(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177759
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ワンペダル制御装置及びワンペダル制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20241217BHJP
B60T 8/00 20060101ALI20241217BHJP
B60T 8/174 20060101ALI20241217BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20241217BHJP
【FI】
B60T7/12 B
B60T8/00 Z
B60T8/174 C
B60W50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096082
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 浩久
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241CB00
3D241CE08
3D241DA13Z
3D241DB02Z
3D241DB32Z
3D246GA04
3D246GA22
3D246GC02
3D246GC14
3D246HA09A
3D246HC06
3D246JA03
3D246JB56
3D246KA15
(57)【要約】
【課題】アクセルオフから停車するまでに運転者がアクセルペダルを踏みなおして制動距離を修正する頻度を低減させたワンペダル制御装置及びワンペダル制御プログラムを提供する。
【解決手段】 ワンペダル制御装置10は、所定の閾値速度以下の走行におけるアクセルオフ時の車両の走行速度を検出する速度検出部11と、アクセルオフから目標停車位置に停車するまでの制動距離を算出する制動距離算出部12と、走行速度及び制動距離に基づいてアクセルオフ時の目標減速度を設定する減速度設定部13と、目標減速度に基づいて加減速を調整する加減速調整部14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の閾値速度以下の走行におけるアクセルオフ時の車両の走行速度を検出する速度検出部と、
前記アクセルオフから目標停車位置に停車するまでの制動距離を算出する制動距離算出部と、
前記走行速度及び前記制動距離に基づいて前記アクセルオフ時の目標減速度を設定する減速度設定部と、
前記目標減速度に基づいて加減速を調整する加減速調整部と、を備えることを特徴とするワンペダル制御装置。
【請求項2】
前記アクセルオフ時の前記走行速度と前記制動距離とを紐づけて学習をする学習部を備え、
前記加減速調整部は、前記アクセルオフ時にアクセルペダル及びブレーキペダルを操作することなく前記学習をした前記制動距離で停車するように加減速を調整する請求項1に記載のワンペダル制御装置。
【請求項3】
前記学習部は、前記アクセルオフ後の所定の除外時間以内に再度前記アクセルペダルを踏みこんだ場合に2回目以降のアクセルオフに関する前記学習を行わない請求項2に記載のワンペダル制御装置。
【請求項4】
前記学習部は、前記前記アクセルオフ後の所定の制限時間が経過しても前記車両が停止していない場合に前記学習を行わない請求項2に記載のワンペダル制御装置。
【請求項5】
前記減速度設定部は、前記目標停車位置に到達する一定時間前での前記走行速度が所定速度以上であることが予測される場合、停車の前記一定時間前に前記所定速度となるよう前記目標減速度を調整して設定し、前記一定時間の到達後に予め定められた目標減速度を再設定する請求項2に記載のワンペダル制御装置。
【請求項6】
前記減速度設定部は、前記目標停車位置に到達する一定時間前での前記走行速度が所定速度以上であることが予測され、かつ、前記アクセルオフから停車までの減速度が所定減速度を超える場合、前記減速度を前記所定減速度に変更する請求項2に記載のワンペダル制御装置。
【請求項7】
コンピュータに、
所定の閾値速度以下の走行におけるアクセルオフ時の車両の走行速度を検出するステップ、
前記アクセルオフから目標停車位置に停車するまでの制動距離を算出するステップ、
前記走行速度及び前記制動距離に基づいて前記アクセルオフ時の目標減速度を設定するステップ、
