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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177736
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/23 20100101AFI20241217BHJP
   G01S 19/21 20100101ALI20241217BHJP
【FI】
G01S19/23
G01S19/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096040
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】重松 宏樹
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062BB01
5J062CC07
5J062FF01
5J062FF02
(57)【要約】
【課題】スプーフィングを正しく検知できる車両を提供する。
【解決手段】車両11は、複数の測位部と、複数の測位部がそれぞれ出力する位置情報に基づいて自己位置を推定する制御部42と、を備え、複数の測位部は、人工衛星S1から測位信号を受信することによって第1位置情報を出力する第1測位部21と、周辺環境A1から反射光を受ける、又は、周辺環境に設置される磁気マーカーM1から磁気信号を受けることによって第2位置情報を出力する第2測位部22と、を含み、制御部は、第1位置情報に基づいて仮の自己位置である第1仮自己位置を推定し、第2位置情報に基づいて仮の自己位置である第2仮自己位置を推定し、第1仮自己位置と第2仮自己位置との乖離が所定以上である場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位部と、
複数の前記測位部がそれぞれ出力する位置情報に基づいて自己位置を推定する制御部と、を備え、
複数の前記測位部は、
人工衛星から測位信号を受信することによって第1位置情報を出力する第1測位部と、
周辺環境から反射光を受ける、又は、前記周辺環境に設置される磁気マーカーから磁気信号を受けることによって第2位置情報を出力する第2測位部と、を含み、
前記制御部は、
前記第1位置情報に基づいて仮の自己位置である第1仮自己位置を推定し、
前記第2位置情報に基づいて仮の自己位置である第2仮自己位置を推定し、
前記第1仮自己位置と前記第2仮自己位置との乖離が所定以上である場合に、前記第1位置情報のスプーフィングを検知する車両。
【請求項2】
複数の前記測位部は、前記周辺環境から反射光を受ける、又は、前記周辺環境に設置された前記磁気マーカーから磁気信号を受けることによって第3位置情報を出力する第3測位部を含み、
前記制御部は、前記第2位置情報及び前記第3位置情報に基づいて前記第2仮自己位置を推定する請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第3測位部は、
前記磁気マーカーから磁気信号を受ける磁気センサーを有し、
前記磁気センサーが受ける磁気信号に基づいて前記第3位置情報を出力する請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記第2測位部は、
前記周辺環境にレーザーを照射する発光素子と、
前記周辺環境から反射する前記レーザーを受ける受光センサーと、を有し、
前記レーザーの点群データに基づいて前記第2位置情報を出力する請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人工衛星から測位信号を受信することによって第1位置情報を出力する第1測位部と、基地局又は路側機から無線信号を受信することによって第2位置情報を出力する第2測位部とを備える車両が記載されている。車両は、第1位置情報が示す自己位置と、第2位置情報が示す自己位置との乖離が大きい場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-14475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした車両においては、第2測位部が無線信号に基づいて第2位置情報を出力するため、第2位置情報についてもスプーフィングのおそれがある。そのため、第1位置情報のスプーフィングを正しく検知できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両は、複数の測位部と、複数の前記測位部がそれぞれ出力する位置情報に基づいて自己位置を推定する制御部と、を備え、複数の前記測位部は、人工衛星から測位信号を受信することによって第1位置情報を出力する第1測位部と、周辺環境から反射光を受ける、又は、前記周辺環境に設置される磁気マーカーから磁気信号を受けることによって第2位置情報を出力する第2測位部と、を含み、前記制御部は、前記第1位置情報に基づいて仮の自己位置である第1仮自己位置を推定し、前記第2位置情報に基づいて仮の自己位置である第2仮自己位置を推定し、前記第1仮自己位置と前記第2仮自己位置との乖離が所定以上である場合に、前記第1位置情報のスプーフィングを検知する。
