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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177830
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20241217BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E04B5/02 E
E04B5/02 T
E04B5/43 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096189
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小町 祐介
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正治
(72)【発明者】
【氏名】森 悠吾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓
(72)【発明者】
【氏名】今吉 浩一朗
(72)【発明者】
【氏名】小田 健人
(57)【要約】
【課題】鉄骨梁と直交集成板床とを有する建物の耐火性を確保する。
【解決手段】鉄筋コンクリートスラブ14は、鉄骨梁82の上に配置され鉄骨梁82によって支持されている。直交集成板床15は、鉄筋コンクリートスラブ14に対して横方向に配置され、鉄筋コンクリートスラブ14によって支持されている。鉄筋コンクリートスラブ14は、鉄骨梁82の上方から横方向に張り出し、直交集成板床15を支持する端部(プレキャストコンクリート部材42)を有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨梁の上に配置され前記鉄骨梁によって支持された鉄筋コンクリートスラブと、
前記鉄筋コンクリートスラブに対して横方向に配置され前記鉄筋コンクリートスラブによって支持された直交集成板床と
を備え、
前記鉄筋コンクリートスラブは、
前記鉄骨梁の上方から横方向に張り出し、前記直交集成板床を支持する端部を有する、
床構造。
【請求項2】
前記直交集成板床の上面及び下面を覆う耐火ボードと、
前記鉄筋コンクリートスラブの端部と前記耐火ボードとの間の隙間を塞ぐ耐火シールと
を更に備える、請求項1の床構造。
【請求項3】
千鳥状に配列された複数の前記直交集成板床を備える、
請求項1又は2の床構造。
【請求項4】
前記鉄筋コンクリートスラブの前記端部は、プレキャストコンクリート製である、
請求項1又は2の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直交集成板(CLT)を用いた床の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、柱梁鉄骨造床CLT構造を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】山佐木材株式会社「柱梁鉄骨造、床CLT構造の中大規模ビル型建物向けのCLTを用いた制震壁システムの開発」2021年3月31日、インターネット<URL: https://woodist.jimdo.com/app/download/11635664091/令和2年度最終報告書 (1).pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄骨梁は、熱伝導率が高いので、火災発生時に高温になり、その熱が直交集成床に伝わって、直交集成床が発火する危険がある。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
床構造は、鉄筋コンクリートスラブと、直交集成板床とを有する。前記鉄筋コンクリートスラブは、鉄骨梁の上に配置され前記鉄骨梁によって支持されている。前記直交集成板床は、前記鉄筋コンクリートスラブに対して横方向に配置され前記鉄筋コンクリートスラブによって支持されている。前記鉄筋コンクリートスラブは、前記鉄骨梁の上方から横方向に張り出し、前記直交集成板床を支持する端部を有する。
【発明の効果】
【0006】
前記床構造によれば、鉄骨梁と直交集成板床との間の距離を長くすることができるので、火災発生時に熱伝導率の高い鉄骨梁を介して伝わる熱により直交集成板床が高温になって発火するのを防ぐことができ、耐火性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】床構造の一例を示す平面図。
図2】床構造の一例を示す底面図。
