(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177737
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/056 20060101AFI20241217BHJP
F04D 29/057 20060101ALI20241217BHJP
F16C 27/02 20060101ALI20241217BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F04D29/056 B
F04D29/057 Z
F16C27/02 A
F16C17/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096041
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 史也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文博
(72)【発明者】
【氏名】中根 健太
【テーマコード(参考)】
3H130
3J011
3J012
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB07
3H130AB27
3H130AB42
3H130AC13
3H130BA03D
3H130BA03E
3H130BA66D
3H130BA66E
3H130DA02Z
3H130DB02X
3H130DB05X
3H130DB13Z
3H130DB15X
3H130DD01Z
3H130EA07D
3H130EA07E
3H130EC04E
3J011AA02
3J011BA08
3J011KA03
3J012AB02
3J012BB02
3J012EB08
3J012FB01
(57)【要約】
【課題】回転軸をスラスト方向で安定的に支持し、且つ、遠心圧縮機の運転効率の低下を抑制すること。
【解決手段】例えば、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、第1動圧スラスト軸受19と第2動圧スラスト軸受20とのうちの第1動圧スラスト軸受19のみによって第1スラストカラー17を支持する。したがって、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合に、第2動圧スラスト軸受20における第2スラストカラー18を介した回転軸12に対するスラスト方向の支持が無駄に行われてしまうことが回避される。スラスト方向の荷重が所定の荷重以上の場合、第1動圧スラスト軸受19によって第1スラストカラー17を支持するとともに、第2動圧スラスト軸受20によって第2スラストカラー18を支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸と一体的に回転する羽根車と、
前記回転軸の外周面から前記回転軸の径方向外側に突出し、前記回転軸と一体的に回転する円盤状の第1スラストカラーと、
前記回転軸の外周面から前記回転軸の径方向外側に突出し、前記第1スラストカラーに対して前記回転軸の軸方向で離間した位置に配置され、前記回転軸と一体的に回転する円盤状の第2スラストカラーと、
前記軸方向に対して、前記第1スラストカラーに対向するように設けられた第1動圧スラスト軸受と、
前記軸方向に対して、前記第2スラストカラーに対向するように設けられた第2動圧スラスト軸受と、を備えている遠心圧縮機であって、
スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、前記第1動圧スラスト軸受と前記第2動圧スラスト軸受とのうちの前記第1動圧スラスト軸受のみによって前記第1スラストカラーを支持し、
前記スラスト方向の荷重が前記所定の荷重以上の場合、前記第1動圧スラスト軸受によって前記第1スラストカラーを支持するとともに、前記第2動圧スラスト軸受によって前記第2スラストカラーを支持することを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記第1動圧スラスト軸受は、
前記第1スラストカラーに対向する第1トップフォイルと、
前記第1トップフォイルを間に挟んで前記第1スラストカラーとは反対側に設けられる第1バンプフォイルと、を有し、
前記第2動圧スラスト軸受は、
前記第2スラストカラーに対向する第2トップフォイルと、
前記第2トップフォイルを間に挟んで前記第2スラストカラーとは反対側に設けられる第2バンプフォイルと、を有し、
前記第1トップフォイルと前記第1スラストカラーとの間のクリアランスは、前記第2トップフォイルと前記第2スラストカラーとの間のクリアランスよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記第1トップフォイルは、前記第1スラストカラーに対向する部分にコーティング層を有していることを特徴とする請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記第1動圧スラスト軸受は、前記第1スラストカラーに対して、前記第1スラストカラーを間に挟んで一対設けられており、
前記第2動圧スラスト軸受は、前記第2スラストカラーに対して、前記第2スラストカラーを支持する一方のみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記回転軸、前記羽根車、前記第1スラストカラー、前記第2スラストカラー、前記第1動圧スラスト軸受、及び前記第2動圧スラスト軸受は、ハウジングに収容され、
前記羽根車は、前記回転軸の第1端にのみ連結されており、
前記第1動圧スラスト軸受は、前記第2動圧スラスト軸受よりも前記羽根車寄りに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記回転軸、前記羽根車、前記第1スラストカラー、前記第2スラストカラー、前記第1動圧スラスト軸受、及び前記第2動圧スラスト軸受は、ハウジングに収容され、
