(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177729
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】振動型アクチュエータ、電子機器、光学機器、及び、振動型アクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20241217BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20241217BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20241217BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20241217BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20241217BHJP
【FI】
H02N2/04
H10N30/853
H10N30/20
G02B7/04 E
G02B7/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096027
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】上林 彰
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆之
【テーマコード(参考)】
2H044
5H681
【Fターム(参考)】
2H044BE04
2H044DB04
5H681AA12
5H681BB02
5H681BB13
5H681BC01
5H681CC02
5H681DD23
5H681DD57
5H681DD63
5H681DD73
5H681EE22
5H681FF24
5H681GG02
5H681GG19
(57)【要約】
【課題】 長期にわたり安定した駆動特性を有し、かつ、駆動特性が向上した振動型アクチュエータを提供する。
【解決手段】 本発明の振動型アクチュエータは、電気-機械エネルギー変換素子、および、板部と前記板部の面外に同方向に突出する突起部とを備えた弾性体を有する振動体と、前記振動体の前記突起部と接し前記振動体に対して相対的に移動する接触体と、前記振動体に接する発泡部材と、前記発泡部材を介して前記振動体を前記接触体に付勢する付勢部材を有し、前記発泡部材はケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含み、前記発泡部材に含まれるケイ素のうち、Q単位の数N
QのD単位の数N
Dに対する比N
Q/N
Dが0.09以上であることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気-機械エネルギー変換素子、および、板部と前記板部の面外に同方向に突出する突起部とを備えた弾性体を有する振動体と、
前記振動体の前記突起部と接し前記振動体に対して相対的に移動する接触体と、
前記振動体に接する発泡部材と、
前記発泡部材を介して前記振動体を前記接触体に付勢する付勢部材を有し、
前記発泡部材はケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含み、
前記発泡部材に含まれるケイ素のうち、Q単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.09以上であることを特徴とする振動型アクチュエータ。
【請求項2】
前記発泡部材はシリコーンゴムを含有するスポンジであることを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項3】
前記発泡部材が有する気泡の平均円相当径が120μmより大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項4】
前記電気-機械エネルギー変換素子は、圧電材料と電極とを備え、
前記圧電材料の鉛の含有量が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項5】
前記板部が矩形であることを特徴とする請求項1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項6】
前記弾性体が2つの突起部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項7】
前記発泡部材が前記電気-機械エネルギー変換素子よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項8】
前記発泡部材が前記弾性体よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項9】
前記電気-機械エネルギー変換素子の主成分がチタン酸バリウム系であることを特徴とする請求項1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項10】
前記電気-機械エネルギー変換素子の主成分はチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項11】
部材と、
前記部材に設けられた請求項1または2に記載の振動型アクチュエータを備えた電子機器。
【請求項12】
光学素子および撮像素子の少なくとも一方と、
前記少なくとも一方に設けられた請求項1または2に記載の振動型アクチュエータを備えた光学機器。
【請求項13】
平均円相当径が120μmより大きい気泡を有し、シリコーンゴムを含有する発泡材料に加圧熱処理を行い、発泡部材を得る工程と、
弾性体及び電気-機械エネルギー変換素子を接触させて振動体を得る工程と、
接触体を準備する工程と、
前記発泡部材を介して前記振動体を前記接触体に付勢することによって、振動型アクチュエータを得る工程と、
を有することを特徴とする振動型アクチュエータの製造方法。
【請求項14】
前記加圧熱処理は、600g/cm2以上700g/cm2以下の加圧下において、前記発泡材料を60℃以上80℃以下の温度で保持する処理を含むことを特徴とする請求項13に記載の振動型アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータ、電子機器、光学機器、及び、振動型アクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動型アクチュエータは、圧電素子等の電気-機械エネルギー変換素子と弾性体とから構成された振動体と、振動体に加圧接触する接触体を有する。振動型アクチュエータは、振動体に励起された振動の駆動力によって生じる摩擦を利用して接触体を相対移動させる振動波モータとして利用されている。
【0003】
振動型アクチュエータの一種である振動波モータの構造及び駆動原理の概略を示す。振動波モータは、振動体と該振動体に付勢部材によって加圧接触された接触体を備えている。この時、付勢部材が振動体を均一に与圧するためには剛性を高めて振動体と接することが望ましい。しかしながら、高剛性の部材が振動体に接すると振動体の振動を阻害してしまい、モータの駆動特性の悪化を引き起こす。そこで、付勢部材と振動体との間に振動を阻害しない部材を振動減衰部材として配置する構造が知られている。
【0004】
特許文献1には振動体の支持体としてスポンジ、発泡スチロール、フェルトが挙げられており、その中でも羊毛フェルトが特に優れているとの開示がある。なお特許文献2における振動体の支持体は、振動を阻害しないための部材が用いられており、振動減衰部材と機能は同等であると考えられる。
