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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177807
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A61B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096149
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】馬場 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大木 佑介
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB07
4C316AB11
4C316AB16
4C316AB19
4C316FY02
4C316FY05
4C316FY09
(57)【要約】
【課題】 より良好な撮影画像を得る。
【解決手段】 眼底撮影装置は、撮影光学系を備え、眼底画像を取得する。撮影光学系は、スリット板と、スリット板に形成される開口を部分的に又は選択的に遮光するマスクと、が光軸に沿って重ねて配置されることで、スリット板とマスクとを介してスリット開口を形成するスリット形成部と、スリット形成部を回転させる駆動部であって、スリット形成部の回転方向を逆転可能な駆動部と、回転方向の正逆に応じてスリット板とマスクとの位置関係を変更することで、スリット形成部における遮光部とスリット開口との面積比を切換える切換機構と、切換機構によって変更されたスリット板とマスクとの位置関係を、スリット形成部の回転に連動して固定する固定機構と、を備える。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に照明光を照射する照射光学系と、前記照明光の眼底からの戻り光を受光する撮像素子を含む受光光学系と、を備える撮影光学系を備え、前記撮像素子からの受光信号に基づいて眼底の正面画像である眼底画像を取得する眼底撮影装置であって、
前記撮影光学系は、
眼底上における撮影領域をスリット状に形成するためのスリット開口と遮光部とを備えるスリット形成部であって、スリット板と、前記スリット板に形成される開口を部分的に又は選択的に遮光するマスクと、が光軸に沿って重ねて配置されることで、前記スリット板と前記マスクとを介して前記スリット開口を形成するスリット形成部と、
前記スリット開口の長辺が前記照明光および前記戻り光のうち少なくとも何れかの光束を横切る方向に、前記スリット形成部を回転させる駆動部であって、前記スリット形成部の回転方向を逆転可能な駆動部と、
前記回転方向の正逆に応じて前記スリット板と前記マスクとの位置関係を変更することで、前記スリット形成部における前記遮光部と前記スリット開口との面積比を切換える切換機構と、
前記切換機構によって変更された前記スリット板と前記マスクとの位置関係を、前記スリット形成部の回転に連動して固定する固定機構と、
を備えることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項2】
請求項1の眼底撮影装置において、
前記切換機構は、前記回転方向の正逆が切換った際に、前記スリット板と前記マスクとに対する前記駆動部からの動力伝達を、前記スリット板と前記マスクとの間で所定移動量分遅らせる遅延発生機構であり、
前記固定機構は、前記回転方向の正回転と逆回転とに連動して、それぞれにおける前記所定移動量分の遅延を固定する機構であることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項3】
請求項2の眼底撮影装置において、
前記遅延発生機構は、
前記スリット板と前記マスクの一方の第1回転体に設けられたピンと、
前記スリット板と前記マスクの他方の第2回転体に設けられ、前記ピンが入る連結穴と、を備え、
前記駆動部が前記第1回転体と前記第2回転体の一方の回転体を回転させることで、他方の回転体に、前記ピンと前記連結穴との連結によって前記駆動部からの動力が伝達される構成であり、
前記連結穴は、前記回転方向の正逆に伴う前記所定移動量分に対応して前記ピンが移動可能な長さを有し、
前記固定機構は、
前記第1回転体の回転中心に対して半径方向に前記ピンを移動可能に保持するピン保持部と、
前記回転方向の正逆に伴う前記所定移動量分に対応して、前記ピンが前記第2回転体の半径方向の外側に移動可能に、前記連結穴に設けられた固定用穴と、を有し、
前記第1回転体の回転に伴う遠心力によって前記ピンが前記固定用穴に移動されることで、前記スリット板と前記マスクの位置関係が固定される構成であること特徴とする眼底撮影装置。
【請求項4】
請求項3の眼底撮影装置において、
前記固定機構は、前記ピンを前記第1回転体の回転中心方向に向かわせる引っ張り力を付与する引っ張り力付与部を有し、
前記引っ張り力は前記第1回転体の回転に伴って前記ピンに作用する遠心力より小さく設定されていること特徴とする眼底撮影装置。
【請求項5】
請求項3又は4の眼底撮影装置において、
前記ピン、前記連結穴及び前記固定機構は複数組み設けられ、その重心が前記スリット板及び前記マスクの回転中心に一致していることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項6】
請求項3~5の何れかの眼底撮影装置において、
前記連結穴は、前記所定移動量分の中間位置に、前記第1回転体及び前記第2回転体の回転停止時に、前記ピンが回転中心方向に移動される窪みを有することを特徴とする眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼底の正面画像を得るための眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼底の正面画像を撮影する眼底撮影装置が、眼科分野において広く利用されている。眼底撮影装置としては、光路中に配置されるスリットを駆動することで、眼底上でスリット状の照明光を走査すると共に、眼底において照明されたスリット状の領域の像を、走査に従って2次元的な撮像面に逐次投影させることで、眼底の正面画像を得る装置が知られている。この種の眼底撮影装置においては、良好なカラー撮影と蛍光撮影等を可能にするために、スリット板とマスクとが光軸に沿って光軸に沿って重ねて配置されたスリット形成部を有し、スリット形成部の回転方向の正逆に応じてスリット板とマスクとの位置関係を変更することで、スリット形成部の遮光部とスリット開口との面積比を切換える装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022―42896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の眼底撮影装置においては、さらなる改良が望まれる。例えば、スリット形成部の回転ムラ(回転速度、加速度が不安定になる等)が生じる場合があり、この場合、スリット板とマスクとの位置関係が安定せず、回転途中で遮光部とスリット開口との面積比が変化してしまうことで、結果的に明るさが良好な撮影画像が得られないことが分かった。
【0005】
