(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177839
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ロボットシステムおよびワークの処理方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096203
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 渉
(72)【発明者】
【氏名】和田 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康隆
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707BS10
3C707CV08
3C707CW08
3C707KS33
3C707KW03
3C707KX10
3C707MS02
(57)【要約】
【課題】ロボットに要求される出力を低減すること。
【解決手段】ロボットシステム100は、ワークWを把持可能なロボットアーム610を有するロボット600と、ロボットアーム610の動作を制御する制御装置700と、を備え、制御装置700は、ロボットアーム610がワークWを把持した状態でワークWを接地面に接触させることと、ロボットアーム610に外力が作用する第1の方向にロボットアーム610を移動可能に制御することと、少なくとも第1の方向、および、第1の方向と反対方向である第2の方向以外の方向についてロボットアーム610の移動を制限するように制御することと、を実行し、外力は、第1の方向の分力である第1分力が、第1の方向に直交する方向の分力である第2分力よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持可能なロボットアームを有するロボットと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記ロボットアームが前記ワークを把持した状態で前記ワークを接地面に接触させることと、
前記ロボットアームに外力が作用する第1の方向に前記ロボットアームを移動可能に制御することと、
少なくとも前記第1の方向、および、前記第1の方向と反対方向である第2の方向以外の方向について前記ロボットアームの移動を制限するように制御することと、
を実行し、
前記外力は、前記第1の方向の分力である第1分力が、前記第1の方向に直交する方向の分力である第2分力よりも大きい、
ロボットシステム。
【請求項2】
前記接地面は、変形可能に構成されている、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記接地面は、前記ワークの外形形状に応じて変形可能に構成されている、
請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記ワークを前記接地面と異なる2面で挟持する挟持面を備え、
前記挟持面は、前記ワークの外形形状に応じて変形可能に構成されている、
請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項5】
ロボットアームにワークを把持させるステップと、
前記ロボットアームが前記ワークを把持した状態で前記ワークを接地面に接触させるステップと、
前記ワークを接地面に接触させるステップの後、前記ロボットアームに外力が作用する第1の方向に前記ロボットアームを移動可能に制御しつつ、少なくとも前記第1の方向、および、前記第1の方向と反対方向である第2の方向以外の方向について前記ロボットアームの移動を制限する第1制御モードで前記ロボットアームを制御するステップと、
前記第1制御モードで前記ロボットアームを制御するステップの後、前記ロボットアームが前記ワークを把持した状態で、前記ワークに対し前記外力を作用させる処理を実行するステップと、
を含み、
前記外力は、前記第1の方向の分力である第1分力が、前記第1の方向に直交する方向の分力である第2分力よりも大きい、
ワークの処理方法。
【請求項6】
前記ワークに対し前記外力を作用させる処理を実行するステップの後、前記ワークの搬送方向以外の方向について前記ロボットアームの移動を制限する第2制御モードで前記ロボットアームを制御するステップと、
前記第2制御モードで前記ロボットアームを制御するステップの後、前記ロボットアームが前記ワークを把持した状態で前記ワークの姿勢を変え、前記ワークを前記接地面に接触させるステップと、
を含む、
請求項5に記載のワークの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットシステムおよびワークの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、載置台に載置されたワークを別の載置台に移動させるため、ワークを保持するロボットアームが活用されている。例えば、特許文献1には、載置台に載置されたワークを第1保持部と第2保持部との間で挟持して持ち上げ、別の載置台に向けて移動させた後、下降することでワークを別の載置台に載置するロボットアームについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロボットアームがワークを保持した状態でワークに対し処理を行う場合、ロボットアームは、ワークの処理中に加えられる外力以上の力を発生可能に構成する必要がある。しかし、その場合、ロボットアームがワークに加えられる外力以上の力を発生させるために、高出力の大型ロボットが必要になるという課題がある。
【0005】
