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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177813
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24D 17/00 20220101AFI20241217BHJP
   F24H 1/14 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/174 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/238 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/281 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/315 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/365 20220101ALI20241217BHJP
【FI】
F24D17/00 M
F24H1/14 C
F24H15/174
F24H15/219
F24H15/238
F24H15/281
F24H15/315
F24H15/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096159
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩波 慶一朗
(72)【発明者】
【氏名】跡部 嘉史
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢一
【テーマコード(参考)】
3L034
3L073
【Fターム(参考)】
3L034BA22
3L034BB03
3L073AA02
3L073AA15
3L073AC01
3L073AC02
3L073AD01
3L073AD02
3L073AD05
3L073AD07
3L073AD08
3L073AE01
3L073AE06
(57)【要約】
【課題】バイパスミキシング方式の給湯装置における温度制御精度を高める。
【解決手段】缶体配管55を通流する高温水と、バイパス配管60を通流する低温水とが混合されて給湯される。ハイブリッドバルブ80は、開度制御値に対して、高温水の流量Q1および低温水の流量Q2の流量比が変化する第1区間と、当該流量比が固定される一方でトータル流量Qtが変化する第2区間とが存在するように構成される。トータル流量Qtが制限流量以下の場合には、ハイブリッドバルブ80が第1区間で動作する温度制御が実行される。トータル流量Qtが制限流量より大きい場合には、ハイブリッドバルブ80が第2区間で動作する流量制御が実行される。温度制御時には、燃焼バーナ30による加熱量は、缶体温度Tbを、トータル流量Qtの増加に従って低下するように設定される缶体設定温度に制御するために調整される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温水および高温水を混合する給湯装置であって、
前記低温水を加熱して高温水を出力する加熱部と、
前記加熱部に前記低温水を通流するための第1流路と、
前記加熱部を通過させることなく前記低温水を通流する第2流路と、
前記第1流路または前記第2流路に配置された流量検出器と、
前記第1流路および前記第2流路と接続されて、前記第1流路および前記第2流路の流量を制御するための制御弁と、
前記低温水および前記高温水の混合後の出湯温度を給湯設定温度に制御するために、前記制御弁の制御値および前記加熱部による加熱量を設定する制御装置とを備え、
前記制御弁は、前記制御値の変化に対して、前記第1流路および前記第2流路のトータル流量に影響を与えずに前記第1流路および前記第2流路の流量比が変化する第1区間と、前記流量比が固定される一方で前記トータル流量が減少する第2区間とが存在するように構成され、
前記制御装置は、
前記流量検出器の検出流量に基づいて取得される前記トータル流量が前記加熱部の最大加熱量に対応して設定される制限流量より大きい場合には、前記トータル流量が前記制限流量以下となるように前記制御弁の前記制御値を前記第2区間内に設定するとともに、前記出湯温度を前記給湯設定温度に制御するように前記加熱部の前記加熱量を制御する一方で、
前記流量検出器の検出流量に基づいて取得される前記トータル流量が、前記制限流量以下である場合には、前記高温水の温度を缶体設定温度に制御するように前記加熱部の前記加熱量を制御するとともに、前記出湯温度を前記給湯設定温度に制御するための前記流量比に対応させて前記制御弁の前記制御値を前記第1区間内に設定し、かつ、
前記缶体設定温度は、前記トータル流量が増加して前記制限流量に近付くのに従って前記缶体設定温度が低下する流量域が存在するように設定される、給湯装置。
【請求項2】
前記缶体設定温度は、前記制限流量よりも低く設定された境界流量より低流量側の第1流量域では、給湯設定温度よりも高い一定値に設定される一方で、前記境界流量および前記制限流量の間の第2流量域では、前記トータル流量の増加に従って前記一定値から低下するように設定される、請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記第2流量域で設定される前記缶体設定温度は、前記トータル流量の増加に従って、前記一定値から、前記制御弁の前記第2区間での前記流量比の下で前記出湯温度を前記給湯設定温度とするための前記高温水の温度に対応する下限設定値まで徐々に減少するように設定される、請求項2記載の給湯装置。
