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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177735
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20241217BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20241217BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03G15/00 303
B41J2/525
B41J29/393 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096039
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 慶太
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AP04
2C061AP07
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AR03
2C061AS02
2C061BB08
2C061BB10
2C061BB27
2C061CH01
2C061CH03
2C061HH03
2C061HH06
2C061HJ10
2C061HK10
2C061HK15
2C061HK19
2C061KK14
2C061KK15
2C061KK22
2C061KK25
2C061KK27
2C061KK32
2H270LA15
2H270LA18
2H270LA22
2H270LA29
2H270LD03
2H270LD09
2H270MA01
2H270MA08
2H270MA13
2H270MA34
2H270MB11
2H270MB27
2H270MB28
(57)【要約】
【課題】画像形成装置により形成される画像の濃度を適切に制御する。
【解決手段】画像形成装置100は、画像形成条件に基づき画像を形成する画像形成エンジン101と、画像形成エンジン101によりパターン画像が形成される中間転写体と、中間転写体上のパターン画像を読み取る画像濃度センサ230と、画像濃度センサ230によるパターン画像の読取結果に基づいて画像形成条件を生成する画像形成条件生成部370と、時間の経過に伴う画像濃度の変化に関するデータを決定し、画像形成条件をデータに基づき更新する予測濃度算出部305と、を備える。画像形成エンジン101は、予測濃度算出部305により画像形成条件が更新された後にパターン画像を形成する条件が満たされた場合に、予測濃度算出部305による更新前の画像形成条件生成部370により生成された画像形成条件に基づきパターン画像を形成する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成装置であって、
画像形成条件に基づき画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によりパターン画像が形成される像担持体と、
前記像担持体上の前記パターン画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段による前記パターン画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を生成する生成手段と、
時間の経過に伴う画像濃度の変化に関するデータを決定し、前記画像形成条件を前記データに基づき更新する更新手段と、を備え、
前記画像形成手段は、前記更新手段により前記画像形成条件が更新された後にパターン画像を形成する条件が満たされた場合に、前記更新手段による更新前の前記生成手段により生成された前記画像形成条件に基づき前記パターン画像を形成することを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記更新手段は、前記画像形成装置の環境条件の変動に基づいて前記データを決定することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記更新手段は、前記画像形成装置の構成部品の状態に基づいて前記データを決定することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成手段は、前記更新手段による更新前の前記画像形成条件に基づいて印刷ジョブによる画像形成を行うことを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記更新手段による前記画像形成条件の更新は、前記生成手段による前記画像形成条件の生成よりも高頻度で行われることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体に形成された前記画像をシートに転写する転写手段と、
前記シートに転写された前記画像を該シートに定着させる定着手段と、
前記シートに形成された画像を読み取ることができる第2読取手段と、
前記パターン画像が形成されたシートの前記第2読取手段による読取結果に基づいて生成した画像形成条件により、前記生成手段により生成された前記画像形成条件と前記更新手段により更新された前記画像形成条件を更新する第2更新手段と、をさらに備えることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記第2更新手段により更新された画像形成条件に基づいて前記像担持体に形成されたパターン画像の前記読取手段による読取結果から前記画像形成条件の目標値を生成することを特徴とする、
請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記更新手段は、前記第2更新手段により更新された画像形成条件に基づいて前記像担持体に形成されたパターン画像の前記読取手段による読取結果から、前記データの基準値を生成することを特徴とする、
