(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177743
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】角ダクト、エルボ角ダクトおよび角ダクトの吊り下げ方法
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F24F13/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096052
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】591225394
【氏名又は名称】株式会社新富士空調
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】梶野 勇
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 信人
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA09
3L080AB08
3L080AC01
3L080AD01
(57)【要約】
【課題】厚板であっても溶接を不要にすることが可能な角ダクトを提供する。
【解決手段】略コ字状の断面が延びる第1の半ダクト2および第2の半ダクト3と、第1の半ダクト2および第2の半ダクト3の断面の両自由端縁に沿って延び、共用ボルト孔43、53が設けられたアングル材4、5と、を備え、断面が略四角い筒状になるように第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とが向かい合わせに配置され、アングル材4、5が共用ボルト孔43、53を介してボルト締結されることで、第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とが筒状に組み付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略コ字状の断面が延びる第1の半ダクトと、
略コ字状の断面が延びる第2の半ダクトと、
前記第1の半ダクトの断面の両自由端縁に沿って延び、ボルト挿入孔が設けられた第1の接続部と、
前記第2の半ダクトの断面の両自由端縁に沿って延び、ボルト挿入孔が設けられた第2の接続部と、を備え、
断面が略四角い筒状になるように前記第1の半ダクトと前記第2の半ダクトとが向かい合わせに配置され、前記第1の接続部と前記第2の接続部が前記ボルト挿入孔を介してボルト締結されることで、前記第1の半ダクトと前記第2の半ダクトとが筒状に組み付けられる、
ことを特徴とする角ダクト。
【請求項2】
前記第1の半ダクトと前記第2の半ダクトとが同形状および同寸法で、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが同形状および同寸法となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の角ダクト。
【請求項3】
前記第1の接続部と前記第2の接続部とが、断面が略L字状で垂直部と水平部とを有するアングル材で構成され、
前記第1の接続部の垂直部が前記第1の半ダクトの前記両自由端縁に沿って取り付けられ、前記第2の接続部の垂直部が前記第2の半ダクトの前記両自由端縁に沿って取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の角ダクト。
【請求項4】
前記第1の半ダクトと前記第2の半ダクトとが筒状に組み付けられた状態での軸線が直線状に延び、前記軸線が略水平に延びて配設された状態で、前記第1の接続部および前記第2の接続部の水平部が略水平に延びる、
ことを特徴とする請求項3に記載の角ダクト。
【請求項5】
前記第1の接続部および前記第2の接続部の水平部に、吊りボルトを挿入するための吊りボルト孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の角ダクト。
【請求項6】
前記吊りボルト孔は、前記第1の接続部および前記第2の接続部の長手方向に延びる長孔となっている、
ことを特徴とする請求項5に記載の角ダクト。
【請求項7】
前記第1の接続部と前記第2の接続部との間に気密材が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の角ダクト。
【請求項8】
複数の前記請求項1に記載の角ダクトが、軸線を変えながら前記角度ダクトの開口端同士で接続されている、
ことを特徴とするエルボ角ダクト。
【請求項9】
請求項5または請求項6に記載の角ダクトの前記吊りボルト孔に、上端側が構造体に固定される吊りボルトの下端側を挿入することで、前記角ダクトを前記構造体から吊り下げる、
