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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177816
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】半導体発光素子及び半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20241217BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20241217BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20241217BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/50
H01L33/58
H01L33/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096162
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田渕 健司
(72)【発明者】
【氏名】村田 知之
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB07
5F142CB18
5F142CD02
5F142CD15
5F142CD18
5F142CD43
5F142CD44
5F142CD47
5F142CG01
5F142DA14
5F142DA15
5F142DA23
5F142DA36
5F142DA64
5F142DA73
5F142DB17
5F142DB54
5F142EA02
5F142EA34
5F142GA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便な1チップ構造を有し、多段階の光出力調整が容易で、また、1チップでフルカラー出力が可能なマルチセグメント型の半導体発光素子及び半導体発光装置を提供する。
【解決手段】n型半導体層、発光層及びp型半導体層を含む発光機能層と、発光機能層を接合して支持する支持基板と、を備えている。発光機能層の接合面側には、p型半導体層上に互いに離間した複数のpオーミック電極と、n型半導体層上にnオーミック電極とが設けられ、支持基板の接合面側には、複数のpオーミック電極に対向する互いに離間した複数の基板p電極と、nオーミック電極に対向する基板n電極とが設けられ、複数のpオーミック電極の各々は、発光機能層の接合領域の外側に設けられたp配線電極を有し、支持基板の接合面の反対側には、nオーミック電極に電気的に接続されたn配線電極を有している。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体層、発光層及びp型半導体層を含む発光機能層と、
前記発光機能層を接合して支持する支持基板と、を備え、
前記発光機能層の接合面側には、前記p型半導体層上に互いに離間した複数のpオーミック電極と、前記n型半導体層上にnオーミック電極とが設けられ、
前記支持基板の接合面側には、前記複数のpオーミック電極に対向する互いに離間した複数の基板p電極と、前記nオーミック電極に対向する基板n電極とが設けられ、
前記複数のpオーミック電極の各々は、前記前記発光機能層の接合領域の外側に設けられたp配線電極を有し、
前記支持基板の接合面の反対側には、前記nオーミック電極に電気的に接続されたn配線電極を有する、半導体発光素子。
【請求項2】
前記複数のpオーミック電極は、前記p型半導体層の層厚以上の間隔で離間して配されている請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記複数のpオーミック電極は互いに異なる面積を有する請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記複数のpオーミック電極に対応して画定される複数の発光領域上に互いに変換波長が異なる複数の波長変換部材が設けられている請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記発光領域を少なくとも3つ有し、当該少なくとも3つの発光領域のうち2つの発光領域上にそれぞれ緑色光(G)及び赤色光(R)を出射する波長変換部材が設けられ、
前記発光層の出射光は青色光(B)である、請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記互いに変換波長が異なる波長変換部材は量子ドット波長変換部材である請求項5に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記複数の波長変換部材の各々の間の間隙及び周囲に遮光マスクが設けられている請求項5に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1に記載の半導体発光素子がマトリクス状に配されている半導体発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1に記載の半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が実装された装置基板と、
