(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177779
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】バルブボディ及びバルブボディの成形方法
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
F16K27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096111
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十川 康博
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA02
3H051BB01
3H051BB10
3H051CC11
3H051DD01
3H051EE02
3H051FF01
(57)【要約】
【課題】平板状の弁体を使用することが可能であり、流体の円滑な流れを達成することが可能であり、容易に製造することが可能な、バルブボディを提供する。
【解決手段】筒状体の内部にバタフライ弁体を回動可能に収容し筒状体の径方向における内側に向かって突出する弁座面が一体的に形成されてバタフライバルブを構成するバルブボディであって、弁座面は筒状体の径方向における内側に向かって突出するように成形された筒状体の周壁によって形成されており且つ環状ではなく弧状の形状を有する平面であり、筒状体の径方向における内側の弁座面の端部である稜線と筒状体の内周面とを繋ぐ面である整流面がバタフライ弁体の閉弁時における回動方向である閉弁方向において弁座面の後流側に形成されており、筒状体の周方向における弁座面の両端と筒状体の周方向における整流面の両端と筒状体の内周面とを繋ぐ面である調整面が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の内部にバタフライ弁体を回動可能に収容し前記筒状体の径方向における内側に向かって突出する弁座面が一体的に形成されてバタフライバルブを構成するバルブボディであって、
前記弁座面は、前記筒状体の径方向における内側に向かって突出するように成形された前記筒状体の周壁によって形成されており、且つ、環状ではなく弧状の形状を有する平面であり、
前記筒状体の径方向における内側の前記弁座面の端部である稜線と前記筒状体の内周面とを繋ぐ面である整流面が、前記バタフライ弁体の閉弁時における回動方向である閉弁方向において前記弁座面の後流側に形成されており、
前記筒状体の周方向における前記弁座面の両端と前記筒状体の周方向における前記整流面の両端と前記筒状体の内周面とを繋ぐ面である調整面が形成されている、
ことを特徴とする、バルブボディ。
【請求項2】
請求項1に記載されたバルブボディであって、
前記筒状体の軸を含む平面による断面において、
前記弁座面と前記弁座面に隣接する前記筒状体の内周面とが前記筒状体の径方向における内側においてなす角度である弁座角度が90度以上であり、
前記整流面と前記整流面に隣接する前記筒状体の内周面とが前記筒状体の径方向における内側においてなす角度である整流角度が前記弁座角度よりも大きい、
ことを特徴とする、バルブボディ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたバルブボディであって、
前記弁座面、前記整流面及び前記調整面が、前記バタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の前記筒状体の内周面に、第1弁座面、第1整流面及び第1調整面、並びに、第2弁座面、第2整流面及び第2調整面として、それぞれ形成されている、
ことを特徴とする、バルブボディ。
【請求項4】
請求項3に記載されたバルブボディであって、
前記第1弁座面を含む平面である第1弁座平面と前記第2弁座面を含む平面である第2弁座平面とが互いに平行であり且つ所定の距離である第1距離だけ離間しており、
前記バタフライ弁体の閉弁時に前記第1弁座面に着座する平面である第1当接面を含む平面である第1当接平面と前記バタフライ弁体の閉弁時に前記第2弁座面に着座する平面である第2当接面を含む平面である第2当接平面とが互いに平行であり且つ所定の距離である第2距離だけ離間しており、
前記第1距離は前記第2距離に等しい、
ことを特徴とする、バルブボディ。
【請求項5】
請求項1に記載されたバルブボディの成形方法であって、
前記弁座面に対応する面である第1成形面を有する第1中子を前記筒状体の一方の端部から挿入する第1工程、
前記整流面に対応する面である第2成形面及び前記調整面に対応する面である第3成形面を有する第2中子を前記筒状体の他方の端部から挿入する第2工程、並びに
前記第1中子の先端面である第1面と前記第2中子の先端面である第2面とが前記筒状体の内部において互いに当接し嵌合している状態において、前記弁座面、前記整流面及び前記調整面に対応する面である第4成形面を有する潰し型を前記第1成形面、前記第2成形面及び前記第3成形面と前記第4成形面との間に前記筒状体の周壁を挟むように前記筒状体の外側から内側に向かって押圧する第3工程、
を含み、
前記第1面及び前記第2面は、前記第3工程の終了後に、前記筒状体の前記一方の端部から前記第1中子を抜き出し、前記筒状体の前記他方の端部から前記第2中子を抜き出すことが可能であるように構成されている、
ことを特徴とする、バルブボディの成形方法。
【請求項6】
請求項5に記載されたバルブボディの成形方法であって、
前記筒状体の軸を含む平面による断面において、
前記第1中子の前記第1成形面と前記第1成形面の基端側において隣接する外周面とが前記筒状体の径方向における内側においてなす角度である第1角度が90度以上であり、
前記第2中子の前記第2成形面と前記第2成形面の基端側において隣接する外周面とが前記筒状体の径方向における内側においてなす角度である第2角度が前記第1角度よりも大きい、
ことを特徴とする、バルブボディの成形方法。
【請求項7】
請求項3に記載されたバルブボディの成形方法であって、
前記第1弁座面に対応する面である第5成形面、前記第2整流面に対応する面である第6成形面及び前記第2調整面に対応する面である第7成形面を有する第3中子を前記筒状体の一方の端部から挿入する第1工程、
前記第2弁座面に対応する面である第8成形面、前記第1整流面に対応する面である第9成形面及び前記第1調整面に対応する面である第10成形面を有する第4中子を前記筒状体の他方の端部から挿入する第2工程、並びに
前記第3中子の先端面である第3面と前記第4中子の先端面である第4面とが前記筒状体の内部において互いに当接し嵌合している状態において、前記第1弁座面、前記第2整流面及び前記第2調整面に対応する面である第11成形面を有する第1潰し型を、前記第5成形面、前記第6成形面及び前記第7成形面と前記第11成形面との間に前記筒状体の周壁を挟むように、前記筒状体の外側から内側に向かって押圧すると共に、前記第2弁座面、前記第1整流面及び前記第1調整面に対応する面である第12成形面を有する第2潰し型を、前記第8成形面、前記第9成形面及び前記第10成形面と前記第12成形面との間に前記筒状体の周壁を挟むように、前記筒状体の外側から内側に向かって押圧する第3工程、
を含み、
前記第3面及び前記第4面は、前記第3工程の終了後に、前記筒状体の前記一方の端部から前記第3中子を抜き出し、前記筒状体の前記他方の端部から前記第4中子を抜き出すことが可能であるように構成されている、
ことを特徴とする、バルブボディの成形方法。
【請求項8】
請求項7に記載されたバルブボディの成形方法であって、
前記第3中子の先端面である第3面と前記第4中子の先端面である第4面とが前記筒状体の内部において互いに当接し嵌合している状態において、
前記第3中子の前記第5成形面を含む平面である第1成形平面と前記第4中子の前記第8成形面を含む平面である第2成形平面とが互いに平行であり且つ所定の距離である第3距離だけ離間しており、
前記バタフライ弁体の閉弁時に前記第1弁座面に着座する平面である第1当接面を含む平面である第1当接平面と前記バタフライ弁体の閉弁時に前記第2弁座面に着座する平面である第2当接面を含む平面である第2当接平面とが互いに平行であり且つ所定の距離である第2距離だけ離間しており、
前記第3距離は前記第2距離に等しい、
