IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンマーホールディングス株式会社の特許一覧

特開2024-177766経路生成方法、経路生成プログラム、及び経路生成システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177766
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】経路生成方法、経路生成プログラム、及び経路生成システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241217BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241217BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096096
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】李 昇圭
(72)【発明者】
【氏名】大森 康永
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB14
2B043DC01
2B043EA03
2B043EA12
2B043EA32
2B043EB04
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB16
2B043EB17
2B043EC14
2B043EC16
2B043ED12
2B043EE01
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301BB03
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301FF11
5H301HH01
5H301HH11
5H301HH15
5H301HH18
(57)【要約】
【課題】作業車両を自動走行させる目標経路を容易に生成することが可能な経路生成方法、経路生成プログラム、及び経路生成システムを提供する。
【解決手段】生成処理部112は、互いに異なる方位の複数の基準線を生成する。補正処理部113は、前記複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、前記複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準線に基づいて作業車両を自動走行させる目標経路を生成する経路生成方法であって、
互いに異なる方位の複数の基準線を生成することと、
前記複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、前記複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正することと、
を実行する経路生成方法。
【請求項2】
前記複数の基準線は、第1基準線と、前記第1基準線に基づいて生成される第2基準線とを含み、
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が所定角度未満の場合に、前記第2基準線を前記新たな基準線の位置に補正する、
請求項1に記載の経路生成方法。
【請求項3】
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上の場合に、前記第1基準線を前記新たな基準線の位置に補正する、
請求項2に記載の経路生成方法。
【請求項4】
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上の場合に、前記新たな基準線を第3基準線として登録する、
請求項2に記載の経路生成方法。
【請求項5】
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上の場合に、前記第1基準線を前記新たな基準線の位置に補正するか、又は、前記新たな基準線を第3基準線として登録するかを選択する操作を受け付ける、
請求項2に記載の経路生成方法。
【請求項6】
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上であって、かつ前記第1基準線と前記新たな基準線との間の距離が所定距離未満の場合に、前記第1基準線を前記新たな基準線の位置に補正し、
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上であって、かつ前記第1基準線と前記新たな基準線との間の距離が前記所定距離以上の場合に、前記新たな基準線を第3基準線として登録する、
請求項2に記載の経路生成方法。
【請求項7】
基準線に基づいて作業車両を自動走行させる目標経路を生成する経路生成プログラムであって、
互いに異なる方位の複数の基準線を生成することと、
前記複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、前記複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための経路生成プログラム。
【請求項8】
基準線に基づいて作業車両を自動走行させる目標経路を生成する経路生成システムであって、
互いに異なる方位の複数の基準線を生成する生成処理部と、
前記複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、前記複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正する補正処理部と、
を備える経路生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業領域において作業車両を自動走行させる経路を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場において、予め生成された目標経路に従って作業車両を自動走行させるシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。例えば、前記システムは、作業者による操作に基づいて複数の基準線を生成し、複数の基準線から選択された基準線に対応する目標経路に従って作業車両を自動走行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7203654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、例えば新たに基準線を登録して目標経路を生成する場合に、作業者は、登録済みの基準線のうちいずれかの基準線を選択して削除してから新たな基準線の設定操作を行わなければならず手間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、作業車両を自動走行させる目標経路を容易に生成することが可能な経路生成方法、経路生成プログラム、及び経路生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る経路生成方法は、基準線に基づいて作業車両を自動走行させる目標経路を生成する方法である。前記経路生成方法は、互いに異なる方位の複数の基準線を生成することと、前記複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、前記複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正することと、を実行する。
【0007】
本発明に係る経路生成プログラムは、基準線に基づいて作業車両を自動走行させる目標経路を生成するプログラムである。前記経路生成プログラムは、互いに異なる方位の複数の基準線を生成することと、前記複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、前記複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【0008】
本発明に係る経路生成システムは、基準線に基づいて作業車両を自動走行させる目標経路を生成するシステムである。前記経路生成システムは、生成処理部と補正処理部とを備える。前記生成処理部は、互いに異なる方位の複数の基準線を生成する。前記補正処理部は、前記複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、前記複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業車両を自動走行させる目標経路を容易に生成することが可能な経路生成方法、経路生成プログラム、及び経路生成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る走行システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るコンバインの構成を示す外観側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るコンバインの構成を示す外観上面図である。
図4A図4Aは、本発明の実施形態に係る圃場に設定される目標経路の一例を示す図である。
図4B図4Bは、本発明の実施形態に係る圃場に設定される目標経路の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るコンバインの作業手順の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るコンバインに設けられる操作装置の構成を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るコンバインに設けられる操作装置の構成を示す図である。
図8A図8Aは、本発明の実施形態1に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図8B図8Bは、本発明の実施形態1に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図8C図8Cは、本発明の実施形態1に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図8D図8Dは、本発明の実施形態1に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図8E図8Eは、本発明の実施形態1に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図9A図9Aは、本発明の実施形態1に係るコンバインの目標経路の生成方法の一例を示す図である。
図9B図9Bは、本発明の実施形態1に係るコンバインの目標経路の生成方法の一例を示す図である。
図10図10は、本発明の実施形態1に係る基準線の補正方法の一例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施形態1に係る走行システムによって実行される走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、本発明の実施形態1に係る基準線の補正方法の一例を示す図である。
図13図13は、本発明の実施形態1に係るコンバインの走行方法の一例を示す図である。
図14図14は、本発明の実施形態1に係るコンバインの走行方法の一例を示す図である。
図15図15は、本発明の実施形態1に係るコンバインの走行方法の一例を示す図である。