前記複数のpオーミック電極のうちのいずれか1と前記nオーミック電極との間に接続された保護素子と、を有する半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光装置、特にマルチセグメントの半導体発光素子及び当該半導体発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力化や発光色制御のため、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子を複数デバイス内に配置して用いることが行われている。また、照明用光源、インジケータランプ及びミニLED(mini-LED)などの光源としてマルチカラーの発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1のLEDである青色LEDと、該青色LEDに被覆された黄色系蛍光体と、第2のLEDである赤色LEDと、前記青色LEDの発光波長帯域と前記黄色系蛍光体の励起発光波長帯域との間の発光波長帯域を有する第3のLEDとからなり、カラー表示装置のバックライトや自然な照明光として蛍光灯に代替することが可能な白色系LED発光装置及びカラー表示装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-5482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、簡便な1チップ構造を有し、多段階の光出力調整が容易で、また、1チップでフルカラー出力が可能なマルチセグメント型の半導体発光素子及び半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1実施形態による半導体発光素子は、
n型半導体層、発光層及びp型半導体層を含む発光機能層と、
前記発光機能層を接合して支持する支持基板と、を備え、
前記発光機能層の接合面側には、前記p型半導体層上に互いに離間した複数のpオーミック電極と、前記n型半導体層上にnオーミック電極とが設けられ、
前記支持基板の接合面側には、前記複数のpオーミック電極に対向する互いに離間した複数の基板p電極と、前記nオーミック電極に対向する基板n電極とが設けられ、
前記複数のpオーミック電極の各々は、前記前記発光機能層の接合領域の外側に設けられたp配線電極を有し、
前記支持基板の接合面の反対側には、前記nオーミック電極に電気的に接続されたn配線電極を有する。
【0007】
本発明の1実施形態による半導体発光装置は、
上記の半導体発光素子がマトリクス状に配されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】第1の実施形態の半導体発光素子を模式的に示す斜視図である。
図1B図1Aに示す半導体発光素子10の等価回路図である。
図2A】第1の実施形態の半導体発光素子の上面図である。
図2B図2Aに示す線A-Aに沿った断面図である。
図2C図2Aに示す線D-Dに沿った断面図である。
図3A】発光機能層の底面、すなわち、支持基板との接合面を示す図である。
図3B図3Aに示す線E-Eに沿った断面図である。
図3C図3Aに示す線F-Fに沿った断面図である。
図4A】支持基板の上面、すなわち、発光機能層との接合面を示す図である。
図4B図4Aに示す線B-Bに沿った断面図である。
図4C図4Aに示す線D-Dに沿った断面図である。
図5A図2Aに示す線B-Bに沿った断面図である。
図5B図2Aに示す線C-Cに沿った断面図である。
図5C】基材を貫通し、基板電極及び共通カソードに導通する貫通電極を示す図である。
図6A】半導体発光素子の回路基板への実装前を示す斜視図である。
図6B】半導体発光素子の回路基板への実装後を示す斜視図である。
図7A】第2の実施形態の半導体発光装置を用いた液晶ディスプレイを模式的に示す図である。
図7B図7Aに示す半導体発光装置の一部Wを拡大して示す部分拡大図である
図8】第3の実施形態の半導体発光素子の上面を模式的に示す図である。
図9】第4の実施形態の半導体発光素子を模式的に示す斜視図である。
図10】第4の実施形態の変形例である半導体発光素子を模式的に示す斜視図である。
図11A】第5の実施形態の半導体発光装置の上面図である。
図11B図11Aの線G-Gに沿った断面図である。
図11C】第5の実施形態の半導体発光装置の裏面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
1.半導体発光素子の構造
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光素子10を模式的に示す斜視図である。図1Bは、図1Aに示す半導体発光素子10の等価回路図である。
【0010】