ことを特徴とする角ダクトの吊り下げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚板の角ダクト、エルボ角ダクトおよびその角ダクトの吊り下げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に空調用のダクトは、厚みが1.2mm以下の鋼材で製作され、断面が略四角形の角ダクトの場合、4枚の側板がハゼ接合によって接続されて角ダクトが構成されている(例えば、非特許文献1参照。)。一方、電気室やボイラ室などの特高室に配設される角ダクトの場合、耐火性や強度・剛性などを高めるために、従来から1.6mmなどの厚い鋼材で製作されている。
【0003】
しかしながら、このような厚い鋼材で角ダクトを製作する場合、側板同士をハゼ接合することが困難であった。このため、隣接する側板同士を溶接によって接合し、さらに、溶接部を防食したり外観を良好にしたりするために、溶接部の外面と内面をペンキで塗装する、という作業が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「標準ダクトテキスト」一般社団法人 全国ダクト工業団体連合会 編集発行、平成27年4月、p.36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、厚い側板同士を溶接するには、多大な労力と時間を要し、しかも、溶接部の外面と内面を塗装するにも、多大な労力と時間を要していた。さらに、溶接時には、煙やほこりなどが発生して作業環境が悪化し、作業者に大きな負担となっていた。
【0006】
また、従来は、製造工場で4枚の側板を溶接して筒状の角ダクトにした状態で、トラックで建設現場に運んだり、建設現場に仮置きしたりしていた。このため、トラックへの積載や建設現場での仮置きなどに広い面積、容積を要するばかりでなく、運送費用や保管費用がかさむ要因となっていた。さらに、板厚が厚いため、板厚が1.2mm以下の一般のダクトに比べて重量がかさみ(同じ外観寸法のダクトで約2倍となり)、持ち運びや設置(吊り込み等)などの際に、作業者に大きな負担となっていた。
【0007】
一方、近年、建設業界では、作業環境を含む安全性や省エネ化などが強く意識されており、これらに対応可能な技術が求められている。
【0008】
そこで本発明は、厚板であっても溶接を不要にすることが可能な角ダクト、エルボ角ダクトおよびその角ダクトの吊り下げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、略コ字状の断面が延びる第1の半ダクトと、略コ字状の断面が延びる第2の半ダクトと、前記第1の半ダクトの断面の両自由端縁に沿って延び、ボルト挿入孔が設けられた第1の接続部と、前記第2の半ダクトの断面の両自由端縁に沿って延び、ボルト挿入孔が設けられた第2の接続部と、を備え、断面が略四角い筒状になるように前記第1の半ダクトと前記第2の半ダクトとが向かい合わせに配置され、前記第1の接続部と前記第2の接続部が前記ボルト挿入孔を介してボルト締結されることで、前記第1の半ダクトと前記第2の半ダクトとが筒状に組み付けられる、ことを特徴とする角ダクトである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の角ダクトにおいて、前記第1の半ダクトと前記第2の半ダクトとが同形状および同寸法で、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが同形状および同寸法となっている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の角ダクトにおいて、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが、断面が略L字状で垂直部と水平部とを有するアングル材で構成され、前記第1の接続部の垂直部が前記第1の半ダクトの前記両自由端縁に沿って取り付けられ、前記第2の接続部の垂直部が前記第2の半ダクトの前記両自由端縁に沿って取り付けられている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の角ダクトにおいて、前記第1の半ダクトと前記第2の半ダクトとが筒状に組み付けられた状態での軸線が直線状に延び、前記軸線が略水平に延びて配設された状態で、前記第1の接続部および前記第2の接続部の水平部が略水平に延びる、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の角ダクトにおいて、前記第1の接続部および前記第2の接続部の水平部に、吊りボルトを挿入するための吊りボルト孔が形成されている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の角ダクトにおいて、前記吊りボルト孔は、前記第1の接続部および前記第2の接続部の長手方向に延びる長孔となっている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の角ダクトにおいて、前記第1の接続部と前記第2の接続部との間に気密材が設けられている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、複数の前記請求項1に記載の角ダクトが、軸線を変えながら前記角度ダクトの開口端同士で接続されている、ことを特徴とするエルボ角ダクトである。