【請求項4】
前記一定値は、前記給湯設定温度と予め定められた固定値との和に従って設定される、請求項2記載の給湯装置。
【請求項5】
前記制限流量は、前記加熱部の前記最大加熱量の発生時に前記出湯温度を前記給湯設定温度とできる前記トータル流量に対応する第1の値よりも、前記制御弁の前記第2区間での前記流量比の下で前記第1流路の流量が前記加熱部の許容最大流量となるときの前記トータル流量に対応する第2の値が小さいときには、当該第2の値に従って設定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置に関し、より特定的には、高温水および低温水を混合するバイパスミキシング方式の給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器を経由した高温水と、熱交換器をバイパスした低温水との流量比率の制御によって出湯温度を調整する、バイパスミキシング方式の給湯装置が用いられている。
【0003】
特許第3067498号公報(特許文献1)には、高温水および低温水の流量比を制御するためのバイパス弁(分配弁)の弁開度を、ステッピングモータのステップ数によって制御する構成が記載されている。特許文献1には、バイパス弁におけるステップ数(弁開度)および流量比の間の予め求められた基準特性関係に従って、目標流量比から逆算された目標ステップ数を、補正ステップ数を用いて補正することによって、ステッピングモータのステップ数を設定することが記載されている。補正ステップ数は、検出温度から算出される実績流量比と目標流量比との偏差に基づいて算出される。
【0004】
また、特許4823149号公報(特許文献2)には、湯と水を混合して温水を出力する混合弁の一態様として、水導入口を全閉にした状態で湯量のみを絞る機能を併有するものが記載されている。具体的には、特許文献2の混合弁は、混合弁の弁開度に応じて、水導入口および湯導入口の開口面積が連動してそれぞれ漸減および漸増する第1区間と、水導入口を全閉にした状態で湯導入口の開口面積を最大値から最小値まで変化する第2区間とが存在する特性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3067498号公報
【特許文献2】特許4823149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された混合弁では、混合弁からの出力流量(即ち、水および湯の合計流量)には影響を与えずに流量比(混合比)が弁開度に応じて変化する第1区間と、水および湯の混合比が固定された下(全量が湯)で、混合弁からの出力流量が弁開度に応じて変化する第2区間とが存在することが理解される。
【0007】
ここで、特許文献2の混合弁を、特許文献1の給湯装置のバイパス弁に適用する構成を想定すると、混合弁が第1区間で動作するときの温度制御では、流量比の調整によって出湯温度を制御できるので、高温水の温度は、直接期には出湯温度に影響しない。これに対して、混合弁が第2区間で動作するときの温度制御では、流量比が固定されるため、高温水の温度が直接的に、出湯温度に影響することになる。これにより、混合弁が第1区間で動作する温度制御から、混合弁が第2区間で動作する温度制御への切替時において、温度制御精度が低下することが懸念される。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、制御値の変化に対して流量比が変化しない領域を有する制御弁が適用されたバイパスミキシング方式の給湯装置における温度制御精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面では、給湯装置が提供される。低温水および高温水を混合する給湯装置は、加熱部と、第1流路と、第2流路と、流量検出器と、制御弁と、制御装置とを備える。加熱部は、低温水を加熱して高温水を出力する。第1流路は、加熱部に低温水を通流する。第2流路は、加熱部を通過させることなく低温水を通流する。流量検出器は、第1流路または第2流路に配置される。制御弁は、第1流路および第2流路と接続されて、第1流路および第2流路の流量を制御する。制御装置は、低温水および高温水の混合後の出湯温度を給湯設定温度に制御するために、制御弁の制御値および加熱部による加熱量を設定する。制御弁は、制御値の変化に対して、第1流路および第2流路のトータル流量に影響を与えずに第1流路および第2流路の流量比が変化する第1区間と、流量比が固定される一方でトータル流量が減少する第2区間とが存在するように構成される。制御装置は、流量検出器の検出流量に基づいて取得されるトータル流量が加熱部の最大加熱量に対応して設定される制限流量より大きい場合には、トータル流量が制限流量以下となるように制御弁の制御値を第2区間内に設定するとともに、出湯温度を給湯設定温度に制御するように加熱部の加熱量を制御する一方で、流量検出器の検出流量に基づいて取得されるトータル流量が、制限流量以下である場合には、高温水の温度を缶体設定温度に制御するように加熱部の加熱量を制御するとともに、出湯温度を給湯設定温度に制御するための流量比に対応させて制御弁の制御値を第1区間内に設定する。缶体設定温度は、トータル流量が増加して制限流量に近付くのに従って缶体設定温度が低下する流量域が存在するように設定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、制御値の変化に対して流量比が変化しない領域を有する制御弁が適用されたバイパスミキシング方式の給湯装置における温度制御精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に従う給湯装置の概略構成図である。