【0006】
上記構成によれば、第2測位部が無線信号に基づいて自己位置を推定する場合と比べて、第2位置情報についてスプーフィングのおそれが低減される。したがって、第1位置情報のスプーフィングを正しく検知できる。
【0007】
上記車両において、複数の前記測位部は、前記周辺環境から反射光を受ける、又は、前記周辺環境に設置された前記磁気マーカーから磁気信号を受けることによって第3位置情報を出力する第3測位部を含み、前記制御部は、前記第2位置情報及び前記第3位置情報に基づいて前記第2仮自己位置を推定してもよい。上記構成によれば、第1位置情報についてスプーフィングの検知精度が向上する。
【0008】
上記車両において、前記第3測位部は、前記磁気マーカーから磁気信号を受ける磁気センサーを有し、前記磁気センサーが受ける磁気信号に基づいて前記第3位置情報を出力してもよい。上記構成によれば、第3位置情報についてスプーフィングのおそれが低減される。特に、磁気信号による通信は、近距離通信であるため、スプーフィングのおそれが小さい。
【0009】
上記車両において、前記第2測位部は、前記周辺環境にレーザーを照射する発光素子と、前記周辺環境から反射する前記レーザーを受ける受光センサーと、を有し、前記レーザーの点群データに基づいて前記第2位置情報を出力してもよい。上記構成によれば、第2位置情報についてスプーフィングのおそれが低減される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1位置情報のスプーフィングを精度よく検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、周辺環境を自律走行する車両の一例を示す模式図である。
図2図2は、第1仮自己位置と第2仮自己位置との乖離を示す模式図である。
図3図3は、第1仮自己位置と第2仮自己位置との乖離、及び、第1仮自己位置と第3仮自己位置との乖離を示す模式図である。
図4図4は、スプーフィング検知処理を含む自己位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車両の一実施例について図を参照しながら説明する。車両は、自律的に走行する自律走行車である。一例では、車両は、空港において貨物を牽引するトーイングトラクターである。車両は、港湾、工場、倉庫などにおいて貨物を搬送する無人搬送車でもよい。車両は、例えば、電動で走行する。
【0013】
<車両>
図1に示すように、車両11は、周辺環境A1において自律走行する。車両11は、例えば、周辺環境A1において貨物を所定の位置に牽引するように自律走行する。車両11は、自律走行のために自己位置を推定する。自己位置は、地上における車両11の位置である。自己位置は、例えば、周辺環境A1における車両11の位置である。自己位置は、車両11が位置する地点の座標を示す。
【0014】
車両11は、周辺環境A1において、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用することによって自己位置を推定する。車両11は、GNSSの他に、別のシステムを利用することによって自己位置を推定する。例えば、車両11は、GNSSを含めて2つ以上のシステムを利用することによって、自己位置を推定する。一例では、車両11は、GNSSを含めて3つ以上のシステムを利用することによって、自己位置を推定する。
【0015】
車両11は、周辺環境A1において、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を利用することによって自己位置を推定してもよい。車両11は、周辺環境A1において、MPS(Magnetic Positioning System)を利用することによって自己位置を推定してもよい。すなわち、周辺環境A1には、1以上の磁気マーカーM1が設置されていてもよい。磁気マーカーM1は、例えば、路面に埋め込まれている。磁気マーカーM1は、路面上に設置されていてもよい。磁気マーカーM1は、磁気信号を出力する。磁気信号は、例えば、磁気マーカーM1の識別情報を含む。磁気マーカーM1は、N極及びS極の配列パターンによって、識別情報をあらわす。
【0016】
車両11は、複数の測位部を備える。車両11は、例えば、第1測位部21と、第2測位部22とを備える。一例では、車両11は、第1測位部21と、第2測位部22と、第3測位部23とを備える。車両11は、4つ以上の測位部を備えてもよい。
【0017】
