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特開2024-177844固定装置、移動間仕切パネル、及び、移動間仕切
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  • 特開-固定装置、移動間仕切パネル、及び、移動間仕切 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177844
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】固定装置、移動間仕切パネル、及び、移動間仕切
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/00 20060101AFI20241217BHJP
   E06B 7/18 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E05D15/00 F
E06B7/18 C
E06B7/18 A
E05D15/00 B
E05D15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096209
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 将司
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴博
(72)【発明者】
【氏名】井上 英久
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036AA02
2E036BA01
2E036DA02
2E036EB02
2E036FA02
2E036FA04
2E036FA10
2E036FB01
2E036GA02
2E036HB03
(57)【要約】
【課題】固定のための別途の操作を不要とし得る固定装置であって、より装置の小型化を図ることが可能な固定装置の提供。
【解決手段】筐体部11と、水平方向に変位するように筐体部11に移動可能に取り付けられた横スライド部12と、垂直方向に変位するように筐体部11に移動可能に取り付けられた縦スライド部13と、縦スライド部13と連結され、垂直方向に変位するように進出する押込み部材14と、押込み部材14の進出に抗するように付勢力を生じさせる第1の付勢手段S2と、筐体部11に回転可能に取り付けられ、回転動作により、横スライド部12の水平方向に変位を、縦スライド部13の垂直方向の変位に変換する、回転カム部材15と、を備える、固定装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体部と、
水平方向に変位するように前記筐体部に移動可能に取り付けられた横スライド部と、
垂直方向に変位するように前記筐体部に移動可能に取り付けられた縦スライド部と、
前記縦スライド部と連結され、若しくは前記縦スライド部と一体である、垂直方向に変位するように進出する押込み部材と、
前記押込み部材の進出に抗するように付勢力を生じさせる第1の付勢手段と、
前記筐体部に回転可能に取り付けられ、回転動作により、前記横スライド部の水平方向の変位を、前記縦スライド部の垂直方向の変位に変換する、回転カム部材と、
を備える、固定装置。
【請求項2】
前記回転カム部材が、前記横スライド部と直接又は間接的に接触する横方向接触部と、前記縦スライド部と直接又は間接的に接触する縦方向接触部と、を備え、前記横スライド部の水平方向の変位によって前記回転カム部材に与えられる回転力によって、前記縦スライド部を垂直方向に変位させるように構成されている、請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記縦方向接触部が、凸部として形成されている、請求項2に記載の固定装置。
【請求項4】
前記押込み部材が進出している状態において、前記回転カム部材の回転の戻りを規制するストッパーと、
前記ストッパーの前記回転カム部材に対する規制を解除する解除部材と、を備える請求項1に記載の固定装置。
【請求項5】
前記ストッパーが、前記回転カム部材の回転の戻りを規制する規制位置と、規制解除位置との間で移動可能であり、
前記解除部材が、水平方向に変位するように前記筐体部に移動可能に取り付けられた横スライドストッパー部と、前記横スライドストッパー部を付勢する第2の付勢手段と、を備え、