本開示の目的は、ロボットに要求される出力を低減することが可能なロボットシステムおよびワークの処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のロボットシステムは、ワークを把持可能なロボットアームを有するロボットと、ロボットアームの動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、ロボットアームがワークを把持した状態でワークを接地面に接触させることと、ロボットアームに外力が作用する第1の方向にロボットアームを移動可能に制御することと、少なくとも第1の方向、および、第1の方向と反対方向である第2の方向以外の方向についてロボットアームの移動を制限するように制御することと、を実行し、外力は、第1の方向の分力である第1分力が、第1の方向に直交する方向の分力である第2分力よりも大きい。
【0007】
接地面は、変形可能に構成されていてもよい。
【0008】
接地面は、ワークの外形形状に応じて変形可能であってもよい。
【0009】
ワークを接地面と異なる2面で挟持する挟持面を備え、挟持面は、ワークの外形形状に応じて変形可能であってもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のワークの処理方法は、ロボットアームにワークを把持させるステップと、ロボットアームがワークを把持した状態でワークを接地面に接触させるステップと、ワークを接地面に接触させるステップの後、ロボットアームに外力が作用する第1の方向にロボットアームを移動可能に制御しつつ、少なくとも第1の方向、および、第1の方向と反対方向である第2の方向以外の方向についてロボットアームの移動を制限する第1制御モードでロボットアームを制御するステップと、第1制御モードでロボットアームを制御するステップの後、ロボットアームがワークを把持した状態で、ワークに対し外力を作用させる処理を実行するステップと、を含み、外力は、第1の方向の分力である第1分力が、第1の方向に直交する方向の分力である第2分力よりも大きい。
【0011】
ワークに対し外力を作用させる処理を実行するステップの後、ワークの搬送方向以外の方向についてロボットアームの移動を制限する第2制御モードでロボットアームを制御するステップと、第2制御モードでロボットアームを制御するステップの後、ロボットアームがワークを把持した状態でワークの姿勢を変え、ワークを接地面に接触させるステップと、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ロボットに要求される出力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るロボットシステムの構成を説明するための概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ロボットの構成を説明するための概略構成図である。
【
図4】
図4は、ワークおよび治具の一部を示す概略上面図である。
【
図5】
図5は、ワークの加工処理時におけるロボットアームおよび加工装置の概略構成図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る制御装置を用いたワークの処理方法の一例を説明するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るロボットシステム100の構成を説明するための概略構成図である。
図1に示すように、ロボットシステム100は、ワーク保管装置200と、組付装置300と、加工装置400と、溶接装置500と、ロボット600と、制御装置700とを含む。
【0016】
ワーク保管装置200は、多種多様な複数のワークWを保管する。ワーク保管装置200に保管されるワークWは、組付装置300により組み付けられる前の複数のワークや、加工装置400により加工される前のワークや、溶接装置500により溶接される前の複数のワークを含む。また、ワークWは、例えば、組付装置300により組み付けられた後のワークや、加工装置400により加工された後のワークや、溶接装置500により溶接された後のワークを含む。
【0017】
組付装置300は、ロボット600によりワーク保管装置200から取り出され、移動された複数のワークWの組み付けを行う装置である。ただし、これに限定されず、組付装置300は、加工装置400により加工され、ロボット600により移動された複数のワークWの組み付けを行ってもよい。また、組付装置300は、溶接装置500により溶接され、ロボット600により移動された複数のワークWの組み付けを行ってもよい。組付装置300により組み付けが行われたワークWは、ロボット600により加工装置400や、溶接装置500や、ワーク保管装置200に移動される。
【0018】
加工装置400は、ロボット600によりワーク保管装置200から取り出され、移動されたワークWの加工を行う装置である。ただし、これに限定されず、加工装置400は、組付装置300により組み付けられ、ロボット600により移動されたワークWの加工を行ってもよい。また、加工装置400は、溶接装置500により溶接され、ロボット600により移動されたワークWの加工を行ってもよい。加工装置400により加工が行われたワークWは、ロボット600により組付装置300や、溶接装置500や、ワーク保管装置200に移動される。
【0019】
溶接装置500は、ロボット600によりワーク保管装置200から取り出され、移動されたワークWの溶接を行う装置である。ただし、これに限定されず、溶接装置500は、組付装置300により組み付けられ、ロボット600により移動されたワークWの溶接を行ってもよい。また、溶接装置500は、加工装置400により加工され、ロボット600により移動されたワークWの溶接を行ってもよい。溶接装置500により溶接が行われたワークWは、ロボット600により組付装置300や、加工装置400や、ワーク保管装置200に移動される。
【0020】
ロボット600は、ワーク保管装置200に保管されているワークWを保持して取り出し、組付装置300、加工装置400、あるいは、溶接装置500に移動させる装置である。ロボット600は、
