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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177717
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20241217BHJP
   G01F 1/66 20220101ALI20241217BHJP
【FI】
G01F3/22 Z
G01F1/66 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096008
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150109
【氏名又は名称】株式会社竹中製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】各務 亮
(72)【発明者】
【氏名】浅野 博昭
(72)【発明者】
【氏名】下畑 壮史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美裕
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慎治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】金澤 一弘
(72)【発明者】
【氏名】堀木 紗英
(72)【発明者】
【氏名】浅田 昭治
(72)【発明者】
【氏名】村中 一郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 彰
(72)【発明者】
【氏名】石橋 卓也
(72)【発明者】
【氏名】重村 丈留
(72)【発明者】
【氏名】能登 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄太
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
【Fターム(参考)】
2F030CA03
2F030CC13
2F030CF01
2F030CF09
2F035DA09
2F035DA14
(57)【要約】
【課題】被計測流体の計測精度の低下を抑制することが可能な流量計を提供することを目的とする。
【解決手段】流量計100は、計測ユニット20の計測流入口24、及び計測流出口25の少なくともいずれかに取り付けられた調整器40を備えている。調整器40は、管状部41と、この管状部41の調整流路43内で、延設方向に延設し、調整流路43の被計測流体を計測流路26に導く一対の導入板42A,42Bを有している。一対の導入板42A,42Bは、この一対の導入板42A,42Bの間の内幅寸法が、計測流路26に向かうに従い、単調変化するように、所定角度傾いて延びている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体流入口と、本体流出口と、前記本体流入口と前記本体流出口とに連通するチャンバと、を有する本体ケースと、 前記本体ケースの前記チャンバ内に配置されており、前記チャンバ内の被計測流体の所定時間での流量を計測する計測ユニットと、 を備え、 前記計測ユニットは、
所定方向に延設した計測流路と、前記計測流路の延設方向の一方側に位置する計測流入口と、前記計測流路の延設方向の他方側に位置する計測流出口とを有する計測器ケースと、
前記計測流路を流れる被計測流体の流量に応じた値を計測するセンサと、を有し、
前記計測器ケースにおける前記計測流入口、及び前記計測流出口の少なくともいずれかに取り付けられた調整器を備え、
前記調整器は、
前記計測流入口、及び前記計測流出口の少なくともいずれかに取り付けられることで、前記計測流路に連通し、前記計測流路の延設方向と同方向に延設された調整流路を有する管状部と、
前記調整流路内で、前記計測流路の延設方向に延設し、前記調整流路の前記被計測流体を前記計測流路に導く一対の導入板と、を有し、
前記一対の導入板は、
前記調整流路の延設方向と水平方向で交差する方向での、前記一対の導入板の間の内幅寸法が、前記計測流路に向かうに従い、単調変化するように、所定角度傾いて延びている、ことを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記計測ユニットは、