図16A図16Aは、本発明の実施形態2に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図16B図16Bは、本発明の実施形態2に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図16C図16Cは、本発明の実施形態2に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図16D図16Dは、本発明の実施形態2に係るコンバインの基準線の生成方法の一例を示す図である。
図17図17は、本発明の実施形態2に係る基準線の補正方法の一例を示す図である。
図18図18は、本発明の実施形態2に係る基準線の補正方法の一例を示す図である。
図19図19は、本発明の実施形態2に係る基準線の補正方法の一例を示す図である。
図20図20は、本発明の実施形態2に係る走行システムによって実行される経路生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る走行システムは、コンバイン1と、衛星(不図示)と、基地局(不図示)とを含んでいる。コンバイン1は、本発明の作業車両の一例である。本発明の作業車両は、コンバイン1に限定されず、トラクタ、田植機、建設機械、又は除雪車などであってもよい。
【0013】
コンバイン1は、圃場F(図4参照)内を作業者(オペレータ)の操作に応じて、目標経路Rに従って走行しながら所定の作業(例えば刈取作業)を行う。具体的には、コンバイン1は、圃場F内の作業領域において自動操舵に応じて目標経路R(例えば直線作業経路)を自動走行し、圃場F内の非作業領域において作業者による手動操舵(運転操作)に応じて手動走行する。コンバイン1は、作業領域の自動走行と非作業領域の手動走行とを切り替えながら圃場F内を走行して作業を行う。目標経路Rは、作業者の操作に基づいて予め生成され、経路データとして記憶されてもよい。
【0014】
なお、本実施形態において、自動走行とは、コンバイン1が目標経路Rに沿うように操舵量(操舵角)を制御(自動操舵)しながら走行することを言う。コンバイン1が自動走行中、作業者は主変速レバーを操作して車速(走行速度)及び走行方向(前進方向及び後進方向)を切り替えることが可能である。また、作業者は、コンバイン1が目標経路Rに従って自動走行中に停止操作(停止スイッチの押下、ハンドルの操舵など)を行った場合に、コンバイン1の自動走行を停止させることが可能である。このように、本実施形態のコンバイン1は、自動走行において、自動操舵(操舵制御処理)のみ実行し、車速及び走行方向の切替処理、停止処理は作業者の操作に応じて実行する構成である。他の実施形態として、コンバイン1は、自動操舵、車速及び走行方向の切替処理、停止処理のそれぞれを、作業者の操作に依らず自動的に実行する構成であってもよい。
【0015】
図4A及び図4Bには、圃場Fに対して設定される目標経路Rの一例を示している。コンバイン1は、圃場F内において、目標経路Rに従って自動走行しながら刈取作業を行う。例えば図4Aに示すように、コンバイン1は、第1基準線L1に平行な複数の経路(平行線)を目標経路R1に設定すると、設定した目標経路R1に従って圃場F内を図中の上下方向に自動走行する。また例えば図4Bに示すように、コンバイン1は、第2基準線L2に平行な複数の経路(平行線)を目標経路R2に設定すると、設定した目標経路R2に従って圃場F内を図中の左右方向に自動走行する。なお、以下の説明において、目標経路R1、R2を区別する必要のない場合には、「目標経路R」と称す。第1基準線L1は例えば圃場F内の任意の位置に登録される始点A及び終点Bに基づいて生成され、第2基準線L2は例えば第1基準線L1に直交する直交線により生成される。なお、第2基準線L2は、第1基準線L1と同様に始点及び終点に基づいて生成されてもよい。また、コンバイン1に自動走行させる目標経路Rは、直線経路に限定されず、曲線経路であってもよい。例えば直線の基準線Lが生成された場合には直線の目標経路Rが生成され、曲線の基準線Lが生成された場合には曲線の目標経路Rが生成される。
【0016】
コンバイン1の作業手順の一例を図5を用いて説明する。コンバイン1は、圃場Fにおいて、例えば第1基準線L1及び第2基準線L2に基づいて生成される目標経路R1、R2(図4A及び図4B参照)に従って自動走行しながら刈取作業を行う。例えばコンバイン1は、直進する場合に目標経路R1、R2に従って自動走行し、旋回する場合に作業者の手動操舵に従って手動走行する。ここでは、コンバイン1は、開始位置Sから終了位置Gまで、外周側から内周側へ向かって走行しながら刈取作業(「回り刈り」、「往復刈り」)を行う。先ず、コンバイン1は、開始位置Sにおいて自動走行を開始すると、圃場Fの外周に沿って穀稈を刈り取りながら走行する。また、コンバイン1は、刈り取った穀稈を脱穀すると、藁屑などの排藁を機体後方から外部に排出する。これにより、コンバイン1の走行跡には排藁C1が堆積され、コンバイン1が刈取作業を終えた経路には排藁列が形成される。なお、コンバイン1は、刈り取り対象の穀稈の位置に、刈り取った当該穀稈の排藁を排出するように設定されており、排藁C1の位置、幅(排藁列の左右方向の横幅)、長さなどを把握可能に構成されている。例えば、排藁C1は、コンバイン1の左右方向の中心を基準にして、機体の横幅よりも狭い幅で排出される。例えば、コンバイン1は、外周領域F1を2周する。この場合、2周分の排藁列が形成される。なお、外周領域F1の周回数は2周に限定されず、1周又は3周以上であってもよい。
【0017】
コンバイン1は、外周領域F1の刈取作業を終えると、内周領域F2に進入して、内周領域F2の刈取作業を開始する。内周領域F2では、コンバイン1は、上下方向において直進走行しながら刈取作業を行い、左右方向において刈取作業を行わずに外周領域F1(作業済領域、既刈領域)を旋回走行及び直進走行して作業経路間を移動する。コンバイン1は、内周領域F2において刈取作業を行い、終了位置Gに到達すると自動走行及び刈取作業を終了する。
【0018】
コンバイン1は、上記のように圃場F内において、上下方向では第1基準線L1に対応する目標経路R1(図4A参照)に従って自動走行しながら刈取作業を行い、左右方向では第2基準線L2に対応する目標経路R2(図4B参照)に従って自動走行しながら刈取作業を行う。また、コンバイン1は、直進走行する場合に自動走行し、旋回走行する場合に作業者の手動操舵に応じて手動走行してもよい。例えば、コンバイン1は、刈取作業を行いながら直進経路(作業経路)を前進方向に自動走行し、刈取作業を停止して作業済経路(既作業経路)を後進方向に自動走行してもよい。またコンバイン1は、作業経路間を移動する際に作業者の手動操舵によって手動走行してもよい。
【0019】
なお、走行システムは、作業者が操作する操作端末(タブレット端末、スマートフォンなど)を含んでもよい。前記操作端末は、携帯電話回線網、パケット回線網、無線LANなどの通信網を介してコンバイン1と通信可能である。例えば作業者は、前記操作端末において、各種情報(作業車両情報、圃場情報、作業情報など)などを登録する操作を行う。また、作業者は、コンバイン1から離れた場所において、前記操作端末に表示される走行軌跡により、コンバイン1の走行状況、作業状況などを把握することが可能である。前記操作端末は、コンバイン1に搭載可能であってもよい。
【0020】
[コンバイン1]
図2にはコンバイン1を側方から見た外観図を示し、図3にはコンバイン1を上方から見た外観図を示している。図1図3に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8、操縦部9、操作装置30、制御装置11、記憶部51、測位ユニット52、検知部53、通信部54などを備える。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。また、コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、及び排藁処理部7を駆動する。
【0021】
走行部2は、機体フレーム12の下方に設けられており、左右一対のクローラ式走行装置23と、トランスミッション(不図示)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン20から伝達される動力(例えば回転動力)によって、クローラ式走行装置23のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置23に伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0022】
刈取部3は、作業対象の圃場Fに対して作業を行う作業機であり、走行部2の前方に設けられ、圃場Fの未作業領域である未刈穀稈を有する領域(未刈領域)における所定の刈取幅の穀稈の刈取を行う。刈取部3は、本発明の作業部の一例である。刈取部3は、デバイダ13と、掻込リール14と、刈刃15と、掻込オーガ16と、フィーダハウス17と、搬送コンベヤ18とを備えている。また、刈取部3は、刈取作業を行うための回転作業の回転速度(作業速度)を検出する回転検出部(不図示)を備えている。前記回転検出部は、例えば、掻込リール14の回転速度、掻込オーガ16の回転速度、搬送コンベヤ18の回転速度などを検出する回転センサで構成される。
【0023】
デバイダ13は、刈取部3の左前端及び右前端から前方に突出して設けられ、未刈領域の穀稈を刈取幅内に案内する。掻込リール14は、デバイダ13の後方に配置され、左右方向に延びた回転軸周りに回転可能に設けられる。掻込リール14は、デバイダ13によって案内された穀稈の刈取を補助するために、回転駆動することによって穀稈を引き起こしながら穀稈の穂先側を掻き込む。刈刃15は、掻込リール14の下方に配置され、掻込リール14によって掻き込まれた穀稈の稈元側を切断して穀稈の刈取を行う。
【0024】
掻込オーガ16は、掻込リール14及び刈刃15の後方に配置され、左右方向に延びた回転軸周りに回転可能に設けられている。掻込オーガ16は、回転駆動することによって、刈刃15により刈り取った穀稈を掻き込んで後方へ搬送する。
【0025】
フィーダハウス17は、機体フレーム12から前方に延びていて掻込オーガ16の後方に配置され、機体フレーム12に昇降可能に支持されている。また、フィーダハウス17が昇降することによってデバイダ13、掻込リール14、刈刃15及び掻込オーガ16が昇降し、すなわち刈取部3が昇降する。
【0026】
なお、コンバイン1は、フィーダハウス17を昇降させて刈取部3を昇降させる昇降装置19を機体フレーム12に備えており、刈取部3を作業位置(図2参照)と非作業位置(不図示)との間で昇降させる。昇降装置19は、例えば、エンジン20から動力を受けて稼動する油圧シリンダ等で構成される。
【0027】
搬送コンベヤ18は、フィーダハウス17内に回転可能に設けられており、フィーダハウス17の昇降に伴って移動する。搬送コンベヤ18は、回転駆動することによって、掻込オーガ16によってフィーダハウス17内に搬送された穀稈を更に後方に向かって脱穀部4へと搬送する。
【0028】
脱穀部4は、刈取部3のフィーダハウス17の後方に設けられており、フィーダハウス17から搬送された穀稈を脱穀する。脱穀部4は、扱胴21と、受網22とを備える。扱胴21は、フィーダハウス17から搬送された穀稈から穀粒を脱穀するとともに、脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。受網22は、扱胴21によって搬送される穀稈を支持するとともに、穀粒をふるいにかけて落下させる。