請求項6記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する、プリンタ、複写機、複合機、ファクシミリ装置等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、環境変動による短期的な画像形成条件の変動や、構成部品等の経時変化による長期的な画像形成条件の変動により、シートに印刷する画像の品質(画像濃度、階調等)を維持できなくなることがある。環境変動は、画像形成装置の内外の環境条件(温度、湿度等)の変動である。構成部品等は、画像形成に直接関与する像担持体や現像剤である。
【0003】
画像形成装置は、画像濃度や階調を調整するために、様々な変動要因に応じて画像形成条件を随時補正する必要がある。画像濃度や階調の変化を適切に補正する処理は、一般に「キャリブレーション」とよばれる。例えば画像形成装置は、キャリブレーション用のパターン画像を像担持体に形成し、このパターン画像の読取結果に基づいて画像形成条件を補正することで、画像濃度や階調を調整する(キャリブレーションを行う)。
【0004】
特許文献1に開示される画像形成装置は、装置の状態や環境条件に基づいて、パターン画像を形成せずにキャリブレーションを行う。この場合、画像形成装置は、階調のキャリブレーション用のパターン画像の読取結果である階調パターン情報を装置の状態や環境条件に基づいて予測し、予測した階調パターン情報に基づいてキャリブレーションを行う。階調パターン情報の予測によるキャリブレーション(予測制御)は、画像の形成及び画像の読み取りが不要であるために、例えば連続した印刷の実行中であっても実行可能である。また、キャリブレーションによる現像剤の消費が無いために、高頻度で行うことができる。しかし階調パターン情報の予測によるキャリブレーション(予測制御)は、予測方法、機械学習に用いる学習データの数、及び環境条件の網羅度等に依存しているために、必ずしも高精度の結果が得られるとは限らない。
【0005】
パターン画像を用いたキャリブレーション(実測制御)は、補正精度が高いが、生産性の低下や現像剤の消費量の増加につながる。そのため、実測制御は頻繁に実行することができない。実測制御と予測制御の両方を採用することで、生産性を維持しつつ現像剤の消費量を抑えながらキャリブレーションを行うことができる。この場合、予測制御が実測制御よりも高頻度で行われる。実測制御は予測制御に比べて実行頻度が低いものの定期的に行われる。
【0006】
また、予測制御が適切にできていない場合であっても、定期的にパターン画像を用いたキャリブレーション(実測制御)を行うことで、画像形成条件が適切にリセットされる。それ以降、実測制御でリセットされた画像形成条件を基準として、予測制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-74574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実測制御と予測制御の両方を採用する場合、いずれの場合も同じ画像形成条件が更新される。そのため、パターン画像を形成する際に、予測制御で更新された画像形成条件に基づいてパターン画像が形成される。
【0009】
予測制御の予測精度が低い場合、予測結果に誤差が生じる。この誤差が蓄積すると、画像形成条件が最適な条件から大きく外れてしまう可能性がある。このような画像形成条件でパターン画像を用いたキャリブレーション(実測制御)を行うと、実測制御が実行される前後の濃度変化が顕著に画像に現れてしまったり、画像濃度を目標とする濃度に安定させるまでに時間がかかってしまう可能性がある。これにより、実測制御と予測制御の両方が実行される画像形成装置において、予測制御の予測精度が低い場合には画像の濃度を適切に制御することができない可能性がある。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、画像形成装置により形成される画像の濃度を適切に制御することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成装置であって、画像形成条件に基づき画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によりパターン画像が形成される像担持体と、前記像担持体上の前記パターン画像を読み取る読取手段と、前記読取手段による前記パターン画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を生成する生成手段と、時間の経過に伴う画像濃度の変化に関するデータを決定し、前記画像形成条件を前記データに基づき更新する更新手段と、を備え、前記画像形成手段は、前記更新手段により前記画像形成条件が更新された後にパターン画像を形成する条件が満たされた場合に、前記更新手段による更新前の前記生成手段により生成された前記画像形成条件に基づき前記パターン画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像形成装置により形成される画像の濃度を適切に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コントローラの説明図。
図2】画像形成装置の構成図。
図3】スキャナの構成図。
図4】パターン画像の例示図。
図5】コントローラの処理説明図(比較例)。
図6】コントローラの処理説明図。
図7】コントローラの処理説明図。
図8】実測制御を表すフローチャート。
図9】(a)、(b)は、自動階調補正及び実測制御を表すフローチャート。
図10】予測制御を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明は電子写真方式で行うが、制御の特徴的な点、特に請求項で記載した事項は、インクジェットプリンタや昇華型プリンタなどでも同じ課題があり、かつ以下で述べる方法を用いて課題を解決することができる。よって各画像形成装置においても上記請求項は特許の請求の範囲内と主張する。
【0015】
(画像形成装置の構成)
図1は、画像形成装置の全体動作を制御するコントローラの説明図である。コントローラ300は、操作パネル191、外部メモリ181、画像形成エンジン101、及びスキャナ171が接続される。
【0016】