【0005】
また特許文献2には、振動体と付勢部材との間に発泡部材を配置した構成において、発泡部材のセルの平均円相当径を選択することで、長期にわたり安定しかつ十分な出力が得られる振動型アクチュエータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3-289371号公報
【特許文献2】特開2022-83146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、発泡部材を使用する振動型アクチュエータでは、フェルトを使用する場合と比較して駆動特性が低下する場合があった。
【0008】
本発明は、上述の課題に対処するためになされたものであり、長期にわたり安定した駆動特性を有し、かつ、駆動特性が向上した振動型アクチュエータを提供する。また、本発明は、長期にわたり安定した駆動特性を有し、かつ、駆動特性が向上した振動型アクチュエータを用いた電子機器及び光学機器を提供する。また、本発明は、長期にわたり安定した駆動特性を有し、かつ、駆動特性が向上した振動型アクチュエータの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の振動型アクチュエータは、電気-機械エネルギー変換素子、および、板部と板部の面外に同方向に突出する突起部とを備えた弾性体を有する振動体と、振動体の突起部と接し振動体に対して相対的に移動する接触体と、振動体に接する発泡部材と、発泡部材を介して振動体を接触体に付勢する付勢部材を有し、発泡部材はケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含み、発泡部材に含まれるケイ素のうち、Q単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.09以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期にわたり安定した駆動特性であり、かつ、駆動特性が向上した振動型アクチュエータを提供することができる。また、本発明によれば、長期にわたり安定した駆動特性であり、かつ、駆動特性が向上した振動型アクチュエータを用いた電子機器及び光学機器を提供することができる。また、本発明は、長期にわたり安定した駆動特性を有し、かつ、駆動特性が向上した振動型アクチュエータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】円環状圧電材料もしくは矩形圧電材料を用いた本発明の振動型アクチュエータの概略構造を説明する図である。
【
図2】矩形圧電材料を備えた本発明の振動子が発する二つの振動モードを説明する図である。
【
図3】本発明における発泡部材を表す断面の模式図である。
【
図4】本発明における発泡部材を側面から見た模式図である。
【
図5】シロキサン結合を含む分子の骨格構造を構成する構成単位を説明する図である。
【
図6】本発明における発泡部材の固体NMRによって得られた
29Si-DD-MAS NMRスペクトルである。
【
図7】
図6の各ピークに帰属する分子構造を示す図である。
【
図8】本発明の光学機器の概略構造を説明する図である。
【
図9】本発明の一実施例の振動型アクチュエータの駆動特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
本発明者らは、発泡部材を用いた振動型アクチュエータにおいて、フェルトを用いた場合よりも駆動特性が低下することを発見した。さらなる検討を行った結果、本発明者らは、発泡部材の化学構造を最適化することにより、長期間にわたって安定した駆動特性を有し、かつ駆動特性が向上された振動型アクチュエータを得られることを見出した。
【0014】
本発明の振動型アクチュエータは、振動体と接触体と発泡部材と付勢部材を有する。本発明の振動型アクチュエータは、発泡部材がシロキサン結合(Si-O-Si)を含み、かつ、Q単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.09以上であることを特徴とする。発泡部材がQ単位を多く含むことで、シロキサンの構造が安定化する効果が得られ、長期にわたって使用しても駆動特性が低下しにくい振動型アクチュエータを得ることができる。
【0015】
図1および
図2に本発明の振動型アクチュエータの概略構造を例示する。
図1の(a)及び(d)は振動型アクチュエータの概略図を示す側面図、(b)及び(e)は斜視図、(c)及び(f)は背面図である。
図2の(a)は振動モードのモードA、(b)はモードBを説明する図である。
【0016】
図1と
図2に例示された振動型アクチュエータでは、それぞれ板部が円環状である振動体と板部が矩形状である振動体が使用されている。本発明の振動型アクチュエータ100は、電極101および圧電材料102からなる電気-機械エネルギー変換素子120を備えている。さらに、板部108と板部の面外に同方向に突出する突起部106を備えた弾性体103をそなえており、これらを順に配した振動体110が構成されている。
【0017】
振動型アクチュエータ100はさらに突起部106と接する接触体104とを備えている。加えて、振動体110を接触体104に加圧接触させる(付勢する)ための付勢部材121と、振動体110と付勢部材121の間に発泡部材122を設けた構成となっている。
【0018】
振動体110が駆動することで、振動体110と接触体104は相対的に移動する。接触体104は、振動体110と相対的に移動可能な部材であればよく、振動子110と直接的に接するものに限られず、他の部材を介し振動体110と間接的に接するものであってもよい。電気-機械エネルギー変換素子120の面は、付勢部材121によって発泡部材122を介して接触体104に向かって付勢されている。
【0019】
(圧電材料)
圧電材料102の形状は問わないが、板部の形状が円環状である場合は圧電材料も円環状であることが好ましく、板部の形状が矩形状である場合は圧電材料も矩形状であることが好ましい。
【0020】
圧電材料102の形態は限定されないが、たとえば結晶配向の無い圧電材料(焼結体)、結晶配向セラミックス、圧電単結晶、等であってよい。圧電材料が取り得る形状は限定されないが、たとえば電極と圧電材料の積層体を構成するため、層状の圧電材料を採用しても構わないし、圧電材料の単板を採用しても構わない。圧電材料のコストの観点では単板が優れる。振動型アクチュエータを駆動するためには、圧電材料に分極処理を施す。分極処理を施された圧電材料に印加する交流電界周波数が圧電材料の共振周波数に接近すると、共振現象によって圧電材料が大きく振動する。
【0021】
なお、電気-機械エネルギー変換素子に用いられる圧電材料の鉛の含有量は、環境負荷の観点から1000ppm以下であることが好ましい。
【0022】
(電極)
円環状の圧電材料を用いる場合、圧電材料には周方向に分割された電極101が設けられ、円環状圧電素子が構成される。電極101は、駆動相電極101eと非駆動相電極101fからなる。駆動相電極の円周方向の長さは、交番電圧を駆動相電極に印加した際に円環状圧電素子の周方向に発生する振動波の波長λの1/2である。非駆動相電極(接地電極、モニター用電極)の円周方向の長さは、上記波長λの1/4となる。駆動相電極および非駆動相電極の数は、円環状圧電材料に励振する進行波の数に応じて変化する。各駆動相電極に対応する圧電材料は隣あう領域とは異なる極性の電圧で分極処理を施されている。
【0023】
