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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177731
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 17/067 20060101AFI20241217BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20241217BHJP
   F16L 23/04 20060101ALI20241217BHJP
   F16L 23/18 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F16L17/067
F16J15/10 L
F16L23/04
F16L23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096032
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】浦田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福井 克彦
【テーマコード(参考)】
3H014
3H016
3J040
【Fターム(参考)】
3H014AA02
3H016AB07
3H016AC04
3H016AD04
3H016CA01
3J040AA02
3J040AA12
3J040BA03
3J040EA16
3J040FA07
3J040HA08
(57)【要約】
【課題】シール性を高く保ったまま、更なる小型化が可能な継手を提供する。
【解決手段】継手の筒状の本体は配管または流体機器に固定され、環状のガスケットは本体の開口端面に取り付けられる。本体の開口端面は、内周側の縁に沿って伸びる環状溝を含む。環状溝はテーパー面と、軸方向に広がる外周側の境界面とを含む。テーパー面は内周方向へ進むにつれて本体の開口端面から軸方向へ遠ざかるように傾斜している。ガスケットは1次シール面と2次シール面とを含む。1次シール面は、ガスケットの軸方向における中央部から軸方向へ遠ざかるにつれて外径が縮小するように傾斜している環状面である。2次シール面はガスケットの軸方向における中央部の外周面に含まれ、本体の環状溝よりも外径が大きい。ガスケットが本体の環状溝に圧入されると、1次シール面は環状溝のテーパー面に密着し、2次シール面は環状溝の外周側の境界面に密着する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管または流体機器に固定される筒状の本体と、
前記本体の開口端面に取り付けられる環状のガスケットと、
を備えている継手であって、
前記本体の開口端面は、
内周側の縁に沿って伸びており、前記ガスケットが圧入される環状溝
を含み、
前記環状溝は、
内周方向へ進むにつれて前記開口端面から軸方向へ遠ざかるように傾斜しているテーパー面と、
軸方向に広がっている外周側の境界面と
を含み、
前記ガスケットは、
軸方向における中央部から軸方向へ遠ざかるにつれて外径が縮小するように傾斜している環状面であり、前記環状溝に前記ガスケットが圧入されると前記テーパー面に密着する1次シール面と、
前記中央部の外周面に含まれ、前記環状溝の外周側の境界面よりも外径が大きく、前記環状溝に前記ガスケットが圧入されると前記境界面に密着する2次シール面と
を含む
ことを特徴とする継手。
【請求項2】
前記ガスケットは更に、
前記中央部から外周方向へ広がっている環状の張出部
を含み、
前記2次シール面は前記張出部の外周面に含まれる、
請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記本体から前記ガスケットが分離されている状態で、径方向における前記張出部の高さは、前記環状溝に前記ガスケットが圧入される際、前記環状溝の外周側の境界面から前記2次シール面が受ける圧力によっては前記1次シール面が内周方向へ変位しない程度に設計されている、
請求項2に記載の継手。
【請求項4】
別の配管または別の流体機器に固定される筒状の第2本体と、
前記ガスケットを間に挟んで前記本体に前記第2本体を固定する連結部材と
を更に備えている、請求項1に記載の継手。
【請求項5】
前記連結部材がクランプである、請求項4に記載の継手。
【請求項6】
前記ガスケットを間に挟んで前記本体に前記第2本体が固定される際、前記ガスケットの外周側では前記本体と前記第2本体とが軸方向において所定の間隔を保ち、
前記間隔は、前記テーパー面からの圧力に起因する前記ガスケットの内径の減少幅が許容上限以下であるように設計されている、