図3】直交集成板床の一例を示す平面図。
図4】直交集成板床の一例を示す側面図。
図5】直交集成板床の一例を示す底面図。
図6】プレキャストコンクリート部材の一例を示す平面図。
図7】プレキャストコンクリート部材の一例を示す側面図。
図8】プレキャストコンクリート部材の一例を示す底面図。
図9】プレキャストコンクリート部材の一例を示す側面視断面図。
図10】床構造の一例を示す部分拡大側面視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び2を参照して、床構造10について説明する。
床構造10は、複数の柱81と複数の鉄骨梁82及び83とを有する建物の床を構成する構造である。柱81は、例えば鉄骨(S)製や鉄筋コンクリート(RC)製であり、±Z方向に延びている。鉄骨梁82は、例えば二つの柱81の間に架けられた大梁である。鉄骨梁83は、例えば二つの鉄骨梁82の間に架けられた小梁である。鉄骨梁82及び83は、例えば±X方向又は±Y方向に延びた鉄骨であり、格子状に配列されている。
【0009】
床構造10は、例えば、鉄筋コンクリートスラブ14と、複数の直交集成板床15とを有する。
【0010】
鉄筋コンクリートスラブ14は、鉄筋コンクリートによって形成された例えば略板状であり、鉄骨梁82又は83の上に配置され、鉄骨梁82又は83によって支持されている。鉄筋コンクリートスラブ14は、例えば、現場打ちコンクリート部材41と、プレキャストコンクリート部材42とを有する。プレキャストコンクリート部材42は、鉄骨梁82又は83の上方(+Z方向)から横方向(±Z方向に対して垂直な方向)に張り出し、直交集成板床15を支持する端部である。
なお、鉄筋コンクリートスラブ14は、全体がプレキャストコンクリート製であってもよいし、全体が現場打ちコンクリート製であってもよい。
【0011】
直交集成板床15は、直交集成板によって形成された例えば長方形板状であり、鉄筋コンクリートスラブ14に対して横方向に配置され、鉄筋コンクリートスラブ14によって支持されている。
複数の直交集成板床15は、千鳥状に配列されている。すなわち、直交集成板床15は、格子状に配列された複数の鉄骨梁82及び83によって区切られた複数の長方形領域のうち、±X方向又は±Y方向に隣接した領域ではなく、斜めに隣接した領域に配列されている。しかし、直交集成板床15が配列された長方形領域は、斜めに隣接している必要はなく、離れていてもよい。換言すると、直交集成板床15が配列された長方形領域は、鉄骨梁82又は83によって構成される辺を共有しない。直交集成板床15が配列された長方形領域と鉄骨梁82又は83によって構成される辺を共有する長方形領域の床は、必ず鉄筋コンクリートスラブ14によって構成される。また、直交集成板床15は、床構造10の外周に接する長方形領域には配列されていない。すなわち、直交集成板床15は、四辺とも必ず鉄筋コンクリートスラブ14のプレキャストコンクリート部材42によって支持される。これにより、建物の剛床仮定が成立し、建物の一体性を確保することができる。
【0012】
図3~5を参照して、直交集成板床15について説明する。
直交集成板床15は、例えば、上部51と、上部51の下(-Z方向)に配置された下部52とを有する。上部51及び下部52は、例えば略長方形板状である。上部51は、下部52よりも一回り大きく、四方(±X方向及び±Y方向)において、外縁が下部52よりも外側にある。この部分をプレキャストコンクリート部材42の上に載置することにより、直交集成板床15を鉄筋コンクリートスラブ14が支持する。
【0013】
図6~9を参照して、プレキャストコンクリート部材42について説明する。
プレキャストコンクリート部材42は、工場などで製造された鉄筋コンクリート部材であり、例えば、枠部43と、支持部44と、複数の鉄筋46とを有する。
枠部43は、コンクリートであり、例えば±Z方向に対して垂直な略長方形枠状であり、内周が直交集成板床15の上部51の外周に係合する。枠部43の外周には、横方向(±Z方向に対して垂直な方向)に延びる溝部45が設けられている。これにより、現場打ちコンクリート部材41とプレキャストコンクリート部材42との一体性が高くなる。
支持部44は、枠部43と一体に形成されたコンクリートであり、枠部43の内周の下側(-Z側)から内側に向けて突出した略長方形枠状であり、内周が直交集成板床15の下部52の外周に係合し、直交集成板床15の上部51の外縁部が載置されることにより、直交集成板床15を支持する。
鉄筋46は、枠部43及び支持部44の内部に配筋され、端部が枠部43の外周の溝部45の上下から外部に露出して、外側へ向けて突出している。