図2図1の給湯装置に適用されるハイブリッドバルブの入出力を説明する概念図である。
図3図1の給湯装置に適用されるハイブリッドバルブの特性を示す概念図である。
図4】本発明の実施の形態に従う給湯装置におけるハイブリッドバルブの制御処理を説明するフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態に従う給湯装置における加熱部の燃焼制御を説明するフローチャートである。
図6】缶体設定温度の設定の比較例を説明する概念図である。
図7】本発明の実施の形態に従う缶体設定温度の設定例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る給湯装置100の概略構成図である。
図1を参照して、給湯装置100は、熱交換器10および燃焼バーナ30等が格納された燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)5と、送風ファン40と、入水路50と、缶体配管55と、バイパス配管60と、出湯路70と、ハイブリッドバルブ80と、コントローラ200とを備える。
【0014】
入水路50は、ハイブリッドバルブ80を経由して、缶体配管55およびバイパス配管60と接続される。入水路50には、水道水等の低温水が供給される。入水路50の低温水は、ハイブリッドバルブ80を経由して、缶体配管55およびバイパス配管60へ分配される。本実施の形態では、バイパスミキシング方式において高温水および低温水の流量比を制御するための「制御弁」が、後述する特性を有するハイブリッドバルブ80を用いて構成される。
【0015】
缶体配管55は、熱交換器10に低温水を通流させる。入水路50から缶体配管55へ導入された低温水は、燃焼バーナ30の発生熱量により、熱交換器10を通過することによって加熱される。これにより、熱交換器10からは、高温水が出力される。
【0016】
燃焼バーナ30へのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および、能力切換弁35a~35cが配置される。元ガス電磁弁32は、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
【0017】
能力切換弁35a~35cは、複数の燃焼バーナ30のうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を切換えるために開閉制御される。缶体5での発生熱量は、バーナ本数およびガス流量の組み合わせによって決まる、燃焼バーナ30全体からの供給ガス量に比例する。したがって、燃焼バーナ30に要求される加熱量に対応させて、能力切換弁35a~35cの開閉パターン(バーナ本数)およびガス比例弁33の開度(ガス流量)の組み合わせを決定する設定マップを予め作成することができる。
【0018】
缶体5において、燃焼バーナ30から出力された燃料ガスは、送風ファン40からの燃焼用空気と混合される。送風ファン40による送風量は、燃焼バーナ30全体からの供給ガス量との空燃比が所定値(例えば、理想空燃比)となるように制御される。送風ファン40の送風量は、ファン回転数と比例するので、送風ファン40の回転数は、供給ガス量の変化に応じて設定される目標回転数に従って制御される。送風ファン40には、ファン回転数を検出するための回転数センサ45が設けられる。
【0019】
燃料ガスと燃焼用空気との混合気が、図示しない点火装置によって着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナ30からの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体5内で熱交換器10へ与えられる。
【0020】
熱交換器10によって加熱された高温水は、出湯路70へ向けて出力される。缶体5の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。なお、熱交換器10は、一次熱交換器および二次熱交換器の両方が設けられるように構成されてもよい。
【0021】
バイパス配管60および缶体配管55は、合流点75において接続される。合流点75より下流側の出湯路70には、缶体配管55からの高温水と、バイパス配管60からの低温水の混合によって調温された適温の温水が供給される。出湯路70の温水は、台所や浴室等の給湯栓(図示せず)、図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
【0022】
このように、給湯装置100は、ハイブリッドバルブ80を経由して、熱交換器10を通過した高温水および熱交換器10をバイパスした低温水を混合する、いわゆるバイパスミキシング方式の構成を有する。後述するように、高温水および低温水の流量比(混合比)は、コントローラ200からのハイブリッドバルブ80の開度制御値(後述)によって制御される。
【0023】
したがって、図1の構成例では、缶体配管55によって「第1流路」が形成されるとともに、バイパス配管60によって「第2流路」が形成される。さらに、燃焼バーナ30から受熱する熱交換器10によって「加熱部」の一実施例が構成される。
【0024】
なお、以下では、缶体配管55(第1流路)の流量をQ1と表記し、バイパス配管60(第2流路)の流量をQ2と表記する。また、出湯路70からの出湯流量は、流量Q1および流量Q2の和による、給湯装置100のトータル流量Qt(Qt=Q1+Q2)に相当する。各流量は、単位時間当たりの流量であって、その単位は、例えば、リットル/分である。