測位部は、位置情報を出力するように構成される。第1測位部21は、第1位置情報を出力する。第2測位部22は、第2位置情報を出力する。第3測位部23は、第3位置情報を出力する。第1測位部21、第2測位部22、及び、第3測位部23は、それぞれ異なる手法によって位置情報を出力する。
【0018】
位置情報が示す座標の座標系は、複数の測位部において共通する。すなわち、第1位置情報が示す座標、第2位置情報が示す座標、及び、第3位置情報が示す座標は、それぞれ共通の座標系であらわされる。したがって、車両11は、共通の座標系において、第1位置情報が示す座標、第2位置情報が示す座標、及び、第3位置情報が示す座標を比較可能である。
【0019】
位置情報は、自己位置の推定に使用される。位置情報は、座標を示す情報である。位置情報が示す座標は、車両11の位置を示す。すなわち、位置情報は、測位部による測位結果から予測される車両11の位置を示す。
【0020】
位置情報は、車両11の位置を、特定座標系による座標で示す。一例では、特定座標系は、地球上の特定位置を原点とする測地座標系である。特定座標系は、空間座標系でもよいし、平面座標系でもよい。例えば、特定座標系は、地理座標系でもよいし、投影座標系でもよいし、その他の座標系でもよい。特定座標系は、車両11を原点とする座標系であってもよい。
【0021】
位置情報は、座標の他に、その精度を示す。すなわち、位置情報は、座標とその信頼度とを示す。信頼度は、例えば、百分率、スコアなどの数値であらわされる。信頼度が大きいほど、その位置情報が示す座標に車両11が位置する可能性が大きい。
【0022】
測位部は、受信部と、処理部とを有する。すなわち、第1測位部21は、第1受信部31と、第1処理部32とを有する。第2測位部22は、第2受信部33と、第2処理部34とを有する。第3測位部23は、第3受信部35と、第3処理部36とを有する。受信部は、外部から信号を受けるように構成される。処理部は、受信部が受けた信号を処理することによって位置情報を出力するように構成される。
【0023】
処理部は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含んでもよい。処理部は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路などの1つ以上の専用のハードウェア回路で構成されてもよい。処理部は、プロセッサ及びハードウェア回路の組み合わせを含む回路として構成されてもよい。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROMなどのメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納する。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる媒体を含む。
【0024】
第1測位部21は、人工衛星S1から測位信号を受信することによって第1位置情報を出力する。第1測位部21は、測位信号に基づいて第1位置情報を出力する。測位信号は、人工衛星S1の識別番号、人工衛星S1の位置、測位信号の出力時刻などの情報を含む。第1測位部21は、測位信号から人工衛星S1との距離を算出することによって、第1位置情報を出力する。
【0025】
第1受信部31は、人工衛星S1から測位信号を受信するように構成される。第1受信部31は、例えば、アンテナである。第1処理部32は、第1受信部31が受信した測位信号に基づいて第1位置情報を出力する。第1処理部32は、例えば、レシーバーである。
【0026】
第1測位部21は、基準局R1と通信してもよい。基準局R1は、第1受信部31と同様に、人工衛星S1から測位信号を受信するように構成される。基準局R1は、地上に固定された受信機である。基準局R1は、周辺環境A1に設置されていてもよいし、周辺環境A1外に設置されていてもよい。第1測位部21は、基準局R1と電波で通信することによって、基準局R1に対する車両11の位置を測定できる。これにより、第1位置情報の精度が向上する。
【0027】
第2測位部22は、周辺環境A1から反射光を受ける、又は、磁気マーカーM1から磁気信号を受けることによって第2位置情報を出力する。第2測位部22は、例えば、周辺環境A1から反射光を受けることによって第2位置情報を出力する。一例では、第2測位部22は、SLAMによって第2位置情報を出力する。詳しくは、第2測位部22は、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)‐SLAMによって第2位置情報を出力する。すなわち、第2測位部22は、周辺環境A1にレーザーを照射する。第2測位部22は、周辺環境A1から反射したレーザーを受ける。これにより、第2測位部22は、点群データを取得する。点群データは、周辺環境A1においてレーザーの反射点を示すデータである。すなわち、点群データは、任意座標系における反射点の座標を示す。例えば、点群データは、第2測位部22を原点とする座標系における反射点の座標を示す。第2測位部22は、点群データに基づいて第2位置情報を出力する。