ことを特徴とする、バルブボディの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブボディ及びバルブボディの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば内燃機関の排気管及び/または建築設備用の配管等に接続して流体の流量を制御するバタフライバブルを収納するバルブボディにおいて、例えば軽量化及び/または信頼性の向上等が求められている。そこで、当該技術分野においては、筒状の形状を有する金属製のバルブボディの周壁に、弁体が着座する弁座面(着座面)をバルブボディと一体的に形成する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1(実開平6-80840号公報)には、全周に亘って内側に向かって突出する環状のビード部4aを円筒状のバルブボディ(としての排気管4)に塑性加工によって一体的に形成し、Z字状に屈曲させたバタフライ弁体3をビード部4aの側面に当接させることにより閉弁するバタフライバルブが開示されている。この構成においては全周に亘るビード部4aの側面が弁座面となる。その結果、回動軸2を排気管4に取り付けるための座面(としての、軸受ケース6,7を固定するフラット部4d,4e)を含む回動軸2のマウント部とビード部4aとが互いに干渉する。その結果、バタフライ弁体3の弁軸(としての回動軸2)も短くなると共に回動軸2のマウント部の構成も制約を受けることとなる。
【0004】
更に、バタフライバルブとしてはバタフライ弁体3が平板状であることが強度的及び流体力学的に望ましいが、ビード部4aがある程度の幅(排気管4の軸方向における寸法)を有するので、バタフライ弁体3回動軸2の両側にそれぞれ存在する第1弁体3a及び第2弁体3bを当該幅の分だけオフセットさせる必要がある。このため、回動軸2に直交する平面によるバタフライ弁体3の断面がZ字状の形状を有する。
【0005】
一方、特許文献2(特許第4578923号公報)においては、弁体の回動軸に対する一方側の周縁部が管の内周面に設けられた第1段部に当接すると共に弁体の回動軸に対する他方側の周縁部が管の内周面に設けられた第2段部に当接することによって管が閉塞される構造が開示されている。当該構造においては、第1段部及び第2段部が上述した特許文献1におけるように全周に亘って環状に連続するのではなく、回動軸に対し互いに異なる側のみにそれぞれ形成されているので、上述した特許文献1に開示されたバタフライバルブに比べて、流路断面積の減少を抑えることができるとされている。
【0006】
しかしながら、切削加工によって管の内周面に段差を形成する工程は、上述した特許文献1におけるように塑性加工によって段差を形成する工程に比べて、例えば加工時間が長く、材料のロスも大きく、製造コストの増大が懸念される。
【0007】
即ち、当該技術分野においては、平板状の弁体を使用することが可能であり、流体の円滑な流れを達成することが可能であり、容易に製造することが可能な、バルブボディが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6-80840号公報
【特許文献2】特許第4578923号公報
【特許文献3】特許第6353791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、当該技術分野においては、平板状の弁体を使用することが可能であり、流体の円滑な流れを達成することが可能であり、容易に製造することが可能な、バルブボディが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明者は、鋭意研究の結果、バタフライバルブのバルブボディにおいて、周壁を内側に向かって突出させて弧状の弁座面を一体的に形成すると共に、弁体の閉弁時における回動方向における弁座面の後流側になだらかな整流面を形成し、筒状体の周方向における弁座面の両端と筒状体の周方向における整流面の両端とバルブボディの内周面とに囲まれた領域である調整面を設けることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0011】
具体的には、本発明に係るバルブボディ(以降、「本発明バルブボディ」と称呼される場合がある。)は、筒状体の内部にバタフライ弁体を回動可能に収容し筒状体の径方向における内側に向かって突出する弁座面が一体的に形成されてバタフライバルブを構成するバルブボディである。弁座面は、筒状体の径方向における内側に向かって突出するように成形された筒状体の周壁によって形成されており、且つ、環状ではなく弧状の形状を有する平面である。
【0012】
更に、本発明バルブボディにおいては、筒状体の径方向における内側の弁座面の端部である稜線と筒状体の内周面とを繋ぐ面である整流面が、バタフライ弁体の閉弁時における回動方向である閉弁方向において弁座面の後流側に形成されている。加えて、筒状体の周方向における弁座面の両端と筒状体の周方向における整流面の両端と筒状体の内周面とを繋ぐ面である調整面が形成されている。
【0013】
一方、本発明に係るバルブボディの成形方法(以降、「本発明成形方法」と称呼される場合がある。)は、上述した本発明バルブボディの成形方法であって、以下に列挙する第1工程乃至第3工程を含む。
【0014】
第1工程は、弁座面に対応する面である第1成形面を有する第1中子を筒状体の一方の端部から挿入する工程である。
第2工程は、整流面に対応する面である第2成形面及び調整面に対応する面である第3成形面を有する第2中子を筒状体の他方の端部から挿入する工程である。
第3工程は、第1中子の先端面である第1面と第2中子の先端面である第2面とが筒状体の内部において互いに当接し嵌合している状態において、弁座面、整流面及び調整面に対応する面である第4成形面を有する潰し型を第1成形面、第2成形面及び第3成形面と第4成形面との間に筒状体の周壁を挟むように筒状体の外側から内側に向かって押圧する工程である。
【0015】
更に、本発明成形方法においては、第1面及び第2面は、第3工程の終了後に、筒状体の一方の端部から第1中子を抜き出し、筒状体の他方の端部から第2中子を抜き出すことが可能であるように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るバルブボディにおいては、上述したように、筒状体の径方向における内側に向かって突出するように成形された筒状体の周壁によって弁座面が一体的に形成されている。斯かる弁座面は、上述した本発明成形方法のように、塑性加工によって成形することができる。従って、前述した特許文献2に開示された構造のように切削加工によって管の内周面に段差を形成する場合に比べて、例えば加工時間が短く、材料のロスも小さく、製造コストを低減することができる。
【0017】
また、本発明に係るバルブボディが備える弁座面は環状ではなく弧状の形状を有する平面である。従って、バルブボディに回動軸を取り付けるためのマウント部と弁座面とが干渉せず、前述した特許文献1に開示されたバタフライバルブのようにバタフライ弁体の回動軸を短くする必要が生じたりバルブボディに回動軸を取り付けるためのマウント部の構成に制約を受けたりすることが無い。
【0018】
更に、前述した特許文献1に開示されたバタフライバルブのようにバルブボディの全周に亘って形成され且つ所定の幅を有するビード部の側面によって弁座が構成される訳ではない。従って、必ずしもバルブボディの軸方向において所定の距離だけオフセットされた位置に存在する弁座面にバタフライ弁体が着座する必要はないので、必ずしもZ字状の断面形状を有するバタフライ弁体を使用する必要は無い。即ち、本発明バルブボディにおいては、強度的及び流体力学的に望ましい平板状のバタフライ弁体を使用することができる。
【0019】
加えて、本発明バルブボディにおいては、筒状体の径方向における内側の弁座面の端部である稜線と筒状体の内周面とを繋ぐ面である整流面が閉弁方向における弁座面の後流側に形成され、筒状体の周方向における弁座面の両端と筒状体の周方向における整流面の両端と筒状体の内周面とによって囲まれる調整面が形成されている。即ち、前述した特許文献1に開示されたバタフライバルブ及び前述した特許文献2に開示された構造とは異なり、弁座面の周辺に急峻な段差が存在しない。従って、弁座面の周辺における乱流の発生に起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題を低減することができる。
【0020】
即ち、本発明によれば、平板状の弁体を使用することが可能であり、流体の円滑な流れを達成することが可能であり、容易に製造することが可能な、バルブボディを提供することができる。
【0021】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るバルブボディ(第1バルブボディ)の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るバルブボディ(第2バルブボディ)の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】もう1つの態様に係る第2バルブボディの構成の一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係るバルブボディ(第3バルブボディ)の構成の一例を示す模式図である。
【
図5】本発明の第4実施形態に係るバルブボディ(第4バルブボディ)の構成の一例を示す模式図である。