前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記横スライドストッパー部がスライドさせられた際に前記ストッパーが前記規制位置に位置し、前記付勢力によって前記横スライドストッパー部がスライドした際に前記ストッパーが前記規制解除位置となるように構成されている、請求項4に記載の固定装置。
【請求項6】
前記ストッパーが、前記横スライドストッパー部と係合する係合部を備え、当該係合部の先端が円弧状に形成されている、請求項5に記載の固定装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の固定装置を備え、
パネル本体と、
前記パネル本体の上部に設けられる吊車と、
前記パネル本体に対して垂直方向に変位するように移動可能に設けられ、前記固定装置によって駆動される圧接装置と、を備える、移動間仕切パネル。
【請求項8】
前記パネル本体の移動方向の両端となる側面のそれぞれにおいて、上部と下部にそれぞれ前記固定装置が設けられていることにより、合計で4つの固定装置を備える、請求項7に記載の移動間仕切パネル。
【請求項9】
請求項7に記載の移動間仕切パネルを複数備え、
天井に配されて前記移動間仕切パネルをスライド可能に吊り下げる走行レールを備える、移動間仕切。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式の間仕切パネルの設置時にこれを固定するための装置である固定装置(及びこれを使用した、移動間仕切パネル、移動間仕切)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種の会場・催事場や会議室等において、用途に応じて部屋のレイアウトを変えること(空間づくり)が求められる。このような求めに対応するものとして、天井に走行レールを設け、これに間仕切パネルを移動可能に吊り下げることで、室内の間仕切りの設置及び撤去が容易に行えるようにした、移動間仕切が用いられている。
このような移動間仕切における、移動間仕切パネルの設置時の固定のための装置である固定装置に関する技術が特許文献1によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7079458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、「操作が不要、かつ、簡易な構造で強固に固定することが可能であり、意匠的に優れた可動間仕切壁パネルの固定装置及び当該固定装置を使用した可動間仕切壁を提供することができる(段落0019)」とされている。
しかしながら、特許文献1の装置では、傾斜案内孔11cを備えた第1スライド部材を用いているため、正面視における左右方向(第1スライド部材のスライド方向)の寸法が大きくなりがちである。且つ、上部に突出するロッド部33により、上下方向の寸法も大きくなる(上部に突出するロッド部33の動作を阻害しないようにその周辺にスペースを確保する必要がある)ものであった。
【0005】
本発明は、移動間仕切パネルの設置時の固定において、固定のための別途の操作を不要とし得る固定装置であって、より装置の小型化を図ることが可能な固定装置、及びこれを使用した移動間仕切パネル、移動間仕切を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
筐体部と、水平方向に変位するように前記筐体部に移動可能に取り付けられた横スライド部と、垂直方向に変位するように前記筐体部に移動可能に取り付けられた縦スライド部と、前記縦スライド部と連結され、若しくは前記縦スライド部と一体である、垂直方向に変位するように進出する押込み部材と、前記押込み部材の進出に抗するように付勢力を生じさせる第1の付勢手段と、前記筐体部に回転可能に取り付けられ、回転動作により、前記横スライド部の水平方向の変位を、前記縦スライド部の垂直方向の変位に変換する、回転カム部材と、を備える、固定装置。
【0007】
(構成2)
前記回転カム部材が、前記横スライド部と直接又は間接的に接触する横方向接触部と、前記縦スライド部と直接又は間接的に接触する縦方向接触部と、を備え、前記横スライド部の水平方向の変位によって前記回転カム部材に与えられる回転力によって、前記縦スライド部を垂直方向に変位させるように構成されている、構成1に記載の固定装置。
【0008】
(構成3)
前記縦方向接触部が、凸部として形成されている、構成2に記載の固定装置。
【0009】
(構成4)
前記押込み部材が進出している状態において、前記回転カム部材の回転の戻りを規制するストッパーと、前記ストッパーの前記回転カム部材に対する規制を解除する解除部材と、を備える構成1から3の何れかに記載の固定装置。