コントローラ300は、入出力バッファ301、入出力I/F部309、及びメモリI/F部310、及びスキャナI/F部318を備える。コントローラ300は、第1CPU(Central Processing Unit)313、ストレージ302、RAM(Random Access Memory)309、及びROM(Read Only Memory)380を備える。コントローラ300は、RIP(Raster Image Processor)部312、色処理部313、階調補正部314、擬似中間調処理部315、及びエンジンI/F部316を備える。コントローラ300のこれらの各構成要素は、システムバス317に接続されて、相互にデータの送受信が可能である。
【0017】
入出力I/F部309は、操作パネル191との間の通信を制御する。操作パネル191は、入力インタフェース及び出力インタフェースを備えるユーザインタフェースである。入力インタフェースは、各種キーボタン、タッチパネル等である。出力インタフェースは、ディスプレイ、スピーカ等である。ユーザは、操作パネル191の入力インタフェースにより、画像形成装置100に印刷指示や補正処理の実行指示等の入力を行うことができる。ユーザは、操作パネル191の出力インタフェースにより、画像形成装置の動作状態や通知等を確認することができる。入出力I/F部309は、操作パネル191により入力される指示等を受け付け、且つ操作パネル191により各種情報を出力する。
【0018】
メモリI/F部310は、外部メモリ181との間の通信を制御する。外部メモリ181は、印字データや様々な画像形成装置100の情報等の保存に利用される。入出力バッファ301は、入出力I/F部309及びメモリI/F部310により送受信されるデータの一時保管等を行う。スキャナI/F部318は、画像読取装置であるスキャナ171との間の通信を制御する。スキャナ171は、スキャナI/F部318を介してコントローラ300から原稿の読み取りを指示されることで原稿の画像を読み取り、画像データを生成する。スキャナ171で生成された画像データは、RAM307に保存される。スキャナ171の構成の詳細は後述する。
【0019】
第1CPU311は、ROM380に格納されるブートプログラムを実行することで起動し、ストレージ302に格納されるコンピュータプログラム(制御プログラム)を実行することで、画像形成装置100の動作を制御する。RAM307は、第1CPU311がコンピュータプログラムを実行する際の作業領域を提供する。RAM307は、制御コード、データの解釈や印刷に必要な計算、或いは印字データの処理のために利用される。ストレージ302は、制御プログラムの他に制御データを格納する。ストレージ302は、第1CPU311に実行されることで、画像情報生成部303、最大濃度条件決定部304、予測濃度算出部305、及び階調補正テーブル生成部306として機能するコンピュータプログラムを格納する。ストレージ302は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0020】
画像情報生成部303は、外部のコンピュータから取得したデータに応じて各種の画像オブジェクトを生成する。最大濃度条件決定部304は、最大濃度調整を行う。予測濃度算出部305は、画像形成エンジン101に設けられる後述のセンサ340の検出結果(信号値)に基づいて画像濃度を予測する。階調補正テーブル生成部306は、画像の階調補正に用いられる階調補正テーブル(γLUT(Look Up Table))を生成する。RAM307は、最大濃度条件決定部304、予測濃度算出部305、及び階調補正テーブル生成部306による処理結果を一時格納するテーブル格納部308を備える。
【0021】
RIP部312は、画像情報生成部303で生成された画像オブジェクトをビットマップ画像に展開した画像データを生成する。色処理部313は、画像データに対する多次元の色変換処理を行う。階調補正部314は、γLUTに基づき色変換処理後の画像データを変換する。階調補正部314は各色成分の画像データを色成分ごとに対応するγLUTに基づき変換する。γLUTは画像データを変換する変換条件として機能する。擬似中間調処理部315は、階調補正後の画像データに対するディザマトリクスや誤差拡散法等の擬似中間調処理を行う。
【0022】
RIP部312、色処理部313、階調補正部314、及び擬似中間調処理部315により処理された画像データは、エンジンI/F部316を介して画像形成エンジン101へ送信される。画像形成エンジン101は、コントローラ300から取得する画像データに基づいて画像を形成する。
【0023】
画像形成エンジン101は、第2CPU102、センサ340、タイマ350、カウンタ360、及び画像濃度センサ230を備える。第2CPU102は、画像形成条件に基づき、シートへの画像形成処理(印刷処理)を制御する。センサ340、タイマ350、及びカウンタ360から出力される信号値は、予測濃度算出部305による画像濃度の予測処理に用いられる。センサ340は、例えば画像形成装置100の内部に設けられ、画像形成装置100の環境情報(温度、湿度等)を検出する環境センサである。タイマ350は、例えば印刷間隔等の時間の計測に用いられる。カウンタ360は、例えば印刷したシートの枚数の計数に用いられる。このようにセンサ340、タイマ350、及びカウンタ360は、画像形成装置100の環境条件を検出する検出部であり、それぞれから出力される信号値は、画像形成時の環境条件の変化を表す。画像濃度センサ230については後述する。
【0024】
印刷処理は、RIP部312により得られた画像データを使用する場合に限定されず、複写処理であればスキャナ171が原稿を読み取ることで生成された画像データが使用される。また、キャリブレーション用のパターン画像を印刷する場合には、第1CPU311がRAM307上に生成した画像データ(検知用画像データ)を使用して印刷が行われる。
【0025】
図2は、画像形成装置100の構成図である。画像形成装置100は、画像形成エンジン101及びコントローラ300を内蔵する筐体201を備える。画像形成エンジン101は、図1で説明した構成の他に画像形成のための機構を備える。画像形成のための機構による印字プロセス処理(例えば画像形成処理、給紙処理等)は、第2CPU102により制御される。筐体201の上部には、スキャナ171及び操作パネル191が設けられる。