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の角ダクトの前記吊りボルト孔に、上端側が構造体に固定される吊りボルトの下端側を挿入することで、前記角ダクトを前記構造体から吊り下げる、ことを特徴とする角ダクトの吊り下げ方法である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、第1の接続部と第2の接続部をボルト締結するだけで、断面が略コ字状の第1の半ダクトと第2の半ダクトとを筒状に組み付けて、角ダクトを形成・製造することができる。すなわち、第1の半ダクトと第2の半ダクトが厚板でハゼ接合できなくても、ボルト締結するだけで角ダクトを形成することができ、溶接や溶接部の塗装を不要にすることができる。
【0019】
この結果、角ダクトの形成に要する労力と時間を著しく削減することが可能となり、しかも、溶接作業や塗装作業をなくして作業環境を改善し、作業者の負担を著しく軽減することが可能となる。また、第1の半ダクトと第2の半ダクトとの組み付け、つまりボルト締結は、建設現場で容易に行えるため、第1の半ダクトと第2の半ダクトをバラバラにしてトラックで建設現場に運んだり、建設現場に仮置きしたりするができる。このため、トラックへの積載容積や仮置き容積を少なくして、運送費用や保管費用を軽減することが可能となる。
【0020】
さらに、第1の半ダクトと第2の半ダクトが厚板であっても、第1の半ダクトと第2の半ダクトを別々に持ち運んだりすることで、作業者への負担を軽減することが可能となる。このようなことから、作業環境を含む安全性や省エネ化を向上させることが可能となる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、第1の半ダクトと第2の半ダクトとが同形状かつ同寸法で、第1の接続部と第2の接続部も同形状かつ同寸法のため、製造コストを削減したり取り扱いを容易にしたりすることが可能となる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、第1の接続部と第2の接続部とがアングル材で構成されて、第1の半ダクトと第2の半ダクトに取り付けられているため、角ダクトを容易に形成・製造することが可能となる。すなわち、第1の接続部および第2の接続部を第1の半ダクトおよび第2の半ダクトと一体的に形成する場合、板取り(材料取り)が煩雑となり歩留まりも低下する。これに対して、アングル材を第1の半ダクトと第2の半ダクトに取り付けるだけでよいため、角ダクトを容易かつ低コストで形成・製造することが可能となる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、直線状に延びる角ダクトが略水平に延びて配設された状態で、アングル材の水平部が略水平に延びるため、この水平部を利用して容易かつ安全に角ダクトを配設することが可能となる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、アングル材の水平部に吊りボルト孔が形成されているため、この吊りボルト孔に吊りボルトを挿入することで、容易かつ安全に角ダクトを配設する(吊り下げる)ことが可能となる。しかも、第1の半ダクトと第2の半ダクトとの接続部であるアングル材に吊りボルトが届けばよいため、従来よりも吊りボルトの長さを短くすることができ、また、従来のような受け鋼材(角ダクトの底を支える鋼材)も不要となる。この結果、角ダクトの配設に要する費用を削減することが可能となる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、吊りボルト孔がアングル材(角ダクト)の長手方向に延びる長孔となっているため、角ダクトの配設位置を容易かつ適正に調整することが可能となる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、第1の接続部と第2の接続部の間に気密材が設けられているため、角ダクトの気密性を確保することが可能となる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1に記載の角ダクトが複数、軸線を変えながら角度ダクトの開口端同士で接続されて、エルボ角ダクトが形成されている。すなわち、軸線が曲がったエルボ角ダクトにおいても、上記請求項1の効果と同等の効果が得られ、作業環境を含む安全性や省エネ化を向上させることが可能となる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、吊りボルトの上端側を構造体に固定し、角ダクトのアングル材の吊りボルト孔に吊りボルトの下端側を挿入、固定することで、容易かつ安全に角ダクトを構造体から吊り下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る角ダクトを示す斜視図である。