【0010】
(構成5)
前記ストッパーが、前記回転カム部材の回転の戻りを規制する規制位置と、規制解除位置との間で移動可能であり、前記解除部材が、水平方向に変位するように前記筐体部に移動可能に取り付けられた横スライドストッパー部と、前記横スライドストッパー部を付勢する第2の付勢手段と、を備え、前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記横スライドストッパー部がスライドさせられた際に前記ストッパーが前記規制位置に位置し、前記付勢力によって前記横スライドストッパー部がスライドした際に前記ストッパーが前記規制解除位置となるように構成されている、構成4に記載の固定装置。
【0011】
(構成6)
前記ストッパーが、前記横スライドストッパー部と係合する係合部を備え、当該係合部の先端が円弧状に形成されている、構成5に記載の固定装置。
【0012】
(構成7)
構成1から6の何れかに記載の固定装置を備え、パネル本体と、前記パネル本体の上部に設けられる吊車と、前記パネル本体に対して垂直方向に変位するように移動可能に設けられ、前記固定装置によって駆動される圧接装置と、を備える、移動間仕切パネル。
【0013】
(構成8)
前記パネル本体の移動方向の両端となる側面のそれぞれにおいて、上部と下部にそれぞれ前記固定装置が設けられていることにより、合計で4つの固定装置を備える、構成7に記載の移動間仕切パネル。
【0014】
(構成9)
構成7又は8に記載の移動間仕切パネルを複数備え、天井に配されて前記移動間仕切パネルをスライド可能に吊り下げる走行レールを備える、移動間仕切。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動間仕切パネルの設置時の固定において、固定のための別途の操作を不要とし得る固定装置であって、より装置の小型化を図ることが可能な固定装置、及びこれを使用した移動間仕切パネル、移動間仕切を提供すること可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る実施形態1の固定装置(押込み部材が進出していない状態)を示す図
図2】実施形態1の固定装置(押込み部材が進出した状態)を示す図
図3】実施形態1の固定装置の回転カム部材付近を拡大した図
図4】本発明に係る実施形態2の移動間仕切パネル(押込み部材が進出していない状態)の、固定装置が設けられている箇所を示す図
図5】実施形態2の移動間仕切パネル(押込み部材が進出した状態)の、固定装置が設けられている箇所を示す図
図6】移動間仕切において、移動間仕切パネルの設置作業を示す概略図
図7】固定装置の別の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0018】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1の固定装置1(押込み部材が進出していない状態)を示す図であり、図1(a):左側面図、図1(b):内部構造が理解できるように透過的に示した正面図、図1(c):図1(b)のA-A線による断面図、である。また、図2は同じく固定装置1を示す図(図2(a):左側面図、図2(b):正面図、図2(c):断面図)であり、押込み部材が進出した状態を示す図である。
本実施形態の固定装置1は、移動式の間仕切パネルの設置時にこれを固定するために間仕切パネルの圧接装置を駆動するための装置であり、
筐体部11と、
水平方向に変位するように筐体部11に移動可能に取り付けられた横スライド部12と、
垂直方向に変位するように筐体部11に移動可能に取り付けられた縦スライド部13と、
縦スライド部13とシャフト18によって連結され、垂直方向に変位するように進出する押込み部材14と、
押込み部材14の進出に抗するように付勢力を生じさせるバネ(第1の付勢手段)S2と、
筐体部11に回転可能に取り付けられ、回転動作により、横スライド部12の水平方向の変位を、縦スライド部13の垂直方向の変位に変換する、回転カム部材15と、
押込み部材14が進出している状態において、回転カム部材15の回転の戻りを規制するストッパー16と、
ストッパー16の回転カム部材15に対する規制を解除する解除部材17と、
を備えている。
【0019】
筐体部11は、各部材を収める箱状の部材である。本実施形態の筐体部11は、箱状部材111と蓋部材112によって構成されている。
箱状部材111には、
横スライド部12を、側面から突出可能なように水平方向にスライド可能に保持するガイド溝と、
縦スライド部13を、垂直方向にスライド可能に保持するガイド溝と、