前記計測流路内に、前記計測流路の延設方向と水平方向で交差する方向に並んだ複数の部分流路が形成されており、
前記センサは、
複数の前記部分流路のうち、前記計測流路の延設方向と水平方向で交差する方向で外側に位置する前記部分流路を除く前記部分流路を計測範囲として、前記被計測流体の流量に応じた値を計測し、
前記一対の導入板は、
前記調整流路の延設方向と水平方向で交差する方向での、前記一対の導入板の間の内幅寸法が、前記計測流路に向かうに従い、単調減少するように、所定角度傾いて延びている、ことを特徴とする請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記本体ケースには、
前記チャンバとして、前記本体流入口に連通する流入側チャンバと、前記本体流出口に連通する流出側チャンバとがあり、
前記計測ユニットは、
前記計測流入口側で、前記計測流路と前記流入側チャンバとが連通し、前記計測流出口側で、前記計測流路と前記流出側チャンバとが連通することで、前記本体流入口と前記本体流出口との間の流路を形成している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項4】
前記本体ケース内に配置され、前記流出側チャンバを形成する流出側チャンバ形成部を備え、
前記計測ユニットは、
前記計測流入口側の端部が、前記流出側チャンバ形成部の開口に挿入することで、前記計測流路と前記流出側チャンバとが連通しており、
前記調整器は、前記計測ユニットにおける前記計測流出口に取り付けられることで、前記流出側チャンバ内に位置しており、
前記流出側チャンバ形成部は、前記計測ユニットの前記計測流出口が向く内面に、傾斜曲面である圧力軽減斜面を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の流量計。
【請求項5】
前記一対の導入板は、
一対の第1導入板と、
前記調整流路内において、前記調整流路の延設方向と水平方向で交差する方向で前記第1導入板よりも外側に位置する一対の第2導入板と、を含み、
前記第2導入板は、前記調整流路の延設方向での延設長さが、前記第1導入板よりも短い、ことを特徴とする請求項1に記載の流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測流体の流量を計測する流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体流入口と、本体流出口とを有する本体ケースと、本体ケース内に配置され、被計測流体の流量を計測する計測ユニットとを備える流量計が記載されている。流量計では、計測ユニットにより、本体ケースの本体流入口から流入した被計測流体における、所定時間での流量を計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-224872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流量計において、被計測流体の流れに脈動が生じる場合に、被計測流体の流れに沿った順方向における流量分布と、被計測流体の流れに逆らった逆方向での流量分布とに差が生じる場合がある。このような場合、被計測流体の順方向での計測値と、逆方向での計測値とに誤差が生じ、被計測流体の所定時間での流量の積算値を正確に計測できなくなることが懸念される。
【0005】
本発明は、上述の課題を鑑みたものであり、被計測流体の計測精度の低下を抑制することが可能な流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本実施形態で開示された流量計は、本体流入口と、本体流出口と、本体流入口と本体流出口とに連通するチャンバと、を有する本体ケースと、本体ケースのチャンバ内に配置されており、チャンバ内の被計測流体の所定時間での流量を計測する計測ユニットと、を備えている。計測ユニットは、所定方向に延設した計測流路と、計測流路の延設方向の一方側に位置する計測流入口と、計測流路の延設方向の他方側に位置する計測流出口とを有する計測器ケースと、計測流路を流れる被計測流体の流量に応じた値を計測するセンサと、を有し、計測器ケースにおける計測流入口、及び計測流出口の少なくともいずれかに取り付けられた調整器を備え、調整器は、計測流入口、及び計測流出口の少なくともいずれかに取り付けられることで、計測流路に連通し、計測流路の延設方向と同方向に延設された調整流路を有する管状部と、調整流路内で、計測流路の延設方向に延設し、調整流路の被計測流体を計測流路に導く一対の導入板と、を有している。一対の導入板は、計測流路の延設方向と水平方向で交差する方向での、一対の導入板の間の内幅寸法が、計測流路に向かうに従い、単調変化するように、所定角度傾いて延びている。