本開示は、従来技術に鑑み、より良好な撮影画像が得られる眼底撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本開示の第1態様に係る眼底撮影装置は、被検眼の眼底に照明光を照射する照射光学系と、前記照明光の眼底からの戻り光を受光する撮像素子を含む受光光学系と、を備える撮影光学系を備え、前記撮像素子からの受光信号に基づいて眼底の正面画像である眼底画像を取得する眼底撮影装置であって、前記撮影光学系は、眼底上における撮影領域をスリット状に形成するためのスリット開口と遮光部とを備えるスリット形成部であって、スリット板と、前記スリット板に形成される開口を部分的に又は選択的に遮光するマスクと、が光軸に沿って重ねて配置されることで、前記スリット板と前記マスクとを介して前記スリット開口を形成するスリット形成部と、前記スリット開口の長辺が前記照明光および前記戻り光のうち少なくとも何れかの光束を横切る方向に、前記スリット形成部を回転させる駆動部であって、前記スリット形成部の回転方向を逆転可能な駆動部と、前記回転方向の正逆に応じて前記スリット板と前記マスクとの位置関係を変更することで、前記スリット形成部における前記遮光部と前記スリット開口との面積比を切換える切換機構と、前記切換機構によって変更された前記スリット板と前記マスクとの位置関係を、前記スリット形成部の回転に連動して固定する固定機構と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】眼底撮影装置の外観構成を示した図である。
図2】撮影ユニットに収容される光学系を示した図である。
図3】眼底撮影装置の制御系を示したブロック図である。
図4】走査部として適用可能なオプティカルチョッパーを示した図である。
図5】スリット形成部の一部であるスリット板を示した図である。
図6】スリット形成部の一部であるマスクを示した図である。
図7】マスクによるピンの保持部を説明する図であり、図6におけるA―A断面の拡大図である。
図8】連結穴を説明する図であり、図5における連結穴付近の拡大図である。
図9】スリット板の回転が停止されている場合に、連結穴とピンとの位置関係を示す図である
図10】マスクと連結されたスリット板が時計回りに回転された状態を示す。
図11】マスクと連結されたスリット板が反時計回りに回転された状態を示す。
図12】連結穴及びピンを1組とした場合の固定機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[概要]
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0009】
例えば、眼底撮影装置(例えば、撮影装置1)は、撮影光学系(例えば、撮影光学系10)を備える。例えば、撮影光学系は、照射光学系(例えば、照射光学系10a)と、受光光学系(例えば、受光光学系10b)と、備える。例えば、撮影光学系は、スリット形成部(例えば、スリット形成部15a,15b)と、駆動部(例えば、駆動部15c)と、切換機構(例えば、切換機構155)と、固定機構(例えば、固定機構157)と、を備える。
【0010】
<照射光学系、受光光学系>
例えば、照射光学系は、被検眼の眼底に照明光を照射する。例えば、受光光学系は、少なくとも撮像素子を有する。また、例えば、受光光学系は、照明光の眼底からの戻り光を、撮像素子によって受光する。例えば、眼底撮影装置は、撮像素子からの受光信号に基づいて眼底の正面画像である眼底画像を取得する。
【0011】
例えば、撮像素子は、照明領域からの戻り光を受光する。本実施形態では、照明光に対する眼底反射光、および、眼底からの蛍光、を、まとめて「戻り光」と称する。本実施形態において、撮像素子は、眼底共役位置に配置された2次元受光素子であってもよい。
【0012】
<スリット形成部>
例えば、スリット形成部は、眼底上における撮影領域をスリット状に形成するためのスリット開口(例えば、スリット開口163、165)と遮光部(例えば、遮光部182)とを備える。例えば、スリット形成部は、スリット板(例えば、スリット板160)と、スリット板に形成される開口を部分的に又は選択的に遮光するマスク(例えば、マスク180)と、が光軸に沿って重ねて配置されることで、スリット板とマスクとを介してスリット開口を形成する。例えば、スリット形成部は、オプティカルチョッパー(例えば、オプティカルチョッパー150)で構成されていてもよい。
【0013】
例えば、スリット板は、開口の幅が狭い第1スリット開口(例えば、スリット開口165)と、第1スリット開口より開口の幅が広い第2スリット開口(例えば、スリット開口163)と、の2種類のスリット開口を有していてもよい。この場合、マスクは第1スリット開口と第2スリット開口の何れか一方を選択的に遮光し、他方を露出させるスリット開口(例えば、スリット開口183)を有していてもよい。例えば、開口の幅が狭い第1スリット開口は、通常のカラー撮影モードで使用され、開口の幅が広い第2スリット開口は、蛍光撮影モードで使用される。
【0014】
また、例えば、スリット板は1種類のスリット開口を有し、このスリット開口の幅をマスクが部分的に遮光する構成であってもよい。
【0015】
<駆動部>
例えば、駆動部は、スリット開口の長辺が照明光および戻り光のうち少なくとも何れかの光束を横切る方向に、スリット形成部を回転させる。例えば、駆動部は、スリット形成部の回転方向を逆転可能にされている。
【0016】
<切換機構>
例えば、切換機構は、スリット形成部の回転方向の正逆に応じてスリット板とマスクとの位置関係を変更することで、スリット形成部における遮光部とスリット開口との面積比を切換える。例えば、切換機構は、スリット形成部における遮光部とスリット開口との面積比を、メカニカルに切換える。
【0017】
例えば、切換機構は、遅延発生機構(言い換えれば、偏位発生機構)であってもよい。この場合、例えば、遅延発生機構は、スリット形成部の回転方向の正逆が切換った際に、スリット板とマスクとに対する駆動部からの動力伝達を、スリット板とマスクとの間で所定移動量分遅らせてもよい。例えば、スリット形成部が正方向に回転された場合、スリット板とマスクとの一方に対して他方が所定移動量分だけ逆方向にズレて配置される。一方、スリット形成部が逆方向に回転された場合、スリット板とマスクとの一方に対して他方が所定移動量だけ正方向にズレて配置される。この遅延発生機構により、切換えのための余分なアクチュエータが不要であり、スリット形成部を回転させる駆動部を利用することで、光軸に沿って重ねて配置されたスリット板とマスクとの位置関係が切換るだけという簡単な構成で、スリット開口と遮光部との面積比を切換できる。
【0018】
例えば、遅延発生機構は、スリット板とマスクの一方の第1回転体に設けられたピン(例えば、ピン187)と、スリット板とマスクの他方の第2回転体に設けられ、ピンが入る連結穴(例えば、連結穴167)と、を備える構成であってもよい。この場合、例えば、その連結穴は、スリット形成部の回転方向の正逆に伴う所定移動量分に対応してピンが移動可能な長さを有していてもよい。例えば、ピンが移動可能な連結穴の長さは、回転体の周方向の長さとされる。そして、遅延発生機構は、駆動部が第1回転体と第2回転体の一方の回転体を回転させることで、他方の回転体に、ピンと連結穴との連結によって駆動部からの動力が伝達される構成であってもよい。
【0019】
なお、遅延発生機構は、駆動部からの動力伝達を、スリット板とマスクとの間で所定移動量分だけ偏位させるための偏位発生機構と言い換えることができる。