前記羽根車は、
前記回転軸の第1端に連結される第1羽根車と、
前記回転軸の第2端に連結されるとともに前記第1羽根車の回転によって圧縮された後の流体を圧縮するために回転する第2羽根車と、を含み、
前記第1動圧スラスト軸受は、前記第2動圧スラスト軸受よりも前記第2羽根車寄りに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項7】
前記第2動圧スラスト軸受は、前記第1動圧スラスト軸受よりも剛性が高いことを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、回転軸と、羽根車と、を備えている。羽根車は、回転軸と一体的に回転する。また、遠心圧縮機は、例えば特許文献1のように、スラストカラーと、動圧スラスト軸受と、を備えている。スラストカラーは、回転軸の外周面から回転軸の径方向外側に突出している。スラストカラーは、回転軸と一体的に回転する。スラストカラーは、円盤状である。動圧スラスト軸受は、回転軸の軸方向に対して、スラストカラーに対向するように設けられている。
【0003】
動圧スラスト軸受は、回転軸の回転数が浮上回転数を下回っている状態では、スラストカラーに接した状態でスラストカラーを介して回転軸をスラスト方向で支持する。一方で、回転軸の回転数が浮上回転数以上である状態では、動圧スラスト軸受とスラストカラーとの間に生じる流体膜の動圧によって、スラストカラーが動圧スラスト軸受に対して浮上する。これにより、動圧スラスト軸受は、スラストカラーに接触せずにスラストカラーを介して回転軸をスラスト方向で支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような遠心圧縮機においては、回転軸をスラスト方向で安定的に支持するために、動圧スラスト軸受の負荷容量を大きくする必要がある。動圧スラスト軸受の負荷容量を大きくするためには、例えば、第1スラストカラーと、第2スラストカラーと、第1動圧スラスト軸受と、第2動圧スラスト軸受と、を備えている遠心圧縮機が考えられる。第1スラストカラーは、回転軸の外周面から回転軸の径方向外側に突出している。第1スラストカラーは、回転軸と一体的に回転する。第1スラストカラーは、円盤状である。第2スラストカラーは、回転軸の外周面から回転軸の径方向外側に突出している。第2スラストカラーは、回転軸と一体的に回転する。第2スラストカラーは、円盤状である。第2スラストカラーは、第1スラストカラーに対して回転軸の軸方向で離間した位置に配置されている。第1動圧スラスト軸受は、回転軸の軸方向に対して、第1スラストカラーに対向するように設けられている。第2動圧スラスト軸受は、回転軸の軸方向に対して、第2スラストカラーに対向するように設けられている。これによれば、回転軸に作用するスラスト方向の荷重であるスラスト荷重を第1動圧スラスト軸受及び第2動圧スラスト軸受によって受けることができるため、回転軸をスラスト方向で安定的に支持することができる。
【0006】
しかしながら、スラスト荷重が小さい場合、回転軸に作用するスラスト荷重を第1動圧スラスト軸受及び第2動圧スラスト軸受の両方で受けると、第1動圧スラスト軸受と第2動圧スラスト軸受との一方における支持が無駄に行われることになる。その結果、遠心圧縮機の運転効率が低下してしまう。したがって、回転軸をスラスト方向で安定的に支持し、且つ、遠心圧縮機の運転効率の低下を抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する遠心圧縮機は、回転軸と、前記回転軸と一体的に回転する羽根車と、前記回転軸の外周面から前記回転軸の径方向外側に突出し、前記回転軸と一体的に回転する円盤状の第1スラストカラーと、前記回転軸の外周面から前記回転軸の径方向外側に突出し、前記第1スラストカラーに対して前記回転軸の軸方向で離間した位置に配置され、前記回転軸と一体的に回転する円盤状の第2スラストカラーと、前記軸方向に対して、前記第1スラストカラーに対向するように設けられた第1動圧スラスト軸受と、前記軸方向に対して、前記第2スラストカラーに対向するように設けられた第2動圧スラスト軸受と、を備えている遠心圧縮機であって、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、前記第1動圧スラスト軸受と前記第2動圧スラスト軸受とのうちの前記第1動圧スラスト軸受のみによって前記第1スラストカラーを支持し、前記スラスト方向の荷重が前記所定の荷重以上の場合、前記第1動圧スラスト軸受によって前記第1スラストカラーを支持するとともに、前記第2動圧スラスト軸受によって前記第2スラストカラーを支持する。
【0008】
これによれば、例えば、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、第1動圧スラスト軸受と第2動圧スラスト軸受とのうちの第1動圧スラスト軸受のみによって第1スラストカラーを支持する。したがって、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合に、第2動圧スラスト軸受における第2スラストカラーを介した回転軸に対するスラスト方向の支持が無駄に行われてしまうことが回避される。その結果、遠心圧縮機の運転効率の低下を抑制することができる。スラスト方向の荷重が所定の荷重以上の場合、第1動圧スラスト軸受によって第1スラストカラーを支持するとともに、第2動圧スラスト軸受によって第2スラストカラーを支持する。したがって、回転軸をスラスト方向で安定的に支持することができる。以上により、回転軸をスラスト方向で安定的に支持し、且つ、遠心圧縮機の運転効率の低下を抑制することができる。
【0009】