【0007】
上記構成では、計測ユニットの計測器が装着された側の口では、調整器の調整流路に流入した被計測流体の流量分布が、一対の導入板により調整された状態で計測流路に流入する。これにより、チャンバ内で、順方向と逆方向との間で被計測流体の流量分布にばらつきがある場合でも、調整器により流量分布のばらつきが調整されるため、被計測流体の順方向での計測値、又は逆方向での計測値での誤差が小さくなり、被計測流体の所定時間での流量の計測精度の低下を抑制することができる。
【0008】
計測ユニットは、計測流路内に、計測流路の延設方向と水平方向で交差する方向に並んだ複数の部分流路が形成されており、センサは、複数の部分流路のうち、計測流路の延設方向と水平方向で交差する方向で外側に位置する部分流路を除く部分流路を計測範囲として、被計測流体の流量に応じた値を計測し、一対の導入板は、調整流路の延設方向と水平方向で交差する方向での、一対の導入板の間の内幅寸法が、計測流路に向かうに従い、単調減少するように、所定角度傾いて延びている。
上記構成では、調整器の一対の導入板により、被計測流体が、計測範囲である部分流路に導入され易くなり、この計測範囲を流れる被計測流体の流量を均一にすることができる。
【0009】
本体ケースには、チャンバとして、本体流入口に連通する流入側チャンバと、本体流出口に連通する流出側チャンバとがあり、計測ユニットは、計測流入口側で、計測流路と流入側チャンバとが連通し、計測流出口側で、計測流路と流出側チャンバとが連通することで、本体流入口と本体流出口との間の流路を形成している。
計測ユニットの計測流路が、計測流入口側と、計測流出口側とで別々のチャンバに連通している場合、各チャンバの容積の違いや形状の違いにより、順方向と逆方向との間の被計測流体の流量分布に違いが生じ易くなる。上記構成では、このような構成を備える流量計においても、順方向と逆方向との間で、調整器により流量分布のばらつきを調整した状態で、計測流路に被計測流体を流入させることができ、ひいては、被計測流体の計測精度の低下を抑制することができる。
【0010】
本体ケース内に配置され、流出側チャンバを形成する流出側チャンバ形成部を備え、計測ユニットは、計測流入口側の端部が、流出側チャンバ形成部の開口に挿入することで、計測流路と流出側チャンバとが連通しており、調整器は、計測ユニットにおける計測流出口に取り付けられることで、流出側チャンバ内に位置しており、流出側チャンバ形成部は、計測ユニットの計測流出口が向く内面に、傾斜曲面である圧力軽減斜面を有している。
計測ユニットにおける計測流出口に調整器が取り付けられることで、流出側チャンバと計測流路との間を流れる被計測流体の流れに圧力損失を生じさせる。上記構成では、流出側チャンバ形成部における調整器が取り付けられた計測流出口が向く内面に、圧力軽減斜面を有することで、調整器により生じる被計測流体の圧力損失を、圧力軽減斜面による圧力損失の低下量により軽減し、ひいては流量計全体での被計測流体の圧力損失の増加を抑制することができる。
【0011】
一対の導入板は、一対の第1導入板と、調整流路内において、調整流路の延設方向と水平方向で交差する方向で第1導入板よりも外側に位置する一対の第2導入板と、を含み、第2導入板は、調整流路の延設方向での延設長さが、第1導入板よりも短い。
上記構成では、第2導入板の延設長さを第1導入板の延設長さよりも短くすることで、第1,第2導入板による損失の増加を抑制しつつ、流量分布のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】流量計の外観図である。
図2】流量計の内部を示す図である。
図3】流量計の内部を示す平面図である。
図4】計測ユニットの断面図である。
図5】計測ユニットにおける計測流路を説明する図である。
図6】調整器の斜視図である。
図7】調整器の断面図である。
図8】順方向に流れる都市ガスの流量分布を説明する図である。
図9】比較例での逆方向に流れる都市ガスの流量分布を説明する図である。
