(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177833
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241217BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K5/173 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096194
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】樋川 一好
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊
(72)【発明者】
【氏名】福田 好史
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB21
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP11
5H609QQ05
5H609SS21
(57)【要約】
【課題】軸受けの潤滑を維持しながら燃費及び電費を向上可能な冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置10は、第1軸受け5及びステータ7に向けてオイルCoを導出するための複数の導出部12と、導出部12から第1軸受け5に向けて導出されたオイルCoを、第1軸受け5の少なくとも下端がオイルCoに浸かるように貯留するための貯留部13と、貯留部13の開閉を行うための開閉部15と、を含む。開閉部15は、オイルCoが所定温度よりも低温であるときに貯留部13を閉状態に維持すると共に、オイルCoが所定温度以上であるときに機械的に変形して貯留部13を開状態とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、前記シャフトに設けられたロータと、前記ロータの周囲を取り囲むように設けられたステータと、前記シャフトを回転可能に支持する軸受けと、を備える電動機においてオイルによる潤滑及び冷却を行う冷却装置であって、
前記軸受け及び前記ステータに向けて前記オイルを導出するための複数の導出部と、
前記導出部から前記軸受けに向けて導出された前記オイルを、前記軸受けの少なくとも下端が前記オイルに浸かるように貯留するための貯留部と、
前記貯留部の開閉を行うための開閉部と、
を含み、
前記開閉部は、前記オイルが所定温度よりも低温であるときに前記貯留部を閉状態に維持すると共に、前記オイルが前記所定温度以上であるときに機械的に変形して前記貯留部を開状態とする、
冷却装置。
【請求項2】
前記電動機のハウジングにおける前記軸受けが埋設された壁部との間に、前記貯留部を形成するための堰部材を備え、
前記堰部材には前記貯留部に貯留された前記オイルを排出するための排出口が形成されており、
前記開閉部は、前記排出口を覆うように前記堰部材に設けられている、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記堰部材は、前記ハウジングへの前記軸受けの抜け止め部材と共通化されている、
請求項2に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータとジェネレータとが搭載された車両に適用される冷却システムが記載されている。このシステムでは、ポンプから吐出されたオイルがオイルクーラで冷却された後にジェネレータに供給され、再びポンプに取り入れられることで、オイルが循環させられる。このシステムは、オイルクーラで冷却されたオイルをハウジング内に導入し、ステータや軸受け等に供給する導入路を有している。また、このシステムでは、ジェネレータのハウジングの底部が、オイルが溜まる貯留部とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動機の冷却装置にあっては、例えば、外気温が低温であったり電動機が低負荷動作されていたりする際に、ポンプを停止してオイルの循環を停止することで、燃費や電費の向上を図ることが考えられる。しかし、上記特許文献1に記載の冷却システムでは、ポンプを停止すると軸受けへのオイルの供給が停止され、軸受けの潤滑が行われなくなるため、ポンプを停止することが困難であった。
【0005】