半導体発光素子10は、支持基板30と、支持基板30上に接合されて設けられた発光機能層20とからなる。発光機能層20は3つの発光領域、すなわち、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3を有している。
【0011】
支持基板30上には、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3にそれぞれ接続された基板配線電極である第1アノード35A1、第2アノード35A2及び第3アノード35A3が設けられている。また、支持基板30の裏面には、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3に共通して接続されたn配線電極である共通カソード34が設けられている。
【0012】
図1Bは、半導体発光素子10の接続構成を示す回路図である。半導体発光素子10は、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3が並列に接続された構成を有する。
【0013】
したがって、第1アノード35A1、第2アノード35A2又は第3アノード35A3と共通カソード34との間に電流を流すことによって、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3の各々を個別に駆動し、個別に発光させることができる。すなわち、半導体発光素子10はマルチセグメント型の発光素子として構成されている。
【0014】
以下に、図2A図2Cを参照して半導体発光素子10の構造の詳細について説明する。図2Aは半導体発光素子10の上面図であり、図2B及び図2Cは、それぞれ図2Aに示す線A-A、線D-Dに沿った断面図である。
【0015】
図2A図2Cに示すように、半導体発光素子10は、いわゆるシンフィルムLED(thin-film LED)である発光機能層20を支持基板30に貼り付けた構成を有している。より具体的には、成長基板上にエピタキシャル成長したLED構造を有する半導体層に電極及び保護膜等を形成した後、成長基板から取り外し(シンフィルムLED)、支持基板30に接合した構成を有している。
【0016】
(1)発光機能層
図3Aは、発光機能層20の底面、すなわち、支持基板30との接合面を示す図であり、図3B及び図3Cは、それぞれ図3Aに示す線E-E、線F-Fに沿った断面図である。
【0017】
図2B及び図2Cに示すように、発光機能層20は、n型半導体層21、発光層22及びp型半導体層23からなる発光半導体層20Aを有している。なお、本実施形態において、p型半導体層23は、pクラッド層23Aとpクラッド層23A上に形成されたpコンタクト層23Bからなる。
【0018】
より詳細には、n型半導体層21及びp型半導体層23は、それぞれ少なくとも1つの半導体層からなる。例えば、電子障壁層(EBL:Electron Blocking Layer)、電流拡散層、コンタクト層など種々の半導体層が設けられていてもよい。また、n型半導体層21及びp型半導体層23には、アンドープ層(又はi層)が設けられていてもよい。
【0019】
発光機能層20は、例えばGaN系の半導体層からなる青色発光のLED半導体層であるが、これに限定されない。発光層22は、例えば単一量子井戸(SQW)又は多重量子井戸(MQW)構造を有している。あるいは、発光層22は、いわゆるバルク構造を有していてもよい。
【0020】
図2B及び図2Cに示すように、発光機能層20には、素子電極であるp電極25A(pオーミック電極)及びn電極25B(nオーミック電極)が設けられている。より詳細には、図3A及び図3Cに示すように、p電極25Aは、p電極25A1(第1のp電極)、p電極25A2(第2のp電極)及びp電極25A3(第3のp電極)からなる。
【0021】
なお、以下においては、p電極25Aが第1~第3のp電極の3つの電極に分割された場合を例に説明するが、p電極25Aは、複数の電極に分割されていればよい。なお、当該分割電極を特に区別しない場合には、p電極25Aと総称して説明する。
【0022】
より詳細には、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3におけるp型半導体層23上にそれぞれp電極25A1、p電極25A2及びp電極25A3が形成されている。
【0023】
換言すれば、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3は、それぞれp電極25A1、p電極25A2及びp電極25A3に対応して画定される。
p電極25Aは、光反射性の電極として形成されている。p電極25Aは、例えば、透光性導電膜のインジウムスズ酸化物(ITO)オーミック電極、ニッケル(Ni)/銀(Ag)反射膜、白金(Pt)、チタン(Ti)及び金(Au)がp型半導体層23上にこの順で形成されたITO/Ni/Ag/Pt/Ti/Au層からなる。なお、p電極25AにはAg膜等の反射率の高い反射膜が設けられていることが好適であるが、反射膜は設けられていなくてもよい。
【0024】
