(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177747
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】車載表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20241217BHJP
B60K 37/00 20240101ALI20241217BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60K37/00 D
B60H1/34 651C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096064
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 悠樹
【テーマコード(参考)】
3D344
3L211
【Fターム(参考)】
3D344AA05
3D344AA23
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD11
3L211BA42
3L211DA56
(57)【要約】
【課題】簡潔な構成で、フロントガラスの表示光を受ける領域の曇り止めを行うことができる車載表示装置を提供する。
【解決手段】車載表示装置100は、車両1のダッシュボード2の中に位置し、画像を表す表示光Lを発する表示器10と、表示器10を覆うカバーガラス30と、表示器10から発せられ、カバーガラス30を透過してフロントガラス3に向かう表示光Lを通過させる筒状体20と、を備える。筒状体20には、デフロスター50による風であるデフロスター風Dを筒状体20の中に送る送風口21aが形成されている。カバーガラス30は、送風口21aから筒状体20の中へ送られたデフロスター風Dを受ける傾斜面31を有し、傾斜面31によってデフロスター風Dをフロントガラス3に向けて案内する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のダッシュボードの中に位置し、画像を表す表示光を発する表示器と、
前記表示器を覆うカバーガラスと、
前記表示器から発せられ、前記カバーガラスを透過して前記車両のフロントガラスに向かう前記表示光を通過させる筒状体と、を備え、
前記筒状体には、デフロスターによる風であるデフロスター風を前記筒状体の中に送る送風口が形成され、
前記カバーガラスは、前記送風口から前記筒状体の中へ送られた前記デフロスター風を受ける傾斜面を有し、前記傾斜面によって前記デフロスター風を前記フロントガラスに向けて案内する、
車載表示装置。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記送風口の側に位置する第1端部と、前記第1端部よりも前記車両の前側に位置する第2端部と、を有し、前記第1端部よりも前記第2端部のほうが上方に位置するように傾斜し、
前記筒状体には、前記カバーガラスの前記第2端部を覆うエッジカバー部が設けられている、
請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記送風口の下端は、前記送風口の上端よりも後方に位置する、
請求項1又は2に記載の車載表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載表示装置として、例えば特許文献1には、車両のダッシュボードの中に設けられ、車両のフロントガラスに向けて画像を表す表示光を発することで、運転者等のユーザに当該画像を視認させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の車載表示装置では、ダッシュボードにおいて、表示光が発せられる開口の位置を避けた位置に、デフロスターによる風をフロントガラスに送る送風口を設ける必要があった。しかしながら、この構造では、フロントガラスの表示光を受ける領域の曇り止めを充分に行うことができない虞がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡潔な構成で、フロントガラスの表示光を受ける領域の曇り止めを行うことができる車載表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る車載表示装置は、
車両のダッシュボードの中に位置し、画像を表す表示光を発する表示器と、
前記表示器を覆うカバーガラスと、
前記表示器から発せられ、前記カバーガラスを透過して前記車両のフロントガラスに向かう前記表示光を通過させる筒状体と、を備え、
前記筒状体には、デフロスターによる風であるデフロスター風を前記筒状体の中に送る送風口が形成され、
前記カバーガラスは、前記送風口から前記筒状体の中へ送られた前記デフロスター風を受ける傾斜面を有し、前記傾斜面によって前記デフロスター風を前記フロントガラスに向けて案内する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡潔な構成で、フロントガラスの表示光を受ける領域の曇り止めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車載表示装置の車両への搭載態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る車載表示装置100は、