【0028】
第2受信部33は、発光素子37と、受光センサー38とを有する。第2受信部33は、例えば、レーザーモジュールである。発光素子37は、レーザーを発光するように構成される。受光センサー38は、反射したレーザーを受けるように構成される。第2処理部34は、第2受信部33が反射光を受けることに伴い点群データを生成する。第2処理部34は、点群データを後述する地図データD1と照合することによって、第2位置情報を出力する。
【0029】
第2測位部22は、LIDAR‐SLAMに限らず、レーダーSLAMによって第2位置情報を出力してもよいし、Visual‐SLAMによって第2位置情報を出力してもよい。すなわち、第2測位部22は、ミリ波を照射し、反射したミリ波を受けることによって第2位置情報を出力してもよい。また、第2測位部22は、画像データに基づいて第2位置情報を出力してもよい。第2測位部22は、周辺環境A1から反射光を受けることによって、周辺環境A1を撮像する。これにより、第2測位部22は、周辺環境A1が写る画像データを取得する。この場合、第2受信部33は、イメージセンサーモジュールである。第2受信部33は、周辺環境A1の風景を撮像してもよいし、周辺環境A1の路面を撮像してもよい。第2処理部34は、画像データを地図データD1と照合することによって第2位置情報を出力する。
【0030】
第3測位部23は、周辺環境A1から反射光を受ける、又は、磁気マーカーM1から磁気信号を受けることによって第3位置情報を出力する。一例では、第3測位部23は、磁気マーカーM1から磁気信号を受けることによって第3位置情報を出力する。詳しくは、第3測位部23は、MPSによって第3位置情報を出力する。すなわち、第3測位部23は、磁気マーカーM1から磁気信号を読み取る。これにより、第3測位部23は、マーカーデータを取得する。マーカーデータは、磁気マーカーM1の識別情報を示す。第3測位部23は、マーカーデータを取得することによって、磁気マーカーM1の位置を把握する。第3測位部23は、マーカーデータに基づいて第3位置情報を出力する。
【0031】
第3受信部35は、磁気マーカーM1から磁気信号を受けるように構成される。第3受信部35は、例えば、磁気センサー39を有する。第3受信部35は、磁気信号を受けることによってマーカーデータを取得する。第3処理部36は、マーカーデータを地図データD1と照合することによって、第3位置情報を出力する。第3処理部36は、テーブルデータを記憶していてもよい。テーブルデータは、磁気マーカーM1の識別情報と磁気マーカーM1の座標とが対応付けられたデータである。テーブルデータは、特定座標系における磁気マーカーM1の座標を示す。そのため、この場合には、第3処理部36は、マーカーデータをテーブルデータと照合することによって、第3位置情報を出力できる。
【0032】
第3測位部23は、MSPに限らず、SLAMによって第3位置情報を出力してもよい。例えば、第3測位部23は、レーダーSLAM、Visual‐SLAMなどによって第3位置情報を出力してもよい。この場合、第3受信部35は、イメージセンサーモジュールである。第3測位部23は、第2測位部22と異なる手法によって位置情報を出力するように構成されていればよい。
【0033】
測位部は、位置情報を出力するにあたって、地図データD1を参照してもよい。詳しくは、測位部は、特定座標系による車両11の座標を出力するために、地図データD1を参照してもよい。一例では、上述のように、第2測位部22及び第3測位部23は、地図データD1を参照することによって位置情報を出力する。測位部は、SLAMによって位置情報を出力する場合、地図データD1を参照することによって、座標系を変換する。例えば、第2測位部22は、地図データD1を参照することによって、第2測位部22を原点とする座標系から特定座標系に変換する。これにより、特定座標系における第2測位部22の座標が示される。したがって、第2位置情報が得られる。第3測位部23では、地図データD1を参照することによって、磁気マーカーM1の識別情報から特定座標系における磁気マーカーM1の座標を得る。これにより、第3位置情報が得られる。
【0034】
第1測位部21については、スプーフィングのおそれがある。これは、GNSSによる測位信号は、公衆利用のために仕様が公開されているためである。そのため、第1測位部21は、偽装された測位信号を受信すると、誤った第1位置情報を出力するおそれがある。すなわち、第1測位部21は、測位信号が高精度であるにもかかわらず、誤った座標を含む第1位置情報を出力するおそれがある。
【0035】