【
図6】もう1つの態様に係る第4バルブボディの構成の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明の第5実施形態に係るバルブボディの成形方法(第5成形方法)に含まれる各工程の流れを例示するフローチャートである。
【
図8】第5成形方法に含まれる第1工程乃至第3工程の完了時における各部材の形状及び位置関係を例示する模式的な断面図である。
【
図9】本発明の第6実施形態に係るバルブボディの成形方法(第6成形方法)において使用される第1中子及び第2中子の構成の一例を示す模式図である。
【
図10】本発明の第7実施形態に係るバルブボディの成形方法(第7成形方法)に含まれる第1工程乃至第3工程の完了時における各部材の形状及び位置関係を例示する模式的な断面図である。
【
図11】第7成形方法に含まれる第3工程が完了した後に実行される工程の一例を示す模式図である。
【
図12】本発明の第8実施形態に係るバルブボディの成形方法(第8成形方法)において使用される第3中子及び第4中子の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るバルブボディ(以降、「第1バルブボディ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0024】
〈構成〉
図1は、第1バルブボディの構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図1に例示する第1バルブボディ101は、筒状体10の内部に図示しないバタフライ弁体を回動可能に収容し筒状体10の径方向における内側に向かって突出する弁座面11が一体的に形成されてバタフライバルブを構成するバルブボディである。尚、弁座面11は筒状体10の内側に形成されるが、筒状体10の内部を図示することは困難であるため、
図1においては筒状体10の外周面における弁座面11に対応する部分に符号が付されている。後述する弁座面11の稜線及び弁座面11の両端、整流面及び整流面の両端並びに調整面についても同様である。
【0025】
第1バルブボディ101を構成する筒状体10は、バタフライバルブとしての使用時に第1バルブボディ101に作用する応力、第1バルブボディ101の内部に流れる流体の圧力及び温度等、使用環境に耐え得る材料及び形状を有するものである限り特に限定されない。典型的には、第1バルブボディ101を構成する筒状体10は、例えばステンレス鋼等の鉄、銅及びアルミニウム等の金属並びにこれらの金属を含む合金等の金属によって形成された円筒状の部材である。
【0026】
弁座面11は、筒状体10の径方向における内側に向かって突出するように成形された筒状体10の周壁によって形成される。このような弁座面11は、具体的には後述するように、円筒体10の塑性加工によって形成することができる。従って、前述した特許文献2に開示された構造のように切削加工によって管の内周面に段差を形成する場合に比べて、例えば加工時間が短く、材料のロスも小さく、製造コストを低減することができる。
【0027】
また、弁座面11は、
図1に例示するように、環状ではなく弧状の形状を有する平面である。即ち、弁座面11は円筒体10の全周に亘って形成される訳ではない。従って、図示しない回動軸を第1バルブボディ101に取り付けるための図示しないマウント部と弁座面11とが干渉しないので、回動軸を短くする必要が生じたり第1バルブボディ101に回動軸を取り付けるためのマウント部の構成に制約を受けたりすることが無い。
【0028】
加えて、第1バルブボディ101においては、前述した特許文献1に開示されたバタフライバルブのようにバルブボディの全周に亘って形成され且つ所定の幅を有するビード部の側面によって弁座が構成される訳ではない。従って、回動軸を挟んだ両側に2つの弁座面11が設けられる場合においても、両方の弁座面11を含む平面が同一の平面内に存在するように、これらの弁座面11を形成することができるので、必ずしもZ字状の断面形状を有するバタフライ弁体を使用する必要は無い。即ち、本発明バルブボディにおいては、強度的及び流体力学的に望ましい平板状のバタフライ弁体を使用することができる。
【0029】
更に、第1バルブボディ101においては、筒状体10の径方向における内側の弁座面11の端部である稜線11Rと筒状体10の内周面とを繋ぐ面である整流面12が、バタフライ弁体の閉弁時における回動方向である閉弁方向において弁座面11の後流側(
図1における手前側)に形成されている。
【0030】
加えて、筒状体10の周方向における弁座面11の両端11Eと筒状体10の周方向における整流面12の両端12Eと筒状体10の内周面とを繋ぐ面である調整面13が形成されている。換言すれば、調整面13は、弁座面11の両端11Eと整流面12の両端12Eと筒状体10の内周面とに囲まれた領域であり、
図1に示す例においては略三角形の形状を有する。
【0031】
尚、
図1に例示する第1バルブボディ101においては、図示しないバタフライ弁体の回動軸を挿通するための軸穴14が筒状体10の周壁に穿設されている。しかしながら、回動軸及び/又は回動軸を回動させるための駆動機構等を第1バルブボディ101に取り付けるためのマウント部の構成は、
図1に示す例に限定されず、後述するように、例えばプレス加工等によって軸穴14の周縁部に平坦な座面が形成されていてもよく、或いは、例えばバーリング加工等によって軸穴14の周縁部が引き起こされていてもよい。
【0032】
第1バルブボディ101においては、上述したように、弁座面11の周辺に整流面12及び調整面13が形成されているので、前述した特許文献1に開示されたバタフライバルブ及び前述した特許文献2に開示された構造とは異なり、弁座面11の周辺に急峻な段差が存在しない。従って、弁座面11の周辺における乱流の発生に起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題を低減することができる。
【0033】
尚、弁座面11の稜線11Rを乗り越えて流れる流体の流れにおける乱流の発生を低減する観点からは、弁座面11の稜線11Rと筒状体10の内周面とが整流面12によって滑らかに繋がれていることが好ましい。より好ましくは、筒状体10の軸を含む平面による断面において、整流面12に変曲点が存在しない。同様に、弁座面11の両端11Eを乗り越えて流れる流体の流れにおける乱流の発生を低減する観点からは、弁座面11の両端11Eと整流面12の両端12Eと筒状体10の内周面とが調整面13によって滑らかに繋がれていることが好ましい。より好ましくは、筒状体10の軸を含む平面による断面において、調整面13に変曲点が存在しない。
【0034】
〈効果〉
以上のように、本発明の第1実施形態によれば、平板状の弁体を使用することが可能であり、流体の円滑な流れを達成することが可能であり、容易に製造することが可能な、バルブボディを提供することができる。
【0035】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第2実施形態に係るバルブボディ(以降、「第2バルブボディ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0036】
前述した特許文献1に開示されたバタフライバルブ及び前述した特許文献2に開示された構造においては、バルブボディの軸方向に対して垂直な平面として弁座面が形成されている。これらと同様に、本発明に係るバルブボディ(本発明バルブボディ)においても、バルブボディを構成する筒状体10の軸方向に対して垂直な平面として弁座面11が形成されていてもよい。
【0037】
ところで、閉弁時におけるシール性を高めるためには、筒状体10の内側に向かって弁座面11を大きく突出させて、バタフライ弁体と弁座面11とのオーバーラップ代を拡大させる必要がある。また、高温時におけるバタフライ弁体及び/又は筒状体10の熱膨張が生じた場合におけるバタフライ弁体と筒状体10の内周面との接触を回避するためには、閉弁時において弁座面に着座(当接)しているバタフライ弁体と筒状体10の内周面との間にある程度のクリアランスを確保する必要がある。斯かる観点からも、筒状体10の内側に向かって弁座面11を大きく突出させる必要がある。
【0038】
しかしながら、上記のように筒状体10の内側に向かって弁座面11を大きく突出させると、当該部分における流路断面積が小さくなると共に弁座面11に隣接する筒状体10の内周面と弁座面11の稜線11Rとの段差が大きくなる。その結果、当該部分を流れる流体の流れが乱れ、例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題が懸念される。
【0039】
