(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177744
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】掃除ロボット
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A47L9/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096054
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】照本 進
(72)【発明者】
【氏名】清水 耕史
【テーマコード(参考)】
3B057
【Fターム(参考)】
3B057DA00
(57)【要約】
【課題】吸引ノズルを基点としてヨーイング方向に回転することを抑制できる掃除ロボットを提供する。
【解決手段】吸引ノズル21を有し、少なくとも前後方向および左右方向に走行可能な掃除ロボット1であって、上下の移動を許容した状態で吸引ノズル21を支持する支持機構40を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ノズルを有し、少なくとも前後方向および左右方向に走行可能な掃除ロボットであって、
上下の移動を許容した状態で前記吸引ノズルを支持する支持機構を有していることを特徴としていることを特徴とする掃除ロボット。
【請求項2】
前記支持機構は、前記吸引ノズルのピッチング方向の回動を許容していることを特徴とする請求項1に記載の掃除ロボット。
【請求項3】
前記支持機構は、前記吸引ノズルのローリング方向の回動を許容していることを特徴とする請求項1に記載の掃除ロボット。
【請求項4】
前記支持機構は、前記吸引ノズルのヨーイング方向の回動を規制していることを特徴とする請求項1に記載の掃除ロボット。
【請求項5】
前記吸引ノズルは、左右方向に延びており、該吸引ノズルよりも剛性を有する前側保持体と後側保持体とにより前後に狭持されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の掃除ロボット。
【請求項6】
前記前側保持体の側面と前記後側保持体の側面とを連結する連結体を有していることを特徴とする請求項5に記載の掃除ロボット。
【請求項7】
前記後側保持体には、ボールキャスタが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の掃除ロボット。
【請求項8】
前記吸引ノズルの前後には、左右方向に延び、床面に当接する面材が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の掃除ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な掃除ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス、商業施設、宿泊施設等において、衛生管理の一環として掃除機を用いて床面に落ちている塵埃を捕集する掃除が行われている。近年では、人件費高騰、人材不足等の要因により、作業者に掛かる負担を軽減するべく、塵埃を吸引させながら床面を自律走行させることを可能とした掃除ロボットに対する需要が高まってきている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される掃除ロボットは、自走可能な本体と、本体の底面前部に左右方向に延びて設けられる吸込口を有する掃除手段と、を備えている。本体は、オムニホイールやメカナムホイールなどの駆動輪を有し、該駆動輪を制御することで、本体が一定の方向を向いたまま水平方向全方向に走行自在となっている。
【0004】