図2Bに示すように、発光層22から放射され、p電極25Aによって反射された反射Lrは、発光層22からの直接光Ldとともにn型半導体層21の表面から出射される。なお、n型半導体層21の表面(光出射面)は、粗面加工されていることが、光取り出し効率を向上する点において好ましい。
【0025】
また、図2A及び図2Bに示すように、隣接する発光領域の間、すなわち隣接するp電極25Aの間には、発光層22及びp型半導体層23を貫通し、n型半導体層21が露出する孔部27Hが形成されている。そして、n型半導体層21の当該露出面上にはn電極25Bが形成されている。
【0026】
n電極25Bは、チタン(Ti)及び金(Au)がn型半導体層21上にこの順で形成されたTi/Au層からなる。
【0027】
なお、p電極25A及びn電極25Bの材料及び層構造は上記に限定されない。オーミック特性、光反射による取り出し効率、素子信頼性(寿命)などの特性を考慮して適宜選択し得る。
【0028】
再び図1Bの回路図を参照すると、第1の発光領域10A1~第3の発光領域10A3間の抵抗Rcは、第1アノード35A1~第3アノード35A3が電気的に接続されたp型半導体層23間の抵抗に相当する。
【0029】
この抵抗Rcは高く、例えば、第2アノード35A2と共通カソード34との間に電圧を印加して第2の発光領域10A2を発光させる場合でも、第1の発光領域10A1及び第3の発光領域10A3の電圧が立上り電圧値に達しない程度の大きさを有している。
【0030】
GaN系半導体の場合では、p型半導体のホール移動度が1~3(cm/ Vsec)以下と小さく、また、p型半導体層23(すなわち、pクラッド層23A及びpコンタクト層23B)の厚さも薄く(0.5μm~1μm以下)、第1アノード35A1~第3アノード35A3の各アノードの周縁から横方向への電流拡散が極めて限定的(p型半導体層23の厚さ程度以下)である。したがって、電流はほぼアノードの大きさ程度で発光層22に流れるので、p電極を分割することで、1チップ内において発光領域を分割することが可能となる。換言すれば、第1アノード35A1~第3アノード35A3の各々をp型半導体層23の層厚以上離間して設けることによって、各発光領域を独立して駆動することができる。
【0031】
n型半導体層21、発光層22及びp型半導体層23からなる発光半導体層20Aの側面には、絶縁膜(SiO)からなる素子保護膜28Aが設けられている。また、図2Bに示すように、孔部27Hに露出する発光半導体層20Aの内壁面にも素子保護膜28Aが設けられている。また、図3Cに示すように、p電極25A1、p電極25A2及びp電極25A3の各電極間にも素子保護膜28Aが設けられている。
【0032】
(2)支持基板
図4Aは、支持基板30の上面、すなわち、発光機能層20との接合面を示す図であり、図4B及び図4Cは、それぞれ図4Aに示す線B-B、線D-Dに沿った断面図である。
【0033】
支持基板30は、基材31と、基材31の上面に設けられた層間絶縁膜32とを有している。基材31は、リン(P)又はヒ素(As)などをドープしたシリコン(Si)からなる導電性のn型シリコン基板である。また、層間絶縁膜32は、例えばSiOからなる。
【0034】
図4A図4Cに示すように、層間絶縁膜32上には、第1基板電極33A1、第2基板電極33A2及び第3基板電極33A3(p基板電極)が設けられている。第1基板電極33A1、第2基板電極33A2及び第3基板電極33A3は、発光機能層20のそれぞれp電極25A1、p電極25A2及びp電極25A3に対応する形状、大きさ及び位置(図3Aを参照)を有して形成されている。
【0035】
第1基板電極33A1、第2基板電極33A2及び第3基板電極33A3は発光機能層20との接合領域の外側まで延在し、各々の延在部の端部上には、第1基板電極33A1、第2基板電極33A2及び第3基板電極33A3にそれぞれ接続された第1アノード35A1、第2アノード35A2及び第3アノード35A3(基板配線電極)が設けられている。
【0036】
第1基板電極33A1、第2基板電極33A2及び第3基板電極33A3の各電極間及び各電極の縁部、及び、第1アノード35A1、第2アノード35A2及び第3アノード35A3の各電極の縁部には、絶縁膜である電極保護膜36が設けられている。したがって、基材31上において、第1アノード35A1、第2アノード35A2及び第3アノード35A3の各電極は互いに電気的に絶縁されている。
【0037】
また、発光機能層20のn電極25B(図3Aを参照)に対応する位置には、n電極である基板電極33B(図4Aを参照)が設けられている。
【0038】
(3)発光機能層及び支持基板の接合
図5A及び図5Bは、それぞれ図2Aに示す線B-B、線C-Cに沿った断面図であり、発光機能層20及び支持基板30を接合する際の配置関係を示す図である。
【0039】
図5Aに示すように、発光機能層20Aのp電極25A1、p電極25A2及びp電極25A3の各電極は、導電性のp側接合層26によって支持基板30の第1基板電極33A1、第2基板電極33A2及び第3基板電極33A3に接合される。