当該技術分野においては、上記のような課題を解決する手段として、筒状のバルブボディの軸方向に対して傾斜するように弁座面を設けることが知られている。例えば、塑性加工によって弁座面を形成する場合は、例えば特許文献3(特許第6353791号公報)に開示されているように、筒状のバルブボディの端部の周縁をプレス加工によって折り曲げることによりバルブボディの軸方向に対して傾斜した弁座面を形成することができる。しかしながら、筒状のバルブボディの端部ではなく途中にバルブボディの軸方向に対して傾斜した弁座面を塑性加工によって形成する技術は未だ知られていない。
【0040】
また、前述したように、バルブボディの軸方向に対して垂直な弁座面を形成する場合であっても、切削加工によって弁座面を形成する工程は、塑性加工によって弁座面を形成する工程に比べて、例えば加工時間が長く、材料のロスも大きく、製造コストの増大が懸念される。況してや、バルブボディの軸方向に対して傾斜した弁座面を形成する場合においては、例えば加工制御の複雑化、加工時間の更なる長期化及び材料ロスの更なる増大等に起因する製造コストの増大がより一層懸念される。
【0041】
〈構成〉
そこで、第2バルブボディは、前述した第1バルブボディであって、筒状体の軸を含む平面による断面において以下に列挙する要件を満足することを特徴とするバルブボディである。
弁座面と弁座面に隣接する筒状体の内周面とが筒状体の径方向における内側においてなす角度である弁座角度が90度以上である。
整流面と整流面に隣接する筒状体の内周面とが筒状体の径方向における内側においてなす角度である整流角度が上記弁座角度よりも大きい。
【0042】
図2は、第2バルブボディの構成の一例を示す模式図である。
図2の(a)は、第2バルブボディ102を一方の端部側から観察した場合における模式的な正面図であり、(b)は(a)に示す直線A-A及び筒状体10の軸AXを含む平面による第2バルブボディ102の断面を側方から観察した場合における模式的な側面図であり、(c)は(a)に示す直線B-B及び筒状体10の軸AXを含む平面による第2バルブボディ102の断面を側方から観察した場合における模式的な側面図である。
【0043】
第2バルブボディ102においては、
図2の(b)に例示するように、筒状体10の軸AXを含む平面による断面において、弁座面11と弁座面11に隣接する筒状体の内周面とが筒状体10の径方向における内側においてなす角度である弁座角度θsが鈍角である(90度よりも大きい)。これにより、例えば閉弁時におけるシール性の向上及び/又は高温時におけるバタフライ弁体と筒状体10の内周面との間のクリアランスの確保等を目的として弁座面11の面積を増大させても、弁座角度θsが90度である場合に比べて、筒状体10の径方向における内側に向かう弁座面11の突出量を低減することができる。その結果、当該部分を流れる流体の流れの乱れに起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題を低減することができる。
【0044】
また、整流面12と整流面12に隣接する筒状体10の内周面とが筒状体10の径方向における内側においてなす角度である整流角度θaが弁座角度θsよりも大きい(θa>θs)。即ち、弁座面11の稜線11Rを挟んで弁座面11に隣接する部分がなだらかな斜面として形成されている。従って、当該部分が急峻な段差として形成されている場合に比べて、開弁時に弁座面11の稜線11Rを乗り越えて流れる流体における乱流の発生に起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題を低減することができる。
【0045】
尚、前述したように、筒状体10に回動軸及び/又は回動軸を回動させるための駆動機構等を取り付けるためのマウント部の構成は、第1バルブボディ101に関する説明において参照した
図1に示した例に限定されない。
図2の(c)に例示するように、例えばプレス加工等によって軸穴14の周縁部に平坦な座面14Sが形成されていてもよく、或いは、例えばバーリング加工等によって軸穴14の周縁部が引き起こされていてもよい。また、
図2の(b)及び(c)に示す例においては筒状体10の一方の端部(図面に向かって右側の端部)に他の部分よりも大きい径を有する部分である拡径部が形成されている。斯かる拡径部は、例えば内燃機関の排気管及び/または建築設備用の配管等、隣接する他の部材との接続等を目的として設けられる。但し、このような拡径部は、本発明に係るバルブボディの必須の構成要件ではない。
【0046】
ところで、上述したように、第2バルブボディにおいては、弁座面と弁座面に隣接する筒状体の内周面とが筒状体の径方向における内側においてなす角度である弁座角度が90度以上である。即ち、第2バルブボディは、90度であることを排除するものではない。
図3は、もう1つの態様に係る第2バルブボディの構成の一例を示す模式図である。より詳しくは、
図3は、
図2の(b)と同様に、筒状体10の軸AXを含み且つ筒状体10の周方向における整流面12の中央を通る平面による第2バルブボディ102’の断面を側方から観察した場合における模式的な側面図である。
【0047】
図3に例示するように、第2バルブボディ102’においては、筒状体10の軸AXを含む平面による断面において、弁座面11と弁座面11に隣接する筒状体の内周面とが筒状体10の径方向における内側においてなす角度である弁座角度θsが直角である(90度に等しい)。弁座面11の突出量を増大させても当該部分を流れる流体の流れの乱れに起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題が許容範囲内に留まる場合は、このように弁座角度θsが90度であってもよい。
【0048】
尚、
図3に例示する第2バルブボディ102’においても、
図2の(b)に例示した第2バルブボディ102と同様に、整流角度θaが弁座角度θsよりも大きい(θa>θs)。即ち、弁座面11の稜線11Rを挟んで弁座面11に隣接する部分がなだらかな斜面として形成されている。従って、当該部分が急峻な段差として形成されている場合に比べて、開弁時に弁座面11の稜線11Rを乗り越えて流れる流体における乱流の発生に起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題を低減することができる。
【0049】
〈効果〉
以上のように、本発明の第2実施形態においては、弁座角度が90度以上であり、整流角度が弁座角度よりも大きい。その結果、本発明の第2実施形態によれば、前述した第1実施形態によって達成される効果に加えて、開弁時に弁座面および整流面を乗り越えて流れる流体における乱流の発生に起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題をより確実に低減して、流体の円滑な流れを達成するという効果を更に高めることができる。
【0050】
《第3実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第3実施形態に係るバルブボディ(以降、「第3バルブボディ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0051】
バタフライ弁の閉弁時には、バタフライ弁体の弁座面に当接する面(以降、「当接面」と称呼される場合がある。)と弁座面とが接触してバタフライ弁体の回動が停止することにより筒状体の内部に流れる流体の流量が最小となる。閉弁時における流体の流量は閉弁時におけるバタフライ弁体の外縁部と筒状体の内周面との間隔(隙間)に影響されるので、閉弁時における流体の流量が所望の値となる角度にてバタフライ弁体の回動が停止するように弁座面を設ける必要がある。
【0052】
上記目的を達成するためには、バタフライ弁体の回動軸を挟んだ片側の筒状体の内周面に1つの弁座面が形成されていれば足りる。しかしながら、閉弁時におけるシール性を高める観点からは、バタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の筒状体の内周面に弁座面がそれぞれ形成されていることが好ましい。
【0053】
〈構成〉
そこで、第3バルブボディは、前述した第1バルブボディ又は第2バルブボディであって、弁座面、整流面及び調整面が、バタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の筒状体の内周面に、第1弁座面、第1整流面及び第1調整面、並びに、第2弁座面、第2整流面及び第2調整面として、それぞれ形成されていることを特徴とするバルブボディである。
【0054】
前述した第2バルブボディ102及び第2バルブボディ102’は、
図2及び
図3にそれぞれ例示したように、弁座面11、整流面12及び調整面13が、図示しないバタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の筒状体10の内周面に、それぞれ形成されている。即ち、前述した第2バルブボディ102及び第2バルブボディ102’は、第3バルブボディとしての要件をも満たすバルブボディである。
【0055】
