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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177748
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20241217BHJP
   H02K 3/48 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096068
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】全 哲洙
(72)【発明者】
【氏名】中島 雅祐
【テーマコード(参考)】
5H604
5H609
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604BB01
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC14
5H604DA05
5H609PP02
5H609PP09
5H609QQ04
5H609QQ13
5H609QQ18
5H609RR74
(57)【要約】
【課題】コイルの冷却効率の向上を実現することができる固定子を提供する。
【解決手段】ステータ4は、ティース44と、コイル部材42と、を備えている。コイル部材42は、ティース44に装着されている。コイル部材42は、コイル45と、モールド46と、を有している。コイル45は、ティース44に巻回されるように螺旋状に延在している。モールド46は、コイル45に直接的に接触するようにコイル45を包んでいる。モールド46は、冷却流路460を含んでいる。モールド46は、ダイヤモンドによって構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティースと、
前記ティースに装着されたコイル部材と、を備え、
前記コイル部材は、
前記ティースに巻回されるように螺旋状に延在するコイルと、
前記コイルに直接的に接触するように前記コイルを包み且つ冷却流路を含むモールドと、を有し、
前記モールドは、ダイヤモンドによって構成されている、固定子。
【請求項2】
前記コイルは、平角コイルである、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記ティースと前記コイル部材との間には、隙間が存在する、請求項1に記載の固定子。
【請求項4】
前記冷却流路は、前記コイルの外側に位置する外側領域を含んでいる、請求項1に記載の固定子。
【請求項5】
前記冷却流路は、前記コイルの内側に位置する内側領域を含んでいる、請求項1に記載の固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
ティースと、ティースに巻回されたコイルとを備えるステータが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなステータは、コイルを包み且つ冷却流路を含む樹脂を備えている。コイルは、冷却流路を流れる冷媒によって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-41770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなステータでは、コイルの冷却効率の向上が求められる場合がある。しかし、樹脂の熱伝導率が比較的低いため、樹脂に形成された冷却流路を流れる冷媒によるコイルの冷却には限界があった。
【0005】
本発明は、コイルの冷却効率の向上を実現することができる固定子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の固定子は、ティースと、ティースに装着されたコイル部材と、を備え、コイル部材は、ティースに巻回されるように螺旋状に延在するコイルと、コイルに直接的に接触するようにコイルを包み且つ冷却流路を含むモールドと、を有し、モールドは、ダイヤモンドによって構成されている。
【0007】
この固定子では、コイル部材は、コイルに直接的に接触するようにコイルを包み且つ冷却流路を含むモールドを有している。これにより、冷却流路を流れる冷媒によってコイルを冷却することができる。しかも、モールドは、ダイヤモンドによって構成されている。ダイヤモンドが電気絶縁性を有しているため、冷却流路を流れる冷媒として水性冷媒を用いることができる。そのため、例えば油性冷媒を用いる場合に比べて、コイルの冷却効率を向上させることができる。また、ダイヤモンドの熱伝導率が比較的大きいため、例えばモールドが樹脂を含んでいる場合に比べて、コイルの冷却効率を向上させることができる。よって、この固定子によれば、コイルの冷却効率の向上を実現することができる。