【0029】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、揺動選別装置24と、送風選別装置25と、穀粒搬送装置(不図示)と、藁屑排出装置(不図示)とを備える。揺動選別装置24は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。送風選別装置25は、脱穀部4から落下した脱穀物や揺動選別装置24によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置24及び送風選別装置25によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置24及び送風選別装置25によって選別された穀粒以外の藁屑等を機外へ排出する。
【0030】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられている。貯留部6は、貯留タンク(グレンタンク)27と、穀粒排出装置28とを備える。貯留タンク27は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。穀粒排出装置28は、排出オーガ等を有して構成され、穀粒の排出作業を行い、貯留タンク27に貯留されている穀粒を予め設定された排出位置において搬送車に排出する。
【0031】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、例えば、排藁搬送装置(不図示)と、排藁切断装置(不図示)とを備えている。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送された排藁を排藁搬送装置によって排藁切断装置へ搬送して、排藁切断装置によって切断した後でコンバイン1の後方に排出する(図5参照)。
【0032】
動力部8は、走行部2の上方、かつ貯留部6の下方に設けられている。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン20を備えている。動力部8は、エンジン20が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。また、コンバイン1は、動力部8のエンジン20へ供給する燃料を収容する燃料タンクを備えている。
【0033】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられている。操縦部9は、作業者が座る座席40である運転席の周囲に、コンバイン1の走行を操縦するための操作具として、コンバイン1の機体の旋回を指示するためのハンドル、コンバイン1の前後進の速度変更を指示するための主変速レバー及び副変速レバー等を備える。コンバイン1の手動走行は、操縦部9のハンドル、主変速レバー、及び副変速レバーの操作を受け付けた走行部2によって実行される。また、操縦部9は、刈取部3による刈取作業、脱穀部4による脱穀作業、貯留部6の穀粒排出装置28による排出作業等を操作するための機構を備える。また、操縦部9は、目標経路Rに対応する基準線(基準方位)を生成するための操作装置30(図6参照)を備える。操作装置30は、コンバイン1に搭乗する作業者によって操作される。
【0034】
測位ユニット52は、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の自車位置を取得する。例えば、測位ユニット52は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット52の位置情報、すなわちコンバイン1の自車位置(計測点データ)を取得する。測位ユニット52は、測位アンテナに代えて、量子コンパスで構成されてもよい。
【0035】
通信部54は、コンバイン1を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0036】
記憶部51は、各種の情報を記憶するHDD、SSD、フラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶部である。記憶部51には、制御装置11に後述の走行処理(図11参照)を実行させるための走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記走行プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部51に記憶される。なお、前記走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介してコンバイン1にダウンロードされて記憶部51に記憶されてもよい。また、記憶部51には、操作装置30から取得する各種設定情報が記憶される。
【0037】
検知部53は、赤外線、超音波などを利用して所定の検知範囲の検知対象を検知するセンサである。例えば、検知部53は、レーザーを用いて測定対象物(検知対象)までの距離を3次元で測定可能なライダーセンサ(距離センサ)であってもよいし、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーセンサであってもよい。また、ソナーセンサは、距離の測定機能を有しない構成であってもよい。
【0038】
制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリーとして使用される。そして、制御装置11は、前記ROM又は記憶部51に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することによりコンバイン1を制御する。
【0039】
次に、操作装置30の構成について図7を参照しつつ説明する。操作装置30は、例えば、運転席に着いた作業者が操作できるように、ハンドルの近傍に取り付けられる(図6参照)。操作装置30は、自動走行指示部31と、自動走行表示部32と、複数の基準線操作部33と、複数の基準線表示部34と、始点設定部35と、終点設定部36と、始点設定表示部37と、終点設定表示部38とを備える。
【0040】
本実施形態では、操作装置30が、1つ目の基準線を設定可能な基準線操作部33a及び基準線表示部34aと、2つ目の基準線を設定可能な基準線操作部33b及び基準線表示部34bとを備える例を説明する。なお、本発明の操作装置は、3つ以上の基準線を設定可能な構成であってもよい。
【0041】
自動走行指示部31は、コンバイン1による自動走行の開始指示を操作するための操作部であって、円形の操作ボタン等で押圧操作を受け付け可能に構成される。自動走行指示部31は、自動走行の開始条件を満たした場合に、押圧操作に応じて自動走行の開始指示を制御装置11に送信する。
【0042】
なお、自動走行指示部31は、開始条件を満たした場合にのみ押圧操作可能になってもよく、あるいは、常に押圧操作可能であって、開始条件を満たすとともに押圧操作がされた場合にのみ自動走行の開始指示を送信してもよい。若しくは、自動走行指示部31は、常に押圧操作可能であって、常に押圧操作に応じて自動走行の開始指示を送信する一方、制御装置11において、開始条件を満たした場合にのみ開始指示を受け付けるように判定してもよい。
【0043】
自動走行表示部32は、コンバイン1による自動走行の状態を示すLED、ランプ等で構成され、制御装置11によって制御され、自動走行の開始条件を満たしているか否かに応じて異なる表示状態で表示する。自動走行表示部32は、例えば、自動走行指示部31を囲む環状に形成される。なお、本実施形態では自動走行表示部32は、自動走行指示部31と別体で構成されているが、自動走行表示部32は、自動走行指示部31と一体的に構成されてもよい。
【0044】
例えば、開始条件を満たしていない場合、自動走行表示部32は消灯される。一方、開始条件を満たしている場合、自動走行表示部32は、自動走行の開始前では、点滅され、自動走行の実行中では点灯される。なお、自動走行表示部32は、開始条件が複数存在する場合、各開始条件を満たすか否かを識別可能に表示してもよく、例えば、複数に分割されており、各分割部分が各開始条件に対応するように構成してもよい。また、自動走行表示部32は、他の表示状態を利用して、自動走行の状態を識別してもよい。
【0045】
複数の基準線操作部33は、各基準線の選択操作を受け付ける操作部であって、円形の操作ボタン等で押圧操作を受け付け可能に構成される。各基準線操作部33は、押圧操作等の選択操作に応じて、対応する基準線を自動走行対象として選択する選択指示を制御装置11に送信する。なお、各基準線操作部33は、再度の押圧操作等の解除操作に応じて、対応する基準線を自動走行対象とする選択を解除する選択解除指示を制御装置11に送信してもよい。
【0046】
例えば、基準線操作部33の選択操作に応じて、対応する基準線が自動走行対象として選択され、自動走行指示部31が押圧操作されるときに、当該基準線に基づく自動走行経路(目標経路)が生成され、当該自動走行経路に沿ってコンバイン1の自動走行が実行される。なお、基準線操作部33の選択操作に応じて当該基準線操作部33に対応する基準線を自動走行対象に選択した後、当該基準線操作部33の選択解除指示に応じて、当該基準線が自動走行対象から解除されてもよい。
【0047】
複数の基準線表示部34は、複数の基準線にそれぞれ対応し、各基準線の状態を示すLED、ランプ等で構成され、制御装置11によって制御されて、各基準線の設定状態や選択状態に応じて異なる表示状態で表示する。なお、複数の基準線表示部34は、複数の基準線操作部33にもそれぞれ対応し、各基準線表示部34が、各基準線操作部33と一体的に構成される例を示しているが、他の例では、各基準線表示部34は、各基準線操作部33と別体で構成されてもよい。
【0048】
また、基準線が自動走行対象として選択されている場合、基準線表示部34は点滅される。このとき、コンバイン1の自車位置や進行方向に応じて基準線が自動的に選択された場合と、基準線操作部33の選択操作に応じて基準線が選択された場合とで、基準線表示部34は、異なる点滅状態(例えば、異なる点滅間隔)で表示されてもよい。なお、自動走行の開始前と実行中とで、基準線表示部34は、同じ表示状態、例えば、同じ間隔で点滅されてもよく、あるいは、異なる表示状態、例えば異なる間隔で点滅されてもよい。
【0049】
始点設定部35は、各基準線の始点(A点)の設定操作を受け付ける操作部であって、操作ボタン等で押圧操作を受け付け可能に構成される。始点設定部35は、押圧操作等の設定操作に応じて、始点設定指示を制御装置11に送信する。このとき、制御装置11では、コンバイン1の自車位置が、基準線の始点として設定される。
【0050】
終点設定部36は、各基準線の終点(B点)の設定操作を受け付ける操作部であって、操作ボタン等で押圧操作を受け付け可能に構成される。終点設定部36は、押圧操作等の設定操作に応じて、終点設定指示を制御装置11に送信する。このとき、制御装置11では、コンバイン1の自車位置が、基準線の終点として設定される。
【0051】
始点設定表示部37は、始点の設定状態を示すLED、ランプ等で構成され、制御装置11によって制御されて、始点設定部35の操作に応じて異なる表示状態で表示する。なお、本実施形態では、始点設定表示部37は、始点設定部35と一体的に構成されているが、他の例では、始点設定表示部37が、始点設定部35と別体で構成されてもよい。
【0052】
始点設定表示部37は、始点の設定操作が可能な場合、すなわち始点が設定されていない場合に消灯され、始点の設定操作が不能な場合、すなわち始点が設定されている場合に点灯される。
【0053】