第2測位部22及び第3測位部23については、スプーフィングのおそれが小さい。例えば、SLAMでは、近赤外線、可視光線などが使用されるため、スプーフィングのおそれが小さい。MPSでは、磁気信号の通信距離が小さいため、スプーフィングのおそれが小さい。したがって、車両11は、スプーフィングのおそれがある第1測位部21と、スプーフィングのおそれが小さい1以上の測位部とを備える。車両11は、スプーフィングのおそれが小さい測位部が出力する位置情報をもとに、第1位置情報のスプーフィングを検知する。
【0036】
車両11は、記憶部41を備える。記憶部41は、データを記憶可能に構成される。記憶部41は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。記憶部41は、地図データD1を記憶する。地図データD1は、周辺環境A1を含む地図のデータである。すなわち、地図データD1は、周辺環境A1の路面、周辺環境A1の建造物、周辺環境A1の設置物などの位置、形状などを示す。地図データD1は、周辺環境A1を含む地図を特定座標系であらわす。地図データD1の座標系は、位置情報の座標系と一致する。
【0037】
地図データD1は、予め記憶部41に記憶されていてもよいし、複数の測位部により生成されることによって記憶部41に記憶されていてもよい。例えば、地図データD1は、GNSSによって取得される座標に、SLAMによって生成される点群データ、画像データ、及び、MPSによって取得されるマーカーデータなどを対応付けることによって生成されてもよい。すなわち、地図データD1は、センサーフュージョンによって生成されてもよい。
【0038】
車両11は、制御部42を備える。制御部42は、位置情報に基づいて自己位置を推定する。制御部42は、例えば、第1位置情報、第2位置情報、及び、第3位置情報に基づいて自己位置を推定する。制御部42は、単種の位置情報に基づいて自己位置を推定してもよいし、複数種の位置情報に基づいて自己位置を推定してもよい。複数種の位置情報に基づいて自己位置を推定することによって、自己位置の推定精度が向上する。制御部42は、処理部と同様に、プロセッサで構成されてもよいし、ハードウェア回路で構成されてもよいし、その組み合わせを含む回路で構成されてもよい。
【0039】
制御部42は、位置情報に基づいて車両11の自己位置を推定する。制御部42は、第1位置情報、第2位置情報、及び、第3位置情報のうち、最も信頼度が大きい位置情報が示す座標を自己位置として推定してもよい。例えば、第1位置情報、第2位置情報、及び、第3位置情報のうち第1位置情報の信頼度が最も大きい場合には、制御部42は、第1位置情報が示す座標を自己位置として推定する。
【0040】
制御部42は、第1位置情報、第2位置情報、及び、第3位置情報を、それぞれの信頼度に基づいて統合することによって得られる座標を自己位置として推定してもよい。すなわち、制御部42は、第1位置情報、第2位置情報、及び、第3位置情報の加重平均を算出することによって自己位置を推定してもよい。この場合、制御部42は、信頼度に基づいて位置情報に重み付けをしたうえで統合する。制御部42は、信頼度が小さい位置情報を使用せずに自己位置を推定してもよい。例えば、第2位置情報の信頼度が小さい場合には、制御部42は、第1位置情報及び第3位置情報の加重平均を算出することによって自己位置を推定してもよい。
【0041】
第1位置情報については、スプーフィングのおそれがある。そのため、誤った第1位置情報が自己位置の推定に使用されると、自己位置の推定精度が著しく低下する。そのため、自己位置を推定するにあたってスプーフィング検知が肝要である。
【0042】
制御部42は、自己位置を推定するにあたって、第1位置情報のスプーフィングを確認する。制御部42は、第1位置情報のスプーフィングを、他の位置情報、例えば第2位置情報及び第3位置情報に基づいて検知する。制御部42は、仮自己位置を比較することによって、スプーフィングを検知する。仮自己位置は、車両11における仮の自己位置である。仮自己位置は、位置情報に基づいて得られる座標で示される。
【0043】
図2に示すように、制御部42は、第1仮自己位置P1と、第2仮自己位置P2とを比較する。第1仮自己位置P1は、第1位置情報の座標が示す仮自己位置である。第2仮自己位置P2は、他の位置情報の座標が示す仮自己位置である。一例では、第2仮自己位置P2は、第2位置情報及び第3位置情報の加重平均を算出することによって得られる座標が示す仮自己位置である。第2仮自己位置P2は、第2位置情報及び第3位置情報のうち信頼度が大きい位置情報の座標が示す仮自己位置でもよい。
【0044】
制御部42は、第1仮自己位置P1と第2仮自己位置P2との乖離が所定以上であるかを判定する。制御部42は、乖離が所定以上である場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知する。すなわち、制御部42は、第1仮自己位置P1の座標と第2仮自己位置P2との距離L1が閾値以上である場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知する。閾値は、記憶部41に記憶されていてもよいし、制御部42に記憶されていてもよい。第1測位部21と比べて第2測位部22及び第3測位部23はスプーフィングのおそれが小さい。そのため、第2仮自己位置P2と比べて第1仮自己位置P1が乖離する場合には、第1位置情報についてスプーフィングのおそれがあると判定できる。これにより、スプーフィングを正しく検知できる。
