質部に亀裂が進行することで、ウエハを割断し液体吐出チップ115(図3)を得ることができた。
【0067】
この液体吐出チップ115においては、前述の通り接合または硬化中に軟化した接着剤は第二流路基板112の開口壁面のD1区間に、接合の際にはみ出した接着剤110が伝い流れている状態であった。つまり、第一流路基板111の未貫通の未貫通孔103の壁面へ伝い流れる量を抑制することができた為、第一流路基板111の切断予定線上開口に接着剤110が溜まらずチップ側面から飛び出す接着剤硬化物の発生を抑制することができた。
【0068】
また、このように製造した液体吐出チップを複数並べたインライン型液体吐出ヘッドを形成する際、隣接チップとの干渉がなく歩留まりのよいインライン型液体吐出ヘッドを得ることができた。
【0069】
図16は、実施例1のボッシュプロセスにおけるエッチング条件をまとめた図である。
【0070】
<実施例2>
実施例2では、実施例1との相違点について記載する。図17から図22を用いて実施例2を説明する。図17図18図19図20、および図21は、第二流路基板112の製造工程を示す図である。図22は、実施例2のまとめを示す図である。実施例2は、実施例1と第二流路基板112の加工条件が異なる。
【0071】
第二流路基板112として、725μmのシリコン基板を用意し、エッチングを行う面にエッチングマスクレジスト130を、フォトリソグラフィー技術を用いて形成した。次に、図17(a)および(b)に示すように、スキャロップ深さD4となる区間を、ボッシュプロセスを用いて形成した。この際のエッチング条件としてはコーティングステップにC48ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.0Pa、コイルパワー2500W、コーティング時間3.9秒とした。次にコーティング層エッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.0Pa、コイルパワー2500W、エッチング時間3.5秒とした。次にシリコンエッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量700sccm、チャンバー圧12.0Pa、コイルパワー2000W、エッチング時間10秒とした。この条件で深さ100μmまで加工を行った。この条件でのスキャロップ深さD4は1.2μmとなった。
【0072】
次に図18(a)および(b)に示すようにスキャロップ深さD3となる区間を、ボッシュプロセスを用いてD4区間に引き続き連続して形成した。この際のエッチング条件としてはコーティングステップにC48ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.6Pa、コイルパワー2400W、コーティング時間3.0秒とした。次にコーティング層エッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧3.8Pa、コイルパワー2400W、エッチング時間3.3秒とした。次にシリコンエッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量600sccm、チャンバー圧9.5Pa、コイルパワー2070W、エッチング時間7.2秒とした。この条件でD4区間と合わせて深さ150μmまで加工を行った。この条件でのスキャロップ深さD3は0.8μmとなった。
【0073】
次に図19(a)および(b)に示すようにスキャロップ深さD2となる区間を、ボッシュプロセスを用いてD3区間に引き続き連続して形成した。この際のエッチング条件としてはコーティングステップにC48ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧5.2Pa、コイルパワー2300W、コーティング時間2.1秒とした。次にコーティング層エッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧3.8Pa、コイルパワー2400W、エッチング時間3.3秒とした。次にシリコンエッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量500sccm、チャンバー圧9.5Pa、コイルパワー2140W、エッチング時間4.4秒とした。この条件でD4・D3区間と合わせて深さ200μmまで加工を行った。この条件でのスキャロップ深さD2は0.4μmとなった。
【0074】
次に図20(a)および(b)に示すようにスキャロップ深さD1となる区間を、ボッシュプロセスを用いてD2区間に引き続き連続して形成した。この際のエッチング条件としてはコーティングステップにC48ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧6.0Pa、コイルパワー2200W、コーティング時間1.3秒とした。次にコーティング層エッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧3.5Pa、コイルパワー2200W、エッチング時間3.0秒とした。次にシリコンエッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.0Pa、コイルパワー2200W、エッチング時間1.5秒とした。この条件でD4・D3・D2区間と合わせて深さ320μmまで加工を行った。この条件でのスキャロップ深さD1は0.15μmとなった。
【0075】
次に図21(a)および(b)に示すようにエッチングを行っていない面から基板を厚み300μmまで研削することで、貫通孔121と貫通孔123とを形成した。
【0076】
本実施例によれば、脱離して異物となる懸念のあるエッチング側面に荒れの無い歩留まりのよい液体吐出チップを得ることができた。
【0077】
図22は、実施例2のボッシュプロセスにおけるエッチング条件をまとめた図である。
【0078】
<実施例3>