【0040】
また、図5Bに示すように、発光機能層20のn電極25Bは、n側接合層27によって支持基板30の基板電極33Bに接合される。基材31は導電性であり、基材31を介して基板電極33Bは共通カソード34に電気的に接続されている。
【0041】
なお、基材31には、セラミック等の絶縁性材料を用いることもできる。この場合、図5Cに示すように、基材31を貫通し、基板電極33B及び共通カソード34に導通する貫通電極39を設ければよい。
【0042】
第1アノード35A1、第2アノード35A2及び第3アノード35A3は発光機能層20及び支持基板30の接合領域の外側に設けられ、第1アノード35A1、第2アノード35A2及び第3アノード35A3は支持基板30の上面に露出している。
【0043】
第1アノード35A1、第2アノード35A2又は第3アノード35A3と共通カソード34との間に電流を流すことによって、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3の各々を個別に駆動することができる。これにより、図2Cに示すように、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3からそれぞれ出射光LE1,LE2及びLE3が出射される。
【0044】
(4)半導体発光素子の実装
図6A及び図6Bは、半導体発光素子10の回路基板41へのそれぞれ実装前及び実装後を示す斜視図である。
【0045】
図6Aに示すように、回路基板41は、アノード配線43A1,43A2及び43A3とカソード配線44とを有する。半導体発光素子10の共通カソード34は回路基板41のカソード配線44上に、例えば錫銀銅(SnAgCu)はんだを介して接合され、共通カソード34は回路基板41のカソード配線44に電気的に接続される。
【0046】
図6Bに示すように、半導体発光素子10の回路基板41への接合後、半導体発光素子10の第1配線電極35A1、第2配線電極35A2及び第3配線電極35A3は、それぞれ回路基板41のアノード配線43A1,43A2及び43A3にボンディングワイヤ45で接続される。以上により、回路基板41上へ半導体発光素子10を実装した半導体発光装置50が得られる。
【0047】
回路基板41のアノード配線43A1,43A2及び43A3のうちの少なくとも1つとカソード配線44との間に通電することにより発光領域10A1、10A2及び10A3を個別に発光制御することができる。
【0048】
例えば、発光領域10A1、10A2及び10A3の面積が同一で、同一電圧を印加する場合、各発光領域への通電又は非通電(ON/OFF)により、1の発光領域の光出力をLEとしたとき、半導体発光素子10の光出力を1×LE、2×LE、3×LEとすることができる。また、各発光領域への印加電圧を異ならせることで半導体発光素子10の光出力を0から3×LEの間で連続的に調整することもできる。
さらに、発光領域10A1、10A2及び10A3の面積を異ならせることによっても半導体発光素子10の光出力を自由に調整することができる。
【0049】
[第2の実施形態]
図7Aは、本発明の第2の実施形態による半導体発光装置60を用いた液晶ディスプレイLCDを模式的に示す図である。図7Bは、半導体発光装置60の一部Wを拡大して示す部分拡大図である。
【0050】
液晶ディスプレイLCDは、第2の実施形態による半導体発光装置60を有する。すなわち、半導体発光装置60は液晶ディスプレイの光源パネルとして構成されている。 図7Bに示すように、半導体発光装置60の各画素には、第1の実施形態の半導体発光素子10が実装されている。すなわち、半導体発光装置60には半導体発光素子10がマトリクス状に配されている。
【0051】
また、液晶ディスプレイLCDには、波長変換シート63及び液晶パネル65(偏光板を含む)が設けられている。波長変換シート63は、例えば、量子ドット(QD:Quantum Dot)波長変換材を用いて構成されている。より詳細には、波長変換シート63は半導体発光装置60の半導体発光素子10の光(例えば、青色光)を白色光に変換する。液晶パネル65は、波長変換シート63からの白色光のカラー制御を行う。
【0052】
各画素の半導体発光素子10の光出力を制御することによりローカルディミングを行うことができる。例えば、各画素の半導体発光素子10の光出力をアノード35A1、35A2及び35A3と共通カソード34との間の通電又は非通電(ON/OFF)により、照明領域の明るさを3段階に調整することができる。すなわち、各画素への通電又は非通電のみによってディミング領域DRの減光を容易に行うことができる。
【0053】
したがって、通電又は非通電のみの制御によって、多段階の光出力調整を容易に行うことができる。さらに、アノード35A1、35A2及び35A3と共通カソード34間の駆動電圧をn段階(例えば、n=5)に調整すれば、3×n(例えば、15)段階の光出力調整が可能である。