前記目標減速度に基づいて加減速を調整するステップ、を実行させることを特徴とするワンペダル制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルのみで車両の加減速を調整できるワンペダルドライブにおける制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV:Electric Vehicle)ではアクセルペダルのみで車両の加減速を調整できるワンペダルドライブ機能が採用されている。ワンペダルドライブ機能を使用して走行するワンペダルモード中にアクセルペダルから足を放す所謂アクセルオフをすると、車両はブレーキをかけたように減速して停車する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、アクセルオフ後の空走状態における減速度が運転者の意図よりも強すぎると、ブレーキペダルを踏む前に停車したい位置よりも手前で停車してしまう。また、このように減速度が強すぎる場合に停車したい位置よりも手前で停車してしまうことを防ぐには、減速途中に運転者がアクセルペダル及びブレーキペダルを踏み直して速度調整をしなければならなかった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、アクセルオフから停車するまでに運転者がアクセルペダルを踏みなおして制動距離を修正する頻度を低減させたワンペダル制御装置及びワンペダル制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るワンペダル制御装置は、所定の閾値速度以下の走行におけるアクセルオフ時の車両の走行速度を検出する速度検出部と、前記アクセルオフから目標停車位置に停車するまでの制動距離を算出する制動距離算出部と、前記走行速度及び前記制動距離に基づいて前記アクセルオフ時の目標減速度を設定する減速度設定部と、前記目標減速度に基づいて加減速を調整する加減速調整部と、を備えるものである。
【0007】
本実施形態に係るワンペダル制御プログラムは、コンピュータに、所定の閾値速度以下の走行におけるアクセルオフ時の車両の走行速度を検出するステップ、前記アクセルオフから目標停車位置に停車するまでの制動距離を算出するステップ、前記走行速度及び前記制動距離に基づいて前記アクセルオフ時の目標減速度を設定するステップ、前記目標減速度に基づいて加減速を調整するステップ、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、アクセルオフから停車するまでに運転者がアクセルペダルを踏みなおして制動距離を修正する頻度を低減させたワンペダル制御装置及びワンペダル制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るワンペダル制御装置を搭載した車両の構成図。
【
図2】本発明の実施形態に係るワンペダル制御装置で制御した場合の走行距離と走行速度の関係を示す図。
【
図3】ワンペダル制御装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るワンペダル制御装置10を搭載した車両50の構成図である。また、
図2は、ワンペダル制御装置10で制御した場合の走行距離と走行速度の関係を示す図である。なお、実施形態において、前述のように踏み込んだアクセルペダル18aから足を放すことを「アクセルオフ」という。
【0012】
実施形態にかかるワンペダル制御装置10は、
図1に示されるように、速度検出部11、制動距離算出部12、減速度設定部13、及び加減速調整部14を備える。
これらワンペダル制御装置10の構成11~14の機能は、例えば、アクセルシステム18を電子制御するアクセルECU(Electronic Control Unit)15の機能として発揮される。
【0013】
また、ワンペダル制御装置10は、好ましくは、学習部16及びタイマー17を備える。そして、ワンペダル制御装置10は、車両50の車内ネットワーク網25を介して、アクセルシステム18、ブレーキペダル19、表示部20、走行モーター21、及び各種のセンサー22~24に接続される。車内ネットワーク網25は、例えば、CAN-FD(Controller Area Network with Flexible Data Rate)のバスで構成される。
【0014】
速度検出部11は、例えば車輪速センサー22からの車輪速度の情報を取得して、所定の閾値速度V0以下の走行におけるアクセルオフ時の車両50の走行速度を検出する。ここで、閾値速度V0とは、例えば30km/h程度の、車両50が停止する可能性のある低速度のことである。以下、ワンペダルドライブ機能を使用して走行するワンペダルモード中の閾値速度V0以下の走行状態のことを「低速走行状態」という。なお、車両50の減速度は例えばGセンサー23で検出される。また、アクセルオフの有無は、アクセルペダル18aの位置を検出するアクセルポジションセンサー24を使用して検知される。
【0015】
制動距離算出部12は、低速走行状態におけるアクセルオフから目標停車位置Mに停車するまでの制動距離Dを算出する。制動距離Dは、アクセルオフ時の走行速度及び停止までの時間に基づいて算出される。出荷時には、目標停車位置M及び制動距離Dは、仮決めされた初期暫定値に設定される。目標停車位置M及び制動距離Dは、運転回数を重ねることで学習部16による機械学習(以下、単に「学習」という)が進み、運転者が好む最適なものに調整されていく。
【0016】
学習部16は、例えば人工知能を搭載し、