【0026】
本実施形態の画像形成のための機構は、光学処理機構110、定着処理機構120、給紙処理機構130、及び搬送処理機構140を含む。光学処理機構110は、静電潜像の形成、静電潜像の顕像化、及び顕像のシートSへの転写を行う。定着処理機構は、転写後の顕像をシートSに定着させる。給紙処理機構は、シートSの給紙を行う。搬送処理機構は、給紙されたシートSの搬送を行う。
【0027】
光学処理機構110は、画像形成部220、221、222、223、中間転写体252、及び二次転写ローラ251を備える。複数の画像形成部220、221、222、223は、同じ構成であり、それぞれ異なる色の画像形成に用いられる。本実施形態では、画像形成部220は、イエロー(Y)の画像形成に用いられる。画像形成部221は、マゼンタ(M)の画像形成に用いられる。画像形成部222は、シアン(C)の画像形成に用いられる。画像形成部223は、ブラック(K)の画像形成に用いられる。
【0028】
画像形成部220、221、222、223は、それぞれ、感光ドラム205、帯電器211、レーザスキャナ207、及び現像器212を備える。感光ドラム205は、表面に感光層を有する感光体であり、ドラム軸を中心に図中反時計回り方向に回転する。帯電器211は、回転する感光ドラム205の表面を一様に帯電させる。レーザスキャナ207は、帯電した感光ドラム205の表面にレーザ光を照射することで、感光ドラム205の表面に静電潜像を形成する。
【0029】
レーザスキャナ207は、レーザ光を出力する光源、コントローラ300から取得する画像データに基づいて光源から出力されるレーザ光のオン、オフを制御するレーザドライバ、及び回転多面鏡を含むレーザ出力部208と、反射ミラー209と、を備える。光源から出力されたレーザ光は、回転多面鏡及び反射ミラー209により反射されて、感光ドラム205の表面を照射する。このとき回転多面鏡が回転することで、レーザ光は、一方向への移動を繰り返し行う。レーザ光が一方向に移動することで、感光ドラム205の表面のレーザ光の照射位置が一方向に移動する。これにより1ライン分の静電潜像が感光ドラム205の表面上に形成される。
【0030】
本実施形態では、感光ドラム205の表面のレーザ光の照射位置の移動方向は、感光ドラム205の軸方向である。そのため感光ドラム205の軸方向が主走査方向となる。レーザ光が主走査方向への移動を繰り返し行い、且つ感光ドラム205が回転することで、感光ドラム205の表面には複数のラインの静電潜像が繰り返し形成される。その結果、感光ドラム205の表面には、主走査方向及び主走査方向に交差する副走査方向に広がる静電潜像が形成される。
【0031】
現像器212は、対応する色の現像剤(ここではトナー)により静電潜像をトナー像に顕像化する。これにより画像形成部220の感光ドラム205にはイエローのトナー像が形成される。画像形成部221の感光ドラム205にはマゼンタのトナー像が形成される。画像形成部222の感光ドラム205にはシアンのトナー像が形成される。画像形成部223の感光ドラム205にはブラックのトナー像が形成される。
【0032】
各感光ドラム205上のトナー像は、トナーとは逆極性の電圧が印加された中間転写体252上に転写される。中間転写体252は、図中時計回り方向に回転する無端ベルト状の像担持体である。各感光ドラム205の位置と中間転写体252の回転速度との関係に応じて順次転写が行われることで、各色のトナー像が中間転写体252に重畳して転写される。これによりフルカラーのトナー像が中間転写体252に担持される。なお、白黒画像を形成する際には、ブラックの画像を形成する画像形成部223のみが動作して、中間転写体252には、ブラックの画像が転写される。中間転写体252は、回転することで、転写されたトナー像を二次転写ローラ251へ搬送する。
【0033】
中間転写体252の近傍で、画像形成部223よりも中間転写体252の回転方向の下流側には、画像濃度センサ230が配置される。画像濃度センサ230は、中間転写体252に担持されたキャリブレーション用のパターン画像を読み取る読取装置である。画像濃度センサ230によるパターン画像の読取結果は、画像形成エンジン101により形成される画像の濃度を調整するためのキャリブレーションに用いられる。
【0034】
給紙処理機構130は、シートSを収納する収納庫210を含む。給紙処理機構130は、収納庫210に収納されるシートSを1枚ずつ給紙して、搬送処理機構140へ搬送する。搬送処理機構140は、給紙処理機構130から給紙されたシートSを二次転写ローラ251へ搬送する。その際に搬送処理機構140は、シートSの斜行を補正し、中間転写体252に担持されたトナー像が二次転写ローラ251へ搬送されるタイミングに合わせて、シートSを二次転写ローラ251へ搬送する。
【0035】
二次転写ローラ251は、シートSを中間転写体252に圧接すると同時に、トナーとは逆極性の電圧が印加される。これにより二次転写ローラ251は、中間転写体252が担持する各色のトナー像をシートSに一括して転写する。二次転写ローラ251は、トナー像が転写されたシートSを定着処理機構120へ搬送する。
【0036】
定着処理機構120は、定着器260を含む。定着器260は、少なくとも一方が熱源を有する2つのローラを備える。定着器260は、トナー像が転写されたシートSを2つのローラで挟持搬送する。2つのローラは、トナー像を熱源により加熱し且つ加圧することで、トナー像をシートSに溶融定着させる。これによりシートSの一方の面に画像が印刷される。片面印刷の場合、シートSは定着器260から排紙部280へ排出される。
【0037】
両面印刷の場合には、シートSは、反転部270を介して再度二次転写ローラ251へ搬送される。反転部270によりシートSの画像の印刷面が反転されるために、二次転写ローラ251では、他方の面にトナー像が転写される。その後、シートSは定着器260によりトナー像が定着され、排紙部280へ排出される。以上のようにシートSへの印刷が行われる。
【0038】