請求項4に記載の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管または流体機器を別の配管または流体機器に接続する継手に関し、特にそのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配管または流体機器(ポンプ、バルブ、流量計等)を別の配管または流体機器に接続する継手には、次のようなものがある(たとえば、特許文献1-6参照)。継手の筒状の本体が、接続対象の配管の開口部、または流体機器の吸入口、もしくは吐出口(以下、「配管等」と略す。)に固定され、本体の開口端面に環状のガスケットが取り付けられる。本体とガスケットとの間のシール構造としては、本体の開口端面に、その周に沿って環状溝が設けられ、その溝にガスケットが埋め込まれる。環状溝の表面にガスケットの表面が密着することにより、シール領域が形成される。特に、ガスケットの周に沿って環状突起が設けられ、本体の開口端面の環状溝に圧入されることにより、環状突起と環状溝との間にシール領域が形成される継手がある(たとえば、特許文献4-6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2656102号公報
【特許文献2】実開平6-49888号公報
【特許文献3】特表2001-517287号公報
【特許文献4】特許第4644477号公報
【特許文献5】特開2021-148189号公報
【特許文献6】特開2021-156428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような継手では本体の開口端面にガスケットが取り付けられるので、本体とガスケットとの間のシール性を高く保つ目的で、それらに十分に広いシール領域を形成させるには、本体の開口端面に十分な広さが必要である。特に、特許文献4-6に開示の継手のように、ガスケットの環状突起と本体の環状溝とにシール領域を形成させる継手は、本体の開口端面に必要な面積が広いだけでなく、本体の開口部に必要な体積も大きい。したがって、本体の開口部が配管等よりも外周方向へ広がらざるを得ない。これにより、継手が配管等よりも径方向に嵩張るので、継手が取り扱いにくく、配管系統のレイアウトも制約を受ける。それ故、継手を取り扱いやすくすると共に、配管系統のレイアウトの自由度を上げるには、継手の小型化が望ましい。しかし、単純な小型化では、シール領域の面積が制限されるので、シール性が損なわれる。
【0005】
本発明の目的は上記の課題を解決することであり、特に、シール性を高く保ったまま、更なる小型化が可能な継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点における継手は筒状の本体と環状のガスケットとを備えている。本体は配管または流体機器に固定され、ガスケットは本体の開口端面に取り付けられる。本体の開口端面は、内周側の縁に沿って伸びる環状溝を含む。環状溝はテーパー面と、軸方向に広がっている外周側の境界面とを含む。テーパー面は、内周方向へ進むにつれて本体の開口端面から軸方向へ遠ざかるように傾斜している。ガスケットは1次シール面と2次シール面とを含む。1次シール面は、ガスケットの軸方向における中央部から軸方向へ遠ざかるにつれて外径が縮小するように傾斜している環状面である。2次シール面はガスケットの軸方向における中央部の外周面に含まれ、本体の環状溝よりも外径が大きい。本体の環状溝にガスケットが圧入されると、1次シール面は環状溝のテーパー面に密着し、2次シール面は環状溝の外周側の境界面に密着する。
【0007】
ガスケットが更に、軸方向における中央部から外周方向へ突出する張出部を含んでもよい。2次シール面は張出部の外周面に含まれる。好ましくは、本体からガスケットが分離されている状態で、径方向における張出部の高さは、本体の環状溝にガスケットが圧入される際、環状溝の外周面から2次シール面が受ける圧力によっては1次シール面が内周方向へ変位しない程度に設計されている。
【0008】
本発明による上記の継手が更に、別の配管または別の流体機器に固定される筒状の第2本体と、ガスケットを間に挟んで本体に第2本体を固定する連結部材とを備えていてもよい。さらに、連結部材がクランプであってもよい。好ましくは、ガスケットを間に挟んで本体に第2本体が固定される際、ガスケットの外周側では本体と第2本体とが軸方向において所定の間隔を保つ。この間隔は、好ましくは、本体の環状溝のテーパー面からの圧力に起因するガスケットの内径の減少幅が許容上限以下であるように設計されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明による上記の継手では、本体の環状溝のテーパー面とガスケットの1次シール面との間に加え、本体の環状溝の外周側の境界面とガスケットの2次シール面との間にもシール領域が形成される。したがって、シール領域の総面積が十分に広い。一方、2次シール面はガスケットの軸方向における中央部に限られるので、たとえば特許文献4-6に開示されているガスケットの環状突起と本体の環状溝との組み合わせがシールに利用される構造に比べ、本体の開口部に必要とされる体積が小さい。こうして、本発明による上記の継手は、シール性を高く保ったまま、更なる小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による継手の外観を示す斜視図である。