【0008】
コイルは、平角コイルであってもよい。これにより、コイル部材の製造を三次元造形法によって容易に実現することができる。
【0009】
ティースとコイル部材との間には、隙間が存在してもよい。これにより、ティースにコイル部材を適切に装着することができる。
【0010】
冷却流路は、コイルの外側に位置する外側領域を含んでいてもよい。これにより、冷却流路の容積を確保することができる。
【0011】
冷却流路は、コイルの内側に位置する内側領域を含んでいてもよい。これにより、コイルの内側からコイルを効率良く冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コイルの冷却効率の向上を実現することができる固定子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の電動機の断面図である。
図2図1のII-II線に沿っての断面図である。
図3図2のIII部分の拡大図である。
図4図3のIV-IV線に沿っての断面図である。
図5図4のV-V線に沿っての断面図である。
図6図4のVI-VI線に沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1及び図2に示されるように、電動機1は、シャフト2と、ロータ(回転子)3と、ステータ(固定子)4と、ケース5と、軸受6と、を備えている。電動機1は、例えばモータである。電動機1は、例えば自動車又は航空機等に搭載される。電動機1は、例えば燃料ポンプの駆動源である。電動機1は、例えば発電機であってもよい。
【0016】
シャフト2は、例えば円柱状を呈している。シャフト2は、軸線Axを有している。シャフト2は、軸線Axを中心に回転可能である。ロータ3は、例えば、軸線Axを中心線とする円筒状を呈している。ロータ3の内周面は、シャフト2の外周面に固定されている。ロータ3は、例えば永久磁石を有している。
【0017】
ステータ4は、ロータ3の外側に配置されている。ステータ4は、ステータコア41と、コイル部材42と、を備えている。ステータコア41は、例えば分割コアである。ステータコア41は、ヨーク43と、複数のティース44と、を有している。ヨーク43は、例えば、軸線Axを中心線とする円筒状を呈している。ヨーク43は、ステータコア41のうちの一部の領域である。
【0018】
ティース44は、例えば長方体状を呈している。シャフト2の軸方向(軸線Axに平行な方向)におけるティース44の幅は、シャフト2の回転方向におけるティース44の幅よりも長い。ティース44は、ヨーク43の内周面から突出している。ティース44は、シャフト2の回転方向において所定の間隔で並んでいる。互いに隣接するティース44の間には、スロット(空間)が形成されている。ティース44は、ステータコア41のうちの一部の領域である。ティース44は、ヨーク43と同一の材料によって一体的に形成されている。ステータコア41は、例えば軟磁性材料によって形成されている。ステータコア41の材料は、例えば積層鉄心又は圧粉鉄心等である。
【0019】
コイル部材42は、例えば、シャフト2の径方向に平行な線を中心線とする筒状を呈している。シャフト2の径方向に垂直な平面におけるコイル部材42の断面は、例えば矩形環状を呈している。シャフト2の軸方向におけるコイル部材42の幅は、シャフト2の回転方向におけるコイル部材42の幅よりも長い。コイル部材42は、ティース44を囲んでいる。コイル部材42は、ティース44におけるヨーク43とは反対側からティース44に装着されている。つまり、ティース44は、コイル部材42に挿入されている。コイル部材42に交流電流が提供されると回転磁界が発生する。ロータ3は、この回転磁界から生じるトルクの作用によって回転する。ロータ3が回転すると、シャフト2もロータ3に従って回転する。
【0020】
ケース5は、ロータ3及びステータ4等を収容している。ケース5は、例えば、軸線Axを中心線とする円筒状を呈している。ステータ4は、ケース5の内周面に固定されている。軸受6は、シャフト2の軸方向におけるケース5の両端に設けられている。シャフト2は、軸受6を介してケース5に支持されている。なお、ケース5の内部には、ステータ4を冷却するための冷却ジャケット等が収容されていてもよい。冷却ジャケットは、ステータ4を囲む円筒状を呈していてもよい。冷却ジャケットは、ケース5の内周面に固定されていてもよい。
【0021】
