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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177762
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】干渉観察装置及び干渉観察方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20241217BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20241217BHJP
   G01B 9/02 20220101ALI20241217BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20241217BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241217BHJP
   G06V 10/764 20220101ALI20241217BHJP
   G01N 21/956 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
G01B11/30 Z
G02B21/06
G01B9/02
H01L21/66 J
G06T7/00 350B
G06T7/00 610Z
G06V10/764
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096088
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】山内 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 那津輝
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
2G051
2H052
4M106
5L096
【Fターム(参考)】
2F064EE01
2F064GG12
2F064HH08
2F065AA30
2F065AA49
2F065BB02
2F065FF51
2F065JJ26
2F065LL12
2F065QQ23
2F065QQ24
2F065QQ31
2F065RR06
2G051AA51
2G051AB01
2G051BA20
2G051BB03
2G051CC11
2H052AA04
2H052AC27
2H052AC33
2H052AF14
2H052AF21
2H052AF25
4M106AA01
4M106AA02
4M106CA22
4M106CA41
4M106DB04
4M106DB07
4M106DB11
4M106DB12
4M106DB13
4M106DB18
4M106DB21
4M106DJ21
4M106DJ26
4M106DJ27
5L096BA03
5L096DA02
5L096DA04
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】観察対象物に付着している異物を弁別可能とする。
【解決手段】干渉観察装置1は、光を出力する光源2と、参照ミラー15を有し、光源2から出力された光を第1光L1及び第2光L2に分割し、観察対象物8で反射された第1光L1と参照ミラー15で反射された第2光L2との干渉光L3を出力する干渉光学系3と、干渉光L3を検出する撮像素子4と、撮像素子4の検出結果に基づき干渉画像を取得すると共に干渉画像において観察対象物8に付着している異物領域の画像の乱雑度を取得する処理部5と、処理部5で取得した乱雑度に関する情報を表示する表示部53と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力する光源と、
参照ミラーを有し、前記光源から出力された光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との干渉光を出力する干渉光学系と、
前記干渉光を検出する撮像素子と、
前記撮像素子の検出結果に基づき干渉画像を取得すると共に、前記干渉画像において前記観察対象物に付着している異物領域の画像の乱雑度を取得する処理部と、
前記処理部で取得した前記乱雑度に関する情報を出力する出力部と、を備える、干渉観察装置。
【請求項2】
前記異物の前記乱雑度と前記異物の種類との関係に関する異物分類モデルを記憶する記憶部を備え、
前記処理部は、前記記憶部に記憶した前記異物分類モデルを参照して、取得した前記乱雑度から前記異物の種類を判別する、請求項1に記載の干渉観察装置。
【請求項3】
前記観察対象物に前記異物が付着している場合の複数種の前記干渉画像を教師データとした機械学習により、前記異物の前記乱雑度と前記異物の種類との関係に関する異物分類モデルを生成する学習部を備える、請求項2に記載の干渉観察装置。
【請求項4】
前記異物は、反射性異物及び透過性異物を含む、請求項2又は3に記載の干渉観察装置。
【請求項5】
前記反射性異物は、半導体を含み、
前記透過性異物は、有機物を含む、請求項4に記載の干渉観察装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記乱雑度に関する情報を表示する表示部を含む、請求項1に記載の干渉観察装置。
【請求項7】
前記干渉光学系は、前記第2光の光路の光路長が変更可能に構成されている、請求項1に記載の干渉観察装置。
【請求項8】
光源から光を出力する光出力ステップと、
前記光源から出力した光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された前記第1光と参照ミラーで反射された前記第2光との干渉光を出力する干渉光出力ステップと、
前記干渉光を撮像素子で検出する干渉光検出ステップと、
前記撮像素子の検出結果に基づき干渉画像を取得すると共に、前記干渉画像において前記観察対象物に付着している異物領域の画像の乱雑度を取得する処理ステップと、