【0025】
温度センサ110は、缶体配管55の熱交換器10よりも上流側に、低温水の温度を検出するために設けられる。温度センサ110は、入水路50またはバイパス配管60に設けられてもよい。
【0026】
温度センサ120は、缶体配管55の熱交換器10よりも下流側に、高温水の温度を検出するために配置される。即ち、温度センサ120は、合流点75よりも上流側に配置される。温度センサ130は、高温水および低温水の混合後の出湯温度を検出するために、合流点75よりも下流側の出湯路70に配置される。
【0027】
以下では、温度センサ110による検出温度を入水温度Twと表記し、温度センサ120による検出温度を缶体温度Tbと表記し、温度センサ130による検出温度を出湯温度Thと表記する。
【0028】
缶体配管55には、流量センサ150がさらに配置される。流量センサ150は、代表的には、羽根車式流量センサによって構成することができる。流量センサ150は、缶体配管55の流量Q1を検出する。流量センサ150は、「流量検出器」の一実施例に対応する。
【0029】
コントローラ200は、例えば、マイクロコンピュータによって構成することができる。コントローラ200は、各センサによる検出値およびユーザ操作を受けて、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。ユーザ操作には、給湯装置100の運転スイッチのオン/オフ指令および、出湯温度の目標値に相当する給湯設定温度Trの指定が含まれる。
【0030】
コントローラ200は、給湯装置100の運転スイッチがオンされると、流量センサ150によって検出される流量Q1が最低作動流量(MOQ)を超えるのに応じて、缶体5での燃焼動作をオンする。燃焼動作がオンされると、元ガス電磁弁32が開放されて、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給が開始され、図示しない点火装置により点火される。これに応じて、給湯装置100による給湯運転が開始される。給湯運転時において、コントローラ200は、給湯設定温度Trに従って出湯温度を制御する。
【0031】
給湯装置100の運転スイッチがオフされたとき、または、給湯運転中に流量Q1が最低作動流量(MOQ)よりも低下したときには、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給が停止されることにより、給湯運転が終了される。
【0032】
次に、本実施の形態に係る給湯装置100に適用されるハイブリッドバルブ80の特性について詳細に説明する。
【0033】
図2に示されるように、ハイブリッドバルブ80は、缶体配管55と接続される第1ポート81と、バイパス配管60と接続される第2ポート82と、入水路50と接続される第3ポート83とを有する。ハイブリッドバルブ80は、コントローラ200からの開度制御値Xに従って、図示しない1又は複数の弁体の開度が制御されることによって、第1ポート81、第2ポート82、および、第3ポート83の少なくとも一部の開口面積が変化することで、流量Q1およびQ2を制御するように構成される。例えば、弁体は、ステッピングモータ(図示せず)によって開閉駆動される。この場合には、開度制御値Xは、当該ステッピングモータのステップ数で示される。
【0034】
一例として、第1ポート81および第2ポート82の開口面積は、第1の弁体(図示せず)の開度に応じて、それぞれ変化する一方で、両者の和は一定値を維持するように制御される。一方で、第3ポート83の開口面積は、第2の弁体(図示せず)の開度に応じて制御される。
【0035】
缶体配管55の流量Q1が第1ポート81の開口面積に従って変化し、バイパス配管60の流量Q2が第2ポート82の開口面積に従って変化する一方で、第1ポート81および第2ポート82の開口面積の和が一定であるため、上述した第1弁体の開度に応じて、流量Q1および流量Q2の流量比k(k=Q2/Q1と定義する)が変化する。
【0036】
さらに、トータル流量Qt(Q1+Q2)は、第1ポート81および第2ポート82の開口面積の和が一定であるため、上述した第2弁体の開度に従う第3ポート83の開口面積に従って変化する。
【0037】
図3には、開度制御値Xに対するハイブリッドバルブ80の特性図が示される。
図3に示されるように、ハイブリッドバルブ80は、最小値X1から最大値X2までの間で変化する開度制御値Xに対して、トータル流量Qtに影響を与えることなく流量比kが変化する第1区間(X=X1~Xt)と、流量比kが一定値とされた下でトータル流量Qtが変化する第2区間(X=Xt~X2)とが存在するように構成される。以下では、第1区間を「温度制御領域91」とも称し、第2区間を「流量制御領域92」とも称する。
【0038】
トータル流量Qtは、温度制御領域91(X=X1~Xt)では最大流量Qmaxに維持される一方で、流量制御領域92(X=Xt~X2)では開度制御値Xの増加に応じて最大流量Qmaxから最小流量Qminまで減少するように制御される。
【0039】
これに対して、流量比kは、温度制御領域91(X=X1~Xt)では開度制御値Xの増加に応じて、最大値kmaxから最小値kminまで漸減するように制御される一方で、流量制御領域92(X=Xt~X2)では、X=Xtでの最小値kminに維持される。
【0040】