横スライドストッパー部171を、側面から突出可能なように水平方向にスライド可能に保持するガイド溝と、
バネS2、バネS3を保持するための凹部、が形成されている。
蓋部材112は板状の部材であり、箱状部材111に以下で説明する各部材が組みつけられた後に、箱状部材111に接合される。
また、筐体部11には、回転カム部材15とストッパー16をそれぞれ回転可能に保持する軸部材若しくは軸受けが設けられている。
なお、ここでは、筐体部11が箱状の部材であるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、筐体部は各部材を動作可能に保持出るものであればよく、例えばフレーム状の部材であってもよい。
【0020】
横スライド部12は、筐体部11の一方側面(図1(b)における左側面)から出没可能に設けられる部材であり、回転カム部材15と当接して、回転カム部材15を回転させる部材である。より具体的には、後に説明するように、隣り合う移動間仕切パネルが互いに接触する面において横スライド部12が突出するように設けられ、隣り合う移動間仕切パネルが互いに接触する際に、横スライド部12が押されてスライドし、回転カム部材15を回転させるものである。
図1は横スライド部12が筐体部11から突出しており、回転カム部材15に対する回転力を与えていない状態を示し、図2は横スライド部12が押されてスライド移動し、回転カム部材15を回転させた状態を示している。
横スライド部12は、その両側(正面視(図1(b))における前面側と背面側)にカム当接部121を備えており、カム当接部121によって回転カム部材15を回転させる。カム当接部121の先端部(回転カム部材15と接触する部位)は曲面状に(丸く)形成され、回転する回転カム部材15との接触がスムーズなものとなる。
なお、ここでは上記形状のものを例としているが、本発明の横スライド部をこれに限るものではなく、横スライド部は押されることで移動して回転カム部材を回転させることが可能な任意の形状とすることができる。
【0021】
回転カム部材15は、筐体部11に回転可能に取り付けられ、横スライド部12に押されることで回転し、この回転に伴い縦スライド部13を下方に押し下げる部材である。回転カム部材15は、巻きばねS4によって、横スライド部12を押し戻す回転方向に付勢されている。
本実施形態の回転カム部材15は、その両側(正面視(図1(b))における前面側と背面側)に基本態様が扇形状の2枚の板状部材を有し(図1(c)参照)、これら2枚の扇形状板材が軸部材によって相互に接続された構成を有しており当該軸部材において巻きばねS4が設けられている。軸部材は回転カム部材15の回転軸である。
図3は、図1(b)における回転カム部材15が配置されている箇所付近を拡大した図である。
回転カム部材15の扇形状板材は、その扇形状の一方の半径側における横スライド部12と接触する横方向接触部151と、扇形状の他方の半径側における縦スライド部13と接触する縦方向接触部152と、を備え、横スライド部12の水平方向の変位によって生じる回転力によって、縦スライド部13を垂直方向に変位させるように構成されている。
縦方向接触部152は、凸部として形成されており、その先端部(縦スライド部13と接触する部位)は曲面状に(丸く)形成され、回転する回転カム部材15の縦スライド部13に対する接触がスムーズなものとなる。
回転カム部材15の扇形状板材の、横方向接触部151側には、以下で説明するストッパー16と係合する係合凹部153が形成されている。
なお、ここでは上記形状のものを例としているが、本発明の回転カム部材をこれに限るものではなく、回転カム部材は、横スライド部の水平方向の変位によって生じる回転力によって、縦スライド部を垂直方向に変位させることが可能な任意の形状とすることができる。ただし、扇形状であることにより、以下で説明するストッパーの動作に対する意図しない干渉が低減されるため扇形状を採用することが好ましい。
回転カム部材15と、横スライド部12若しくは縦スライド部13との接触は、相互に直接接触するものに限られず、他の部材を介して間接的に接触するものであってもよい。
また、ここでは、回転カム部材の動作を円滑にするため、巻きばねS4によって横スライド部12を押し戻す回転方向に付勢するものを例としているが、巻きばねS4は必ずしも必要ない。後に説明するバネS2の付勢力によって、横スライド部12を押し戻す回転方向に回転カム部材を付勢する作用を得ることができるためである。
【0022】
縦スライド部13は、垂直方向に変位するように筐体部11に移動可能に取り付けられ、回転カム部材15の回転に伴って押し下げられる部材である。