図1に示すように、車両1のダッシュボード2(インストルメントパネルを含む)に設けられ、車両1のフロントガラス3(ウインドシールド)の下端領域に設けられたセラミック形成部3aに向けて画像を表す光(以下、表示光L)を発する。
【0011】
セラミック形成部3aは、フロントガラス3のうち、黒色のセラミックが焼付塗装によって形成された部分であり、通称、黒セラ部と呼ばれる。フロントガラス3におけるセラミック形成部3aの内面には、表示光Lをユーザ4に向けて反射させる反射鏡面が形成される。ユーザ4は、例えば、車両1の運転者である。
【0012】
なお、セラミック形成部3aは、フロントガラス3の内面(ユーザ4に向く面)に設けられていてもよいし、フロントガラス3の外面に設けられていてもよい。また、フロントガラス3が複数枚のガラスの合わせガラスから構成される場合、セラミック形成部3aは、フロントガラス3の内部に設けられていてもよい。
【0013】
セラミック形成部3aで反射した表示光Lは、ユーザ4側へと向かう。ユーザ4は、自身の視点をアイボックス5内におくことで、表示光Lが表す画像の虚像を視認することができる。当該画像は、ユーザ4にとって、セラミック形成部3aに表示されているように見える。当該画像は、例えば、車両1に関する各種情報(以下、車両情報と言う)を示す。車両情報は、車両1自体の情報だけでなく、車両1の周囲の情報などの車両1の外部情報を含んでいてもよい。
【0014】
車載表示装置100は、表示器10と、筒状体20と、カバーガラス30と、制御部40と、を備える。
【0015】
図1は、車載表示装置100の車両1への搭載態様を示す図である。なお、同図において、模式的に示す制御部40、後述の画像表示領域10a及びデフロスター50以外の着色された部分は各構成の概略断面を示す。また、同図では、車両1の方向として、前方Fd、後方Bd、上方Ud、下方Ddを示した。以下の説明で用いる、前、後、上、下の各方向は、特に断りがない場合は、図示の方向に従う。
【0016】
表示器10は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等からなり、ダッシュボード2の中に設けられる。表示器10は、画像表示領域10aにおいて車両情報を示す画像を表示可能である。つまり、画像表示領域10aは、表示器10における画素形成領域であって、画像の表示可能領域である。画像表示領域10aからフロントガラス3(具体的にはセラミック形成部3a)に向けて、当該画像を表す表示光Lが発せられる。
【0017】
筒状体20は、例えばダッシュボード2の一部によって形成され、表示器10から発せられ、フロントガラス3に向かう表示光Lを通過させる。つまり、筒状体20は、表示器10とフロントガラス3の間に位置する。なお、筒状体20は、ダッシュボード2に組み合わされる部材であってもよい。表示器10は、筒状体20の下端の下方に位置し、筒状体20の内部に表示光Lを発する。筒状体20の上端は、ダッシュボード2から表示光Lが発せられる部分である開口部20aを形成する。
【0018】
本実施形態の筒状体20は、その外周及び内周が概ね四角形状の角筒状に形成されている。筒状体20は、筒状体20のうち後方に位置し、且つ、前方に向く内側面21を有する。内側面21は、車両1のダッシュボード2の天面2aと繋がる。
【0019】
筒状体20の内側面21には、車両1に搭載されたデフロスター50による風であるデフロスター風Dを筒状体20の中に送る送風口21aが形成されている。例えば、送風口21aは、車両1の前方に向かって開く。
【0020】
デフロスター50と送風口21aの間にはダクト51が設けられ、デフロスター50からのデフロスター風Dは、ダクト51を通って、送風口21aから筒状体20の中に送られる。そして、デフロスター風Dは、送風口21aから筒状体20を通ってフロントガラス3に到る。つまり、筒状体20は、表示光Lの光路だけでなく、デフロスター風Dの流路としても用いられる。車載表示装置100によれば、このように簡潔な構成の筒状体20を用いて、フロントガラス3の表示光Lを受ける領域の曇り止めを行うことができる。
【0021】
図1に示すように、送風口21aの下端は、送風口21aの上端よりも後方に位置する。この位置関係により、送風口21aの像がフロントガラス3で反射してユーザ4に視認されること(送風口21aの像映り)を抑制することができる。なお、送風口21aの形状及び位置は、ユーザ4がアイボックス5に視点をおいたときに、送風口21aの像映りが生じることを抑制できれば任意である。例えば、送風口21aの上端よりも内側面21の上端が前方に位置するように、内側面21を傾斜させることで、送風口21aの像映りを抑制してもよい。ただし、この場合においても、送風口21aの下端は、送風口21aの上端よりも後方に位置していることが好ましい。
【0022】
筒状体20は、黒色等の吸光部材で構成される、又は、反射を低減するための表面処理が施されて構成される。これにより、筒状体20の内部に入り込んだ後に反射する太陽光、セラミック形成部3a以外の箇所で反射する表示光Lなどの迷光が、アイボックス5に到達することを抑制することができる。
【0023】