なお、プレキャストコンクリート部材42は、枠状でなく、例えば各辺ごとに独立した部材であってもよい。
【0014】
図10を参照して、床構造10について詳しく説明する。
現場打ちコンクリート部材41は、現場で製造された鉄筋コンクリート部材である。例えば、プレキャストコンクリート部材42を鉄骨梁82又は83の上に載置して設置したのち、プレキャストコンクリート部材42の鉄筋46に鉄筋47を接続して配筋し、プレキャストコンクリート部材42を型枠の少なくとも一部として使用して、生コンクリートを打設することにより、プレキャストコンクリート部材42と一体化された現場打ちコンクリート部材41を製造し、これにより、鉄筋コンクリートスラブ14を製造する。
【0015】
上述したとおり、鉄筋コンクリートスラブ14は、鉄骨梁82(又は83)の上に載置されることにより、鉄骨梁82(又は83)によって支持されている。
プレキャストコンクリート部材42によって構成された鉄筋コンクリートスラブ14の端部は、鉄骨梁82(又は83)から片持ちスラブ状に横方向に張り出している。直交集成板床15は、この張り出した端部の上に載置されることにより、鉄筋コンクリートスラブ14によって支持されている。
直交集成板床15を鉄筋コンクリートスラブ14の上に載置するに当たり、鉄筋コンクリートスラブ14の下側から突出した支持部44の上に、直交集成板床15の上部51の外縁部を載置しているので、直交集成板床15の上面と、鉄筋コンクリートスラブ14の上面とを面一にすることができる。
【0016】
このように、直交集成板床15を鉄骨梁82(又は83)の上に直接載置するのではなく、鉄骨梁82(又は83)の上に載置された鉄筋コンクリートスラブ14の横方向に張り出した端部の上に載置することにより、直交集成板床15と鉄骨梁82(又は83)との間の距離が長くなり、火災発生時に熱伝導率の高い鉄骨梁82(又は83)を介して伝わる熱により直交集成板床15が高温になって発火するのを防ぐことができる。
【0017】
床構造10は、更に、耐火ボード16と、耐火シール17とを有してもよい。
耐火ボード16は、直交集成板床15の上面及び下面を覆うように配置される。
耐火シール17は、鉄筋コンクリートスラブ14の端部と耐火ボード16との間を塞ぐ。
これにより、直交集成板床15の耐火性を更に高めることができる。
【0018】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0019】
環境負荷低減を目的として、木造のニーズが高くなっている。また、近年ではCLTの活用として、CLTの耐震壁やCLTの床の適用例が増えている。CLT造として、壁、床に活用する例もある一方、S造やRC造の一部の床に適用される例も増えている。
本提案は、鉄骨造の梁とCLT床の接合方法についてのものである。
中大規模の木造の場合、規模によっては耐火建築物とする必要があり、柱、梁、床は、耐火性能を確保している。鉄骨梁、CLT床単体では、耐火性能を確保する工法は既にあるが、鉄骨梁とCLT床の複合耐火の納まりは、あまり例がない。CLT床の耐火被覆としては耐火ボード、鉄骨梁の耐火被覆としてはロックウールを適用されるが、CLTと鉄骨梁が接する部分においては、どのように耐火性能を確保するかが課題となる。
本提案は、鉄骨梁の上にRCスラブを片持ちスラブで持ち出し、その上にCLT床を載せる工法である。鉄骨梁の上をRCスラブとすることで、鉄骨梁の耐火被覆は、通常の工法で対応できる。また、CLT床に設置する耐火ボードは、RCスラブに取り合わせて、かつ、耐火シールで埋めることにより、CLT床としての耐火性能を確保する。片持ちスラブの部分は、PCa(プレキャストコンクリート)を採用することで、施工性が向上する。また、PCaとCLTは、ともに乾式工法となるため、CLT床の取り外しが容易になる。CLT床とRCスラブとを千鳥配置とすることにより、建物の一体性(剛床)を確保している。
これにより、耐火の納まりの考え方が明快となる。また、PCaを活用することにより、CLT床を施工床として活用することができる。そして、千鳥配置とすることにより、剛床仮定が成立した設計が可能となる。
【符号の説明】
【0020】
10 床構造、14 鉄筋コンクリートスラブ、15 直交集成板床、41 現場打ちコンクリート部材、42 プレキャストコンクリート部材、43 枠部、44 支持部、45 溝部、46,47 鉄筋、51 上部、52 下部、16 耐火ボード、17 耐火シール、81 柱、82,83 鉄骨梁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10