図1中、時計回り、および、反時計回りに回転可能に構成される。ロボット600が
図1中、時計回り、および、反時計回りに回転することで、ロボット600のロボットアーム610が
図1中、時計回り、および、反時計回りに回転する。
【0021】
例えば、
図1に示すように、ロボット600が
図1中時計回りの矢印方向に回転することで、ロボットアーム610が矢印方向に回転する。ロボットアーム610がワークWを保持した状態で、
図1中時計回りおよび反時計回りに回転することで、ワークWをワーク保管装置200、組付装置300、加工装置400、溶接装置500の間で移動させることができる。なお、ロボット600は、制御装置700と接続され、制御装置700の制御指令に基づいて動作が制御される。
【0022】
制御装置700は、ロボットシステム100の全体を制御する。つまり、制御装置700は、ワーク保管装置200、組付装置300、加工装置400、溶接装置500、ロボット600を制御する。
【0023】
制御装置700は、1つまたは複数のプロセッサ700aと、プロセッサ700aに接続される1つまたは複数のメモリ700bと、を有する。プロセッサ700aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ700bは、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0024】
図2は、本実施形態に係る制御装置700の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、
図2に示されるように、制御装置700は、ロボット制御部710を含む。ロボット制御部710は、ロボット600に制御指令を送ることでロボット600を制御し、ロボットアーム610の動作を制御する。ロボット制御部710の詳細な制御については後述する。
【0025】
なお、ロボット制御部710により行われる以下で説明する処理を含む各種処理は、プロセッサ700aによって実行され得る。詳細には、メモリ700bに記憶されているプログラムをプロセッサ700aが実行することにより、各種処理が実行される。
【0026】
図3は、ロボット600の構成を説明するための概略構成図である。
図3に示すように、ロボット600は、ロボットアーム610と、力覚センサ620とを備える。また、加工装置400は、載置台410と、治具420と、不図示の加工機器とを備える。
【0027】
なお、本実施形態において、組付装置300および溶接装置500は、加工装置400と類似した構成を有する。具体的に、組付装置300は、載置台410と、治具420と、不図示の組付機器を備える。また、溶接装置500は、載置台410と、治具420と、不図示の溶接機器を備える。
【0028】
このように、本実施形態では、組付装置300、加工装置400、溶接装置500は、それぞれ載置台410および治具420を有し、載置台410および治具420の構成や動作は、組付装置300、加工装置400、溶接装置500の間で同じである。そのため、ここでは、ロボットアーム610により搬送されたワークWを加工装置400により加工処理する例について説明し、組付装置300による組付処理および溶接装置500による溶接処理については説明を省略する。
【0029】
ロボットアーム610は、複数のリンク部611、612、613、614と、複数の関節部615、616、617と、ベース部材618とを有する。リンク部611、612、613、614は、棒状の部材である。
【0030】
リンク部611は、鉛直方向に延在する。リンク部611の基端は、ベース部材618の上面に取り付けられている。ベース部材618は、地面に設置されている。リンク部611は、当該リンク部611の中心軸を中心に回転可能に設けられている。リンク部611の先端は、関節部615を介してリンク部612の基端と接続されている。関節部615は、水平方向の軸を中心に回転可能に設けられている。関節部615の回転動作により、リンク部612が関節部615の回転軸を中心に回転する。
【0031】
リンク部612の先端は、関節部616を介してリンク部613の基端と接続されている。関節部616は、水平方向の軸を中心に回転可能に設けられている。リンク部613は、関節部616から関節部617まで延在する。関節部616の回転動作により、リンク部613が関節部616の回転軸を中心に回転する。
【0032】
リンク部613は、当該リンク部613の中心線を中心に回転可能に設けられている。リンク部613の先端は、関節部617を介してリンク部614の基端と接続されている。関節部617は、水平方向の軸を中心に回転可能に設けられている。関節部617の回転動作により、リンク部614が関節部617の回転軸を中心に回転する。リンク部614は、当該リンク部614の中心線を中心に回転可能に設けられている。
【0033】
リンク部614の先端には、把持部材614aが取り付けられている。把持部材614aは、例えば、
図1に示すようにワークWの両側に一対設けられ、ワークWを両側から把持可能に構成される。把持部材614aがワークWを把持し、各リンク部611、613、614、各関節部615、616、617が回転することで、ロボットアーム610は、ワークWを直交三軸方向に移動させることができ、また、直交三軸周りに回転させることができる。
【0034】
力覚センサ620は、ロボットアーム610に作用する外力を検出するセンサである。本実施形態では、力覚センサ620は、リンク部614の先端に取り付けられている。ただし、これに限定されず、力覚センサ620は、ロボットアーム610のうちリンク部614と異なる部位に取り付けられてもよい。力覚センサ620としては、例えば、直交三軸方向の力と各軸周りのトルクを計測可能な六軸センサが用いられる。この場合、力覚センサ620は、ロボットアーム610に作用する六自由度の力と三軸周りのトルクを検出することができる。ただし、力覚センサ620は、ロボットアーム610に作用する力を検出できるものであればよく、この例に限定されない。