終点設定表示部38は、終点の設定状態を示すLED、ランプ等で構成され、制御装置11によって制御されて、終点設定部36の操作に応じて異なる表示状態で表示する。なお、本実施形態では、終点設定表示部38が、終点設定部36と一体的に構成されるが、他の例では、終点設定表示部38が、終点設定部36と別体で構成されてもよい。
【0054】
終点設定表示部38は、終点の設定操作が可能な場合、すなわち終点が設定されていない場合に消灯され、一方、終点の設定操作が不能な場合、すなわち終点が設定されている場合に点灯される。
【0055】
このように、操作装置30は、基準線を生成するための操作、自動走行を開始する際の基準線を選択するための操作を受け付ける。他の実施形態として、操作装置30は、基準線操作部33及び基準線表示部34が省略されてもよい。また、操作装置30は、表示部(表示パネル)を備え、基準線操作部33及び基準線表示部34に対応する操作画面を表示部に表示させてもよい。また、操作装置30は、コンバイン1とデータ通信可能な前記操作端末(携帯端末)で構成されてもよい。
【0056】
ところで、従来の技術では、例えばコンバインを、予め生成した基準線に対応する目標経路に対して位置ずれした経路を走行させたい場合に、作業者は基準線を生成し直さなければならず手間がかかる。これに対して、本実施形態に係るコンバイン1は、以下に示すように、自動走行させる目標経路を容易に生成することが可能な構成を備えている。
【0057】
具体的には、図1に示すように、制御装置11は、走行処理部111、生成処理部112、補正処理部113などの各種の処理部を含む。なお、制御装置11は、前記CPUで前記走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。また、前記走行プログラムは、本発明の経路生成プログラムを含む。
【0058】
走行処理部111は、コンバイン1の走行を制御する。例えば、走行処理部111は、コンバイン1の走行モードが手動走行(手動走行モード)の場合に、作業者の操作(手動操舵)に基づいてコンバイン1を手動走行させる。例えば、走行処理部111は、作業者によるハンドル操作、変速操作、走行方向切替操作、ブレーキ操作などの運転操作に対応する操作情報を取得し、当該操作情報に基づいて走行部2に走行動作を実行させる。
【0059】
また、走行処理部111は、コンバイン1の走行モードが自動走行(自動走行モード)の場合に、測位ユニット52により測位されるコンバイン1の現在位置を示す位置情報(測位情報)に基づいてコンバイン1を自動走行させる。例えば、走行処理部111は、コンバイン1が自動走行の開始条件を満たし、作業者から走行開始指示を取得すると、前記測位情報に基づいてコンバイン1の自動走行を開始させる。また、走行処理部111は、予め生成された目標経路Rに従ってコンバイン1を自動走行させる。例えば、コンバイン1が自動走行の開始条件を満たし、作業者が操作装置30の自動走行指示部31を押下すると、走行処理部111は、走行開始指示を取得して、コンバイン1を目標経路Rの直進経路(作業経路)に沿って自動走行させる。
【0060】
また、走行処理部111は、コンバイン1が作業経路の目標終了位置に到達すると走行モードを手動走行に切り替える。走行処理部111は、コンバイン1が作業経路の目標終了位置に到達したと判定した場合に走行モードを手動走行に切り替えてもよいし、作業者の操作に応じて走行モードを手動走行に切り替えてもよい。走行モードが手動走行に切り替えられると、例えば作業者は、手動操舵によりコンバイン1を旋回走行(手動走行)させる。なお、各作業経路の目標終了位置の位置は、圃場Fの端部から所定距離だけ内側に入った位置、作業者が予め指定した位置、直前の作業済経路において作業者が自動走行から手動走行に切り替えた位置に並ぶ位置(手動に切り替えた位置を通り作業済経路に垂直な線と作業経路とが交わる位置、又は、手動に切り替えた位置を通り圃場Fの端辺に平行な線と作業経路とが交わる位置)、基準線の終点(B点)を通り基準線に垂直な線と作業経路とが交わる位置などである。制御装置11は、コンバイン1が目標終了位置に近付いた場合又は到達した場合に、音声、表示情報等により報知して作業者に手動走行の切り替え操作を促してもよい。
【0061】
また、走行処理部111は、刈取作業において、測位ユニット52からコンバイン1の自車位置を取得し、自車位置と目標経路Rに含まれる作業経路とに基づいて、コンバイン1が作業経路に沿って自動走行及び刈取作業を行うように走行部2、刈取部3、及び動力部8を制御する。例えば図5に示すように、走行処理部111は、コンバイン1を、開始位置Sから外周領域F1において外周に沿って自動走行及び刈取作業を実行させた後、内周領域F2において終了位置Gまで自動走行及び刈取作業を実行させる。
【0062】
以上のようにして、走行処理部111は、例えば、作業者による操作に応じて走行モードを切り替えて、コンバイン1を自動操舵により自動走行及び刈取作業を実行させ、手動操舵により手動走行させる。
【0063】
生成処理部112は、コンバイン1に自動走行させる目標経路Rを生成する。具体的には、生成処理部112は、作業者の操作に応じて圃場Fに対して基準線(基準方位)を生成(設定)し、生成した基準線に基づいて目標経路Rを生成する。
【0064】
ここで、操作装置30を利用して基準線を生成する方法の一例について図8A図8Eを参照しつつ説明する。作業者は1つ目の基準線を生成する場合、操作装置30の基準線操作部33aを押下する。これにより、基準線表示部34aが点灯する(図8A参照)。作業者は、コンバイン1を圃場Fの任意の位置(例えば端部)に移動させると始点設定部35を押下する(図8A参照)。生成処理部112は、始点設定部35が押下されたときのコンバイン1の自車位置を基準線の始点(図9Aの第1始点A1)として登録する。生成処理部112が第1始点A1を登録すると、始点設定表示部37はLEDを点灯させる(図8B参照)。その後、作業者はコンバイン1を手動走行させて、任意の位置(例えば端部)で終点設定部36を押下する(図8C参照)。生成処理部112は、終点設定部36が押下されたときのコンバイン1の自車位置を基準線の終点(図9Aの第1終点B1)として登録する。生成処理部112が第1終点B1を登録すると、終点設定表示部38及び自動走行表示部32はそれぞれLEDを点灯させる(図8D参照)。
【0065】
生成処理部112は、第1始点A1及び第1終点B1を登録すると、第1始点A1及び第1終点B1を結ぶ直線を生成し、生成した直線を1つ目の基準線(第1基準線L1(図9A参照))として登録する。生成処理部112は、生成した第1基準線L1を記憶部51に記憶する。また、生成処理部112は、第1基準線L1を基準線操作部33aに対応付けて登録(設定)する。なお、本発明において「基準線」は「基準方位」であってもよく、「線」及び「方位」は同義である。また「方位」は、方向で特定されてもよいし、数値で特定されてもよい。生成処理部112は、基準方位(数値)を生成して記憶部51に記憶してもよい。
【0066】
以上のように、生成処理部112は圃場Fに設定される始点及び終点に基づいて基準線(基準方位)を生成する。操作装置30は、基準線(ここでは第1基準線L1)が登録されると、例えば作業者が基準線操作部33aを押下した場合に、始点設定表示部37及び終点設定表示部38がそれぞれ点灯する。すなわち、作業者は、基準線操作部33aを押下した場合に始点設定表示部37及び終点設定表示部38がそれぞれ点灯することにより、基準線操作部33aに基準線が登録済であることを認識できる。本実施形態では、1つ目の基準線と同様にして、作業者は、基準線操作部33bに対応する2つ目の基準線を生成することが可能である。なお、2つ目の基準線が未登録の場合、作業者が基準線操作部33bを押下した場合に、始点設定表示部37及び終点設定表示部38はそれぞれ消灯する(図8E参照)。
【0067】
本発明において、第1基準線L1の生成方法は上述の方法に限定さない。例えば、制御装置11は、コンバイン1の方位角(車両方位角)に基づいて第1基準線L1(基準方位)を生成してもよい。具体的には、作業者が始点Aを登録する操作(始点設定部35の押下操作)を行うと、制御装置11は、コンバイン1の位置(現在位置)を始点Aとして登録し、始点Aを通りコンバイン1の現在の方位(車両方位)の方向に延伸する直線を第1基準線L1として登録する。
【0068】
また他の方法として、制御装置11は、作業者が設定した方位角(設定方位角)に基づいて第1基準線L1(基準方位)を生成してもよい。具体的には、作業者が設定画面(不図示)において基準方位(例えば北方位)に対する角度を入力し、さらに始点Aを登録する操作(始点設定部35の押下操作)を行うと、制御装置11は、コンバイン1の位置(現在位置)を始点Aとして登録し、始点Aを通り入力された角度(設定方位角)の方向に延伸する直線を第1基準線L1として登録する。
【0069】
また他の方法として、制御装置11は、圃場Fの外形が登録されている場合には、圃場Fの外形辺のいずれかに基づいて第1基準線L1(基準方位)を生成してもよい。例えば、矩形形状の圃場Fの外形が登録されている場合に、制御装置11は、矩形の左辺、右辺、上辺、及び下辺のうち右辺に平行な直線を第1基準線L1として登録する。
【0070】
以上のように、制御装置11は、始点A及び終点Bに基づいて第1基準線L1を生成する方法(第1生成モード)と、始点A及び車両方位角に基づいて第1基準線L1を生成する方法(第2生成モード)と、始点A及び設定方位角に基づいて第1基準線L1を生成する方法(第3生成モード)と、圃場Fの外形に基づいて第1基準線L1を生成する方法(第4生成モード)とのいずれの方法を採用してもよい。また、制御装置11は、前記第1~第4生成モードのうち作業者が選択した生成モードにより第1基準線L1を生成してもよいし、作業情報等に基づいて選択した生成モードにより第1基準線L1を生成してもよい。
【0071】
また、生成処理部112は、第1基準線L1に基づいて第2基準線L2を自動的に生成することが可能である。具体的には、生成処理部112は、第1基準線L1を生成すると、第1基準線L1に直交する直線を第2基準線L2として生成する。例えば図9Aに示すように、生成処理部112は、第1終点B1を通り、第1基準線L1とのなす角D1が90度の直交線を第2基準線L2として生成する。生成処理部112は、生成した第2基準線L2を記憶部51に記憶する。これにより、例えば矩形の圃場Fについて、作業者が一辺(図9Aの左右辺)に沿う第1基準線L1の登録操作のみ行うことにより、他辺(図9Aの上下辺)に沿う第2基準線L2を自動的に生成及び登録することができる。
【0072】
なお、生成処理部112は、第2基準線L2を基準線操作部33b(図7参照)に対応付けて登録してもよい。
【0073】
他の実施形態として、生成処理部112は、圃場F(作業領域)の外形に沿った直線を第2基準線L2として生成してもよい。例えば生成処理部112は、圃場Fの外形形状に基づいて角度D1を算出し、角度D1と第1基準線L1とに基づいて、第2基準線L2を生成する。
【0074】
また、他の実施形態として、生成処理部112は、作業者から角度D1の入力操作を受け付け、入力された角度D1と第1基準線L1とに基づいて、第2基準線L2を生成してもよい。
【0075】