縦スライド部13は、その上面に、回転カム部材15の縦方向接触部(凸部)152と当接する平坦部を有する。また、その下面側にシャフト18が接続されている。
シャフト18は、筐体部11に設けられた挿通穴(特に図示せず)を通して筐体部11の外部に延びており、他端側で押込み部材14と接続されている。
縦スライド部13と筐体部11の間には、シャフト18が通されたバネ(第1の付勢手段)S2が設けられており、縦スライド部13は、バネS2によって上方に付勢されている。
なお、ここでは上記形状のものを例としているが、本発明の縦スライド部をこれに限るものではなく、縦スライド部は回転カム部材に押されることで押込み部材を下方に押し下げることが可能な任意の形状とすることができる。
【0023】
押込み部材14は、シャフト18に連結され、縦スライド部13の上下動に応じて上下動する。
本実施形態の押込み部材14は、基本態様が、底面を有する四角筒状の部材であり、その内部にバネS1を備えている。バネS1は、押込み部材14の底面とピストン部材141との間に設けられ、シャフト18はピストン部材141に対して接続されている。
これにより、シャフト18の下方への進出に伴い押込み部材14も下方へ移動し、押込み部材14が他の部材に接してそれ以上下降できない状態となった(後に説明する圧接装置が床面に接した)後にも、バネS1が縮むことで、圧縮力を有しつつさらにシャフト18(及びピストン部材141)を押し込むことができる構成となっている。
なお、ここでは上記形状のものを例としているが、本発明の押込み部材をこれに限るものではなく、押込み部材は、上記機能を有する任意の形状とすることができる。
【0024】
ストッパー16は、筐体部11に回転可能に取り付けられ、回転カム部材15の回転の戻りを規制する規制位置(図2の状態)と、規制解除位置(図1の状態)との間で揺動可能である。
本実施形態のストッパー16は、基本態様が板状(正面視(図1(b))では棒状)の部材であり、正面視の軸上における中央よりも上部側で回転軸に回転可能に取り付けられている。これにより、自由状態では、その自重により鉛直方向を向くように構成されている。
ストッパー16の回転軸よりも上部側は上部凸部(係合部)161(図3参照)を構成し、下部側は、カム係合部162を構成する。
上部凸部161は、以下で説明する横スライドストッパー部171の係合突起1711と接触し、横スライドストッパー部171が突出位置にある際には、ストッパー16が回転されて、規制解除位置(図1(b)の状態)とされる。上部凸部161の先端(上部)は、正面視(図3)で円弧状に形成されており、以下で説明する横スライドストッパー部171との係合動作がスムーズなものとなる。
カム係合部162は、図2(b)に示されるように、ストッパー16が垂直(規制位置)である際に、回転カム部材15の係合凹部153と係合し、回転カム部材15の回転の戻りを規制する。
なお、ここでは上記形状のものを例としているが、本発明のストッパーをこれに限るものではなく、ストッパーは、上記機能を有する任意の形状とすることができる。
【0025】
解除部材17は、ストッパー16の回転カム部材15に対する規制を解除するものであり、水平方向に変位するように筐体部11に移動可能に取り付けられた横スライドストッパー部171と、横スライドストッパー部171を付勢するバネ(第2の付勢手段)S3と、を備えている。
横スライドストッパー部171は、後に説明するように、横スライド部12と同様に、隣り合う移動間仕切パネルが互いに接触する面において横スライドストッパー部171が突出するように設けられ、隣り合う移動間仕切パネルが互いに接触することで、横スライドストッパー部171が押されてスライドするものである。
図1(b)は横スライドストッパー部171が筐体部11から突出しており、回転カム部材15に対する回転の規制をしていない状態を示し、図2(b)は横スライドストッパー部171が押されてスライド移動し、回転カム部材15の回転規制している状態を示している。
図1(b)からも理解されるように、横スライドストッパー部171の突出量は、横スライド部12の突出量よりも小さく構成される。
横スライドストッパー部171は、その基本態様が四角柱状の部材であり、ストッパー16と対向する位置において、係合突起1711(図3参照)が形成されている。係合突起1711は、横スライドストッパー部171が突出位置にある際に、ストッパー16の上部凸部(係合部)161と係合して、ストッパー16を規制解除位置へと回転させる。横スライドストッパー部171が押し込まれるに従い、係合突起1711の上部凸部161に対する係合は解除され、これによりストッパー16は自重により垂直方向を向く(規制位置へと移動する)ようになる。