上記遠心圧縮機において、前記第1動圧スラスト軸受は、前記第1スラストカラーに対向する第1トップフォイルと、前記第1トップフォイルを間に挟んで前記第1スラストカラーとは反対側に設けられる第1バンプフォイルと、を有し、前記第2動圧スラスト軸受は、前記第2スラストカラーに対向する第2トップフォイルと、前記第2トップフォイルを間に挟んで前記第2スラストカラーとは反対側に設けられる第2バンプフォイルと、を有し、前記第1トップフォイルと前記第1スラストカラーとの間のクリアランスは、前記第2トップフォイルと前記第2スラストカラーとの間のクリアランスよりも小さいとよい。
【0010】
これによれば、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、第1動圧スラスト軸受と第2動圧スラスト軸受とのうちの第1動圧スラスト軸受のみによって第1スラストカラーを支持することができる。そして、スラスト方向の荷重が所定の荷重以上の場合、第1動圧スラスト軸受によって第1スラストカラーを支持するとともに、第2動圧スラスト軸受によって第2スラストカラーを支持することができる。
【0011】
上記遠心圧縮機において、前記第1トップフォイルは、前記第1スラストカラーに対向する部分にコーティング層を有しているとよい。
第1トップフォイルと第1スラストカラーとの間のクリアランスは、第2トップフォイルと第2スラストカラーとの間のクリアランスよりも小さい。このため、第1トップフォイルは、回転軸の回転数が浮上回転数を下回っている状態では、第1スラストカラーに接触している。このとき、第1トップフォイルは、第1スラストカラーに対向する部分にコーティング層を有している。このため、第1トップフォイルと第1スラストカラーとの間の摩耗を抑制することができる。一方で、第2トップフォイルは、回転軸が浮上回転数を下回っていても、第2スラストカラーには接触していない。したがって、第2トップフォイルには、第2スラストカラーに対向する部分にコーティング層が必要無い。そして、第2トップフォイルは、コーティング層を有していないため、放熱性が良好なものとなる。その結果、第2動圧スラスト軸受の耐久性の向上を図ることができる。
【0012】
上記遠心圧縮機において、前記第1動圧スラスト軸受は、前記第1スラストカラーに対して、前記第1スラストカラーを間に挟んで一対設けられており、前記第2動圧スラスト軸受は、前記第2スラストカラーに対して、前記第2スラストカラーを支持する一方のみ設けられているとよい。
【0013】
これによれば、第2動圧スラスト軸受が、第2スラストカラーに対して、第2スラストカラーを支持する一方のみ設けられている。このため、回転軸に作用するスラスト方向の荷重が大きくなっていくと、第1動圧スラスト軸受に加えて第2動圧スラスト軸受でも回転軸に作用するスラスト方向の荷重を受けることができる。一方で、遠心圧縮機では、外部からの振動等によって回転軸にスラスト方向の荷重が作用する方向とは逆方向に回転軸が移動する場合がある。このとき、第1動圧スラスト軸受が、第1スラストカラーに対して、第1スラストカラーを間に挟んで一対設けられている。このため、回転軸にスラスト方向の荷重が作用する方向とは逆方向に回転軸が移動しても、第1スラストカラーを第1動圧スラスト軸受によって受け止めることができる。以上により、第2動圧スラスト軸受を、第2スラストカラーに対して、第2スラストカラーを間に挟んで一対設ける必要が無いため、部品点数を削減することができる。したがって、遠心圧縮機を簡素な構成にすることができる。
【0014】
上記遠心圧縮機において、前記回転軸、前記羽根車、前記第1スラストカラー、前記第2スラストカラー、前記第1動圧スラスト軸受、及び前記第2動圧スラスト軸受は、ハウジングに収容され、前記羽根車は、前記回転軸の第1端にのみ連結されており、前記第1動圧スラスト軸受は、前記第2動圧スラスト軸受よりも前記羽根車寄りに配置されているとよい。
【0015】
遠心圧縮機は、羽根車がハウジングに干渉しないように、第1動圧スラスト軸受と第1スラストカラーとの間のクリアランスを考慮して設計する必要がある。ここで、羽根車と第1動圧スラスト軸受との回転軸の軸方向での距離が遠いほど、ハウジングの寸法公差の影響が大きくなる。また、羽根車と第1動圧スラスト軸受との回転軸の軸方向での距離が遠いほど、回転軸における軸方向での熱膨張とハウジングにおける回転軸の軸方向での熱膨張との差の影響が大きくなる。そこで、第1動圧スラスト軸受を、第2動圧スラスト軸受よりも羽根車寄りに配置した。これによれば、ハウジングの寸法公差の影響、及び回転軸における軸方向での熱膨張とハウジングにおける回転軸の軸方向での熱膨張との差の影響を極力小さくすることができる。その結果、羽根車がハウジングに干渉しない程度に羽根車とハウジングとの間のクリアランスを極力小さく設計し易くすることができる。よって、羽根車の回転による流体の圧縮効率を向上させることができる。
【0016】
上記遠心圧縮機において、前記回転軸、前記羽根車、前記第1スラストカラー、前記第2スラストカラー、前記第1動圧スラスト軸受、及び前記第2動圧スラスト軸受は、ハウジングに収容され、前記羽根車は、前記回転軸の第1端に連結される第1羽根車と、前記回転軸の第2端に連結されるとともに前記第1羽根車の回転によって圧縮された後の流体を圧縮するために回転する第2羽根車と、を含み、前記第1動圧スラスト軸受は、前記第2動圧スラスト軸受よりも前記第2羽根車寄りに配置されているとよい。
【0017】
遠心圧縮機は、第1羽根車及び第2羽根車がハウジングに干渉しないように、第1動圧スラスト軸受と第1スラストカラーとの間のクリアランスを考慮して設計する必要がある。ここで、第2羽根車は、第1羽根車の回転によって圧縮された後の流体を圧縮するために回転するため、遠心圧縮機の圧縮効率の向上を図るためには、第2羽根車とハウジングとの間のクリアランスを極力狭くする必要がある。第2羽根車と第1動圧スラスト軸受との回転軸の軸方向での距離が遠いほど、ハウジングの寸法公差の影響が大きくなる。また、第2羽根車と第1動圧スラスト軸受との回転軸の軸方向での距離が遠いほど、回転軸における軸方向での熱膨張とハウジングにおける回転軸の軸方向での熱膨張との差の影響が大きくなる。そこで、第1動圧スラスト軸受を、第2動圧スラスト軸受よりも第2羽根車寄りに配置した。これによれば、ハウジングの寸法公差の影響、及び回転軸における軸方向での熱膨張とハウジングにおける回転軸の軸方向での熱膨張との差の影響を極力小さくすることができる。その結果、第2羽根車がハウジングに干渉しない程度に第2羽根車とハウジングとの間のクリアランスを極力小さく設計し易くすることができる。よって、第2羽根車の回転による流体の圧縮効率を向上させることができるため、遠心圧縮機の圧縮効率の向上を図ることができる。