【0020】
<固定機構>
例えば、固定機構は、切換機構によって変更されたスリット板とマスクとの位置関係を、スリット形成部の回転に連動して固定する。これにより、スリット形成部の回転時に、回転ムラ(回転速度、加速度が不安定になる等)が生じた場合であっても、その回転途中でスリット開口の面積が変化することなく、明るさが良好な撮影画像が得られる。例えば、固定機構は、スリット板とマスクとの位置関係の固定を、スリット形成部の回転方向の正逆の回転に連動して固定することでもよい。
【0021】
例えば、切換機構が遅延発生機構であり、スリット板とマスクの一方の第1回転体がピンを有し、他方の第2回転体が、ピンが入る連結穴を有する構成の場合、固定機構は、ピンを移動可能に保持するピン保持部(例えば、保持部190)と、連結穴に設けられた固定用穴(例えば、固定用穴168)と、を有し、第1回転体の回転に伴う遠心力を利用する構成であってもよい。例えば、ピン保持部は、第1回転体の回転中心に対して半径方向にピンを移動可能に保持する。例えば、固定用穴は、スリット形成部の回転方向の正逆に伴う所定移動量分に対応して、ピン保持部に保持されたピンが半径方向の外側に移動可能に形成されている。例えば、固定用穴は、ピンがその固定用穴に入った場合、ピンに対する第2回転体の正逆の回転が共に固定される形状であればよい。そして、この場合の固定機構は、第1回転体の回転に伴う遠心力によってピンが固定用穴に移動されることで、スリット板とマスクの位置関係が固定される構成であってもよい。
【0022】
なお、例えば、固定用穴は、スリット形成部が正方向に回転された場合に、所定移動量分に対応してピンが半径方向の外側に移動される第1固定用穴と、スリット形成部が逆方向に回転された場合に、所定移動量分に対応してピンが半径方向の外側に移動される第2固定用穴と、を有していてもよい。また、例えば、固定用穴は、遠心力によってピンがその固定用穴に入った場合に、連結穴を有する第2回転体が回転方向に対して逆方向に回転することを阻止する引っ掛かりがあるとよい。
【0023】
例えば、固定機構は、上記のピン保持部を有する場合、さらに、ピンを第1回転体の回転中心方向に向かわせる引っ張り力を付与する引っ張り力付与部(例えば、バネ189)を備えていてもよい。この場合、引っ張り力は第1回転体の回転に伴ってピンに作用する遠心力より小さく設定されているとよい。これにより、回転停止時に、ピンが固定用穴から離れて連結穴の中心側に、より確実に位置するようになり、切換えをスムーズに行える。
【0024】
なお、引っ張り力付与の機構が設けられていない場合、例えば、ピンに掛る重力によって、回転体の停止時に固定用穴からピンが外れる構成であってもよい。この場合、例えば、ピンが回転体の回転中心に対して鉛直方向の上に位置した状態で回転体の回転を止めることで、連結穴が下方に位置し、ピンは重力の作用によって固定用穴から外れて連結穴に移動される。
【0025】
例えば、ピンが入る連結穴と、ピンが移動される固定用穴を有する固定機と、が複数組み設けられている場合、これらの重心が各回転体の回転中心に一致していてもよい。この場合、連結穴および固定機構等が1組の場合に比べて回転体がバランスよく回転される。なお、一致とは、略一致も含まれる。その略一致の程度は、必要な機能の関係で定められればよい。
【0026】
[実施例]
本実施形態の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、実施例に係る眼底撮影装置の外観構成を示した図である。図2は、実施例の撮影ユニットに収容される光学系を示した図である。図3は、実施例に係る装置の制御系を示したブロック図である。
【0027】
<装置の外観>
図1を参照して、撮影装置1の外観構成を説明する。撮影装置1は、撮影ユニット3を有する。撮影ユニット3は、図2で示す光学系を主に備える。撮影装置1は、基台7、駆動部8、顔支持ユニット9、等を有し、これらを用いて、被検眼Eと撮影ユニット3との位置関係を調整する。
【0028】
駆動部8は、基台7に対して、撮影ユニット3が配置される筐体6を左右方向(X方向)および前後方向(Z方向であり、作動距離方向ともいう)に移動できる。また、駆動部8は、更に、撮影ユニット3を、筐体6上で被検眼Eに対して3次元方向に移動させる。駆動部8には、予め定められた各可動方向に筐体6または撮影ユニット3を移動させるためのアクチュエータを有しており、制御部100からの制御信号に基づいて駆動される。顔支持ユニット9は、被検者の顔を支持する。顔支持ユニット9は基台7に固定されている。
【0029】
また、撮影装置1は、モニタ120を更に有している。モニタ120には、眼底観察像、眼底撮影像、前眼部観察像等が表示される。
【0030】
<光学系>
図2を参照して、撮影装置1の光学系を説明する。撮影装置1は、撮影光学系(眼底撮影光学系)10と、前眼部観察光学系40と、を有している。これらの光学系は、撮影ユニット3に設けられている。図2において、被検眼の瞳と共役な位置には撮影光軸上に『△』を付し、眼底共役位置には撮影光軸上に『×』を付して、それぞれ示す。
【0031】
撮影光学系10は、照射光学系10aと、受光光学系10bと、を有する。実施例において、照射光学系10aは、光源ユニット11、レンズ13、スリット形成部15a、レンズ17a,17b、ミラー18、穴開きミラー20、および、対物レンズ22を有する。
【0032】
受光光学系10bは、対物レンズ22、穴開きミラー20、レンズ25a,25b、スリット形成部15b、および、撮像素子28を有する。なお、穴開きミラー20は、照射光学系10aと受光光学系10bとの光路を結合する光路結合部である。穴開きミラー20は、光源からの照明光を、被検眼E側へ反射し、被検眼Eからの眼底反射光のうち、開口を通過した一部を、撮像素子28側へ通過させる。
【0033】
本実施例において、光源ユニット11は、波長帯が異なる複数種類の光源を有している。例えば、光源ユニット11は、可視光源11a,11bと、赤外光源11c,11dと、を有する。波長域が同じである2つの光源は、瞳共役面上において、撮影光軸Lから離れて配置される。2つの光源は、図2における走査方向であるX方向に沿って並べられており、撮影光軸Lに関して軸対称に配置される。図2に示すように、2つの光源の外周形状は、走査方向に比べて、走査方向と交差する方向が長い矩形形状であってもよい。
【0034】
なお、図2において、可視光源として、符号11a,11bで示した2つが示されているが、波長毎に複数の可視光源が、各光源11a,11bに含まれている。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に対応する光源が、可視光源11a,11bにそれぞれ含まれていてもよい。これにより、本実施例では、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のうちいずれかが、任意の組み合わせで照射され得る。例えば、カラー眼底画像を撮影する場合は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色が照射されてもよい。また、蛍光撮影の一種である自発蛍光撮影を行う場合は、G(緑)またはB(青)の波長の光が照射されてもよい。
【0035】