生成処理部112は、第1基準線L1及び第2基準線L2を選択可能に記憶部51に記憶する。制御装置11は、コンバイン1の自動走行を開始する際に、作業者の選択操作、又は、コンバイン1の位置情報や車両方位などに基づいて第1基準線L1及び第2基準線L2のいずれかを選択する。生成処理部112は、選択された第1基準線L1又は第2基準線L2に基づく自動走行経路(目標経路)を生成する。例えば、作業者が第1基準線L1に対応する基準線操作部33a(図7参照)を選択すると、生成処理部112は、第1基準線L1に基づく自動走行経路(目標経路)を生成する。目標経路の生成モードが「等ピッチモード」に設定されている場合、図9Aに示すように、生成処理部112は、第1基準線L1に平行な複数の直線からなる目標経路R1を生成する。なお、生成処理部112は、予め設定される作業幅及びラップ幅(隣接する作業済領域と重なる幅)に基づいて複数の平行な直線を、第1基準線L1を基準として等間隔に生成する。生成処理部112は、生成した目標経路R1を記憶部51に記憶する。走行処理部111は、生成した複数の平行な直線のいずれかに対してコンバイン1の車両方位と位置偏差(横ずれ量)とが所定範囲内にある状態(開始条件を満たした状態)で作業者が自動走行指示部31を押下すると、自動走行を開始させて目標経路R1に従ってコンバイン1を直進走行させる(図10参照)。図10に示す目標経路R1は、第1基準線L1に基づいて生成された複数の平行な直線のいずれか一つの直線に相当する。
【0076】
コンバイン1が目標経路R1(直進経路)の目標終了位置に到達すると、作業者は手動走行モードに切り替えてコンバイン1を手動走行させる。なお、走行処理部111は、コンバイン1が直進経路の目標終了位置に到達した場合、又は、刈取部3が非作業位置に上昇した場合に、走行モードを手動走行モードに切り替えてもよい。走行モードを手動走行モードに切り替わると、例えば図10に示すように、作業者は、コンバイン1を手動走行させて車両方位が第2基準線L2の方向(図10の左方向)を向くように位置合わせすると第2基準線L2を選択する。生成処理部112は、第2基準線L2に基づく自動走行経路(目標経路)を生成する。例えば目標経路の生成モードが「等ピッチモード」に設定されている場合、図9Bに示すように、生成処理部112は、第2基準線L2に平行な複数の直線からなる目標経路R2を生成する。生成処理部112は、生成した目標経路R2を記憶部51に記憶する。走行処理部111は、生成した複数の平行な直線のいずれかに対してコンバイン1の車両方位と位置偏差(横ずれ量)とが所定範囲内にある状態(開始条件を満たした状態)で作業者が自動走行指示部31を押下すると、自動走行を開始させて目標経路R2に従ってコンバイン1を直進走行させる(図10参照)。なお、図10に示す目標経路R2は、第2基準線L2に基づいて生成された複数の平行な直線のいずれか一つの直線に相当する。また、図10の「P1」は、自動走行を開始した始点を示している。
【0077】
ここで、圃場Fの形状、作業対象(ここでは穀稈)の作業状況などによって、コンバイン1を目標経路R2に対して位置ずれした経路を走行させたい場合がある。この場合、作業者は、コンバイン1を目標経路R2に基づいて自動走行させながら、操作具によって目標経路R2を左右方向にシフトさせる操作(経路オフセット操作)を行うことが可能である。これにより、例えば図10に示すように、作業者は、コンバイン1を目標経路R2に対応する目標終了位置P0からずれた位置P2に移動させることができる。
【0078】
このように、作業者が、予め生成された第2基準線L2に対応する目標経路R2に対してコンバイン1の走行経路をシフトする操作を行った場合、シフトされた経路が作業者の意図する経路である可能性が高い。すなわち、上記の例では、コンバイン1が圃場Fの第1方向(図9Aの上下方向)を走行する場合は第1基準線L1に基づいて自動走行し、コンバイン1が圃場Fの第2方向(図9Aの左右方向)を走行する場合は第2基準線L2の方位を変更した経路に基づいて自動走行する目標経路を設定することが適切となる。
【0079】
上述のように、従来の技術では第2基準線L2を変更する場合に、操作装置30によって再登録の操作の手間がかかる。また、第2基準線L2を変更するために第1基準線L1の再登録をすると、第1基準線L1も変更されてしまう問題も生じる。そこで、補正処理部113は、コンバイン1が第2基準線L2に基づいて自動走行する際に所定の補正操作を受け付けた場合に、第2基準線L2を補正する構成を備える。
【0080】
具体的には、補正処理部113は、コンバイン1が第2基準線L2に対応する目標経路R2に沿って自動走行する際に作業者がコンバイン1の経路を補正する操作(補正操作)を行った場合に、当該補正操作に応じて第2基準線L2を、始端P1及び終端P2を通る直線(補正後基準線L21)に補正する(図10参照)。すなわち、補正処理部113は、前記補正操作を受け付けた場合に、第2基準線L2の方位を前記補正操作に応じた方位に変更する。補正処理部113は、第2基準線L2に代えて補正後基準線L21を記憶部51に記憶してもよいし、第2基準線L2とともに補正後基準線L21を記憶部51に記憶してもよい。例えば、補正処理部113は、補正後基準線L21を基準線操作部33b(図7参照)に対応付けて登録する。
【0081】
なお、3つ以上の基準線(例えば第1基準線L1、第2基準線L2、補正後基準線L21)を選択可能に記憶する構成の場合、操作装置30は、各基準線に対応する操作部を備えてもよい。これにより、作業者は、操作装置30において、3つ以上の基準線の中から所望の基準線を選択して自動走行を実行させることが可能になる。すなわち、制御装置11は、第1基準線L1と、第2基準線L2と、第2基準線L2を補正した補正後基準線L21とを記憶し、コンバイン1が自動走行を開始する際に選択される基準線に基づいて目標経路を生成する。
【0082】
前記補正操作は、コンバイン1が第2基準線L2に基づいて自動走行中に第2基準線L2に対応する経路(目標経路R2)をシフトさせる操作(経路オフセット操作)、コンバイン1が第2基準線L2に基づいて自動走行中に終点を登録する操作(終点設定部36の押下操作(B点登録操作))、第2基準線L2に基づく自動走行を終了させる操作、及び、コンバイン1が第2基準線L2に基づいて自動走行中かつ作業中に作業部(刈取部3)を非作業位置に移動させる操作、の少なくともいずれかを含む。
【0083】
例えばコンバイン1が第2基準線L2に対応する目標経路R2に沿って自動走行中に作業者が経路オフセット操作を行い、自動走行終了後に操作装置30の終点設定部36(図7参照)を押下すると、補正処理部113は、その時点のコンバイン1の自車位置(終端P2)と始端P1とを結ぶ直線(補正後基準線L21)を生成する。
【0084】
また例えば、コンバイン1が第2基準線L2に対応する目標経路R2に沿って自動走行中に作業者が経路オフセット操作を行い、自動走行終了後に作業者が刈取部3を非作業位置に上昇させる操作を行うと、補正処理部113は、その時点のコンバイン1の自車位置(終端P2)と始端P1とを結ぶ直線(補正後基準線L21)を生成する。
【0085】
補正処理部113は、生成した補正後基準線L21を、基準線操作部33bに対応する基準線として登録する。これにより、作業者は、次にコンバイン1の自動走行(左右方向の自動走行)を開始する際に、基準線操作部33b(図7参照)を押下して補正後基準線L21を選択することができる。生成処理部112は、補正後基準線L21が選択された場合、補正後基準線L21に平行な複数の直線からなる目標経路を生成する。これにより、コンバイン1を補正後の目標経路に従って自動走行させることが可能になる。
【0086】
以上のようにして、制御装置11は、作業者の操作に応じて第1基準線L1を生成するとともに第1基準線L1に基づいて自動的に第2基準線L2を生成し、コンバイン1が第2基準線L2を自動走行する際に所定の補正操作を受け付けた場合に、第2基準線L2を補正する処理を実行する。他の実施形態として、制御装置11は、作業者の操作に応じて第1基準線L1及び第2基準線L2を生成し、コンバイン1が第2基準線L2を自動走行する際に所定の補正操作を受け付けた場合に、第2基準線L2を補正する処理を実行してもよい。また、他の実施形態として、制御装置11は、上記各構成において、コンバイン1が第1基準線L1を自動走行する際に所定の補正操作を受け付けた場合に、第1基準線L1を補正する処理を実行してもよい。
【0087】
上述の実施形態では、目標経路の生成モードが「等ピッチモード」に設定されている場合の構成を説明したが、他の実施形態として、目標経路の生成モードが「自車位置基準モード」に設定されてもよい。以下、目標経路が「自車位置基準モード」により生成される場合の自動走行の開始手順の具体例を説明する。
【0088】
先ず、制御装置11は、上述の方法(第1生成モード~第4生成モード)により基準線Lを生成して登録する。次に、制御装置11は、基準線Lを選択する。例えば制御装置11は、複数の基準線L(例えば第1基準線L1、第2基準線L2など)が登録されている場合には、作業者の選択操作又はコンバイン1の位置情報や車両方位などに基づいていずれかの基準線Lを選択する。次に、制御装置11は、選択した基準線Lに平行な経路(例えば直線経路)(平行線)を一本生成し、生成した経路をコンバイン1の現在位置(基準点)に設定する。なお、前記経路を前記基準点に設定すると、例えばコンバイン1が作業者の手動操舵により移動した場合に、前記経路が、前記基準点に追従するようにして基準線Lに平行に移動する。次に、作業者は、コンバイン1の車両方位が前記経路に対して所定範囲内になる(自動走行の開始条件を満たす)ように手動走行させる。コンバイン1が自動走行の開始条件を満たした状態で作業者が自動走行指示部31を押下すると、制御装置11は、その時点の位置における前記経路を目標経路Rに設定し、コンバイン1を目標経路Rに従って自動走行を開始させる。なお、上記処理において、コンバイン1を模したアイコン画像と、基準線Lに平行な一本の前記経路(平行線)の画像とを、表示画面に表示させてもよい。
【0089】
自動走行の開始手順の他の例を説明する。例えば、上述の例と同様にして制御装置11が基準線Lを生成及び選択した後、作業者は、コンバイン1の車両方位が基準線Lに対して所定範囲内になる(自動走行の開始条件を満たす)ように手動走行させる。次に、コンバイン1が自動走行の開始条件を満たした状態で作業者が自動走行指示部31を押下すると、制御装置11は、基準線Lに平行、かつコンバイン1の現在位置(基準点)を通る経路(例えば直線経路)(平行線)を一本生成し、生成した経路を目標経路Rに設定して、コンバイン1を目標経路Rに従って自動走行を開始させる。
【0090】
[走行処理]
以下、図11を参照しつつ、実施形態1に係る走行システムが実行する前記走行処理の一例について説明する。
【0091】
なお、本発明は、前記走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。また、前記走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここではコンバイン1の制御装置11が前記走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該走行処理における各ステップを分散して実行する走行方法も他の実施形態として考えられる。なお、前記走行処理に対応する走行方法は、本発明の経路生成方法の一例である。
【0092】
ステップS11において、制御装置11は、コンバイン1が自動走行可能な状態であるか否かを判定する。制御装置11は、コンバイン1が自動走行可能な状態であると判定すると(S11:Yes)、処理をステップS12に移行させる。制御装置11は、コンバイン1が自動走行可能な状態になるまで待機する(S11:No)。
【0093】