これによれば、吸込口を前方に配置したまま、本体の側面を室内の側壁面に近付け、側壁面に沿って走行させる壁沿い走行運転を行うことができ、側壁面に対し一旦後退、旋回、および、接近などの複雑な走行制御が不要となり、側壁面の際の掃除をやり残しなく短時間で行えるようになっている。また、吸込口は、本体の前方に配置されているため、室内の前壁面の際の掃除もやり残しなく行えるようになっている。このような掃除ロボットにあっては、吸込口を有する本体とは別体の吸引ノズルを設け、吸引ノズルを床面に近付けて配置するようなものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-166110号公報(第15頁、第12図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような掃除ロボットにあっては、吸引ノズルが床面に近い位置に配置されているため、本体の側面を室内の側壁面に近付ける横移動の際に、吸引ノズルが凹凸形状をなす床面の凸部に当接し、本体が吸引ノズルと床面の凸部との当接箇所を中心としてヨーイング方向に回動し、本体の側面を側壁面に沿って適切に配置できない虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、吸引ノズルを基点としてヨーイング方向に回転することを抑制できる掃除ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の掃除ロボットは、
吸引ノズルを有し、少なくとも前後方向および左右方向に走行可能な掃除ロボットであって、
上下の移動を許容した状態で前記吸引ノズルを支持する支持機構を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、吸引ノズルが床面の凸部と当接して上方に退避することで吸引ノズルと凸部との干渉を回避できるため、左右方向に走行中または旋回走行中に吸引ノズルを基点としてヨーイング方向に回転することを抑制でき、掃除ロボットを壁際に沿って適切に配置できる。
【0009】
前記支持機構は、前記吸引ノズルのピッチング方向の回動を許容していることを特徴としている。
この特徴によれば、吸引ノズルが床面の凸部と当接してピッチング方向に回動することで吸引ノズルと凸部との干渉を効果的に回避できることができる。
【0010】
前記支持機構は、前記吸引ノズルのローリング方向の回動を許容していることを特徴としている。
この特徴によれば、吸引ノズルが床面の凸部と当接してローリング方向に回動することで吸引ノズルと凸部との干渉を効果的に回避できることができる。
【0011】
前記支持機構は、前記吸引ノズルのヨーイング方向の回動を規制していることを特徴としている。
この特徴によれば、掃除ロボットの直進時にノズル装置が進行方向に直交した状態が保たれ、床面の塵埃を確実に吸引できる。
【0012】
前記吸引ノズルは、左右方向に延びており、該吸引ノズルよりも剛性を有する前側保持体と後側保持体とにより前後に狭持されていることを特徴としている。
この特徴によれば、前側保持体と後側保持体とにより吸引ノズルの剛性を高めることができるため、横長の吸引ノズルの変形を防ぎ、吸引力を略一定に保つことができる。
【0013】
前記前側保持体の側面と前記後側保持体の側面とを連結する連結体を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、吸引ノズルをさらに撓みにくくすることができる。
【0014】
前記後側保持体には、ボールキャスタが設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、吸引ノズルの移動がスムーズになるとともに、吸引ノズルと床面との接触面積を減らして過剰な吸い付きや摩擦抵抗を抑制できる。
【0015】
前記吸引ノズルの前後には、左右方向に延び、床面に当接する面材が配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、前後の面材により吸引ノズルの内圧が保たれるとともに、左右方向に移動しやすく、かつ該移動中にヨーイング方向の回動が規制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1における掃除ロボットを示す斜視図である。
【
図2】掃除ロボットの電気系統を示す概略図である。
【
図3】吸引ノズルおよび支持機構を示す斜視図である。
【
図6】通常状態の吸引ノズルおよび支持機構を示す側面図である。
【
図7】(a)(b)は掃除ロボットの通常掃除運転を示す概略図である。
【
図8】(a)(b)は掃除ロボットの壁際掃除運転を示す概略図である。
【
図9】(a)(b)は実施例1における掃除ロボットの横移動時の吸引ノズルの退避動作を示す概略図である。
【
図10】退避状態の吸引ノズルおよび支持機構を示す側面図である。
【