図3に示されるように、コイル部材42は、コイル45と、モールド46と、を有している。コイル45は、ティース44に巻回されるように螺旋状に延在している。シャフト2の軸方向におけるコイル45の幅は、シャフト2の回転方向におけるコイル45の幅よりも長い。コイル45は、例えば平角コイルである。コイル45は、例えばいわゆるエッジワイズコイル等である。
【0022】
コイル45は、互いに積層された複数のコイル導体を有している。コイル導体は、積層方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈している。コイル導体は、板状を呈している。コイル導体の辺部の幅は、コイル導体の厚さよりも大きい。積層方向において隣接する各コイル導体の端部は、互いに繋がっている。積層方向において隣接する各コイル導体は、互いに離れている。コイル45の材料は、例えば銅又はアルミニウム等である。
【0023】
モールド46は、コイル45を包んでいる。モールド46は、コイル45の表面の全領域を包んでいる。モールド46は、コイル45の表面の全領域に接触している。モールド46は、各コイル導体の間にも存在する。コイル45は、モールド46から露出していない。コイル部材42の表面は、モールド46によって形成されている。
【0024】
モールド46は、コイル45に直接的に接触している。本実施形態では、モールド46は、コイル45の表面の全領域に直接的接触している。モールド46とコイル45とは、一体的に形成されている。モールド46及びコイル45のそれぞれは、一体化されたコイル部材42の一部の領域である。モールド46とコイル45とは、互いに繋がっている。モールド46とコイル45との間には、介在物が存在しない。なお、モールド46とコイル45との間には、意図しない異物が存在する場合がある。コイル部材42は、例えば三次元造形法によって製造されている。モールド46及びコイル45は、三次元造形法によって同時に造形される。
【0025】
モールド46は、ダイヤモンドを含んでいる。本実施形態では、モールド46は、ダイヤモンドのみを含んでいる。つまり、モールド46は、ダイヤモンドによって構成されている。モールド46は、ダイヤモンド以外の成分を含んでいない。モールド46は、熱伝導率がダイヤモンドよりも小さい成分を含んでいない。モールド46は、例えば樹脂等を含んでいない。なお、モールド46は、ダイヤモンド以外の成分として例えば熱伝導率がダイヤモンドの熱伝導率以上の成分を含んでいてもよい。また、モールド46には意図しない異物が存在する場合がある。
【0026】
一体化されたコイル部材42は、ティース44に装着されている。ティース44とコイル部材42との間には、隙間Sが存在する。ティース44の外周の長さは、コイル部材42の内周の長さよりも短い。コイル部材42がティース44に装着された状態において、コイル部材42の内壁面は、ティース44から離れた領域を含んでいる。つまり、コイル部材42は、ティース44に接触しない領域を含んでいる。
【0027】
図4及び図5に示されるように、モールド46は、本体部465と、一対の側壁部466と、を含んでいる。本体部465は、ヨーク43の内側に位置している。コイル45は、本体部465によって包まれている。一対の側壁部466は、ヨーク43に対してシャフト2の軸方向における両側に位置している。一対の側壁部466は、シャフト2の軸方向においてヨーク43を挟んでいる。
【0028】
モールド46は、冷却流路460を含んでいる。冷却流路460は、外側領域461と、内側領域462と、を含んでいる。本実施形態においては、冷却流路460はコイル45の軸方向両側のコイルエンドに対向して設けられている。そのため、コイルエンドの一方側、他方側は、それぞれ外側領域461と、内側領域462に挟まれ配置されている。外側領域461は、シャフト2の軸方向(コイル45の長さ方向)において、コイル45の外側に位置している。本実施形態では、外側領域461は、モールド46の本体部465及び側壁部466に跨って形成されている。外側領域461は、シャフト2の軸方向から見た場合に、コイル45の射影よりも大きい領域をカバーしてもよい。つまり、シャフト2の軸方向から見た場合に、外側領域461の外縁は、コイル45の外縁よりも外側に位置していてもよい。
【0029】
図5に示されるように、外側領域461は、シャフト2の軸方向から見た場合に、モールド46の外縁の付近まで広がっている。外側領域461は、側壁部466の端面46aに開口する開口461aを含んでいる。本実施形態では、開口461aは、ヨーク43の径方向外側に向かって開口している。外側領域461は、開口461aを介して外部の流路と繋がっている。なお、開口461aは、外側領域461への冷媒の流入口であってもよいし、冷媒の流出口であってもよい。