図3は、スキャナ171の構成図である。スキャナ171は、自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)413と、読取部414と、を備える。ADF413は、原稿が載置される原稿トレイ400と、ピックアップローラ404と、搬送ローラ406と、排紙ローラ409と、排紙トレイ410とを有する。ADF413は、原稿トレイ400に載置された原稿を、ピックアップローラ404及び搬送ローラ406により搬送し、排紙ローラ409により排紙トレイ410へ排紙する。原稿は、搬送ローラ406から排紙ローラ409へ搬送される間に読み取られる。原稿が搬送される搬送路には、原稿通過検知センサ405が設けられる。
【0039】
原稿トレイ400には、原稿の有無を検知するための原稿有無センサ402、2つの原稿ガイド401、及び原稿サイズ検知センサ403が設けられている。原稿有無センサ402は、原稿トレイ400の基端部分に設けられる。2つの原稿ガイド401は、原稿の搬送方向に交差する方向(幅方向)に、平行になるように設けられる。原稿ガイド401は、原稿トレイ400に積載された原稿の幅方向を規制する。原稿サイズ検知センサ403は、原稿の搬送方向の長さ(原稿長)を検知するために用いられる。原稿サイズ検知センサ403が原稿トレイ400に積載された原稿を検知するか否かにより、原稿長が原稿トレイ400の基端から原稿サイズ検知センサ403の位置までの長さよりも長いか否かが検知される。
【0040】
ピックアップローラ404は、原稿トレイ400に積載された原稿をADF413内部の搬送路へ1枚ずつ供給するためのローラである。ピックアップローラ404により供給された原稿は、原稿通過検知センサ405により検知される。原稿通過検知センサ405による原稿の検知時間に基づいて、1枚の原稿の通過終了が判定される。搬送ローラ406は、ピックアップローラ404により供給された原稿を搬送する。排紙ローラ409は、搬送ローラ406により搬送されてきた原稿を排紙トレイ410へ排出する。なお、図示は省略するが、搬送ローラ406、ピックアップローラ404、及び排紙ローラ409は、すべてステッピングモータを駆動源として駆動される。
【0041】
読取部414は、筐体のADF413側の面に流し読みガラス407及び原稿台ガラス412を備え、筐体内部にセンサユニット411を備える。センサユニット411は、CIS(Contact Image Sensor)408を有する。流し読みガラス407は、上部をADF413により搬送される原稿が通過する。センサユニット411は、流し読みガラス407の直下に位置し、流し読みガラス407上を通過する原稿を読み取る。
【0042】
センサユニット411は、CIS408の長手方向が原稿の搬送方向に対して交差するように配置される。センサユニット411は、原稿の搬送方向に交差する方向を主走査方向として原稿を読み取る。原稿の搬送方向が副走査方向となる。センサユニット411は、副走査方向に移動可能である。流し読みガラス407は、副走査方向に所定の長さを有している。センサユニット411は、流し読みガラス407の副走査方向の範囲内の所定の位置にCIS408を移動させて原稿を読み取ることができる。
【0043】
CIS408は、原稿に、流し読みガラス407を介して主走査方向に直線状の光を照射することができる光源を有する。光源は、例えばLED(Light Emitting Diode)のような発光素子を主走査方向に複数直線状に並べた構成である。CIS408は、CCD(Charge Coupled Device)等の光電変換素子を主走査方向に複数並べて構成される。光源から出射されて原稿で反射された光は、光電変換素子に受光される。光電変換素子は、受光した光を電気信号に変換する。
【0044】
CIS408は、光電変換素子で生成された電気信号を一旦格納するメモリ及びCIS408の動作を制御するASIC(application specific integrated circuit)を有する。ASICは、光源及び光電変換素子による読取動作を制御する。また、ASICは、メモリに格納された電気信号に所定の処理を行い、読取画像を表す画像データを生成する。以上のようにCIS408は原稿の画像を読み取る読取動作を行うことができる。
【0045】
センサユニット411は、ADF413により搬送される原稿を流し読みガラス407を介して読み取る他に、原稿台ガラス412に載置された原稿を読み取ることができる。原稿台ガラス412に載置された原稿を読み取る場合、センサユニット411は、副走査方向に移動しながらCIS408による読取動作を行うことになる。読取動作は、流し読みガラス407を介してADF413により搬送される原稿の画像を読み取る場合と同様である。
【0046】
(キャリブレーション)
本実施形態の画像形成装置100は、キャリブレーションを以下の3通りの処理より実行可能である。
1つ目の処理では、画像形成装置100は、中間転写体252上にキャリブレーション用(階調補正用)のパターン画像(検知用画像)を形成し、画像濃度センサ230によりこのパターン画像を読み取る。画像形成装置100は、画像濃度センサ230によるパターン画像の読取結果に基づいてγLUTを生成(更新)して階調補正を行う。1つ目の処理を、以下、「実測制御」という。
2つ目の処理では、画像形成装置100は、温度や湿度等の環境条件の変動や、構成部品の状態に基づいて、仮に画像形成装置100がシートSにパターン画像を形成した場合の該パターン画像の画像濃度値を予測する。画像形成装置100は、予測結果である画像濃度値に基づいてγLUTを更新して階調補正を行う。2つ目の処理を、以下、「予測制御」という。
3つ目の処理では、画像形成装置100は、シートSにキャリブレーション用(階調補正用)のパターン画像を印字し、スキャナ171により、シートSに印字したパターン画像を読み取る。画像形成装置100は、スキャナ171によるパターン画像の読取結果に基づいて階調補正を行う。
【0047】
図4は、本実施形態の実測制御において中間転写体252上に形成されるパターン画像(検知用画像)の例示図である。パターン画像は、それぞれ階調(画像濃度)が異なる複数(ここでは10個)のパッチ画像から構成される。各画像濃度のパッチ画像は、中間転写体252の回転により順次、画像濃度センサ230の検知位置を通過する。画像濃度センサ230は、検知位置を通過するパッチ画像を読み取って、画像濃度値を検出する。