【0035】
加工装置400において、載置台410は、地面に設置されている。治具420は、載置台410の上面に取り付けられている。治具420は、ワークWの下面Waと鉛直方向に対向する位置に、第1変形部422を有する。
【0036】
第1変形部422は、ワークWの下面Waと接触可能な接地面(当接面)422aを有する。第1変形部422の変形前の状態において、接地面422aは、水平方向と平行な平面である。第1変形部422は、ワークWの下面Waと接触することでワークWの下面Waを支持することができる。
【0037】
本実施形態では、ワークWの下面Waは、平面形状でなく、部分的に突出した突出形状、部分的に窪んだ窪み形状、部分的に湾曲した湾曲形状等を有する。ただし、これに限定されず、ワークWの下面Waは、平面形状であってもよい。なお、本実施形態のワークWの外形形状に関する情報は、予め制御装置700の不図示の記憶部に記憶されているが、通信により制御装置700との間で情報の授受を行うなど他の方法を用いてもよい。
【0038】
治具420は、制御装置700と電気的に接続される。治具420は、制御装置700から制御指令を受信可能に構成される。また、第1変形部422は、変形可能に構成されている。治具420は、制御装置700から制御指令を受信すると、当該制御指令に基づいて、不図示のアクチュエータにより第1変形部422を変形させる。本実施形態では、治具420には、ワークWの外形形状に関する情報を含む制御指令が送信される。治具420は、当該制御指令に基づいて、例えば、第1変形部422の接地面422aをワークWの下面Waの外形形状に応じて変形させる。また、治具420は、ワークWの下面Waの外形形状に応じて変形した第1変形部422をロックし、接地面422aの形状を保持する。
【0039】
例えば、第1変形部422は、ワークWに近接する近接方向および離隔する離隔方向に移動可能に構成された複数のピンにより構成される。ただし、これに限定されず、第1変形部422は、ワークWの外形形状に応じて変形およびロック可能に構成されていればよい。例えば、第1変形部422は、ワークWに接触する接触部材と、当該接触部材をワークWに近接する近接方向および離隔する離隔方向に移動可能なアクチュエータにより構成されてもよい。アクチュエータは、油圧、空圧、電動のアクチュエータであってもよい。
【0040】
第1変形部422は、ワークWの下面Waの外形形状に応じて変形し、ロックされた後、ワークWの下面Waに接触することで、ワークWの下面Waを支持することができる。ここで、第1変形部422のうちワークWの下面Waと接触する接触部位が接地面422aとなる。
【0041】
このように、治具420は、第1変形部422を、ワークWの下面Waの外形形状に応じた形状に変形させ、その形状をロックすることで、接地面422aに接触するワークWの下面Waを支持することができる。本実施形態では、ロボットアーム610に把持されたワークWの下面Waは、形状がロックされた第1変形部422の接地面422aに載置される。このとき、例えば、不図示の加工機器によりワークWの上面に鉛直下方向の荷重(以下、外力ともいう)がかけられた場合、治具420の第1変形部422は、ワークWの上面にかけられた外力を受けることができる。つまり、第1変形部422の接地面422aは、ワークWと接触することでワークWに作用する外力を受けることが可能な外力受け面として機能する。
【0042】
なお、本実施形態では、第1変形部422は、ワークWの外形形状に応じて変形する例について説明するが、第1変形部422の変形形状は、ワークWの外形形状に応じた形状に限定されない。具体的に、第1変形部422は、ワークWに作用する外力を受けることができるようにワークWを支持できればよく、少なくともワークWを3点で支持する3つの支持部を有していればよい。
【0043】
例えば、ワークWに外力が作用する点から当該外力が作用する方向に延長した延長線が、3つの支持部の支持点を結んだ三角形状の領域を通過する場合、第1変形部422は、ワークWを支持するとともにワークWに作用する外力を受けることができる。そのため、第1変形部422は、ワークWに外力が作用する点から当該外力が作用する方向に延長した延長線が通過する領域を形成可能な少なくとも3つの支持部を形成するように変形されてもよい。
【0044】
図4は、ワークWおよび治具420の一部を示す概略上面図である。
図4に示すように、治具420は、ワークWの一対の側面Wbと水平方向に対向する位置に、第2変形部424を有する。
【0045】
第2変形部424は、ワークWの一対の側面Wb、Wbと接触可能な挟持面(当接面)424aを有する。第2変形部424の変形前の状態において、挟持面424aは、鉛直方向と平行な平面である。第2変形部424は、ワークWの一対の側面Wbと接触することでワークWの一対の側面Wbを支持する。
【0046】
本実施形態では、ワークWの一対の側面Wbは、平面形状でなく、部分的に突出した突出形状、部分的に窪んだ窪み形状、部分的に湾曲した湾曲形状等を有する。ただし、これに限定されず、ワークWの一対の側面Wbは、平面形状であってもよい。
【0047】
第2変形部424は、変形可能に構成されている。治具420は、制御装置700から制御指令を受信すると、当該制御指令に基づいて、不図示のアクチュエータにより第2変形部424を変形させる。本実施形態では、治具420には、ワークWの外形形状に関する情報を含む制御指令が送信される。治具420は、当該制御指令に基づいて、例えば、第2変形部424の挟持面424aをワークWの一対の側面Wbの外形形状に応じて変形させる。また、治具420は、ワークWの一対の側面Wbの外形形状に応じて変形した第2変形部424をロックし、挟持面424aの形状を保持する。
【0048】