図11】本発明の実施例2における吸引ノズルの退避動作を示す概略図である。
【
図12】本発明の実施例3における吸引ノズルの退避動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る掃除ロボットを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0018】
実施例1に係る掃除ロボットにつき、
図1から
図10を参照して説明する。以下、
図1の紙面左下側を掃除ロボットの正面側(前方側)として説明する。
【0019】
掃除ロボット1は、オフィス、商業施設、宿泊施設等において、人の手を借りずに床面を自律走行しながら床面に落ちている塵埃を吸引・捕集することにより掃除を行うものである。
【0020】
図1に示されるように、掃除ロボット1は、前方下部にノズル装置20が取り付けられた走行台車10と、走行台車10の後方上部に載置された掃除機100と、から主に構成されている。尚、本実施例では、ノズル装置20は、掃除ロボット1よりも左右方向の幅が大きくなっているが、ノズル装置20の左右幅を掃除ロボット1と同一幅、または掃除ロボット1よりも小さくしてもよい。また、ノズル装置20の左右位置は自由に構成され、左右一方に片寄配置されていてもよい。
【0021】
まず、走行台車10について説明する。
図1および
図2に示されるように、走行台車10は、台車本体11と、ノズル装置20と、ノズル装置20を台車本体11に支持する支持機構40(
図3参照)と、台車本体11の前方側部に設けられる左右一対の車輪30R,30Lおよび台車本体11の後方側部に設けられる左右一対の車輪31R,31Lと、これらの車輪30R,30L,31R,31Lと個別に接続される4つの走行用モータ50と、制御装置60と、台車本体11の外周を覆う下部外装90と、から主に構成されており、走行用モータ50等に電力を供給可能な複数の走行用バッテリ70および後述する複数の吸引用バッテリ71(
図2ではそれぞれ1つのみ図示)が搭載されている。
【0022】
尚、車輪30R,30L,31R,31Lは複数のローラを有する、所謂メカナムホイールである。
【0023】
図2に示されるように、制御装置60は、センサ61からの距離情報および位置情報や4つの走行用モータ50に接続される図示しないロータリエンコーダからの回転数等の情報に基づいて、4つの走行用モータ50に対する印加電圧の大きさおよび入力方向を個別に切り替えることにより、車輪30R,30L,31R,31Lの回転速度および回転方向を個別に制御することができる。
【0024】
尚、
図2では、太実線および一点鎖線を電力供給線、点線を信号供給線として図示しており、一点鎖線で示す電力供給線は、スイッチ62によって接続が遮断されている状態であることを示している。また、本実施例において、センサ61は、レーザセンサにより構成されるが、超音波センサ等の他の非接触式センサにより構成されてもよい。
【0025】
これによれば、掃除ロボット1は、制御装置60により個別に制御される走行用モータ50による車輪30R,30L,31R,31Lの駆動と、床面に接触しているローラの転動とを組み合わせて、全方向へスムーズに移動可能となっている。
【0026】
また、制御装置60は、インバータ72の制御を行うことで、複数の吸引用バッテリ71から供給される直流電流を交流電流に変換して掃除機100を駆動させることができる。吸引用バッテリ71は、走行用バッテリ70とは独立しており、掃除機100に電力を供給するためのバッテリである。尚、複数の走行用バッテリ70および複数の吸引用バッテリ71は、いずれも同一規格であるため、互いに互換・兼用することができる。
【0027】
図1および
図2に示されるように、掃除機100は、商用電源にて動作する業務用掃除機であり、集塵部としての紙パックが収容される筐体110と、ノズル装置20および筐体110を接続するためのホース120(
図3参照)と、吸引用ファン140と、吸引用ファン140を回転させるための吸引用モータ150と、インバータ72に電気的に接続される差込プラグ付コード(図示略)とを備えている。掃除機100は、台車本体11上に載置されており、掃除機100の下部および吸引用バッテリ71等が上部外装80により覆われている。
【0028】