図2図1が示す直線II-IIに沿った縦断面図である。
図3図1が示す直線III-IIIに沿った横断面図である。
図4】(a)は、互いに接続されている1対の本体の外観を示す斜視図であり、(b)は、互いから分離されている1対の本体の外観を示す斜視図である。
図5】(a)は、閉じているクランプの外観を示す斜視図であり、(b)は、開いているクランプの外観を示す斜視図である。
図6図2が示す縦断面図の部分拡大図である。
図7】(a)は、接続直前の本体とガスケットとの縦断面の部分拡大図であり、(b)は、互いに接続されている本体とガスケットとの縦断面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態による継手100の外観を示す斜視図である。図2は、図1が示す直線II-IIに沿った縦断面図(すなわち中心軸を含む断面の図)であり、図3は、図1が示す直線III-IIIに沿った横断面図(すなわち中心軸に対して垂直な断面の図)である。継手100は、たとえば半導体製造装置において、チップに対する蒸着用もしくは洗浄用の薬液もしくは超純水、または乾燥用のガス等を扱う配管系統に利用されるものであり、配管または流体機器を別の配管または流体機器に接続する。継手100は、1対の本体110、120、ガスケット200、および連結部材300を含む。
[本体]
【0012】
図4の(a)は、互いに接続されている1対の本体110、120の外観を示す斜視図であり、(b)は、互いから分離されている本体110、120の外観を示す斜視図である。本体110、120は、たとえば熱可塑性樹脂製の円筒部材であり、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂から成る。第1本体110の軸方向(図では左右方向)における一端部111(図では左端部)は、配管の開口部、または流体機器の吸入口、もしくは吐出口(以下、「配管等」と略す。)に固定され、または一体化されている。一方、第1本体110の軸方向における他端部112(図では右端部)には開口があり、その周囲からフランジ113が外周方向へ広がっている。第2本体120の軸方向における一端部121(図では右端部)は別の配管等に固定され、または一体化されている。一方、第2本体120の軸方向における他端部122(図では左端部)には開口があり、その周囲からフランジ123が外周方向へ広がっている。図2図4が示すように、本体110、120は、互いの開口端面114、124が向かい合うように同軸に配置される。
【0013】
図2図4の(b)が示すように、本体110、120の開口端面114、124には内周側の縁に沿って環状溝116、126が伸びている。第1本体110の環状溝116は、第1本体110の開口端面114とは反対側(図では左側)が円環面117とテーパー面118とにより仕切られ、外周側(図では上側)が境界面119により仕切られている。円環面117は径方向(図では上下方向)に対して平行である。テーパー面118は円環面117の内周側(図では下側)に隣接しており、内周方向(図では下方)へ進むにつれて第1本体110の開口端面114から軸方向(図では左方)へ遠ざかるように傾斜している。外周側の境界面119は円筒面であり、開口端面114と円環面117との間を軸方向(図では左右方向)に広がっている。第2本体120の環状溝126は、第2本体120の開口端面124とは反対側(図では右側)が円環面127とテーパー面128とにより仕切られ、外周側(図では上側)が境界面129により仕切られている。円環面127は径方向(図では上下方向)に対して平行である。テーパー面128は円環面127の内周側(図では下側)に隣接しており、内周方向(図では下方)へ進むにつれて第2本体120の開口端面124から軸方向(図では右方)へ遠ざかるように傾斜している。外周側の境界面129は円筒面であり、開口端面124と円環面127との間を軸方向(図では左右方向)に広がっている。好ましくは図2が示すように、環状溝116、126は形状とサイズとが互いに等しい。
[ガスケット]
【0014】