【0045】
制御部42は、第1位置情報のスプーフィングを検知した場合に、第1位置情報を使用せずに自己位置を推定する。すなわち、一例では、制御部42は、第2位置情報及び第3位置情報に基づいて自己位置を推定する。制御部42は、第2仮自己位置P2の座標を自己位置として推定してもよい。制御部42は、第2位置情報及び第3位置情報のうち信頼度が大きい位置情報の座標を自己位置として推定してもよい。
【0046】
図3に示すように、制御部42は、第1位置情報のスプーフィングを検知するにあたって、第1仮自己位置P1に対して、第2仮自己位置P2と第3仮自己位置P3とを比較してもよい。すなわち、制御部42は、第1仮自己位置P1と第2仮自己位置P2との乖離、及び、第1仮自己位置P1と第3仮自己位置P3との乖離に基づいて、第1位置情報のスプーフィングを検知してもよい。この例では、第2仮自己位置P2は、第2位置情報の座標が示す仮自己位置である。第3仮自己位置P3は、第3位置情報の座標が示す仮自己位置である。
【0047】
制御部42は、第1仮自己位置P1と第2仮自己位置P2との乖離、及び、第1仮自己位置P1と第3仮自己位置P3との乖離の双方が所定以上であるかを判定する。制御部42は、双方の乖離が所定以上である場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知する。すなわち、制御部42は、第1仮自己位置P1の座標と第2仮自己位置P2の座標との距離L1、及び、第1仮自己位置P1の座標と第3仮自己位置P3の座標との距離L2の双方が閾値以上である場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知する。制御部42は、距離L1及び距離L2の少なくとも一方が閾値以上である場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知してもよい。例えば、制御部42は、距離L1又は距離L2が閾値以上である場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知してもよい。
【0048】
<自己位置推定処理>
次に、制御部42が実行する自己位置推定処理の一例について説明する。自己位置推定処理は、車両11の自己位置を推定する処理である。自己位置推定処理は、スプーフィング検知処理を含む。スプーフィング検知処理は、第1位置情報についてスプーフィングのおそれがあるかを確認する処理である。したがって、制御部42は、自己位置推定処理を実行することによって、自己位置を推定するとともに第1位置情報についてスプーフィングのおそれがあるかを確認する。制御部42は、例えば、所定周期で自己位置推定処理を繰り返す。
【0049】
図4に示すように、制御部42は、ステップS11において、第1位置情報が高精度であるかを判定する。このとき、制御部42は、受信する測位信号が高精度であるかを判定する。偽装された測位信号を車両11が高精度で受信する場合、誤った第1位置情報が高精度になる。この場合、誤った第1位置情報によって自己位置の推定精度が著しく低下する。通常、スプーフィングを仕掛ける第三者は、偽装した測位信号を車両11が高精度で受信するように出力する。そのため、第1位置情報が高精度でない場合、第1位置情報についてスプーフィングのおそれがあるかを判定する必要性が小さい。よって、制御部42は、第1位置情報が高精度でない場合、ステップS16に処理を移行する。制御部42は、第1位置情報が高精度である場合、ステップS12に処理を移行する。
【0050】
制御部42は、ステップS12において、第1位置情報を除く他の位置情報が高精度であるかを判定する。一例では、制御部42は、第2位置情報及び第3位置情報の双方が高精度であるかを判定する。これは、第2位置情報及び第3位置情報が高精度でない場合、第1位置情報と比較できないためである。すなわち、第2位置情報及び第3位置情報が高精度でない場合、第1位置情報についてスプーフィングのおそれがあるかを判定することが難しい。よって、制御部42は、第2位置情報及び第3位置情の少なくとも一方が高精度でないと判定した場合、ステップS16に処理を移行する。制御部42は、第2位置情報及び第3位置情報の双方が高精度であると判定した場合に、ステップS13に処理を移行する。
【0051】
制御部42は、ステップS12において、第2位置情報及び第3位置情報の少なくとも一方が高精度であると判定した場合、ステップS13に処理を移行してもよい。この場合、制御部42は、第2位置情報及び第3位置情報のうち高精度である位置情報をもとに、第1位置情報についてスプーフィングのおそれがあるかを判定する。