尚、第2バルブボディ102及び第2バルブボディ102’においては2つの弁座面11の弁座角度θsが等しく、2つの弁座面11を含む平面が互いに平行である。しかしながら、2つの弁座面11(を含む平面)は必ずしも両者が互いに平行である必要は無く、2つの弁座面11の弁座角度θsが互いに異なっていてもよい。
【0056】
図4は、2つの弁座面11の弁座角度θsが互いに異なる第3バルブボディの構成の一例を示す模式図である。より詳しくは、
図4は、
図2の(b)及び
図3と同様に、筒状体10の軸AXを含み且つ筒状体10の周方向における整流面12の中央を通る平面による第3バルブボディ103の断面を側方から観察した場合における模式的な側面図である。
図4に例示するように、第3バルブボディ103においては、弁座面11、整流面12及び調整面13が、バタフライ弁体20の回動軸21を挟んだ両側の筒状体10の内周面に、それぞれ形成されている。
【0057】
また、第3バルブボディ103が内部に収容するバタフライ弁体20を構成する板状部材(ディスク)は
図4に例示するように、回動軸21の近傍において屈曲しており、ディスクの回動軸21の一方の側の部分が他方の側の部分に対して傾斜している。このようなバタフライ弁体20に合わせて、第3バルブボディ103においては、図面に向かって上側の弁座面11を第1弁座面とし、図面に向かって下側の弁座面11を第2弁座面とすると、第1弁座面の弁座角度と第2弁座面の弁座角度とが異なる。即ち、これら2つの弁座面(を含む平面)が互いに平行ではない。第3バルブボディは、このような構成を排除するものではない。
【0058】
〈効果〉
以上のように、本発明の第3実施形態においては、バタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の筒状体の内周面に、弁座面、整流面及び調整面の組が、それぞれ形成されている。その結果、本発明の第3実施形態によれば、前述した第1実施形態又は第2実施形態によって達成される効果に加えて、閉弁時におけるシール性を高めることができる。
【0059】
《第4実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第4実施形態に係るバルブボディ(以降、「第4バルブボディ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0060】
図4に例示した第3バルブボディ103においては、バタフライ弁体20を構成する板状部材(ディスク)が回動軸21の近傍において屈曲しており、ディスクの回動軸21の一方の側の部分が他方の側の部分に対して傾斜している。このようにディスクの回動軸21の一方の側の部分が他方の側の部分に対して傾斜している場合、傾斜角度が大きくなるほど、第3バルブボディ103の内部(即ち、筒状体10の内部)における流体の流れ方向への垂直投影図におけるバタフライ弁体20の投影面積が大きくなる。このため、当該部分における流路断面積が小さくなるので、例えば背圧の上昇等の問題が懸念される。
【0061】
バタフライ弁における流体の最大流量を出来る限り大きく確保するためには、流体の流れ方向への垂直投影図において、全開時におけるバタフライ弁体の投影面積が出来る限り小さいことが好ましい。斯かる観点からは、バタフライ弁体の第1弁座面に当接する面である第1当接面と第2弁座面に当接する面である第2当接面とが互いに平行であることが好ましい。この場合、当然のことながら、バルブボディに形成される第1弁座面及び第2弁座面は、このような構成を有するバタフライ弁体に適合するように構成される。
【0062】
〈構成〉
即ち、第4バルブボディは、前述した第3バルブボディであって、以下に列挙する要件A乃至要件Cを満足することを特徴とするバルブボディである。
要件Aは、第1弁座面を含む平面である第1弁座平面と第2弁座面を含む平面である第2弁座平面とが互いに平行であり且つ所定の距離である第1距離だけ離間していることである。
要件Bは、バタフライ弁体の閉弁時に第1弁座面に着座する平面である第1当接面を含む平面である第1当接平面とバタフライ弁体の閉弁時に第2弁座面に着座する平面である第2当接面を含む平面である第2当接平面とが互いに平行であり且つ所定の距離である第2距離だけ離間していることである。
要件Cは、第1距離が第2距離に等しいことである。
【0063】
図5は、第4バルブボディの構成の一例を示す模式図である。より詳しくは、
図5は、
図2の(b)、
図3及び
図4と同様に、筒状体10の軸AXを含み且つ筒状体10の周方向における整流面12の中央を通る平面による第4バルブボディ104の断面を側方から観察した場合における模式的な側面図である。但し、
図5においては、描画スペースの都合上、筒状体10の軸AXは省略されている。また、閉弁時におけるバタフライ弁体20が実線によって、全開時におけるバタフライ弁体20が破線によって、それぞれ描かれている。
【0064】
図5に例示するように、第4バルブボディ104においては、第1弁座面11aを含む平面である第1弁座平面PS1と第2弁座面11bを含む平面である第2弁座平面PS2とが互いに平行であり且つ所定の距離である第1距離D1だけ離間している。また、バタフライ弁体20の閉弁時に第1弁座面11aに着座する平面である第1当接面22aを含む平面である第1当接平面PC1とバタフライ弁体20の閉弁時に第2弁座面11bに着座する平面である第2当接面22bを含む平面である第2当接平面PC2とが互いに平行であり且つ所定の距離である第2距離D2だけ離間している。更に、第1距離D1は第2距離D2に等しい(D1=D2)。
【0065】
即ち、第4バルブボディ104における第1弁座平面PS1と第2弁座平面PS2との間の距離である第1距離D1は、バタフライ弁体20における第1当接平面PC1と第2当接平面PC2との間の距離である第2距離D2に合わせて設定される。
図5に例示するように、第4バルブボディ104に収容されるバタフライ弁体20においては、回動軸21に直交する平面による断面がZ字状の形状を有する。この場合、バタフライ弁体20を構成する板状部材(ディスク)の第1当接面22aを含む側の部分の厚さ、第2当接面22bを含む側の部分の厚さ、回動軸21にディスクを固定する屈曲部の第1当接面22a及び第2当接面22bに垂直な方向における大きさの合計が第2距離D2となる。また、第1距離D1は、このようにして定まる第2距離D2に一致するように設定される。
【0066】
ところで、本明細書の冒頭において述べたように、バタフライバルブとしてはバタフライ弁体が平板状であることが強度的及び流体力学的に望ましい。
図6は、もう1つの態様に係る第4バルブボディの構成の一例を示す模式図である。より詳しくは、
図6は、
図2の(b)及び
図3乃至
図5と同様に、筒状体10の軸AXを含み且つ筒状体10の周方向における整流面12の中央を通る平面による第4バルブボディ104’の断面を側方から観察した場合における模式的な側面図である。但し、
図6においても、
図5と同様に、描画スペースの都合上、筒状体10の軸AXは省略されている。また、閉弁時におけるバタフライ弁体20が実線によって、全開時におけるバタフライ弁体20が破線によって、それぞれ描かれている。
【0067】
図6に例示するように、第4バルブボディ104’においては、上述した第4バルブボディ104が満足すべき要件が満たされると共に、平板状のバタフライ弁体20が収容されている。この場合、バタフライ弁体20を構成する板状部材(ディスク)の厚さが第2距離D2となり、このようにして定まる第2距離D2に一致するように第1距離D1が設定される。
【0068】
上記の結果、閉弁時には、
図5及び
図6において実線によって描かれているように、バタフライ弁体20の第1当接面22aが第1弁座面11aに着座すると同時にバタフライ弁体20の第2当接面22bが第2弁座面11bに着座することができる。一方、全開時には、
図5及び
図6において破線によって描かれているように、筒状体10の内部における流体の流れ方向への垂直投影図におけるバタフライ弁体20の投影面積を出来るだけ小さくして当該部分における流路断面積を出来るだけ大きく確保することができる。
【0069】
但し、実際には、第1距離D1と第2距離D2とが厳密には一致しない場合がある。例えば、閉弁時における第1弁座面11aと第1当接面22aとの間の僅かな隙間及び第2弁座面11bと第2当接面22bとの間の僅かな隙間が生ずる場合、これらの隙間に応じた分だけ第1距離D1の方が第2距離D2よりも僅かに大きくなる(D1>D2)。
【0070】
〈効果〉
以上のように、本発明の第4実施形態においては、バルブボディの互いに平行な第1弁座平面と第2弁座平面との間の距離(第1距離)とバタフライ弁体の互いに平行な第1当接平面と第2当接平面との間の距離(第2距離)が等しい。これにより、閉弁時には第1弁座面及び第2弁座面にバタフライ弁体を同時に着座させることができる。一方、全開時には、バルブボディの内部における流体の流れ方向への垂直投影図におけるバタフライ弁体の投影面積を出来るだけ小さくして当該部分における流路断面積を出来るだけ大きく確保することができる。その結果、本発明の第4実施形態によれば、前述した第1実施形態乃至第3実施形態によって達成される効果に加えて、例えば背圧の上昇等の問題を低減することができる。