ガスケット200は、たとえばフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂から成る円環部材であり、本体110、120の開口端面114、124の間に同軸に挟まれる。好ましくは図2が示すように、ガスケット200の縦断面は軸方向(図では左右方向)における両側の形状とサイズとが互いに等しい。ガスケット200は特に各開口端面114、124の環状溝116、126の中に配置され、表面を環状溝116、126のテーパー面118、128と外周側の境界面119、129とに密着させる。これにより、図2が示すように、ガスケット200の穴を通して本体110、120の内部空間が連通し、薬液、超純水、ガス等の流体用の流路CHNを成す。さらに、流路CHNから本体110、120のフランジ113、123の間の隙間GAPへ繋がる空間がガスケット200によって気密に、または液密に封鎖される。また、ガスケット200は本体110、120と内径が等しいので、本体110、120とガスケット200との間の境界では流路CHNの壁面が滑らかである。これにより、それらの壁面の近傍には淀みが生じにくい。
【0015】
ガスケット200は、1次シール面210、張出部215、および2次シール面220を含む。1次シール面210は、軸方向(図では左右方向)におけるガスケット200の両端面に含まれる環状面であり、軸方向におけるガスケット200の中央部201から軸方向へ遠ざかるにつれて外径が縮小するように傾斜している。ガスケット200が本体110、120の環状溝116、126の中に配置されると、1次シール面210が環状溝116、126のテーパー面118、128に密着する。張出部215は、ガスケット200の中央部201から外周方向へ広がっている環状部分であり、本体110、120の環状溝116、126の外周側の境界面119、129よりも外径が大きい。これによりガスケット200は環状溝116、126の中に圧入によって配置される。すなわち、ガスケット200は環状溝116、126に同軸に押し込まれ、張出部215で環状溝116、126の外周側の境界面119、129を押し広げることにより環状溝116、126の中に進入する。2次シール面220は、軸方向(図では左右方向)に対して平行な環状面であり、ガスケット200の中央部201の外周面、特に張出部215の外周面に含まれる。ガスケット200が本体110、120から分離されている状態では2次シール面220は環状溝116、126の外周側の境界面119、129よりも外径が大きい。これによりガスケット200は、環状溝116、126に圧入されるとそれらの外周側の境界面119、129に2次シール面220を密着させる。
[連結部材]
【0016】
連結部材300は、図1図3が示すようにガスケット200を間に挟んで第1本体110に第2本体120を固定する部材であり、たとえばクランプである。クランプ300は、たとえばフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂から成る円筒部材であり、互いに接続されている本体110、120の全体(図4の(a)参照。)を同軸に囲む。
【0017】
図5は、クランプ300の外観を示す斜視図である。クランプ300は第1部材310と第2部材320とを含む。第1部材310と第2部材320とはいずれも半円環形であり、周方向における基端部311、321がヒンジで互いに接続されている。各ヒンジでは、第1部材310の基端部311を貫通する軸方向の穴313の中に、第2部材320の基端部321から軸方向へ突き出た軸323が配置されている。これにより、ヒンジの軸323のまわりに各部材310、320が回転し、第1部材310の先端部312と第2部材320の先端部322とが、閉位置(図5の(a)参照。)と開位置(図5の(b)参照。)とに変位可能である。先端部312、322が閉位置にあるとき、両部材310、320が完全な円環形を成す。図1図3が示すように、この円環形の内側に本体110、120が挟まれる。各部材310、320の軸方向における両端部からはリブ314、324が内周方向へ迫り出している。両部材310、320が成す円環形の内側に本体110、120が挟まれると、本体110、120のフランジ113、123がクランプ300のリブ314、324の間に挟まれ、軸方向に締め付けられる。一方、先端部312、322が開位置にあるとき、両部材310、320が円環形からω字形状に変化する。これにより、クランプ300が本体110、120から取り外し可能になる。
【0018】
クランプ300は、第1部材310と第2部材320とを円環形に固定する部材として枠部331と凸部332とを含む。枠部331は、第1部材310の先端部312に設けられた矩形の枠である。凸部332は、第2部材320の先端部322の外周面から径方向へ隆起した矩形領域であり、図3が示すように、両部材310、320が成す円環形の周方向に沿って山形を成す。両部材310、320の先端部312、322が開位置から閉位置へ変位するとき、枠部331が凸部332を乗り越えて取り囲む。こうして、枠部331が凸部332に引っ掛かるので、両部材310、320が円環形に固定される。