例えば、温度制御領域91では、開度制御値Xが最小値X1から境界値Xtまで増加するのに応じて、第1ポート81の開口面積が漸増する一方で第2ポート82の開口面積が漸減するように、第1ポート81および第2ポート82の開口面積を連動して変化させる一方で、第3ポート83の開口面積が、温度制御領域91では開度制御値Xに依存せず最大値に維持するように、ハイブリッドバルブ80を構成することができる。これにより、図3に示された、温度制御領域91での開度制御値Xに対する流量比kおよびトータル流量Qtの特性が実現される。なお、最大流量Qmaxは、入水路50に導入される低温水の圧力(例えば、上水道の水圧)および、給湯先の図示しない給湯栓の開度等によって決まる。
【0041】
また、流量制御領域92では、開度制御値Xが境界値Xtから最大値X2まで増加するのに応じて、第3ポート83の開口面積が漸減する一方で、第1ポート81および第2ポート82の開口面積はX=Xtのときの状態に維持されるように、ハイブリッドバルブ80を構成することができる。これにより、図3に示された、流量制御領域92での開度制御値Xに対する流量比kおよびトータル流量Qtの特性が実現される。ハイブリッドバルブ80は、図3に示された流量比(Q2/Q1)およびトータル流量(Q1+Q2)の特性に従って、流量Q1(高温水)および流量Q2(低温水)を制御することになる。
【0042】
なお、流量比kminは、流量制御領域92でもバイパス配管60に流量が生じるように設定してもよく(Q2>0,kmin>0)、X=X2にて第2ポート82を全閉状態とすることで、流量制御領域92での流量比kmin=0(即ち、Q2=0)としてもよい。
【0043】
また、開度制御値Xの最大値X2におけるトータル流量Qtの最小流量Qminは、第3ポート83を全閉状態とすることで、Qmin=0とすることができる。一方で、X=X2において、第3ポート83を全閉状態としないことで、Qmin>0とすることも可能である。ただし、上述のように、流量Q1が最低作動流量(MOQ)よりも低下したときには、燃焼バーナ30での燃焼は停止される。
【0044】
したがって、給湯装置100は、温度制御領域91では、ハイブリッドバルブ80の開度制御値Xによって流量比kを調整することで、出湯温度Thを給湯設定温度Trに制御することができる。給湯装置100における、「加熱部」、すなわち、燃焼バーナ30の発生熱量を最大値(例えば、ガス流量最大値および全バーナで燃焼)としたときの最大加熱量Pmaxが、トータル流量Qtおよび昇温量ΔT=Tr-Twの積に従う必要加熱量Prq(Prq=Qt・ΔT)以上のときには(Prq≦Pmax)、温度制御領域91での流量比kの調整による出湯温度制御が可能であることが理解される。
【0045】
一方で、必要加熱量Prqが最大加熱量Pmaxよりも大きくなると(Prq>Pmax)、トータル流量Qtを最大流量Qmaxから絞らなければ、出湯温度Thを給湯設定温度Trまで上昇させることができなくなる。このため、流量制御領域92でのトータル流量Qtの調整による出湯温度制御が必要となる。
【0046】
上述した、必要加熱量Prqおよび最大加熱量Pmaxの関係は、トータル流量Qtによっても表現することができる。ここで、最大加熱量Pmaxが発生された下で、入水温度Twを給湯設定温度Trまで上昇可能なトータル流量Qtの最大値を制限流量Qlmと定義すると、制限流量Qlmは、熱効率η(η≦1.0)を用いて、下記の式(1)で示すことができる。なお、以下では、説明を簡略化するために、η=1.0として取り扱うこととする。
Qlm=η・Pmax/(Tr-Tw) …(1)
【0047】
したがって、当該制限流量Qlmをトータル流量Qtと比較して、Qt≦Qlmのときに、温度制御領域91での流量比kの調整による出湯温度制御を行う一方で、Qt>Qlmのときに、流量制御領域92でのトータル流量Qtの調整(Qt≦Qlm)による出湯温度制御を行うように判定することができる。すなわち、制限流量Qlmおよびトータル流量Qtの比較による判定は、必要加熱量Prqおよび最大加熱量Pmaxの比較による判定と等価であることが理解される。
【0048】
なお、缶体配管55の流量Q1が熱交換器10の耐久性能上の上限流量(缶体最大流量Q1max)となる場合も、ハイブリッドバルブ80を流量制御領域92で動作させて、Q1≦Q1maxとするための流量制御をさらに組み合わせることも可能である。この場合には、流量比kを用いて缶体最大流量Q1maxをトータル流量に換算した流量値が、上述の式(1)によって求められた流量値よりも小さいときに、缶体最大流量Q1maxから換算された流量値を制限流量Qlmに設定することで、Q1≦Q1maxに制限する流量制御を行うことができる。
【0049】
ここで、缶体配管55の流量Q1、バイパス配管60の流量Q2、缶体温度Tb、入水温度Twおよび、出湯温度Thの間には、下記の式(2)の関係が成立する。
Q2・(Th-Tw)=Q1・(Tb-Th) …(2)
【0050】
式(2)から、流量比k(k=Q2/Q1)は、缶体温度Tb、入水温度Twおよび、出湯温度Thによって、式(3)で示すことができる。
k=Q2/Q1=(Tb-Th)/(Th-Tw) …(3)
【0051】
したがって、出湯温度Thを給湯設定温度Trに制御するための流量比k*は、式(2)において、出湯温度Thを給湯設定温度Trに置換した下記の式(4)によって算出することができる。
k*=Q2/Q1=(Tb-Tr)/(Tr-Tw) …(4)
【0052】
理論的には、式(4)によって算出された流量比k*に従って、ハイブリッドバルブ80による流量比が設定されることで、出湯温度Thを給湯設定温度Trに制御することができる。
【0053】