【0018】
上記遠心圧縮機において、前記第2動圧スラスト軸受は、前記第1動圧スラスト軸受よりも剛性が高いとよい。
これによれば、第1動圧スラスト軸受の変位及び第2動圧スラスト軸受の変位が大きくなっていくにつれて、第2動圧スラスト軸受が受けるスラスト方向の荷重の大きさが、第1動圧スラスト軸受が受けるスラスト方向の荷重の大きさに近付いていく。したがって、回転軸に作用するスラスト方向の荷重を第2動圧スラスト軸受によって効率良く受け止めることができる。その結果、第1動圧スラスト軸受及び第2動圧スラスト軸受によって、回転軸をスラスト方向でさらに安定的に支持することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、回転軸をスラスト方向で安定的に支持し、且つ、遠心圧縮機の運転効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態における遠心圧縮機を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1動圧スラスト軸受及び第2動圧スラスト軸受の特性を示すグラフである。
【
図3】
図3は、変更例における遠心圧縮機を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、変更例における遠心圧縮機を示す概略構成図である。
【
図5】
図5は、変更例における遠心圧縮機を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、遠心圧縮機を具体化した一実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態の遠心圧縮機は、燃料電池車に搭載されている。遠心圧縮機は、燃料電池スタックに供給される流体としての空気を圧縮する。
【0022】
<遠心圧縮機の概略構成>
図1に示すように、遠心圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、羽根車13と、モータ14と、を備えている。ハウジング11は、筒状である。ハウジング11は、回転軸12と、羽根車13と、モータ14と、を収容している。したがって、回転軸12は、ハウジング11内に収容されている。回転軸12は、モータ14の駆動により回転する。羽根車13は、回転軸12の第1端に連結されている。羽根車13は、空気を圧縮するために回転軸12と一体的に回転する。本実施形態の遠心圧縮機10は、羽根車13は、回転軸12の第1端にのみ連結されている。
【0023】
遠心圧縮機10は、第1動圧ラジアル軸受15と、第2動圧ラジアル軸受16と、を備えている。第1動圧ラジアル軸受15及び第2動圧ラジアル軸受16は、ハウジング11に保持されている。第1動圧ラジアル軸受15及び第2動圧ラジアル軸受16は、モータ14を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。第1動圧ラジアル軸受15及び第2動圧ラジアル軸受16は、回転軸12におけるモータ14を挟んだ両側の部位をそれぞれ回転可能に支持している。第1動圧ラジアル軸受15及び第2動圧ラジアル軸受16は、回転軸12をラジアル方向で回転可能に支持している。なお、「ラジアル方向」とは、回転軸12の軸方向に対して直交する方向である。
【0024】
遠心圧縮機10は、第1スラストカラー17と、第2スラストカラー18と、を備えている。第1スラストカラー17は、回転軸12の外周面における羽根車13と第1動圧ラジアル軸受15との間に位置する部分から突出している。第1スラストカラー17は、円盤状である。第1スラストカラー17は、回転軸12の外周面に圧入されることにより回転軸12に固定されている。第1スラストカラー17は、回転軸12の外周面から回転軸12の径方向外側に突出している。第1スラストカラー17は、回転軸12と一体的に回転する。
【0025】
第2スラストカラー18は、回転軸12の外周面における第2動圧ラジアル軸受16よりもモータ14とは反対側に位置する部分から突出している。したがって、第2スラストカラー18は、第1スラストカラー17に対して回転軸12の軸方向で離間した位置に配置されている。第2スラストカラー18は、円盤状である。第2スラストカラー18は、回転軸12の外周面に圧入されることにより回転軸12に固定されている。第2スラストカラー18は、回転軸12の外周面から回転軸12の径方向外側に突出している。第2スラストカラー18は、回転軸12と一体的に回転する。
【0026】
遠心圧縮機10は、第1動圧スラスト軸受19と、第2動圧スラスト軸受20と、を備えている。第1動圧スラスト軸受19は、回転軸12の軸方向に対して、第1スラストカラー17に対向するように設けられている。第1動圧スラスト軸受19は、回転軸12の軸方向で第1スラストカラー17に対向した状態でハウジング11に保持されている。第1動圧スラスト軸受19は、第1スラストカラー17に対して、第1スラストカラー17を間に挟んで一対設けられている。したがって、遠心圧縮機10は、第1動圧スラスト軸受19を2つ有している。2つの第1動圧スラスト軸受19は、第1スラストカラー17をスラスト方向で回転可能に支持している。
【0027】
第2動圧スラスト軸受20は、回転軸12の軸方向に対して、第2スラストカラー18に対向するように設けられている。第2動圧スラスト軸受20は、回転軸12の軸方向で第2スラストカラー18に対向した状態でハウジング11に保持されている。したがって、第1動圧スラスト軸受19は、第2動圧スラスト軸受20よりも羽根車13寄りに配置されている。第2動圧スラスト軸受20は、第2スラストカラー18に対して、第2スラストカラー18を間に挟んで一対設けられている。したがって、遠心圧縮機10は、第2動圧スラスト軸受20を2つ有している。2つの第2動圧スラスト軸受20は、第2スラストカラー18をスラスト方向で回転可能に支持している。なお、「スラスト方向」とは、回転軸12の軸方向である。