駆動相電極は奇数個の非駆動相電極によって隔てられる。分極処理の後、非駆動相電極によって隔てられる2つの駆動相電極グループをそれぞれ短絡するように第1電極101aと第2電極101bが設けられる。第1電極101aと第2電極101bは円環状圧電材料を用いた振動型アクチュエータの駆動に用いられる。
【0024】
矩形状の圧電材料を用いる場合、矩形の電極101が設けられる。電極101は、第1電極101aと第2電極101bからなる。第1電極101aおよび第2電極101bは矩形圧電材料の分極処理と、矩形圧電材料を用いた振動型アクチュエータの駆動に使用される。
【0025】
電極は、厚み0.3~10μm程度の金属膜よりなる。その材料は特に限定されないが、一般には銀、金、もしくは白金電極が用いられる。電極の製造方法は限定されず、スクリーン印刷、スパッタ法、真空蒸着法などにより形成できる。鉛の含有量が1000ppm以下の電気-機械エネルギー変換素子を作製するためには、電極の形成においても鉛含有量が1000ppm未満であるペーストやターゲットを用いる必要がある。
【0026】
(弾性体)
弾性体103は弾性体としての性質および加工性の観点から金属よりなることが好ましい。弾性体103に使用可能な金属としては、アルミ、真鍮、ステンレス鋼を例示できる。ステンレス鋼の中ではマルテンサイト系ステンレス鋼が好ましく、SUS420J2が最も好ましい。弾性体には接触体と接する突起部106がある。突起部の耐摩耗性をさらに向上させるためには、弾性体には焼き入れやめっき処理、窒化が施される。
【0027】
弾性体の板部が矩形であると好ましい。弾性体の板部を矩形とすることで、電気-機械エネルギー変換素子の製造加工がより容易となり、小型の電気-機械エネルギー変換素子を作製することができる。そして小型の振動型アクチュエータを作製することが可能となる。
【0028】
(発泡部材)
発泡部材122は、
図1(a)に示すように、電気-機械エネルギー変換素子120における弾性体103が配されている面とは反対側の面上に設けられている。発泡部材122は振動体110を接触体104に均一に与圧するとともに振動減衰部材としての機能も必要とする。振動減衰部材としての機能としては隣接する部材からの振動を吸収等により減衰させるものであり、駆動特性が低下しなければ発泡部材122を分離させて設けてもかまわない。
【0029】
図3に本発明の発泡部材の水平方向(XY平面)の断面図を示す。また
図4に本発明の発泡部材の垂直方向(Z方向)の側面図を示す。
図4(a)表面にスキン層がない発泡部材、
図4(b)は表面にスキン層がある発泡部材の側面図を示す。
【0030】
発泡部材122はケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含み、発泡部材に含まれるケイ素のQ単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.09以上であることを特徴とする。発泡部材がケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含むことで、発泡部材のガラス転移温度を動作温度範囲である-30℃よりも低くすることができ、低温においても室温と同等な発泡部材の物性を維持することができる。
【0031】
また発泡部材に含まれるケイ素のQ単位の数N
QのD単位の数N
Dに対する比N
Q/N
Dが0.09以上であることで振動型アクチュエータの駆動効率を向上させることが可能となる。ここでケイ素のQ単位およびD単位とは、シロキサン結合を含む分子の骨格構造を構成する単位(ユニット)のことである。
図5に示すように(a)有機置換基が3個付いた1官能性の単位をM単位、(b)有機置換基が2個付いた2官能性の単位をD単位、(c)有機置換基が1個付いた3官能性の単位をT単位、(d)有機置換基が1個もない4官能性の単位をQ単位と言う。M単位は骨格構造の両端を意味する。またD単位は骨格構造において柔軟性を示し、T単位およびQ単位は骨格構造において硬質を示す。
【0032】
発泡部材において、発泡部材に含まれるケイ素のQ単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.09以上であることで、振動減衰部材として好適となり振動型アクチュエータの駆動効率を向上させることができる。一方で、比NQ/NDが0.09よりも小さいと、発泡部材の柔軟性が高いために、付勢部材による振動体の与圧が不均一となり、特性ばらつきが大きくなったり駆動効率が低下したりする可能性があるため好ましくない。
【0033】
T単位も骨格構造を硬くするため存在しても良いが、骨格構造の構造的な硬さを保持し、長期にわたり安定した構造とするためにT単位よりもQ単位の割合が多い方が好ましい。一方、骨格構造が硬すぎると振動体の振動を阻害してしまい、モータの駆動特性の悪化を引き起こす要因や異音が発生する要因となる。好ましくは、発泡部材に含まれるケイ素のQ単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.5以下である。より好ましくは0.29以下である。
【0034】
発泡部材に含まれるケイ素化合物の構成単位は固体核磁気共鳴法(以下、固体NMR法)による分子構造解析により同定し、構成単位の割合を算出することができる。NMR法は、核スピンの励起エネルギーを測定する手法であり、ケイ素化合物の場合は29Si核を観測することで、分子構造に関する情報を得ることが可能である。
【0035】
また、固体NMR法によるケイ素化合物の測定方法として、DD(Dipolar Decoupling)法とCP(Cross Polarization)法の2種類がある。CP法は、結晶性や近傍の1Hの存在によって検出感度が大きく異なる。そのため、測定シグナルの積分比は各成分の比率を正しく反映することができない。一方DD法は、CP法と比べ感度が低く、長時間の測定が必要となるが、測定時間を最適に設定することで、測定シグナルの積分比から各成分の比率を算出することができる。本発明の発泡部材に含まれるケイ素化合物の構成単位の算出にはDD法を用いる必要がある。
【0036】
図6(a)に本発明の振動型アクチュエータにおける発泡部材の固体NMRによって得られた
29Si-DD-MAS NMRスペクトルの一例を、
図6(b)に
図6(a)の点線の枠で囲った箇所の拡大図を示す。NMRスペクトルの横軸は化学シフト値δ(ppm)と呼ばれ、基準となる共鳴周波数からのずれを基準周波数で除算した値となっており、構造毎に固有の値を示す。
【0037】
例えば
図6(b)のQ4の構造は-110ppmの位置にNMRスペクトルのピークが存在することから同定することができる。なお
図6(a)(b)に記載されているSSBはスピニングサイドバンドのことで、分子構造の異方性に起因して検出されるゴースト信号のことである。
図6(a)(b)の各ピークに帰属する分子構造を
図7に示す。中心のSiと結合する元素および分子の種類の違いによって様々な分子構造に帰属されるが、本発明ではM単位、D単位、T単位、Q単位の4つに分類して比率を算出する。つまり
図7の分子構造では、M0とM0
HをM単位、D2とD2
HをD単位、T1とT2をT単位、Q3とQ4をQ単位としてピーク面積強度を算出する。
【0038】
NMRスペクトルにおいて、M単位のピークは20ppmから0ppmの範囲に、D単位のピークは0ppmから-45ppmの範囲に確認できる。また、T単位のピークは-45ppmから-85ppmの範囲に、D単位のピークは-85ppmから-120ppmの範囲で確認することができる。
【0039】
