(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177773
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】穿刺針、穿刺具、及び、穿刺具アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A61M5/32 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096104
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺野 稔浩
(72)【発明者】
【氏名】高見 誠
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF04
4C066FF05
4C066FF08
(57)【要約】
【課題】 例えば薬液などの液体が封入された容器の蓋となる弾性体に穿刺したとき、流体の経路の確保を容易にする樹脂材製の穿刺針を提供すること。
【解決手段】 樹脂材製の穿刺針は、針部と、溝部とを有する。針部は、流体を通す経路を有する胴部、胴部の先端側に設けられ、最先端に針先を有する穿刺部、及び、胴部と穿刺部との間に設けられる中間部を一体的に有する。一対の突出部は、中間部に一体的に設けられ、胴部から穿刺部に向かって延びる底面、及び、底面に一体的に設けられ、胴部から穿刺部に向かって針部の軸心に沿う方向に延びるとともに底面から針部の軸心に交差する方向に突出する一対の突出部を有する。溝部は、底面及び一対の突出部の間に形成されるチャンネルが胴部の経路と連通するとともに、チャンネルを中間部の外側に開口させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を通す経路を有する胴部、
前記胴部の先端側に設けられ、最先端に針先を有する穿刺部、及び、
前記胴部と前記穿刺部との間に設けられる中間部
を一体的に有する針部と、
前記中間部に一体的に設けられ、前記胴部から前記穿刺部に向かって延びる底面、及び、
前記底面に一体的に設けられ、前記胴部から前記穿刺部に向かって前記針部の軸心に沿う方向に延びるとともに前記底面から前記針部の軸心に交差する方向に突出する一対の突出部
を有し、前記底面及び前記一対の突出部の間に形成されるチャンネルが前記胴部の前記経路と連通するとともに、前記チャンネルを前記中間部の外側に開口させる溝部と
を有する、樹脂材製の穿刺針。
【請求項2】
前記一対の突出部の前記底面に対して突出する端縁の少なくとも一部は、前記針部の軸心に沿う方向に平行である、
請求項1に記載の穿刺針。
【請求項3】
前記一対の突出部の前記端縁は、
前記胴部に隣接して設けられ、前記底面に対して突出する第1の端縁と、
前記第1の端縁よりも前記穿刺部に近い側に設けられ、前記底面に対して突出する第2の端縁と
を有し、
前記底面に対し、前記第2の端縁の突出量よりも前記第1の端縁の突出量が大きい、
請求項2に記載の穿刺針。
【請求項4】
前記一対の突出部は、前記第1の端縁と前記第2の端縁との間に設けられ、前記針部の軸心に対して傾斜し、前記第1の端縁から前記第2の端縁に向かうにつれて前記底面に対して突出する突出量を小さくする傾斜部を有する、
請求項3に記載の穿刺針。
【請求項5】
前記底面は、前記経路のうち前記溝部の開口側とは反対側の内周面に沿う位置、又は、前記経路の内周面よりも前記溝部の開口側とは反対側に配置される、
請求項1又は請求項2に記載の穿刺針。
【請求項6】
前記胴部は、
前記経路を有する第1の柱状部と、
前記第1の柱状部と前記穿刺部との間に設けられ、前記経路の開口縁を有する、第2の柱状部と
を有し、
前記第2の柱状部の外径は、前記第1の柱状部の外径と同じかそれよりも小さく、
前記第2の柱状部の外周面は、前記穿刺部の外周面に連続する、
請求項1又は請求項2に記載の穿刺針。
【請求項7】
前記第1の柱状部の軸心、前記第2の柱状部の軸心、及び、前記穿刺部の前記針先を含む軸心は、互いにずれている、
請求項6に記載の穿刺針。
【請求項8】
前記針部の軸心に直交する前記チャンネルの断面積は、前記針部の軸心に直交する前記経路の断面積と同じかそれよりも大きい、
請求項1又は請求項2に記載の穿刺針。
【請求項9】
前記一対の突出部のうち前記底面に対して突出する端縁間の距離は、前記溝部の前記底面の幅と同じかそれよりも大きい、
請求項1又は請求項2に記載の穿刺針。
【請求項10】
前記針部の軸心に沿う前記溝部の前記一対の突出部の長さは、外側の面側から穿刺される板状の弾性体の内側の面を貫通する長さと同じかそれよりも長く形成される、
請求項1又は請求項2に記載の穿刺針。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載の穿刺針と、
前記穿刺針の前記胴部に設けられる基部と
を一体的に有する穿刺具。
【請求項12】
請求項11に記載の穿刺具と、
前記穿刺具の前記基部に接続される接続具と、
を有する穿刺具アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材製の穿刺針、その穿刺針を含む穿刺具、及び、その穿刺具を含む穿刺具アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医療用の薬剤の多くは、ゴム材などの弾性体の蓋により封止された容器に充填されて供給される。このような容器に使用される弾性体は様々な形状のものや材質のものがあり、例えば医療用の合成樹脂製の針を弾性体に穿刺して薬剤の採取、調製、投与などを行う。
【0003】
例えば特許文献1に記載のように、従来から、薬剤容器が充填された薬剤容器の弾性体に穿刺して薬剤を採取するために合成樹脂製の穿刺針が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
穿刺針を弾性体に穿刺したとき、使用する容器の蓋となる弾性体の弾性変形量や、穿刺針自体の弾性変形等によって、穿刺針の流体経路が弾性体で塞がってしまう可能性がある。例えば、厚みのある弾性体や、容器の内面側にフィルムコーティングが施されている弾性体などでこのような穿刺針の流体経路の閉塞が起こりやすいことが想定される。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、例えば薬液などの液体が封入された容器の蓋となる弾性体に穿刺したとき、流体の経路の確保を容易にする樹脂材製の穿刺針、その穿刺針を含む穿刺具、及び、その穿刺具を含む穿刺具アセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る、樹脂材製の穿刺針は、針部と、溝部とを有する。針部は、流体を通す経路を有する胴部、胴部の先端側に設けられ、最先端に針先を有する穿刺部、及び、胴部と穿刺部との間に設けられる中間部を一体的に有する。一対の突出部は、中間部に一体的に設けられ、胴部から穿刺部に向かって延びる底面、及び、底面に一体的に設けられ、胴部から穿刺部に向かって針部の軸心に沿う方向に延びるとともに底面から針部の軸心に交差する方向に突出する一対の突出部を有する。溝部は、底面及び一対の突出部の間に形成されるチャンネルが胴部の経路と連通するとともに、チャンネルを中間部の外側に開口させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば薬液などの液体が封入された容器の蓋となる弾性体に穿刺したとき、流体の経路の確保を容易にする樹脂材製の穿刺針、その穿刺針を含む穿刺具、及び、その穿刺具を含む穿刺具アセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る穿刺具アセンブリの概略的な斜視図。
【
図2】
図1に示す穿刺具アセンブリの穿刺具の穿刺針の正面側の概略的な斜視図。
【
図3】
図2に示す穿刺具の穿刺針の背面側の概略的な斜視図。
【
図4】
図1及び
図2に示す穿刺具アセンブリの穿刺具の穿刺針の正面図。
【
図9】
図4中のIX-IX線に沿う模式的な断面図。
【
図10】弾性体に対して穿刺針の針部を穿刺する状態を示す概略図。
【
図11A】弾性体に対して穿刺針の針部を穿刺する、
図10に続く状態を示す概略図。
【
図12A】弾性体に対して穿刺針の針部を穿刺する、
図11に続く状態を示す概略図。
【
図13】弾性体に対して穿刺針の針部を穿刺した状態で液体を第1の溝部のチャンネルに集める状態を示す概略的な斜視図。