光源11からの光は、レンズ13を通過して、スリット形成部15aに照射される。本実施例において、スリット形成部15aは、Y方向に沿って細長く形成された透光部(開口)を持つ。これにより、眼底共役面において、照明光がスリット状に形成される(眼底上でスリット状に照明された領域を、符号Bとして図示する)。
【0036】
図2において、スリット形成部15aは、透光部が撮影光軸LをX方向に横切るようにして、駆動部15cによって変位される。これにより、本実施例における照明光の走査が実現される。なお、本実施例では、受光系側でも、スリット形成部15bによる走査が行われる。本実施例では、投光側と受光側のスリット形成部15a,15bは、1つの駆動部(ドライバ)によって、連動して駆動される。
【0037】
照射光学系10aでは、各光源の像が、レンズ13から対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、瞳共役面上で結像される。つまり、瞳共役面上において、走査方向に関して分離した位置に、2つの光源の像が形成される。このようにして、本実施例では、瞳共役面上における2つの投光領域P1,P2(本実施例における射出瞳)は、2つの光源の像として形成される。
【0038】
また、スリット形成部15aを通過したスリット状の光は、レンズ17aから対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、眼底Er上に結像する。これにより、眼底Er上で照明光がスリット状に形成される。照明光は、眼底Er上で反射され、瞳孔Epから取り出される。
【0039】
ここで、穴開きミラー20の開口は、被検眼の瞳と共役なので、眼底画像の撮影に利用される眼底反射光は、被検眼の瞳上において穴開きミラー開口の像(瞳像)を通過する一部に制限される。このように、被検眼の瞳上における開口の像が、本実施例における受光領域R(本実施例における入射瞳)となる。受光領域Rは、2つの投光領域P1,P2に挟まれて形成される。また、各像の結像倍率、開口の径、2つの光源の配置間隔が適宜設定された結果として、受光領域Rと、2つの投光領域P1,P2とは、瞳上において互いに重ならないように形成される。つまり、射出瞳と入射瞳とが分離されている。その結果、フレアーの発生が良好に軽減される。
【0040】
対物レンズ22および穴開きミラー20の開口を通過した眼底反射光は、レンズ25a,25bを介して、眼底共役位置に、眼底Erのスリット状領域を結像する。このとき、結像の位置にスリット形成部15bの透光部が配置されていることで、有害光が除去される。
【0041】
撮像素子28は、眼底共役位置に配置されている。本実施例では、スリット形成部15bと撮像素子28の間にリレー系27が設けられており、これにより、スリット形成部15bと撮像素子28との双方が、眼底共役位置で配置される。その結果、有害光の除去と、結像との両方が、良好に行われる。これに代えて、撮像素子28とスリット形成部15bとの間のリレー系27を省略し、両者を近接配置してもよい。本実施例では、撮像素子28として、2次元的な受光面を持つデバイスが用いられている。例えば、CMOS、二次元CCD等であってもよい。撮像素子28には、スリット形成部15bの透光部で結像した、眼底Erのスリット状領域の像が投影される。撮像素子28は、赤外光および可視光の両方に感度を持つ。
【0042】
本実施例では、スリット状の照明光が眼底Er上で走査されるに従って、撮像素子28の走査線毎に、眼底Er上の走査位置の像(スリット状の像)が順次投影される。このように、撮像素子には、時分割で走査範囲の全体像が投影される。結果として、走査範囲の全体像として、眼底Erの正面画像が撮像される。
【0043】
撮影光学系10は、視度補正部を有している。本実施例では、照射光学系10aの独立光路、受光光学系10bの独立光路、のそれぞれに視度補正部(視度補正光学系17,25)が設けられている。以下では、便宜上、照射側の視度補正光学系を照射側視度補正光学系17と称し、受光側の視度補正光学系を受光側視度補正光学系25と称する。本実施例の照射側視度補正光学系17は、レンズ17a,レンズ17bおよび駆動部17c(図3参照)を含む。また、本実施例の受光側視度補正光学系25は、レンズ25a、レンズ25b、および、駆動部25c(図3参照)を含む。照射側視度補正光学系17においてはレンズ17aとレンズ17bとの間隔が、受光側視度補正光学系25においては、レンズ25aとレンズ25bとの間隔が変更される。これにより照射光学系10aと受光光学系10bとの各々において視度補正が行われる。
【0044】
<スプリット指標投影光学系>
図2に示すように、更に、撮影光学系10は、フォーカス指標投影光学系の1例として、スプリット指標投影光学系50を有する。スプリット指標投影光学系50は、2つのスプリット指標を眼底に投影する。スプリット指標は、フォーカス状態の検出に利用される。また、本実施例では、フォーカス状態の検出結果から、被検眼Eの屈折度数が取得される。
【0045】
スプリット指標投影光学系50は、例えば、光源51(赤外光源)と、指標板52と、偏角プリズム53とを少なくとも有していてもよい。本実施例において、指標板52は、受光光学系50における撮像面と対応する位置へ配置されている。同様に、各々のスリット形成部15a,15bとも対応する位置へ配置される。詳細には、照射側および受光側の視度補正量が0Dである場合に、正視眼(0D眼)の眼底と略共役な位置に、視標板52は配置される。偏角プリズム53は、指標板52よりも被検眼側において、指標板52に近接して配置される。
【0046】
指標板52は、例えば、スリット光を指標として形成する。偏角プリズム53は、視標板52を介した指標光束を分離し、スプリット指標を形成する。分離されたスプリット指標は、照射側視度補正光学系17から対物レンズ22までを介して、被検眼の眼底へ投影される。このため、スプリット指標は、眼底画像(例えば、眼底観察画像)に映り込む。
【0047】
指標板52が眼底共役位置からズレている場合は、眼底上で2つのスプリット指標は分離しており、指標板52が眼底共役位置に配置される場合は、2つのスプリット指標は一致される。共役関係は、偏角プリズム53と被検眼Erとの間に配置される照射側視度補正光学系17によって調整される。そこで、本実施例では、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを一致させつつデフォーカスが行われる。このとき、スプリット指標の分離状態が、フォーカス状態を示す。2つのスプリット指標が合致されるように、照射側および受光側の視度補正量の各々が調整されることによって、撮像面とスリット形成部15a,15bとの各々が、眼底と共役な位置関係となる。
【0048】
<バリアフィルタ>
撮影装置1は、バリアフィルタ61を更に有する。蛍光撮影時において、受光光学系10bでは、励起光に基づく眼底からの蛍光が、撮像素子28へ導かれる。バリアフィルタ61は、受光光学系の独立光路上に配置され得る。バリアフィルタ61は、励起光と同じ波長域の光を遮光し蛍光を通過させるような分光特性を持つ。一例として、本実施例では、自発蛍光撮影に適した分光特性をバリアフィルタ61は有している。例えば、励起光である緑または青色の光を遮光し、それよりも長波長側の光を、撮像素子28側に通過させる。これにより、自発蛍光が選択的に撮像素子28へ受光される。その結果、眼底の自発蛍光画像が良好に得られる。撮影装置1は、バリアフィルタ61を挿脱する駆動部61a有していてもよい。また、バリアフィルタの挿脱は、例えば、制御部100によって制御される。