ケイ素のQ単位およびD単位の構成単位は架橋点を意味し、その割合は架橋点数密度をあらわす。発泡部材の作製工程では、加熱硬化や2液原料の混合による架橋反応による硬化において、加熱温度や時間を制御することで発泡部材の架橋点数密度や気泡の平均円相当径を変化させることができる。気泡の平均円相当径が120μmより大きく、シリコーン樹脂を含有する発泡材料に、600g/cm2以上700g/cm2以下の加圧下で60℃以上80℃以下の温度で保持する熱処理を行うことで発泡部材を得た。加圧熱処理を行うことで発泡部材の構造が安定すると考えられ好ましい。
【0040】
発泡部材は、シリコーンゴムを含有するスポンジであることが好ましい。またシリコーンゴムのメチル基の一部をビニル基に置換したものやフェニル基に置換したものでも同等の効果が得られる。シリコーンスポンジはフェルトと比較して加圧下における厚さ方向の体積変化が小さく長期安定性に優れるから好ましい。例えばフェルトを室温下で600g/cm2以上700g/cm2以下の加圧状態で500時間保持した場合、厚さが約50%に圧縮してしまい加圧を開放しても復元しない。一方、シリコーンスポンジは加圧を開放するとほぼ初期の厚さまで復元するため体積変化が小さい。
【0041】
発泡部材に含まれる気泡の平均円相当径が120μmより大きいことを特徴とする。発泡部材122に含まれる気泡の平均円相当径は120μmより大きいことが好ましい。発泡部材に気泡が存在することで発泡部材がバネ性を持つことが可能であり、振動体110を接触体104に均一に与圧するとともに振動減衰部材として機能することができる。
【0042】
平均円相当径は発泡部材の断面形状から算出することが好ましい。発泡部材の断面における気泡の平均円相当径が120μmより大きいことで、振動体の振動を阻害しないでモータの駆動特性を維持しつつ振動体を均一に与圧することが可能である。
【0043】
発泡部材122の平均円相当径は、断面観察によって得られた断面画像を画像処理等の方法から求めることができる。断面観察をおこなうためにはサンプルを切断等により断面を露出させて光学顕微鏡やレーザ顕微鏡等で観察する方法などがあげられる。他にはX線CTスキャンによる非破壊で断層写真を得る方法もある。また気泡の形状を確認することが可能であれば、電気-機械エネルギー変換素子120と接する表面を断面形状として取り扱ってもよい。画像処理ソフトは顕微鏡に最適化されたものでも、市販のものでも利用することができる。様々な大きさの気泡が存在するため平均円相当径を算出する際には、多くの気泡を観察することが好ましい。具体的には50個以上の気泡から平均円相当径を算出することが好ましい。
【0044】
本発明の発泡部材は
図4(b)のように気泡が柱状であっても、発泡部材の表面にスキン層があってもよい。
図4(b)に示したように、表面にスキン層が存在する場合は表面からは気泡を正確に確認することができないので切断により断面を露出させることが好ましい。得られた断面写真は画像処理により平均円相当径を算出することができる。
【0045】
発泡部材の気泡は主に独立気泡で構成されることが好ましい。独立気泡とは発泡部材の表と裏が気泡によって繋がっていない気泡のことを意味する。独立気泡は気体や液体を通しにくい。このため発泡部材がバネ性を持つためには独立気泡であることが好ましい。一方、連続気泡では気泡が繋がっているために、空気の出入りが生じやすく圧力をかけた際に潰れやすい特徴があり、バネ性に劣るため振動体を均一に与圧できないおそれや振動の減衰機能が低下するため好ましくない。独立気泡の数が連通気泡の数より多い、すなわち発泡部材に含まれる気泡の数に占める独立気泡の数が50%以上であると好ましい。この際、50個以上の気泡が入る断面写真から計数することができる。
【0046】
発泡部材の気泡の平均円相当径は200μm以上であることがより好ましい。振動型アクチュエータの動作温度範囲内(例えば-30℃~60℃)での安定した動作を実現するためには、相転移温度が-10℃以下である圧電材料を振動型アクチュエータに用いることが有効である。つまり、-10℃での圧電特性が室温の圧電特性よりも大きな圧電材料を振動型アクチュエータに用いることが有効である。その際、気泡の平均円相当径が200μm以上とすることで、低温領域での振動減衰部材としての効果を維持し駆動効率を改善することができる。気泡の平均円相当径は、より好ましくは300μm以上である。
【0047】
発泡部材の平均円相当径は、発泡部材の厚さtの1/2よりもよりも小さいことが好ましい。そうすることで振動体を均一に与圧するとともに振動減衰部材として機能することができる。より好ましくは発泡部材の厚さtの1/3よりも小さいものが採用される。
【0048】
(接触体)
接触体104は剛性の観点においてステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼の中でも、マルテンサイト系ステンレス鋼が好ましく、SUS420J2が最も好ましい。接触体104は弾性体103と摩擦接触するため耐摩耗性に優れる必要があり、表面には窒化処理やアルマイト処理が施される。突起部106と接触体104との間には、加圧接触による摩擦力が働く。電気-機械エネルギー変換素子120の発する振動によって突起部106の先端が楕円振動して、接触体104を駆動する駆動力(推力)を発生させることができる。接触体はスライダやロータと一般的に呼ばれるものである。
【0049】
なお「接触体」とは、振動体と接触し、振動体に発生した振動によって、振動体に対して相対移動する部材のことをいう。接触体と振動体の接触は、接触体と振動体の間に他の部材が介在しない直接接触に限られない。接触体と振動体の接触は、振動体に発生した振動によって、接触体が振動体に対して相対移動するならば、接触体と振動体の間に他の部材が介在する間接接触であってもよい。「他の部材」は、接触体及び振動体とは独立した部材(例えば焼結体よりなる高摩擦材)に限られない。「他の部材」は、接触体又は振動体に、めっきや窒化処理などによって形成された表面処理部分であってもよい。
【0050】
(圧電振動子)
円環状圧電素子では、隣り合う駆動相電極に接する圧電材料は異なる極性で分極されているので、駆動相電極101eに同極性の電界を印加したとき、圧電材料の当領域における伸縮極性は、λ/2のピッチで交互に反転する。第1電極101aに交番電圧を印加すると、波長λの第1定在波が振動子の全周に亘って発生する。第2電極101bに交番電圧を印加しても、同様に第2定在波が生ずるが、波の位置は第1定在波に対して円周方向にλ/4だけ回転移動したものとなる。他方、周波数が同じでかつ時間的位相差がπ/2である2種類の交番電圧を第1及び第2電極に印加すると次のような進行波が発生する。すなわち、第1及び第2定在波の合成の結果として、振動子には全周に亘って円周方向に進行する曲げ振動(振幅が振動子の面に垂直な振動)の進行波(円環に沿った波数n、波長λ)が発生する。
【0051】
曲げ振動の進行波(以下単に「曲げ振動波」ということがある)が発生すると、振動子を構成する振動板の面上の各点は楕円運動をするため、この面に接する移動体は振動板から円周方向の摩擦力(駆動力)を受けて回転をする。その回転方向は、第1電極と第2電極に印加する交番電圧の位相差の正負を切換えることより、反転できる。また、回転速度は、第1電極と第2電極に印加する交番電圧の周波数や振幅で制御できる。
【0052】
図2は、矩形圧電材料を備えた本発明の振動子が発する二つの振動モードを説明する。矩形圧電材料には第1電極101a及び第2電極101bが設けられており、それぞれの領域を第一の領域と第二の領域とする。
【0053】
・モードA