【
図15】第2実施形態に係る穿刺針の、
図4に示す針部のVIII-VIII線に沿う断面図。
【
図16A】
図15に示す針部のVIII-VIII線に沿う断面図の第1変形例。
【
図16B】
図15に示す針部のVIII-VIII線に沿う断面図の第2変形例。
【
図16C】
図15に示す針部のVIII-VIII線に沿う断面図の第3変形例。
【
図17】第3実施形態に係る穿刺針の、
図4に示す針部のVIII-VIII線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1から
図13を用いて第1実施形態に係る穿刺具アセンブリ1について説明する。
【0012】
図1は、穿刺具アセンブリ1の概略的な斜視図である。
図2は、穿刺具アセンブリ1の穿刺具10の穿刺針14の針部22の正面側の概略的な斜視図である。
図3は、穿刺具アセンブリ1の穿刺具10の穿刺針14の針部22の背面側の概略的な斜視図である。
図4は、
図1から
図3に示す穿刺具アセンブリ1の穿刺具10の穿刺針14の針部22の正面図である。すなわち、穿刺針14のうち、後述する第1の溝部24が穿刺針14の外側に露出する側を穿刺針14の正面側とする。
図5は、
図4に示す穿刺具10の穿刺針14の針部22の背面図である。すなわち、穿刺針14のうち、後述する第2の溝部26が穿刺針14の外側に露出する側を穿刺針14の背面側とする。
【0013】
図4及び
図5に示すように穿刺針14の針部22を配置したとき、穿刺部34側を先端側とし、接続部12側を基端側と称する。また、
図4に示すように穿刺針14の針部22を配置したとき、
図4に示す穿刺針14の針部22の右側を穿刺針14の右側とし、
図4に示す穿刺針14の針部22の左側を穿刺針14の左側とする。このため、
図5に示すように穿刺針14の針部22を配置したとき、
図5に示す穿刺針14の針部22の左側を穿刺針14の右側とし、
図5に示す穿刺針14の針部22の右側を穿刺針14の左側とする。
【0014】
図6は、
図4に示す穿刺具10の穿刺針14の針部22の右側面図である。穿刺具10の穿刺針14の針部22の左側面図の図示は、
図6に示す右側面図と反対であるだけのため、ここでの図示を省略する。
図7は、
図6に示す穿刺具10の穿刺針14の針部22の矢印VIIで示す方向から見た針部22の下面図である。
図8は、
図4及び
図5中のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9は、
図4中のIX-IX線に沿う模式的な断面図である。
【0015】
なお、穿刺具10の穿刺針14の左右方向(水平方向)という場合、
図4に示す穿刺具10の穿刺針14の針部22を正面側に見たときの針部22の軸心Cに直交する方向をいう。
【0016】
図10から
図13は、穿刺具10を用いて針部22を適宜の容器の弾性体Eの外側の面Eoを通して内側の面Eiに穿刺する際の一連の作用について説明する図である。
【0017】
弾性体Eとしては、例えばブチルゴム、シリコーンゴム、又は、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体であるETFE(Ethylene Tetrafluoroethylene)等が用いられる。弾性体Eの硬さは、ショアA(ISO 7619; ASTM D2240; JIS K 6253)において、例えば20度から55度の間である。弾性体Eの厚さは、一例として例えば7mm程度である。
【0018】
図1に示すように、穿刺具アセンブリ1は、接続具8と、接続具8に接続される樹脂材製の穿刺具10とを有する。
【0019】
接続具8は、種々のものが用いられる。接続具8の例としては、例えば溶解溶液を供給したり、容器内の薬液を吸引、吐出させるシリンジがある。また、接続具8の他の例としては、穿刺具10の穿刺針14をバイアル等の容器内に穿刺した状態でその容器に取り付けるアダプターなどと称される器具がある。例えばシリンジは、アダプターを介して穿刺針14の後述する経路52に接続される。
【0020】
穿刺針14は、
図10から
図13に示す弾性体Eに穿刺することができるほか、穿刺を伴わずに用いることもあり得る。このため、穿刺針14を用いる対象の容器としては、バイアルのほか、例えばアンプルを用いることができるなど、容器の種類は限定されるものではない。また、穿刺針14が穿刺される対象の他の例としては、薬液や血液等の液体が封入された、吊るされて用いるバッグのコネクタの弾性体等があり得る。
【0021】
穿刺具10は、接続部(基部)12と、真っ直ぐに延びた穿刺針14とを有する。本実施形態に係る穿刺具10は、接続部12及び穿刺針14が樹脂材で例えば一体的に形成される。樹脂材の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、PEEK等、適宜の熱可塑性樹脂材が用いられ得ることが好適である。そして、本実施形態に係る穿刺針14は、後述するように針先34aから適宜の硬さの弾性体Eに穿刺したときに、針先34aが潰れ難く、弾性体Eの弾性変形に抗して穿刺針14の形状を維持し得る硬さに形成される。なお、弾性体Eに穿刺された状態で弾性体Eを穿刺針14の外周面に密着させる。
【0022】
接続部12は、各種の接続具8に接続される。接続部12と穿刺針14とは、一体的に形成されることが好適であるが、別体として形成され、互いに対して接続されてもよい。接続部12は、穿刺針14の基端の径と同等、又は、穿刺針14の基端の径よりも大きい外形を有する、例えばブロック状に形成される。
【0023】
本実施形態に係る穿刺針14は、
図4に示すVIII-VIII線、及び、
図5に示すVIII-VIII線により規定される面に対して左右対称に形成される。
【0024】
図1から
図9に示すように、穿刺針14は、針部22と、第1の溝部24と、第2の溝部26とを有する。
【0025】
針部22は、胴部32と、胴部32の先端側に設けられる穿刺部34と、胴部32と穿刺部34との間に設けられる中間部36とを有する。
【0026】
胴部32は、
図1に示す接続部12に一体的に形成される。胴部32は、接続部12側の第1の柱状部42と、第1の柱状部42の先端側に第1の柱状部42に連続して設けられる第2の柱状部44とを有する。
【0027】
第1の柱状部42は、例えば柱状に形成される。本実施形態では、説明の簡単のため、第1の柱状部42が円柱状に形成されるものとする。そして、穿刺針14の針部22の軸心Cは、第1の柱状部42の中心軸に一致するものとする。
なお、第1の柱状部42は、円形状の横断面を有する円柱状に限らず、N角形(Nは3以上の整数)の横断面を有する柱状に形成されていてもよく、楕円状の横断面を有する柱状に形成されていてもよい。
【0028】
第2の柱状部44の外周面のうちの正面側は、穿刺針14の針部22の軸心Cに対して傾斜する。本実施形態では、第2の柱状部44の外周面のうちの背面側は、
図6に示すように、穿刺針14の針部22の軸心Cに対して例えば平行に真っ直ぐに延びる。第2の柱状部44は、
図1に示す穿刺針14の正面側において、穿刺針14の針部22の軸心Cに対して傾斜する。このため、第2の柱状部44は、背面側よりも正面側の領域に傾斜部44aを有する。傾斜部44aの傾斜方向は、穿刺部34側に向かうにつれて胴部32の外径が小さくなる方向である。
【0029】
胴部32は、流体を通過させる経路52を有する。経路52は、穿刺針14の針部22の軸心C(長手方向)に沿って真っ直ぐに延びる円管状、楕円管状、多角形管状などのチャンネルとして形成される。経路52は、例えば薬液など、液体の通路として用いられる。経路52を空気などの気体の通路として用いてもよい。
【0030】
穿刺部34は、針部22の軸心Cに沿って胴部32の先端側に設けられる。中間部36は、針部22の軸心Cに沿って胴部32と穿刺部34との間に設けられる。胴部32は、中間部36の基端側に中間部36と一体的に樹脂材で形成される。穿刺部34は、中間部36の先端側に中間部36と一体的に樹脂材で形成される。
【0031】
穿刺部34は、先端側に向かって細くなる針先(尖端部)34aを有する。後述するが、穿刺部34の針先34aではじめに弾性体Eを穿刺する必要があるため、穿刺部34の最先端の針先34aは、第1の溝部24及び第2の溝部26を含まず、適宜に尖っていることが好ましい。針先34aは、穿刺針14の針部22の軸心Cに沿う方向に穿刺針14を移動させたときに、例えばバイアル等の容器のゴム栓などの適宜の厚さの弾性体Eに針先34aから穿孔を形成し、弾性体Eを貫通できればよい。