【0049】
<前眼部観察光学系>
次いで、前眼部観察光学系40を説明する。前眼部観察光学系40は、対物レンズ22とダイクロイックミラー43と、を撮影光学系10と共用する。前眼部観察光学系40は、更に、光源41、ハーフミラー45、撮像素子47等を含む。撮像素子47は、二次元撮像素子であり、例えば瞳孔Epと光学的に共役な位置に配置される。前眼部観察光学系40は、赤外光で前眼部を照明し、前眼部の正面画像を撮影する。
【0050】
なお、図2に示した前眼部観察光学系40は一例に過ぎず、他の光学系とは独立した光路で前眼部を撮像してもよい。
【0051】
<オプティカルチョッパーの詳細説明>
撮影光学系10のスリット形成部15a,15bおよび駆動部15c(図3参照)として、本実施例では、図4に示すようなオプティカルチョッパー150が用いられる。図4は、図2の光学系において、走査部として適用可能なオプティカルチョッパー150を示した図である。オプティカルチョッパー150は、外周に複数のスリット開口が形成されたホイール151を持ち、ホイール151を回転させることで、高速にスリットをスキャンできる。なお、図4のスリット開口は模式的に描かれている。ホイール151は、回転体の一例である。ホイール151が、図2において示したスリット形成部15a,15bに相当する。また、本体部152に、駆動部15cが含まれる。駆動部15cは、例えば、回転方向を正逆に切換可能なモータである。
【0052】
なお、図2では、照射光学系10aの光源ユニット11からミラー18までと、受光光学系10bの穴開きミラー20から撮像素子28までとが、X方向に並列されているが、例えば、穴開きミラー20とミラー18との向きを、図示した状態から90度回転させ、両者をY方向に並列させることによって、オプティカルチョッパー150を走査部として適用可能になる。この場合、ホイール151の上端と下端との2箇所で、照射光学系10aの光軸と受光光学系10bの光軸とをそれぞれ横切らせることで、1体のオプティカルチョッパー150で、投光系および受光系の走査を、容易に同期させることができる。
【0053】
なお、図4において、ホイール151の下方の位置P1が照射光学系10aの光軸の通過位置とされ、回転中心Oに対して位置P1の対称な位置P2が受光光学系10bの光軸の通過位置とされている。
【0054】
図5は、実施例に係るスリット形成部の一部であるスリット板を示した図である。図6は、実施例に係るスリット形成部の一部であるマスクを示した図である。
【0055】
本実施例において、図5図6に示すように、ホイール151は、スリット板160とマスク180によって形成されている。両者は、互いの回転軸(回転軸161,回転軸181)を一致させつつ、光軸に沿って重ねて配置される。また、スリット板160とマスク180には、駆動部15cからの動力が伝達されることで、回転軸(回転軸161,回転軸181)の周りにそれぞれ回転される。
【0056】
そして、スリット板160とマスク180の構成に関連して、オプティカルチョッパー150には、ホイール151におけるスリット開口と遮光部との面積比を切換える切換機構155が備えられている。例えば、切換機構155は、駆動部15cによってスリット板160とマスク180とが回転駆動されるとき、その回転方向の正逆に応じてスリット板160とマスク180との位置関係を変更することで、スリット開口と遮光部との面積比を切換える。また、切換機構155に関連して、オプティカルチョッパー150には、スリット板160およびマスク180の回転方向の正逆の回転に連動して、スリット板160とマスク180との位置関係を固定するための固定機構157が備えられている。以下、切換機構155、固定機構157の具体例を説明する。
【0057】
図5において、スリット板160には、幅が互いに異なる2種類のスリット開口163,165が、それぞれ同数で複数形成されており、交互に配置されている。本実施例では、それぞれ16個ずつのスリット開口163,165が、一定間隔(等間隔)で配置される。例えば、スリット開口163は、幅広のスリット開口とされ、カラーの眼底画像を得る場合に使用される。スリット開口165は、スリット開口163よりも狭い幅のスリット開口とされ、眼底の蛍光画像を取得する場合に使用される。
【0058】
図6において、マスク180は、スリット板160に形成される上記の2種類のスリット開口163,165のうち、一方を遮蔽し他方を開放するための部材である。本実施例では、マスク180をスリット板160と重ねたときの隣り合うスリット開口の間に遮光部182が形成されるように、マスク180には、16個のスリット開口183が一定間隔で配置される。スリット開口183は、上記のスリット開口163,165のいずれよりも幅広に形成されている。16個のスリット開口183の間の領域が遮光部182とされる。マスク180は、スリット板160に形成される開口(スリット開口163,165)を部分的に又は選択的に遮光する。
【0059】
本実施例において、スリット板160の回転軸161は、駆動部15cの回転軸に対して直接連結されている。換言すれば、駆動部15cからの動力が遅延なく、直接伝達される。また、マスク180は、スリット板160に対して所定移動量分だけ回転方向に関してスライド自在に取り付けられている。
【0060】
図6に示すように、マスク180にはピン187が取り付けられている。本実施例ではピン187は、2つの第1ピン187Aと第2ピン187Bからなる。第1ピン187Aおよび第2ピン187Bは、それぞれ、回転中心Oを基準にマスク180の半径方向に延びる溝188に沿って移動可能に、保持部190によってマスク180に保持されている。なお、ピン187は切換機構155の要素とされ、溝188および保持部190は、固定機構157の要素とされる。
【0061】
図7は、マスク180による第1ピン187Aの保持部190を説明する図であり、図6における第1ピン187AのA―A断面の拡大図を示す。例えば、円柱部材からなる第1ピン187Aの側面には、マスク180の板厚に対応した円環溝187mが形成されている。その円環溝187の内側の円柱部分が、マスク180側の溝188に挿入されることで、第1ピン187Aが溝188に沿って移動可能に、マスク180に保持される。また、第2ピン187Bも同様な保持部190の構成により、マスク180の半径方向に延びる溝188に沿って移動可能に保持される。
【0062】
また、第1ピン187Aおよび第2ピン187Bは、引っ張り力付与部の例であるバネ189によって回転中心Oに向かう方向に引っ張り力が付与されている。バネ189は、固定機構157の要素とされる。ここで、バネ189による引っ張り力は、マスク180の回転に伴ってピン187に作用する遠心力より小さく設定されている。ピン187に作用する遠心力は、ピン187の質量と、回転中心Oに対するピン187の位置の半径と、マスク180の回転に伴うピン187の角速度と、の関係で数学的に求められる。なお、引っ張り力の付与は、磁力が利用されてもよい。
【0063】
一方、スリット板160には、図5のように、ピン187が入れられる連結穴167が設けられている。ピン187と連結穴167とを介して、スリット板160とマスク180とが連結される。本実施例では、ピン187が2つであるため、連結穴167も第1ピン187Aが入れられる第1連結穴167Aと、第2ピン187Bが入れられる第2連結穴167Bとからなる。なお、連結穴167は切換機構155の要素とされる。