掃除機100は、内蔵される吸引用モータ150を駆動して吸引用ファン140を回転させることにより、筐体110内の空気を排気口から外部に排出し、筐体110内を相対的に負圧とすることで、ノズル装置20からホース120を介して紙パック内に塵埃を吸引・捕集できるようになっている。
【0029】
次に、ノズル装置20について説明する。
図3に示されるように、ノズル装置20は、支持機構40により台車本体11に支持されている。尚、支持機構40については後に詳述する。
【0030】
図3~
図5に示されるように、ノズル装置20は、左右方向に延びる吸引ノズル21と、吸引ノズル21を前後に挟む前側保持体22および後側保持体23と、前側保持体22および後側保持体23の側面同士を連結する左右一対の連結体24,24と、面材としての前側遮蔽体26および後側遮蔽体27と、を備えている。
【0031】
吸引ノズル21は、基部材211と、ガイド部材212,213と、を備えている。
【0032】
基部材211は、金属または樹脂などにより下向きコ字状に構成されており、左右方向に略水平に延びる上板部211aと、上板部211aの前端から下方に略垂直に延びる前板部211bと、上板部211aの後端から下方に略垂直に延びる後板部211cと、を有している。
【0033】
基部材211の上板部211aの左右中央部には貫通孔211dが設けられている。上板部211aには、ホース120が貫通孔211dに連通して接続されている。
【0034】
ガイド部材212,213は、基部材211における貫通孔211dの左右両側に固定されている。これらガイド部材212,213は、上向きコ字状の部材であり、これらの底面は、貫通孔211dに向けて上方に傾斜する傾斜面212a,213aとなっている。これにより、吸引流が貫通孔211dにガイドされやすくなっている。
【0035】
前側保持体22および後側保持体23は、吸引ノズル21よりも剛性の高い材料で構成されている。具体的には、前側保持体22および後側保持体23は、ポリアセタール等の樹脂材料により構成されており、前板部211bおよび後板部211cに対してボルト25,25’により固定されている。
【0036】
このようにノズル装置20は、比較的剛性の高い前側保持体22と後側保持体23とにより前後に狭持されているため、構造強度が高められている。
【0037】
前側保持体22の前面は、上方から下方に向けて後方に傾斜する傾斜面22aとなっている。後側保持体23の後面は、上方から下方に向けて前方側に傾斜する傾斜面23aとなっている。前側保持体22の下面22bは、後側保持体23の下面23bと略同一平面上に配置されている。また、後側保持体23の下面23bの前後長さは、前側保持体22の下面22bの前後長さよりも長い。
【0038】
後側保持体23には、左右方向に離間してボールキャスタ28が埋め込まれている(本実施例では4つ)。ボールキャスタ28のボール部28aは、後側保持体23の下面23bよりも下方に突出している。
【0039】
連結体24は、金属製の板材であり、前側保持体22および後側保持体23の側面に対してボルト29により固定されている。このように、前側保持体22および後側保持体23の側面同士は、連結体24,24により連結されているため、前側保持体22と後側保持体23とが一体化され、吸引ノズル21、前側保持体22、後側保持体23の相対的な歪みや相対的な位置ずれを防止できる。
【0040】
前側遮蔽体26は、ゴムなどの弾性部材により構成された左右方向に延びる帯板状の面材である。前側遮蔽体26は、吸引ノズル21と前側保持体22との間で狭持されている。
【0041】
後側遮蔽体27は、ゴムなどの弾性部材により構成された左右方向に延びる帯板状の面材である。本実施例では、ボールキャスタ28のボール部28aは、後側保持体23の下面23bよりも下方に突出し、後側遮蔽体27よりも前側遮蔽体26の下方への移動量が大きく、後側遮蔽体27は、前側遮蔽体26よりも変形しにくくなっている。後側遮蔽体27は、吸引ノズル21と後側保持体23との間で狭持されている。
【0042】
前側遮蔽体26の下端部および後側遮蔽体27の下端部は、前側保持体22の下面22bおよび後側保持体23の下面23bよりも下方に配置されている。
【0043】
吸引ノズル21、連結体24,24、前側遮蔽体26および後側遮蔽体27で囲まれた空間はノズル装置20の吸引口20aとして機能している。吸引口20aは、ガイド部材212,213により吸引ノズル21の貫通孔211dから遠い左右端部の断面積が小さくなっているため、吸引口20aの左右端部の吸引力が低下しにくくなっている。