第一の領域と第二の領域がともに伸長または収縮すると、第1の曲げ振動モード(モードA)が発生する。モードAは第1電極101aおよび第2電極101bに印加される交番電圧VA、VBの位相差が0°であり、周波数がモードAの共振周波数付近である時に最も強く励振される。モードAは振動子110の長辺と略平行に2つの節(振幅が最小となるところ)が現れる一次の面外振動モードである。弾性体における同方向に突出する2つの突起部106は、モードAの腹(振幅が最大となるところ)となる位置近傍に配置されている。そのため突起部106の先端面は振動モードAによりZ方向に往復運動する。
【0054】
・モードB
第一の領域が伸張、収縮するときに第二の領域がそれぞれ収縮、伸張すると、第2の曲げ振動モード(モードB)が発生する。モードBは第1電極101aおよび第2電極101bに印加される交番電圧VA、VBの位相差が180°であり、周波数がモードBの共振周波数付近である時に最も強く励振される。モードBは振動子110の短辺と略平行に3つの節が現れる二次の面外振動モードである。弾性体の突起部106は、モードBの節となる位置近傍に配置されている。そのため突起部106の先端面はモードBによってX方向に往復運動する。
【0055】
振動型アクチュエータ100では、交番電圧VA、VBの位相差が0~±180°であるときにモードAとモードBが同時に励振され、弾性体の突起部106に楕円振動が励振される。矩形圧電材料を用い、モードAとモードBによって駆動する振動型アクチュエータは小型化が容易であるので好ましい。
【0056】
板部の面外に同方向に突出する突起部が2つであることがより好ましい。
図2のように矩形圧電材料を用いたモードAとモードBによって駆動する振動型アクチュエータの小型化が容易であるので好ましい。
【0057】
与圧による発泡部材の変形による振動の阻害を防ぐために、発泡部材と電気-機械エネルギー変換素子との接する部位の面積が、左記の部位を含む電気-機械エネルギー変換素子の平面部の面積よりも小さいことが好ましい。また、発泡部材は電気-機械エネルギー変換素子よりも小さいことが好ましい。発泡部材が変形して、発泡部材と電気-機械エネルギー変換素子である圧電素子の側面側にまわりこむことで圧電素子の振動を阻害してしまったり、周辺部材と干渉してしまうことで振動を阻害してしまったりする問題を抑制することが期待できる。また発泡部材が弾性体よりも小さいことが好ましい。発泡部材が弾性体よりも大きいと変形して周辺部材と干渉してしまうことで振動を阻害するおそれがあるため、発泡部材を弾性体よりも小さくすることで振動を阻害してしまう問題を抑制することが期待できる。
【0058】
(圧電材料の組成)
圧電材料102の組成は、振動型アクチュエータとして利用できれば特に限定されない。
【0059】
圧電材料に用いられる圧電材料は一般的にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系材料が使用されている。しかし近年鉛の環境に対する影響が問題視されている観点から、鉛を含有しない(鉛の含有量が1000ppm未満である)ペロブスカイト型金属酸化物を用いた圧電材料よりなることがより好ましい。鉛の含有量は、例えばICP発光分光分析によって測定可能である。
【0060】
鉛を含有しない、つまり非鉛系の圧電材料の主成分はチタン酸バリウム系材料であるとより好ましい。
【0061】
圧電材料は圧電定数が高く、かつ製造が比較的容易であるいう観点からチタン酸バリウム系材料よりなることが好ましい。ここでチタン酸バリウム系材料とは、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸バリウムカルシウム((Ba、Ca)TiO3)、チタン酸ジルコン酸バリウム(Ba(Ti、Zr)O3)、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム((Ba、Ca)(Ti、Zr)O3)、が挙げられる。また、ニオブ酸ナトリウム-チタン酸バリウム(NaNbO3-BaTiO3)、チタン酸ビスマスナトリウム-チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスカリウム-チタン酸バリウムなどの組成が挙げられる。そして、これらの組成を主成分とした材料のことを指す。主成分とはその材料の重量分率が10%よりも大きい場合をいう。
【0062】
さらには、これらの組成を主成分としてあるいは複合して含有する圧電材料を本発明の振動型アクチュエータ100に用いることができる。
【0063】
動作温度範囲内における圧電特性の温度依存性に優れ、圧電材料の圧電定数と機械的品質係数を両立できるという観点において、以下の材料がさらに好ましい。すなわちチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム((Ba、Ca)(Ti、Zr)O3)、ニオブ酸ナトリウム-チタン酸バリウム(NaNbO3-BaTiO3)を主成分とすることが好ましい。
【0064】
圧電材料の主成分がチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム(以後BCTZ)であると好ましい。BCTZが主成分であると、CaやZrの量を調整することによってBCTZの圧電性を用途に応じて調整することができる。また高価なニオブの使用量を減らすことができる。
【0065】
圧電材料は、Ba,Ca,Ti,およびZrを含むペロブスカイト型構造の酸化物、およびMnを含有する圧電材料であって、
BaおよびCaの和に対するCaのモル比であるxが0.02≦x≦0.30であり、TiおよびZrの和に対するZrのモル比であるyが、0.020≦y≦0.095であり、かつy≦xであり、
BaとCaのモル量とTiとZrのモル量の比であるαが0.9955≦α≦1.01であり、酸化物100重量部に対するMnの含有量は、金属換算で0.02重量部以上1.0重量部以下であると好ましい。
【0066】
このような圧電材料は次の一般式(1)で表すことができる。
(Ba1-xCax)α(Ti1-yZry)O3 (1)
ただし、
0.986≦α≦1.100、
0.02≦x≦0.30、
0.02≦y≦0.095
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、圧電材料に含まれる主成分以外の金属成分の含有量が金属酸化物100重量部に対して金属換算で1重量部以下であることが好ましい。
【0067】
特に、金属酸化物にMnが含有されており、Mnの含有量が金属酸化物100重量部に対して金属換算で0.02重量部以上0.40重量部以下であることが好ましい。範囲のMnを含有すると、絶縁性や機械的品質係数Qmが向上する。ここで、機械的品質係数Qmとは、圧電材料を振動子として評価した際に振動による弾性損失を表す係数であり、機械的品質係数の大きさは、インピーダンス測定における共振曲線の鋭さとして観察される。つまり振動子の共振の鋭さを表す定数である。機械的品質係数Qmが大きいと、共振周波数付近で圧電材料の歪量がより大きくなり、効果的に圧電材料を振動させることができる。
【0068】
一般式(1)で表わされる金属酸化物は、ペロブスカイト構造のAサイトに位置する金属元素がBaとCa、Bサイトに位置する金属元素がTiとZrであることを意味する。ただし、一部のBaとCaがBサイトに位置してもよい。同様に、一部のTiとZrがAサイトに位置してもよい。
【0069】
一般式(1)における、Bサイトの元素とO元素のモル比は1対3であるが、モル比が若干ずれた場合でも、金属酸化物がペロブスカイト構造を主相としていれば、本発明の範囲に含まれる。
【0070】
金属酸化物がペロブスカイト構造であることは、例えば、X線回折や電子線回折による構造解析から判断することができる。