前記処理ステップで取得した前記乱雑度に関する情報を出力する出力ステップと、を備える、干渉観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉観察装置及び干渉観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光を出力する光源と、光源から出力された光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された第1光と参照ミラーで反射された第2光との干渉光を出力する干渉光学系と、干渉光を検出する撮像素子と、撮像素子の検出結果に基づき干渉画像を取得する処理部と、を備えた干渉観察装置が知られている。この種の技術として、例えば特許文献1には、細胞の光学的な厚さ等の情報を取得することで細胞の種類を見分けることが図られた細胞観察装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2011/132587号公報
【特許文献2】特開平08-124982
【特許文献3】特開平11-176898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した干渉観察装置では、観察対象物に異物が付着している場合があり、この場合、当該異物を弁別する(つまり、当該異物の種類を見分ける)ことが望まれる。この課題に関して、例えば特許文献2には、半導体装置のパターン表面等に付着する微細な異物が、半導体装置の歩留まりを低下させる重大な要因であることが記載されている。また、例えば特許文献2には、このような異物の付着を防止するためには、その発生源をいち早く特定して汚染防止対策を施すことが重要となること、そして、そのためには、異物の組成及び状態の分析が不可欠であることが記載されている。
【0005】
異物の組成に関して、例えば特許文献3には、半導体製造工程において熱酸化によりゲート酸化膜を形成する際に、金属汚染及び有機汚染が存在すると絶縁破壊を起こすことが記載されている。また、例えば特許文献3には、有機汚染について、ゲート酸化膜形成後に付着した場合にも絶縁性の劣化をもたらすこととともに、有機汚染を検出し除去する方法が記載されている。
【0006】
そこで、本発明は、観察対象物に付着している異物を弁別可能な干渉観察装置及び干渉観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、異物が付着している観察対象物の干渉画像では、異物領域の画像の乱雑度が当該異物の種類によって異なることを見出した。よって、干渉画像における異物領域の画像の乱雑度を得ることができれば、当該異物を弁別することが可能となるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の干渉観察装置は、[1]「光を出力する光源と、参照ミラーを有し、前記光源から出力された光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された前記第1光と前記参照ミラーで反射された前記第2光との干渉光を出力する干渉光学系と、前記干渉光を検出する撮像素子と、前記撮像素子の検出結果に基づき干渉画像を取得すると共に、前記干渉画像において前記観察対象物に付着している異物領域の画像の乱雑度を取得する処理部と、前記処理部で取得した前記乱雑度に関する情報を出力する出力部と、を備える、干渉観察装置」である。
【0009】
この干渉観察装置では、観察対象物に異物が付着している場合、干渉画像における当該異物領域の画像の乱雑度に関する情報を出力することができる。よって、出力した乱雑度に関する情報に基づくことで、上述した知見により、観察対象物に付着する異物を弁別することが可能となる。
【0010】
本発明の干渉観察装置は、[2]「異物の前記乱雑度と前記異物の種類との関係に関する異物分類モデルを記憶する記憶部を備え、前記処理部は、前記記憶部に記憶した前記異物分類モデルを参照して、取得した前記乱雑度から前記異物の種類を判別する、[1]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、観察対象物に付着する異物を、異物分類モデルを参照して弁別することが可能となる。
【0011】
本発明の干渉観察装置は、[3]「前記観察対象物に前記異物が付着している場合の複数の前記干渉画像を教師データとした機械学習により、前記異物の前記乱雑度と前記異物の種類との関係に関する異物分類モデルを生成する学習部を備える、[2]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、機械学習により異物分類モデルを生成することが可能となる。
【0012】
本発明の干渉観察装置では、[4]「前記異物は、反射性異物及び透過性異物を含む、[2]又は[3]に記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、観察対象物に付着する異物が反射性異物であるか透過性異物であるかを弁別することが可能となる。
【0013】
本発明の干渉観察装置では、[5]「前記反射性異物は、半導体を含み、前記透過性異物は、有機物を含む、[4]に記載の干渉観察装置。」であってもよい。この場合、観察対象物に付着する異物について、反射性を有する半導体であるか透過性を有する有機物であるかを弁別することが可能となる。
【0014】
本発明の干渉観察装置では、[6]「前記出力部は、前記乱雑度に関する情報を表示する表示部を含む、[1]~[5]の何れかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、干渉画像における当該異物領域の画像の乱雑度に関する情報を容易に把握することができる。
【0015】
本発明の干渉観察装置では、[7]「前記干渉光学系は、前記第2光の光路の光路長が変更可能に構成されている、[1]~[6]の何れかに記載の干渉観察装置」であってもよい。この場合、第2光の光路の光路長を変更することで、取得される干渉画像において異物を際立たせることが可能となる。これにより、異物を容易に弁別することが可能となる。
【0016】
本発明の干渉観察方法は、[8]「光源から光を出力する光出力ステップと、前記光源から出力した光を第1光及び第2光に分割し、観察対象物で反射された前記第1光と参照ミラーで反射された前記第2光との干渉光を出力する干渉光出力ステップと、前記干渉光を撮像素子で検出する干渉光検出ステップと、前記撮像素子の検出結果に基づき干渉画像を取得すると共に、前記干渉画像において前記観察対象物に付着している前記異物領域の画像の乱雑度を取得する処理ステップと、前記処理ステップで取得した前記乱雑度に関する情報を出力する出力ステップと、を備える、干渉観察方法」である。