【0054】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態による半導体発光素子70の上面を模式的に示す図である。半導体発光素子70においては、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3の面積が互いに異なっている。その他の構成は第1の実施形態の半導体発光素子10と同一である。
【0055】
具体的には、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3の面積の比が、例えば3:1:2であるように形成されている。なお、上記したように、第1アノード35A1~第3アノード35A3の各アノードの周縁から横方向への電流拡散は極めて限定的であるから、発光領域10A1、10A2及び10A3の各面積は、p電極25A1、25A2及び25A3の面積によって設定することができる。
【0056】
例えば、発光領域10A1、10A2及び10A3の面積の比を3:1:2とすることで、アノード35A1、35A2及び35A3と共通カソード34との間の通電又は非通電(ON/OFF)を単に制御することで6段階(1、2、3、1+3、2+3、1+2+3)に光出力を調整することができる。
【0057】
したがって、通電又は非通電のみの制御によって、多段階の光出力調整を容易に行うことができる。また、駆動電流制御を併用することで、容易に高精度な光出力調整を行うことができる。
【0058】
[第4の実施形態]
図9は、本発明の第4の実施形態による半導体発光素子80を模式的に示す斜視図である。半導体発光素子80においては、第1の発光領域10A1、第2の発光領域10A2及び第3の発光領域10A3上に、それぞれ第1波長変換部材81、第2波長変換部材82及び第3波長変換部材83が設けられている。
波長変換部材81、82及び83には、量子ドット(QD)波長変換部材が用いられている。QD波長変換部材は、粒子径がnmオーダー(1nm~数十nm)と小さいので、出光面に緻密に塗布でき、励起光の光抜けを抑え、色純度の高い波長変換を可能にする。
【0059】
QD波長変換部材は、量子閉じ込め効果を発現する程度の大きさに形成された半導体の粒子を含む部材であり、粒子サイズ又は粒子径を小さくすることでバンドギャップをバルク状態よりも増大させることができる。したがって、波長変換部材81、82及び83の粒子径を異ならせることで変換波長を調整することができる。
【0060】
QD波長変換部材としては、例えば、硫化カドミウム(CdS)等のS系ナノ粒子、ZnTe等のTe系ナノ粒子、InGaP等のP系ナノ粒子、Zn(Te、Se)等のSe系ナノ粒子、ZnO等のO系ナノ粒子、Si系ナノ粒子などが挙げられる。
【0061】
QD波長変換部材としては、材料コスト、加工容易性、可視域での発光を得られる粒子径の制御性、蛍光量子収率を総合的に勘案すると、InP、InGaP、Si等の半導体結晶が好適である。
【0062】
発光装置の薄型化の観点からは、波長変換部材の薄型化のためQD波長変換部材の粒子径を小さくすることが望ましく、加工の容易な単元素系材料、例えばSi系ナノ粒子を適用することが好適である。また、量子ドットはコアシェル型の構造を有していてもよい。
【0063】
各波長変換部材は発光層22からの出射光の波長を変換し出力する。例えば、第1波長変換部材81は青色光(B)を出力し、第2波長変換部材82は緑色光(G)を出力し、第3波長変換部材83は赤色光(R)を出力する。なお、発光層22の発光色が青色の場合は、指向特性調整部材を用いることができる。
【0064】
したがって、第4の実施形態の半導体発光素子80によれば、1つの発光素子内に3つの発光領域を設け、各発光領域からそれぞれ青色(B)、緑色(G)及び赤色(R)の発光が可能となる。すなわち、1つの発光素子でRGB発光する発光素子を実現することができる。
【0065】
さらに、半導体発光素子80は、各色で発光する発光領域が隣接して設けられているので、視差による色ズレを低減でき、色ズレのない可視光発光を実現することができる。
【0066】
なお、波長変換部材81、82及び83に代えて、指向特性調整部材、拡散板(散乱板)やプリズムレンズなどの光学部材を設けてもよい。出射光の指向特性、配光特性、均一性を調整することができる。
【0067】
また、半導体発光素子80の3色の組合せはRGBに限らず、高演色性の白色(WW)、シアン色(C)及び赤色(R)などの組合せであってもよい。あるいは、少なくとも4つの発光領域を設け、RRGBなどの組合せの発光素子とすることもできる。1チップで高演色性のフルカラー出力が可能なマルチセグメント型の半導体発光素子を提供することができる。
【0068】
(変形例)
図10は、第4の実施形態による半導体発光素子80の変形例である半導体発光素子85を模式的に示す斜視図である。
【0069】
第4の実施形態の半導体発光素子85は、第3の実施形態の半導体発光素子80の波長変換部材81、82及び83間の間隙及び周囲に遮光マスク87を設けている。したがって、各発光領域からの出射光の僅かな色混ざりやクロストークをも防止することができる。
【0070】