本開示は、軸受けの潤滑を維持しながら燃費及び電費を向上可能な冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る冷却装置は、シャフトと、シャフトに設けられたロータと、ロータの周囲を取り囲むように設けられたステータと、シャフトを回転可能に支持する軸受けと、を備える電動機においてオイルによる潤滑及び冷却を行う冷却装置であって、軸受け及びステータに向けてオイルを導出するための複数の導出部と、導出部から軸受けに向けて導出されたオイルを、軸受けの少なくとも下端がオイルに浸かるように貯留するための貯留部と、貯留部の開閉を行うための開閉部と、を含み、開閉部は、オイルが所定温度よりも低温であるときに貯留部を閉状態に維持すると共に、オイルが所定温度以上であるときに機械的に変形して貯留部を開状態とする。
【0007】
この冷却装置は、軸受け及びステータに向けてオイルを導出するための複数の導出部を備えている。したがって、例えば、電動機が高負荷動作時には、ポンプ等によりオイルを移送して当該導出部から導出させることで、オイルにより軸受けの潤滑を行いつつ、軸受け及びステータの冷却が可能である。一方、この冷却装置は、軸受けに向けて導出されたオイルを、軸受けの少なくとも下端が前記オイルに浸かるように貯留するための貯留部と、オイルが所定温度よりも低温であるときに貯留部を閉状態に維持すると共に、オイルが所定温度以上であるときに機械的に変形して貯留部を開状態とする開閉部と、を備えている。このため、電動機の低負荷時等においてオイルの温度が低いときには、貯留部が閉状態とされ、軸受けが浸かるようにオイルが貯留されたままとなる。したがって、この場合には、ポンプ等によるオイルの移送を停止しても、軸受けの潤滑が維持される。よって、軸受けの潤滑を維持しながらポンプ等を停止して燃費及び電費を向上可能である。他方、この冷却装置では、オイルが高温であるときには、開閉部の機械的な変形により貯留部が開状態となるため、軸受けを介したオイルの循環が阻害されない。なお、この冷却装置では、貯留部の開閉が、温度に応じた開閉部の機械的な変形により行われる。よって、貯留部の開閉のために温度センサや複雑な構造が不要となる。
【0008】
本開示に係る冷却装置は、電動機のハウジングにおける軸受けが埋設された壁部との間に、貯留部を形成するための堰部材を備え、堰部材には貯留部に貯留されたオイルを排出するための排出口が形成されており、開閉部は、排出口を覆うように堰部材に設けられていてもよい。この場合、開閉部が、ハウジングとの間で貯留部を形成する堰部材の一部(排出口)を覆うように設けられるため、容易且つ確実に貯留部の開閉を行うことが可能となる。
【0009】
本開示に係る冷却装置では、堰部材は、ハウジングへの軸受けの抜け止め部材と共通化されていてもよい。この場合、軸受けの潤滑を維持しながら燃費及び電費を向上させるに際して、部品点数及びコストの削減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、軸受けの潤滑を維持しながら燃費及び電費を向上可能な冷却装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るモータの概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたII-II線に沿っての模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態に係るモータについて、図面を参照して説明する。各図の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0013】
図1は、本実施形態に係るモータの概略断面図である。
図1に示されるモータ1(電動機)は、例えば、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等の電動車に搭載され得る。
【0014】
モータ1は、ハウジング2、シャフト3、ロータ4、第1軸受け5、第2軸受け6、ステータ7、及び冷却装置10を備えている。ハウジング2は、シャフト3の一部(先端部)、ロータ4、第1軸受け5、第2軸受け6、及び、ステータ7を収容している。ハウジング2は、筒状(例えば円筒状)の側壁部2aと、側壁部2aの一端に取り付けられたブラケット2bと、側壁部2aのブラケット2bと反対側の端部において側壁部2aと一体に形成された底壁部2cと、によって構成されている。
【0015】
シャフト3は、一方向に沿って延在する棒状の部材である。シャフト3は、シャフト3の延在方向(以下、「第1方向」という)に互いに離間して配置された第1軸受け5及び第2軸受け6によって、第1方向に沿った軸の周りに回転可能に支持されている。シャフト3は、モータ1が発生した回転力によって回転することで、例えば外部の機器に動力を伝達する部材である。
【0016】