【0032】
穿刺部34と中間部36との境界は適宜に設定可能である。例えば、第1の溝部24の後述する底面62の先端63から針先34aまでの領域を穿刺部34としてもよく、第1の溝部24の後述する一対の突出部64の先端65から針先34aまでの領域を穿刺部34としてもよい。本実施形態では、後者の場合とする。このため、第1の溝部24の底面62は、中間部36に設けられるとともに、穿刺部34に設けられることとなる。
【0033】
中間部36は、胴部32及び穿刺部34の間のフレームとして形成される。中間部36は、胴部32の第2の柱状部44の先端側に設けられる第1の中間体(第3の柱状部)36aと、第1の中間体36aの先端側に設けられる第2の中間体(第4の柱状部)36bとを有する。
【0034】
中間部36の第1の中間体36aは、胴部32の第2の柱状部44の先端と同じ一定の外径を有する例えば円柱状などの柱状体として胴部32の第2の柱状部44に一体的に形成される。中間部36の第1の中間体36aの背面側は、胴部32の第2の柱状部44の背面側から、針部22の軸心Cに対して平行に真っ直ぐに延びることが好適である。
【0035】
中間部36の第2の中間体36bは、穿刺部34側に向かうにつれて外径が小さくなる例えば円錐台状などの錐台体として第1の中間体36aに一体的に形成されるとともに、穿刺部34に一体的に形成される。
【0036】
このため、中間部36は、胴部32側の柱状体(第1の中間体36a)と、穿刺部34側の錐台体(第2の中間体36b)との組み合わせとして形成される。中間部36の外形は、N角形(Nは3以上の整数)の横断面を有する柱状に形成されていてもよく、楕円状の横断面を有する柱状に形成されていてもよい。
【0037】
中間部36の第1の中間体36aは、第2の柱状部44の先端から穿刺部34側に向かって、穿刺針14の針部22の軸心Cに沿って延びる。中間部36の第1の中間体36a及び第2の中間体36bは、胴部32の第2の柱状部44の先端から穿刺部34側に向かって延びる針部22の外周面を形成する。中間部36の第1の中間体36a及び第2の中間体36bによる針部22の外周面は、第2の柱状部44の先端と穿刺部34の針先34aとの間を滑らかに連続させる。中間部36の第1の中間体36aによる針部22の外周面の最大径は、第2の柱状部44の先端と同じ外径であり、穿刺部34に向かうにつれて第2の柱状部44の先端よりも外径が大きくなる領域はない。このため、中間部36は、第2の柱状部44の先端から穿刺部34の針先34aに向かって、外径が一定か、外径が小さくなるのみである。そして、中間部36の先端65から穿刺部34の先端の針先34aに向かって、次第に外径が小さくなる。
【0038】
なお、中間部36と穿刺部34との、針部22の軸心Cに沿う境界位置は、針部22の正面側と背面側とで、同じであっても、異なっていてもよい。上述したように、正面側は、一対の突出部64の先端65から先の領域を穿刺部34とする。例えば、背面側は、第2の溝部26の先端95から先の領域を穿刺部34とする。この場合、中間部36と穿刺部34との、針部22の軸心Cに沿う正面側及び背面側との間の右側及び左側の境界位置は、一対の突出部64の先端65と第2の溝部26の先端95とを結んだ位置とする。
【0039】
本実施形態では、第2の柱状部44には、経路52の穿刺部34側の終端として、穿刺針14の外部に連通する孔部52aが形成される。孔部52aの縁は、略円環状に形成されていてもよく、例えば略楕円状に形成されていてもよい。本実施形態では、孔部52aの縁は、例えば
図4に示すように針部22の正面側から見たときに略楕円状に形成され、
図7に示すように針部22の下側から見たときに例えば略円環状に形成される。
なお、経路52の孔部52aとは反対側の終端は、例えば接続部12に形成される。
【0040】
本実施形態では、胴部32及び中間部36は、経路52とは別の経路54を有する。経路54は、穿刺針14の針部22の軸心C(長手方向)に沿って真っ直ぐに延びる円管状、楕円管状、多角形管状などのチャンネルとして形成される。経路54は、例えば空気など、気体の通路として用いられる。経路54を薬液などの液体の通路として用いてもよい。経路52,54の横断面の大きさ(単位長さ当たりの開口面積)は、同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
経路54の穿刺部34側の終端として、穿刺針14の外部に連通する孔部54aが形成される。孔部54aは、本実施形態では中間部36に形成される。孔部54aの縁は、略円環状に形成されていてもよく、例えば略楕円状に形成されていてもよい。本実施形態では、孔部54aの縁は、
図7に示すように針部22の下側から見たときに例えば略円環状に形成される。
なお、経路54の孔部54aとは反対側の終端は、例えば接続部12に形成される。
【0042】
本実施形態では、針部22の中間部36の正面側には、第1の溝部24が設けられる。このため、第1の溝部24は、穿刺針14の正面側に形成される。針部22の軸心Cに沿う第1の溝部24の長さは、板状の弾性体Eの外側の面Eo側から穿刺される弾性体Eの内側の面Eiを貫通する長さに形成される。
【0043】
第1の溝部24は、経路52の内周面に連続する底面62と、底面62から突出する一対の突出部64と、胴部32側の閉塞端66とを有する。
【0044】
底面62は、中間部36に一体的に設けられ、胴部32から穿刺部34に向かって針部22の軸心C(長手方向)に沿って延びる。底面62は、平面として形成されてもよく、曲面として形成されてもよい。本実施形態では、底面62は、平面と曲面とを組み合わせて形成される。底面62のうち、胴部32側は、経路52の内周面に連続する面(第1の底面)62aとして形成される。第1の底面62aは、例えば平面として形成される。底面62のうち、穿刺部34側は、穿刺針14の針部22の軸心Cに沿って真っ直ぐに延びる面(第2の底面)62bとして形成される。第2の底面62bは、例えば平面として形成される。第2の底面62bのうち、最も穿刺部34の針先34a側を底面62の先端63とする。底面62の先端63は、第1の溝部24の先端でもある。第2の底面62bのうち、一対の突出部64の先端65から第1の溝部24の先端63までの間は、穿刺部34の外周面を2本の等辺とし、先端63を頂点とする略二等辺三角形状の面として形成される。実際には、第1の溝部24の先端63は、穿刺部34の針先34aよりも角度が大きく形成されることが好適である。
【0045】
第1の底面62aと第2の底面62bとの間には、第1の底面62a及び第2の底面62bに対して傾斜し、第1の底面62aに連続するとともに、第2の底面62bに連続する、傾斜面としての第3の底面62cが形成される。
【0046】
なお、底面62の幅を中間部36により形成される外径とするとき、底面62は、底面62の幅よりも、針部22の軸心Cに沿う方向に長く形成されることが好適である。
【0047】
底面62が正面側に凸状であるとき、底面62の高さは、第1の溝部24のチャンネル68を確保するため、一対の突出部64の高さに対して低く形成される。
【0048】
本実施形態では、穿刺針14の針部22の軸心C、すなわち、胴部32の第1の柱状部42の中心軸は、第1の溝部24の第2の底面62bの表面に沿う。
図6及び
図7に示すように、針先34aは、穿刺針14の針部22の軸心Cに対して針部22の背面側にずれている。また、胴部32の第2の柱状部44の軸心は、第1の柱状部42の軸心Cに対して針部22の背面側にずれている。なお、針先34aは、第2の柱状部44の軸心に対して、背面側にずれている。そして、針先34aは、胴部32側から離れるにつれて先細となる略円錐状の領域として形成される。
【0049】
このため、本実施形態に係る第1の溝部24の底面62は、経路52のうち、針部22の背面側の内周面に沿う位置に配置されるとともに、経路52のうち、針部22の背面側の内周面よりも、針部22の背面側(第1の溝部24の開口側(一対の突出部64側)とは反対側)に配置される。
【0050】
第1の溝部24の突出部64及び閉塞端66は、中間部36において、針部22の正面側で、軸心Cに平行に延び、穿刺針14の穿刺部34側を開放し、胴部32側を閉塞する、略U字状のスリットの縁部として形成される。
【0051】
本実施形態では、針部22の軸心Cに沿ういずれの位置においても、一対の突出部64間の針部22の軸心Cに直交する幅は一定に形成される。