図2に示されるように、低速走行状態におけるアクセルオフ時の走行速度と制動距離Dとを紐づけて学習をする。低速走行状態のときのみ学習部16が学習を行うことで、高い走行速度領域から学習を行う場合よりも制動距離Dのばらつきが小さくなり、学習の精度を高めることができる。具体的には、低速走行状態におけるアクセルオフが起こる度に、アクセルオフ直前の走行速度ごとにアクセルオフ以降の実際の制動距離Dを取得する。
【0017】
例えば、基準走行速度を10~30km/hまで2km/h刻みで11個設定する。そして、アクセルオフ時の走行速度が「基準走行速度-1km/h」以上から「基準走行速度+1km/h」未満の間である場合に、その基準走行速度の制動距離Dとして記録する。そして、各基準走行速度について、それぞれ最新の50回分の制動距離Dの平均値を目標制動距離D1として設定する。このように平均をとるのは、減速度や制動距離Dが急激に変化することによる事故の発生を防止するためである。これらの平均値から目標とする制動距離Dを決定することにより目標制動距離D1が緩やかに変化することになる。
【0018】
また、50回分のデータが得られるまでは初期暫定値が目標制動距離D1として使用される。なお、停車位置の精度を上げる観点から、アクセルオフ時の走行速度における目標制動距離D1はその走行速度に近い上下の基準走行速度の目標制動距離D1から線形補間により算出することが望ましい。
【0019】
なお、対象とする基準走行速度で50回分のデータが得られる前に、対象とする基準走行速度よりも低い基準走行速度において50回分の平均により算出された目標制動距離D1が、対象とする基準走行速度の暫定の目標制動距離D1を超える場合がある。この場合、対象とする基準走行速度の目標制動距離D1を暫定値から対象とする基準走行速度よりも低い基準走行速度の目標制動距離D1の値に変更する。運転者にとって最適な制動距離Dが十分に学習されるまでは、事故防止の観点から、制動距離Dは短めに設定することが望ましいためである。
【0020】
図1に戻って、ワンペダル制御装置10の構成の説明を続ける。
減速度設定部13は、低速走行状態におけるアクセルオフ時の走行速度及び制動距離Dに基づいて、走行速度ごとのアクセルオフ時の目標減速度を設定する。この目標減速度は、目標制動距離D
1を満足するように規定される減速度である。車両50の出荷直後は、制動距離Dに初期暫定値が用いられて目標減速度が設定される。また、学習部16の学習が十分進んだ後は、学習部16で学習された目標制動距離D
1に基づき目標減速度が設定される。
【0021】
加減速調整部14は、減速度設定部13で設定された目標減速度に基づいて、走行モーター21を制御することで車両50の加減速を調整する。加減速調整部14は、アクセルオフ時にアクセルペダル18a及びブレーキペダル19を操作することなく学習部16で学習をした制動距離Dで停車するように加減速を調整する。特に、学習部16による学習が進むと、運転者が操作を行わなくとも、運転者の意図した停車位置へ停車が可能になる。よって、運転者に煩雑感を与えることを防止することができる。
【0022】
また、加減速調整部14による制御は低速走行状態に限定されるため、中速走行又は高速走行から減速に比較して、制御開始時の速度ばらつきを小さくすることができる。また、加減速調整部14が制御を終了するタイミングとして走行速度ゼロを設定すれば、ブレーキオン時に制御終了する場合に比較して、一層学習で用いる速度のばらつきを小さくすることができる。よって、制動距離Dのばらつきを低減することができる。
【0023】
ところで、低速走行状態でアクセルオフがあっても、このアクセルオフが停車を意図した減速操作ではないことがある。この場合、アクセルオフ後に所定の時間が経過しても、車両50は停止していない。このようなアクセルオフについて得られるデータを学習部16の学習に使用すると、学習の精度がかえって低下する。そこで、タイマー17でアクセルオフ後の経過時間を計測することが望ましい。そして、アクセルオフ後の所定の制限時間T0が経過しても車両50が停止していない場合、学習部16は、このアクセルオフで得られる走行速度及び制動距離Dのデータを学習データから除外することが望ましい。この制限時間T0は例えば6秒程度である。このように制限時間T0を設けて、学習部16が制限時間T0内に車両50が停止しなかった場合のアクセルオフに関するデータからは学習をしないことで、運転者にとってより快適で煩雑さのない車両50の停止動作をすることができる。
【0024】
また、学習部16は、アクセルオフ後の所定の除外時間T1以内に再度アクセルペダル18aを踏み込まれた場合には、2回目以降のアクセルオフに関する学習を行わないのが望ましい。つまり、この場合、2回目以降のアクセルオフで得られる走行速度と制動距離Dとの関係のデータは学習データから除外するのが好ましい。2回目以降のアクセルオフは、運転者による制動の補正操作である可能性が高く、学習部16の学習に用いると学習の精度が低下することがあるためである。このように、2回目以降のアクセルオフに関するデータを学習データから除外することで、学習の精度を高めることができるため、運転者にとってより快適で煩雑さのない車両50の停止動作をすることができる。なお、アクセルオフ後の除外時間T1とは、例えば2秒である。