【0048】
図5は、比較例としての、キャリブレージョン(実測制御及び予測制御)を行うためのコントローラの処理説明図である。画像形成エンジン101は、図1で説明した構成の他に、画像形成条件生成部370を備える。第2CPU102は、パッチ出力部501及びパッチ読取部502を含む。パッチ出力部501は、パターン画像の形成を行うために画像形成エンジン101を制御する。パッチ読取部502は、画像濃度センサ230によるパターン画像の読取結果を取得する。画像形成条件生成部370は、コントローラ300から取得したγLUT503の値等を用いた画像形成条件を生成する。RAM307は、図1で説明した構成の他に、γLUT(Look Up Table)503、実測制御ターゲット504、及び予測基準濃度505を保持する。
【0049】
実測制御を行う場合、画像形成エンジン101の第2CPU102(パッチ出力部501)は、コントローラ300から取得するγLUT503に基づく画像形成条件で、画像形成エンジン101によりパターン画像のトナー像を中間転写体252に形成する。第2CPU102(パッチ読取部502)は、画像濃度センサ230により読み取った中間転写体252上のトナー像の画像濃度を、コントローラ300の階調補正テーブル生成部306に通知する。第1CPU311は、予測基準濃度505を第2CPU102から通知されたトナー像の画像濃度の検出結果(画像濃度データ)に基づいて更新する。予測基準濃度505は、予測制御の際に画像濃度の予測値(濃度予測値)を取得する際の基準値となる。
【0050】
第1CPU311は、階調補正テーブル生成部306により、通知された画像濃度データ、RAM307が保存する現在のγLUT503、及び実測制御ターゲット504に基づいてγLUT503を更新する。実測制御ターゲット504は、実測制御によるγLUTの目標値である。第1CPU311は、印刷ジョブに応じてシートSに通常の印刷を行う場合にγLUT503を参照して階調補正部314により階調補正を行う。
【0051】
予測制御を行う場合、画像形成エンジン101の第2CPU102は、パターン画像の画像濃度値の予測に用いる予測要素をコントローラ300へ通知する。本実施形態の予測要素は、センサ340の検知結果、カウンタ360のカウント値、及び画像形成条件生成部370で生成された画像形成条件等の情報である。コントローラ300の第1CPU311は、通知された予測要素及び実測制御で更新した予測基準濃度505に基づいて、予め学習済の予測モデルに従って予測濃度算出部305により予測濃度値を求めて階調補正テーブル生成部306に通知する。第1CPU311は、階調補正テーブル生成部306により、実測制御と同様にしてγLUT503を更新する。
【0052】
以上のように、実測制御と予測制御の両方で、最終的に同じγLUT503が更新される。即ち、予測制御で更新されたγLUT503を使用して実測制御で用いられるパターン画像が形成される。実測制御と予測制御の両方を行う構成では、短時間で実行可能でありトナー消費が無い予測制御による補正が実測制御に比べて高頻度に行われ、補正精度の高い実測制御が予測制御に比べて低頻度で行われる。しかし予測制御は必ずしも高精度の補正ができるとは限らない。そのため、定期的な実測制御により、γLUT503及び以降の予測制御の予測基準濃度505を適切な状態に戻す必要がある。
【0053】
予測制御で高精度の予測ができない場合としては、例えば学習したデータ外の環境で画像形成装置100が運用される場合や、学習データ数が十分でない場合がある。このような状況下で頻繁に予測制御を行うことで、予測のずれが累積し、γLUT503の値が適切な値から徐々に乖離することが想定される。上述の通り画像形成装置100は、実測制御を行うことでγLUT503を適切な状態に戻そうとする。しかし、適切ではないγLUT503を用いてパターン画像が形成されることで、実測制御を行ってもγLUT503の値が適切な値に戻らない。
【0054】
第1の問題は、以下の通りである。適切ではないγLUT503を使用する場合、形成されたパターン画像の画像濃度が実測制御に適していない可能性がある。そのため、パッチ読取部502が検出したパターン画像の画像濃度は、実測制御ターゲット504から乖離した値になる。この場合、補正によるγLUT503の変動量が大きくなるため、それに伴い誤差が大きくなる。
【0055】
第2の問題は、以下の通りである。実測制御を行って検出した画像濃度は、以降の予測制御のための予測基準濃度505として保存される。予測基準濃度505は、γLUT503が更新前の状態に基づくパターン画像から検出された画像濃度に基づいて更新される。そのため適切ではないγLUT503を使用した場合、予測基準濃度505が適切な値からずれて更新される。このような予測基準濃度505に基づいて予測した画像濃度値では、それ以降に高精度の画像濃度の予測ができなくなる可能性がある。
【0056】
第3の問題は、以下の通りである。実測制御では、検出した画像濃度値そのものを使用してγLUT503の更新を行うのではなく、フィードバック率を設け、画像濃度値とフィードバック率とにより得られる値に応じて補正量を抑えることができる。これは、実測制御が少ないパッチ画像数でも実行することができ、1個のパッチ画像で簡易的に補正する場合はパッチ画像数が多い場合と比べて精度が低いことを想定してフィードバック率を設け、徐々にγLUT503を更新することが望ましいためである。つまり、予測制御によってγLUT503が適切な状態からずれている状態でフィードバック率が低めの実測制御を行った場合、1回の実測制御ではγLUT503を適切な状態に更新することが困難である。
【0057】
本実施形態では、予測制御で十分な補正精度が得られない場合に発生するこれらの問題に対して、実測制御が予測制御の影響を受けないようにする。
【0058】
図6は、本実施形態のキャリブレージョン(実測制御及び予測制御)を行うためのコントローラの処理説明図である。図5の処理説明図(比較例)と比較して、以下の点が異なる。
・RAM307に、γLUT503に加えてγLUT506を設けている。
・階調補正テーブル生成部306がγLUT503及びγLUT506を更新する。