【0052】
一対の突出部64は、胴部32から穿刺部34に向かって針部22の軸心C(長手方向)に沿って底面62上を延びるとともに底面62から軸心Cに交差する方向に突出する。一対の突出部64は、穿刺針14の座屈を抑制する正面側のリブとして機能し得る。底面62に対する一対の突出部64の突出方向は、同じ方向である。本実施形態では、底面62に対する一対の突出部64の突出方向は、針部22の正面側(
図4参照)である。このため、一対の突出部64は、底面62とともに経路52及び孔部(開口縁)52aに連通し、針部22の軸心Cから中間部36の外周面に開口し、本実施形態では正面側に開口するチャンネル(流路)68を形成する。このため、チャンネル68には、液体や気体などの流体を出し入れ可能である。
【0053】
一対の突出部64は、第2の柱状部44側から穿刺部34側に向かって、底面62に対する一対の突出部64の突出高さが徐々に低くなるように形成される。このため、一対の突出部64は、閉塞端66から穿刺部34に向かって針部22の軸心Cに徐々に近づくように形成される。
【0054】
一対の突出部64は、底面62に連続する壁面72と、突出端(開口縁)74とを有する。
【0055】
図2、
図4及び
図9に示すように、一対の突出部64の壁面72は、互いに対向する平行な平面として形成されることが好適である。一対の突出部64のうち底面62に対して突出する一対の突出部64の突出端74間の距離は、第1の溝部24の底面62の幅と同じである。一対の突出部64の壁面72間距離は、適宜に設定可能である。このため、底面62及び一対の突出部64の壁面72は、穿刺針14の針部22の軸心Cに直交するなど、穿刺針14の針部22の軸心Cに交差する断面が略コ字状のチャンネル(流路)68を形成する。
【0056】
一対の突出部64の突出端74のうち、第2の柱状部44側から穿刺部34側に向かう領域の一部が、穿刺針14の針部22の軸心Cに平行な領域を有することが好適である。本実施形態では、一対の突出部64の突出端74は、第2の柱状部44側から穿刺部34側に向かって、穿刺針14の針部22の軸心Cに平行であることが好適な第1の端縁(第1の平行部)82及び第2の端縁(第2の平行部)84を有する。
図2、
図4及び
図9中、第1の端縁82は、中間部36の外周面において、それ自体の左右方向の幅が狭く、軸心Cに沿って略ライン状の縁として形成される。第2の端縁84は、第1の端縁82よりもそれ自体の左右方向の幅が大きく、針部22の軸心C及び第2の底面62bと平行な平面として形成される。なお、第2の端縁84は、平面ではなく、背面側とは反対側の正面側に突出する円弧状や楕円弧状など、曲面として形成されることも好適である。第2の端縁84は、第1の端縁82と同様に、最も正面側の面が略ライン状の縁として形成されることも好適である。
【0057】
突出端74は、第1の端縁82と第2の端縁84との間に、第1の端縁82及び第2の端縁84に対して傾斜する第1の傾斜部86を有する。突出端74は、第2の端縁84と針先34a側の底面62との間に、第2の端縁84に対して傾斜する第2の傾斜部88を有する。
第1の傾斜部86は、第3の底面62cに対する突出高さが胴部32側から穿刺部34側に向かって徐々に小さくなるように形成される。第2の傾斜部88は、第2の底面62bに対する突出高さが胴部32側から穿刺部34側に向かって徐々に小さくなるように形成される。第2の傾斜部88のうち、最も先端側の符号65で示す位置(中間部36の先端)は、第2の底面62bに連続する。なお、第2の傾斜部88のうち、最も先端側の符号65で示す位置は、穿刺部34の基端の位置にある。
【0058】
そして、第1の端縁82、第2の端縁84、第1の傾斜部86、第2の傾斜部88は、チャンネル68の開口縁を形成する。
【0059】
なお、第1の溝部24の底面62のうち、第2の底面62bは、胴部32内の経路52の背面側の面よりも、針部22の背面側に形成される。一対の突出部64の突出端74のうち、胴部32側は、経路52の正面側の面に沿う、又は、略沿う。このため、針部22の正面側から一対の突出部64間のチャンネル68に弾性体Eが入っても、チャンネル68による液体などの流体の流路(深さ)を経路52の径よりも大きくして、チャンネル68及び経路52の流路をより確実に確保する。
【0060】
第1の溝部24の第2の底面62bのうち一対の突出部64の先端65から先の領域の左右方向の縁部の背面側には、穿刺部34の外周面が設けられる。
【0061】
閉塞端66は、胴部32の第2の柱状部44と、中間部36の第1の中間体36aとの境界付近に形成される。閉塞端66の一部は、中間部36の第1の中間体36aの外周面の一部として形成されるとともに、経路52の孔部52aの開口縁の一部として形成される。
【0062】
なお、チャンネル68の先端は一対の突出部64の先端65により規定され、チャンネル68の基端は、閉塞端66により規定される。このため、チャンネル68は、一対の突出部64の先端65と閉塞端66との間に形成される。
【0063】
本実施形態では、胴部32は、経路52とは別の経路54と、経路54の後述する針先34a側の終端として形成され外部に連通する孔部54aとを有する。経路54は、穿刺針14の軸方向に沿って真っ直ぐに延びるチャンネルとして形成される。経路54は、例えば空気など、気体の通路として用いられる。経路54の孔部54aは、経路52の孔部52aよりも針先34a側に位置することが好適である。経路54の孔部54aの位置は、経路52の孔部52aの位置と、穿刺針14の針部22の軸心Cを挟んで隣接していてもよい。孔部54aの縁は、略円環状に形成されていてもよく、例えば略楕円状に形成されていてもよい。
【0064】
胴部32の基端(接続部12の先端)から第1の溝部24の閉塞端66までの距離が短く、第1の溝部24の長さが適宜の長さであると、
図12A及び
図12Bに示すように穿刺針14を穿刺したときに、第1の溝部24のチャンネル68が弾性体Eの内側の面Eiに隣接し易い。このため、後述する穿刺針14の作用により、容器内の残液を少なくできると想定される。弾性体Eに対する針部22の穿刺深さによっては弾性体Eの外側の面Eoと内側の面Eiとを第1の溝部24により連通させる可能性が生じる。接続部12の先端から第1の溝部24の遠位端までの距離は、長いほど厚い弾性体でも流体の流路を確保しやすい。第1の溝部24全体の長さが長すぎると、弾性体Eの外側の面Eoと内側の面Eiとを第1の溝部24により連通させる可能性が生じる。したがって、第1の溝部24の閉塞端66、第1の溝部24の先端63との間の長さは、適宜に設定される。
【0065】
本実施形態では、中間部36の背面側には、第2の溝部26が設けられる。このため、第2の溝部26は、穿刺針14の背面側に形成される。第2の溝部26は、軸心Cに平行に延び、穿刺針14の穿刺部34の針先34a側を開放し、胴部32側を閉塞する、略U字状のスリットとして形成される。
【0066】
図3及び
図5に示すように、穿刺部34の第2の溝部26は、中間部36及び穿刺部34に一体的に樹脂材で形成される。第2の溝部26は、経路54の内周面に連続する底面92と、底面92に対して突出する一対の突出部94とを有する。
【0067】
底面92は、平面として形成されてもよく、曲面として形成されてもよい。本実施形態では、底面92は、針部22の軸心Cに沿う方向に長く、正面側に凸状に延出される。なお、底面92の先端は、針先34aよりも背面側に位置する。このため、第1の溝部24の底面62と、第2の溝部26の底面92とは、軸心Cに平行な針先34aを含む軸を挟んで隣接する。
【0068】
一対の突出部94は、閉塞端94aと、一対の端縁94bとを有する。
【0069】
閉塞端94aは、例えば中間部36の第1の中間体36aと第2の中間体36bとの境界付近に形成される。閉塞端94aは中間部36の第2の中間体36bの外周面の一部として形成される。
【0070】
一対の端縁94bは、中間部36及び穿刺部34の外周面の一部として形成される。一対の端縁94bは、穿刺針14の座屈を抑制する背面側のリブとして機能し得る。一対の端縁94b同士は、中間部36の第2の中間体36bから穿刺部34の針先34aに向かって延び、穿刺部34の針先34aに向かうにつれて近づく。このため、一対の端縁94bは、穿刺部34の針先34aに向かうにつれて幅が狭くなるように形成される。また、一対の端縁94bは、中間部36の第2の中間体36bから穿刺部34の針先34aに向かうにつれて針部22の軸心Cに近づく。このため、第2の溝部26の一対の端縁94bは、針部22の軸心Cに平行な部分はないことが好適である。