【0017】
この干渉観察方法においても、観察対象物に異物が付着している場合、干渉画像における当該異物領域の画像の乱雑度に関する情報を出力することができる。よって、出力した乱雑度に関する情報に基づくことで、上述した知見により、観察対象物に付着する異物を弁別することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、観察対象物に付着する異物を弁別可能な干渉観察装置及び干渉観察方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る干渉観察装置を示す構成図である。
図2図2は、図1の観察対象物を拡大して示す図である。
図3図3は、乱雑度の算出方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、位相画像と乱雑度との関係を説明する図である。
図5図5(a)は、位相画像を示す図である。図5(b)は、図5(a)の位相画像に対応する複素数画像の実部を示す図である。図5(c)は、図5(a)の位相画像に対応する複素数画像の虚部を示す図である。
図6図6(a)は、第1平滑化複素数画像の実部を示す図である。図6(b)は、第1平滑化複素数画像の虚部を示す図である。
図7図7(a)は、第2平滑化複素数画像の実部を示す図である。図7(b)は、第2平滑化複素数画像の虚部を示す図である。
図8図8(a)は、第3平滑化複素数画像の実部を示す図である。図8(b)は、第3平滑化複素数画像の虚部を示す図である。
図9図9(a)は、第1位相差分画像を示す図である。図9(b)は、第2位相差分画像を示す図である。図9(c)は、第3位相差分画像を示す図である。
図10図10(a)は、反射性異物を含む位相画像の一部を拡大して示す図である。図10(b)は、図10(a)の位相画像に対応する位相差分画像の一部を拡大して示す図である。
図11図11(a)は、透過性異物を含む位相画像の一部を拡大して示す図である。図11(b)は、図11(a)の位相画像に対応する位相差分画像の一部を拡大して示す図である。
図12図12は、第2位相差分画像における局所的な位相変動を画像化した図である。
図13図13は、異物分類モデルを説明する図である。
図14図14は、反射性異物度テーブルを示す図である。
図15図15は、異物分類モデルの学習方法の一例を示すフローチャートである。
図16図16は、干渉観察装置による干渉観察方法の一例を示すフローチャートである。
図17図17は、変形例に係る異物分類モデルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0021】
[干渉観察装置]
図1に示されるように、干渉観察装置1は、光源2と、干渉光学系3と、撮像素子4と、処理部5と、ステージSと、を備えている。干渉観察装置1は、ステージS上に配置された観察対象物8を光の干渉を用いて観察するための干渉顕微鏡である。観察対象物8は、例えば半導体デバイスであるが、金属、ガラス、樹脂、液晶、高分子化合物等により形成された他の工業サンプルであってもよい。観察対象物8は、細胞等の生体サンプルであってもよい。以下、図1に示されるように、X方向と、X方向に垂直なY方向と、X方向及びY方向の双方に垂直なZ方向と、を設定して説明する。
【0022】
干渉観察装置1は、観察対象物8の内部を観察できるように構成されている。内部観察では、観察対象物8内に位置する観察面Rが観察される。この例では、観察対象物8は、いわゆる膜付きウエハである。図1及び図2に示されるように、観察対象物8は、パターン付きチップを構成するデバイス部81と、デバイス部81の表面に設けられたパッシベーション膜である膜部82と、を含む。デバイス部81は、ウエハ81a上に機能素子81bのパターンが形成されて成る。観察面Rは、デバイス部81の表面である。
【0023】
光源2は、インコヒーレントな光を出力する。光源2は、例えばハロゲンランプ等のランプ系光源、LED(Light emitting diode)光源、SLD(Superluminescent diode)光源、ASE(Amplified spontaneous emission)光源等である。干渉光学系3は、この例ではリニック干渉型に構成されている。干渉光学系3は、レンズ11と、ビームスプリッタ12と、対物レンズ13と、参照対物レンズ14と、参照ミラー15と、を有している。干渉光学系3は、光源2と共に筐体H内に配置されており、光学モジュールMを構成している。光学モジュールMは、所定のアクチュエータ16によりZ方向に沿って移動可能となっている。Z方向は、対物レンズ13の光軸に平行な方向であり、後述する第1光L1が観察対象物8に入射する方向と平行な方向である。
【0024】
レンズ11は、光源2から出力された光をコリメートする。ビームスプリッタ12は、例えば光学面12aを有するプリズムであり、レンズ11によりコリメートされた光を光学面12aにおいて第1光L1及び第2光L2に分割する。ビームスプリッタ12は、第1光L1を対物レンズ13へ出力し、第2光L2を参照対物レンズ14へ出力する。また、光学面12aには、観察対象物8の観察面Rで反射された第1光L1が対物レンズ13を介して入射すると共に、参照ミラー15で反射された第2光L2が参照対物レンズ14を介して入射する。これらの第1光L1及び第2光L2は、光学面12aにおいて合波されて干渉光L3となる。干渉光学系3は、干渉光L3を撮像素子4へ出力する。
【0025】
対物レンズ13は、ビームスプリッタ12から出力された第1光L1をステージS上に配置された観察対象物8に集光する。また、対物レンズ13には、観察対象物8の観察面Rで反射された第1光L1が入射する。対物レンズ13は、入射した第1光L1をビームスプリッタ12へ出力する。参照対物レンズ14は、ビームスプリッタ12から出力された第2光L2を参照ミラー15へ導光し、参照ミラー15上に集光する。また、参照対物レンズ14は、参照ミラー15で反射された第2光L2をビームスプリッタ12へ出力する。参照ミラー15は、参照対物レンズ14から出力された第2光L2を参照対物レンズ14へ戻るように反射させる。