図10】本実施形態に係る逆方向に流れる都市ガスの流量分布を説明する図である。
図11】変形例に係る調整器の断面図である。
図12】変形例に係る調整器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本実施形態に係る流量計を、図面を参照して説明する。流量計は、被計測流体の一例である都市ガスの流量を計測する都市ガスメータである。流量計は、都市ガスが流れる不図示の配管の途中に接続されて用いられる。
【0014】
図1は、流量計100の外観図である。図2は、流量計100の内部を示す図である。図3は、流量計100の内部を示す平面図である。以下では、流量計100の使用状態において、上下の方向を上下方向D1とし、流量計100の幅に沿った方向(後述する本体流入口93と本体流出口94とが並ぶ方向)を幅方向D2と記載する。また、流量計100の奥行に沿った方向を奥行方向D3と記載する。幅方向D2と奥行方向D3とは、水平方向において互いに交差する方向でもある。
【0015】
図1図3に示すように、流量計100は、上ケース90と、下ケース80と、排気管70と、内機ケース75と、計測ユニット20と、調整器40と、を主に備えている。本実施形態では、上ケース90と、下ケース80とが本体ケースの一例である。
【0016】
上ケース90は、使用状態において下方が開口する容器である。具体的には、上ケース90は、平面視において略矩形状の天井部91と、天井部91の4つの辺から下方向に延設する側壁92と、を有している。天井部91には、上方向を向く開口である本体流入口93と、本体流出口94とが形成されている。天井部91において、本体流入口93と、本体流出口94とは、幅方向D2で所定距離だけ離れて並んで形成されている。側壁92は、上ケース90における開口を囲む壁であり、下方向側には、外側に出るフランジ部95が形成されている。
【0017】
上ケース90の本体流入口93には、上ケース90を配管に連結させるための入口側口金14が装着される。上ケース90の本体流出口94には、上ケース90を配管に連結させるための出口側口金15が装着される。
【0018】
下ケース80は、上ケース90の開口を遮蔽する遮蔽部材である。下ケース80は、フランジ部81を備え、このフランジ部81により、上ケース90のフランジ部95にねじ止めされる。下ケース80は、上ケース90にねじ止めされることで、上面が上ケース90の天井部91に対向した状態で固定される。下ケース80が、上ケース90にねじ止めされることで、上ケース90の内部が気密され、都市ガスが対流する流入側チャンバ16が形成される。
【0019】
排気管70と、内機ケース75とは、チャンバの一部である流出側チャンバ17を形成する部材である。排気管70は、使用状態において下方が開口する部材である。排気管70は、上方に、排気口71を有し、下方に、開口縁から外側に出るフランジ部72を有している。排気口71は、本体流出口94に挿入されることで、この本体流出口94に取り付けられた出口側口金15を介して、配管に接続される。
【0020】
内機ケース75は、使用状態において上方が開口し、開口縁にフランジ部76を有する部材である。内機ケース75の側部には、計測ユニット20の流出側の端(後述する計測流出口25)を挿入可能な開口であるユニット装着開口77を有している。内機ケース75は、その内部に、ユニット装着開口77に向く傾斜曲面である圧力軽減斜面78を有している。圧力軽減斜面78は、ユニット装着開口77に対向する面が所定の曲率で傾斜する曲面である。具体的には、圧力軽減斜面78は、使用状態において、幅方向D2でユニット装着開口77が形成されていない方の内側面75aから、ユニット装着開口77が形成された方の内側面75bに向かうに従い、上下方向D1で下方側に傾斜する曲面である。
【0021】
排気管70と内機ケース75とは、互いの開口を向けた状態で、各フランジ部72,76でねじ止めされることで、計測ユニット20から流出した都市ガスが流れる流出側チャンバ17が形成される。この流出側チャンバ17は、計測ユニット20を介して、流入側チャンバ16に繋がり、上ケース90の本体流出口94を介して、配管に繋がる空間である。本実施形態では、排気管70と内機ケース75とが流出側チャンバ形成部の一例である。
【0022】