【0071】
一対の突出部94は、底面92とともに経路54及び孔部(開口縁)54aに連通し、針部22の軸心Cから穿刺部34及び中間部36の外側に開口し、本実施形態では背面側に開口するチャンネル(流路)98を形成する。このため、チャンネル98には、液体や気体などの流体を出し入れ可能である。
【0072】
経路52,54は、穿刺針14に加えて、穿刺針14に一体的に形成される接続部12にも形成されることが好適である。そして、経路52,54は、接続部12及び穿刺針14に針部22の軸心Cに平行な貫通孔として形成される。すなわち、経路52,54は、穿刺具10の針部22の軸心Cに平行な貫通孔として形成されることが好適である。
【0073】
穿刺針14の針部22の寸法を示す。以下の寸法は一例であって、穿刺対象の弾性体E、用いる穿刺針14の針部22の長さや材質等により、適宜に変更し得る。
穿刺針14の長さは例えば20.1mmである。このうち、針部22の胴部32の長さは例えば7.6mmであり、中間部36の長さは例えば8.5mmであり、穿刺部34の長さは例えば4mmである。
胴部32の第1の柱状部42の外径は例えば4mmであり、第2の柱状部44の外径及び、中間部36の外径は例えば3.6mmである。
針部22の軸心Cに沿う第1の溝部24の長さは弾性体Eの厚さによるが、7.5mm以上であることが好適である。
第1の溝部24の一対の突出部64の針部22の軸心Cに沿う長さは例えば8.5mmである。このうち、胴部32側の第1の端縁(第1の平行部)82の長さは例えば2.7mmであり、穿刺部34側の第2の端縁(第2の平行部)84の長さは例えば2.2mmである。このため、穿刺部34側の第2の端縁84の長さよりも、胴部32側の第1の端縁82の長さの方が長い。端縁82,84間の針部22の軸心Cに沿う第1の傾斜部86の長さは例えば1.3mmであり、穿刺部34側の第2の傾斜部88の針部22の軸心Cに沿う長さは例えば2.2mmである。なお、胴部32側の第1の傾斜部86の傾斜角度は端縁82,84に対して例えば25°であり、穿刺部34側の第2の傾斜部88の傾斜角度は端縁82,84に対して例えば20°である。このため、端縁82,84に対する穿刺部34側の第2の傾斜部88の傾斜角度よりも、胴部32側の第1の傾斜部86の傾斜角度の方が大きい。したがって、穿刺部34側の傾斜部88の方が胴部32側の傾斜部86に比べてなだらかである。
なお、一対の突出部64の壁面72間は、胴部32側から穿刺部34側まで例えば1.4mmなど、一定である。すなわち、一対の突出部64の端縁82間、端縁84間、傾斜部86間、傾斜部88間のそれぞれの幅は、1.4mmである。また、一対の突出部64の底面62に対する第2の端縁84の突出高さは例えば0.8mmであり、第1の端縁82の突出高さは例えば1.4mmである。
経路52,54の径は、それぞれ例えば0.9mmである。
中間部36及び第1の溝部24の寸法関係は、例えば、経路52の径≦第1の溝部24の壁面72間の幅≦端縁82,84間の幅<中間部36の径であることが好適である。
【0074】
穿刺針14の寸法は、容器を閉塞する弾性体Eの硬さや変形し易さ等により適宜に設定可能である。弾性体Eの硬さは、上述したように、ショアA(ISO 7619; ASTM D2240; JIS K 6253)において、例えば、20度から55度の間である。弾性体Eの硬さがこのような度数であるとき、第1の溝部24の底面62に対する一対の突出部64の突出端74までの突出高さ(深さ)、すなわち、チャンネル68の深さは、例えば0.5mmよりも大きいことが好適であり、0.8mm以上であることがより好適である。このような穿刺針14の少なくとも穿刺部34及び中間部36を弾性体Eに穿刺したとき、第1の溝部24のチャンネル68は、弾性体Eの弾性変形により閉塞されることが抑制される。
【0075】
一対の突出部64の突出端74間の幅が1.4mmであるとき、第1の溝部24の深さは例えば0.5mm以上である。このため、第1の溝部24の深さは、第1の溝部24の幅(一対の突出部64の壁面72間の幅)である1.4mmの36%以上であることが好適である。第1の溝部24の深さはより好ましくは0.8mm以上であるから、第1の溝部24の深さは、第1の溝部24の幅の58%以上であることがより好適である。弾性体Eが上述した硬さを有し、第1の溝部24の深さが第1の溝部24の幅の36%以上である、といった関係を有することで、弾性体Eに穿刺針14を穿刺した状態において、チャンネル68が弾性体Eに閉塞されることが防止される。
【0076】
また、針部22の軸心Cは、上述したように第1の柱状部42の中心軸(軸心)と一致する。第1の柱状部42の軸心よりも、第2の柱状部44の軸心は、背面側に例えば0.2mm偏心する。また、第2の柱状部44の軸心よりも、穿刺部34の針先34aを含む軸心は、背面側に例えば0.1mm偏心する。このため、針部22の軸心Cは、針先34aを含む軸心とはずれている。
【0077】
本実施形態に係る穿刺針14の作用について
図10から
図13を用いて説明する。
【0078】
穿刺具10の接続部12には、例えば容器内に空気(気体)を入れ、液体を採取する接続具8としてのシリンジや、上述したアダプター等が予め接続される。または、穿刺具10の接続部12には、別の容器に液体を移送する接続具8が予め接続される。
【0079】
本実施形態に係る穿刺具10の穿刺針14を穿刺する対象の一例は、薬液が入れられゴム材製の板状の弾性体E(
図10から
図13参照)で封止された例えばバイアル等の容器(図示せず)の弾性体(ゴム栓)Eである。
【0080】
図10、
図11A及び
図12Aは、容器の弾性体Eの外側の面Eoを上側に、内側の面Eiを下側にして穿刺針14で穿刺する一連の図を示す。
図11Bは、
図11Aに示す図の針部22の概略的な断面図であり、
図12Bは、
図12Aに示す図の針部22の概略的な断面図である。
図13は、針部22を弾性体Eに穿刺した状態で弾性体Eの外側の面Eoを下側に、内側の面Eiを上側にした図である。
【0081】
図10に示すように、医師や看護師等の穿刺具10のユーザは、容器の弾性体Eの外側の面Eoに対して、穿刺具10の針部22の針先34aで穿刺し、弾性体Eの外側の面Eoを穿刺し、弾性体Eの穿刺孔Hを形成する。このとき、ユーザは、弾性体Eの外側の面Eoに対して針部22の軸心Cを直交させ、かつ、針部22を針部22の軸心Cの周りに回転させずに弾性体Eに穿刺する。
【0082】
図11A及び
図11Bに示すように、穿刺具10のユーザは、弾性体Eの穿刺孔Hにさらに針部22を穿刺し、第1の溝部24を弾性体Eの内側の面Eiに到達させる。穿刺針14の針部22は、穿刺部34の外周面に加えて、中間部36の外周面、第1の溝部24の第2の底面62bの先端63側の一部、一対の突出部64の突出端74、及び、第2の溝部26の一対の突出部94が弾性体Eに密着しながら、弾性体Eの内側の面Eiを針先34aで穿刺する。このため、穿刺部34の外周面、中間部36の外周面、第1の溝部24の第2の底面62bの先端63側の一部、一対の突出部64の突出端74、及び、第2の溝部26の一対の突出部94で弾性体Eを押し退け、弾性体Eを貫通した穿刺孔Hを形成する。
【0083】
また、胴部32でも、穿刺孔Hの弾性体Eを押し退ける。本実施形態では、中間部36の外周面、第1の溝部24の一対の突出部64の突出端74、及び、胴部32の外周面で弾性体Eの外側の面Eoから内側の面Eiまで穿刺孔Hの弾性体Eを押し退けた状態を維持する。したがって、弾性体Eを穿刺した穿刺針10において、第1の溝部24のチャンネル68が弾性体Eで閉塞されず、チャンネル68及び経路52によって、容器内の液体を容器外に導出する流路が確保される。
【0084】
第1の溝部24の第2の底面62bは、経路52の背面側の面よりも、針部22の背面側に形成される。このため、底面62と突出部64との間の距離を経路52の径よりも大きく取る。したがって、一対の突出部64間に穿刺孔Hの周囲の弾性体Eが入っても、液体などの流体の流路をより確実に確保する。
【0085】
針部22の軸心Cを弾性体Eの外側の面Eo及び内側の面Eiに対して垂直に適宜の速度で穿刺し、穿刺孔Hの弾性体Eを徐々に押し退けるときに、穿刺孔Hの弾性体Eを削り取る部分が存在しないため、コアリングの発生を防止する。
【0086】