【0064】
図8は、連結穴167を説明する図であり、図5における連結穴167付近の拡大図である。まず、第1連結穴167Aに関し、第1連結穴167Aは、回転中心Oを基準とした円周方向に距離DAだけ延びた長さを持つ長穴とされる。円周方向の距離DAは、スリット板165において隣り合う2種類のスリット開口163,165の間隔(本実施例では1/32周分)と対応し、ホイール151の回転方向の正逆に伴う所定移動量分に対応して第1ピン187Aが移動可能な長さに形成されている。すなわち、距離DAは、次のように定められる。なお、図8において、連結穴167内に点線で示す円は、連結穴167に対してピン187が移動される位置での外形を示す。
【0065】
例えば、回転中心Oを基準として、スリット開口163の幅(長手方向に直交するスリット開口の幅)の中心を通るラインLA1と、その隣のスリット開口165の幅の中心を通るラインLA2と、が成す角度をαとする(図5参照)。また、ピン187(第1ピン187A)の半径をrとし、回転中心Oに対する半径Rであって、ピン187(第1ピン187A)の中心が位置する第1連結穴167Aの半径をRとしたとき、距離DAは、角度α、半径r及び半径Rによって数学的に定められる。
【0066】
このように定められた距離DAを持つ第1連結穴167Aと第1ピン187Aとで互いが連結されていることにより、スリット板160とマスク180の一方の回転体の回転に対し、他方の回転体の回転が所定移動量分(本実施例では、約1/32周分=角度α)遅れて回転される。この場合、切換機構155は、スリット板160とマスク180とに対する駆動部15cからの動力伝達を、スリット板160とマスク180との間で所定移動量分遅らせる遅延発生機構として機能する。
【0067】
例えば、ホイール151正方向に回転された場合、スリット板160とマスク180との一方の回転体に対して他方の回転体が所定移動量分だけ逆方向にズレて(偏位して)配置される。一方、スリット形成部が逆方向に回転された場合、スリット板160とマスク180との一方の回転体に対して他方の回転体が所定移動量分だけ正方向にズレて(偏位して)配置される。この遅延発生機構により、切換えのための余分なアクチュエータが不要で、駆動部15cを利用することで、スリット板160とマスク180との位置関係が切換るだけという簡単な構成で、スリット開口と遮光部との面積比を切換できる。なお、遅延発生機構は、言い換えれば、駆動部15cからの動力伝達を、スリット板160とマスク180との間で所定移動量分だけ偏位させるための偏位発生機構とされる。
【0068】
なお、本実施例では、駆動部15cによってスリット板160が回転され、連結穴167にピン187が連結されることにより、スリット板160の回転がマスク180に伝達される。すなわち、スリット板160の回転に対し、マスク180が従属的に回転される。
【0069】
また、連結穴167には、上記の所定移動量分に対応して、回転中心Oを基準として半径方向の外側に延びる固定用穴168が形成されている。固定用穴168は、ピン187が移動可能とされる。また、固定用穴168は、ピン187が入った場合、そのピン187に対するマスク板160の正逆の回転が共に固定される形状に形成されていればよい。第1連結穴167Aにおいては、ラインLA1方向に延びる第1固定用穴168Aが形成されている。第1連結穴167Aに対するラインLA1方向の第1固定用穴168Aの長さDBは、ホイール151の回転ムラが生じた場合でも、第1ピン187Aが半径方向の外側に位置する第1固定用穴168Aに移動された状態で、その第1固定用穴168Aから外れない長さであればよい。例えば、第1固定用穴168Aの長さDBは、第1ピン187Aが第1連結穴167AのラインLA1上に位置したとき、第1ピン187Aの半径rより大きな長さに形成されている。このため、第1ピン187Aに作用する遠心力により、第1ピン187Aが第1固定用穴168Aに移動されたときには、スリット板160とマスク180との位置関係が固定される。
【0070】
なお、第1固定用穴168Aは、スリット板160が回転方向に対して逆方向に回転することを阻止する引っ掛かりを持つように形成されていればよい。本実施例では第1連結穴167Aにおいて、ラインLA1方向に直交する方向の幅は、第1ピン187Aの直径に対して僅か(マスク180の遮光部によって、スリット開口の幅が変化しない程度)に大きくされている。これにより、スリット板160の回転中に第1ピン187Aが第1固定用穴168Aから外れ難くされる。
【0071】
図8において、第2連結穴167Bについても、第1連結穴167Aと同様な設計思想に基づく第2固定用穴168Bが形成されている。ただし、第1固定用穴168AがラインLA1方向に形成されていたのに対し、第2固定用穴168Bは、ラインLA2の方向に形成されている。すなわち、第2固定用穴168Bは、ラインLA1とラインLA2の中間に位置するラインLA3に垂直な線LBであって、回転中心Oを通る線LBに対して線対称とされている。このため、第1ピン187Aが第1連結穴167AのラインLA2上に位置したとき、第2ピン187Bは第2連結穴167BのラインLA2上に位置することで、第2ピン187Bに作用する遠心力によって第2ピン187Bが第2固定用穴168B側に移動される。これにより、スリット板160とマスク180との所定移動量分の切換えに対応して、スリット板160とマスク180との位置関係が固定される。
【0072】
また、第1連結穴167Aには、前述の所定移動量分(1/32周分=角度α)の中間位置(略中間位置であってもよい)に、第1ピン187Aが回転中心Oの方向に移動される第1窪み169Aが形成されていてもよい。第1窪み169Aは、第1連結穴167Aの中間位置に行くに従って回転中心Oからの距離が徐々に短くなうように形成される。第2連結穴167Bにも、第1窪み169Aと同様な設計思想の第2窪み169Bが形成されていてもよい。
【0073】
スリット板160の回転停止時には、第1ピン187Aおよび第2ピン187Bには遠心力が作用しないため、第1ピン187Aおよび第2ピン187Bは、バネ189によって共に回転中心O方向に引っ張られる。このため、図9に示すように(図9は、スリット板160の回転が停止されている場合、連結穴167とピン187との位置関係を示す図である)、第1ピン187Aは第1連結穴167Aの第1窪み169Aに位置し、第2ピン187Bも第2連結穴167Bの第2窪み169Bに位置する位置関係とされる。これにより、スリット板160が正回転及び逆回転の何れの方向に回転される場合にも、所定移動量分の切換えが安定してスムーズに行われやすくなる。
【0074】
なお、本実施例では、連結穴167及びピン187が2組あり、その2組の重心が回転中心Oに一致(実施例では略一致)していることで、特開2022-42896号公報に記載された連結穴およびピンが1組の場合に比べ、重心が偏らず、スリット板160とマスク180が一体的にバランスよく回転される。また、連結穴167及びピン187を3組以上設ける場合にも、それらの重心が回転中心Oに略一致するようにすればよい。
【0075】
以上、図5図8に示したように、本実施例における切換機構155は、主にピン187と連結穴167を構成要素として備え、固定機構157は、主に溝188、保持部190および固定用穴168を構成要素として備える。