実施例3は実施例1との相違点について記載する。図23から図26を用いて実施例3を説明する。図23は、第一流路基板111の製造工程を示す図である。図24および図25は、第二流路基板112の製造工程を示す図である。図26は、実施例3のまとめを示す図である。実施例3は、実施例1における第一流路基板111の流路102および切断予定線上の未貫通孔103を形成するエッチング条件と、第二流路基板112の貫通溝形成のエッチング条件との関係を規定した例である。
【0079】
図23(a)および(b)に示すように第一流路基板111の接合面側に流路102と切断予定線上の未貫通孔103とに対応したエッチングマスクレジスト130を、フォトリソグラフィー技術を用いて形成した。さらに接合面となる面からスキャロップ深さDaとなる区間を、ボッシュプロセスを用いて形成した。この際のエッチング条件としてはコーティングステップにC48ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.0Pa、コイルパワー2500W、コーティング時間3.9秒とした。次にコーティング層エッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧4.0Pa、コイルパワー2500W、エッチング時間3.5秒とした。次にシリコンエッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量700sccm、チャンバー圧12.0Pa、コイルパワー2000W、エッチング時間10秒とした。この条件で深さ450μmまで加工を行った。この条件でのスキャロップ深さDaは1.2μmとなった。この後、実施例1と同様の工程を経て貫通した第一流路基板を形成した。
【0080】
次に第二流路基板112として、725μmのシリコン基板を用意し、エッチングを行う面にエッチングマスクレジスト130を、フォトリソグラフィー技術を用いて形成した。次に図24(a)および(b)に示すようにスキャロップ深さDbとなる区間を、ボッシュプロセスを用いてDa区間に引き続き連続して形成した。この際のエッチング条件としてはコーティングステップにC48ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧5.2Pa、コイルパワー2300W、コーティング時間2.1秒とした。次にコーティング層エッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量400sccm、チャンバー圧3.8Pa、コイルパワー2400W、エッチング時間3.3秒とした。次にシリコンエッチングにSF6ガスを使用し、ガス流量500sccm、チャンバー圧9.5Pa、コイルパワー2140W、エッチング時間4.4秒とした。この条件で深さ320μmまで加工を行った。この条件でのスキャロップ深さDbは0.4μmとなった。その後、実施例1と同様の工程を経て貫通した第二流路基板112を形成した。
【0081】
本実施例によれば、第一流路基板111と第二流路基板112とを、接着剤110を用いて接合した際、接合界面からはみ出した接着剤110は第一流路基板111の壁面よりも第二流路基板112の壁面を這い伝いやすくなった。このため、未貫通孔103の壁面へ伝い流れる量を抑制することができ第一流路基板111の切断予定線上開口に接着剤が溜まらずチップ側面から飛び出す接着剤硬化物の発生を抑制した液体吐出チップ115を得ることができた。
【0082】
図26は、実施例3のボッシュプロセスにおけるエッチング条件をまとめた図である。
【0083】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、切断予定線上の未開口の溝は、第一流路基板111に形成されている例を説明したが、この限りではない。切断予定線上の未開口の溝は、第二流路基板112に形成されてもよい。この場合でも、上述した各実施形態の構成を適用することで、第二流路基板112における切断予定線上の未開口の溝に、はみ出した接着剤の塊が残留することを抑制することができる。このように、第一流路基板111および第二流路基板112のうちの一方の切断予定線上に未開口の溝が形成され、他方の基板の切断予定線上に貫通口が形成されている形態であればよい。
【0084】
本実施形態の開示は、以下の記録装置例および記録装置の制御方法例に代表される構成を含むものである。
【0085】
<構成1>
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出チップであって、
前記第一流路の壁面および前記第二流路の壁面にそれぞれ凹部が形成され、
前記凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方について、前記第一流路基板>前記第二流路基板である、液体吐出チップ。
【0086】
<構成2>
前記第一流路基板の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方は、前記第二流路基板の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方の1.5倍以上であり、かつ10倍以下である、構成1に記載の液体吐出チップ。
【0087】
<構成3>
前記第二流路基板の前記第二流路の壁面に、二種類以上の深さおよび幅のうちの少なくとも一方を有する凹部が形成され、
前記第二流路基板における前記第一流路基板との接合面を第一面とし、前記第一面と反対の面を第二面としたとき、
前記第二流路において、第一面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方<第二面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方、
である、構成1または2に記載の液体吐出チップ。
【0088】
<構成4>
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出チップであって、
前記第一流路および前記第二流路のうちの少なくとも一方の壁面に、二種類以上の深さおよび幅のうちの少なくとも一方を有する凹部が形成され、