【0026】
光学モジュールMの筐体H内には、参照対物レンズ14を移動させるためのステッピングモータ17と、参照ミラー15を移動させるためのステッピングモータ18及びピエゾ素子19と、が更に配置されている。ステッピングモータ17は、Z方向に垂直な第2光L2の光軸方向(例えばX方向)に沿って参照対物レンズ14を移動させる。ステッピングモータ18及びピエゾ素子19は、第2光L2の光軸方向に沿って参照ミラー15を移動させる。SN比の良好な干渉縞を得るためには、ビームスプリッタ12から参照ミラー15までの光路長は、ビームスプリッタ12から観察面(反射面)Rまでの光路長と概一致するように調整されることが好ましい。
【0027】
ステッピングモータ17,18の応答時間は10msecよりも大きく、ピエゾ素子19の応答時間は1msecよりも小さい。すなわち、ピエゾ素子19の応答時間はステッピングモータ17,18の応答時間よりも短い。ステッピングモータ17,18のストローク(最小移動距離)は数mmであり、ピエゾ素子19のストロークは10μm程度である。すなわち、ピエゾ素子19のストロークはステッピングモータ17,18のストロークよりも小さい。ステッピングモータ17,18の寿命駆動回数は100万回よりも少なく、ピエゾ素子19の寿命駆動回数は100億回よりも多い。すなわち、ピエゾ素子19の寿命駆動回数はステッピングモータ17,18の寿命駆動回数よりも多い。
【0028】
撮像素子4は、例えば、CCDエリアイメージセンサ、CMOSエリアイメージセンサ等のイメージセンサ(カメラ)である。撮像素子4は、干渉光学系3(ビームスプリッタ12)から出力された干渉光L3を検出(撮像)する。撮像素子4と干渉光学系3との間には、レンズ41及び鏡筒42が配置されている。レンズ41は、干渉光学系3から出力された干渉光L3を撮像素子4の撮像面に結像させる。レンズ41は、鏡筒42内に収容されている。鏡筒42は、例えば円筒状に形成されており、撮像面を囲むように撮像素子4に固定されている。
【0029】
処理部5は、光源2、干渉光学系3、撮像素子4及びステージSを含む干渉観察装置1の各部と通信可能に接続されており、撮像素子4における干渉光L3の検出結果に基づいて干渉画像を取得する。干渉画像は、例えば位相画像、振幅画像、複素数画像、後述する各種の画像、及び、これらの何れかに相当する画像を含む。
【0030】
処理部5は、例えば、プロセッサ(CPU)、記憶媒体であるRAM及びROMを含むコンピュータCによって構成されている。コンピュータCは、各種の情報を記憶する記憶領域(記憶部)51と、各種の情報の入力を受け付ける入力部52と、各種の情報を表示する表示部53と、異物分類モデル(後述)を機械学習により生成する学習部54と、を有している。入力部52は、例えばユーザの操作入力を受け付けるデバイスであり、例えばマウス、キーボード等である。表示部53は、例えば画像を表示するディスプレイである。入力部52及び表示部53は、例えばタッチパネルにより共通に構成されてもよく、この場合、GUI(Graphical User Interface)により構成されていてもよい。また、この例では処理部5、記憶領域51、入力部52、表示部53及び学習部54が1つの装置により構成されているが、それらの少なくともいずれかは別のデバイスにより構成されてもよく、例えば携帯端末等により構成されてもよい。
【0031】
ステージSは、観察対象物8を配置するためのステージであり、第1光L1が観察対象物8に入射するZ方向と垂直なXY平面に沿って移動可能となっている。これにより、干渉観察装置1では、ステージSをXY平面に沿って移動させながら、すなわち観察対象物8の観察位置を変化させながら、観察対象物8の観察面Rの観察を行う(干渉画像を取得する)ことが可能となっている。
【0032】
このような干渉観察装置1では、まず、光源2からインコヒーレントな光を出力する(光出力ステップ)。当該光をレンズ11によりコリメートし、ビームスプリッタ12により第1光L1及び第2光L2に分割する。第1光L1は、対物レンズ13により観察対象物8に集光し、観察対象物8の界面で反射し、対物レンズ13を経てビームスプリッタ12に入力される。第2光L2は、参照対物レンズ14により参照ミラー15に集光し、該参照ミラー15で反射し、参照対物レンズ14を経てビームスプリッタ12に入力される。ビームスプリッタ12は、入力された第1光L1及び第2光L2を合波して、干渉光L3を出力する(干渉光出力ステップ)。出力された干渉光L3を撮像素子4により検出する(干渉光検出ステップ)。撮像素子4の検出結果に基づいて、処理部5により干渉画像を取得する(処理ステップ)。
【0033】
また、干渉観察装置1では、撮像素子4が4枚の干渉画像を取得するための撮像を行い、取得された4枚の干渉画像に基づいて処理部5が1枚の位相画像を構築(取得)する。ピエゾ素子19は、4枚の干渉画像の撮像タイミングに合わせて細かく参照ミラー15を移動させる。これにより、4枚の干渉画像の間において第1光L1と第2光L2との間の光路長差が異ならせる。4枚の干渉画像を取得するための参照ミラー15の移動量は、光源2から出力する光の波長λよりも小さい。この例では、4枚の干渉画像の間における第2光L2の光路長差(位相シフト間隔)は、λ/4となっている。光路長の変化幅がλ/4になるように参照ミラー15を細かく動かす場合、参照光路(第2光L2の光路の光路長)を参照光(第2光L2)が往復することに留意すると、参照ミラー15の実際の移動量ステップはλ/8となり、λ=532nmの場合、この値は66.5nmである。干渉画像の取得方法は、上述した例の方法に限られず、公知の種々の方法であってもよい。
【0034】
本実施形態において、処理部5は、干渉画像において観察対象物8に付着している異物9の領域の乱雑度を算出して取得し、取得した乱雑度から異物9を弁別する。弁別対象としての異物9は、第1光L1に対して反射性を有する反射性異物91、及び、第1光L1に対して透過性を有する透過性異物92を少なくとも含む。反射性異物91は、例えば半導体であるシリコン屑(シリコン片)を含む。透過性異物92は、特に有機物であって、例えばエタノールの渇き染みを含む。弁別対象としての異物9は、その種類が特に限定されず、様々な種類の要素であってもよい。