例えば、第2変形部424は、ワークWに近接する近接方向および離隔する離隔方向に移動可能に構成された複数のピンにより構成される。ただし、これに限定されず、第2変形部424は、ワークWの外形形状に応じて変形およびロック可能に構成されていればよい。例えば、第2変形部424は、ワークWに接触する接触部材と、当該接触部材をワークWに近接する近接方向および離隔する離隔方向に移動可能なアクチュエータにより構成されてもよい。アクチュエータは、油圧、空圧、電動のアクチュエータであってもよい。
【0049】
第2変形部424は、ワークWの一対の側面Wbの外形形状に応じて変形し、ロックされた後、ワークWの一対の側面Wbに接触することで、ワークWの一対の側面Wbを支持することができる。ここで、第2変形部424のうちワークWの一対の側面Wbと接触する接触部位が挟持面424aとなる。挟持面424aは、ワークWを接地面422aと異なる2面で挟持する。
【0050】
このように、治具420は、第2変形部424を、ワークWの一対の側面Wbの外形形状に応じた形状に変形させ、その形状をロックすることで、挟持面424aに接触するワークWの一対の側面Wbを支持することができる。本実施形態では、ロボットアーム610に把持されたワークWの一対の側面Wbは、形状がロックされた第2変形部424の挟持面424aに挟持される。このとき、例えば、不図示の加工機器によりワークWの上面に所定の回転軸周りのトルクがかけられた場合、治具420の第2変形部424は、ワークWにかけられたトルクを受けることができる。つまり、第2変形部424の挟持面424aは、ワークWと接触することでワークWに作用する外力を受けることが可能な外力受け面として機能する。
【0051】
ここで、
図3で説明したように、本実施形態のロボットアーム610は、ワークWを直交三軸方向に移動させることができ、また、直交三軸周りに回転させることができる。つまり、ロボットアーム610は、ワークWを直交三軸方向に移動可能な並進3自由度を有し、また、ワークWを直交三軸周りに回転可能な回転3自由度を有する。
【0052】
そして、
図3および
図4で説明したように、本実施形態の治具420は、第1変形部422および第2変形部424を有している。本実施形態では、第1変形部422は、ワークWに対し鉛直下方向に設けられ、ワークWと当接することで、ワークWに作用する鉛直下方向の外力を受けることができる。また、第2変形部424は、ワークWに対し、例えば一対の側面Wbと左右方向に対向する位置に一対設けられ、ワークWと当接することで、ワークWに作用する左右方向の外力を受けることができる。
【0053】
ただし、これに限定されず、第1変形部422は、ワークWに対し鉛直上方向に設けられ、ワークWに作用する鉛直上方向の外力を受けるようにしてもよい。また、第2変形部424は、ワークWに対し、例えば、前後方向に一対設けられ、ワークWに作用する前後方向の外力を受けるようにしてもよい。すなわち、第1変形部422および第2変形部424は、ワークWに対し、上下方向、左右方向、前後方向の直交三軸方向のうちいずれかの並進方向に作用する外力を受けることができるように構成される。換言すれば、第1変形部422および第2変形部424は、直交三軸方向のうち、ワークWに外力が作用する方向の並進移動を制限するものであり、ワークWの並進3自由度の少なくともいずれかを制限するものである。
【0054】
加えて、第1変形部422および第2変形部424は、上下方向、左右方向、前後方向の直交三軸周りのいずれかの軸周りに作用するトルクを受けることができるように構成される。例えば、第1変形部422をワークWに対し上下方向に一対設けることで、ワークWの左右方向の軸周り、および、前後方向の軸周りのトルクを受けることができる。また、第2変形部424をワークWに対し左右方向に一対設けることで、ワークWの前後方向の軸周り、および、上下方向の軸周りのトルクを受けることができる。また、第2変形部424をワークWに対し前後方向に一対設けることで、ワークWの左右方向の軸周り、および、上下方向の軸周りのトルクを受けることができる。換言すれば、第1変形部422および第2変形部424は、直交三軸周りのうち、ワークWにトルクが作用する方向の回転移動を制限するものであり、ワークWの回転3自由度の少なくともいずれかを制限するものである。ここでは、ワークWに対し直交三軸方向の並進方向に作用する力、および、直交三軸周りの回転方向に作用するトルクをまとめて、外力と表現する。
【0055】
なお、本実施形態では、第2変形部424は、ワークWの外形形状に応じて変形する例について説明するが、第2変形部424の変形形状は、ワークWの外形形状に応じた形状に限定されない。具体的に、第2変形部424は、ワークWに作用する外力であるトルクを受けることができるようにワークWを支持できればよく、少なくともワークWを1点で支持する1つの支持部を有していればよい。すなわち、
図4に示す本実施形態の第2変形部424に代わり、トルクを受けることが可能なワークWを少なくとも1点で支持する支持部材が用いられてもよい。
【0056】
上述したように、本実施形態のロボットアーム610は、ワークWを直交三軸周りに回転可能な回転3自由度を有する。ここで、例えば、ワークWに直交三軸周りのうち所定の回転軸周りのトルクがかけられる場合、ワークWは、所定の回転軸周りに回転移動しようとする。当該所定の回転軸周りのトルクを受け、ワークWの回転移動を制限するためには、当該所定の回転軸と直交する断面において、ワークWを支持する少なくとも1点の支持点があればよい。少なくとも1点の支持点は、当該断面において、所定の回転軸とワークWの外面との間の距離が、所定の回転軸と支持点との間の距離に対し、トルクの回転方向と反対方向に向かって増加する条件を満たす点である。このような支持点を有する場合、第2変形部424は、ワークWを支持するとともにワークWに作用する外力であるトルクを受けることができる。そのため、第2変形部424は、ワークWに所定の回転軸周りのトルクがかけられる場合、当該所定の回転軸と直交する断面において、ワークWを支持する少なくとも1点の当該支持点を形成するように変形されてもよい。あるいは、本実施形態のようにワークWを挟持して、ワークWと挟持面424aとの静摩擦力によってトルクを受けてもよい。