前記第一流路基板および第二流路基板における接合面をそれぞれ第一面とし、前記第一面と反対の面を第二面としたとき、第一面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方<第二面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方、
である、液体吐出チップ。
【0089】
<構成5>
前記第一流路基板および前記第二流路基板のうちの少なくとも一方における前記第一面側の凹部の深さをD1、凹部の幅をW1とし、
前記第一面側から前記第二面側へむかって凹部の深さをD1、D2、・・・、Dn、幅をW1、W2、・・・、Wnとし、nが3以上であるとき、
D1<D2<・・・<DnまたはW1<W2<・・・<Wnである、構成4に記載の液体吐出チップ。
【0090】
<構成6>
前記第一面側の凹部の深さをD1、幅をW1とし、前記第二面側の凹部の深さをDn、幅をWnとしたとき、Dn>2D1またWn>2W1である、構成4または5に記載の液体吐出チップ。
【0091】
<構成7>
前記凹部は、開口部の内周を前記第一流路基板と前記第二流路基板とが積層する積層方向に連続して形成されている、構成1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出チップ。
【0092】
<構成8>
前記凹部の深さは同一条件でエッチングされた壁面の平均深さであり、前記凹部の幅は同一条件でエッチングされた壁面の平均幅である、構成1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出チップ。
【0093】
<構成9>
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出ヘッド用ウエハであって、
前記第一流路基板および前記第二流路基板のうちの一方の切断予定線上に未開口の溝が形成され、他方の基板の切断予定線上に貫通口が形成され、
前記第一流路の壁面および前記第二流路の壁面、ならびに、前記溝および前記貫通口に、それぞれ凹部が形成され、
前記凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方について、前記第一流路基板>前記第二流路基板である、液体吐出ヘッド用ウエハ。
【0094】
<構成10>
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合されている液体吐出ヘッド用ウエハであって、
前記第一流路基板および前記第二流路基板のうちの一方の切断予定線上に未開口の溝が形成され、他方の基板の切断予定線上に貫通口が形成され、
前記第一流路および前記第二流路のうちの少なくとも一方の壁面、ならびに、前記溝および前記貫通口に、二種類以上の深さおよび幅のうちの少なくとも一方を有する凹部が形成され、
前記第一流路基板および第二流路基板における接合面をそれぞれ第一面とし、前記第一面と反対の面を第二面としたとき、第一面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方<第二面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方、
である、液体吐出用ウエハ。
【0095】
<構成11>
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合される液体吐出チップの製造方法であって、
前記第一流路の壁面および前記第二流路の壁面にそれぞれ凹部を形成する工程を有し、
前記凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方について、前記第一流路基板>前記第二流路基板である、液体吐出チップの製造方法。
【0096】
<構成12>
液体を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子と、液体を前記エネルギ発生素子に供給する第一流路と、を有する第一流路基板と、
前記第一流路に接続する第二流路を有する第二流路基板とが、接着剤を介して接合される液体吐出チップの製造方法であって、
前記第一流路および前記第二流路のうちの少なくとも一方の壁面に、二種類以上の深さおよび幅のうちの少なくとも一方を有する凹部を形成する工程を有し、
前記第一流路基板および第二流路基板における接合面をそれぞれ第一面とし、前記第一面と反対の面を第二面としたとき、第一面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方<第二面側の凹部の深さおよび幅のうちの少なくとも一方、
である、液体吐出チップの製造方法。
【0097】
<構成13>
前記凹部は、ボッシュプロセスを用いて形成される、構成11または12に記載の液体吐出チップの製造方法。
【0098】
<構成14>
前記ボッシュプロセスの条件として、前記凹部の深さD1、D2、D3・・・Dnのエッチングステップの時間をE1、E2、E3、・・・Enとしたとき、En>・・・>E3>E2>E1である、構成13に記載の液体吐出チップの製造方法。
【0099】
<構成15>
前記第一流路基板および前記第二流路基板のうちの一方の切断予定線上に未開口の溝が形成され、他方の基板の切断予定線上に貫通口が形成されており、
前記切断予定線に沿ってレーザー光を照射することにより、前記第一流路基板の内部または前記第一流路基板と第二流路基板の内部に変質部を形成し、前記変質部に応力を加えることで、前記基板を切断して分割することで複数の前記液体吐出チップを製造する工程をさらに有する、構成11乃至14のいずれか1項に記載の液体吐出チップの製造方法。
【符号の説明】
【0100】
1:エネルギ発生素子
2:ノズル層
3:流路層
102:流路
103:未貫通孔
110:接着剤
111:第一流路基板
112:第二流路基板
図1
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