カバーガラス30は、有機ガラス又は無機ガラスからなり、表示器10を覆って設けられる。例えば、カバーガラス30は、透明接着剤により、画像表示領域10aを覆って表示器10に固定される。カバーガラス30は、画像表示領域10aよりも大きい範囲に亘って表示器10を覆う。なお、カバーガラス30は、図示せぬ支持体に支持されて、表示器10と間隔を空けて設けられていてもよい。
【0024】
表示器10から発せられた表示光Lは、カバーガラス30を透過して、筒状体20を通ってフロントガラス3に到る。
【0025】
カバーガラス30は、送風口21aから筒状体20の中へ送られたデフロスター風Dを受ける傾斜面31を有し、傾斜面31によってデフロスター風Dをフロントガラス3に向けて案内する。これにより、筒状体20を経てフロントガラス3にデフロスター風Dを効率的に向かわせることできると共に、カバーガラス30の表面に塵が溜まることも抑制できる。
【0026】
傾斜面31は、送風口21aの側に位置する第1端部E1と、第1端部E1よりも車両1の前側に位置する第2端部E2と、を有し、第1端部E1よりも第2端部E2のほうが上方に位置するように傾斜する。傾斜面31は、送風口21aから送られるデフロスター風Dが筒状体20の中で滞留することを防止するために、図示のように凹状の曲面による傾斜面であることが好ましい。これにより、表示器10から筒状体20にさしかかるデフロスター風Dが滞留せずに、開口部20aからスムーズに送り出されるため、デフロスター風Dの風圧の低下が抑制され、フロントガラス3の曇りを効率良く除去することができる。
【0027】
また、カバーガラス30の傾斜面31に対し、太陽光等の外光による品位低下や落下物による擦傷を避けるために、AR(Anti-Reflection)、AG(Anti-Glare)、AF(Anti-Fingerprint)などの表面処理を施してもよい。さらに、カバーガラス30の傾斜面31に太陽光が照射された場合に、(i)太陽光が反射して直接、もしくはフロントガラス3経由でアイボックス5に到達しないように、傾斜面31による集光ポイントを意図的に設定したり、(ii)傾斜面31の形状を太陽光がアイボックス5以外の領域に反射するように設定したりしてもよい。なお、傾斜面31は、平面を含む傾斜面であってもよい。
【0028】
筒状体20には、カバーガラス30の第2端部E2を覆うエッジカバー部20bが設けられている。このエッジカバー部20bによって、第2端部E2の像がフロントガラス3で反射してユーザ4に視認されること(第2端部E2の像映り)を防止できる。なお、エッジカバー部20bは、図示のように筒状体20と一体に形成されていてもよいし、筒状体20と別体であってもよい。また、図示のように、送風口21aの上端は、カバーガラス30の第1端部E1よりも前方に迫り出すように位置する。この構造により、第1端部E1の像がフロントガラス3で反射してユーザ4に視認されること(第1端部E1の像映り)も防止できる
【0029】
制御部40は、表示器10の表示動作を制御するマイクロコンピュータからなり、例えば、ダッシュボード2の中に配設されたPCB(Printed Circuit Board)に実装される。
【0030】
デフロスター50は、車両1に搭載されたHVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)モジュールの一機能として実現される。デフロスター50の動作の制御は、車両1に搭載された図示せぬECU(Electronic Control Unit)によって行われてもよいし、制御部40によって行われてもよい。
【0031】
なお、本発明は以上の実施形態、変形例及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0032】
車載表示装置100は、フロントガラス3の透過領域に向けて表示光Lを発し、フロントガラス3で反射した表示光Lによって、表示光Lが表す画像の虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であってもよい。この場合、ダッシュボード2の中に位置する表示器10から発せられる表示光Lを、(i)フロントガラス3に直接到達させる構成を採用してもよいし、(ii)1枚又は複数枚のミラーで反射させてからフロントガラス3に到達させる構成を採用してもよい。また、車載表示装置100がヘッドアップディスプレイ装置として構成される場合、筒状体20は、表示器10からフロントガラス3までの表示光Lの光路の一部を囲んでいればよい。そして、表示器10は、筒状体20の下方に位置していなくともよい。
【0033】
以上の説明では、本開示の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0034】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0035】
100…車載表示装置
1…車両
2…ダッシュボード、2a…天面
3…フロントガラス、3a…セラミック形成部
4…ユーザ、5…アイボックス
10…表示器、10a…画像表示領域、L…表示光
20…筒状体、20a…開口部、20b…エッジカバー部
21…内側面、21a…送風口
30…カバーガラス、31…傾斜面、E1…第1端部、E2…第2端部
40…制御部
50…デフロスター、51…ダクト、D…デフロスター風