[本体とガスケットとの間のシール構造]
【0019】
図6は、図2が示す縦断面図の部分拡大図である。本体110、120の間にガスケット200が挟まれると、テーパー面118、128に1次シール面210が密着する。さらに、この状態の本体110、120をクランプ300が囲んで閉じられると、すなわちその先端部312、322が開位置から閉位置へ変位すると、本体110、120のフランジ113、123にクランプ300のリブ314、324が接触して軸方向に圧力APRを加える。これらの圧力APRがフランジ113、123を通してテーパー面118、128へ伝わり、1次シール面210に対する圧力、すなわち1次シール圧SP1を生じさせる。こうして、テーパー面118、128と1次シール面210との間に1次シール領域、すなわち、それらの面の隙間への流体の浸入を防ぐのに必要なレベルにまで1次シール圧SP1が達する領域が形成される。テーパー面118、128と1次シール面210とが軸方向(図では左右方向)に対して傾斜しているので、1次シール領域の面積が十分に広い。
【0020】
ガスケット200には、1次シール圧SP1に起因する変形により1次シール面210が内周方向へ変位し、内周面230の縁部231が流路CHNへ迫り出すおそれがある。この迫り出しの量、すなわちガスケット200の内径の減少幅ΔIRが過大であると、それに伴って流路CHNの壁に生じる段差が過大となり、その近傍の流れに過大な淀みが生じかねない。淀みでは、流体内の溶質または異物等が凝固して微粒子(パーティクル)として蓄積しやすい。これらの微粒子が下流の配管系統および製品等に流れ着いて悪影響を与えることを阻止するには、流路CHNの壁の段差を可能な限り抑え、過大な淀みの発生を防ぐ必要がある。したがって、ガスケット200の内径の減少幅ΔIRが許容上限以下に抑えられるように、クランプ300が閉じられたときにも本体110、120のフランジ113、123の隙間GAPが、軸方向(図では左右方向)において所定の間隔ΔGPに維持される。この間隔ΔGPは、仮にフランジ113、123が互いに接触して隙間GAPを塞いだとしても、そのときに初めてガスケット200の内径の減少幅ΔIRが許容上限に達するように設計されている(図6が示す2点鎖線参照)。
【0021】
フランジ113、123の間隔ΔGPを上記のように設計することには更に次の利点がある。ガスケット200の形状の経年変化に伴い、増し締め目的でクランプ300が、軸方向におけるリブ314、324の間隔の狭いものに置き換えられる場合がある。この場合、リブ314、324の間隔を、フランジ113、123が互いに接触する距離以上に狭めることはできない。したがって、増し締めによっても、ガスケット200の内径の減少幅ΔIRに許容上限を超えさせようがない。また、増し締めの際にフランジ113、123が互いに接触すれば、ガスケット200の内径の減少幅ΔIRが許容上限に達していることがわかる。それ故、増し締めによるフランジ113、123同士の接触をガスケット200の交換の目安にすることができる。
【0022】
図7の(a)は、接続直前の第1本体110とガスケット200との縦断面の部分拡大図であり、図7の(b)は、互いに接続されている第1本体110とガスケット200との縦断面の部分拡大図である。図7の(a)が示すように、第1本体110からガスケット200が分離されている状態では、第1本体110の環状溝116よりもガスケット200の張出部215は外径が広い。したがって、図7の(b)が示すように、第1本体110にガスケット200が接続されるには、環状溝116にガスケット200が圧入されなければならない。その結果、環状溝116の外周側の境界面119によってガスケット200の2次シール面220が内周方向へ圧迫され、2次シール圧SP2を受ける。環状溝116にガスケット200が圧入される前における外周側の境界面119と2次シール面220との間の外径差、すなわち圧入代ΔPFにより、2次シール圧SP2が、外周側の境界面119と2次シール面220との隙間への流体の浸入を防ぐのに必要なレベルに確保される。こうして、外周側の境界面119と2次シール面220との間に2次シール領域が形成される。
【0023】
好ましくは、環状溝116からガスケット200が分離されている状態で、径方向(図では上下方向)における張出部215の高さHEXは、1次シール面210の高さHPSの0.2倍以上5倍以下、更に好ましくは3倍以下に設計されている。この程度に1次シール面210が2次シール面220から離れていれば、2次シール圧SP2が1次シール面210までには伝わらないので、2次シール圧SP2に起因する1次シール面210の内周方向への変位が防止される。一方、1次シール面210から2次シール面220までの距離が上記の程度であれば、継手100が径方向には嵩張らない。