【0028】
第1動圧スラスト軸受19は、第1トップフォイル19aと、第1バンプフォイル19bと、を有している。第1トップフォイル19aは、第1スラストカラー17に対向する。第1トップフォイル19aは、図示しない扇状のトップフォイル片が回転軸12の周方向に等間隔置きに配置されることにより構成されている。第1バンプフォイル19bは、第1トップフォイル19aを間に挟んで第1スラストカラー17とは反対側に設けられている。第1バンプフォイル19bは、図示しない扇状のバンプフォイル片が回転軸12の周方向に等間隔置きに配置されることにより構成されている。各バンプフォイル片は、一枚の薄板を波形状に折り曲げることにより形成されている。第1バンプフォイル19bは、弾性変形することにより、第1トップフォイル19aを回転軸12の軸方向で変位可能な状態で弾性的に支持する。
【0029】
第2動圧スラスト軸受20は、第2トップフォイル20aと、第2バンプフォイル20bと、を有している。第2トップフォイル20aは、第2スラストカラー18に対向する。第2トップフォイル20aは、図示しない扇状のトップフォイル片が回転軸12の周方向に等間隔置きに配置されることにより構成されている。第2バンプフォイル20bは、第2トップフォイル20aを間に挟んで第2スラストカラー18とは反対側に設けられている。第2バンプフォイル20bは、図示しない扇状のバンプフォイル片が回転軸12の周方向に等間隔置きに配置されることにより構成されている。各バンプフォイル片は、一枚の薄板を波形状に折り曲げることにより形成されている。第2バンプフォイル20bは、弾性変形することにより、第2トップフォイル20aを回転軸12の軸方向で変位可能な状態で弾性的に支持する。このような動圧スラスト軸受は、既に公知である。
【0030】
第1動圧スラスト軸受19は、弾性変形することにより、第1スラストカラー17を介して回転軸12を回転軸12の軸方向で変位可能な状態で弾性的にスラスト方向で支持する。第2動圧スラスト軸受20は、弾性変形することにより、第2スラストカラー18を介して回転軸12を回転軸12の軸方向で変位可能な状態で弾性的にスラスト方向で支持する。
【0031】
回転軸12、羽根車13、第1スラストカラー17、第2スラストカラー18、第1動圧スラスト軸受19、及び第2動圧スラスト軸受20は、ハウジング11に収容されている。
【0032】
第1トップフォイル19aと第1スラストカラー17との間のクリアランスC1は、第2トップフォイル20aと第2スラストカラー18との間のクリアランスC2よりも小さい。第2動圧スラスト軸受20は、第1動圧スラスト軸受19よりも剛性が高い。具体的には、第2動圧スラスト軸受20の第2バンプフォイル20bの剛性は、第1動圧スラスト軸受19の第1バンプフォイル19bの剛性よりも高い。したがって、第2動圧スラスト軸受20は、第1動圧スラスト軸受19よりも弾性変形し難くなっている。
【0033】
図2は、第1動圧スラスト軸受19及び第2動圧スラスト軸受20の特性を示している。
図2では、第1動圧スラスト軸受19における回転軸12の軸方向での変位と第1動圧スラスト軸受19が受けるスラスト方向の荷重との関係を実線L1で示している。また、第2動圧スラスト軸受20における回転軸12の軸方向での変位と第2動圧スラスト軸受20が受けるスラスト方向の荷重との関係を実線L2で示している。なお、以下の説明では、「スラスト方向の荷重」を単に「スラスト荷重」と記載する場合もある。
【0034】
図2において実線L1で示すように、第1動圧スラスト軸受19が受けるスラスト荷重の大きさは、第1動圧スラスト軸受19における回転軸12の軸方向の変位が大きくなっていくにつれて大きくなっていく。
図2において実線L2で示すように、第2動圧スラスト軸受20が受けるスラスト荷重の大きさは、第2動圧スラスト軸受20における回転軸12の軸方向の変位が大きくなっていくにつれて大きくなっていく。
【0035】
図2に示すように、第2動圧スラスト軸受20は、第1動圧スラスト軸受19がスラスト荷重を受けることが可能な限界荷重F1に達したときに、第2動圧スラスト軸受20も同じスラスト荷重を受けることが可能な剛性に設定されている。
【0036】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
第1動圧スラスト軸受19は、回転軸12が浮上回転数を下回っている状態では、第1スラストカラー17に接した状態で第1スラストカラー17を介して回転軸12をスラスト方向で支持する。一方で、回転軸12の回転数が浮上回転数以上である状態では、第1動圧スラスト軸受19と第1スラストカラー17との間に生じる空気膜の動圧によって、第1スラストカラー17が第1動圧スラスト軸受19に対して浮上する。これにより、第1動圧スラスト軸受19は、第1スラストカラー17に接触せずに第1スラストカラー17を介して回転軸12をスラスト方向で支持する。
【0037】
第1トップフォイル19aと第1スラストカラー17との間のクリアランスC1は、第2トップフォイル20aと第2スラストカラー18との間のクリアランスC2よりも小さい。よって、例えば、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、第1動圧スラスト軸受19と第2動圧スラスト軸受20とのうちの第1動圧スラスト軸受19のみによって第1スラストカラー17を支持する。したがって、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合に、第2動圧スラスト軸受20における第2スラストカラー18を介した回転軸12に対するスラスト方向の支持が無駄に行われてしまうことが回避されている。