【0071】
《第5実施形態》
本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、これまで説明してきたようなバルブボディのみならず、当該バルブボディの成形方法にも関する。以下、図面を参照しながら、本発明の第5実施形態に係るバルブボディの成形方法(以降、「第5成形方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0072】
図7は、第5成形方法に含まれる各工程の流れを例示するフローチャートである。また、
図8は、第5成形方法に含まれる第1工程乃至第3工程の完了時における各部材の形状及び位置関係を例示する模式的な断面図である。尚、
図8においては、筒状体10の軸AXよりも図面に向かって左側の部分のみが描かれている。更に、以下の説明においては、本実施形態についての理解を容易なものとすることを目的として、図示しない部分についても括弧書きにて符号を付す。
【0073】
〈構成〉
第5成形方法は、前述した第1バルブボディを始めとする本発明に係るバルブボディ(本発明バルブボディ)の成形方法であって、後述する第1工程乃至第3工程を含む。
【0074】
先ず、ステップS10において、
図8の(a)に例示するように、弁座面11に対応する面である第1成形面31aを有する第1中子31を筒状体10の一方の端部から挿入する工程である第1工程が実行される(白抜きの矢印を参照)。次に、ステップS20において、
図8の(b)に例示するように、整流面12に対応する面である第2成形面32b及び図示しない調整面(13)に対応する面である第3成形面(32c)を有する第2中子32を筒状体10の他方の端部から挿入する工程である第2工程が実行される(斜線によるハッチングが施された矢印を参照)。
【0075】
尚、
図7及び
図8に示した例においては、第1工程(ステップS10)において筒状体10の
図8に向かって上側の端部から第1中子31を挿入し、次の第2工程(ステップS20)において筒状体10の
図8に向かって下側の端部から第2中子32を挿入した。しかしながら、これとは逆に、第1工程(ステップS10)において筒状体10の
図8に向かって下側の端部から第1中子31を挿入し、次の第2工程(ステップS20)において筒状体10の
図8に向かって上側の端部から第2中子32を挿入してもよい。また、第1工程(ステップS10)を実行する前に第2工程(ステップS20)を実行してもよい。更には、第1工程(ステップS10)と第2工程(ステップS20)とを同時に実行してもよい。
【0076】
次に、ステップS30において、
図8の(c)に例示するように、第1中子31の先端面である第1面31tと第2中子32の先端面である第2面32tとが筒状体10の内部において互いに当接し嵌合している状態において、筒状体10の外側から内側に向かって潰し型40によって押圧する工程である第3工程が実行される(黒塗りの矢印を参照)。潰し型40は、弁座面11、整流面12及び図示しない調整面(13)に対応する面である第4成形面40aを有する。そして、第1中子31及び第2中子32並びに潰し型40は、第1成形面31a、第2成形面32b及び図示しない第3成形面(32c)と第4成形面40aとの間に筒状体10の周壁が挟まれるように配置される。
【0077】
上記により、本発明の第1実施形態に係るバルブボディ(第1バルブボディ)に関する説明において述べたように、弁座面11、整流面12及び調整面13が筒状体10の径方向における内側に向かって突出するように成形された筒状体10の周壁によって形成される。尚、
図1に例示したように、弁座面11は環状ではなく弧状の形状を有する平面であり、整流面12は筒状体10の径方向における内側の弁座面11の端部である稜線11Rと筒状体10の内周面とを繋ぐ面であり、調整面13は筒状体10の周方向における弁座面11の両端11Eと筒状体10の周方向における整流面の両端と筒状体の内周面とを繋ぐ面である。
【0078】
上記のようにして所期の弁座面11、整流面12及び調整面13が筒状体10の径方向における内側に向かって突出するように成形された筒状体10の周壁によって形成されると、筒状体10から潰し型40が離隔されると共に第1中子31及び第2中子32が筒状体の端部から引き抜かれ、本発明バルブボディの製造が終了する。
【0079】
従って、第5成形方法においては、第1面31t及び第2面32tは、ステップS30において実行される第3工程の終了後に、筒状体10の一方の端部から第1中子31を抜き出し、筒状体10の他方の端部から第2中子32を抜き出すことが可能であるように構成されている。具体的には、第1中子31及び第2中子32は、例えば、第3工程の終了後の筒状体10の内部空間の形状を弁座面11の稜線11Rに対応する線を含む面によって筒状体10の軸AXの方向において2つに分割することによって得られるような形状を有するように構成される。即ち、第1面31t及び第2面32tは、弁座面11の稜線11Rに対応する線を含む面であって、第3工程の終了後の筒状体10の内部空間を2つに分割して筒状体10の軸AXの方向に離間させることが可能な面である。
【0080】
尚、第5成形方法において第1中子31及び第2中子32を筒状体10に挿入したり筒状体10から抜き取ったり潰し型40によって筒状体10に向かって押圧したり筒状体10から離隔させたりするための駆動機構は、例えば筒状体10を構成する材料の性質(例えば、機械的強度及び硬度等)及び筒状体10の周壁の厚さ並びに形成しようとする弁座面11、整流面12及び調整面13の形状及び大きさ等に応じて、当該技術分野において周知の種々の駆動機構の中から適宜選択することができる。典型的には、例えば油圧式プレス機等のプレス機が駆動機構として採用される。
【0081】
ところで、第1バルブボディ及び第2バルブボディに関する説明において述べたように、回動軸及び/又は回動軸を回動させるための駆動機構等を本発明バルブボディに取り付けるためのマウント部において、例えばプレス加工等によって軸穴の周縁部に平坦な座面が形成されていてもよく、或いは、例えばバーリング加工等によって軸穴の周縁部が引き起こされていてもよい。このようなマウント部の加工は、第5成形方法よりも前に実行してもよく、或いは、第5成形方法よりも後に実行してもよい。
【0082】
〈効果〉
以上のように、本発明の第5実施形態においては、第1中子及び第2中子並びに潰し型を用いる筒状体の塑性加工により所期の弁座面、整流面及び調整面がバルブボディと一体的に形成される。従って、前述した従来技術におけるように切削加工によって同様の構造を形成する場合に比べて、例えば加工時間が短く、材料のロスも小さく、製造コストを低減することができる。即ち、本発明の第5実施形態によれば、平板状の弁体を使用することが可能であり且つ流体の円滑な流れを達成することが可能なバルブボディを容易に製造することができる。また、本発明の第5実施形態においては、第1中子及び第2中子と潰し型とによって被成形部の位置及び形状が一義的に規定されることから、正確な位置、形状及び角度を有する弁座面等を形成することができる。従って、本発明の第5実施形態に係るバルブボディの成形方法(第5成形方法)は、例えば、正確な相対的な位置、形状及び相互の平行度等を有する複数の弁座面を形成しようとする場合に特に有用である。
【0083】
《第6実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第6実施形態に係るバルブボディの成形方法(以降、「第6成形方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0084】
第2バルブボディに関する説明において述べたように、本発明の第2実施形態においては、弁座角度が90度以上であり、整流角度が弁座角度よりも大きい。その結果、本発明の第2実施形態によれば、前述した第1実施形態によって達成される効果に加えて、開弁時に弁座面および整流面を乗り越えて流れる流体における乱流の発生に起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題をより確実に低減して、流体の円滑な流れを達成するという効果を更に高めることができる。第6成形方法は、このような構成を有し且つ効果を達成することができる第2バルブボディの成形方法である。
【0085】
〈構成〉
即ち、第6成形方法は、前述した第5成形方法であって、筒状体の軸を含む平面による断面において以下に列挙する要件を満足することを特徴とするバルブボディの成形方法である。