遮光マスクとしては、カーボンブラックをシリコーン樹脂に添加したブラックマスク、酸化チタンをシリコーン樹脂シリコーン樹脂に添加したホワイトマスクなどを用いることができる。
【0071】
また、支持基板30の基材31が可視光を吸収する素材(例えば、シリコン)の場合には、支持基板30の側面に誘電体多層反射膜88を設けてもよい。吸収による光出力低下を抑制することができる。
【0072】
なお、波長変換部材81、82及び83上に、拡散板(散乱板)やプリズムレンズなどの光学部材を設け、配光特性、均一性を調整することができる。
【0073】
[第5の実施形態]
図11Aは、第5の実施形態による半導体発光装置90の上面図である。図11Bは、図11Aの線G-Gに沿った断面図であり、図11Cは、半導体発光装置90の裏面を示す図である。
【0074】
半導体発光装置90は、第4の実施形態の半導体発光素子80と、半導体発光素子80が実装された装置基板91とを有する。装置基板91上には、アノード配線93A1,93A2及び93A3とカソード配線93Bとが設けられている。
【0075】
また、装置基板91の裏面には、第1実装電極96A1、第2実装電極96A2及び第3実装電極96A3と共通実装電極96Bとが設けられている。第1実装電極96A1、第2実装電極96A2及び第3実装電極96A3は、ビア電極95A1、95A2及び95A3でアノード配線93A1,93A2及び93A3にそれぞれ接続され、共通実装電極96Bはビア電極95Bでカソード配線93Bに接続されている。
【0076】
半導体発光素子80は、カソード配線93Bの載置領域上に接合部材によって実装され、半導体発光素子80の共通カソード34はカソード配線93Bに電気的に接続されている。半導体発光素子80のアノード35A1、35A2及び35A3は、ボンディングワイヤBWによって、それぞれアノード配線93A1,93A2及び93A3に接続されている。
【0077】
また、カソード配線93B上には保護素子97が実装され、保護素子97の一方の端子はカソード配線93Bに接続されている。保護素子97の他方の端子はボンディングワイヤBWによってアノード配線93A2の延長部93EXに接続されている。保護素子97としてはツェナーダイオード又はバリスタなどを用いることができるが、これに限定されない。
【0078】
半導体発光素子80の発光半導体層20Aは分割されていないので、アノード配線93A1,93A2及び93A3の1つ(本実施形態では、中央のアノード配線93A2)とカソード配線93Bとの間に1つの保護素子97を設けることによって、発光素子全体の保護を行うことができる。
【0079】
すなわち、アノード配線93A2に隣接するアノード配線93A1又は93A3とカソード配線93B間に異常電流が流れても、発光半導体層20Aのp型半導体層23を介して異常電流はアノード配線93A2を流れるので、半導体発光素子80は異常電流から保護される。
【0080】
したがって、半導体発光装置90においては、保護素子を設けた発光領域に隣接する発光領域の保護素子を省略することができる。
【0081】
また、半導体発光装置90は、半導体発光素子80を含む装置基板91の上面全体を覆う封止部材98が設けられている。封止部材98には、半導体発光素子80からの光を拡散する拡散剤が含まれていてもよい。
【0082】
なお、半導体発光装置90の上方にのみ出光させたい場合は、装置基板91の周縁に半導体発光素子80、封止部材98を包含するように遮光性の枠体を設けることもできる。
【0083】
以上、詳細に説明したように、本発明の半導体発光装置によれば、簡便な1チップ構造を有し、多段階の光出力調整が容易で、また、1チップでフルカラー出力が可能なマルチセグメント型の半導体発光素子及び半導体発光装置を提供することができる。
【0084】
なお、上記した実施形態は適宜組み合わせて実施することができる。例えば、第2の実施形態においては、半導体発光素子10をマトリクス状に配した半導体発光装置について説明したが、フルカラー出力の半導体発光素子80(第4の実施形態)をマトリクス状に配した半導体発光装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10,70,80:半導体発光素子
20:発光機能層
21:n型半導体層、
22:発光層22
23:p型半導体層
25A1,25A2,25A3:pオーミック電極(素子電極)
25B:nオーミック電極(素子電極)
26:p側接合層
27:n側接合層
30:支持基板
31:基材(基板)
32:層間絶縁膜
33A1,33A2,33A3:基板電極(p電極)
33B:基板電極(n電極)
34:共通カソード(基板配線電極)
35A1,35A2,35A3:アノード(基板配線電極)
36:電極保護膜
50,60,90:半導体発光装置
81,82,83:波長変換部材
87:遮光マスク
93A1,93A2,93A3:アノード配線
93B:カソード配線
96A1,96A2,96A3:実装電極(p電極)
96B:共通実装電極(n電極)
97:保護素子
98:封止部材
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C