ステップS12において、制御装置11は、コンバイン1に目標経路Rに従って自動走行を開始させる。例えば、作業者が第1基準線L1に対応する基準線操作部33a(図7参照)を選択すると、制御装置11は、第1基準線L1に基づく自動走行経路(目標経路R1)(図9A参照)を生成し、目標経路R1に従ってコンバイン1を直進走行させる(図10参照)。なお、制御装置11は、上述した第1生成モード~第4生成モードのいずれかの方法により第1基準線L1を生成する。また、例えば目標経路の生成モードが「等ピッチモード」に設定されている場合、制御装置11は、第1基準線L1に平行な複数の直線を生成し、生成した複数の平行な直線のいずれかに対してコンバイン1の車両方位と位置偏差(横ずれ量)とが所定範囲内にある状態(開始条件を満たした状態)で作業者が自動走行指示部31を押下すると自動走行を開始させて目標経路R1に従ってコンバイン1を直進走行させる(図10参照)。
【0094】
目標経路の生成モードが「自車位置基準モード」に設定されている場合には、制御装置11は、例えば作業者が第1基準線L1を選択するとコンバイン1の自車位置を通り第1基準線L1に平行な一本の直線(目標経路R1)を生成し、コンバイン1が自動走行の開始条件を満たした状態で作業者が自動走行指示部31を押下すると、自動走行を開始させて目標経路R1に従ってコンバイン1を直進走行させる。
【0095】
次にステップS13において、制御装置11は、コンバイン1に、第2基準線L2に従って自動走行を開始させるか否かを判定する。例えばコンバイン1が目標経路R1(直進経路)の目標終了位置に到達すると、作業者は手動走行モードに切り替えてコンバイン1を手動走行させる。例えば図10に示すように、作業者は、コンバイン1を手動走行させて車両方位が次の経路の方向(図10の左方向)を向くように位置合わせして第2基準線L2を選択する。制御装置11は、第2基準線L2に基づく目標経路R2(図9B参照)を生成し、目標経路R2に従ってコンバイン1を直進走行させる(図10参照)。
【0096】
例えば目標経路の生成モードが「等ピッチモード」に設定されている場合、制御装置11は、第2基準線L2に平行な複数の直線を生成し、生成した複数の平行な直線のいずれかに対してコンバイン1の車両方位と位置偏差(横ずれ量)とが所定範囲内にある状態(開始条件を満たした状態)で作業者が自動走行指示部31を押下すると、自動走行を開始させて目標経路R2に従ってコンバイン1を直進走行させる(図10参照)。
【0097】
目標経路の生成モードが「自車位置基準モード」に設定されている場合には、制御装置11は、例えば作業者が第2基準線L2を選択するとコンバイン1の自車位置を通り第2基準線L2に平行な一本の直線(目標経路R2)を生成し、コンバイン1が自動走行の開始条件を満たした状態で作業者が自動走行指示部31を押下すると、自動走行を開始させて目標経路R2に従ってコンバイン1を直進走行させる。制御装置11は、コンバイン1に、第2基準線L2に従って自動走行を開始させない場合(S13:No)、処理をステップS16に移行させる。
【0098】
ステップS14において、制御装置11は、補正操作を受け付けたか否かを判定する。前記補正操作には、経路オフセット操作、B点の登録操作、自動走行の終了操作、及び、刈取部3の上昇操作の少なくともいずれかが含まれる。制御装置11は、前記補正操作を受け付けると(S14:Yes)、処理をステップS15に移行させる。一方、制御装置11は、前記補正操作を受け付けない場合(S14:No)、処理をステップS16に移行させる。
【0099】
ステップS15において、制御装置11は、第2基準線L2を補正する。具体的には、制御装置11は、第2基準線L2の方位を前記補正操作に応じて変更する。例えばコンバイン1が第2基準線L2に対応する目標経路R2に沿って自動走行中に作業者が経路オフセット操作を行い、自動走行終了後に操作装置30の終点設定部36(図7参照)を押下すると、制御装置11は、その時点のコンバイン1の自車位置(終端P2)と、コンバイン1が自動走行を開始した位置(始端P1)とを結ぶ直線(補正後基準線L21)を生成する。
【0100】
制御装置11は、第2基準線L2を削除して補正後基準線L21を記憶部51に記憶してもよいし、第2基準線L2を記憶したまま、新たに補正後基準線L21を記憶部51に記憶してもよい。また、制御装置11は、補正後基準線L21を、基準線操作部33b(図7参照)に対応する基準線として登録してもよい。すなわち、制御装置11は、操作装置30(図7参照)の基準線操作部33aに第1基準線L1を対応付けて登録し、操作装置30の基準線操作部33bに補正後基準線L21を対応付けて登録する。他の実施形態として、制御装置11は、第2基準線L2及び補正後基準線L21のうち作業者が選択した基準線を、基準線操作部33bに対応付けて登録してもよい。また他の実施形態として、操作装置30が3つの基準線設定部を備える場合、制御装置11は、第1基準線L1、第2基準線L2、及び補正後基準線L21のそれぞれを各基準線設定部に対応付けて登録してもよい。
【0101】
ステップS16において、制御装置11は、コンバイン1が作業を終了したか否かを判定する。制御装置11は、コンバイン1が作業を終了したと判定すると(S16:Yes)、前記走行処理を終了させる。制御装置11は、コンバイン1が作業を終了していないと判定すると(S16:No)、ステップS13に戻り上述の処理を実行する。
【0102】
例えば作業者が補正後基準線L21に対応する基準線操作部33bを選択して自動走行指示部31を押下すると、制御装置11は、コンバイン1を補正後基準線L21に対応する目標経路に従ってコンバイン1を直進走行させる。
【0103】
制御装置11は、コンバイン1が作業を終了するまで、上述のステップS13~S15の処理を繰り返し実行する。なお、制御装置11は、コンバイン1が補正後基準線L21に基づいて自動走行する際に前記補正操作を受け付けた場合には、上述の処理に従って、補正後基準線L21を補正してもよい。
【0104】
以上説明したように、実施形態1に係るコンバイン1は、圃場Fにおいて設定される基準線に基づいて自動走行させる目標経路を生成する。また、コンバイン1は、圃場Fに設定される第1基準線L1を生成し、第1基準線L1に基づいて第2基準線L2を生成する。また、コンバイン1は、第2基準線L2に基づいて自動走行する際に所定の補正操作を受け付けた場合に、第2基準線L2を補正する。
【0105】
上記構成によれば、コンバイン1が作業者の設定操作に応じて生成された第1基準線L1に基づいて自動的に生成された第2基準線L2に基づいて自動走行する際に所定の補正操作が行われた場合に、第2基準線L2が補正される。これにより、例えばコンバイン1が第2基準線L2に従って自動走行中に作業者が経路をシフトさせるなど走行位置を修正した場合に、第2基準線L2を自動的に修正することができる。このため、第2基準線L2を修正するために作業者が基準線を生成し直す操作(図8A図8D参照)を行う必要がない。よって、コンバイン1を自動走行させる目標経路を容易に生成することが可能になる。
【0106】
本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0107】
本発明の他の実施形態として、制御装置11は、コンバイン1の現在位置と基準線との距離に基づいて目標経路を生成してもよい。図12には、予め生成された第2基準線L2と補正後基準線L21とを示している。例えばコンバイン1が補正後基準線L21から所定距離E1(例えば5m)未満の位置に存在し、かつコンバイン1の車両方位が補正後基準線L21の方位に対して所定方位未満の場合において、作業者が自動走行の開始指示を行った場合に、制御装置11は、補正後基準線L21に基づいて目標経路を生成する。これに対して、例えばコンバイン1が補正後基準線L21から所定距離E1以上の位置に存在し、かつコンバイン1の車両方位が第2基準線L2の方位に対して所定方位未満の場合において、作業者が自動走行の開始指示を行った場合に、制御装置11は、第2基準線L2に基づいて目標経路を生成する。なお、制御装置11は、コンバイン1の車両方位に基づいて目標経路を生成してもよい。例えばコンバイン1の車両方位が補正後基準線L21の方位に対して所定方位未満の場合において作業者が自動走行の開始指示を行った場合に、制御装置11は、補正後基準線L21に基づいて目標経路を生成し、コンバイン1の車両方位が補正後基準線L21の方位に対して所定方位以上の場合において作業者が自動走行の開始指示を行った場合に、制御装置11は、第2基準線L2に基づいて目標経路を生成する。また、制御装置11は、コンバイン1の現在位置及び基準線の距離と、コンバイン1の車両方位との少なくともいずれかに重みを設定し、設定された重みに応じて選択した基準線に基づいて目標経路を生成してもよい。
【0108】
図13には、コンバイン1の走行方法の一例を示している。例えばコンバイン1は、作業経路r1を第1基準線L1に対応する目標経路R1に従って自動走行し、作業経路r2を補正後基準線L21に対応する目標経路に従って自動走行し、作業経路r3を第1基準線L1に対応する目標経路R1に従って自動走行し、作業経路r4を第2基準線L2に対応する目標経路R2に従って自動走行する。
【0109】
また例えば、制御装置11は、コンバイン1が作業経路r2を自動走行する際に前記補正操作を受け付けた場合に、補正後基準線L21をさらに補正する処理を実行してもよい。この場合、制御装置11は、最初に補正した補正後基準線L21を削除して、再補正した補正後基準線L21を記憶部51に記憶してもよいし、補正前後の両方の補正後基準線L21を選択可能に記憶部51に記憶してもよい。
【0110】
また、例えば図14に示す圃場Fの場合、制御装置11は、圃場Fの上辺側と下辺側とで異なる方位の補正後基準線L21を生成することが望ましい。この場合には、制御装置11は、第2基準線L2に基づいて方位の異なる2つの補正後基準線L21を生成して、それぞれを選択可能に記憶部51に記憶する。
【0111】
他の実施形態として、例えば図14に示す圃場Fにおいてコンバイン1が図中の上側の領域において左右方向に作業を行った後に下側の領域において左右方向に作業を行う場合には、制御装置11は、図15に示すように、上側の領域では、補正後基準線L21又は第2基準線L2に基づいてコンバイン1を自動走行させ、下側の領域では、補正後基準線L22又は第2基準線L2に基づいてコンバイン1を自動走行させてもよい。
【0112】
なお、図15に示すように、複数の補正後基準線L21、L22が登録されている場合、制御装置11は、各基準線に対するコンバイン1の距離と方位とに基づいて基準線を選択して目標経路を生成する。
【0113】
他の実施形態として、目標経路の生成モード(「等ピッチモード」、「自車位置基準モード」)に応じた情報を表示部(前記操作端末など)に表示させてもよい。例えば、等ピッチモードでは、制御装置11は、全ての基準線のうち選択された基準線と、当該基準線に平行な経路(目標経路)とを表示させてもよいし、全ての基準線と、選択された基準線に平行な経路(目標経路)とを表示させてもよいし、全ての基準線と、各基準線に平行な全ての経路(目標経路)とを表示させてもよい。なお、制御装置11は、全ての基準線と各基準線に対応する全ての経路を同時に表示する場合には、選択された基準線及び当該基準線に基づいて生成された経路(目標経路)と、それ以外の基準線及び経路との表示方法(例えば、線の色、線の種別など)を異ならせてもよい。
【0114】
また例えば、自車位置基準モードでは、制御装置11は、全ての基準線のうち選択された基準線のみを表示させてもよいし、全ての基準線を表示させ、かつ選択された基準線と選択されていない基準線との表示方法(例えば、線の色、線の種別など)を異ならせてもよい。また、自車位置基準モードでは、制御装置11は、作業者が自動走行指示部31を押下して経路が確定した後に、表示部に経路を表示させてもよいし、自動走行指示部31を押下する前から基準線に平行な経路を自車位置に基づいて常時表示させてもよい。この場合に、制御装置11は、さらに自動走行指示部31を押下する前後で表示部に表示させる経路の色を異ならせてもよい。