【0038】
回転軸12に作用するスラスト方向の荷重が大きくなっていくと、第1動圧スラスト軸受19の変位が大きくなっていく。つまり、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重が大きくなっていくにつれて、第1動圧スラスト軸受19の第1バンプフォイル19bが弾性変形して徐々に押し潰されていく。そして、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重が所定の荷重以上の場合、第1動圧スラスト軸受19によって第1スラストカラー17を支持するとともに、第2動圧スラスト軸受20によって第2スラストカラー18を支持する。
【0039】
第2動圧スラスト軸受20は、第2動圧スラスト軸受20と第2スラストカラー18との間に生じる空気膜の動圧によって、第2スラストカラー18が第2動圧スラスト軸受20に対して浮上した状態で、第2スラストカラー18を介して回転軸12をスラスト方向で支持する。そして、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重が大きくなっていくと、第2動圧スラスト軸受20の変位が大きくなっていく。つまり、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重が大きくなっていくにつれて、第2動圧スラスト軸受20の第2バンプフォイル20bが弾性変形して徐々に押し潰されていく。
【0040】
このとき、第2動圧スラスト軸受20は、第1動圧スラスト軸受19よりも剛性が高い。このため、
図2に示すように、第1動圧スラスト軸受19の変位及び第2動圧スラスト軸受20の変位が大きくなっていくにつれて、第2動圧スラスト軸受20が受けるスラスト荷重の大きさが、第1動圧スラスト軸受19が受けるスラスト荷重の大きさに近付いていく。したがって、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重が第2動圧スラスト軸受20によって効率良く受け止められる。
【0041】
このように、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、第1動圧スラスト軸受19と第2動圧スラスト軸受20とのうちの第1動圧スラスト軸受19のみによって第1スラストカラー17を支持する。スラスト方向の荷重が所定の荷重以上の場合、第1動圧スラスト軸受19によって第1スラストカラー17を支持するとともに、第2動圧スラスト軸受20によって第2スラストカラー18を支持する。
【0042】
[実施形態の効果]
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)例えば、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、第1動圧スラスト軸受19と第2動圧スラスト軸受20とのうちの第1動圧スラスト軸受19のみによって第1スラストカラー17を支持する。したがって、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合に、第2動圧スラスト軸受20における第2スラストカラー18を介した回転軸12に対するスラスト方向の支持が無駄に行われてしまうことが回避される。その結果、遠心圧縮機10の運転効率の低下を抑制することができる。スラスト方向の荷重が所定の荷重以上の場合、第1動圧スラスト軸受19によって第1スラストカラー17を支持するとともに、第2動圧スラスト軸受20によって第2スラストカラー18を支持する。したがって、回転軸12をスラスト方向で安定的に支持することができる。以上により、回転軸12をスラスト方向で安定的に支持し、且つ、遠心圧縮機10の運転効率の低下を抑制することができる。
【0043】
(2)第1トップフォイル19aと第1スラストカラー17との間のクリアランスC1は、第2トップフォイル20aと第2スラストカラー18との間のクリアランスC2よりも小さい。これによれば、スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、第1動圧スラスト軸受19と第2動圧スラスト軸受20とのうちの第1動圧スラスト軸受19のみによって第1スラストカラー17を支持することができる。そして、スラスト方向の荷重が所定の荷重以上の場合、第1動圧スラスト軸受19によって第1スラストカラー17を支持するとともに、第2動圧スラスト軸受20によって第2スラストカラー18を支持することができる。
【0044】
(3)遠心圧縮機10は、羽根車13がハウジング11に干渉しないように、第1動圧スラスト軸受19の第1トップフォイル19aと第1スラストカラー17との間のクリアランスC1を考慮して設計する必要がある。ここで、羽根車13と第1動圧スラスト軸受19との回転軸12の軸方向での距離が遠いほど、ハウジング11の寸法公差の影響が大きくなる。また、羽根車13と第1動圧スラスト軸受19との回転軸12の軸方向での距離が遠いほど、回転軸12における軸方向での熱膨張とハウジング11における回転軸12の軸方向での熱膨張との差の影響が大きくなる。そこで、第1動圧スラスト軸受19を、第2動圧スラスト軸受20よりも羽根車13寄りに配置した。これによれば、ハウジング11の寸法公差の影響、及び回転軸12における軸方向での熱膨張とハウジング11における回転軸12の軸方向での熱膨張との差の影響を極力小さくすることができる。その結果、羽根車13がハウジング11に干渉しない程度に羽根車13とハウジング11との間のクリアランスを極力小さく設計し易くすることができる。よって、羽根車13の回転による空気の圧縮効率を向上させることができる。
【0045】