【
図3】
図1の角ダクトの半ダクトの展開状態(板取り)を示す平面図(a)と、半ダクトと接続部を一体的に形成する場合の展開状態(板取り)を示す平面図(b)である。
【
図4】この発明の実施の形態2に係るエルボ角ダクトを示す概略平面図である。
【
図5】
図4のエルボ角ダクトの第1の角ダクトを示す概略斜視図である。
【
図6】従来の角ダクトの吊り下げ状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る角ダクト1を示す斜視図であり、
図2は、
図1のA-A断面図である。この角ダクト1は、板厚が厚い鋼材・鋼板で形成された、断面が略四角形の筒状のダクトであり、この実施の形態では、軸線・中心軸が真っ直ぐ直線状に延びる直管ダクトの場合について説明する。ここで、板厚が厚いとは、ハゼ接合することが困難な程度の厚みであり、例えば、板厚が1.6mmの場合を厚板とする。
【0032】
角ダクト1は、主として、第1の半ダクト2と、第2の半ダクト3と、第1のアングル材(第1の接続部)4と、第2のアングル材(第2の接続部)5と、を備える。
【0033】
第1の半ダクト2は、略コ字状の断面が延びる部材、つまり、四角い板材を略コ字状に折り曲げた部材である。換言すると、断面が略四角い筒状体をその軸方向に半割した部材であり、コの字の垂直部に相当する主面部21と、コの字の2つの水平部に相当する2つの側面部22と、を有する。また、第1の半ダクト2の両端部(軸方向の両開口端部)には、外側に折り曲げて立ち上げられたフランジ部23が形成されている。
【0034】
第2の半ダクト3は、第1の半ダクト2と同形状および同寸法であるため、詳細な説明を省略するが、第1の半ダクト2の主面部21、側面部22およびフランジ部23に相当するものが、それぞれ主面部31、側面部32およびフランジ部33となっている。ここで、各フランジ部23、33間には、コーナーピース7が取り付けられるようになっている。
【0035】
第1のアングル材4は、第1の半ダクト2の断面の両自由端縁に沿って延びて配設され、共用ボルト孔(ボルト挿入孔、吊りボルト孔)43が設けられた部材である。すなわち、断面が略L字状で、垂直部41と水平部42とを有する山形鋼材で、その垂直部41が第1の半ダクト2の両自由端縁(両側面部22の端縁)に沿って、スポット溶接(符号4aで示す箇所)で取り付けられている。ここで、側面部22の端縁と水平部42の底面(反垂直部41側の面)とが略面一になるように取り付けられている。
【0036】
また、共用ボルト孔43は、後述する締結ボルト45や吊りボルト101を挿入するために設けられ、第1のアングル材4の長手方向に延びる長孔で、所定の間隔で第1のアングル材4の長手方向に沿って水平部42に複数(連続的に)形成されている。すなわち、共用ボルト孔43は、ボルト挿入孔と吊りボルト孔を兼ね備え、任意・所望の共用ボルト孔43に締結ボルト45や吊りボルト101を挿入できるようになっている。
【0037】
第2のアングル材5は、第2の半ダクト3の断面の両自由端縁に沿って延びて配設され、共用ボルト孔53が設けられた部材であり、第1のアングル材4と同形状、同寸法で同様にして第2の半ダクト3に配設されているため、詳細な説明を省略する。ここで、第1のアングル材4の垂直部41、水平部42および共用ボルト孔43に相当するものが、それぞれ垂直部51、水平部52および共用ボルト孔53となっている。また、第2のアングル材5の共用ボルト孔53は、第1のアングル材4の共用ボルト孔43と同位置に(重なるように)形成されている。
【0038】
このように、第1の半ダクト2および第1のアングル材4と第2の半ダクト3および第2のアングル材5とは、同形状、同寸法で同様にして配設されている。ここで、第1の半ダクト2に第1のアングル材4が取り付けられた状態を第1の半角ダクト20、第2の半ダクト3に第2のアングル材5が取り付けられた状態を第2の半角ダクト30とし、第1の半角ダクト20と半角ダクト30とが同形状、同寸法となっている。
【0039】
そして、断面が略四角い筒状になるように第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とが向かい合わせに配置され、アングル材4、5の所望の共用ボルト孔43、53に締結ボルト45が挿入され、締結ボルト45に締結ナット46が螺合(ボルト締結)されることで、第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とが筒状に組み付けられ、角ダクト1が構成されている。つまり、2つの別体である第1の半角ダクト20と半角ダクト30をボルト締結するだけで、角ダクト1が形成されるようになっている。
【0040】
ここで、第1のアングル材4の水平部42と第2のアングル材5の水平部52との間に、アングル材4、5間つまり半ダクト2、3間を気密するための気密シート(気密材)47が設けられている。