【0030】
図6に示されるように、内側領域462は、シャフト2の軸方向から見た場合に、コイル45と重ならないようにモールド46の外縁の付近まで広がっている。内側領域462は、側壁部466の端面46aに開口する開口462aを含んでいる。内側領域462は、開口462aを介して外部の流路と繋がっている。内側領域462と外側領域461とは、ティース44の先端側の領域を介して互いに繋がっている。
【0031】
以上説明したように、コイル部材42は、コイル45に直接的に接触するようにコイル45を包み且つ冷却流路460を含むモールド46を有している。これにより、冷却流路460を流れる冷媒によってコイル45を冷却することができる。しかも、モールド46は、ダイヤモンドによって構成されている。ダイヤモンドが電気絶縁性を有しているため、冷却流路460を流れる冷媒として水性冷媒を用いることができる。そのため、例えば油性冷媒を用いる場合に比べて、コイル45の冷却効率を向上させることができる。また、ダイヤモンドの熱伝導率が比較的大きいため、例えばモールドが樹脂を含んでいる場合に比べて、コイル45の冷却効率を向上させることができる。よって、ステータ4によれば、コイルの冷却効率の向上を実現することができる。
【0032】
従来は、流動性を有する液体樹脂をコイルに対して流し込むことで、コイルを包むモールドを形成していた。そのため、モールドは、流動性を比較的確保しやすい樹脂を含んでいた。しかし、本実施形態では、コイル部材42が三次元造形法によって造形されるため、モールド46の材料に流動性が求められない。したがって、熱伝導率の高いダイヤモンドによってモールドを構成することができた。
【0033】
コイル45は、平角コイルである。これにより、コイル部材42の製造を三次元造形法によって容易に実現することができる。
【0034】
ティース44とコイル部材42との間には、隙間Sが存在する。これにより、ティース44にコイル部材42を適切に装着することができる。
【0035】
冷却流路460は、コイル45の外側に位置する外側領域461を含んでいる。これにより、冷却流路460の容積を確保することができる。また、外側領域461がコイル45の外側に位置しているため、コイル部材42の三次元造形が容易となる。
【0036】
冷却流路460は、コイル45の内側に位置する内側領域462を含んでいる。これにより、コイル45の内側からコイル45を効率良く冷却することができる。ティース44とコイル部材42との間に隙間Sが存在するため、例えばコイル部材42がティース44に接触している場合に比べて、コイル45の熱がティース44へ伝わりにくい。本実施形態では、コイル45とティース44との間に内側領域462が存在するため、コイル45の熱がティース44へ伝わりにくくなったとしても、コイル45を効率良く冷却することができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0038】
冷却流路460は、内側領域462を含んでいなくてもよい。冷却流路460は、外側領域461を含んでいなくてもよい。モールド46は、冷却流路を含んでいればよい。
【0039】
また、冷却流路460はコイル45一方側のコイルエンドに対向して設けられてもよい。
[付記]
本開示は、<1>「ティースと、前記ティースに装着されたコイル部材と、を備え、前記コイル部材は、前記ティースに巻回されるように螺旋状に延在するコイルと、前記コイルに直接的に接触するように前記コイルを包み且つ冷却流路を含むモールドと、を有し、前記モールドは、ダイヤモンドによって構成されている、固定子。」である。
【0040】
本開示は、<2>「前記コイルは、平角コイルである、上記<1>に記載の固定子。」である。
【0041】
本開示は、<3>「前記ティースと前記コイル部材との間には、隙間が存在する、上記<1>又は<2>に記載の固定子。」である。
【0042】
本開示は、<4>「前記冷却流路は、前記コイルの外側に位置する外側領域を含んでいる、上記<1>~<3>のいずれか一つに記載の固定子。」である。
【0043】
本開示は、<5>「前記冷却流路は、前記コイルの内側に位置する内側領域を含んでいる、上記<1>~<4>のいずれか一つに記載の固定子。」である。
【符号の説明】
【0044】
4 ステータ(固定子)
42 コイル部材
44 ティース
45 コイル
46 モールド
460 冷却流路
461 外側領域
462 内側領域
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6