(4)第2動圧スラスト軸受20は、第1動圧スラスト軸受19よりも剛性が高い。これによれば、第1動圧スラスト軸受19の変位及び第2動圧スラスト軸受20の変位が大きくなっていくにつれて、第2動圧スラスト軸受20が受けるスラスト方向の荷重の大きさが、第1動圧スラスト軸受19が受けるスラスト方向の荷重の大きさに近付いていく。したがって、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重を第2動圧スラスト軸受20によって効率良く受け止めることができる。その結果、第1動圧スラスト軸受19及び第2動圧スラスト軸受20によって、回転軸12をスラスト方向でさらに安定的に支持することができる。
【0046】
(5)第2動圧スラスト軸受20は、第1動圧スラスト軸受19がスラスト荷重を受けることが可能な限界荷重F1に達したときに、第2動圧スラスト軸受20も同じスラスト荷重を受けることが可能な剛性に設定されている。したがって、第1動圧スラスト軸受19及び第2動圧スラスト軸受20によって、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重を最大限に受けることができる。
【0047】
(6)本実施形態によれば、第1スラストカラー17、第2スラストカラー18、第1動圧スラスト軸受19、及び第2動圧スラスト軸受20を用いている。例えば、第2スラストカラー18及び第2動圧スラスト軸受20を用いず、第1スラストカラー17及び第1動圧スラスト軸受19のみを用いて負荷容量を大きくする場合を考える。この場合に比べて、第1スラストカラー17及び第1動圧スラスト軸受19、並びに、ハウジング11を回転軸12の径方向に大きくする必要が無い。したがって、遠心圧縮機10が回転軸12の径方向に大型化してしまうことを回避することができる。さらには、第1スラストカラー17、第2スラストカラー18、第1動圧スラスト軸受19、及び第2動圧スラスト軸受20のイナーシャが増大したり、第1スラストカラー17及び第2スラストカラー18の回転に伴う風損が増大したりすることを回避できる。このため、遠心圧縮機10の運転効率の低下を抑制することができる。
【0048】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
○
図3に示すように、第1動圧スラスト軸受19の第1トップフォイル19aは、第1スラストカラー17に対向する部分にコーティング層21を有していてもよい。コーティング層21は、例えば、第1動圧スラスト軸受19の第1トップフォイル19aにおける第1スラストカラー17側の面を樹脂によりコーティングすることにより形成されている。
【0050】
第1トップフォイル19aと第1スラストカラー17との間のクリアランスC1は、第2トップフォイル20aと第2スラストカラー18との間のクリアランスC2よりも小さい。このため、第1トップフォイル19aは、回転軸12の回転数が浮上回転数を下回っている状態では、第1スラストカラー17に接触している。このとき、第1トップフォイル19aは、第1スラストカラー17に対向する部分にコーティング層21を有している。このため、第1トップフォイル19aと第1スラストカラー17との間の摩耗を抑制することができる。一方で、第2トップフォイル20aは、回転軸12が浮上回転数を下回っていても、第2スラストカラー18には接触していない。したがって、第2トップフォイル20aには、第2スラストカラー18に対向する部分にコーティング層が必要無い。そして、第2トップフォイル20aは、コーティング層を有していないため、放熱性が良好なものとなる。その結果、第2動圧スラスト軸受20の耐久性の向上を図ることができる。
【0051】
○
図4に示すように、第2動圧スラスト軸受20は、第2スラストカラー18に対して、第2スラストカラー18を支持する一方のみ設けられていてもよい。第2動圧スラスト軸受20は、第2スラストカラー18に対して、回転軸12にスラスト荷重が作用する方向側にのみ設けられている。回転軸12にスラスト荷重が作用する方向は、例えば実験等によって予め把握されている。
図4では、回転軸12にスラスト荷重が作用する方向を矢印F10で示している。
【0052】
これによれば、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重が大きくなっていくと、第1動圧スラスト軸受19に加えて第2動圧スラスト軸受20でも回転軸12に作用するスラスト方向の荷重を受けることができる。一方で、遠心圧縮機10では、外部からの振動等によって回転軸12にスラスト方向の荷重が作用する方向とは逆方向に回転軸12が移動する場合がある。このとき、第1動圧スラスト軸受19が、第1スラストカラー17に対して、第1スラストカラー17を間に挟んで一対設けられている。このため、回転軸12にスラスト方向の荷重が作用する方向とは逆方向に回転軸12が移動しても、第1スラストカラー17を第1動圧スラスト軸受19によって受け止めることができる。以上により、第2動圧スラスト軸受20を、第2スラストカラー18に対して、第2スラストカラー18を間に挟んで一対設ける必要が無いため、部品点数を削減することができる。したがって、遠心圧縮機10を簡素な構成にすることができる。
【0053】
○
図5に示すように、遠心圧縮機10は、回転軸12の第1端に連結される第1羽根車31と、回転軸12の第2端に連結される第2羽根車32と、を備えていてもよい。したがって、
図5に示す実施形態の遠心圧縮機10の羽根車は、第1羽根車31と、第2羽根車32と、を含む。第2羽根車32は、第1羽根車31の回転によって圧縮された後の空気を圧縮するために回転する。第1動圧スラスト軸受19は、第2動圧スラスト軸受20よりも第2羽根車32寄りに配置されている。
【0054】