【0035】
非特許文献1:P. Burt and E. Adelson, “The Laplacian Pyramid as a Compact Image Code”, in IEEE Transactions on Communications, vol. 31, no. 4, pp. 532-540, April 1983
【0036】
上記の非特許文献1には、画像の特徴量を抽出するにあたり、元画像に対して異なる平滑化フィルタサイズを用いた平滑化画像を複数作成し、平滑化フィルタサイズの異なる画像同士の差分画像を用いる手法が開示されている。しかし、位相画像においては位相が-π~πに折り返されているため、位相に対して直接平滑化フィルタを適用することには課題がある。位相の折り返しがある場合に、平滑化フィルタリング及び差分画像を生成する手法の一例を以下に示す。
【0037】
処理部5による干渉画像の乱雑度の算出方法の一例について、図3のフローチャートを用いて以下に詳説する。位相画像は、図4に示されるように、-π~πに折り返されているため、位相のバラツキを評価する上で取得した位相画像同士の比較は困難である。例えば図4中の4つの位相画像は全て-π~πの位相を同程度に含む画像のために、干渉画像の乱雑度を評価する場合、その比較が難しい。また、局所的な位相変動を評価する場合に、位相の折り返しを跨ぐ領域と跨がない領域とで評価値が大きく変わってしまう。そこで、処理部5は、位相画像I(図5(a)参照)の標準偏差を直接計算するのではなく、位相画像Iに対応する複素数画像G0(図5(b),5(c)参照)を算出して取得する(ステップS11)。ここで、複素数画像G0とは、実部を画像G0Re(図5(b)参照)とし、虚部を画像G0Im(図5(c)参照)とする複素数の二次元配列によって表される画像であり、複素数画像G0の偏角が位相画像Iに対応する。
【0038】
続いて、処理部5は、複素数画像G0の平滑化を複数種の平滑化距離(すなわち、平滑化のウインドウサイズ)で行い、複数種の平滑化複素数画像を取得する(ステップS12)。具体的には、図6(a),図6(b)に示されるように、処理部5は、複素数画像G0に対して2×2のウインドウサイズで平滑化(畳み込み演算)し、第1平滑化複素数画像G1を得る。図7(a),図7(b)に示されるように、処理部5は、複素数画像G0に対して4×4のウインドウサイズで平滑化し、第2平滑化複素数画像G2を得る。図8(a),図8(b)に示されるように、処理部5は、複素数画像G0に対して8×8のウインドウサイズで平滑化し、第3平滑化複素数画像G3を得る。
【0039】
なお、複素数画像の平滑化にあたっては、実部と虚部とのそれぞれに対して平滑化フィルタ処理を行うものとする。第1~第3平滑化複素数画像G1~G3の定義としては、複素数画像G0の場合と同様に、次のように定める。第1平滑化複素数画像G1は、実部を画像G1Re(図6(a)参照)とし、虚部を画像G1Im(図6(b)参照)とする複素数の二次元配列によって表される画像である。第2平滑化複素数画像G2は、実部を画像G2Re(図7(a)参照)とし、虚部を画像G2Im(図7(b)参照)とする複素数の二次元配列によって表される画像である。第3平滑化複素数画像G3は、実部を画像G3Re(図8(a)参照)とし、虚部を画像G3Im(図8(b)参照)とする複素数の二次元配列によって表される画像である。
【0040】
続いて、処理部5は、複素数画像G0、第1平滑化複素数画像G1、第2平滑化複素数画像G2及び第3平滑化複素数画像G3同士で割り算を行った上で偏角を計算することにより、特定の空間周波数に対してどの程度位相が変動しているかを指標化する複数の位相差分画像を取得する(ステップS13)。具体的には、処理部5は、複素数画像G0を第1平滑化複素数画像G1で除算し偏角を取得することで、複素数画像G0に対する第1平滑化複素数画像G1の位相差分を計算する(つまり、Arg(複素数画像G0/第1平滑化複素数画像G1))。ここで、Arg(C)は複素数Cに対して偏角を計算する関数である。これにより、平滑化距離が2離れた画素同士の位相変動(ΔL=2)を表す第1位相差分画像Z1(図9(a)参照)を取得する。
【0041】
処理部5は、第1平滑化複素数画像G1を第2平滑化複素数画像G2で除算し偏角を取得することで、第1平滑化複素数画像G1に対する第2平滑化複素数画像G2の位相差分を計算する(つまり、Arg(第1平滑化複素数画像G1/第2平滑化複素数画像G2))。これにより、平滑化距離が4離れた画素同士の位相変動(ΔL=4)を表す第2位相差分画像Z2(図9(b)参照)を取得する。さらに、処理部5は、第2平滑化複素数画像G2を第3平滑化複素数画像G3で除算し偏角を取得することで、第2平滑化複素数画像G2に対する第3平滑化複素数画像G3の位相差分を計算する(つまり、Arg(第2平滑化複素数画像G2/第3平滑化複素数画像G3))。これにより、平滑化距離が8離れた画素同士の位相変動(ΔL=8)を表す第3位相差分画像Z3(図9(c)参照)を取得する。なお、一般的に、偏角Φ1の複素数C1と偏角Φ2の複素数C2との位相差分は、Arg(C1/C2)で表されることに留意されたい。
【0042】
図10(a)は、反射性異物91を含む位相画像の一部を拡大して示す図である。図10(b)は、図10(a)の位相画像に対応する位相差分画像の一部を拡大して示す図である。図10(b)では、ΔL=4の場合の位相差分画像である。処理部5は、図10(a)の位相画像を元に、図10(b)の位相差分画像を得ることができる。図11(a)は、透過性異物92を含む位相画像の一部を拡大して示す図である。図11(b)は、図11(a)の位相画像に対応する位相差分画像の一部を拡大して示す図である。図11(b)では、ΔL=4の場合の位相差分画像である。処理部5は、図11(a)の位相画像を元に、図11(b)の位相差分画像を得ることができる。
【0043】
処理部5は、第1位相差分画像Z1の各画素(各座標位置)において、その特徴量である第1位相変動量を算出する。第1位相変動量は、第1位相差分画像Z1の標準偏差である。処理部5は、第2位相差分画像Z2の各画素において、その特徴量である第2位相変動量を算出する。第2位相変動量は、第2位相差分画像Z2の標準偏差である。処理部5は、第3位相差分画像Z3の各画素において、その特徴量である第3位相変動量を算出する。第3位相変動量は、第3位相差分画像Z3の標準偏差である。