【0025】
次に、急減速感の抑制制御について説明する。
車両50が急減速して停車した場合、運転者を含む乗車者は不安を感じることがある。車両50の急減速と乗車者が感じる不安感に関する研究では、走行速度30km/h走行時において運転者は減速度が約2.25m/s2の場合に不安と感じる人が多いという結果になった。また、同走行速度で減速度が約1.25m/s2の場合に安心と感じる人が多いという結果になった。そして、これらの中間値である約1.75m/s2では安心及び不安のどちらでもないと感じる人が多いという結果になった。このように、乗車者は、走行速度と減速度との兼ね合いで運転の不安を感じる。
【0026】
そこで、停車時の急停車感を和らげるために、減速度設定部13及び加減速調整部14は、急減速感の抑制制御をすることが望ましい。停車時に急停車となるのは、アクセルオフ時の走行速度に対して制動距離Dが短い場合である。この時の制御方法として、例えば以下の制御1及び制御2の2パターンが考えられる。
【0027】
[制御1.減速度に着目]
制御1のパターンでは、アクセルオフから停車までの減速度に着目する。この減速度が、所定減速度Bを超える場合、この減速度を所定減速度Bに変更する。具体的に所定減速度Bを1.75m/s2として説明すると、アクセルオフから停車までの減速度が、1.75m/s2を超える場合、この減速度を1.75m/s2に変更するということである。
【0028】
この場合、アクセルオフだけでは運転者の意図する目標停車位置Mを超えてしまう。そこで、この場合、運転者に自らブレーキペダル19を操作して停車させることで、急減速により運転者が感じる不安を軽減させる。運転者自らがブレーキをかけた場合、強い減速度であっても運転者は不安に感じないからである。例えば表示部20にブレーキを促進するアラートを表示することで、運転者にブレーキ操作を促進することができる。このように、加減速調整部14による減速や停車を緩やかにすることで、急減速及び急停車により運転者が感じる不安を軽減することができる。
【0029】
[制御2.走行速度に着目]
制御2のパターンでは、アクセルオフから停車までの減速度を一定としたときに停車の一定時間T2(以下、「基準時間T2」という)前における走行速度に着目する。減速度を一定としたときに停車の基準時間T2前における走行速度が所定速度V1(以下、「基準速度V1」という)以上であると予測される場合、アクセルオフから停車の基準時間T2前における走行速度が所定速度V1になるように減速度を変更する。このように、減速度設定部13は、停車の基準時間T2前に基準速度V1となるよう目標減速度を調整して設定し、停車の基準時間T2の到達後に予め定められた目標減速度を再設定する。
【0030】
具体的に基準時間T2を1.5秒、基準速度V1を7km/hとして説明すると次のとおりとなる。つまり、停車の1.5秒前における走行速度が7km/hを超えると予測された場合、停車の1.5秒前における走行速度が7km/hとなるように、アクセルオフから停車の1.5秒前までの減速度を変更するということである。そして、停車の1.5秒前から停車までの減速度が1.3m/s2となるように制御する。
【0031】
アクセルオフから停車の1.5秒前までの減速度が1.75m/s2を超える場合、上述の研究結果によると、走行に不安を感じる乗車者が出てくることが予想される。そこで、アクセルオフから停車の1.5秒前までの減速度が1.75m/s2を超える場合、減速度設定部13及び加減速調整部14は、制御1の態様を優先させて制御する。つまり、停車の1.5秒前における走行速度を7km/hとする制御をせずに、アクセルオフから停車までの減速度が1.75m/s2になることを優先させて制御する。
【0032】
この場合、制御1のパターンと同様に、アクセルオフだけでは運転者の意図する目標停車位置Mを超えてしまう。そこで、この場合も、運転者に自らブレーキペダル19を操作して停車させることで、急減速により運転者が感じる不安を軽減させる。
【0033】
なお、車両50に制動がかかる例として、先行車や前方の障害物との追突・衝突が避けられないと判断された場合に運転者に代わって発動する衝突被害軽減ブレーキシステム(AEBS:Advanced Emergency Braking System)がある。このAEBSによる制動を、ワンペダル制御装置10による制動よりも優先的に作動させることが好ましい。AEBSによる制動を、ワンペダル制御装置10による制動よりも優先させて作動させることで、運転の安全性が高まる。
また、地図情報や、道路勾配等の情報を利用して、目標制動距離D1や目標減速度を追加的に補正することにより、目標停車位置Mの精度をさらに向上させることができる。
【0034】
なお、ワンペダル制御装置10の各構成は、CPU等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、或いはHD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、を具備するコンピュータとして構成することができる。