流入側チャンバ16の内部において、内機ケース75のユニット装着開口77には、計測ユニット20が、弾性部材であるパッキン18を介して取り付けられている。計測ユニット20は、流入側チャンバ16又は流出側チャンバ17に流れ込んだ都市ガスの流量(リットル/時間)を計測する装置である。図4に示すように、計測ユニット20は、計測器ケース21と、センサである超音波振動子27A,27Bと、仕切り板29と、を主に備えている。
【0023】
計測器ケース21は、計測流路形成部22と、センサ収容部23とを有している。計測流路形成部22は、矩形状の開口である計測流入口24、及び計測流出口25を有し、角管形状の部位である。計測流路形成部22において、計測流入口24と計測流出口25との間には、都市ガスが流れる計測流路26が形成されている。計測流路26は、略矩形状の開口形状を保ったまま、直線状に延びる流路である。以下では、計測流路26の延びる方向を延設方向DAとも記載する。なお、本実施形態では、計測ユニット20は、計測流路26の延設方向DAを、流量計100の幅方向D2に対して略平行に向けた状態で、内機ケース75に取り付けられているため、延設方向DAは、幅方向D2に沿った方向でもある。
【0024】
計測流路形成部22の内部には、計測流路26を複数の部分流路30に仕切る仕切り板29が配置されている。具体的には、複数の仕切り板29は、互いの面を、延設方向DAと水平面で交差する交差方向DBに向けた状態で、計測流路26内に配置されることで、計測流路26を交差方向DBで配列する複数の部分流路30に仕切る。
【0025】
本実施形態では、計測流路26内には、8つの部分流路30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,30Hが形成されている。以下では、仕切り板29により仕切られた各部分流路30を区別する場合には、符号にアルファベット「A,B,C,D,E,F,G,H」を付けて区別する。各部分流路30における交差方向DBでの内幅は、同じ長さであるが、これに限らず、例えば、交差方向DBにおいて中央に位置する部分流路30D,30Eの内幅を、他の部分流路30A~30C、30F~30Hの内幅よりも大きくするものであってもよい。なお、部分流路30の数は、8つに限らず、2以上かつ8未満の数や、8よりも多い数であってもよい。
【0026】
センサ収容部23には、センサである超音波振動子27A,27Bが配置されている。超音波振動子27A,27Bは、計測流路26の上方に配置されることで、一方の超音波振動子27A,27Bからの超音波が、計測流路26の底面で反射されて、他方の超音波振動子27A,27Aに伝わるV字型の超音波の伝搬経路が形成されている。これにより、超音波の受信期間に応じて、計測流路26を流れる都市ガスの流速を計測することができる。
【0027】
超音波振動子27A,27Bは、計測流路26に形成された全ての部分流路30A~30Hのうち、一部の流路を計測範囲として都市ガスの流速を計測する。具体的には、計測ユニット20では、部分流路30A~30Hのうち、部分流路30D,30Eのみを計測範囲として用い、部分流路30A,30B,30C,30F,30G,30Hは、計測範囲として用いていない。
【0028】
また、センサ収容部23において、各超音波振動子27A,27Bの上方には、超音波振動子27A、27Bが電気的に接続される計測回路28が配置されている。本実施形態では、計測回路28は、計測ユニット20で計測された流速に計測流路26の断面積を掛けることで、単位時間での都市ガスの流量を算出することができる。そして、計測回路28は、この単位時間での流量を、計測時間分足し合わせることで、所定時間での都市ガスの積算流量を計測値として算出することができる。
【0029】
本実施形態では、計測回路28により計測される計測値である積算流量には、超音波振動子27A,27Bにより計測された順方向側の流量と、逆方向側の流量とが含まれる場合がある。ここで、順方向側の流量は、計測流路26において、計測流入口24から計測流出口25に向けて流れる都市ガスの流量であり、プラスの値として計測される。逆方向側の流量は、計測流路26において、計測流出口25から計測流入口24に向けて流れる都市ガスの流量であり、マイナスの値として計測される。
【0030】