バネ(第2の付勢手段)S3は、筐体部11と横スライドストッパー部171との間に設けられ、横スライドストッパー部171を突出させる方へと付勢する。バネS3の弾性力は、バネS1やバネS2の弾性力より小さい。より具体的には、4つのバネS3の弾性力では移動間仕切パネルが移動しないように構成される。移動間仕切パネルのパネル同士の接触面には固定装置1が上下に2つ設けられている。即ち、移動間仕切パネルの移動方向の両端となる側面のそれぞれにおいて、上部と下部にそれぞれ固定装置1が設けられている。従って、隣り合う移動間仕切パネルが互いに接触すると4つの横スライドストッパー部171が押し込まれることになる。この際に、4つの横スライドストッパー部171がそれぞれのバネS3の弾性力によって戻ろうとする力で、移動間仕切パネルが移動しないように、「4つのバネS3の弾性力では移動間仕切パネルが移動しないように構成」されているものである。
上記のごとく、解除部材17は、「前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記横スライドストッパー部がスライドさせられた際に前記ストッパーが前記規制位置に位置し、前記付勢力によって前記横スライドストッパー部がスライドした際に前記ストッパーが前記規制解除位置となるように構成されている」ものである。
なお、ここでは上記構成のものを例としているが、本発明の解除部材17をこれに限るものではなく、解除部材17は、上記機能を有する任意の構成とすることができる。
【0026】
上記構成を有する固定装置1の一連の動作について概説する。
図1(b)の固定装置1の左側面(ここで左側面としているのは説明の便宜上のものであり、固定装置1の設置状況により、右側面や上面、底面など、任意の方向になり得る)側から、他の部材(具体的には隣の移動間仕切パネル)と接触すると、先ず、横スライド部12が押し込まれる。
横スライド部12が押しこまれるに従い、回転カム部材15が回転し、これにより縦スライド部13及び押込み部材14が下方へと進出する。
さらに進行すると、横スライドストッパー部171が押し込まれ始める。横スライドストッパー部171が押し込まれるに従い、横スライドストッパー部171の係合突起1711の、ストッパー16の上部凸部161に対する係合が解除され、ストッパー16は回転カム部材15の扇形状の円弧に沿う(もたれかかる)ような状態となる。この際に、回転カム部材15が扇形状であることにより、ストッパー16が接触することによる回転カム部材15の回転に対する意図しない干渉の発生が抑止される。
横スライド部12が完全に押し込まれると(隣の移動間仕切パネルと密着した状態になると)、縦スライド部13及び押込み部材14は最も進出した状態となる。また、回転カム部材15の係合凹部153に対して、ストッパー16のカム係合部162が係合する(図2(b)の状態となる)。これにより、回転カム部材の回転の戻りが規制されるため、バネS1やバネS2(及び巻きばねS4)によって、横スライド部12が押し戻される力は規制される。
以上により、固定装置1による固定動作が行われる。
【0027】
次に、固定の解除動作として、隣接の移動間仕切パネルが移動され始めると、先ず、横スライドストッパー部171がバネS3の付勢力によって、スライドし始める。この段階では、ストッパー16が規制位置にあることにより、回転カム部材15は回転できず、従って横スライド部12、縦スライド部13及び押込み部材14もこの段階では移動しない。
横スライドストッパー部171のスライドが進むことにより、横スライドストッパー部171の係合突起1711が、ストッパー16の上部凸部161と係合し、ストッパー16を規制解除位置へと回転させ、回転カム部材15がバネS1やバネS2(及び巻きばねS4)の付勢力によって回転し、これに伴い、横スライド部12も突出方向へスライドする。また、縦スライド部13及び押込み部材14もバネS1やバネS2の付勢力によって、上方へ移動する。
隣接の移動間仕切パネルが離れるまで移動すると、図1の状態に戻る。
以上により、固定装置1による固定解除動作が行われる。
【0028】
以上のごとく、本実施形態の固定装置1によれば、移動間仕切パネルの移動に伴って自動的に固定及び固定解除の動作が行われるため、固定や固定解除のための別途操作は不要である。
また、本実施形態の固定装置1によれば、回転カム部材を用いることにより、装置の小型化を図ることができる。