・階調補正テーブル生成部306が実測制御時にγLUT506を使用する。
【0059】
γLUT503は、通常の印刷時に階調補正部314が参照して階調補正を行う目的で使用される。γLUT506は、次回の実測制御でパッチ出力部501が参照して補正用のパターン画像(パッチ画像)を出力する目的で使用される。
【0060】
なお、RAM307上の各データは、ストレージ302に特定のタイミングで保存される。特定のタイミングとは、各データが更新されたタイミング、或いはシャットダウン処理時やスリープ状態に移行するタイミングである。ストレージ302に保存されたこれらのデータは、次回起動時にRAM307上に展開される。
【0061】
図7は、本実施形態の予測制御を行うためのコントローラの処理説明図である。図6の処理説明図とは、データの流れが異なる。予測制御では、実測制御に用いられるγLUT506は更新されず、γLUT503のみが更新される。階調補正テーブル生成部306が予測制御時に参照する補正時γLUTとしてγLUT503が使用される。これによりγLUT503は、予測制御により更新されて印刷ジョブに応じた通常の印刷に適用されるようになる。γLUT506は、更新されないため、次回の実測制御では予測制御の結果に影響されない状態で使用される。
【0062】
図8は、実測制御を表すフローチャートである。
【0063】
第1CPU311は、画像形成エンジン101に、実測制御で出力するパターン画像(パッチ画像)に使用するγLUT506から抜粋した値を通知する(S701)。この処理は、画像形成装置100の起動時或いはスリープ状態からの復帰時に一回行われる処理である。画像形成エンジン101は、通知されたデータを図示しないメモリに保存する。例えばシアンの画素値120で出力するパッチ画像を出力する場合、第1CPU311は、シアンのγLUTのインデックス120番目の値を画像形成エンジン101に通知する。これにより画像形成エンジン101は、当該値に基づいた画像濃度のパッチ画像を形成することができる。
【0064】
第1CPU311は、画像形成エンジン101により、実測制御の実行条件が満たされているか否かを判断する(S702)。実測制御の実行条件は、例えば前回の実測制御から印刷した枚数や、一定時間以上電源が遮断された後の起動時といった条件である。印刷枚数はカウンタ360によりカウントされており、カウント値が所定枚数以上であれば実行条件が満たされたと判断される。なお、実測制御の実行条件は、これ以外であってもよい。例えばタイマ350で計測される前回の実測制御からの経過時間が所定時間以上であれば実行条件が満たされていると判断されてもよい。
【0065】
実行条件が満たされていない場合(S702:N)、第1CPU311は、実行条件が満たされるまで待機する。実行条件が満たされている場合(S702:Y)、第1CPU311は、画像形成エンジン101により中間転写体252上にパターン画像を形成する(S703)。パターン画像は、S701の処理で画像形成エンジン101に通知されたγLUT506に基づいた階調(画像濃度)のパッチ画像を含んでいる。
【0066】
第1CPU311は、画像形成エンジン101のパッチ読取部502から、画像濃度センサ230が中間転写体252上のパターン画像を読み取った結果である画像濃度データを取得する(S704)。第1CPU311は、階調補正テーブル生成部306により、画像形成エンジン101から取得したが画像濃度データ、RAM307に保存される実測制御ターゲット504、及びγLUT506により、更新するべきγLUTを生成する補正演算を行う(S705)。γLUTの算出方法の詳細に関しては公知の技術であるため、ここでは詳細な説明は割愛する。
【0067】
第1CPU311は、階調補正テーブル生成部306により、S705の処理で生成した新たなγLUTによりγLUT506を更新する(S706)。γLUT506は、実測制御時に用いられるγLUTである。第1CPU311は、階調補正テーブル生成部306により、S705の処理で生成した新たなγLUTによりγLUT503を更新する(S707)。γLUT503は、印刷ジョブに応じて印刷を行う際に用いられるγLUTである。これにより、γLUT506とγLUT503の内容が同じになる。
【0068】
第1CPU311は、S704の処理で取得した画像濃度データを予測基準濃度として、RAM307の予測基準濃度505を更新する(S708)。第1CPU311は、実測制御で形成したパターン画像に対応したγLUT506から抜粋した値を画像形成エンジン101に通知する(S709)。以上により実測制御が終了する。実測制御により、γLUT503及びγLUT506の両方が更新される。次回の実測制御時には、S709の処理で通知されたγLUT506の値が用いられる。
【0069】
図9は、シートSを使用した階調補正である自動階調補正及び実測制御を表すフローチャートである。この処理では、実測制御ターゲット504が更新される。自動階調補正の詳細に関しては公知の技術であるため、ここでは詳細な説明は割愛する。図9(a)は、この処理の全体の流れを表す。
【0070】
第1CPU311は、操作パネル191から自動階調補正の実行指示を取得する(S801)。第1CPU311は、自動階調補正に用いる所定のパターン画像を、画像形成エンジン101によりシートSに印刷する(S802)。この際、第1CPU311は、自動階調補正に用いる所定のパターン画像の画像データに対して、色処理部313、階調補正部314、及び擬似中間調処理部315により所定の画像処理を行う。画像形成エンジン101は、画像処理後の画像データに基づいて印刷処理を行う。自動階調補正に用いる所定のパターン画像が印刷されたシートSは、ユーザにより原稿トレイ400又は原稿台ガラス412に載置される。所定のパターン画像は、例えば図4に示すパターン画像である。
【0071】
第1CPU311は、原稿トレイ400又は原稿台ガラス412に載置されたシートSのパターン画像を、操作パネル191からの指示に応じてスキャナ171により読み取る(S803)。なお、画像形成装置100が内部に測色センサを有する構成の場合、所定のパターン画像が印刷されたシートSは、該測色センサにより読み取られる。測色センサは、例えばシーSの搬送方向で定着器260の下流側で機外に排出されるまでの搬送経路に設けられる。