そして、軸心Cに沿う方向に適宜の長さを有し、底面62に対する中間部36の外側への軸心Cに沿う方向での突出長の変化を緩やかにした一対の突出部64の突出端74により、弾性体Eの弾性変形を最小限に抑制しながら、穿刺針14の針部22が次第に穿刺される。
【0087】
図12A及び
図12Bに示すように、穿刺具10のユーザは、弾性体Eの穿刺孔Hにさらに針部22を穿刺し、接続部12の先端面(針部22の基端部)を弾性体Eの外側の面Eoに当接又は近接させる。このとき、例えば、第1の溝部24の閉塞端66は、弾性体Eの内側の面Eiを通り過ぎ、容器内にある。または、第1の溝部24の閉塞端66が弾性体Eの内側の面Eiを通りすぎていなくてもよい。このとき、第1の溝部24の一対の突出部64の突出端74が既に弾性体Eの内側の面Eiを通り過ぎている。上述したように、第1の溝部24のチャンネル68は、弾性体Eで閉塞されず、液体の流路が確保されるため、経路52と連通する第1の溝部24のチャンネル68を通して液体や気体を容器内に入れることができる。また、容器内の液体を第1の溝部24、経路52を通して容器外に出すことができる。
【0088】
別の経路54に連通する第2の溝部26の一対の突出部94の先端95は、第1の溝部24の一対の突出部64の突出端74の先端よりもさらに針先34a側にある。
【0089】
そして、穿刺具10のユーザは、例えば別の経路54を通して容器内に空気を入れたり、容器内の空気を出したりすることができる。
【0090】
シリンジを用いて容器内に薬液を入れる方法の一例を簡単に説明する。
図1に示す接続具8として、液体の経路52にシリンジが接続され、気体の経路54に空気袋(圧力調整部)が接続されるとする。シリンジから経路52及び第1の溝部24のチャンネル68を通して薬剤等を容器に移動させると、容器内の圧力が増加し、容器内の空気が第2の溝部26のチャンネル98及び経路54を通して空気袋に移動する。このため、容器内の圧力が一定に保たれる。
【0091】
シリンジを用いて容器内の薬液を採取する方法の一例を簡単に説明する。
図1に示す接続具8として、液体の経路52にシリンジが接続され、気体の経路54に空気袋が接続されるとする。シリンジのバレルに予め採取したい薬液と同量の空気を入れておき、シリンジのピストンを押し込み、バレル内の空気を液体の経路52を介して容器内に注入する。この際に、容器内の圧力が上昇し、気体の流路54を介して容器内の空気が空気袋に移動し、容器内の圧力が平衡に保たれる。次いで、容器を上方に配置し、シリンジを下方に配置する。
【0092】
例えば、
図12に示すように穿刺針14を穿刺孔Hに穿刺した状態で、ユーザが容器を逆さにすると、容器の弾性体Eの内側の面Eiが上側に、外側の面Eoが下側に配置される。このとき、弾性体Eの穿刺孔Hの外周の弾性体Eは、胴部32の外周面に密着する。また、弾性体Eの穿刺孔Hの外周の弾性体Eは、場合によっては、中間部36の外周面に密着する。このため、液体等の流体が、胴部32の外周面と弾性体Eの穿刺孔Hとの間の隙間、中間部36の外周面と弾性体Eの穿刺孔Hとの間の隙間から薬液等が漏れ出すことを防止する。そして、容器内の液体が弾性体Eの内側の面Eiに集まる。
【0093】
シリンジのピストンを採取したい薬液の量だけ引くと、液体は、第1の溝部24のチャンネル68を通して経路52に導入される。このため、液体の経路52を介して容器中の薬液がバレルに移動し、薬液の採取が行われる。この際に、容器内の圧力が減少し、気体の流路54を介して空気袋内の空気が容器に移動し、容器内の圧力が平衡に保たれる。
【0094】
なお、ユーザが容器を逆さにした状態で、仮に、第1の溝部24の閉塞端66が弾性体Eの内側の面Eiよりも上側に配置される場合、
図13に示すように、弾性体Eの内側の面Eiに対して第1の溝部24の閉塞端66を弾性体Eの外側の面Eo側に配置する。このとき、第1の溝部26のチャンネル68を通して孔部52aに液体が集められる。
【0095】
適宜に穿刺針14を使用した後、弾性体Eの穿刺孔Hから穿刺針14を抜く前に、ユーザは、容器の弾性体Eの外側の面Eoを上側に、内側の面Eiを下側に配置する。この状態で、ユーザは、弾性体Eの穿刺孔Hから穿刺針14を抜き取る。このとき、穿刺孔Hの周囲の弾性体Eは、その弾性力により、穿刺針14の外周面に密着しながら穿刺孔Hが閉じる。このため、針先34aが弾性体Eの内側の面Eiより外側の面Eo側に配置されると、針先34aが弾性体Eの外側の面Eoから抜かれる前に弾性体Eの内側の面Eiの穿刺孔Hが閉じる。このように、穿刺針14を弾性体Eから抜く作業に伴って穿刺孔Hが徐々に閉じる。したがって、本実施形態に係る穿刺針14は、弾性体Eから抜き取る際に、容器内に容器の外側から異物が混入することが防止される。
【0096】
本実施形態に係る穿刺針14によれば、以下のことが言える。
【0097】
合成樹脂製の穿刺針14の針部22の中間部36には、胴部32の経路52と連通するチャンネル68を形成する第1の溝部24が設けられる。第1の溝部24は、胴部32から穿刺部34に向かって針部22の軸心Cに沿う方向に延びるとともに底面62から針部22の軸心Cに交差する方向に突出する一対の突出部64を有する。一対の突出部64は針部22の正面側のリブとして機能し得る。このため、例えば弾性体Eなどに対して穿刺針14の針部22を穿刺するときに針部22が軸心Cに対して意図せず曲がることが防止される。
また、弾性体Eに穿刺具10の穿刺針14を穿刺したとき、第1の溝部24の一対の突出部64が弾性体Eの内側の面Eiに到達していれば、第1の溝部24の一対の突出端74のうち、閉塞端66を含む位置が弾性体Eにより閉塞されていても、チャンネル68の一部を容器内に連通させることができる。弾性体Eの穿孔に第1の溝部24の一対の突出部64が当接された状態が維持されていれば、一対の突出部64間を薬液のチャンネル68とすることができる。このため、例えばバイアルなどの容器を逆さまにし、弾性体Eの内側の面Eiを上に、外側の面Eoを下にして用いることで、容器内の液体をチャンネル68に案内し、容器内に液体が残すことを防止することができる。このため、薬液などの液体が封入された容器の蓋となる弾性体Eに穿刺したとき、流体の経路52の確保を容易にする樹脂材製の穿刺針14、その穿刺針14を含む穿刺具10、及び、その穿刺具10を含む穿刺具アセンブリ1が提供される。
また、第1の溝部24の一対の突出部64の、針部22の軸心Cに沿う長さを適宜の長さに形成することにより、種々の厚さの弾性体Eに対する穿刺針14の穿刺深さの調整を抑制することができ、また、容器内から液体が漏出することを抑制することができる。
また、種々の厚みを有する弾性体Eに穿刺した場合であっても、胴部32から穿刺部34に向かって針部22の軸心Cに沿う方向に延びた一対の突出部64により、流体のチャンネル68の確保が可能であるとともに、穿刺状態の安定性が向上した穿刺針14を提供することが可能となる。
【0098】
一対の突出部64の突出端74の一部が針部22の軸心C(長手方向)に平行な端縁(平行部)82,84として形成される。針部22の突出端(開口縁)74の端縁(平行部)82が弾性体Eの穿刺孔Hの内側の面Eiを通過するときに、端縁(平行部)82によっては穿刺孔Hの大きさが変化しないか、変化しても変化量はわずかである。このため、端縁(平行部)82により穿刺孔Hの周囲の弾性体Eの弾性変形の変化量を低減できる。したがって、穿刺針14で穿刺孔Hを形成するとき、穿刺抵抗の増大を抑制しながら、穿刺針14の穿刺量を大きくすることができる。
同様に、針部22の突出端(開口縁)74の端縁(平行部)84が弾性体Eの穿刺孔Hの内側の面Eiを通過するときに、端縁(平行部)84によっては穿刺孔Hの大きさが変化しないか、変化しても変化量はわずかである。このため、端縁(平行部)84により穿刺孔Hの周囲の弾性体Eの弾性変形の変化量を低減できる。したがって、穿刺針14で穿刺孔Hを形成するとき、穿刺抵抗の増大を抑制しながら、穿刺針14の穿刺量を大きくすることができる。
このように、容器の弾性体Eに合成樹脂製の穿刺針14を穿刺するときの穿刺抵抗を一定に維持しながら、弾性体Eに対する穿刺針14の針部22の穿刺深さを大きくすることができる。このため、弾性体Eに対して穿刺針14を穿刺した状態を維持することができる。例えば、弾性体Eの弾性力により、穿刺針14が弾性体Eから抜けようとすることを防止することができる。したがって、針部22の突出端(開口縁)74の端縁(平行部)82,84を有することにより、弾性体Eに対して穿刺針14を穿刺した状態の安定性を向上させることができる。