【0057】
本実施形態では、治具420が第1変形部422および第2変形部424を有することで、ワークWの外形形状によらず、多種多様な外形形状を有するワークWを支持することができる。また、治具420は、ワークWに加えられた外力を受けることができる。
【0058】
ところで、ロボットアーム610がワークWに加えられる外力以上の力を発生可能な場合、ロボットアーム610がワークWを保持したまま、ワークWの組付処理、加工処理、溶接処理等を行うことができる。このように、ロボットアーム610がワークWを保持したまま加工処理等を行えれば、わざわざロボットアーム610をワークWから退避させたり、加工処理後のワークWを再度ロボットアーム610で保持したりする時間を省略できる。しかし、この場合には、加工具等からワークWに作用する外力に抗して、ワークWを同じ位置に保持するための出力が必要になり、ロボットに要求される出力が増大する。
【0059】
そこで、本実施形態のロボット制御部710は、ワークWに加えられる外力を治具420で受けさせるように、ワークWに外力が作用する第1の方向、および、第1の方向と反対の第2の方向にロボットアーム610を移動可能に制御する。つまり、ロボット600に要求される出力を低減させるために、ワークWに作用する外力を治具420で受けさせて、ロボットアーム610が外力やその反力を受けないように、外力や反力が作用する方向におけるロボットアーム610の移動をフリーにしている。より具体的には、ロボット600に要求される出力を低減させるために、ワークWに作用する直交三軸方向の少なくともいずれかの並進方向の力を治具420で受けさせている。そして、ロボットアーム610がワークWに作用する直交三軸方向の少なくともいずれかの並進方向の力やその反力を受けないように、並進方向の力や反力が作用する方向におけるロボットアーム610の並進移動をフリーにしている。
【0060】
図5は、ワークWの加工処理時におけるロボットアーム610および加工装置400の概略構成図である。
図5に示すように、ワークWの加工処理時において、ワークWの上面Wcには、加工機器の一部である加工具430が接触し、加工具430により鉛直下方向である第1の方向に外力Fが作用している。
【0061】
このとき、ロボット制御部710が第1の方向にロボットアーム610を移動可能に制御することで、ワークWの上面Wcに作用する第1の方向の外力Fを治具420で受けさせることができる。また、ロボット制御部710が第1の方向と反対の第2の方向にロボットアーム610を移動可能に制御することで、外力Fに抗して治具420から受ける反力をロボットアーム610で受けさせないようにすることができる。このように、本実施形態のロボット制御部710は、
図5中、両矢印で示すように、鉛直下方向である第1の方向、および、鉛直上方向である第2の方向にロボットアーム610を移動可能に制御している。ここで、移動可能とは、外力Fが作用する方向に対して、外力Fによって移動できることや、追従できることをいう。
【0062】
なお、外力Fが作用する第1の方向は、本実施形態のように鉛直下方向に限定されない。外力Fが作用する第1の方向は、鉛直上方向であってもよいし、水平方向であってもよいし、鉛直方向から水平方向に傾いた傾斜方向であってもよい。また、外力Fが作用する第1の方向は、直交三軸周りのうち所定の回転軸周りの方向であってもよい。例えば、本実施形態のロボット制御部710は、ワークWに加えられるトルクを治具420で受けさせるように、ワークWにトルクが作用する第1の回転方向、および、第1の回転方向と反対の第2の回転方向にロボットアーム610を移動可能に制御する。つまり、ロボット600に要求される出力を低減させるために、ワークWに作用する直交三軸周りのうち所定の回転軸周りのトルクを治具420で受けさせている。そして、ロボットアーム610がワークWに作用する所定の回転軸周りのトルクやその反力を受けないように、トルクやその反力が作用する方向におけるロボットアーム610の回転移動をフリーにしている。
【0063】
また、外力Fが作用する方向が鉛直方向および水平方向に対して傾斜した傾斜方向である場合は、外力Fを鉛直方向の第1分力および水平方向の第2分力に分解し、当該第1分力および第2分力のうち大きい方の分力が作用する方向を、第1の方向としてもよい。つまり、外力Fが鉛直方向および水平方向において互いに直交する2つの第1分力および第2分力に分解できる場合は、当該第1分力および第2分力のうち大きい方の分力が作用する方向を、第1の方向としてもよい。このように、ロボットアーム610を第1の方向に移動可能に制御した場合、ワークWに作用する外力のうち第1の方向の分力である第1分力が、第1の方向に直交する方向の分力である第2分力よりも大きい関係となる。
【0064】
これにより、ワークWに作用する外力Fをロボットアーム610で受けずに、治具420に受け流したり、ワークWに作用する外力Fの反力をロボットアーム610で受けさせないようにしたり、ロボットアーム610に加わる反力を低減させたりすることができる。その結果、ロボットアーム610は、ワークWの重量を支持、搬送するだけの力を発生可能に構成されればよく、ロボット600に要求される出力を低減することができる。以下、本実施形態のロボット制御部710の詳細な制御について説明する。
【0065】
ロボット制御部710は、大別して2つのモードでロボットアーム610を制御する。2つのモードは、搬送モード(第2制御モード)と、処理モード(第1制御モード)である。搬送モードは、ロボットアーム610によりワークWをワーク保管装置200、組付装置300、加工装置400、溶接装置500の間で搬送させるモードである。搬送モードでは、ワークWの搬送制御の他に、ワークWの姿勢制御や、ワークWの位置決め制御などが実行される。処理モードは、ロボットアーム610がワークWを把持した状態で、ワークWに外力Fが作用する処理が施されるモードである。ワークWに外力Fが作用する処理は、例えば、組付装置300によりワークWを組み付ける処理や、加工装置400によりワークWを加工する処理や、溶接装置500によりワークWを溶接する処理などである。