第1中子の第1成形面と第1成形面の基端側において隣接する外周面とが筒状体の径方向における内側においてなす角度である第1角度が90度以上である。
第2中子の第2成形面と第2成形面の基端側において隣接する外周面とが筒状体の径方向における内側においてなす角度である第2角度が第1角度よりも大きい。
【0086】
図9は、第6成形方法において使用される第1中子及び第2中子の構成の一例を示す模式図であり、第5成形方法に関する説明において参照した
図8の(b)に対応する図である。より詳しくは、
図9は、第5成形方法に関する説明において述べたように第1中子31の先端面である第1面31tと第2中子32の先端面である第2面32tとが筒状体10の内部において互いに当接し嵌合している状態において隣接する第1中子の第1成形面31a及び第2中子の第2成形面32aの近傍の拡大断面図である。
【0087】
図9に例示するように、第6成形方法において使用される第1中子31においては、弁座面11に対応する面である第1成形面31aと第1成形面31aの基端側(図面に向かって上側)において隣接する外周面とが筒状体10の径方向における内側(図面に向かって右側)においてなす角度である第1角度θ1が90度以上である。また、第6成形方法において使用される第2中子32においては、整流面12に対応する面である第2成形面32bと第2成形面32bの基端側において隣接する外周面とが筒状体10の径方向における内側においてなす角度である第2角度θ2が第1角度θ1よりも大きい(θ1<θ2)。
【0088】
図示しないが、第5成形方法に関する説明において述べたように、第3工程においては、成形しようする弁座面、整流面及び調整面に対応する面である第4成形面を有する潰し型(図示せず)並びに第1中子31及び第2中子32は、第1成形面31a、第2成形面32b及び図示しない第3成形面と図示しない第4成形面との間に筒状体10の周壁が挟まれるように配置される。即ち、潰し型が有する第4成形面は、
図9に例示した第1成形面31a及び第2成形面32b並びに図示しない第3成形面に対応する形状となるように形成される。従って、第6成形方法によれば、弁座角度が90度以上であり且つ整流角度が弁座角度よりも大きい第2バルブボディを確実且つ容易に製造することができる。
【0089】
〈効果〉
以上のように、本発明の第6実施形態においては、第1中子の第1成形面と第1成形面の基端側において隣接する外周面とが筒状体の径方向における内側においてなす角度である第1角度が90度以上である。また、第2中子の第2成形面と第2成形面の基端側において隣接する外周面とが筒状体の径方向における内側においてなす角度である第2角度が第1角度よりも大きい。その結果、本発明の第6実施形態によれば、前述した第5実施形態によって達成される効果に加えて、開弁時に弁座面および整流面を乗り越えて流れる流体における乱流の発生に起因する例えば背圧の上昇及び/又は異音の発生等の問題をより確実に低減して、流体の円滑な流れを達成するという効果を更に高めることができる。
【0090】
《第7実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第7実施形態に係るバルブボディの成形方法(以降、「第7成形方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0091】
第3バルブボディに関する説明において述べたように、閉弁時におけるシール性を高める観点からは、バタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の筒状体の内周面に弁座面がそれぞれ形成されていることが好ましい。第7成形方法は、このような構成を有し且つこのような効果を達成することができる第3バルブボディの成形方法である。
【0092】
第7成形方法は、バタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の筒状体の内周面に弁座面がそれぞれ形成されるように中子及び潰し型が構成されている点を除き、
図7のフローチャートを参照しながら説明した第5成形方法と同様の構成を有する。従って、第7成形方法に含まれる各工程の流れ自体は、
図7に例示したフローチャートと同様であるので、第7成形方法に含まれる各工程の流れについては、
図7のフローチャートを参照しながら説明した第5成形方法を参照されたい。
【0093】
一方、第7成形方法によって筒状態10から第3バルブボディが成形される過程における各部材の形状及び位置関係の変化については
図10を参照されたい。
図10は、第7成形方法に含まれる第1工程乃至第3工程の完了時における各部材の形状及び位置関係を例示する模式的な断面図である。以下、
図7及び
図10を参照しながら、第4成形方法について説明する。尚、以下の説明においては、本実施形態についての理解を容易なものとすることを目的として、図示しない部分についても括弧書きにて符号を付す。
【0094】
〈構成〉
第7成形方法は、前述した第3バルブボディの成形方法であって、
図7に例示するように、以下に列挙する第1工程乃至第3工程を含む。
【0095】
先ず、ステップS10において、
図10の(a)に例示するように、第1弁座面11aに対応する面である第5成形面33a、第2整流面12bに対応する面である第6成形面33b及び図示しない第2調整面(13b)に対応する面である第7成形面(33c)を有する第3中子33を筒状体10の一方の端部から挿入する工程である第1工程が実行される(白抜きの矢印を参照)。次に、ステップS20において、
図10の(b)に例示するように、第2弁座面11bに対応する面である第8成形面34a、第1整流面11bに対応する面である第9成形面34b及び図示しない第1調整面(13a)に対応する面である第10成形面(34c)を有する第4中子34を筒状体10の他方の端部から挿入する工程である第2工程が実行される(斜線によるハッチングが施された矢印を参照)。
【0096】
尚、
図7及び
図10に示した例においては、第1工程(ステップS10)において筒状体10の
図10に向かって上側の端部から第3中子33を挿入し、次の第2工程(ステップS20)において筒状体10の
図10に向かって下側の端部から第4中子33を挿入した。しかしながら、これとは逆に、第1工程(ステップS10)において筒状体10の
図10に向かって下側の端部から第3中子33を挿入し、次の第2工程(ステップS20)において筒状体10の
図10に向かって上側の端部から第4中子34を挿入してもよい。また、第1工程(ステップS10)を実行する前に第2工程(ステップS20)を実行してもよい。更には、第1工程(ステップS10)と第2工程(ステップS20)とを同時に実行してもよい。
【0097】
次に、ステップS30において、
図10の(c)に例示するように、第3中子33の先端面である第3面33tと第4中子34の先端面である第4面34tとが筒状体10の内部において互いに当接し嵌合している状態において、筒状体10の外側から内側に向かって第1潰し型41及び第2潰し型42によって押圧する工程である第3工程が実行される(黒塗りの矢印を参照)。
【0098】
第1潰し型41は、第1弁座面11a、第1整流面12a及び図示しない第1調整面(13a)に対応する面である第11成形面41aを有する。そして、第3中子33及び第4中子34並びに第1潰し型41は、第5成形面33a、第9成形面34b及び図示しない第10成形面(34c)と第11成形面41aとの間に筒状体10の周壁を挟むように配置される。
【0099】
一方、第2潰し型42は、第2弁座面11b、第2整流面12b及び図示しない第2調整面(13b)に対応する面である第12成形面42aを有する。そして、第3中子33及び第4中子34並びに第1潰し型41は、第8成形面34a、第6成形面33b及び図示しない第7成形面(33c)と第12成形面42aとの間に筒状体10の周壁を挟むように配置される。
【0100】
上記により、本発明の第3実施形態に係るバルブボディ(第3バルブボディ)に関する説明において述べたように、弁座面11、整流面12及び調整面13が、バタフライ弁体20の回動軸21を挟んだ両側の筒状体10の内周面に、第1弁座面11a、第1整流面12a及び第1調整面13a並びに第2弁座面11b、第2整流面12b及び第2調整面13bとして、それぞれ形成される。
【0101】
図11は、上記のようにして第3工程が完了した後に実行される工程の一例を示す模式図である。上記のようにして所期の第1弁座面11a、第1整流面12a及び第1調整面13a並びに第2弁座面11b、第2整流面12b及び第2調整面13bが形成されると、
図11の(d)に例示するように、筒状体10から第1潰し型41及び第1潰し型42が離隔される(黒塗りの矢印を参照)。その後、
図11の(e)に例示するように、第3中子33及び第4中子34が筒状体10の端部から引き抜かれる(白抜きの矢印を参照)。その結果、