【0044】
処理部5は、各画素の第1~第3位相変動量に基づいて、各画素の乱雑度を取得する(ステップS14)。乱雑度は、第1~第3位相変動量を並べた特徴量ベクトルである。乱雑度は、多次元パラメータであり、ここでは、3次元パラメータである。乱雑度は、画像の画素毎に取得される。このような乱雑度によれば、何通りかの平滑化フィルタを用いた位相差分画像を比較することで得られることから、周波数の異なる位相構造を分類することができる。
【0045】
処理部5は、干渉画像における異物9を抽出する。具体的には、処理部5は、位相差分画像の局所的な変動量を指標にして、異物9を抽出する。図12に示す例は、ΔL=4の第2位相差分画像Z2における局所的な位相変動を画像化した図である。処理部5は、第2位相差分画像Z2において閾値を超える局所的な位相変動を示す画素の領域を、異物9が存在する領域として切り出す。なお、異物9を抽出する処理に関しては、特に限定されず、例えば別途撮影した明視野画像を用いる等、種々の公知手法を利用することができる。
【0046】
処理部5は、記憶領域51に記憶した異物分類モデルを参照して、取得した乱雑度から異物9の種類を判別する。異物分類モデルは、異物9を分類する基準となる分類基準である。異物分類モデルは、乱雑度を代入することで「反射性異物度」もしくは「透過性異物度」を数値化する分類関数に対応する。反射性異物度は、個々の異物9に紐づけ可能な指標であり、第1光L1に関する異物9の反射性の度合いを表す値である。透過性異物度は、個々の異物9に紐づけ可能な指標であり、第1光L1に関する異物9の透過性の度合いを表す値である。異物分類モデルは、多次元空間において複数の種類の異物9を分類できる分類面(境界面)を定義することで得られる。例えば図13に示される異物分類モデルは、3種類の異物を分類するモデルであって、第1~第3位相変動量を軸とする3次元空間にて分類面MPを定義することで得られる。
【0047】
表示部53は、処理部5により算出した乱雑度に関する情報を表示する。表示部53は、処理部5により判別した異物9の種類に関する情報を表示する。表示部53は、処理部5で取得した乱雑度に関する情報を出力する出力部を構成する。例えば表示部53は、乱雑度に関する情報として、各異物9の反射性異物度に関する反射性異物度テーブルTb(図14参照)を表示する。
【0048】
反射性異物度テーブルTbは、処理部5により生成される。反射性異物度テーブルTbは、干渉画像における複数の異物9の位置と複数の異物9それぞれの反射性異物度とを示す表である。反射性異物度テーブルTbの「面積」は、干渉画像における各異物9に対応するエリアの面積である。反射性異物度テーブルTbの「体積」は、干渉画像における各異物9に対応するエリアに含まれるピクセルの輝度を、エリア全体にわたって積分した値である。例えば、2×2ピクセルで位相値が3[ラジアン]のエリアの「体積」は、2×2×3=12[ラジアン・ピクセル^2]となる。単位は、[ラジアン・μm^2]に変換してもよいし、異物の厚さと位相値との比例関係を用いて[μm^3]に変換してもよい。図14に示される反射性異物度テーブルTbの例では、反射性異物度が0.9999の異物9の種類について、反射性異物91であると判別でき、反射性異物度が0.02の異物9の種類について、透過性異物92であると判別できる。
【0049】
学習部54は、観察対象物8に異物9が付着している場合の複数種の干渉画像を教師データとした機械学習により、異物分類モデルを生成する。学習部54は、生成した異物分類モデルを記憶領域51に記憶して格納する。異物分類モデルの学習方法の一例について、図15のフローチャートを用いて以下に詳説する。
【0050】
まず、異物9が付着している複数種の観察対象物8の位相画像を、教師データとして取得する(ステップS21)。上記ステップS21は、干渉光L3を撮像素子4により検出して位相画像を取得するステップを、異物9が付着している複数種の観察対象物8に対して実施することで実現できる。例えば教師データとしての位相画像は、当該干位相画像に含まれる各異物9の種類に関する情報をアノテーション情報として含む。教師データとしての位相画像は、定量位相画像及び数学的にそれと同等な画像に限定される。例えば位相画像の実部と虚部とを複素数データとして格納した画像は、逆正接計算により対応する定量位相画像を作ることができるため、数学的には定量位相画像と同等と言える。教師データとしての位相画像は、以下の何れであってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。
(a)干渉観察装置1の製造者(以下、単に「製造者」ともいう)が事前に測定し、ネットワーク上のコンピュータに保存された干渉画像
(b)干渉観察装置1のユーザ(以下、単に「ユーザ」ともいう)が事前に測定し、ユーザ管理のコンピュータに保存された干渉画像
(c)ユーザが異物分類モデルの生成の際に測定した干渉画像
【0051】
続いて、上記ステップS21で取得した複数種の位相画像を、記憶領域51に記憶する(上記ステップS22)。学習部54は、記憶した複数種の位相画像を教師データとする機械学習により、異物分類モデルを生成する(ステップS23)。異物分類モデルの生成に利用されるアルゴリズムの種類及び/又は構成は、特に限定されない。アルゴリズムの種類は、例えば、ランダムフォレスト決定木、多層パーセプトロン(ニューラルネットワーク)等である。アルゴリズムの構成は、中間層の数、各層のユニット数、分岐数、目的変数、説明変数等である。アルゴリズムの種類及び/又は構成は、サポートベクターマシン又はディープラーニングによって生成されてもよい。アルゴリズムの種類及び/又は構成は、異物分類モデルが2種類の異物を分類するモデルである場合には、ロジスティック回帰分析によって生成されてもよい。
【0052】
なお、上記ステップS22は、製造者の操作により実行されてもよく、この場合、取得した複数の干渉画像をオンラインもしくは装置付属の画像データベースに格納してもよい。上記ステップS22は、ユーザの操作により実行されてもよく、この場合、取得した複数の干渉画像をファイルに格納してもよい。上記ステップS23は、製造者又はユーザの操作により実行してもよい。