ロータ4は、シャフト3に設けられている。ロータ4は、シャフト3と共に回転する円筒状の部材である。ロータ4は、例えば、内部にロータ磁界を形成するための永久磁石(同期機の場合)、もしくは、籠形状のアルミニウム(誘導機の場合)が配置されている。ロータ4は、当該ロータ磁界と、ステータ7によって形成されるステータ磁界との相互作用によって、シャフト3と連動して第1方向に沿った軸の周りに回転する。
【0017】
ステータ7は、第1方向D1に沿ってロータ4の周囲を取り囲むように設けられた筒状(ここでは円筒状)の部材である。ステータ7は、ステータコア7aとコイル7bとを含む。ステータコア7aは、例えば、電磁鋼板を積層して溶接することによって構成され得る。ステータコア7aには、ステータ磁界を形成するためのコイル7bが巻回されている。第1方向におけるステータコア7aの両端には、コイル7bの一部であるコイルエンドが形成されて突出している。
【0018】
ステータ7は、ステータボルト等の他の部材によってハウジング2に固定され得る。モータ1は、例えば三相交流モータである。この場合、コイル7bは、ステータ7の周方向に沿って、U相、V相、及び、W相の各層に対応した複数の部分が配列されて構成され得る。
【0019】
第1軸受け5は、例えば、ブラケット2bに設けられた凹部に嵌入されて保持されている。一例として、第1軸受け5は、ブラケット2bに設けられた凹部に挿入された状態において、ブラケット2bから第1軸受け5にわたって設けられた板状の抜け止め部材8によってブラケット2bから抜けないように固定されている。第2軸受け6は、例えば、底壁部2cに設けられた凹部に嵌入されて保持されている。すなわち、第1軸受け5は、少なくとも一部がブラケット2bに埋設されており、第2軸受け9bは、少なくとも一部が底壁部2cに埋設されている。
【0020】
図2は、
図1に示されたII-II線に沿っての模式的な断面図である。
図1,2に示されるように、冷却装置10は、オイルによる潤滑及び冷却を行うためのものである。冷却装置10は、オイルCoが流通する冷却パイプ11を有している。冷却パイプ11は、ハウジング2の外部からハウジング2の内部に貫設されている。冷却パイプ11の一端は、オイルCoを移送するための電動オイルポンプ(不図示)に接続されている。冷却パイプ11には、当該冷却パイプ11内を流通したオイルCoを、第1軸受け5、第2軸受け6、及びステータ7に向けて導出するための複数の導出部12が設けられている。
【0021】
冷却パイプ11は、第1方向に沿ってハウジング2の一端から他端にわたって延在しており、導出部12は、第1方向に沿って互いに離間して設けられている。複数の導出部12のうちの一部は、コイル7bの一対のコイルエンドのそれぞれの上に設けられている。当該導出部12から導出されたオイルCoは、コイルエンドを冷却しつつハウジング2の底部2pに滴下される。
【0022】
また、導出部12のうちの別の一部は、ステータコア7a上に設けられている。当該導出部12から導出されたオイルCoは、ステータコア7aを冷却しつつハウジング2の底部2pに滴下される。ハウジング2の底部2pには、冷却パイプ11を流通して導出部12から滴下されたオイルCoの少なくとも一部は、ハウジング2の底部2pに貯留させられ得る。ハウジング2の底部2pに貯留されたオイルCoは、例えば底部2pに設けられた排出部及び電動オイルポンプ(いずれも不図示)等を用いてハウジング2の外部に排出され、例えば冷却を経て冷却パイプ11に循環され得る。
【0023】
複数の導出部12のうちのさらに別の一部は、第1軸受け5及び第2軸受け6上に設けられている。当該導出部12から導出されたオイルCoは、例えばブラケット2bや底壁部2cを伝って第1軸受け5及び第2軸受け6のそれぞれに供給され、第1軸受け5及び第2軸受け6の冷却及び潤滑に供される。
【0024】
冷却装置10は、導出部12から第1軸受け5に向けて導出されたオイルCoを第1軸受け5において貯留する貯留部13を有している。貯留部13は、第1軸受け5の少なくとも下端がオイルCoに浸かるようにオイルCoを貯留する。貯留部13は、ハウジング2における第1軸受け5が埋設された壁部であるブラケット2bに対して、堰部材14が設けられることにより、ブラケット2bと堰部材と14との間に形成される。なお、堰部材14とブラケット2bとの間には、抜け止め部材8が介在されてもよい。
【0025】
堰部材14は、第1方向からみて、第1軸受け5の少なくとも下端に重複するように設けられた半円板状の部材である。堰部材14には、貯留部13に貯留されたオイルCoを排出するための排出口14pが形成されている。そして、堰部材14には、当該排出口14pを覆うように開閉部15が設けられている。