【0066】
まず、ロボット制御部710は、搬送モードでロボットアーム610を制御し、ロボットアーム610をワーク保管装置200まで移動させ、ワーク保管装置200からワークWを取り出す制御を行う。具体的に、ロボット制御部710は、ワーク保管装置200に保管されたワークWをロボットアーム610で保持して取り出す制御を行う。
【0067】
そして、ロボット制御部710は、ロボットアーム610に保持されたワークWを、組付装置300、加工装置400、溶接装置500のいずれかに搬送する制御を行う。ここで、組付装置300、加工装置400、溶接装置500のそれぞれには、予め基準位置が設定されている。
【0068】
ロボット制御部710は、搬送モードにおいて、予め設定された基準位置にワークWが位置するように、ロボットアーム610を制御する。
図5において、基準位置は、ワークWの下面Waが治具420の接地面422aと接触する位置である。ただし、基準位置は、ワークWの下面Waが接地面422aと接触する位置でなくてもよく、例えば、ワークWの下面Waが接地面422aから上方に所定間隔離隔した位置であってもよい。
【0069】
このように、ロボット制御部710は、ロボットアーム610を制御することで、ワークWが基準位置に位置するようにワークWの位置決め制御を行う。このとき、ロボット制御部710は、ワークWの姿勢を所定の姿勢に制御する姿勢制御も行っている。所定の姿勢は、例えば、ワーク保管装置200に保管された状態のワークWの姿勢である。ロボット制御部710は、ワークWを所定の姿勢に維持するように逐次ワークWの姿勢制御を行う。
【0070】
ロボット制御部710は、位置決め制御時において、力覚センサ620によりロボットアーム610、ひいては、ワークWに作用する外力Fを検出する。この力覚センサ620は、ワークWが接地面422aに接触し、基準位置に位置しているか否かを判定するために用いられる。ワークWが接地面422aに接触していない場合、力覚センサ620は、ワークWの自重分の力を検出する。一方、ワークWが接地面422aに接触し、ワークWが基準位置に位置する場合、力覚センサ620は、0近傍の閾値未満の力を検出する。ロボット制御部710は、力覚センサ620が検出する力が0近傍の閾値未満となった場合に、ワークWが基準位置に位置していると判定する。
【0071】
ワークWが基準位置に位置していると判定すると、制御装置700は、処理モードでロボットアーム610を制御し、不図示の組付機器、加工機器、あるいは、溶接機器を駆動させる駆動制御を行う。ここで、組付機器、加工機器、あるいは、溶接機器によりワークWに作用する外力Fの方向は、機器ごとに予め設定されている。例えば、組付機器がネジ締めによりワークWを組み付ける機器である場合、ネジの回転方向をワークWに外力が作用する方向として設定される。また、ワークWにネジが進入する回転軸方向をワークWに外力が作用する方向として設定される。このような機器ごとに予め設定ワークWに外力が作用する方向に関する情報は、制御装置700の不図示の記憶部に記憶されている。
【0072】
図5に示す例では、制御装置700は、不図示の加工機器を駆動させ、加工具430によりワークWの切削加工や機械加工などの加工処理を行う。本実施形態では、例えば、ワークWの上面Wcから下面Waに向かってパンチング加工が行われる。このときのワークWに作用する外力Fの方向は、例えば、鉛直下方向である。
【0073】
このとき、ロボット制御部710は、制御装置700の記憶部から加工具430によりワークWに作用する外力Fの方向を取得する。ここでは、ロボット制御部710は、ワークWに作用する外力Fの方向として、鉛直下方向(第1の方向)の情報を取得する。
【0074】
ロボット制御部710は、ワークWの姿勢を所定の姿勢に維持する姿勢制御を行いつつ、外力Fが作用する鉛直下方向のロボットアーム610の移動を可能とする制御を行う。また、ロボット制御部710は、外力Fが作用する鉛直下方向、および、鉛直下方向と反対の鉛直上方向以外の方向についてロボットアーム610の移動を制限する制御を行う。
【0075】
具体的に、ロボット制御部710は、直交三軸方向のうち、外力Fが作用する鉛直下方向、および、外力Fの反力が作用する鉛直上方向にロボットアーム610を移動可能に制御する。一方、ロボット制御部710は、直交三軸方向のうち、外力Fが作用していない水平前後方向、水平左右方向、および、三軸周り方向の移動を制限する制御を行う。ただし、これに限定されず、ロボット制御部710は、直交三軸方向のうち、外力Fが作用する鉛直下方向にのみロボットアーム610を移動可能に制御してもよい。その場合、ロボット制御部710は、直交三軸方向のうち、外力Fが作用していない鉛直上方向、水平前後方向、水平左右方向、および、三軸周り方向の移動を制限する制御を行ってもよい。
【0076】
これにより、ワークWに鉛直下方向の外力Fが付加されると、ワークWは、所定の姿勢を維持したまま、ワークWの下面Waと接地面422aとの接触により、外力Fが第1変形部422を介して治具420に受け流される。
【0077】
以上のように、本実施形態のロボット制御部710は、搬送モードにおいて、ワークWを基準位置に移動させ、下面Waを接地面422aに接触させる位置決め制御を行う。そして、ロボット制御部710は、処理モードにおいて、ロボットアーム610に外力Fが作用する第1の方向にロボットアーム610を移動可能に制御する移動可能制御と、少なくとも第1の方向、および、当該第1の方向と反対方向である第2の方向以外の方向についてロボットアーム610の移動を制限する移動制限制御とを行う。なお、外力Fは、第1の方向の分力である第1分力が、当該第1の方向に直交する方向の分力である第2分力よりも大きいものであってもよい。