【0115】
[実施形態2]
本発明の実施形態2に係る走行システムについて説明する。なお、以下では、実施形態1に係る走行システム及びコンバイン1と同一の構成については同一の符号を付しその説明を適宜省略する。
【0116】
本実施形態2に係るコンバイン1は、互いに異なる方位の複数の基準線を生成し、前記複数の基準線が生成された後に新たな基準線の設定操作を受け付けた場合に、前記複数の基準線のうち補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正する構成を備えている。
【0117】
具体的には、生成処理部112は、作業者の操作に応じて互いに異なる方位の複数の基準線を生成する。例えば生成処理部112は、作業者による操作装置30の操作(第1始点A1及び第1終点B1の登録操作)に基づいて第1基準線L1を生成する。また、生成処理部112は、第1基準線L1に基づいて第2基準線L2を生成する。例えば生成処理部112は、第1基準線L1に直交する第2基準線L2を生成する。
【0118】
生成処理部112は、第1基準線L1及び第2基準線L2を生成して記憶部51に記憶した後、作業者から操作装置30における基準線の生成操作を受け付ける。
【0119】
例えば始点A及び終点Bの登録操作に基づいて基準線を生成する前記第1生成モードの場合、図16A図16Dに示すように、作業者は第1基準線L1と同様に、操作装置30を操作して新たな基準線の登録操作を行う。例えば、作業者は操作装置30の基準線操作部33bを押下する。これにより、基準線表示部34bが点灯する(図16A参照)。作業者は、コンバイン1を圃場Fの任意の位置(例えば端部)に移動させると始点設定部35を押下する(図16A参照)。生成処理部112は、始点設定部35が押下されたときのコンバイン1の自車位置を基準線の始点(図17の第2始点A2)として登録する。生成処理部112が第2始点A2を登録すると、始点設定表示部37はLEDを点灯させる(図16B参照)。その後、作業者はコンバイン1を手動走行させて、任意の位置(例えば端部)で終点設定部36を押下する(図16C参照)。生成処理部112は、終点設定部36が押下されたときのコンバイン1の自車位置を基準線の終点(図17の第2終点B2)として登録する。生成処理部112が第2終点B2を登録すると、終点設定表示部38及び自動走行表示部32はそれぞれLEDを点灯させる(図16D参照)。
【0120】
生成処理部112は、第2始点A2及び第2終点B2を登録すると、第2始点A2及び第2終点B2を結ぶ直線を新たな基準線として生成する。なお、前記新たな基準線の生成方法はこれに限定されず、上述したように、生成処理部112は、始点A及び車両方位角に基づいて基準線を生成する第2生成モード、始点A及び設定方位角に基づいて基準線を生成する第3生成モード、又は、圃場Fの外形に基づいて基準線を生成する第4生成モードにより基準線を生成してもよい。
【0121】
ここで、補正処理部113は、既に生成済みの第1基準線L1及び第2基準線L2のうちいずれかの基準線を、前記新たな基準線の位置に変更する。具体的には、補正処理部113は、複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正する。例えば補正処理部113は、第1基準線L1及び第2基準線L2の少なくともいずれかの方位を前記新たな基準線の方位に基づいて修正する。
【0122】
具体的には、補正処理部113は、第2基準線L2と前記新たな基準線とのなす角D2が所定角度未満の場合に、第2基準線L2を前記新たな基準線の位置に補正する。換言すると、補正処理部113は、第1基準線L1と前記新たな基準線とのなす角が所定角度以上の場合に、第2基準線L2を前記新たな基準線の位置に補正する。例えば図17に示すように、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth(例えば45度)未満の場合に、補正処理部113は、第2基準線L2を基準線Laの位置に補正する。すなわち、補正処理部113は、第2始点A2と第2終点B2とを結ぶ直線を第2基準線L2として登録する。補正処理部113は、補正後の第2基準線L2を記憶部51に記憶するとともに、基準線操作部33b(図7参照)に対応付けて登録する。
【0123】
また、補正処理部113は、図18に示すように、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth以上の場合に、第1基準線L1を前記新たな基準線の位置に補正する。すなわち、補正処理部113は、第2始点A2と第2終点B2とを結ぶ直線を第1基準線L1として登録する。補正処理部113は、補正後の第1基準線L1を記憶部51に記憶するとともに、基準線操作部33a(図7参照)に対応付けて登録する。
【0124】
このように、補正処理部113は、複数の基準線が生成された後に新たな基準線の設定操作を受け付けた場合に、前記複数の基準線のうち補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正する。また、補正処理部113は、前記複数の基準線のうち、新たな基準線との方位差が小さい方の基準線を補正する。
【0125】
上記構成によれば、例えば制御装置11が2つの基準線を登録可能な構成であって既に2つの基準線が登録済の場合に、作業者が3つ目の基準線の登録操作を行うと、2つの基準線のうち補正対象の基準線が自動的に特定されて、当該基準線が登録操作に応じた位置に変更される。これにより、作業者は基準線を容易に変更することができるため、コンバイン1に自動走行させる目標経路を容易に生成することが可能になる。
【0126】
他の実施形態として、補正処理部113は、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth以上の場合に、第1基準線L1を新たな基準線Laの位置に補正するか、又は、新たな基準線Laを3つ目の基準線(第3基準線L3)として登録するかを選択する操作を受け付けてもよい。
【0127】
また、他の実施形態として、補正処理部113は、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth以上の場合に、新たな基準線Laを第3基準線L3として登録してもよい。例えば、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth以上であって、かつ第1基準線L1と新たな基準線Laとの間の距離X1が所定距離未満の場合には、補正処理部113は、上述のように、第1基準線L1を新たな基準線Laの位置に補正する(図18参照)。これに対して、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth以上であって、かつ第1基準線L1と新たな基準線Laとの間の距離X1が所定距離以上の場合に、補正処理部113は、図19に示すように、基準線Laを第3基準線L3として登録(設定)する。
【0128】
また、他の実施形態として、例えば、図18に示す例において、第1基準線L1及び第2基準線L2が生成された状態においてコンバイン1が少なくとも一回、第2基準線L2に対応する目標経路R2に従って自動走行した後に、作業者が新たな基準線Laを登録する操作を行った場合、補正処理部113は、第2基準線L2については作業者が意図した経路であると判断して、第1基準線L1のみを基準線Laの位置に補正し、第2基準線L2は最初に設定された第1基準線L1に直交する位置から補正しないで維持する。
【0129】
これに対して、第1基準線L1及び第2基準線L2が生成された状態においてコンバイン1が第2基準線L2に対応する目標経路R2に従って自動走行する前に、作業者が新たな基準線Laを登録する操作を行った場合には、補正処理部113は、第1基準線L1及び第2基準線L2について作業者が意図した経路ではないと判断して、第1基準線L1を基準線Laの位置に補正するとともに、補正後の第1基準線L1に直交する第2基準線L2を再度生成(補正)する。このように、補正処理部113は、複数の基準線が生成された後に新たな基準線の設定操作を受け付けた場合に、複数の基準線の全てを補正対象の基準線を特定し、各基準線を前記設定操作に応じた位置に補正してもよい。すなわち、本発明において、補正処理部113は、複数の基準線が生成された後に新たな基準線の設定操作を受け付けた場合に、複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した少なくとも一つの基準線を前記設定操作に応じた位置に補正してもよい。
【0130】
[経路生成処理]
以下、図20を参照しつつ、実施形態2に係る走行システムが実行する経路生成処理の一例について説明する。
【0131】
なお、本発明は、前記経路生成処理に含まれる一又は複数のステップを実行する経路生成方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記経路生成処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。また、前記経路生成処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここではコンバイン1の制御装置11が前記経路生成処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該経路生成処理における各ステップを分散して実行する経路生成方法も他の実施形態として考えられる。記憶部51には、制御装置11に経路生成処理を実行させるための経路生成プログラムが記憶されている。なお、前記経路生成処理に対応する経路生成方法は、本発明の経路生成方法の一例である。
【0132】
ステップS21において、制御装置11は、経路生成の開始指示を受け付けたか否かを判定する。制御装置11は、経路生成の開始指示を受け付けると(S21:Yes)、処理をステップS22に移行させる。制御装置11は、経路生成の開始指示を受け付けるまで待機する(S21:No)。
【0133】
ステップS22において、制御装置11は、第1始点A1及び第1終点B1の登録操作を受け付けたか否かを判定する。例えば、作業者は、操作装置30の基準線操作部33aを押下して経路生成を開始して、第1始点A1及び第1終点B1を登録する(図8A図8D参照)。制御装置11は、第1始点A1及び第1終点B1の登録操作を受け付けると(S22:Yes)、処理をステップS23に移行させる。制御装置11は、第1始点A1及び第1終点B1の登録操作を受け付けるまで待機する(S22:No)。
【0134】
ステップS23において、制御装置11は、第1基準線L1を生成する。具体的には、制御装置11は、第1始点A1及び第1終点B1を結ぶ直線を生成し(第1生成モード)、生成した直線を第1基準線L1(図9A参照)として登録する。制御装置11は、生成した第1基準線L1を記憶部51に記憶する。なお、制御装置11は、始点A及び車両方位角に基づいて基準線を生成する第2生成モード、始点A及び設定方位角に基づいて基準線を生成する第3生成モード、又は、圃場Fの外形に基づいて基準線を生成する第4生成モードにより第1基準線L1を生成してもよい。
【0135】