【0072】
第1CPU311は、スキャナ171によるパターン画像の読取結果(読取画像)を解析して、更新するべきγLUTを生成する補正演算を行う(S804)。第1CPU311は、S804の処理で生成した新たなγLUTによりγLUT506を更新する(S805)。γLUT506は、実測制御時に用いられるγLUTである。第1CPU311は、S804の処理で生成した新たなγLUTによりγLUT503を更新する(S806)。γLUT503は、印刷ジョブに応じて印刷を行う際に用いられるγLUTである。
【0073】
γLUT506、503を更新した第1CPU311は、階調補正テーブル生成部306が参照する実測制御ターゲット504を更新する処理を行う(S807)。図9(b)は、S807の実測制御ターゲット504を更新する処理を表す。
【0074】
第1CPU311は、画像形成エンジン101に、実測制御で出力するパターン画像(パッチ画像)に使用するγLUT506から抜粋した値を通知する(S808)。画像形成エンジン101は、図示しないメモリに通知されたデータを保存する。第1CPU311は、画像形成エンジン101によりγLUT506に基づいて中間転写体252上にパターン画像を形成する(S809)。
【0075】
第1CPU311は、画像形成エンジン101のパッチ読取部502から、画像濃度センサ230が中間転写体252上のパターン画像を読み取った結果である画像濃度データを取得する(S810)。第1CPU311は、取得した画像濃度データに基づいて実測制御ターゲットを生成する(S811)。第1CPU311は、例えばパターン画像が10個のパッチ画像を含んで構成される場合に、10個のパッチ画像の画像濃度値を線形補間することで拡張する。これにより、例えば1024個の画像濃度値を含む実測制御ターゲットを生成する。
【0076】
第1CPU311は、S811の処理で生成した新たな実測制御ターゲットにより実測制御ターゲット504を更新する(S812)。第1CPU311は、S810の処理で取得した画像濃度データにより予測基準濃度505を更新する(S813)。
【0077】
以上の処理により、自動階調補正時にはγLUT503、γLUT506、実測制御ターゲット504、及び予測基準濃度505が更新される。次回の実測制御時には、γLUT506の値が画像形成エンジン101に通知される。
【0078】
図10は、予測制御を表すフローチャートである。
【0079】
第1CPU311は、画像形成エンジン101により、予測制御の実行条件が満たされているか否かを判断する(S901)。予測制御の実行条件は、例えば前回の予測制御から印刷した枚数、所定の時間間隔、起動といった条件である。印刷枚数はカウンタ360によりカウントされており、カウント値が所定枚数以上であれば実行条件が満たされたと判断される。時間間隔はタイマ350で計測されており、前回の予測制御からの経過時間である。
【0080】
実行条件が満たされていない場合(S901:N)、第1CPU311は、実行条件が満たされるまで待機する。実行条件が満たされている場合(S901:Y)、第1CPU311は、画像形成エンジン101から予測制御に必要な予測要素を取得する(S902)。予測制御に必要な入力データは、例えばセンサ340の検知結果、タイマ350による時間、カウンタ360によるカウント値、及び画像形成条件生成部370による画像形成条件の少なくとも一つである。
【0081】
第1CPU311は、予測濃度算出部305により、S902の処理で取得した入力データに基づき、時間の経過に伴う濃度の変化に関する濃度変化量を決定し、仮にパターン画像がシートSに形成された場合の該パターン画像の画像濃度値を予測する(S903)。S903の処理において、予測濃度算出部305は濃度変化量と予測基準濃度505を合算してパターン画像の画像濃度値を決定する。第1CPU311は、階調補正テーブル生成部306により、S903の処理で予測した画像濃度値とγLUT503とにより、更新するべきγLUTを生成する補正演算を行う(S904)。第1CPU311は、階調補正テーブル生成部306により、S904の処理で生成した新たなγLUTによりγLUT503を更新する(S905)。γLUT503は、印刷ジョブに応じて印刷を行う際に用いられるγLUTである。予測制御において、予測濃度算出部305と階調補正テーブル生成部306とは、時間の経過に伴う濃度の変化に関する濃度変化量を決定し、該濃度変化量に基づき前記画像形成条件を更新する更新手段として機能する。
【0082】
以上のように本実施形態の画像形成装置100は、実測制御用のγLUT506と印刷用に用いるγLUT503とを備える。γLUT506は、予測制御では更新されない。このような構成により、予測制御により高頻度でγLUT503を更新しつつ、予測制御で最適なγLUT503が生成できていない場合であってもγLUT506により実測制御を高精度に行うことができる。そのため、画像を形成して行うキャリブレーションが、予測によるキャリブレーションの影響を受けずに安定して高精度に実行できる。
【0083】
上述の実施形態では、階調補正のためのγLUTの補正について説明した。γLUTは、画像形成装置100が画像形成を行う場合の画像形成条件の一つである。本実施形態は、γLUT以外の画像形成条件についても適用可能である。つまり、パターン画像の読取結果に基づいて画像形成条件を補正する実測制御と、環境条件や構成部品の状態等の予測要素に基づいて画像形成条件を補正する予測制御と、を行う画像形成装置100であれば、本実施形態を適用することができる。このような画像形成条件には、γLUTの他に、例えば画像濃度の設定値、画像の印字位置や形状等の幾何特性の補正値、色ずれの補正値、帯電時の電圧値、現像時の条件、転写時の電圧値等がある。
【0084】
また、上述の実施形態では、時間の経過に伴う濃度の変化に関するデータとして濃度変化量が入力データに基づき決定される構成としたが、前述のデータとして画像濃度センサ230によるパターン画像の読取結果が入力データに基づき決定される構成としてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10