【0078】
ここで、搬送モードでロボットアーム610を制御する場合、ロボット制御部710は、ワークWの重量を支持できるように、上述した移動可能制御を終了する。搬送モードにおいては、ロボット制御部710は、ワークWの搬送方向以外の方向についてロボットアーム610の移動を制限するように、ロボットアーム610を制御する。ワークWの搬送方向以外の方向についてロボットアーム610の移動を制限する制御は、ロボットアーム610自身やワークWの重量を支持できるように、ロボットアーム610の各部位に力を発生させる制御である。
【0079】
また、処理モードでロボットアーム610を制御する場合、ロボット制御部710は、上述した移動可能制御と移動制限制御とを実行する。この移動可能制御とは、予め設定されたワークWに作用する外力Fの第1の方向において、ロボットアーム610が外力Fにより追従移動が可能な程度にワークWを保持する保持力を弱める制御をいう。また、移動制限制御とは、少なくとも第1の方向および第2の方向以外の方向において、ワークWおよびロボットアーム610を基準位置に保持するために、ロボットアーム610の各部位に力を発生させている状態の制御である。
【0080】
これにより、ワークWに加えられる外力Fを治具420に受けさせることとなり、ロボットアーム610の出力で許容されるよりも大きな外力Fを受けても、ロボットアーム610の出力でワークWを保持することが可能となる。したがって、ロボットアーム610は、単にワークWの重量を支持、搬送するだけの力を発生可能に構成されればよくなる。その結果、ロボット600に要求される出力を低減することができる。
【0081】
図6は、本実施形態に係る制御装置700を用いたワークWの処理方法の一例を説明するためのフローチャート図である。
図6に示すように、本実施形態のワークWの処理方法は、ステップS101~S109の工程を含む。
【0082】
まず、ロボット制御部710は、搬送モードでロボットアーム610を制御し、予め設定された基準位置にワークWが位置するように、ワークWの位置決め制御を行う(ステップS101)。ここでは、ロボット制御部710は、ワークWの下面Waを接地面422aに接触させる制御を実行する。
【0083】
つぎに、ワークWが基準位置に到達すると、制御装置700は、不図示の組付機器、加工機器、あるいは、溶接機器を駆動させ、ワークWに対する処理を開始する制御を行う(ステップS102)。ワークWに対する処理は、ワークWに外力Fを作用させる処理である。
【0084】
ワークWに対する処理を開始する制御が実行されると、ロボット制御部710は、搬送モードから処理モードに切り替えてロボットアーム610を制御する。処理モードでは、ロボット制御部710は、ワークWを処理する機器や器具の種類に基づいて、ワークWに外力が作用する第1の方向に関する情報を取得する(ステップS103)。そして、取得した第1の方向に関する情報に基づいて、当該第1の方向にロボットアーム610を移動可能にする移動可能制御を行う(ステップS104)。また、ロボット制御部710は、第1の方向および当該第1の方向と反対の第2の方向以外の方向についてロボットアーム610の移動を制限する移動制限制御を行う(ステップS105)。
【0085】
その後、ロボット制御部710は、ワークWに対するすべての処理が終了したか否かの判定を行う(ステップS106)。ワークWに対するすべての処理が終了していない場合(ステップS106のNO)、ワークWの搬送方向以外の方向についてロボットアーム610の移動を制限する搬送モードでロボットアーム610を制御する(ステップS107)。そして、ロボットアーム610がワークWを把持した状態でワークWの姿勢を変え、ワークWの下面Waを接地面422aに接触させる位置決め制御を実行する(ステップS108)。この位置決め制御には、ワークWを上昇させる制御や下降させる制御も含まれる。その後、ロボット制御部710は、ステップS103、S104、S105、S106の処理を繰り返し実行する。
【0086】
一方、ワークWに対するすべての処理が終了している場合(ステップS106のYES)、制御装置700は、不図示の組付機器、加工機器、あるいは、溶接機器の駆動を停止させ、ワークWの処理を終了する制御を行う(ステップS109)。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
上記では、治具420は、ワークWの外形形状に応じて変形可能な接地面422aを有する第1変形部422を備える例について説明したが、第1変形部422は必須の構成ではなく、治具420に第1変形部422が設けられなくてもよい。
【0089】
治具420は、少なくともワークWに作用する外力を受けることが可能な接地面422aを有していればよい。したがって、治具420は、例えば、ワークWの外形形状に応じて変形しない接地面422aを有してもよい。この接地面422aは、例えば、水平方向と平行な平面である。また、ワークWの外形形状に応じて変形しない接地面422aは、載置台410に設けられてもよい。その場合、載置台410の上面に治具420が設けられなくてもよい。
【0090】
上記では、治具420は、ワークWの外形形状に応じて変形可能な挟持面424aを有する第2変形部424を備える例について説明したが、第2変形部424は必須の構成ではなく、治具420に第2変形部424が設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0091】
100 ロボットシステム
200 ワーク保管装置
300 組付装置
400 加工装置
410 載置台
420 治具
422 第1変形部
422a 接地面
424 第2変形部
424a 挟持面
500 溶接装置
600 ロボット
610 ロボットアーム
620 力覚センサ
700 制御装置
710 ロボット制御部