【0076】
<制御系>
次に、図3を参照して、撮影装置1の制御系を説明する。本実施例では、制御部100によって、撮影装置1の各部の制御が行われる。また、撮影装置1で得られた各種画像の画像処理についても、制御部100によって行われる。換言すれば、本実施例では、制御部100が、画像処理部を兼用している。
【0077】
制御部100は、各部の制御処理と、演算処理とを行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。制御部100は、記憶部101と、バス等を介して電気的に接続されている。記憶部101には、各種の制御プログラムおよび固定データ等が格納される。また、記憶部101には、一時データ等が記憶されてもよい。撮影装置1による撮影画像は、記憶部101に記憶されていてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、外部の記憶装置(例えば、LANおよびWANで制御部100に接続される記憶装置)へ撮影画像が記憶されてもよい。
【0078】
また、制御部100は、駆動部8、光源11a~11d、撮像素子28、光源41、撮像素子47、光源51、入力インターフェイス110、およびモニタ120等の各電気要素が接続されている。また、制御部100は、入力インターフェイス110(操作入力部)から出力される操作信号に基づいて、上記の各部材を制御する。入力インターフェイス110は、検者の操作を受け付ける操作入力部である。例えば、マウスおよびキーボード等であってもよい。モニタ120がタッチパネルとされることで、モニタ120が操作入力部の機能を有していてもよい。
【0079】
<動作>
以上のような構成を備える撮影装置1の動作を説明する。ここでは、スリット板160とマスク180との位置関係の変更と、その固定の動作を中心に説明する。
【0080】
まず、顔支持部9に支持された被検者顔の被検眼に対して撮影ユニット3が所定の位置関係にアライメント調整される。例えば、前眼部観察光学系40の撮像素子47によって被検眼の前眼部像が撮像され、前眼部像における瞳孔中心と撮影光軸Lの位置とが略一致するように、駆動部8の駆動が制御され、撮影ユニット3が上下左右方向に移動される。また、撮像素子47に撮像された前眼部像の瞳孔にピントが合うように、駆動部8の駆動が制御され、被検眼に対する作動距離方向に撮影ユニット3が移動される。
【0081】
また、アライメント調整時には、赤外の光源11c,11dが点灯され、照射光学系10aによって被検眼眼底が赤外光で照明される。アライメント調整時は、駆動部15cの駆動によってスリット板160が時計回りに回転されることで、幅の狭いスリット開口165が選択されることになり(スリット開口の切換えの動作の詳細は後述する)、スリット開口165によるスリット状の照明光が、繰り返し走査される。そして、スリット開口165が光路を通過する毎に撮像素子28から出力される信号に基づき、制御部100によって眼底観察画像が随時生成され、略リアルタイムな動画像としてモニタ120に表示される。
【0082】
また、取得された眼底観察画像に基づいて、照射光学系10aおよび受光光学系10bにおけるフォーカス状態が調整される。本実施例では、視度補正部が駆動され、フォーカス調整が行われる。このとき、視度補正部の照射側視度補正光学系17と、受光側視度補正光学系25との、両方が駆動される。スプリット指標投影光学系50によって眼底観察画像に現れる2つのスプリット指標が合致するように、照射側視度補正量と受光側視度補正量とが共に調整されることで、被検眼の眼底に対するフォーカス調整が行われる。
【0083】
被検眼のアライメント調整及び眼底に対するフォーカス調整が完了すると、眼底の撮影が可能とされる。本実施例では、撮影モードとして、通常のカラー撮影モードと蛍光撮影モードとが設定(選択)可能にされている。カラー撮影モードは、眼底反射光に基づく眼底画像を撮影するために設定される。蛍光撮影モードは、蛍光眼底画像を撮影するために設定される。例えば、検者によって入力インターフェイス110の操作入力部が操作されることで、撮影モードが設定される。
【0084】
通常のカラー撮影モードが設定された場合、光源11a,11bからR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の光が同時に出射される。また、受光光学系10bの光路に対してバリアフィルタ61が退避された状態とされ、受光光学系10bの撮像素子28の露光に基づいて、眼底画像が生成される。そして、このカラー撮影モード時、スリット板160の回転方向の正逆に応じて、ホイール151(スリット形成部15a,15b)における遮光部とスリット開口との面積比が切換るように、スリット板160とマスク180との位置関係が変更される。本実施例では、カラー撮影モード時に、切換機構155によって幅の狭いスリット開口165を光束が通過するように切換えられる。眼底上において、スリット状の撮影領域の幅が比較的狭く設定されることにより、対物レンズ22等での反射によるアーチファクトが抑制された撮影画像が、撮影される。
【0085】
通常のカラー撮影モード時には、本実施例では、スリット板160が時計回りに回転される。この場合、図10に示すように、第1連結穴167Aの反時計回り方向の端部が第1ピン187Aに当接するまで移動された後、スリット板160の回転駆動力が第1ピン187Aを介してマスク180に伝達される。このとき、スリット板160とマスク180の位置関係は、スリット開口165に対応してマスク180のスリット開口183が位置され、スリット開口165が露出される。
【0086】
一方、第2ピン187Bに関しては、第2連結穴167Bの反時計回り方向の端部が第2ピン187Bに当接するまで移動された後、第2ピン187Bに作用する遠心力によって、バネ189の引っ張り力に抗して、第2ピン187Bは第2固定用穴168Bに入るように移動される。これにより、ホイール151の回転中、スリット板160とマスク180の位置関係は、スリット開口165が露出された状態で、スリット板160の回転方向に連動して固定される。このため、回転体(すなわちホイール151)の回転ムラ(回転速度、加速度が不安定になる等)が生じた場合であっても、回転途中でスリット開口の面積が変化することなく、明るさが良好な撮影画像が得られる。
【0087】
次に、蛍光撮影モードが設定された場合について説明する。蛍光撮影モードが設定された場合、撮影時には光源11a,11bからG(緑)の1色が出射される。また、受光光学系10bの光路に対してバリアフィルタ61が挿入される。バリアフィルタ61が挿入された結果、前述のアーチファクトを考慮する必要が無くなる。撮影のトリガ信号が制御部100によって受け付けられると、通常のカラー撮影モード時とは逆に、スリット板160(すなわちホイール151)が反時計回りに回転されることにより、スリット開口の幅が広いスリット開口163に切換えられる。つまり、蛍光撮影モードでは、通常撮影モードと比べて、スリット開口の幅を広くして、撮影が行われる。
【0088】
蛍光撮影モード時に、スリット板160が反時計回りに回転されると、図11に示すように、第2連結穴167Bの時計回り方向の端部が第2ピン187Bに当接するまで移動されることで、スリット板160の回転駆動力が第2ピン187Bを介してマスク180に伝達される。このとき、スリット板160とマスク180の位置関係は、スリット開口163に対応してマスク180のスリット開口183が位置されることで、スリット開口165が露出される。