計測ユニット20の計測流出口25には、調整器40が取り付けられている。図6図7に示されるように、調整器40は、管状部41と、この管状部41の内部に設けられた一対の導入板42A,42Bとを主に備えている。管状部41は、矩形状の開口を有する角管形状の部材である。以下では、管状部41において、計測ユニット20の計測流出口25が挿入される一方の開口を第1開口44と称し、この第1開口44と反対側にある開口を第2開口45と記載する。本実施形態では、第1開口44の内寸法は、計測ユニット20の計測流出口25を挿入可能な寸法であり、第2開口45よりも大きな内寸法となっている。
【0031】
第1,第2開口44,45の間には、調整流路43が形成されている。調整流路43は、第1,第2開口44,45の間で、略矩形状に延設された流路である。調整流路43には、使用状態において、延設方向DAと同じ方向に延設し、調整流路43を流れる都市ガスを計測流路26に導く一対の導入板42A,42Bが設けられている。調整器40の使用状態では、一対の導入板42A,42Bは、調整流路43内において、互いの面を対向させた状態で、交差方向DBで配列している(図7)。
【0032】
一対の導入板42A,42Bは、延設方向DAに沿って延びる仮想線Lを基準とした場合に、計測ユニット20に向かうに従い、交差方向DBで、外側からこの仮想線Lに近づくように、所定角度で傾いている。これにより、一対の導入板42A,42Bの交差方向DBでの内幅寸法Wが、第2開口45から第1開口44に向かうに従い、即ち、計測流路26に向かうに従い、単調変化(この図では、単調減少)している。
【0033】
計測ユニット20は、計測流出口25の端が、内機ケース75のユニット装着開口77に挿入されることで、計測流出口25側で、計測流路26と流出側チャンバ17とが連通する。また、計測ユニット20は、計測流入口24側が、流入側チャンバ16内に位置しており、この計測流入口24側で、計測流路26と流入側チャンバ16とが連通する。これにより、計測ユニット20は、本体流入口93と本体流出口94との間で、流入側チャンバ16と流出側チャンバ17とを繋ぐ流路の一部を形成している。
【0034】
上記構成の流量計100では、上ケース90の本体流入口93を介して流入した都市ガスは、流入側チャンバ16に流入する。都市ガスは、流入側チャンバ16内で、計測ユニット20の計測流入口24から、計測流路26に流入する。既に説明したように、計測ユニット20の計測回路28は、超音波振動子27A、27Bが、計測範囲である部分流路30D,30Eを流れる都市ガスの単位時間での流量を計測し、計測した流量を所定時間で積算することで、所定時間での積算流量を計測する。
【0035】
計測ユニット20の計測流出口25から流出した都市ガスは、流出側チャンバ17に流入する。流出側チャンバ17に流入した都市ガスは、上ケース90の本体流出口94を経由して、配管に排出される。上述のように、流出側チャンバ17を形成する内機ケース75には、圧力軽減斜面78が形成されている。これにより、計測ユニット20に取り付けられた調整器40による損失の増加を、圧力軽減斜面78により抑制することができる。
【0036】
なお、図示していないが、流量計100は、マイクロコンピュータ等を備えた制御基板を備えており、この制御基板は、計測ユニット20の計測回路28と遮断弁とに電気的に接続されている。制御基板は、計測ユニット20から出力される都市ガスの所定時間での積算流量に基づき、供給ガス流量等の異常を検出し、予め定められているガス遮断対象の異常である場合には、遮断弁を駆動して都市ガスの供給を停止する。また、制御基板は、計測ユニット20から出力される都市ガスの計測値を不図示のパーソナルコンピュータ等に出力可能に構成されている。
【0037】
一方、脈動により都市ガスが逆方向に流れる場合、都市ガスは、上ケース90の本体流出口94から、流出側チャンバ17に流入する。流出側チャンバ17に流入した都市ガスは、この流出側チャンバ17内に位置する調整器40を通過して、計測ユニット20の計測流路26に流れ込む。計測流路26に流入した都市ガスは、仕切り板29により仕切られた各部分流路30A~30Hを通過していく。この場合においても、計測ユニット20では、超音波振動子27A、27Bが、計測範囲である部分流路30D,30Eを流れる都市ガスの単位時間での流量を計測し、計測した流量を所定時間で積算することで、所定時間での積算流量を計測する。
【0038】