【0071】
一般式(1)におけるAサイトにおけるCaのモル比を示すxは、0.02≦x≦0.30の範囲である。ペロブスカイト型のチタン酸バリウムのBaの一部を範囲でCaに置換すると直方晶と正方晶との相転移温度が低温側にシフトするので、振動型アクチュエータの駆動温度範囲において安定した圧電振動を得ることができる。しかし、xが0.30より大きいと、圧電材料の圧電定数が十分ではなくなり、振動型アクチュエータの性能が不足するおそれがある。他方、xが0.02より小さいと誘電損失(tanδ)が増加する恐れがある。誘電損失が増えると、圧電材料に電圧を印加して振動型アクチュエータを駆動する際の発熱が増え、モータ駆動効率が低下し、消費出力が大きくなる恐れがある。
【0072】
一般式(1)において、BサイトにおけるZrのモル比を示すyは、0.02≦y≦0.1の範囲である。yが0.1より大きいとTdが80℃未満と低くなり、振動型アクチュエータを使用できる温度範囲が80℃未満となり好ましくない。
【0073】
本明細書においてTdは、分極処理を施して一週間が経過した後に、室温からTdまで圧電材料を加熱し、再度室温まで冷却した後の圧電定数が加熱前の圧電定数に比べて10%より多く低下する温度のうち最も低い温度を指す。
【0074】
また、一般式(1)において、AサイトにおけるBaとCaのモル量とBサイトにおけるTiとZrのモル量との比を示すαは0.9955≦α≦1.010の範囲であることが好ましい。αが0.9955より小さいと圧電材料を構成する結晶粒に異常粒成長が生じ易くなり、圧電材料の機械的強度が低下する。一方で、αが1.010より大きくなると圧電材料が高密度化せず絶縁性が著しく脆くなる。
【0075】
圧電材料の組成を測定する手段は特に限定されない。手段としては、X線蛍光分析、ICP発光分光分析、原子吸光分析などが挙げられる。いずれの測定手段を用いても、圧電材料に含まれる各元素の重量比および組成比を算出できる。
【0076】
Mnの含有量を示す金属換算とは、圧電材料から蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析、原子吸光分析などにより測定されたBa、Ca、Ti、ZrおよびMnの各金属の含有量を算出する。その含有量から、一般式(1)で表わされる金属酸化物を構成する元素を酸化物換算し、その総重量を100としたときに対するMnの重量との比によって求められた値を表す。
【0077】
Mnの含有量が0.02重量部未満であると、振動型アクチュエータの駆動に必要な分極処理の効果が充分でなくなる恐れがある。一方、Mnの含有量が0.40重量部より大きくなると、圧電材料の圧電特性が充分でなくなることや、圧電特性を持たない六方晶構造の結晶が発現する恐れがある。Mnは金属Mnに限らず、Mn成分として圧電材料に含まれていれば良く、その含有の形態は問わない。例えば、Bサイトに固溶していても良いし、粒界に含まれていてもかまわない。より好ましい含有の形態は、絶縁性や焼結容易性という観点からBサイトに固溶することである。
【0078】
圧電材料が、Biを金属換算で0.042重量部以上0.850重量部以下含有することが好ましい。
【0079】
圧電材料は一般式(1)に示す金属酸化物100重量部に対して、Biを金属換算で0.85重量部以下含有してもよい。金属酸化物に対するBiの含有量は、例えばICP発光分光分析によって測定可能である。Biはセラミックス状の圧電材料の粒界にあっても良いし、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3のペロブスカイト型構造中に固溶していても良い。Biが粒界に存在すると、粒子間の摩擦が低減され機械的品質係数が増加する。他方、Biがペロブスカイト構造を形成する固溶体に取り込まれると、相転移温度が低温化することから圧電定数の温度依存性が小さくなり、機械的品質係数がさらに向上する。Biが固溶体に取り込まれた時の位置がAサイトであると、Mnとの電荷バランスが良くなるため好ましい。
【0080】
圧電材料は、一般式(1)に含まれる元素およびMn、Bi以外の成分(以下、副成分)を特性が変動しない範囲で含んでいてもよい。副成分は、一般式(1)で表現される金属酸化物100重量部に対してその合計が1.2重量部より少ないことが好ましい。副成分が1.2重量部を超えると、圧電材料の圧電特性や絶縁特性が低下する恐れがある。非鉛系の圧電材料はヤング率が高いため、鉛系の圧電材料と比較して共振周波数が高い傾向がある。共振周波数が高いと振動子の振動回数が多くなるため、付勢部材と振動体との間に配置した振動減衰部材の変化に敏感になる。そのため非鉛系の圧電材料を用いた振動型アクチュエータでは、長期安定性に優れ、変化が小さい発泡部材を用いることが好ましい。
【0081】
振動型アクチュエータの動作温度範囲内(例えば-30℃~60℃)における圧電特性の温度依存性に優れることから相転移温度が-10℃以下であるとさらに好ましい。
【0082】
本発明の圧電材料は室温から温度を低下させるにつれて、正方晶から直方晶へと逐次相転移を起こす。本明細書で言及する相転移温度とは、この相転移を指す。相転移温度は温度を変化させながら誘電率を測定し、誘電率を試料温度で微分した値が最大となる温度として算出する。結晶系はエックス線回折、電子線回折、またはラマン散乱などで評価することができる。相転移温度付近では誘電率、電気機械結合係数が極大となり、ヤング率が極小となる。圧電定数はこれら三つのパラメータの関数であり、相転移温度付近で極大値もしくは変曲点を示す。
【0083】
(振動型アクチュエータの製造方法)
本発明の振動型アクチュエータは、次の製造方法によって製造される。はじめに、平均円相当径が120μmより大きい気泡を有し、シリコーンゴムを含有する発泡材料に加圧熱処理を行い、発泡部材を得る。次に、弾性体及び電気-機械エネルギー変換素子を接触させて振動体を得て、接触体を準備する。最後に、発泡部材を介して振動体を接触体に付勢することによって、振動型アクチュエータを得る。また、加圧熱処理は、600g/cm2以上700g/cm2以下の加圧下において、発泡材料を60℃以上80℃以下の温度で保持する処理を含む。
【0084】
(電子機器)
本発明の電子機器は、本発明の振動型アクチュエータと、振動型アクチュエータの接触体と接続された部材、及び部材位置検出手段(例えばエンコーダ)を備えることを特徴とする。本電子機器は部材の位置を検出し、目標とする位置に部材が至るまで振動型アクチュエータを動作させることで、部材の位置を精密に制御することができる。
【0085】
(光学機器)
本発明の光学機器は、本発明の電子機器と、光学素子および撮像素子の少なくとも一方を備えることを特徴とする。
図8は、本発明の光学機器(鏡筒装置のフォーカスレンズ部)の一実施形態を示した概略図である。
図8において、矩形圧電材料を備えた振動体110は接触体(スライダ)104と、
図1(d)同様に加圧接触している。給電部材507は、第一および第二の領域を有する面側に接続されている。不図示の電圧入力手段により、給電部材507を介して所望の電圧が振動子110に加えられると、不図時の弾性体の突起部に楕円運動が発生する。保持部材501は、振動体110と接合されており、不要な振動を発生させないように構成されている。移動筐体502は、ビス503で保持部材501に固定され、振動子110と一体をなしている。これらの部材により本発明の電子機器が形成される。ガイド部材504に移動筐体502を取り付けることで、本発明の電子機器はガイド部材504に沿って両方向(正進方向と逆進方向)に直進移動することが可能になる。
【0086】