【0044】
次に、支持機構40について説明する。
図3および
図6に示されるように、支持機構40は、左右一対のベース体41,41と、左右一対のアーム42,42と、から構成されている。
【0045】
ベース体41は、左右一対のフレーム部材43,43’と、緩衝部材44と、を備える。フレーム部材43は、台車本体11の前面に固定される固定板部43aと、固定板部43aの右端から前方に逆L字状に延びる支持板部43bと、を有する。支持板部43bには、前方から後方に向けて斜め上方に傾斜して延びる傾斜溝43cが形成されている。尚、フレーム部材43’は、フレーム部材43と左右反転した形状であるため、具体的な構造の説明は省略する。
【0046】
緩衝部材44は、筒状の弾性部材から構成されており、支持板部43bの下部同士を左右に繋ぐ連結軸45の外周に固定されている。緩衝部材44および連結軸45は、傾斜溝43cよりも下方に配置されている。この緩衝部材44は、アーム42が下方に回動しないように下限位置を規定している。
【0047】
アーム42は、金属板を曲げ加工することにより構成されており、ノズル装置20の上面と略水平に延びる第1部位42aと、第1部位42aの後端から斜め上方に延びる第2部位42bと、第2部位42bの後端側方からそれぞれ略直角に立ち上がる第3部位42c,42cと、を有している。
【0048】
第1部位42aの前端部は、吸引ノズル21の上板部211aに固定されている。
【0049】
第3部位42c,42cは、左右に貫通する貫通孔42d,42dを備え、貫通孔42d,42dには軸46が挿通されている。軸46の両端部は、左右の傾斜溝43c,43c’に挿通されている。また、軸46には、第3部位42cとフレーム部材43,43’との間に配置されるスペーサ47が固定されているとともに、フレーム部材43,43’の外側に抜け止め部材48が固定されている。
【0050】
これにより、アーム42は、傾斜溝43c,43c’に沿って移動可能に支持されている。言い換えれば、支持機構40は、ノズル装置20の上下のスライド移動を許容した状態で該ノズル装置20を台車本体11に支持している。
【0051】
また、支持機構40は、左右一対のアーム42,42でノズル装置20をバランスよく支持することができるため、ノズル装置20の自重による傾きや歪みなどを抑制できるとともに、ノズル装置20のヨーイング方向の回動を規制している。
【0052】
また、アーム42は、スペーサ47によりベース体41に対する左右方向の相対移動が規制されている。すなわち、支持機構40は、ノズル装置20のローリング方向の回動を規制している。
【0053】
次いで、掃除ロボット1の通常掃除運転および壁際掃除運転を概略的に説明する。
【0054】
図7(a)(b)に示されるように、室内の中心部を掃除する時には、掃除ロボット1は、前方にノズル装置20を向けた状態で掃除機100を可動させ、前方に向かって移動する通常掃除運転を行う。尚、掃除ロボット1は、進行方向の壁際まで到達すると、180度旋回し走行軌道を左右方向にノズル装置20の幅分ずらした位置において反対方向(すなわち後方)を向き、反対方向に向かって移動して通常掃除運転を繰り返す(図示略)。
【0055】
一方、室内の壁際を掃除する時には、
図8(a)に示されるように、掃除ロボット1は、前方にノズル装置20を向けた状態で側方すなわち壁W際に移動した後、
図8(b)に示されるように、掃除機100を可動させ、壁Wに沿って前方に移動する壁際掃除運転を行う。
【0056】
ノズル装置20は、掃除ロボット1よりも左右方向の幅が大きくなっているため、ノズル装置20を壁Wに出来るだけ近付けて配置でき、壁際の掃除をやり残しなく行えるようになっている。
【0057】
図6に戻って、掃除ロボット1の前方への走行中には、ノズル装置20は、ボールキャスタ28のボール部28a、前側遮蔽体26、後側遮蔽体27が床面Fに接している。これによれば、ボール部28aによりノズル装置20の移動が安定するとともに、床面Fとの接触面積を減らして過剰な吸い付きや摩擦抵抗を低減できる。
【0058】
また、ボールキャスタ28は、左右方向の複数点でノズル装置20を支持するため、ノズル装置20のローリング方向の傾きがより規制される。
【0059】