[実施形態の利点]
【0024】
本発明の上記の実施形態による継手100では、本体110、120の環状溝116、126のテーパー面118、128とガスケット200の1次シール面210との間に1次シール領域が形成されるだけでなく、環状溝116、126の外周側の境界面119、129とガスケット200の2次シール面220との間に2次シール領域も形成される。したがって、シール領域の総面積が十分に広い。一方、2次シール面220はガスケット220の軸方向における中央部201に限られるので、たとえば特許文献4-6に開示されているガスケットの環状突起と本体の環状溝との組み合わせがシールに利用される構造に比べ、本体110、120の開口部112、122に必要とされる体積が小さい。こうして、継手100は、シール性を高く保ったまま、更なる小型化が可能である。
【0025】
好ましくは、環状溝116、126からガスケット200が分離されている状態では、径方向における張出部215の高さHEXが1次シール面210の高さHPSの0.2倍以上5倍以下、更に好ましくは3倍以下に設計されている。これにより、継手100を径方向において嵩張らせることなく、2次シール圧SP2を1次シール面210までには伝わらないようにできるので、2次シール圧SP2に起因する1次シール面210の内周方向への変位を防止できる。
【0026】
好ましくは、クランプ300が閉じられても本体110、120のフランジ113、123の隙間GAPが軸方向において所定の間隔ΔGPに維持される。この間隔ΔGPは、仮にフランジ113、123が互いに接触して隙間GAPを閉じたとしても、そのときに初めてガスケット200の内径の減少幅ΔIRが許容上限に達するように設計される。さらに、増し締め目的でクランプ300が軸方向におけるリブ314、324の間隔の狭いものに置き換えられても、その間隔を、フランジ113、123が互いに接触する距離以上に狭めることはできない。したがって、ガスケット200の内径の減少幅ΔIRに許容上限を超えさせようがない。また、増し締めによるフランジ113、123同士の接触をガスケット200の交換の目安にすることができる。
[変形例]
【0027】
(1)図1図6が示す継手100の全体、および各部の形状は一例に過ぎない。たとえば、本体110、120、またはクランプ300は筒状であればよく、ガスケット200は環状であればよい。これらの横断面は円に限らず、楕円であっても、多角形であってもよい。クランプ300の先端部312、322を閉位置に固定する構造も多様でありうる。たとえば、枠部331と凸部332とのいずれの周も矩形には限られず、曲線を含む形状であってもよい。
【0028】
(2)互いに接続された本体110、120をクランプ300で締め付けることは、発明にとって必須ではない。連結部材は、互いに接続された本体110、120を締め付ける周知の構造であれば、クランプ300以外も代替可能である。たとえば、本体110、120のフランジ113、123を互いにボルトで固定してもよく、本体110、120の全体をユニオンナットで囲んで締め付けてもよい。
【0029】
(3)ガスケット200では、中央部201に張出部215が設けられているので、2次シール圧SP2が1次シール面210までには伝わらない。しかし、2次シール圧SP2に対し、1次シール面210が内周方向へは変位しない程度の剛性を保っている場合、張出部215が省略されてもよい。すなわち、1次シール面210の最大外径と2次シール面220の外径とが等しく設計されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
100 継手
110 第1本体
111 第1本体の一端部
112 第1本体の開口部
113 第1本体のフランジ
114 第1本体の開口端面
116 第1本体の環状溝
117 第1本体の環状溝の円環面
118 第1本体の環状溝のテーパー面
119 第1本体の環状溝の外周側の境界面
120 第2本体
121 第2本体の一端部
122 第2本体の開口部
123 第2本体のフランジ
124 第2本体の開口端面
126 第2本体の環状溝
127 第2本体の環状溝の円環面
128 第2本体の環状溝のテーパー面
129 第2本体の環状溝の外周側の境界面
200 ガスケット
201 ガスケットの中央部
210 1次シール面
215 張出部
220 2次シール面
300 クランプ
310 第1部材
311 第1部材の基端部
312 第1部材の先端部
313 ヒンジの穴
320 第2部材
321 第2部材の基端部
322 第2部材の先端部
323 ヒンジの軸
331 枠部
332 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7