【0099】
一対の突出部64の端縁82,84が底面62に対して突出する突出量は、穿刺部34に近い側に比べて胴部32に近い側の方が大きい。一対の突出部64の胴部32に隣接して設けられる第1の端縁82の突出量の方が、第1の端縁82よりも穿刺部34に近い側に設けられる第2の端縁84よりも突出量が大きい。このため、弾性体Eの穿刺孔Hに穿刺針14を穿刺し、穿刺深さを深くするとき、ユーザの指等に加えられる負荷(抵抗)を、針部22の軸心Cに沿って底面62に対する高さがより先端側で低く、より基端側で高くなるような異なる2つの端縁82,84が弾性体E内に穿刺により存在している場合、針部22の軸心Cに沿って1つの端縁82が弾性体E内に穿刺により存在している場合に比べて、小さくすることができる。また、一対の突出部64がこのように形成されることで、穿刺針14を弾性体Eに穿刺する際に、穿刺孔Hとの間に隙間を生じさせにくい。
なお、2つの端縁82,84間に、針部22の軸心Cに対して傾斜し、より基端側の端縁82からより先端側の端縁84に向かうにつれて底面62に対して突出する突出量を小さくする傾斜部86を形成することで、より滑らかに穿刺針14を弾性体Eに穿刺することができる。
【0100】
また、第1の端縁82と第2の端縁84との間には、第1の端縁82から第2の端縁84に向かうにつれて底面62に対する突出量を小さくする傾斜部86を有する。このため、穿刺針14で弾性体Eを穿刺しているときに、第1の端縁82と第2の端縁84とを傾斜部86で滑らかに連結することができる。一対の突出部64がこのように形成されることで、穿刺針14を弾性体Eに穿刺する際に、穿刺孔Hとの間に隙間を生じさせにくい。
【0101】
第1の溝部24の底面62は、経路52の背面側の内周面より穿刺針14の背面側または、穿刺針14の軸心Cと一致する位置に形成される。穿刺針14の中間部36の外径(横断面積)を比較的小さくしつつ、必要な第1の溝部24の深さを確保することができる。このため、穿刺針14を弾性体Eに穿刺したときに、第1の溝部24によって流体の経路としてチャンネル68が塞がることを防止することができる。また、穿刺針14の中間部36の外径(横断面積)を比較的小さくすることで、容器の弾性体Eに合成樹脂製の穿刺針14を穿刺したときの穿刺抵抗の軽減を図ることができる。
【0102】
穿刺針14が胴部32の第1の柱状部42と第2の柱状部44とを有し、第2の柱状部44が第1の柱状部42より外径が小さく形成され、第1の溝部24の突出端(開口縁)74が第2の柱状部44より先端側に形成される。このため、第1の柱状部42よりも弾性体Eに先に刺入される第2の柱状部44が細いことで、薬剤の容器に合成樹脂製の穿刺針14を穿刺したときの穿刺抵抗を最低限にするとともに、第2の柱状部44及び第1の柱状部42の境界付近又は第1の柱状部42と弾性体Eとの間の密封性を高めることで、薬剤の注入もしくは採取時の容器内の内圧の変化により穿刺針14と弾性体Eとの隙間から薬液が漏出する、若しくは、容器外の物質が容器内の液体に意図せず混入することを防止することができる。
【0103】
また、穿刺部34が略円錐形状であることより、弾性体Eに穿刺針14の針先34aを穿刺したときに穿刺部34が弾性体Eの抗力によっても潰れ難い。このため、穿刺部34の潰れによる穿刺抵抗の増加を低減することができる。
【0104】
第1の柱状部42の軸心C、第2の柱状部44の軸心、及び、穿刺部34の針先34aを含む軸心は、互いにずれている。このため、第1の溝部24のチャンネル68及び経路52を針部22の軸心Cからずらした位置であっても、確保することができる。また、針先34aには第1の溝部24のチャンネル68を配置させずに、尖頭の針先34aを形成することができる。したがって、穿刺針14で弾性体Eに穿刺するときに、より確実に穿刺することができる。
【0105】
針部22の軸心Cに直交するチャンネル68の断面積は、針部22の軸心Cに直交する経路52の断面積と同じかそれよりも大きい。このため、例えば容器内において、チャンネル68により多くの流体を集めることができる。
【0106】
一対の突出部64のうち底面62に対して突出する端縁82,84間の距離は、第1の溝部24の底面62の幅と同じである。このため、チャンネル68に対する液体等の入口となる正面側の開口を適宜の大きさに形成することで、例えば容器内において、チャンネル68により多くの流体を集めることができる。
【0107】
針部22の軸心Cに沿う第1の溝部24の一対の突出部64の長さは、外側の面Eo側から穿刺される板状の弾性体Eの内側の面Eiを貫通する長さと同じかそれよりも長く形成される。このため、穿刺針14を弾性体Eに穿刺するとき、針先34aが弾性体Eの外側の面Eo、内側の面Eiを順に通過し、第1の溝部24の基端の閉塞端66が弾性体Eの外側の面Eoを通過した状態において、第1の溝部24の先端を容器の中に配置することができる。このため、容器内において、チャンネル68に流体を集めることができる。
【0108】
このように、第1の溝部24の深さ、第1の溝部24の突出端(開口縁)74間の幅、第1の溝部24の壁面72間の幅が適宜の関係であることで、厚みや硬度の異なる弾性体E、例えば硬度が低く変形し易く、厚みがある弾性体Eに穿刺針14を穿刺した場合であっても、弾性体Eは第1の溝部24の一対の突出部64間のチャンネル68を閉塞せず、流体の経路52を確保することができる。このため、厚みの異なる弾性体Eに穿刺針14を穿刺する場合であっても、穿刺針14の経路52の第1の溝部24があることで容器内の薬液を最後まで採取することができる。
【0109】
第2の溝部26の一対の突出部94が背面側のリブとして機能するため、第1の溝部24の一対の突出部64とともに、針部22の座屈をより確実に防止することができる。
なお、経路54に連通する第2の溝部26の突出部94の先端95は、第1の溝部24の一対の突出部64の先端65よりも針先34a側にある。このため、弾性体Eに穿刺針14を穿刺した状態で容器をひっくり返すと、第2の溝部26の突出部94の先端95は、第1の溝部24の一対の突出部64の先端65よりも上側に配置される。この状態において、例えば、経路54を通して容器内に空気を入れると、経路52を通して容器内の薬液を効率よく取り出すことができる。
【0110】
(変形例)
ここでは、第1実施形態で説明した針部22の第1の溝部24のチャンネル68の形状の変形例について、
図14Aから
図14Eを用いて説明する。
【0111】
【0112】
上述した第1実施形態では、
図9に示すように、第1の溝部24の一対の突出部64の壁面72同士が互いに平行であり、針部22の左右方向に沿って底面62の高さが一定である例について説明した。
【0113】
図14Aに示すように、底面62が左右方向に沿って背面側に向かって凸で、略ハーフパイプ状などの凹状に形成されていてもよい。このため、一対の突出部64の壁面72及び底面62は、穿刺針14の針部22の軸心Cに直交する断面が略U字状のチャンネル68を形成する。第2の底面62bの最底部は、針部22の軸心Cに沿う位置にあってもよく、また、針部22の軸心Cよりも正面側にあっても、背面側にあってもよい。
【0114】
図14Bに示すように、第1の溝部24の一対の突出部64の壁面72同士が互いに平行でなくてもよい。
図14Bに示す例では、一対の突出部64の壁面72及び底面62は、穿刺針14の針部22の軸心Cに直交する断面が略U字状や略D字状などの凹状のチャンネル68を形成する。用いる金型によるが、第1の溝部24の壁面72間の幅は、端縁(開口面)74間の幅以下であると、製造し易い。なお、穿刺針14の製造は、例えば射出成形により行われることが好適であるが、例えば3Dプリンタを用いて製造してもよい。
【0115】
図14Cに示すように、針部22の左右方向に底面62の高さが一定であるが、第1の溝部24の一対の突出部64の壁面72同士が互いに平行でなくてもよい。
図14Cに示す例では、一対の突出部64の壁面72及び底面62は、穿刺針14の針部22の軸心Cに直交する断面が略台形状などの凹状のチャンネル68を形成する。一対の突出部64のうち底面62に対して突出する突出端(開口縁)74間の距離は、第1の溝部24の底面62の幅よりも大きい。
【0116】
図14Dに示すように、壁面72と底面62との境界が明確でない状態に形成されることも好適である。この場合、底面62の最底部は、針部22の軸心Cに沿う線状に形成される。