流量計100において、計測ユニット20の上流側である流入側チャンバ16と、下流側である流出側チャンバ17との間の形状の違いにより、都市ガスの順方向側の流量分布と、逆方向側での流量分布とに差が生じる。特に、計測ユニット20が、計測流路26の一部である部分流路30D,30Eを計測範囲として流量を計測する構成では、計測ユニット20の前後の不均等な構造によって、計測流路26における計測範囲への流量分布に差が生じ、計測精度の低下が顕著となることが懸念される。
【0039】
図8は、順方向での都市ガスの流れを説明する図である。図9は、比較例として、計測ユニット20に調整器40を取り付けていない場合の、逆方向での都市ガスの流れを説明する図である。図10は、計測ユニット20に調整器40を取り付けている場合の、逆方向での都市ガスの流れを説明する図である。図8図10において、矢印は、都市ガスの流量分布を示している。流量分布において、矢印の向きは、都市ガスの流れ方向を示し、矢印の長さは、単位時間での都市ガスの流量を示している。
【0040】
図8で示されるように、都市ガスが順方向に流れる場合、流入側チャンバ16の容積が広く、順方向に流れる都市ガスの流量分布Q1は、各部分流路30A~30Hが配列する交差方向DBにおいて、流量の差が小さい。そのため、計測ユニット20が、計測範囲として部分流路30D,30Eを用いる構成において、順方向での流量の計測精度の低下は顕著とならない。
【0041】
一方、図9で示されるように、都市ガスが逆方向に流れる場合、流出側チャンバ17が流入側チャンバ16よりも容積が小さく、または形状も異なっている。そのため、逆方向に流れる都市ガスにおいて、流量分布Q2は、各部分流路30A~30Hが配列する交差方向DBにおいて流量の差が大きくなっている。計測ユニット20に調整器40が装着されていない場合、計測ユニット20が、計測範囲として部分流路30D,30Eを用いる構成において、逆方向での流量の計測精度の低下が顕著となる。そのため、都市ガスが順方向と逆方向とに流れる脈動が生じる場合、逆方向での流量の計測精度の低下により、積算流量である計測値の計測精度の低下が顕著となるおそれがある。
【0042】
本実施形態では、図10で示されるように、計測ユニット20の計測流出口25側には、調整器40が取り付けられている。そのため、逆方向に流れる都市ガスにおいて流量分布Q3は、調整器40を通過することで、調整された流量分布Q4となる。その結果、各部分流路30A~30Hに流れる流量の差が小さくなり、計測範囲として部分流路30D,30Eを用いる場合でも、逆方向での流量の計測精度の低下は顕著とならない。そのため、都市ガスが順方向と逆方向とに流れる脈動が生じる場合でも、逆方向での流量の計測精度の低下が抑制され、所定時間での積算流量(計測値)の計測精度の低下は抑制される。
【0043】
都市ガスが調整器40の調整流路43を流れることで、圧力損失が生じることが懸念される。本実施形態では、調整器40が取り付けられた計測流出口25は、内機ケース75の圧力軽減斜面78に向いている。これにより、調整器40が取り付けられた計測流出口25と流出側チャンバ17との間を流れる都市ガスの圧力損失を、圧力軽減斜面78による圧力損失の低下量で軽減し、流量計100全体での圧力損失の増加を抑制させることができる。
【0044】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
計測ユニット20の計測流入口24及び計測流出口25の少なくともいずれかに取り付けられる調整器40は、一対の導入板42A,42Bを有している。一対の導入板42A,42Bは、この一対の導入板42A,42Bの間の交差方向DBでの内幅寸法が、計測流路26に向かうに従い、単調変化するように、所定角度傾いて延びている。これにより、都市ガスにおける順方向と逆方向との間で流量分布にばらつきがある場合でも、流量分布にばらつきがある方の口に取り付けられた調整器40により、流量分布のばらつきを調整した状態で、計測流路26の計測範囲に都市ガスを流入させることができる。その結果、計測値である積算流量の計測精度の低下を抑制することができる。
【0045】
計測ユニット20は、計測流路26内に、交差方向DBに並んだ複数の部分流路30A~30Hが形成されており、超音波振動子27A,27Bは、計測範囲である部分流路30D,30Eに対して、都市ガスの流量を計測する。一対の導入板42A,42Bは、調整流路43内で、計測流路26に向かうに従い、交差方向DBでの内幅寸法が、単調減少するように傾斜して延びている。これにより、一対の導入板42A,42Bにより、都市ガスが、計測範囲である部分流路30D,30Eに導入され易くすることで、この計測範囲を流れる都市ガスの流量を均一にすることができる。