図11の(f)に例示するように、バタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の筒状体の内周面に所期の弁座面、整流面及び調整面が一体的に形成された第3バルブボディ103が得られる。尚、
図11の(d)に例示した工程と
図11の(e)に例示した工程とを上記とは逆の順序にて実行してもよい。或いは、
図11の(d)に例示した工程と
図11の(e)に例示した工程とを同時に実行してもよい。
【0102】
上記のように、第7成形方法においても、第3面33t及び第4面34tは、ステップS30において実行される第3工程の終了後に、筒状体10の一方の端部から第3中子33を抜き出し、筒状体10の他方の端部から第4中子34を抜き出すことが可能であるように構成されている。
【0103】
また、第1バルブボディ乃至第3バルブボディに関する説明において述べたように、回動軸及び/又は回動軸を回動させるための駆動機構等を本発明バルブボディに取り付けるためのマウント部において、例えばプレス加工等によって軸穴の周縁部に平坦な座面が形成されていてもよく、或いは、例えばバーリング加工等によって軸穴の周縁部が引き起こされていてもよい。このようなマウント部の加工は、第7成形方法よりも前に実行してもよく、或いは、第7成形方法よりも後に実行してもよい。
【0104】
〈効果〉
以上のように、本発明の第7実施形態においては、第3中子及び第4中子並びに第1潰し型及び第2潰し型を用いる筒状体の塑性加工により、バタフライ弁体の回動軸を挟んだ両側の筒状体の内周面に所期の弁座面、整流面及び調整面が一体的に形成される。従って、本発明の第7実施形態によれば、平板状の弁体を使用することが可能であり且つ流体の円滑な流れを達成することが可能なバルブボディを容易に製造すると共に、閉弁時におけるシール性を更に高めることができる。
【0105】
《第8実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第8実施形態に係るバルブボディの成形方法(以降、「第8成形方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0106】
第4バルブボディに関する説明において述べたように、バタフライ弁における流体の最大流量を出来る限り大きく確保するためには、流体の流れ方向への垂直投影図において、全開時におけるバタフライ弁体の投影面積が出来る限り小さいことが好ましい。斯かる観点からは、バタフライ弁体の第1弁座面に当接する面である第1当接面と第2弁座面に当接する面である第2当接面とが互いに平行であることが好ましい。第8成形方法は、このような構成を有し且つこのような効果を達成することができる第4バルブボディの成形方法である。
【0107】
〈構成〉
即ち、第8成形方法は、前述した第7成形方法であって、第3中子33の先端面である第3面33tと第4中子34の先端面である第4面34tとが筒状体10の内部において互いに当接し嵌合している状態において以下に列挙する要件D乃至要件Fを満足することを特徴とするバルブボディの成形方法である。尚、以下の説明において、第3中子及び第4中子に関しては
図12を参照し、バタフライ弁体に関しては
図5を参照されたい。
図12は、第8成形方法において使用される第3中子及び第4中子の構成の一例を示す模式図である。
【0108】
要件Dは、
図12に例示するように、第3中子33の第5成形面33aを含む平面である第1成形平面PF1と第4中子34の第8成形面34aを含む平面である第2成形平面PF2とが互いに平行であり且つ所定の距離である第3距離D3だけ離間していることである。上述したように、バタフライ弁における流体の最大流量を出来る限り大きく確保する観点からは、バタフライ弁体の第1弁座面に当接する面である第1当接面と第2弁座面に当接する面である第2当接面とが互いに平行であることが好ましい。従って、第4バルブボディに形成される第1弁座面及び第2弁座面は、このような構成を有するバタフライ弁体に適合するように構成される。このため、第3中子33の第5成形面33a及び第4中子34の第8成形面34aは要件Dを満足する必要がある。
【0109】
要件Dを満足する第3中子33の第5成形面33a及び第4中子34の第8成形面34aによって第4バルブボディ104に形成される第1弁座面11a及び第2弁座面11bは、第4バルブボディに関する説明において述べた要件Aを満足する。即ち、
図5に例示したように、第1弁座面11aを含む平面である第1弁座平面PS1と第2弁座面11bを含む平面である第2弁座平面PS2とが互いに平行であり且つ所定の距離である第1距離D1だけ離間している。即ち、第1成形平面PF1と第2成形平面PF2との間の距離である第3距離D3が反映されて、第1弁座平面PS1と第2弁座平面PS2との間の距離である第1距離D1は第3距離に等しくなる(D1=D3)。
【0110】
但し、実際には、第1距離D1と第3距離D3とが厳密には一致しない場合がある。例えば、前述した第3工程において第3中子33の第5成形面33aと筒状体10の内周面との間の僅かな隙間及び第4中子34の第8成形面34aと筒状体10の内周面との間の僅かな隙間が生ずる場合、これらの隙間に応じた分だけ第1距離D1の方が第3距離D3よりも僅かに大きくなる(D1>D3)。
【0111】
要件Eは、
図5に例示したように、バタフライ弁体20の閉弁時に第1弁座面11aに着座する平面である第1当接面22aを含む平面である第1当接平面PC1とバタフライ弁体20の閉弁時に第2弁座面11bに着座する平面である第2当接面22bを含む平面である第2当接平面PC2とが互いに平行であり且つ所定の距離である第2距離D2だけ離間していることである。要件Eは、第4バルブボディに関する説明において述べた用件Bと同じであるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0112】
要件Fは、第3距離D3が第2距離D2に等しいことである。上述したように、第1成形平面PF1と第2成形平面PF2との間の距離である第3距離D3が反映されて、第1弁座平面PS1と第2弁座平面PS2との間の距離である第1距離D1は第3距離に等しくなる(D1=D3)。従って、要件Fが満たされることによりバタフライ弁体20の第1当接平面PC1と第2当接平面PC2との間の距離である第2距離D2に第3距離D3が等しい場合(D2=D3)、結果として第1距離D1が第2距離に等しいこととなる(D1=D2)。
【0113】
〈効果〉
以上のように、本発明の第8実施形態においては、上述した要件D乃至要件Fを満足することにより、結果として第4バルブボディに関する説明において述べた要件A乃至要件Cを満足することとなる。即ち、本発明の第8実施形態によれば、前述した第1実施形態乃至第3実施形態によって達成される効果に加えて例えば背圧の上昇等の問題を低減することができる第4バルブボディを確実に得ることができる。
【0114】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態につき、添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。例えば、本願において例示したバルブボディの軸に直角な断面(横断面)の形状は円形であるが、バルブボディの横断面の形状は円形に限定されるものではなく、バタフライバルブとしての機能が損なわれない限り、例えば楕円形及び長円形等の異形断面であってもよい。但し、この場合は、当然のことながら、バタフライ弁体の形状もバルブボディの横断面の形状に応じたものとする必要がある。また、本願の添付図面においては隣接する配管との接続等を目的とする拡径部が端部に形成されたバルブボディを例示したが、配管そのものに弁座面等が一体的に形成されてバルブボディを構成していてもよい。
【符号の説明】
【0115】
101,102,102’,103,104,104’…バルブボディ
10…筒状体
11…弁座面
11a…第1弁座面
11b…第2弁座面
11R…稜線
11E…両端
PS1…第1弁座平面
PS2…第2弁座平面
D1…第1距離
θs…弁座角度
12…整流面
12a…第1整流面
12b…第2整流面
12E…両端
θa…整流角度
13…調整面
14…軸穴
AX…軸
14S…座面
20…バタフライ弁体
21…回動軸
22a…第1当接面
22b…第2当接面
PC1…第1当接平面
PC2…第2当接平面
D2…第2距離
31…第1中子
31a…第1成形面
31t…第1面
θ1…第1角度
32…第2中子
32b…第2成形面
32c…第3成形面
32t…第2面
θ2…第2角度
33…第3中子
33a…第5成形面
33b…第6成形面
33c…第7成形面
33t…第3面
PF1…第1成形平面
34…第4中子
34a…第8成形面
34b…第9成形面
34c…第10成形面
34t…第4面
PF2…第2成形平面
D3…第3距離
40…潰し型
40a…第4成形面
41…第1潰し型
41a…第11成形面
42…第2潰し型
42a…第12成形面