【0041】
このようにして第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とが筒状に組み付けられ、角ダクト1が構成された状態で、角ダクト1の軸線が直線状に延びるようになっている。すなわち、断面が略長方形の筒状で、その軸線(断面中心)が真っ直ぐ直線状に延びるようになっている。そして、軸線が略水平に延びて配設された状態、つまり、半ダクト2、3の主面部21、31が略水平に延びるように角ダクト1を横に寝かせて配設した状態で、アングル材4、5の水平部42、52が略水平に延びるようになっている。
【0042】
次に、このような構造の角ダクト1の吊り下げ方法を含む配設方法について説明する。
【0043】
まず、角ダクト1の配設位置に合わせて、吊りボルト101の上端側を構造体(例えば、建物の天井部)に固定する。次に、半ダクト2、3の主面部21、31が略水平に延びるように角ダクト1を横に寝かせた状態で、所望の共用ボルト孔43、53に吊りボルト101の下端側を挿入する。そして、アングル材4、5の水平部42、52を挟むように吊りボルト101にナット(図示せず)を締め付けることで、角ダクト1を構造体から吊り下げて配設する。
【0044】
以上のように、この角ダクト1によれば、第1のアングル材4と第2のアングル材5をボルト締結するだけで、断面が略コ字状の第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とを筒状に組み付けて、角ダクト1を形成・製造することができる。すなわち、第1の半ダクト2と第2の半ダクト3が厚板でハゼ接合できなくても、ボルト締結するだけで角ダクト1を形成することができ、溶接や溶接部の塗装を不要にすることができる。
【0045】
この結果、角ダクト1の形成に要する労力と時間を著しく削減することが可能となり、しかも、溶接作業や塗装作業をなくして作業環境を改善し、作業者の負担を著しく軽減することが可能となる。また、第1の半角ダクト20と第2の半角ダクト30(第1の半ダクト2と第2の半ダクト3)との組み付け、つまりボルト締結は、建設現場で容易に行えるため、第1の半角ダクト20と第2の半角ダクト30をバラバラにしてトラックで建設現場に運んだり、建設現場に仮置きしたりするができる。このため、トラックへの積載容積や仮置き容積を少なくして、運送費用や保管費用を軽減することが可能となる。
【0046】
さらに、第1の半ダクト2と第2の半ダクト3が厚板であっても、第1の半角ダクト20と第2の半角ダクト30(第1の半ダクト2と第2の半ダクト3)を別々に持ち運んだりすることで、作業者への負担を軽減することが可能となる。このようなことから、作業環境を含む安全性や省エネ化を向上させることが可能となる。
【0047】
また、第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とが同形状かつ同寸法で、第1のアングル材4と第2のアングル材5も同形状かつ同寸法のため、製造コストを削減したり取り扱いを容易にしたりすることが可能となる。
【0048】
しかも、第1の接続部と第2の接続部とがアングル材4、5で構成されて、半ダクト2、3に取り付けられているため、角ダクト1を容易かつ低コストで形成・製造することが可能となる。すなわち、
図3(b)に示すように、例えば、第1の接続部40を第1の半ダクト2と一体的に形成する場合、板取り(材料取り)が煩雑となり歩留まりも低下する。つまり、長方形の板材の四つ角をカットしなければならず、手間と費用がかかる。これに対して、この実施の形態では、第1のアングル材4を第1の半ダクト2に取り付けるだけであり、
図3(a)に示すように、長方形の板材をそのまま折り曲げるだけでよいため、板取り(材料取り)が容易・簡易で、角ダクト1を容易かつ低コストで形成・製造することが可能となる。
【0049】
また、直線状に延びる角ダクト1が略水平に延びて配設された状態で、アングル材4、5の水平部42、52が略水平に延びるため、この水平部42、52を利用して容易かつ安全に角ダクト1を配設することが可能となる。
【0050】
しかも、アングル材4、5の水平部42、52に吊りボルト孔としての共用ボルト孔43、53が形成されているため、この共用ボルト孔43、53に吊りボルト101を挿入することで、容易かつ安全に角ダクト1を配設する(吊り下げる)ことが可能となる。また、第1の半ダクト2と第2の半ダクト3との接続部であるアングル材4、5に吊りボルト101が届けばよいため、従来よりも吊りボルト101の長さを短くすることができ、しかも、従来のような受け鋼材(角ダクトの底を支える鋼材)も不要となる。
【0051】
すなわち、従来は、
図6に示すように、角ダクト100の底面側に板棒状の受け鋼材102を配置し、この受け鋼材102の両端部に形成された吊りボルト孔に吊りボルト101を挿入して、角ダクト100を吊り下げていた。このため、角ダクト100の底面側まで届くように吊りボルト101を長くする必要があり、しかも、受け鋼材102も必要であった。これに対して、この実施の形態では、