一方で、給湯運転中に、温度センサ110,120,130の検出温度を式(3)に代入することで、温度実績値から逆算された実際の流量比kを逐次算出することができる。以下では、このように求めた流量比を実績流量比ktmと表記する。
【0054】
例えば、事前の実機試験結果等によって、ハイブリッドバルブ80の開度制御値Xに対する実績流量比ktmを測定することで、ハイブリッドバルブ80における、開度制御値X(ステップ数)と流量比kの対応関係を求めることができる。これにより、ハイブリッドバルブ80について、開度制御値Xおよび流量比kの間の基準となる対応関係を、流量比についての基準特性線(X-k)として予め定めることができる。
【0055】
したがって、コントローラ200は、式(4)によって算出された流量比k*から、開度制御値Xを逆算してハイブリッドバルブ80を制御することで、出湯温度制御を実行することができる。
【0056】
同様に、ハイブリッドバルブ80の開度制御値Xを流量制御領域92で変化させたときの流量センサ150による流量検出値を用いて、ハイブリッドバルブ80の開度制御値Xと、トータル流量Qtとの対応関係、即ち、流量制御領域92でのトータル流量Qtについての基準特性線(X-Qt)を、実機試験等の結果に基づいて予め定めることができる。
【0057】
図4は、図1の給湯装置におけるハイブリッドバルブの制御処理を説明するフローチャートである。図4に示されるフローチャートの処理は、給湯運転中にコントローラ200によって周期的に実行することができる。なお、図4中には記載を省略しているが、コントローラ200は、図4に示される処理が実行される制御周期毎に、各センサによる検出値(Tw,Tb,Tw,Q1)を取得することができる。
【0058】
図4を参照して、コントローラ200は、ステップ(以下、単に「S」とも表記する)100により、流量センサ150によって検出された流量Q1から、トータル流量Qtを算出する。この際には、ハイブリッドバルブ80の現在の開度制御値Xから、上記基準特性線(X-k)に従って逆算された流量比kを用いて、式(5)に従って算出することができる。
Qt=Q1+Q2=(1+k)・Q1 …(5)
【0059】
コントローラ200は、S200により、入水温度Twの検出値(温度センサ110)および給湯設定温度Trと、給湯装置100のスペック値である最大加熱量Pmaxとを用いて、式(1)に従って、制限流量Qlmを設定する。あるいは、S200では、上述した様に、制限流量Qlmを缶体最大流量Q1max以下に制限する流量制御をさらに組み合わせる態様で、制限流量Qlmを設定してもよい。
【0060】
コントローラ200は、S300により、S100で算出されたトータル流量Qtと、S200で算出された制限流量Qlmとを比較する。コントローラ200は、トータル流量Qtが制限流量Qlm以下のとき(S300のYES判定時)には、処理をS400に進めて、当該制御周期では、ハイブリッドバルブ80の開度制御値Xが温度制御領域91(図3)内に設定されることによる温度制御を実行する。
【0061】
一方で、コントローラ200は、トータル流量Qtが制限流量Qlmより大きいとき(S300のNO判定時)には、処理をS500に進めて、当該制御周期では、ハイブリッドバルブ80の開度制御値Xが流量制御領域92(図3)内に設定されることによる流量制御を実行する。
【0062】
コントローラ200は、温度制御の実行時(S400)には、S410により、上述の式(4)での流量比k*に従って、当該制御周期での入水温度Twおよび缶体温度Tbの検出値と、給湯設定温度Trとを用いて、温度制御のための流量比kの目標値である目標流量比kstを算出する。即ち、kst=k*=(Tb-Tr)/(Tr-Tw)に設定される。
【0063】
コントローラ200は、S420では、S410で算出された目標流量比kstに従って、今回の制御周期での流量比k[i]を算出する。S420では、目標流量比kstが、そのまま流量比k[i]に設定されてもよく、あるいは、出湯温度Thおよび給湯設定温度Trの偏差に基づくフィードバック制御項をさらに反映して、流量比k[i]が設定されてもよい。
【0064】
さらに、コントローラ200は、S430により、流量比kについての基準特性線(X-k)に従って、S420で算出された流量比k[i]から、第i番目の制御周期でのハイブリッドバルブ80の開度制御値X[i]を、温度制御領域91内に設定する。
【0065】
一方で、コントローラ200は、流量制御の実行時(S500)には、S510により、流量制御での目標トータル流量Qstを設定する。S510での目標トータル流量Qstは、制限流量Qlm以下に設定される。これにより、加熱部(燃焼バーナ30)による加熱量を、最大加熱量Pmax以下の範囲内に設定することができる。また、缶体最大流量Q1maxを反映して制限流量Qlmを設定することで、流量制御領域92での流量比kmin(図3)下で、流量Q1を缶体最大流量Q1max以下に制限することができる。
【0066】
コントローラ200は、S520により、S510で設定された目標トータル流量Qstに従って、今回の制御周期でのトータル流量Qt[i]を算出する。例えば、S520では、目標トータル流量Qstを、そのままトータル流量Qt[i]に設定することができる。
【0067】
さらに、コントローラ200は、S530により、トータル流量Qtについての基準特性線(X-Qt)に従って、S520で算出されたトータル流量Qt[i]から、第i番目の制御周期でのハイブリッドバルブ80の開度制御値X[i]を、流量制御領域92内に設定する。
【0068】
出湯温度制御は、図4に示されたハイブリッドバルブ80の制御と、加熱部(燃焼バーナ30)による加熱量の制御との組み合わせで実行される。