【0053】
[動作例]
次に、図16を参照しつつ、干渉観察装置1による干渉観察方法を説明する。以下の一例では、観察対象物8の内部の観察面Rを観察し、観察対象物8の膜部82の表面(外表面)に異物9が付着している場合を例示する。
【0054】
まず、撮像素子4は、観察対象物8の撮像画像を取得する(ステップS1)。上記ステップS1では、観察対象物8の観察面Rに対物レンズ13の焦点が合うように対物レンズ13の位置を調整し、撮像素子4により干渉画像を取得する。具体的には、対物レンズ13及びレンズ41による光学的な結像により、観察面Rと撮像素子4の受光面とが光学的に共役関係となるように調整する。処理部5は、上記ステップS11~S14の処理を実行し、干渉画像における各画素の乱雑度を取得する(ステップS2)。
【0055】
続いて、処理部5は、干渉画像における異物9を抽出する(ステップS3)。上記ステップS3では、干渉画像から得られた位相差分画像の局所的な変動量を指標に、干渉画像において各異物9が存在する画素(座標位置)を抽出する。続いて、処理部5は、干渉画像における異物9の領域の乱雑度を取得する。処理部5は、上記ステップS2で取得した干渉画像の各画素の乱雑度と、上記ステップS3で抽出した各異物9の画素とに基づいて、各異物領域の画像の乱雑度を取得する。そして、処理部5は、記憶領域51に記憶した異物分類モデルを用いて、各異物領域の画像の乱雑度から当該異物を弁別する(ステップS4:処理ステップ)。表示部53は、各異物9の領域における干渉画像の乱雑度に関する情報の出力として、反射性異物度テーブルTbを表示する(ステップS5:出力ステップ)。上記ステップS5では、表示部53は、各異物9の種類に関する情報を更に表示してもよい。
【0056】
[作用及び効果]
異物9が付着している観察対象物8の干渉画像では、異物9の領域の乱雑度が当該異物9の種類によって異なることが見出される。例えば、反射性異物91では、異物9が第1光L1を散乱すること及び異物9からの反射光と観察面(反射面)Rからの反射光とが重畳することのために、画像が散乱の回折パターン的になるが、透過性異物92ではそのようなことが起きにくいことが見出される。よって、干渉画像における異物9の領域の乱雑度を得ることができれば、アスペクト比又は光学体積だけでは弁別困難な当該異物9についても、精度よく弁別することが可能となることが見出される。この点、干渉観察装置1及び干渉観察方法では、観察対象物8に異物9が付着している場合、干渉画像における当該異物9の領域の乱雑度に関する情報を出力する。よって、干渉観察装置1及び干渉観察方法によれば、出力した干渉画像の異物9の領域における干渉画像の乱雑度に関する情報に基づくことで、観察対象物8に付着する異物9をその種類を区別して見分けること、すなわち、異物9を弁別することが可能となる。
【0057】
干渉観察装置1及び干渉観察方法は、異物分類モデルを記憶する記憶領域51を備え、処理部5は、記憶領域51に記憶した異物分類モデルを参照して、取得した乱雑度から異物の種類を判別する。この場合、観察対象物8に付着する異物を9、記憶領域51の異物分類モデルを参照して弁別することが可能となる。
【0058】
干渉観察装置1及び干渉観察方法は、観察対象物8に異物9が付着している場合の複数の干渉画像を教師データとした機械学習により異物分類モデルを生成する学習部54を備える。この場合、機械学習により異物分類モデルを生成することが可能となる。
【0059】
干渉観察装置1及び干渉観察方法では、異物9は、反射性異物及び透過性異物を含む。この場合、異物9が反射性異物であるか透過性異物であるかを弁別することが可能となる。干渉観察装置1及び干渉観察方法では、反射性異物91は、半導体であるシリコンを含み、透過性異物92は、有機物を含む。この場合、観察対象物8に付着する異物9について、反射性を有するシリコンであるか透過性を有する有機物であるかを弁別することが可能となる。
【0060】
干渉観察装置1及び干渉観察方法では、乱雑度に関する情報を表示する表示部53を含む。この場合、干渉画像における当該異物9の領域の乱雑度に関する情報を容易に把握することができる。
【0061】
干渉観察装置1及び干渉観察方法では、乱雑度を取得する上記ステップS11~S14において、複素数画像の平滑化画像を元にした位相差分画像を採用することで、位相の2π以上の折り返しを含む干渉画像の局所的な位相変動量を数値化することができる。上記ステップS11~S14の画像処理では位相アンラップを用いていないため、位相アンラップに起因する種々のエラーによる影響を受けることがない。また、位相の2π以上の折り返しが画像に含まれているかどうかに関係なく、同じ計算によって位相の局所的な変動の大きい箇所を抽出することができる。
【0062】
干渉観察装置1及び干渉観察方法では、乱雑度の多次元パラメータの例として、位相差分画像の位相変動量(標準偏差)を用いている。位相差分画像の位相変動量は、平滑化フィルタのサイズを変えることで、何通りも評価することができるため、多次元化することが容易である。乱雑度の多次元パラメータの他の例として、異物9の領域における干渉縞振幅の反射強度の周囲と比べたコントラスト差であってもよい。
【0063】
なお、本実施形態の干渉光学系3は、第2光L2の光路の光路長(参照光路長)が変更可能に構成されている。この場合、次に例示するように、第2光L2の光路の光路長を変更することで、取得される干渉画像においては、観察対象物8の観察面R以外の面に付着する異物9を際立たせることが可能となり、異物9を容易に弁別することが可能となる。すなわち、処理部5によりピエゾ素子19を制御して参照ミラー15を前位置(第1位置)に移動させ、撮像素子4により第1位相画像を取得する。処理部5によりピエゾ素子19を制御して参照ミラー15を後位置(第2位置)に移動させ、撮像素子4により第2位相画像を取得する。処理部5により、第1位相画像K1及び第2位相画像K2の平均画像に、公知手法である閾値処理を行って閾値以上の輝点のみを抽出し、異物9が際立った干渉画像である輝点抽出位相画像を取得する。この輝点抽出位相画像において異物9の領域の乱雑度を取得することで、異物9を容易に弁別することが可能となる。なお、この場合、参照ミラー15の移動機構として、ピエゾ素子19を用いる代わりにステッピングモータ18を用いてもよい。参照対物レンズ14を移動させることにより第2光L2の光路の焦点条件を変化させてもよい。第1位相画像K1及び第2位相画像K2の平均画像を用いて輝点抽出を行う代わりに、第1位相画像K1及び第2位相画像K2の何れか一方を用いてもよい。