図1に示すように、角ダクト1の断面の垂直方向の中央部に位置するアングル材4、5に吊りボルト101が届けばよいため、吊りボルト101を従来よりも短くすることができる。しかも、アングル材4、5に吊りボルト孔としての共用ボルト孔43、53が設けられているため、受け鋼材102も不要となる。このようにして、角ダクト1の配設に要する費用を削減することが可能となる。
【0052】
しかも、共用ボルト孔43、53がアングル材4、5(角ダクト1)の長手方向に延びる長孔となっているため、角ダクト1の配設位置を容易かつ適正に調整することが可能となる。
【0053】
また、第1のアングル材4と第2のアングル材5との間に気密シート47が設けられているため、角ダクト1の気密性を確保することが可能となる。
【0054】
一方、上記のような角ダクト1の吊り下げ方法によれば、吊りボルト101の上端側を構造体に固定し、アングル材4、5の共用ボルト孔43、53に吊りボルト101の下端側を挿入、固定することで、容易かつ安全に角ダクト1を構造体から吊り下げることが可能となる。
【0055】
(実施の形態2)
図4は、この発明の実施の形態2に係るエルボ角ダクト6を示す概略正面図であり、
図5は、このエルボ角ダクト6の第1の角ダクト1
1を示す概略斜視図である。このエルボ角ダクト6は、実施の形態1における角ダクト1が複数、その軸線L1~L4を変えながら角度ダクト1の開口端同士で接続されているものであり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0056】
すなわち、この実施の形態では、4つの角ダクト1が開口端で接続されることで、90°曲がったエルボ角ダクト6が形成されている。換言すると、円弧状に90°曲がった従来の90°エルボ角ダクトを、その円弧の中心から放射状に分割したような4つの角ダクト1でエルボ角ダクト6が構成されている。ここで、エルボ角ダクト6の開口端側に位置する第1の角ダクト11と第4の角ダクト14とが同形状かつ同寸法で、それらの中間に位置する第2の角ダクト12と第3の角ダクト13とが同形状かつ同寸法となっている。
【0057】
これらの角ダクト11~14は、実施の形態1における角ダクト1と同等の構成であり、詳細な説明を省略するが、第1の角ダクト11を例にして説明する。
【0058】
すなわち、略コ字状の断面が延びる第1の半ダクト2および第2の半ダクト3と、第1の半ダクト2および第2の半ダクト3の断面の両自由端縁に沿って延びて配設された第1のアングル材4および第2のアングル材5と、を備える。そして、断面が略四角い筒状になるように第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とが向かい合わせに配置され、第1のアングル材4と第2のアングル材5がボルト締結されることで、第1の半ダクト2と第2の半ダクト3とが筒状に組み付けられている。
【0059】
このようにして筒状に組み付けられた状態で、両開口端面が軸線L1に対して所定の角度になるように形成され、両開口端面の端縁には、外側に折り曲げて立ち上げられたフランジ部23、33が形成されている。そして、隣接する角ダクト1同士をフランジ部23、33で接続することで、軸線L1~L4を変えながら(軸線L1~L4が曲がりながら)4つの角度ダクト1が連結されて、90°曲がったエルボ角ダクト6が形成されている。
【0060】
このような構成のエルボ角ダクト6によれば、実施の形態1の角ダクト1が複数、軸線L1~L4を変えながら角度ダクト1の開口端同士で接続されて形成されている。すなわち、軸線L1~L4が曲がったエルボ角ダクト6においても、実施の形態1と同等の効果が得られ、作業環境を含む安全性や省エネ化を向上させることが可能となる。
【0061】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態1において、第1の半角ダクト20と半角ダクト30とが同形状、同寸法となっているが、異なる形状、異なる寸法であってもよい。また、実施の形態1では、角ダクト1が直管ダクトの場合について説明したが、その他の角ダクトであってもよい。
【0062】
さらに、実施の形態2では、エルボ角ダクト6が4つの角ダクト1で構成されて、軸線が90°曲がっている場合について説明したが、4つ未満または5つ以上の角ダクト1で構成したり、軸線が90°以外の角度に曲がったエルボ角ダクトであったりしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 角ダクト
2 第1の半ダクト
3 第2の半ダクト
4 第1のアングル材(第1の接続部)
41 垂直部
42 水平部
43 共用ボルト孔(ボルト挿入孔、吊りボルト孔)
45 締結ボルト
47 気密シート(気密材)
5 第2のアングル材(第2の接続部)
51 垂直部
52 水平部
53 共用ボルト孔(ボルト挿入孔、吊りボルト孔)
6 エルボ角ダクト
101 吊りボルト