【0026】
開閉部15は、貯留部13の開閉を行うためのものである。開閉部15は、温度変化に応じて機械的に変形する材料(例えばバイメタル)により板状に構成されている。これにより、開閉部15は、貯留部13に貯留されたオイルCoが所定温度よりも低温であるときに排出口14pを閉塞して貯留部13を閉状態に維持する。また、開閉部15は、当該オイルCoが所定温度以上であるときに機械的に変形し、排出口14pを開放して貯留部13を開状態とする。
【0027】
以上説明したように、冷却装置10は、第1軸受け5、第2軸受け6、及びステータ7に向けてオイルCoを導出するための複数の導出部12を備えている。したがって、例えば、モータ1が高負荷動作時には、電動オイルポンプ(不図示)によりオイルCoを移送して当該導出部12から導出させることで、オイルCoにより第1軸受け5及び第2軸受け6の潤滑を行いつつ、第1軸受け5、第2軸受け6、及びステータ7の冷却が可能である。
【0028】
一方、冷却装置10は、第1軸受け5に向けて導出されたオイルCoを、第1軸受け5の少なくとも下端がオイルCoに浸かるように貯留するための貯留部13と、オイルCoが所定温度よりも低温であるときに貯留部13を閉状態に維持すると共に、オイルCoが所定温度以上であるときに機械的に変形して貯留部13を開状態とする開閉部15と、を備えている。このため、モータ1の低負荷時等においてオイルCoの温度が低いときには、貯留部13が閉状態とされ、第1軸受け5が浸かるようにオイルCoが貯留されたままとなる。したがって、この場合には、電動オイルポンプを停止してオイルCoの移送を停止しても、第1軸受け5の潤滑が維持される。よって、第1軸受け5の潤滑を維持しながら電動オイルポンプ等を停止して燃費及び電費を向上可能である。
【0029】
他方、冷却装置10では、オイルCoが高温であるときには、開閉部15の機械的な変形により貯留部13が開状態となるため、第1軸受け5を介したオイルCoの循環が阻害されない。なお、冷却装置10では、貯留部13の開閉が、温度に応じた開閉部15の機械的な変形により行われる。よって、貯留部13の開閉のために温度センサや複雑な構造が不要となる。
【0030】
また、冷却装置10は、モータ1のハウジング2における第1軸受け5が埋設された壁部(ブラケット2b)との間に、貯留部13を形成するための堰部材14を備えている。堰部材14には貯留部13に貯留されたオイルCoを排出するための排出口14pが形成されている。開閉部15は、当該排出口14pを覆うように堰部材14に設けられている。このように、開閉部15が、ハウジング2との間で貯留部13を形成する堰部材14の一部(排出口14p)を覆うように設けられるため、容易且つ確実に貯留部13の開閉を行うことが可能となる。
【0031】
以上の実施形態は、本発明の一側面を説明したものである。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されず、任意に変形され得る。
【0032】
例えば、上記実施形態では、第1軸受け5の抜け止め部材8とは別に、堰部材14が設けられる形態について説明した。しかし、堰部材14は、抜け止め部材8と共通化されてもよい。換言すれば、冷却装置10では、抜け止め部材8によって、第1軸受け5の少なくとも下端が浸かるようにオイルCoを貯留する貯留部13が形成されてもよい。この場合、第1軸受け5の潤滑を維持しながら燃費及び電費を向上させるに際して、部品点数及びコストの削減を図ることが可能となる。
【0033】
また、上記実施形態では、第1軸受け5に対して貯留部13、堰部材14、及び開閉部15を設ける構成について説明したが、第2軸受け6に対しても同様の構成を採用することが可能である。
【0034】
さらに、上記実施形態では、貯留部13を形成する堰部材14に排出口14pを設け、開閉部15によって当該排出口14pを開閉する形態について説明した。しかし、上記堰部材14と同様の形状を呈した開閉部15を用いることにより、堰部材14を省略してもよい。すなわち、開閉部15とブラケット2bとの間に貯留部13が形成されてもよい。この場合には、温度変化に応じて開閉部15が機械的に変形することにより、開閉部15とブラケット2bとの間に隙間を生じさせ、貯留部13を開放することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…モータ(電動機)、2…ハウジング、3…シャフト、4…ロータ、5…第1軸受け、6…第2軸受け、7…ステータ、8…抜け止め部材、10…冷却装置、12…導出部、13…貯留部、14…堰部材、14p…排出口、15…開閉部。