また、このようなソフトウェア処理に換えて、ASIC(Application Specific Integration Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現することもできる。
【0035】
次に、
図3のフローチャートを用いて、ワンペダル制御装置10の動作を説明する。なお、以下では、ステップS10を「S10」と略記する。同様に、ステップS11以降も略記して示す。
【0036】
まず、ワンペダル制御装置10による車両50のワンペダル制御は、ワンペダルモードがオンでない限り実行されない(S10においてNOの場合、S11へ進んでEND)。車両50のワンペダル制御は、ワンペダルモード中の制御だからである。
【0037】
ワンペダルモードがオンの場合、さらに車両50が低速走行状態にあるか否かで動作が分岐する(S10においてYESの場合、S12へ)。
車両50が低速走行状態にない場合、ワンペダル制御装置10によるワンペダル制御は行われない(S12においてNOの場合、S11へ進んでEND)。車両50のワンペダル制御は、車両50を停止させるための制御なため、中速又は高速で走行していて停止する意図がない場合にまでワンペダル制御をするのはかえって運転の妨げになるためである。
【0038】
車両50が低速走行状態にある場合、運転者によるアクセルオフの検出の有無で動作が分岐する(S12においてYESの場合、S13へ)。
アクセルオフを検出しない場合、ワンペダル制御装置10による車両50のワンペダル制御は行われない(S13においてNOの場合、S11へ進んでEND)。
アクセルオフが検出された場合、前回のアクセルオフから今回のアクセルオフまでの経過時間が制限時間T0以上であるか否かで動作が分岐する(S13においてYESの場合、S14へ)。
【0039】
前回のアクセルオフから今回のアクセルオフまでの経過時間が制限時間T0より大きい場合、今回のアクセルオフでこれから得られる走行速度及び制動距離Dのデータを学習部16による学習データに含めることとする(S14においてYESの場合、S15)。一方、前回のアクセルオフから今回のアクセルオフまでの経過時間が制限時間T0より小さい場合、今回のアクセルオフでこれから得られる走行速度及び制動距離Dのデータを学習部16による学習データに含めないこととする(S14においてNOの場合、S16へ)。制限時間T0内に2度以上のアクセルオフがあった場合、2回目以降のアクセルオフは、運転者による制動の補正操作である可能性が高いためである。
【0040】
そして、制動制御が開始される(S16)。
制動距離のデータ数が50個以上ある場合、最新の50個の制動距離Dのデータから目標制動距離D1を算出する(S17においてYESの場合、S18へ)。この目標制動距離D1は、基準走行速度の目標制動距離D1から線形補間により算出される。そして、目標制動距離D1及びアクセルオフ時の走行速度から、目標減速度を設定する(S19)。
制動距離のデータ数が50個未満の場合、目標制動距離D1に初期暫定値を設定する(S17においてNOの場合、S20へ)。そして、目標制動距離D1として設定された初期暫定値及びアクセルオフ時の走行速度から、目標減速度を設定する(S19)。この場合も、目標制動距離D1は、基準走行速度の目標制動距離D1から線形補間により算出される。
【0041】
急停車が予測されない場合、通常に目標減速度を設定する(S21においてNOの場合、S22へ)。
一方、急停車が予測される場合、減速度設定部13により、例えば上述した制御1または制御2のパターンに従い、目標減速度が再設定される(S21においてYESの場合、S23へ)。
【0042】
アクセルオフ時から制限時間T0が経過した場合、ワンペダル制御装置10による車両50のワンペダル制御は行われない(S24においてYESの場合、S11へ進んでEND)。
一方、制限時間T0が経過していない場合、基準車速ごとに制動距離を蓄積して動作を終了する(S24においてNOの場合、S25へ進んでEND)。
【0043】
以上のように、実施形態に係るワンペダル制御装置10によれば、低速走行状態において、アクセルペダルオフから停車するまでの制動距離Dが運転者の意図に近づき、運転者がアクセルペダル18a及びブレーキ19を踏みなおして制動距離Dを修正する手間が軽減される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
10…ワンペダル制御装置、11…速度検出部、12…制動距離算出部、13…減速度設定部、14…加減速調整部、15…アクセルECU、16…学習部、17…タイマー、18…アクセルシステム、18a…アクセルペダル、19…ブレーキペダル、20…表示部、21…走行モーター、22…車輪速センサー、23…Gセンサー、24…アクセルポジションセンサー、25…車内ネットワーク網、50…車両、B…所定減速度、D…制動距離、D1…目標制動距離D1、M…目標停車位置、T0…制限時間、T1…除外時間、T2…基準時間(一定時間)、V0…閾値速度、V1…基準速度(所定速度)。