特許文献1の装置では、傾斜案内孔11cを備えた第1スライド部材を用いているため、正面視における左右方向(第1スライド部材のスライド方向)の寸法が大きくなりがちである。且つ、上部に突出するロッド部33により、上下方向の寸法も大きくなる(上部に突出するロッド部33の動作を阻害しないようにその周辺にスペースを確保する必要がある)。
これに対して、本実施形態の固定装置1によれば、回転カム部材を用いていることにより、装置の小型化を図ることができるものである。
【0029】
<実施形態2>
次に、実施形態2として、実施形態1の固定装置1を備えた移動間仕切パネルについて概説する。
図4は、本発明に係る実施形態2の移動間仕切パネル2の下部側の固定装置1が設置されている箇所(押込み部材が進出していない状態)を示す図であり、図4(a):左側面図、図4(b):内部構造が理解できるように一部透過的に示した正面図、である。また、図5は同じく移動間仕切パネル2の下部側の固定装置1が設置されている箇所を示す図(図5(a):左側面図、図5(b):正面図)であり、押込み部材が進出した状態を示す図である。
【0030】
移動間仕切パネル2は、
パネル本体21と、
パネル本体21の上部に設けられる吊車(特に図示せず)と、
パネル本体21の内部に配置された固定装置1と、
パネル本体21に対して垂直方向に変位するように移動可能に設けられ、固定装置1によって駆動される圧接装置22と、を備える。
【0031】
図6は、移動間仕切パネル2を用いた移動間仕切100の概略を示す図である。
移動間仕切パネル2は、天井に設置されている走行レール3によって、スライド可能に吊り下げられる。
移動間仕切100の走行レール3や、当該走行レール3に走行可能に設けられる吊車、パネル本体21の構成などは、任意のものを使用することができるため、ここでの説明を省略する。
【0032】
図4、5に示されるように、移動間仕切パネル2の下端には、圧接装置22が、パネル本体21に対して出没可能に設けられている。
圧接装置22は、垂直に設けられる2枚の壁板221と、底面222と、脚部223と、を備えている。
壁板221と底面222は基本的には板状の部材であり、脚部223は圧接ゴムによって形成されている。壁板221、底面222及び脚部223は、移動間仕切パネル2の幅(正面視(図4(b))における左右方向)と略同一の幅寸法を有しており、従って、圧接装置22が進出することにより、移動間仕切パネル2の下方のすき間が塞がれることになる。
なお、特に図示しないが、移動間仕切パネル2の上部側においても、同様の概念の圧接装置が配置されており、従って、上部の圧接装置が進出することにより、移動間仕切パネル2の上方のすき間が塞がれる。
ここでは圧接装置22として上記構成のものを例としているが、本発明の圧接装置をこれに限るものではなく、圧接装置は、パネル本体に対して垂直方向に変位するように移動可能に設けられて床面等と接触可能な任意の構成とすることができる。
【0033】
固定装置1は、図4(b)に示されるように、横スライド部12と横スライドストッパー部171が移動間仕切パネル2の側面から突出するように、且つ、押込み部材14が圧接装置22に接続されて、移動間仕切パネル2の内部に設置される。
固定装置1は、移動間仕切パネル2の幅方向(正面視(図4(b))における左右方向)の両端の側面のそれぞれの下端部付近と上端部付近に設けられる。即ち、1枚の移動間仕切パネル2に基本的には4つの固定装置1が設けられる。図4、5は、左側下部に設置された固定装置1を示しているが、同様の概念で(左右対称或いは上下対称に)移動間仕切パネル2の4隅に定装置1が設けられる。
【0034】
上記構成を有する移動間仕切パネル2の一連の動作について概説する。なおここでは、左側の下部側の固定装置及び圧接装置について説明するが、右側や上部側も同様の概念(左右対称若しくは上下対称)である。
図6に示されるように、移動間仕切パネル2を設置するために移動させることで、隣り合う移動間仕切パネル2が相互に接触する。
当該接触により、実施形態1で説明したように、固定装置1が駆動されて押込み部材14が下方に進出し、これによって圧接装置22も下方に進出する。隣り合う移動間仕切パネル2を相互に密着させると、図5に示されるように、圧接装置22が床面FLに接した(押し付けられた)状態となり、固定装置1による固定動作も完了する。