図14Dに示す例では、一対の突出部64の壁面72及び底面62は、穿刺針14の針部22の軸心Cに直交する断面が略三角形状などの凹状のチャンネル68を形成する。
【0117】
図14Eに示すように、底面62の左右方向の幅が、突出端(開口縁)74の左右方向の幅よりも大きくてもよい。なお、
図14Cに示すチャンネル68は、台形の底辺のうち、短い辺が底面62にあり、
図14Eに示すチャンネル68は、台形の底辺のうち、長い辺が底面62にある。
図14Eに示す例の場合、突出端(開口縁)74の左右方向の幅(台形の底辺のうち、短い辺)は、液体が第1の溝部24の底面62に向かって流れ込み得る大きさであればよい。
図14Eに示す例では、一対の突出部64の壁面72及び底面62は、穿刺針14の針部22の軸心Cに直交する断面が略台形状などの凹状のチャンネル68を形成する。一対の突出部64のうち底面62に対して突出する突出端74間の距離は、第1の溝部24の底面62の幅よりも小さい。このような穿刺針14は、例えば3Dプリンタを用いて製造してもよい。
【0118】
このように、第1の溝部24のチャンネル68の形状は、種々の形状に形成される。一対の突出部64の突出端74の形状は、上述した第1実施形態で説明したように、胴部32側が略ライン状の縁であり、穿刺部34側が端縁82側に比べて幅広の縁として形成されてもよい。または、一対の突出部64の突出端74の形状は、全体がライン状として形成されてもよい。
【0119】
なお、図示しないが、一対の突出部64の壁面72は、対向する壁面72側に向かって平行であるほか、チャンネル68を確保できれば、互いに近接する方向に突出していてもよく、互いに離間する方向に凹んでいてもよい。すなわち、一対の突出部64の壁面72は、平面であっても、適宜の曲面等であってもよい。
【0120】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る穿刺具10の穿刺針14の針部22について
図15を用いて説明する。本実施形態は、各変形例を含む第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0121】
図15は、
図4及び
図5に示す穿刺具10の穿刺針14のVIII-VIII線に沿う断面を変形させて模式的に図示する。
【0122】
第1実施形態に係る穿刺具10の接続部12及び穿刺針14は、2つの流体経路52,54を有するものとして説明した。本実施形態に係る穿刺具10の接続部12及び穿刺針14は、1つの流体経路52のみを有する。第1実施形態に係る穿刺針14では、正面側に第1の溝部24が設けられ、背面側に第2の溝部24が設けられるものとして説明した。本実施形態では、正面側に第1の溝部24が設けられるが、背面側に第2の溝部26が設けられていないものとして説明する。そして、本実施形態では、経路52及びチャンネル68を液体、気体の両方の通路として用いる。本実施形態に係る穿刺針14を有する穿刺具10の接続具8として、例えばシリンジが接続される。
【0123】
第1の溝部24の一対の突出部64の突出端74は、針部22の軸心Cに沿って2つの端縁82,84(
図6及び
図8参照)とは異なる1つの端縁(平行部)83と、針部22の軸心Cに沿って2つの傾斜部86,88(
図6及び
図8参照)とは異なる1つの傾斜部87として形成される。
【0124】
第1の底面62aは、経路52の背面側の内周面に沿って設けられる。第2の底面62bは、経路52の背面側の内周面に沿う位置ではなく、経路52の平面側の内周面よりも第1の溝部24の開口側(正面側)とは反対側の背面側に配置される。
【0125】
穿刺針14は、このように形成されてもよい。本実施形態に係る穿刺針14の針部22の胴部32、穿刺部34及び中間部36が第1実施形態で説明した針部22と同じ寸法であるとき、端縁83の長さを、端縁82,84を合わせた長さ程度に形成することができる。このため、穿刺針14で弾性体Eを穿刺するときに、チャンネル68を確保するとともに、穿刺孔Hに針部22を穿刺した穿刺状態を安定的に維持することができる。
【0126】
したがって、底面62は、経路52の背面側の内周面に沿う位置、及び/又は、経路52の背面側の内周面よりも第1の溝部24の開口側とは反対側の背面側の位置に配置され得る。
【0127】
(第1変形例)
第2実施形態に係る穿刺具10の穿刺針14の第1変形例について
図16Aを用いて説明する。
図16Aは、
図4及び
図5に示す針部のVIII-VIII線に沿う断面図の第1変形例である。
【0128】
図16Aに示すように、底面62は針部22の軸心Cに対して平行に真っ直ぐに形成される。このため、底面62は、例えば1つの面として形成される。そして、底面62は、経路52の背面側の内周面に真っ直ぐに連通する。このため、経路52及び第1の溝部24のチャンネル68は、真っ直ぐに連通する。なお、底面62は、平面であってもよく、曲面であってもよい。
【0129】
第1の溝部24の一対の突出部64の突出端74は、針部22の軸心Cに沿って1つの端縁(平行部)83と、針部22の軸心Cに沿って1つの傾斜部87として形成される。
【0130】
穿刺針14は、このように形成されてもよい。
【0131】
(第2変形例)
第2実施形態に係る穿刺具10の穿刺針14の第2変形例について
図16Bを用いて説明する。本変形例に係る穿刺針14は、第1変形例の更なる変形例である。
図16Bは、
図4及び
図5に示す針部のVIII-VIII線に沿う断面図の第2変形例である。
【0132】
図16Bに示すように、第1の溝部24の閉塞端66は、中間部36の第1の中間体36aではなく、胴部32の第2の柱状部44に設けられる。すなわち、第1の溝部24は、中間部36及び穿刺部34に設けられるだけでなく、胴部32に設けられることも好適である。
【0133】
穿刺針14は、このように形成されてもよい。
【0134】
(第3変形例)
第2実施形態に係る穿刺具10の穿刺針14の第3変形例について
図16Cを用いて説明する。本変形例に係る穿刺針14は、第1変形例又は第2変形例の更なる変形例である。
図16Cは、
図4及び
図5に示す針部のVIII-VIII線に沿う断面図の第3変形例である。
【0135】
図16Cに示すように、第1の溝部24の一対の突出部64の突出端74は、針部22の軸心Cに沿って1つの傾斜部87として形成される。穿刺針14が弾性体Eに穿刺された場合であっても、チャンネル68が確保される。
【0136】
穿刺針14は、このように形成されてもよい。
【0137】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る穿刺具10の穿刺針14について
図17を用いて説明する。
【0138】
図17に示すように、第1の溝部24の一対の突出部64の突出端74は、胴部32の先端と穿刺部34の基端との間で、中間部36の外周面に沿って形成されていてもよい。そして、第1の溝部24の一対の突出部64の突出端74は、針部22の軸心Cに沿って1つの端縁(平行部)83として形成される。
【0139】
例えば、胴部32の第2の柱状部44の中心軸(軸心)と、穿刺部34の針先34aの軸心とが一致する。また、胴部32及び中間部36の第1の中間体36aの外径が第2の中間体36bの基端まで同一形状である場合、本実施形態に係る穿刺針14は、針部22の軸心Cが、穿刺部34の針先34aを通過し得る。
【0140】
穿刺針14は、このように形成されてもよい。
【0141】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0142】
1…穿刺具アセンブリ、8…接続具、10…穿刺具、12…接続部、14…穿刺針、22…針部、24…第1の溝部、26…第2の溝部、32…胴部、34…穿刺部、34a…針先、36…中間部、36a…第1の中間体、36b…第2の中間体、42…第1の柱状部、44…第2の柱状部、44a…傾斜部、52…経路、52a…孔部、54…経路、54a…孔部、62…底面、62a…第1の底面(平面)、62b…第2の底面(平面)、62c…第3の底面(傾斜面)、63…先端、64…突出部、65…先端、66…閉塞端、68…チャンネル(流路)、72…壁面、74…突出端、82…第1の端縁(開口縁)、84…第2の端縁(開口縁)、86…第1の傾斜部(開口縁)、88…第2の傾斜部(開口縁)、92…底面、94…突出部、94a…閉塞端、94b…端縁、95…先端、98…チャンネル、E…弾性体、Ei…内側の面、Eo…外側の面、H…穿刺孔。