次に、鏡筒装置のフォーカスレンズの役割を担うレンズ506(光学部材)について説明する。レンズ506は、レンズ保持部材505に固定され、振動型アクチュエータの移動方向と平行に光軸(不図示)を有する。レンズ保持部材505は、振動型アクチュエータと同様に、後述する2本のガイド部材504上を直進移動することで、焦点位置合わせ(フォーカス動作)を行う。2本のガイド部材504は移動筐体502とレンズ保持部材505とを嵌合して、移動筐体502とレンズ保持部材505を直進移動することを可能にする部材である。このような構成で、移動筐体502とレンズ保持部材505はガイド部材504上を直進移動することが可能になる。
【0087】
また、連結部材510は、振動型アクチュエータが発する駆動力をレンズ保持部材505へ伝達する部材であり、レンズ保持部材505に嵌合して取り付けられる。これにより、レンズ保持部材505は、移動筐体502と共に滑らかに2本のガイド部材504に沿って両方向に移動可能になる。
【0088】
また、センサ508は、レンズ保持部材505の側面部に貼り付けられたスケール509の位置情報を読み取ることで、ガイド部材504上でのレンズ保持部材505の位置を検出するために設ける。以上のように、上述した各部材を組み込んで、鏡筒装置のフォーカスレンズ部を構成する。
【0089】
上記においては、光学機器として、一眼レフカメラ用の鏡筒装置について説明したが、レンズとカメラ本体が一体となったコンパクトカメラ、電子スチルカメラ等、カメラの種類を問わず、振動型アクチュエータを備えた多様な光学機器に適用することができる。
【0090】
また、振動型アクチュエータの他の構成として、共通する1つの接触体に対して、複数の振動子が共に接触しており、複数の振動子の振動により、複数の振動子に対して接触体が相対移動するように配してもよい。
【0091】
また、本発明の振動型アクチュエータの適用例として、医用あるいは工学分野への応用が考えられる。具体的には細長部材と、細長部材を挿通し細長部材の一部に固定されたワイヤと、ワイヤを駆動する上記の振動型アクチュエータを有し、ワイヤの駆動により、細長部材が湾曲するワイヤ駆動アクチュエータを構成することもできる。
【0092】
[実施例]
次に実施例を挙げて、本発明の振動型アクチュエータおよび振動子を説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
金属酸化物粉末を1340℃で焼成して表2の製造組成1に記載の圧電材料を得た。
【0094】
製造組成1は一般式(1)で示される組成であり、表2に示されるx、y、α、の値は上述した一般式(1)の各値に対応する。
【0095】
得られた圧電材料を厚み0.5mmで略均一に研削、及び研磨加工した後に、外径62、×内径54mmの円環状に加工した。形状を整えた圧電材料102の片面に、
図1(c)記載の駆動相電極101eおよび非駆動相電極101fを形成した。電極は、銀ペーストをスクリーン印刷で圧電材料102に塗布し、乾燥、焼付して形成した。
【0096】
次に、SUS420J2よりなる弾性体103に接着剤を塗布し、電極を形成した圧電材料102と圧着した。円環状圧電材料と円環状弾性体は、位置決め治具を用いてそれぞれの円の中心が一致するように配置した。次に接着剤を硬化させるための熱処理を実施した。弾性体を圧着した圧電材料を温度T1=160℃まで加熱して180秒保持した後に室温まで冷却し、加圧を解除して振動子を得た。次に、ACPが塗布されたFPCを圧電材料に設けられた電極に熱圧着した。熱圧着の条件は、温度T2=140℃、保持時間は20秒である。
【0097】
その後弾性体であるSUS420J2を接地し、隣り合う駆動相電極101eに極性の異なる電圧を交互に印加して、分極処理を施した。分極処理では、電源と接続された複数の外部電極を駆動相電極101eおよび被駆動相電極101fのうちセンサとして用いる電極に接触させる。その後T3=100℃まで加熱した後に2kV/mmに相当する電界を30分印加し、その後に電界を印加したまま40℃まで40分かけて冷却したのち電圧印加を終了した。
【0098】
その後に第1電極101aおよび第2電極101bを印刷、乾燥して振動子を得た。乾燥工程では圧電材料の脱分極を防ぐため、圧電材料の温度は80℃未満に保持される。得られた振動子をSUS420J2製の接触体(ロータ)に加圧接触させて振動型アクチュエータを作製した。電気-機械エネルギー変換素子と付勢部材の間に設置したケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含む発泡部材の種類を表1の実施例1に示す。発泡部材に含まれるケイ素のQ単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.23であった。
【0099】
(実施例2)
実施例1同様に製造組成1記載の圧電材料を得た。得られた圧電材料を厚み0.35mmで略均一に研削、及び研磨加工した後に、8.9×5.7mmの矩形に加工した。形状を整えた圧電材料の両面に、
図3記載の第1~第3電極を実施例1と同様の手法で形成した。
【0100】
次に、SUS420J2よりなる弾性体に接着剤を塗布し、電極を形成した矩形圧電材料と圧着した。使用した弾性体は圧電材料よりも大きな9.1×5.8mmの矩形部を有しており、弾性体の厚みは0.25~0.30mmの間であった。矩形圧電材料と弾性体は、位置決め治具を用いてそれぞれの矩形部の中心が一致して矩形部の辺が平行になるように配置した。圧着した状態で圧電材料を温度T1=160℃まで加熱して180秒保持した後に室温まで冷却し、加圧を解除して振動子を得た。
【0101】
次に、温度T2=140℃であるコテを用いてACPが塗布されたFPCと圧電材料を20秒間圧着し、圧電材料に設けられた電極にFPCを熱圧着した。
【0102】
続いて圧電材料に分極処理を施した。分極処理では弾性体を接地し、電源と接続された外部電極を第1電極と第2電極にそれぞれ接触させた。第1電極と第2電極にはすでにFPCが接続されているが、その全体はFPCに覆われておらず、露出した部分に分極処理用の外部電極がコンタクトする。その後T3=100℃まで加熱した後に2kV/mmに相当する電界を30分印加し、その後に電界を印加したまま40℃まで40分かけて冷却したのち電圧印加を終了した。以上の工程で得られた振動子をSUS420J2製の接触体(スライダ)に加圧接触させて振動型アクチュエータを作製した。電気-機械エネルギー変換素子と付勢部材の間に設置したケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含む発泡部材の種類を表1の実施例2に示す。
【0103】
【0104】
(実施例3から実施例6)
電気-機械エネルギー変換素子と付勢部材の間に設置したケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含む発泡部材の種類を表1に示したものを用いたこと以外は実施例2と同じ手法で振動型アクチュエータ実施例3から実施例6を作製した。
【0105】
(比較例1)
電気-機械エネルギー変換素子と付勢部材の間にフェルトを設置した以外は実施例1と同じ手法で振動型アクチュエータを作製した。
【0106】
(比較例2)
電気-機械エネルギー変換素子と付勢部材の間にフェルトを設置した以外は実施例2と同じ手法で振動型アクチュエータを作製した。
【0107】
(振動型アクチュエータの評価方法)
各実施例、比較例の振動型アクチュエータに対して、第1電極と第2電極に振幅130Vppの交番電圧を印加して駆動試験を行った。そのとき第1電極と第2電極の電圧の位相差は-90°と90°とした。
【0108】