この際に、実施形態1で説明したように、ストッパー16によるロックにより、バネS1やバネS2(及び巻きばねS4)の付勢力による横スライド部12を押し出すような作用は働かない。なお且つ、前述のごとくバネS3の弾性力は移動間仕切パネル2を移動できないような弾性力とされているため、横スライドストッパー部171によって移動間仕切パネル2が移動されることもない。従って、移動間仕切パネル2から手を離した際に、横スライド部12や横スライドストッパー部171によって押されることにより、移動間仕切パネル2が動いてしまうといったことがなく、作業性に優れるものである。
【0035】
移動間仕切パネル2を撤去(収納)する場合には、移動間仕切パネル2を引っ張って移動することで、隣り合う移動間仕切パネル2の接触が解除される。これにより、実施形態1で説明したように、固定装置1が駆動されて押込み部材14が上方に移動し、これによって圧接装置22も床面FLから離れて図4の収納状態に戻る。
【0036】
以上のごとく、本実施形態の移動間仕切パネル2によれば、固定装置1を用いていることにより、移動間仕切パネルの移動に伴って自動的に固定及び固定解除の動作が行われるため、固定や固定解除のための別途操作は不要である。
【0037】
なお、実施形態では、ストッパーによる回転カム部材の回転ロック機能を有しているものを例としており、これによれば上述のごとく利便性が高いものであるが、本発明をこれに限るものではなく、回転ロック機能がないものであってもよい。
図7には、回転ロック機能がない固定装置の一例としての固定装置1´を示した。実施形態1の固定装置1と同一の構成については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略する。
固定装置1´の、箱状部材111´、縦スライド部13´、回転カム部材15´、は、実施形態1の固定装置1の、箱状部材111、縦スライド部13、回転カム部材15と形状の相違はあるものの、基本的な概念は同様であるため、ここでの説明を省略する。
バネS5は、横スライド部12´を突出方向へ付勢する部材である。バネS2等の付勢力が回転カム部材15´を介して横スライド部12´へ伝達されるため、バネS5はバネS4と同様に省略することも可能である。
固定装置1´は、ストッパーを有していないため、上述したようなストッパーによる作用機能を得ることはできないが、例えば、移動間仕切パネルの重量が大きいことや、圧接装置と床面の間の摩擦力が大きいこと等により、ストッパーがなくても、移動間仕切パネルから手を離しても移動間仕切パネルが動かないようにすることもできる場合もある。
【0038】
実施形態では、押込み部材14がシャフト18を介して縦スライド部13と接続されるもの(押込み部材14と縦スライド部13が別体であるもの)を例としたが、本発明をこれに限るものではなく、押込み部材が縦スライド部13と一体的に構成されるものであってもよい。
【0039】
実施形態では、ストッパー16がその自重により垂直状態(規制位置)に回転するものを例としたが、本発明をこれに限るものではない。例えば、ストッパー16を規制位置へと回転するように付勢するバネ等の付勢手段を設けるものとしても良い。また、横スライドストッパー部が押し込まれる際に、ストッパーと係合して、ストッパーを規制位置へと回転させるように動作させるもの(例えば、横スライドストッパー部171の係合突起1711と同様の突起であって、横スライドストッパー部171が押し込まれる際に、上部凸部161と係合してストッパー16を規制位置へと回転させる突起を設ける等)としてもよい。
【0040】
実施形態では、横スライド部や横スライドストッパー部が側面から突出するものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。例えば、横スライド部及び横スライドストッパー部(若しくは何れか一方)を、側面から突出しないように(例えば側面と面一に設け、そこから内部へ押し込み可能に)設け、接触する側(隣の移動間仕切パネル2)において、横スライド部や横スライドストッパー部を内部に押し込むような凸部等を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1...固定装置
11...筐体部
12...横スライド部
13...縦スライド部
14...押込み部材
15...回転カム部材
151...横方向接触部
152...縦方向接触部(凸部)
16...ストッパー
161...上部凸部(係合部)
17...解除部材
171...横スライドストッパー部
S2...バネ(第1の付勢手段)
S3...バネ(第2の付勢手段)
2...移動間仕切パネル
21...パネル本体
22...圧接装置
3...走行レール
100...移動間仕切
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7