【0064】
<変形例>
以上、本発明の一態様は、上記実施形態に限定されない。
【0065】
上記実施形態では、乱雑度を3次元パラメータとしているが、これに限定されず、乱雑度を4次元以上の多次元パラメータとしてもよい。例えば複数種の平滑化複素数画像を取得する際の平滑化のウインドウサイズを4種類以上とすることで、乱雑度の次元を任意に高次元化してもよい。また例えば主成分分析等の手法により次元削減し、乱雑度を1次元もしくは2次元パラメータとしてもよい。一例として、乱雑度は、第1及び第2位相変動量を並べた2次元パラメータとしてもよい。この場合、異物分類モデルは、例えば図17に示されるように、3種類の異物を分類するモデルであって、第1及び第2位相変動量を軸とする2次元空間にて分類曲線MP2を定義することで得られるものであってもよい。
【0066】
上記実施形態では、学習部54が機械学習により生成した異物分類モデルを記憶領域51に記憶したが、これに限定されない。学習部54を備えず、製造者又は使用者により事前に生成した異物分類モデルを記憶領域51に記憶してもよい。この場合、異物分類モデルの生成に用いられるハードウェアは、使用者のパーソナルコンピュータであってもよいし、クラウドサーバであってもよい。これにより、読み込むデータ量を少なくし、初期設定時の動作を高速化できる。
【0067】
上記実施形態では、各異物9の反射性異物度に関する反射性異物度テーブルTbを表示部53に表示したが、これに代えてもしくは加えて、透過性異物度に関する情報を表示部53に表示してもよいし、その他の乱雑度に関する情報を表示部53に表示してもよい。上記実施形態では、反射性異物度もしくは透過性異物度を数値化した後、それが閾値よりも大きいか又は小さいかどうかを判定し、当該判定結果により異物9を弁別してもよい。
【0068】
上記実施形態は、出力部として表示部53を備えたが、出力部は、表示部53に限定されず、処理部5で取得した乱雑度に関する情報を出力すればよい。例えば出力部は、乱雑度に関する情報を送信する送信部であってもよい。例えば出力部は、乱雑度に関する情報を干渉観察装置1の外部又は内部の要素へ出力する部分であってもよい。上記実施形態では、乱雑度に関する情報を表示部53に表示するのに代えてもしくは加えて、記憶領域51又は別途の記憶媒体に記憶してもよいし、外部へ送信してもよい。
【0069】
上記実施形態では、異物分類モデルを記憶領域51から読み込むことで取得しているが、クラウドサーバ等の外部からダウンロードすることで取得してもよいし、装置付属のレシピデータベースから読み込むことで取得してもよい。上記実施形態では、種々の物体を観察対象物8として用いてもよい。例えば観察対象物としては、いわゆるキャップ付きデバイスであってもよいし、いわゆる貼り合わせウエハであってもよいし、単板のウエハであってもよい。
【0070】
上記実施形態では、乱雑度を取得(上記ステップS2)の後に、異物9の抽出(上記ステップS3)を実施しているが、異物9の抽出の後に乱雑度を取得してもよい。この場合、例えば、干渉画像において異物9が存在する領域が閾値処理等によって抽出され、抽出された異物9の干渉画像の乱雑度が算出される。ちなみに、干渉画像の乱雑度の取得後に異物9を抽出する場合、干渉画像に対して単純処理が可能であるため、処理速度を高速化し得る。
【0071】
上記実施形態では、参照ミラー15を移動させることにより第2光L2の光路の焦点条件を変化させたが、これに代えてもしくは加えて、参照対物レンズ14を移動させることにより第2光L2の光路の焦点条件を変化させてもよい。この場合、処理部5が、ステッピングモータ17を制御して参照対物レンズ14を前位置に移動させた状態で、撮像素子4が取得した複数の干渉画像に基づき第1干渉画像を構築してもよい。処理部5が、ステッピングモータ17を制御して参照対物レンズ14を後位置に移動させた状態で、撮像素子4が取得した複数の干渉画像に基づき第2干渉画像を構築してもよい。そして、処理部5が、第1干渉画像と第2干渉画像とに基づいて、観察面情報と非観察面情報とを分離してもよい。
【0072】
上記実施形態では、アクチュエータ16によって対物レンズ13をZ方向に沿って移動させて対物レンズ13と観察対象物8との間の相対位置を調整したが、これに代えて又は加えて、ステージSをZ方向に沿って移動させて当該相対位置を調整してもよい。この場合、ステージSは、XY方向に加えてZ方向にも移動可能に構成される。この場合、アクチュエータ16は省略されてもよい。ステージSは、第1光L1が観察対象物8に入射する方向と交差する方向に沿って移動可能であればよく、例えばXY平面に対して傾斜した方向に移動可能であってもよい。参照対物レンズ14及び参照ミラー15を駆動させるアクチュエータは、ステッピングモータ17,18に限られず、サーボモータ等の他のアクチュエータであってもよい。
【0073】
上記実施形態では、干渉光学系3がリニック干渉型に構成されていたが、干渉光学系3は、マイケルソン干渉型又はミラウ干渉型に構成されてもよい。参照対物レンズ14は省略されてもよい。上記実施形態では、位相画像の構築に用いられる干渉画像の数は特に限定されず、1又は複数であってもよい。
【0074】
上記実施形態及び上記変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態及び変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…干渉観察装置、2…光源、3…干渉光学系、4…撮像素子、5…処理部、8…観察対象物、9…異物、14…参照対物レンズ、15…参照ミラー、51…記憶領域(記憶部)、53…表示部(出力部)、91…反射性異物、92…透過性異物、L1…第1光、L2…第2光、L3…干渉光、R…観察面、Tb…反射性異物度テーブル(乱雑度に関する情報)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17