遠心圧縮機10は、第1羽根車31及び第2羽根車32がハウジングに干渉しないように、第1動圧スラスト軸受19の第1トップフォイル19aと第1スラストカラー17との間のクリアランスC1を考慮して設計する必要がある。ここで、第2羽根車32は、第1羽根車31の回転によって圧縮された後の空気を圧縮するために回転するため、遠心圧縮機10の圧縮効率の向上を図るためには、第2羽根車32とハウジング11との間のクリアランスを極力狭くする必要がある。第2羽根車32と第1動圧スラスト軸受19との回転軸12の軸方向での距離が遠いほど、ハウジング11の寸法公差の影響が大きくなる。また、第2羽根車32と第1動圧スラスト軸受19との回転軸12の軸方向での距離が遠いほど、回転軸12における軸方向での熱膨張とハウジング11における回転軸12の軸方向での熱膨張との差の影響が大きくなる。そこで、第1動圧スラスト軸受19を、第2動圧スラスト軸受20よりも第2羽根車32寄りに配置した。これによれば、ハウジング11の寸法公差の影響、及び回転軸12における軸方向での熱膨張とハウジング11における回転軸12の軸方向での熱膨張との差の影響を極力小さくすることができる。その結果、第2羽根車32がハウジング11に干渉しない程度に第2羽根車32とハウジング11との間のクリアランスを極力小さく設計し易くすることができる。よって、第2羽根車32の回転による空気の圧縮効率を向上させることができるため、遠心圧縮機10の圧縮効率の向上を図ることができる。
【0055】
○ 実施形態において、第1動圧スラスト軸受19と第2動圧スラスト軸受20とは同一種類であってもよい。これによれば、第1動圧スラスト軸受19と第2動圧スラスト軸受20とで別々の種類のものを用意する必要が無いため、簡便な設計である遠心圧縮機10を提供することができる。
【0056】
○ 実施形態において、回転軸12と一体的に回転する羽根車13の数は特に限定されるものではない。遠心圧縮機10は、例えば、羽根車を3つ以上備えている構成であってもよい。
【0057】
○ 実施形態において、羽根車13が圧縮する流体としては、空気に限らない。したがって、遠心圧縮機10の適用対象及び圧縮対象の流体は任意である。例えば、遠心圧縮機10は空調装置に用いられていてもよく、圧縮対象の流体は冷媒であってもよい。また、遠心圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
【0058】
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
<付記1>
回転軸と、
前記回転軸と一体的に回転する羽根車と、
前記回転軸の外周面から前記回転軸の径方向外側に突出し、前記回転軸と一体的に回転する円盤状の第1スラストカラーと、
前記回転軸の外周面から前記回転軸の径方向外側に突出し、前記第1スラストカラーに対して前記回転軸の軸方向で離間した位置に配置され、前記回転軸と一体的に回転する円盤状の第2スラストカラーと、
前記軸方向に対して、前記第1スラストカラーに対向するように設けられた第1動圧スラスト軸受と、
前記軸方向に対して、前記第2スラストカラーに対向するように設けられた第2動圧スラスト軸受と、を備えている遠心圧縮機であって、
スラスト方向の荷重が所定の荷重未満の場合、前記第1動圧スラスト軸受と前記第2動圧スラスト軸受とのうちの前記第1動圧スラスト軸受のみによって前記第1スラストカラーを支持し、
前記スラスト方向の荷重が前記所定の荷重以上の場合、前記第1動圧スラスト軸受によって前記第1スラストカラーを支持するとともに、前記第2動圧スラスト軸受によって前記第2スラストカラーを支持することを特徴とする遠心圧縮機。
【0059】
<付記2>
前記第1動圧スラスト軸受は、
前記第1スラストカラーに対向する第1トップフォイルと、
前記第1トップフォイルを間に挟んで前記第1スラストカラーとは反対側に設けられる第1バンプフォイルと、を有し、
前記第2動圧スラスト軸受は、
前記第2スラストカラーに対向する第2トップフォイルと、
前記第2トップフォイルを間に挟んで前記第2スラストカラーとは反対側に設けられる第2バンプフォイルと、を有し、
前記第1トップフォイルと前記第1スラストカラーとの間のクリアランスは、前記第2トップフォイルと前記第2スラストカラーとの間のクリアランスよりも小さいことを特徴とする<付記1>に記載の遠心圧縮機。
【0060】
<付記3>
前記第1トップフォイルは、前記第1スラストカラーに対向する部分にコーティング層を有していることを特徴とする<付記2>に記載の遠心圧縮機。
【0061】
<付記4>
前記第1動圧スラスト軸受は、前記第1スラストカラーに対して、前記第1スラストカラーを間に挟んで一対設けられており、
前記第2動圧スラスト軸受は、前記第2スラストカラーに対して、前記第2スラストカラーを支持する一方のみ設けられていることを特徴とする<付記1>~<付記3>のいずれか1つに記載の遠心圧縮機。
【0062】
<付記5>
前記回転軸、前記羽根車、前記第1スラストカラー、前記第2スラストカラー、前記第1動圧スラスト軸受、及び前記第2動圧スラスト軸受は、ハウジングに収容され、
前記羽根車は、前記回転軸の第1端にのみ連結されており、
前記第1動圧スラスト軸受は、前記第2動圧スラスト軸受よりも前記羽根車寄りに配置されていることを特徴とする<付記1>~<付記4>のいずれか1つに記載の遠心圧縮機。
【0063】
<付記6>
前記回転軸、前記羽根車、前記第1スラストカラー、前記第2スラストカラー、前記第1動圧スラスト軸受、及び前記第2動圧スラスト軸受は、ハウジングに収容され、
前記羽根車は、
前記回転軸の第1端に連結される第1羽根車と、
前記回転軸の第2端に連結されるとともに前記第1羽根車の回転によって圧縮された後の流体を圧縮するために回転する第2羽根車と、を含み、
前記第1動圧スラスト軸受は、前記第2動圧スラスト軸受よりも前記第2羽根車寄りに配置されていることを特徴とする<付記1>~<付記4>のいずれか1つに記載の遠心圧縮機。
【0064】
<付記7>
前記第2動圧スラスト軸受は、前記第1動圧スラスト軸受よりも剛性が高いことを特徴とする<付記1>~<付記6>のいずれか1つに記載の遠心圧縮機。
【符号の説明】
【0065】
10…遠心圧縮機、11…ハウジング、12…回転軸、13…羽根車、17…第1スラストカラー、18…第2スラストカラー、19…第1動圧スラスト軸受、19a…第1トップフォイル、19b…第1バンプフォイル、20…第2動圧スラスト軸受、20a…第2トップフォイル、20b…第2バンプフォイル、21…コーティング層、31…第1羽根車、32…第2羽根車、C1,C2…クリアランス。