【0069】
図5には、給湯装置100における燃焼バーナの燃焼制御を説明するフローチャートが示される。
【0070】
図5を参照して、コントローラ200は、S600により、ハイブリッドバルブ(HV)80が温度制御および流量制御のいずれを行うかに従って、燃焼制御の処理を分岐させる。S600の判定は、図4のS300と同様に実行することができる。
【0071】
コントローラ200は、温度制御が実行される場合(S600のYES判定時)には、S610により、缶体温度Tbの目標温度である缶体設定温度Tb*を設定する。そして、S620では、缶体温度Tb(温度センサ120)を缶体設定温度Tb*とするように、燃焼バーナ30による加熱量を調整する燃焼制御が実行される。
【0072】
例えば、S620では、缶体設定温度Tb*と入水温度Twとの温度差と、トータル流量Qt(S100)との積に従って、燃焼バーナ30による加熱量を設定することができる。あるいは、缶体温度Tb(温度センサ120)と缶体設定温度Tb*との偏差を補償するためのフィードバック制御項をさらに反映して、燃焼バーナ30による加熱量を設定することも可能である。
【0073】
上述のように、燃焼バーナ30による加熱量は、能力切換弁35a~35cの開閉パターン(バーナ本数)およびガス比例弁33の開度(ガス流量)の組み合わせによって調整することができる。
【0074】
一方で、コントローラ200は、流量制御が実行される場合(S600のNO判定時)には、S630により、出湯温度Th(温度センサ130)と、給湯設定温度Trとの比較に従って、燃焼バーナ30による加熱量(即ち、ガス量)を調整するように燃焼制御を実行する。これにより、ハイブリッドバルブ80による流量比kが一定の下でも、出湯温度Thを給湯設定温度Trとするための温度制御を実行することができる。
【0075】
なお、上述の様に、流量Q1が缶体最大流量Q1max以下となる様に制限流量Qlmを設定すると、流量制御領域92において、流量比kmin(図3)の下でQ1≦Q1maxとなる様に流量制御しつつ、燃焼バーナ30での加熱量が最大加熱量Pmax以下の範囲内で、出湯温度Thが給湯設定温度Trとなる様に、燃焼バーナ30による加熱量を制御することができる。
【0076】
次に、ハイブリッドバルブ80の温度制御時における缶体設定温度Tb*の設定について説明する。図6には、缶体設定温度Tb*の設定の比較例が示され、図7には、本実施の形態に従う缶体設定温度Tb*の設定例が示される。
【0077】
缶体温度Tbについて考察すると、缶体温度Tbが低いと、熱交換器10の表面に結露が生じ易くなる。また、流量増加時に出湯温度Thを維持する場面を想定すると、流量比kの調整によって出湯温度Thを維持する方が、加熱量の増加によって出湯温度Thを維持するよりも制御応答性が高くなることが理解される。
【0078】
したがって、ハイブリッドバルブ80が温度制御領域91内で動作する場面(温度制御時)では、缶体温度Tbについては高めに設定した上で、流量比kの調整によって出湯温度Thを給湯設定温度Trに制御する。
【0079】
一方で、ハイブリッドバルブ80が流量制御領域92内で動作する場面(温度制御時)では、流量比kが図3中のkminに固定された下で、燃焼バーナ30での加熱量の調整を伴って出湯温度Thが給湯設定温度Trに制御される。したがって、缶体温度Tbは、出湯温度Thおよび流量比kminから定まることになるので、燃焼制御によって直接制御されなくなる。
【0080】
このため、図6の比較例では、Qt≦Qlmの温度制御時には、缶体設定温度Tb*は、給湯設定温度Trに固定値α(例えば、α=15~20[℃]程度)を加算した温度T1(T1=Tr+α)に設定される。この場合には、トータル流量Qtの変化に対して、缶体設定温度Tb*は一定値(T1)に設定される。
【0081】
これに対して、Qt>Qlmの流量制御には、缶体設定温度Tb*は設定されず、実際の缶体温度Tbが、出湯温度Thおよび流量制御領域92での流量比kminから定まる温度T2となる(Tb=T2)。
【0082】
しかしながら、図6の比較例に従って温度制御時の缶体設定温度Tb*が設定された場合には、トータル流量Qtの増加に応じて、温度制御から流量制御に切り替わる際に、出湯温度Thの制御に以下のような問題が生じることが懸念される。
【0083】
温度制御時には、流量比kは、式(2),(3)で説明したように、トータル流量Qtには直接依存せず、缶体温度Tb(缶体設定温度Tb*)、出湯温度Th(給湯設定温度Tr)、および、入水温度Twの関係によって制御される。このため、温度制御時における流量比kと流量制御領域92での流量比(最小値kmin)との差が比較的大きい状態となる可能性がある。
【0084】
この様な状態で、温度制御から流量制御にそのまま切り替えると、缶体設定温度Tb*に制御された缶体温度Tbと、流量制御時の缶体温度(T2)との差に起因して、出湯温度Thが給湯設定温度Trよりも高くなる虞がある。このため、トータル流量Qtの制限を即座に開始することができず、流量比kによる温度制御を継続しつつ燃焼バーナ30の加熱量を調整して缶体温度Tbを低下させる移行期間を設けた後に、トータル流量Qtを制限するための流量制御を開始することが必要となる。このような移行期間では、制限流量Qlmより大きいトータル流量Qtが生じることで、出湯温度Thの低下により温度制御精度が一時的に低下することとなる。
【0085】
これに対して、本発明の実施の形態に従う缶体設定温度の設定例では、温度制御が適用されるQt<Qlmの流量域のうち、制限流量Qlmの近傍に、トータル流量Qtの増加に従って缶体設定温度Tb*が低下する流量域が設けられる。