【0052】
制御部42は、ステップS13において、仮自己位置を算出する。制御部42は、第1仮自己位置P1と第2仮自己位置P2とを算出する。制御部42は、第1仮自己位置P1と第2仮自己位置P2との乖離、すなわち距離L1を算出する。
【0053】
制御部42は、ステップS14において、距離L1が閾値以上であるかを判定する。距離L1が閾値以上である場合、制御部42は、第1位置情報のスプーフィングを検知する。制御部42は、距離L1が閾値以上である場合、ステップS15に処理を移行する。制御部42は、距離L1が閾値未満である場合、第1位置情報についてスプーフィングのおそれがないと判定する。このとき、制御部42は、ステップS16に処理を移行する。
【0054】
制御部42は、ステップS15において、第1位置情報を使用せずに自己位置を推定する。すなわち、制御部42は、第2位置情報及び第3位置情報に基づいて自己位置を推定する。このとき、制御部42は、第2位置情報及び第3位置情報のうち信頼度が最も大きい位置情報の座標を自己位置として推定してもよいし、それぞれの加重平均を算出することによって得られた座標を自己位置として推定してもよい。制御部42は、推定した自己位置に基づいて、自律走行する。制御部42は、ステップS15の処理を終えると、自己位置推定処理を終了する。
【0055】
制御部42は、ステップS16において、第1位置情報を使用する状態で自己位置を推定する。すなわち、制御部42は、第1位置情報、第2位置情報、及び、第3位置情報に基づいて自己位置を推定する。このとき、制御部42は、第1位置情報第2位置情報及び第3位置情報のうち信頼度が最も大きい位置情報の座標を自己位置として推定してもよいし、それぞれの加重平均を算出することによって得られた座標を自己位置として推定してもよい。制御部42は、推定した自己位置に基づいて、自律走行する。制御部42は、ステップS16の処理を終えると、自己位置推定処理を終了する。
【0056】
[作用及び効果]
次に、上述した実施例の作用及び効果について説明する。
(1)第2測位部22は、周辺環境A1から反射光を受ける、又は、周辺環境A1に設置される磁気マーカーM1から磁気信号を受けることによって第2位置情報を出力する。制御部42は、第1位置情報に基づいて仮の自己位置である第1仮自己位置P1を推定する。制御部42は、第2位置情報に基づいて仮の自己位置である第2仮自己位置P2を推定する。制御部42は、第1仮自己位置P1と第2仮自己位置P2との乖離が所定以上である場合に、第1位置情報のスプーフィングを検知する。
【0057】
上記構成によれば、第2測位部22が無線信号に基づいて自己位置を推定する場合と比べて、第2位置情報についてスプーフィングのおそれが低減される。したがって、第1位置情報のスプーフィングを正しく検知できる。
【0058】
(2)第3測位部23は、周辺環境A1から反射光を受ける、又は、周辺環境A1に設置された磁気マーカーM1から磁気信号を受けることによって第3位置情報を出力する。制御部42は、第2位置情報及び第3位置情報に基づいて第2仮自己位置P2を推定する。上記構成によれば、第1位置情報についてスプーフィングの検知精度が向上する。
【0059】
(3)第3測位部23は、磁気マーカーM1から磁気信号を受ける磁気センサー39を有する。第3測位部23は、磁気センサー39が受ける磁気信号に基づいて第3位置情報を出力する。上記構成によれば、第3位置情報についてスプーフィングのおそれが低減される。特に、磁気信号による通信は、近距離通信であるため、スプーフィングのおそれが小さい。
【0060】
(4)第2測位部22は、周辺環境A1にレーザーを照射する発光素子37と、周辺環境A1から反射するレーザーを受ける受光センサー38と、を有する。第2測位部22は、レーザーの点群データに基づいて第2位置情報を出力する。上記構成によれば、第2位置情報についてスプーフィングのおそれが低減される。
【0061】
[変更例]
上記実施例は、以下のように変更して実施できる。上記実施例及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0062】
○ 車両11は、第4測位部を備えてもよい。第4測位部は、第4位置情報を出力する。制御部42は、第1位置情報、第2位置情報、第3位置情報、及び、第4位置情報に基づいて車両11の自己位置を推定する。制御部42は、第4仮自己位置を算出してもよい。
【0063】
○ 第2測位部22は、Depth-SLAMによって第2位置情報を出力してもよい。
○ 第3測位部23は、Depth-SLAMによって第3位置情報を出力してもよい。
【符号の説明】
【0064】
11…車両、21…第1測位部、22…第2測位部、42…制御部、A1…周辺環境、M1…磁気マーカー、P1…第1仮自己位置、P2…第2仮自己位置、S1…人工衛星。
図1
図2
図3
図4