次にステップS24において、制御装置11は、第2基準線L2を生成する。具体的には、制御装置11は、第1基準線L1に直交する第2基準線L2を生成する。制御装置11は、生成した第2基準線L2を記憶部51に記憶する。
【0136】
次にステップS25において、制御装置11は、第2始点A2及び第2終点B2の登録操作を受け付けたか否かを判定する。例えば前記第1生成モードでは、作業者は、操作装置30の基準線操作部33bを押下して経路生成を開始し、第2始点A2及び第2終点B2を登録する(図16A図16D参照)。制御装置11は、第2始点A2及び第2終点B2の登録操作を受け付けると(S25:Yes)、処理をステップS26に移行させる。制御装置11は、第2始点A2及び第2終点B2の登録操作を受け付けない場合(S25:No)、前記経路生成処理を終了する。なお、制御装置11は、前記第2生成モードの場合は第2始点A2の登録操作を受け付けたか否かを判定し、前記第3生成モードの場合は第2始点A2及び設定方位角の登録操作を受け付けたか否かを判定してもよい。
【0137】
ステップS26において、制御装置11は、補正条件(本発明の所定の条件)を満たすか否かを判定する。例えば、制御装置11は、第2始点A2及び第2終点B2を結ぶ直線を新たな基準線Laとして生成し(第1生成モード)、基準線Laと第1基準線L1又は第2基準線L2とのなす角D2が所定角度Dth未満であって、かつ、基準線Laと第1基準線L1又は第2基準線L2との距離が所定距離未満の場合に、補正条件を満たすと判断する(S26:Yes)。制御装置11は、補正条件を満たすと判断すると(S26:Yes)、処理をステップS27に移行させる。一方、制御装置11は、補正条件を満たさないと判断すると(S26:No)、処理をステップS261に移行させる。なお、制御装置11は、前記第2生成モード又は前記第3生成モードにより前記新たな基準線Laを生成してもよい。
【0138】
ステップS27において、制御装置11は、補正対象の基準線を特定する。例えば図17に示すように、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth(例えば45度)未満の場合に、制御装置11は、補正対象の基準線として第2基準線L2を特定する。また例えば図18に示すように、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth以上の場合に、制御装置11は、補正対象の基準線として第1基準線L1を特定する。
【0139】
また例えば、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth以上であって、かつ第1基準線L1と新たな基準線Laとの間の距離X1が所定距離未満の場合に、制御装置11は、補正対象の基準線として第1基準線L1を特定する。
【0140】
次にステップS28において、制御装置11は、特定した補正対象の基準線を補正する。具体的には、制御装置11は、第2基準線L2を補正対象の基準線として特定した場合に、第2基準線L2を基準線Laの位置に補正する(図17参照)。また制御装置11は、第1基準線L1を補正対象の基準線として特定した場合に、第1基準線L1を基準線Laの位置に補正する(図18参照)。
【0141】
これに対して、ステップS26において前記補正条件を満たさない場合には(S26:No)、ステップS261において、制御装置11は、基準線Laを第3基準線L3として登録(設定)する。例えば図19に示すように、第2基準線L2と新たな基準線Laとのなす角D2が所定角度Dth以上であって、かつ第1基準線L1と新たな基準線Laとの間の距離X1が所定距離以上の場合に、制御装置11は、基準線Laを第3基準線L3として登録する。
【0142】
ステップS28、S261の後、制御装置11は、前記経路生成処理を終了する。制御装置11は、作業者から基準線の登録操作を受け付けるごとに前記経路生成処理を実行する。
【0143】
以上説明したように、実施形態2に係るコンバイン1は、圃場Fにおいて自動走行させる基準線を生成する。また、コンバイン1は、互いに異なる方位の複数の基準線を生成し、複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正する。
【0144】
上記構成によれば、複数の基準線が設定された状態で作業者が新たな基準線を設定する設定操作を行った場合に、設定済みの複数の基準線のうち所定の基準線の位置が設定操作に応じた位置に補正される。これにより、作業者は設定済の基準線を修正して修正後の基準線に基づいて目標経路を容易に生成することが可能になる。
【0145】
従来の技術では、例えば新たに基準線を登録して目標経路を生成する場合に、作業者は、登録済みの基準線のうちいずれかの基準線を選択して削除してから新たな基準線の設定操作を行わなければならず手間がかかる。これに対して、本実施形態に係る構成によれば、複数の基準線が設定された状態で作業者が新たな基準線を設定する設定操作を行った場合に、設定済みの複数の基準線のうち補正対象の基準線が特定されて、当該基準線の位置が設定操作に応じた位置に補正される。これにより、作業者は設定済の基準線を削除したり修正したりする必要がなく、補正すべき基準線が適切に選択されて補正処理が行われ、補正後の基準線に基づいて目標経路が生成される。よって、コンバイン1を自動走行させる目標経路を容易に生成することが可能になる。
【0146】
他の実施形態として、制御装置11は、操作装置30における作業者の設定操作に応じて2つの基準線(第1基準線L1及び第2基準線L2)を予め生成し、その後に作業者から新たな基準線の設定操作を受け付けた場合に、2つの基準線のうち補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を、前記設定操作に応じた位置に補正、又は、3つ目の基準線として登録してもよい。
【0147】
本発明のコンバインは、上述した実施形態1に係る構成と実施形態2に係る構成とを組み合わせた構成を備えてもよい。例えば、コンバイン1の制御装置11は、経路生成段階において、一又は複数の基準線を生成した後に作業者による新たな基準線の設定操作に応じて生成済の基準線を補正する構成(実施形態2に相当)と、自動走行段階において、コンバイン1に基準線に対応する目標経路に従って自動走行させる際に作業者の補正操作に基づいて当該基準線を補正する構成(実施形態1に相当)とを備えてもよい。
【0148】
[発明の付記1]
以下、上述の実施形態1から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0149】
<付記1>
基準線に基づいて作業車両を自動走行させる目標経路を生成する経路生成方法であって、
所定の第1基準線を生成することと、
前記第1基準線に基づいて第2基準線を生成することと、
前記作業車両が前記第2基準線に基づいて自動走行する際に所定の補正操作を受け付けた場合に、前記第2基準線を補正することと、
を実行する経路生成方法。
【0150】
<付記2>
前記第2基準線は、前記第1基準線に直交する線である、
付記1に記載の経路生成方法。
【0151】
<付記3>
前記第2基準線は、作業領域の外形に沿った線である、
付記1又は2に記載の経路生成方法。
【0152】
<付記4>
前記補正操作を受け付けた場合に、前記第2基準線の方位を前記補正操作に応じた方位に変更する、
付記1~3のいずれかに記載の経路生成方法。
【0153】
<付記5>
前記作業車両が前記第2基準線に基づいて自動走行した後に、前記第1基準線を補正する操作を受け付けた場合に、前記第1基準線のみを補正し、
前記作業車両が前記第2基準線に基づいて自動走行する前に、前記第1基準線を補正する操作を受け付けた場合に、前記第1基準線及び前記第2基準線を補正する、
付記1~4のいずれかに記載の経路生成方法。
【0154】
<付記6>
前記第1基準線と、前記第2基準線と、前記第2基準線を補正した補正後基準線とを記憶し、前記作業車両が自動走行を開始する際に選択される基準線に基づいて前記目標経路を生成する、
付記1~5のいずれかに記載の経路生成方法。
【0155】
<付記7>
前記補正操作は、
前記作業車両が前記第2基準線に基づいて自動走行中に前記第2基準線に対応する経路をシフトさせる操作、
前記作業車両が前記第2基準線に基づいて自動走行中に終点を登録する操作、
前記第2基準線に基づく自動走行を終了させる操作、及び、
前記作業車両が前記第2基準線に基づいて自動走行中かつ前記作業車両に設けられた作業部が作業中に前記作業部を非作業位置に移動させる操作、の少なくともいずれかを含む、
付記1~6のいずれかに記載の経路生成方法。
【0156】
[発明の付記2]
以下、上述の実施形態2から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0157】
<付記1>
基準線に基づいて作業車両を自動走行させる目標経路を生成する経路生成方法であって、
互いに異なる方位の複数の基準線を生成することと、
前記複数の基準線が生成された後に受け付けた新たな基準線の設定操作が所定の条件を満たす場合に、前記複数の基準線のうち少なくとも一つの補正対象の基準線を特定し、特定した基準線を前記設定操作に応じた位置に補正することと、
を実行する経路生成方法。
【0158】
<付記2>
前記複数の基準線は、第1基準線と、前記第1基準線に基づいて生成される第2基準線とを含み、
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が所定角度未満の場合に、前記第2基準線を前記新たな基準線の位置に補正する、
付記1に記載の経路生成方法。
【0159】
<付記3>
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上の場合に、前記第1基準線を前記新たな基準線の位置に補正する、
付記2に記載の経路生成方法。
【0160】
<付記4>
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上の場合に、前記新たな基準線を第3基準線として登録する、
付記2又は3に記載の経路生成方法。
【0161】
<付記5>
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上の場合に、前記第1基準線を前記新たな基準線の位置に補正するか、又は、前記新たな基準線を第3基準線として登録するかを選択する操作を受け付ける、
付記2~4のいずれかに記載の経路生成方法。
【0162】
<付記6>
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上であって、かつ前記第1基準線と前記新たな基準線との間の距離が所定距離未満の場合に、前記第1基準線を前記新たな基準線の位置に補正し、
前記第2基準線と前記新たな基準線とのなす角が前記所定角度以上であって、かつ前記第1基準線と前記新たな基準線との間の距離が前記所定距離以上の場合に、前記新たな基準線を第3基準線として登録する、
付記2~5のいずれかに記載の経路生成方法。
【符号の説明】
【0163】
1 :コンバイン(作業車両)
2 :走行部(作業部)
3 :刈取部
9 :操縦部
11 :制御装置
30 :操作装置
51 :記憶部
111 :走行処理部
112 :生成処理部
113 :補正処理部
F :圃場
A1 :第1始点
A2 :第2始点
B1 :第1終点
B2 :第2終点
L1 :第1基準線
L2 :第2基準線
L21 :補正後基準線
L22 :補正後基準線
L3 :第3基準線
La :基準線
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18
図19
図20