【0046】
計測ユニット20の計測流入口24と、計測流出口25とが別々のチャンバに繋がっている構成では、各チャンバ16,17の容積の違いや形状の違いにより、順方向と逆方向との間の都市ガスの流量分布に違いが生じ易くなる。このような構成を備える流量計100においても、調整器40により順方向と逆方向との間で、流量分布のばらつきを調整した状態で、計測流路26に都市ガスを流入させることができ、ひいては、都市ガスにおける積算流量の計測精度の低下を抑制することができる。
【0047】
内機ケース75における、調整器40が取り付けられた計測流出口25が向く内面に、傾斜曲面である圧力軽減斜面78を有することで、流量計100全体での圧力損失の増加を抑制することができる。
【0048】
(第1実施形態の変形例)
調整器40は、図11で示す構成であってもよい。図11は、変形例に係る調整器40を説明する断面図である。調整器40は、一対の導入板として、第1実施形態で説明した一対の第1導入板42A,42Bの他に、一対の第2導入板46A,46Bを有している。一対の第2導入板46A,46Bは、調整流路43内において、交差方向DBで第1導入板42A,42Bよりも外側に位置している。第2導入板46A,46Bは、延設方向DAでの延設長さが、第1導入板42A,42Bよりも短い板である。
【0049】
上記構成において、調整器40は、第1導入板42A,42Bに加えて、第2導入板46A,46Bを有することで、2組の導入板42,46により、計測範囲に都市ガスを導入し易くすることができる。また、第2導入板46A,46Bの延設長さを第1導入板42A,42Bの延設長さよりも短くすることで、2つの導入板42,46による都市ガスの圧力損失の増加を抑制しつつ、流量のばらつきを抑制することができる。
【0050】
調整器40は、図12で示す一対の導入板47A,47Bを有していてもよい。図12で示す一対の導入板47A,47Bは、延設方向DAに沿って延びる仮想線Lを基準とした場合に、計測ユニット20に向かうに従い、交差方向DBで、仮想線Lから外側に向かうように、所定角度で傾いている。即ち、調整器40の使用状態において、1対の導入板47A,47Bの間の交差方向DBでの内幅寸法が、計測流路26に近づくに従い、単調増加するように傾いている。これにより、都市ガスの流量分布が、交差方向DBで、中央部(即ち、仮想線Lの位置)から外側に向かうほど大きくなっている場合、一対の導入板47A,47Bにより計測範囲(即ち、部分流路30D,30E)に流入しにくくすることで、都市ガスの流量の差を、他の部位に対して小さくすることができる。
【0051】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述の実施形態では、調整器40は、計測ユニット20の計測流出口25に取り付けられていた。これに代えて、順方向側の都市ガスの流量分布を調整する場合、調整器40を計測ユニット20の計測流入口24に取り付けてもよい。
【0052】
上述の実施形態では、流量計100は、1つの計測ユニット20を備えていた。これに代えて、流量計100は、2つ以上の計測ユニット20を備えていてもよい。
【0053】
上述の実施形態では、流量計100は、センサとして超音波振動子27A,27Bを用いた。センサは、被計測流体の流量を計測できるものであればよく、超音波振動子に限定されない。
【0054】
上述の実施形態では、被計測流体として、都市ガスを例に説明を行った。これに代えて、被計測流体は、LPガスであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
16…流入側チャンバ、17…流出側チャンバ、20…計測ユニット、21…計測器ケース、24…計測流入口、25…計測流出口、26…計測流路、27A,27B…超音波振動子、40…調整器、41…管状部、42A,42B…一対の導入板、43…調整流路、80…下ケース、90…上ケース、93…本体流入口、94…本体流出口、100…流量計
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12