交番電圧の周波数を、振動モードAおよび振動モードBの共振周波数よりも高い周波数から共振周波数に向けて掃引すると、接触体は交番電圧の位相差に従った方向に駆動し、最高速度に到達した後に停止する。便宜的に位相差が-90°、90°の時の進行方向をそれぞれ逆進方向、正進方向と呼ぶ。振動子の最高速度と最高速度に至った周波数をセンサで測定した。最高速度よりも低いある定格速度での電力(定格電力)を駆動回路に流れる電流から計算した。
図9に周波数に対する速度および電力の測定結果の一例を示す。20℃の環境雰囲気において最高速度と定格電力の測定を実施し、逆進方向、正進方向の平均値を算出した。
【0109】
比較例1で作製した振動型アクチュエータの最高速度に対する実施例1の変化量および定格電力の変化量を算出した。同様に比較例2で作製した振動型アクチュエータの最高速度に対する実施例3から実施例6の変化量および定格電力の変化量を算出した。結果を表1に示す。
【0110】
フェルトを用いた比較例1および比較例2の振動型アクチュエータに対して、ケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含む発泡部材Aを用いた実施例1および実施例2では、最高速度が増加し定格電力が低下した。
【0111】
また実施例3で示すように発泡部材Bにおいても、各温度において最高速度が増加し定格電力が低下することが確認できた。
【0112】
実施例4から実施例5で示した発泡部材C、発泡部材Dにおいては、比較例と比べ最高速度は同等であったが定格電力は低下した。
【0113】
実施例6で示した発泡部材Eにおいては、最高速度と定格電力は比較例2のフェルトと同等であった。
【0114】
(実施例7)
実施例2で作製した振動型アクチュエータと光学部材とを力学的に接続し、
図8記載の光学機器を作製した。センサとスケールによって構成されるエンコーダに与えられる位置情報に基づき、圧電材料に印加する交番電圧を制御することで振動型アクチュエータ、および振動型アクチュエータと接続された光学部材を狙いの位置へ精密に駆動することができた。本光学機器では振動型アクチュエータには光学レンズが接続されており、オートフォーカス機能を有することを確認できた。
【0115】
以上は製造組成1を例に記載したが、製造組成2~46やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であっても本発明の振動型アクチュエータの駆動特性が実施例2と同様にフェルトと同等以上であることを確認した。
【0116】
以上のように付勢部材と振動体との間に発泡部材を設け、発泡部材に含まれるケイ素のQ単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.09以上であるとよいことがわかった。このように構成することで、振動型アクチュエータにおいて長期にわたり安定かつ、駆動特性が向上した振動型アクチュエータを提供することができる。
【0117】
【0118】
本実施形態の開示は以下の構成及び方法を含む。
【0119】
(構成1)
電気-機械エネルギー変換素子、および、板部と前記板部の面外に同方向に突出する突起部とを備えた弾性体を有する振動体と、
前記振動体の前記突起部と接し前記振動体に対して相対的に移動する接触体と、
前記振動体に接する発泡部材と、
前記発泡部材を介して前記振動体を前記接触体に付勢する付勢部材を有し、
前記発泡部材はケイ素と酸素からなるシロキサン結合(Si-O-Si)を含み、
前記発泡部材に含まれるケイ素のうち、Q単位の数NQのD単位の数NDに対する比NQ/NDが0.09以上であることを特徴とする振動型アクチュエータ。
【0120】
(構成2)
前記発泡部材はシリコーンゴムを含有するスポンジであることを特徴とする構成1に記載の振動型アクチュエータ。
【0121】
(構成3)
前記発泡部材が有する気泡の平均円相当径が120μmより大きいことを特徴とする構成1または2に記載の振動型アクチュエータ。
【0122】
(構成4)
前記電気-機械エネルギー変換素子は、圧電材料と電極とを備え、
前記圧電材料の鉛の含有量が1000ppm以下であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【0123】
(構成5)
前記板部が矩形であることを特徴とする構成1乃至4のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【0124】
(構成6)
前記弾性体が2つの突起部を有することを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【0125】
(構成7)
前記発泡部材が前記電気-機械エネルギー変換素子よりも小さいことを特徴とする構成1乃至6のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【0126】
(構成8)
前記発泡部材が前記弾性体よりも小さいことを特徴とする構成1乃至7のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【0127】
(構成9)
前記電気-機械エネルギー変換素子の主成分がチタン酸バリウム系であることを特徴とする構成1乃至8のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【0128】
(構成10)
前記電気-機械エネルギー変換素子の主成分はチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムであることを特徴とする構成1乃至9のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【0129】
(構成11)
部材と、
前記部材に設けられた構成1乃至10のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータを備えた電子機器。
【0130】
(構成12)
光学素子および撮像素子の少なくとも一方と、
前記少なくとも一方に設けられた構成1乃至11のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータを備えた光学機器。
【0131】
(方法1)
平均円相当径が120μmより大きい気泡を有し、シリコーンゴムを含有する発泡材料に加圧熱処理を行い、発泡部材を得る工程と、
弾性体及び電気-機械エネルギー変換素子を接触させて振動体を得る工程と、
接触体を準備する工程と、
前記発泡部材を介して前記振動体を前記接触体に付勢することによって、振動型アクチュエータを得る工程と、
を有することを特徴とする振動型アクチュエータの製造方法。
【0132】
(方法2)
前記加圧熱処理は、600g/cm2以上700g/cm2以下の加圧下において、前記発泡材料を60℃以上80℃以下の温度で保持する処理を含むことを特徴とする方法1に記載の振動型アクチュエータの製造方法。
【符号の説明】
【0133】
100 振動型アクチュエータ
101 電極
101a 第1電極
101b 第2電極
101c 第3電極
101d 第4電極
101e 駆動相電極
101f 非駆動相電極
102 圧電材料
103 弾性体
104 接触体
106 突起部
107 支持部
108 板部
110 振動体
120 電気-機械エネルギー変換素子
121 付勢部材
122 発泡部材
133 気泡
134 スキン層
501 保持部材
502 移動筐体
503 ビス
504 ガイド部材
505 レンズ保持部材
506 レンズ
507 給電部材
508 センサ
509 スケール
510 連結部材