また、ボールキャスタ28が前側遮蔽体26および後側遮蔽体27よりも後方側に配置されており、その重心バランスにより軸46を中心にノズル装置20およびアーム42が反時計回り(ピッチング方向)に僅かに回動している。
【0060】
また、前側遮蔽体26および後側遮蔽体27により、吸引口20aと床面Fとの隙間が小さくなっているため、ノズル装置20内の内圧が保たれる。
【0061】
また、前側遮蔽体26は、後側遮蔽体27よりも変形しやすいので、床面F上の塵埃を吸引口20a内に導きやすく、後側遮蔽体27で確実に捕捉できる。
【0062】
ところで、床面Fには、凹凸が形成されていることが多い。掃除ロボット1の左右方向への移動時には、ノズル装置20が床面Fの凸部F1に当接することがある(
図9(a)参照)。
【0063】
次いで、掃除ロボット1の左右方向への移動時において、ノズル装置20が床面Fの凸部F1に当接したときのノズル装置20の動きについて説明する。尚、
図9及び
図10では、説明の便宜上、床面Fの凹凸やノズル装置20の動きを実際よりも大きく図示している。
【0064】
図9(a)は、掃除ロボット1の右方向への移動時において、ノズル装置20が床面Fの凸部F1に当接した状態を示している。
【0065】
図9(b)、
図10に示されるように、
図9(a)の状態から掃除ロボット1がさらに右方向に移動すると、凸部F1からノズル装置20が反力を受けて、左右のアーム42が各傾斜溝43cに沿って上方に移動する。このとき、アーム42は、スペーサ47によりローリング方向の回動が規制されているため、ノズル装置20は略水平状態を保ったまま上方に移動する。
【0066】
また、掃除ロボット1がさらに右方向に移動し、ノズル装置20が床面Fの凸部F1を越えると、ノズル装置20が自重により元の位置に戻るようになっている。
【0067】
これによれば、掃除ロボット1の左右方向への移動時に、ノズル装置20と床面Fの凸部F1との干渉が回避されるため、ノズル装置20と床面Fの凸部F1との接触部分を基点として、掃除ロボット1がヨーイング方向に回動することを抑制できる。そのため、掃除ロボット1を適切に壁際に配置することができる。尚、掃除ロボット1の旋回走行中にもと同様の効果を得ることができる。さらに尚、床面Fの凸部F1に限られず、掃除ロボット1の左右方向への移動時または旋回走行時に、ノズル装置20が床面Fの塵埃等に当接した際も同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、支持機構40は、ノズル装置20のヨーイング方向の回動を規制しているため、直進時にノズル装置20が進行方向に直交した状態が保たれ、確実に床面Fの塵埃を吸引できる。
【0069】
また、吸引ノズル21は、該吸引ノズル21よりも剛性を有する前側保持体22と後側保持体23とにより剛性が高められているので、横長の吸引ノズル21の変形を防ぎ、吸引力を略一定に保つことができる。
【0070】
また、前側保持体22と後側保持体23とは連結体24,24により連結されているので、吸引ノズル21をさらに撓みにくくできる。
【0071】
また、吸引ノズル21の前後には、床面に当接する前側遮蔽体26および後側遮蔽体27が配置されているので、吸引ノズル21の内圧が保たれるとともに、左右方向に移動を妨げにくく、かつ掃除ロボット1にヨーイング方向の力が作用したときには、前側遮蔽体26および後側遮蔽体27が抵抗となってヨーイング方向の回動が規制される。
【0072】
また、掃除ロボット1の前方への走行中にノズル装置20が床面Fの凸部F1や障害物に当接しても前側保持体22の前面である傾斜面22aによってノズル装置20が上方へガイドされる。
【0073】
また、後側保持体23は、前側保持体22よりも重量が大きく、ノズル装置20は後重心となっているため、掃除ロボット1の前方への走行中にノズル装置20が床面Fの凸部F1や障害物に当接してもノズル装置20が上方へガイドされやすい。
【0074】
また、掃除ロボット1が後方、すなわちノズル装置20とは反対へ移動中にノズル装置20が床面Fの凸部F1や障害物に当接しても後側保持体23の後面である傾斜面23aによってノズル装置20が上方へガイドされる。
【0075】
尚、本実施例では、アーム42が傾斜溝43cに沿って斜め上方に移動する形態を例示したが、アーム42が軸46を中心として上方に回転しながら傾斜溝43cに沿って斜め上方に移動してもよい。