【0086】
図7に示されるように、制限流量Qlmに係数β(0<β<1.0)を乗算することで、境界流量Qxが設定されるとともに、Qt≦Qxの第1流量域101では、缶体設定温度Tb*は、図6の比較例と同様に、Tb*=T1(T1=Tr+α)に設定される。即ち、第1流量域101では、トータル流量Qtの変化に対して、缶体設定温度Tb*は一定である。
【0087】
これに対して、Qx<Qt≦Qlmの第2流量域102では、缶体設定温度Tb*は、トータル流量Qtの増加に従って一定値T1から低下するように設定される。
【0088】
例えば、給湯設定温度Trと、流量制御領域92での流量比kminとを用いて、流量制御時の缶体温度Tbの計算温度T2rを算出することができる。したがって、Qt=QxにおいてTb*=T1、かつ、Qt=QlmにおいてQb*=T2rとなり、Qx<Qt<Qlmの間では、トータル流量Qtの増加に対して、一定レートで低下するように、第2流量域102における缶体設定温度Tb*を設定することができる。
【0089】
計算温度T2rは、例えば、流量Q1,Q2と、給湯設定温度Trと、入水温度Tw(検出温度)とを用いた下記の式(6)を変形し、かつ、流量比k(k=Q2/Q1)=kmin(流量制御領域92)とした、式(7)に従って設定することができる。計算温度T2rは、缶体設定温度Tb*の「下限設定値」に対応する。
Q1・T2r+Q2・Tw=(Q1+Q2)・Tr …(6)
T2r=Tr+kmin・(Tr-Tw) …(7)
【0090】
即ち、本実施の形態では、図5のS610における、温度制御時の缶体設定温度Tb*の設定を、図7に従って実行することができる。なお、図7中の境界流量Qxは、制限流量Qlmからの予め定められた流量の差分に従って設定されてもよい。このようにすると、トータル流量Qtの増加に対して缶体設定温度Tb*が変化するレートを固定することができる。いずれにしても、第1流量域101(Qt≦Qx)は、第2流量域102(Qx<Qt≦Qlm)よりも低流量側に位置する。
【0091】
これにより、本実施の形態に係る給湯装置では、トータル流量Qtの増加に伴って温度制御から流量制御へ移行する際に、当該移行前の温度制御時の缶体温度Tbと、流量制御への移行後における缶体温度Tb(図6のT2相当)との温度差を抑制することができる。この結果、トータル流量Qtの増加に応じて、トータル流量Qtを制限流量Qlm以下に制限する流量制御を、図6で説明した「移行期間」を設けることなく開始できる。したがって、温度制御から流量制御への切替えの際の一時的な温度制御精度の低下を抑制することによって、温度制御精度を向上することができる。
【0092】
なお、図1では、流量センサ150が缶体配管55に配置されて、流量Q1を検出する構成例を説明したが、流量センサ150がバイパス配管60に配置されて、流量Q2を検出する構成においても、本実施の形態に係る図4及び図5の制御処理を同様に適用することが可能である。あるいは、流量センサ150が入水路50に配置されて、トータル流量Qt(Q1+Q2)を検出する構成においても、流量比kを用いて流量Q1,Q2を算出することによって、同様の制御処理を適用することが可能である。
【0093】
また、図1では、「加熱部」の熱源がガスの燃料の燃焼熱である例を示したが、燃料はガスに限定されることはなく、任意の燃料の燃焼熱を発生する機構によって「加熱部」が構成された給湯装置に対して、本実施の形態に係る出湯温度制御を適用することができる。
【0094】
なお、本実施の形態では、ハイブリッドバルブ80が、入水路50と、缶体配管55およびバイパス配管60との間に接続されることで、入水路50から缶体配管55およびバイパス配管60への低温水の分配比を制御する構成例を説明したが、ハイブリッドバルブ80は、合流点75に配置されて、出湯路70と、缶体配管55およびバイパス配管60との間に接続されてもよい。この場合には、図2の合流点75において、第3ポート83は出湯路70と接続されるとともに、各ポートでの流れ方向が反対になる。そして、図3に示された、流量比(Q2/Q1)およびトータル流量(Q1+Q2)に従う流量Q1及び流量Q2の制御によって、缶体配管55の高温水とバイパス配管60の低温水との混合比が制御される。
【0095】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
5 缶体、10 熱交換器、15 排気経路、30 燃焼バーナ、31 ガス供給管、32 元ガス電磁弁、33 ガス比例弁、35a~35c 能力切換弁、40 送風ファン、45 回転数センサ、50 入水路、55 缶体配管、60 バイパス配管、70 出湯路、75 合流点、80 ハイブリッドバルブ、81 第1ポート、82 第2ポート、83 第3ポート、91 温度制御領域、92 流量制御領域、100 給湯装置、101 第1流量域、102 第2流量域、110,120,130 温度センサ、150 流量センサ、200 コントローラ、Q1,Q2 流量、Q1max 缶体最大流量、Qlm 制限流量、Qmax 最大流量、Qst 目標トータル流量、Qt トータル流量、Qx 境界流量、T1 一定値、T2r 計算温度(缶体温度)、Tb 缶体温度、Tb* 缶体設定温度、Th 出湯温度、Tr 給湯設定温度、Tw 入水温度、X 開度制御値(ハイブリッドバルブ)、X1 最小値(開度制御値)、X2 最大値(開度制御値)、Xt 境界値(開度制御値)、k 流量比、kst 目標流量比
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7