【0089】
一方、第1ピン187Aに関しては、第1連結穴167Aの時計回り方向の端部が第1ピン187Aに当接するまで移動された後、第1ピン187Aに作用する遠心力によって、バネ189の引っ張り力に抗して、第1ピン187Aは外側の第1固定用穴168Aに入るように移動される。これにより、ホイール151の回転中、スリット板160とマスク180の位置関係は、回転体の回転方向に連動して固定される。このため、回転体(ホイール151)の回転ムラが生じた場合であっても、明るさが良好な撮影画像が得られる。
【0090】
なお、眼底観察画像が取得されていた状態からホイール151の回転方向が逆転された場合、回転が逆転されてから、所望の回転速度となるまでタイムラグがある。そこで、眼底蛍光画像を撮影する場合は、撮影のトリガ信号が受付けられてから十分な時間が経過した後に眼底蛍光画像がキャプチャーされる。
【0091】
以上のように、駆動部15cによってスリット板160の回転が時計回り/反時計回りに切換えられることで、幅が互いに異なる2種類のスリット開口163,165のうち一方が、選択的に露出される。これにより、スリット開口と遮光部との面積比を切換えできる。
【0092】
本実施例では、以上に示したように、ホイール151が一方向に回転されている限りは、スリット板160とマスク180の位置関係が固定され、光路を通過するスリット開口の幅が一定とされるので、効率的に眼底画像が撮影される。すなわち、光量が不適切な走査が抑制されやすく、動画撮影などの連続撮影では、フレームレートを確保しやすい。また、1枚当たりの撮影時間を短縮しやすくなるため、眼の動きによる歪みを抑制しやすい。
【0093】
<変容例>
以上、本開示の典型的な実施例を説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、種々の変容が可能である。
【0094】
例えば、上記の実施例では、スリット形成部15a,15bは、スリット板160に形成された2種類のスリット開口163およびスリット開口165をマスク180によって選択的に遮光する例を説明したが、これに限られない。スリット形成部15a,15bは、スリット板160に形成された1種類のスリット開口の幅がマスク180によって部分的に遮光されることで、通常のカラー撮影モードで使用される幅の狭いスリット開口と、蛍光撮影モードで使用される幅の広いスリット開口と、が形成される構成であってもよい。
【0095】
また、上記の実施例では、駆動部15cによってスリット板160が直接的に回転されるものとしたが、マスク180が駆動部15cによって直接的に回転されてもよい。すなわち、スリット板160とマスク180の一方の回転体が駆動部15cの回転動力が直接的に伝達され、他方の回転体がピン187および連結穴167の連結によって間接的(従属的)に回転動力が伝達されることでもよい。
【0096】
また、例えば、ピン187および連結穴167が配置される回転体は、上記実施例とは逆に、ピン187がスリット板160に配置され、連結案167がマスク180に配置されてもよい。
【0097】
また、前述の実施例では、連結穴167及びピン187が2組設けられた例を説明したが、これらは1組であってもよい。図12は連結穴167及びピン187を1組とした場合の固定機構155を説明する図であって、スリット板160の連結穴167の変容例を示す図である。なお、この場合、例えば、マスク180においては、図6に示された、第1ピン187Aおよび第2ピン187Bの一方のピン187が使用され、他方のピン187と、それに伴う溝188およびバネ189は廃止されているものとする。
【0098】
図12において、連結穴167Cは、図8に示された第1連結穴167Aに対し、ラインLA2の方向にも、半径方向の外側に延びる固定用穴168Cが形成されている。固定用穴168Cは、図8における第1固定用穴168Aと同様な設計思想であり、ピン187が移動される。スリット板160が時計回りに回転された場合、連結穴167Cの反時計回り方向の端部がピン187に当接するまで移動された後、ピン187に作用する遠心力によって、ピン187は固定用穴168Cに入るように移動される。これにより、スリット板160とマスク180の位置関係が固定され、スリット開口165が露出された状態とされる。スリット板160が反時計回りに回転された場合は、図11と同様に、ピン187は第1固定用穴168Aに入るように移動されることで、スリット開口165が露出された状態で、スリット板160とマスク180の位置関係が固定される。
【0099】
なお、連結穴167及びピン187が1組の場合、ピン187が配置される回転体には、回転中心Oを挟んだ反対方向にバランスを取るための重りを設け、また、連結穴167が配置される回転体には、回転中心Oを挟んだ反対方向にバランスを取るためのダミーの穴を設ければよい。これにより、ホイール151の回転中の重心のバランスが良好となる。
【0100】
また、上記の実施例では、ピン187を回転中心Oの方向に向かわせる引っ張り力を付与する引っ張り力付与機構(例えば、バネ189)を設けたが、特別な引っ張り力付与機構は必ずしも無くてもよい。例えば、ピン187に掛る重力によって、ホイール151の停止時に固定用穴168からピン187が外れる構成でもよい。例えば、図12で示したように、連結穴167及びピン187の場合、連結穴167及びピン187が回転中心Oに対して鉛直方向の上に位置した状態でホイール151(本実施例ではスリット板160)の回転を止める。この場合、固定用穴168に対し、円周方向に延びる連結穴167が下方に位置するため、ピン187は重力の作用によって固定用穴168から外れて連結穴167の方に移動される。ホイール151が高速回転されると、その回転方向の正逆に応じた固定用穴168に移動されることで、スリット板160とマスク180の位置関係が固定される。
【0101】
また、上記の説明ではスリット板160とマスク180の位置関係を固定する固定機構157として、ホイール151の回転に伴ってピン187に作用する遠心力を利用する例を説明したが、これに限られない。例えば、連結穴167側にラッチ機構が設けられ、ラッチ機構によって、回転体の回転方向の切換え連動してピン187側の回転体が固定される構成であってもよい。この場合、回転体の回転方向の切換え時に、従属的な回転体の回転を停止するストッパー機構が設けられていると、ラッチ機構による固定をより確実に行える。例えば、ストッパー機構は、回転方向の切換え時に回転体の側面に摩擦力を付与することで、回転体が移動しないように停止する機構であってもよし、係合穴にピンを挿入する機構であってもよい。そして、回転の再開時には、ストッパー機構を解除すればよい。
【符号の説明】
【0102】
1 撮影装置
10 撮影光学系
10a 照射光学系
10b 受光光学系
15a,15b スリット形成部
15c 駆動部
150 オプティカルチョッパー
155 切換機構
157 固定機構
160 スリット板
163 スリット開口
165 スリット開口
167 連結穴
168 固定用穴
169A、169B 窪み
180 マスク
187 ピン
189 バネ
190 保持部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12