(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177858
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】バッテリー管理装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241217BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/04298 20160101ALI20241217BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241217BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241217BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20241217BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241217BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20241217BHJP
【FI】
H02J7/00 303E
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/04298
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
B60L50/75
B60L58/12
B60L58/40
H02J7/00 P
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096227
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹井 力
(72)【発明者】
【氏名】水下 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】沈 浩
(72)【発明者】
【氏名】山浦 潔
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5G503AA05
5G503BB02
5G503EA09
5G503GD02
5G503GD06
5H030BB03
5H030FF42
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BC00
5H125BC08
5H125BD01
5H125DD01
5H125EE22
5H125EE27
5H125EE32
5H125EE36
5H127AA04
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AB07
5H127AC14
5H127AC15
5H127DB53
5H127DC96
5H127EE04
5H127FF04
(57)【要約】
【課題】バッテリー管理装置に関し、簡素な構成で二次電池及び燃料電池の性能を効率よく把握する。
【解決手段】開示のバッテリー管理装置10は、車両1に搭載される二次電池3及び燃料電池5を管理するものである。バッテリー管理装置10は、車両1の停車中に、燃料電池5の発電電力で二次電池3を充電する充電制御を実施する制御手段11と、充電制御の実施中に、二次電池3及び燃料電池5の双方の性能を判定する判定手段12とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される二次電池及び燃料電池を管理するバッテリー管理装置であって、
前記車両の停車中に、前記燃料電池の発電電力で前記二次電池を充電する充電制御を実施する制御手段と、
前記充電制御の実施中に、前記二次電池及び前記燃料電池の双方の性能を判定する判定手段とを備える
ことを特徴とする、バッテリー管理装置。
【請求項2】
前記判定手段が、前記充電制御を開始してからの経過時間に応じて設定される複数の期間において、前記燃料電池の性能を判定する
ことを特徴とする、請求項1記載のバッテリー管理装置。
【請求項3】
前記判定手段が、前記燃料電池の性能の判定に際し、前記燃料電池の出力電圧の変化速度と所定の速度閾値との大小関係を判定する第一判定と、前記燃料電池の出力電圧と所定の電圧閾値との大小関係を判定する第二判定とを実施する
ことを特徴とする、請求項2記載のバッテリー管理装置。
【請求項4】
前記判定手段が、前記二次電池への入力電流の積算値から算出される電池容量に基づいて前記二次電池の性能を判定する
ことを特徴とする、請求項1記載のバッテリー管理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記車両の停車時間が所定時間以上になることが見込まれる場合に、前記二次電池の新品時容量を前記所定時間で除した値に対応する低Cレート相当の電流値で前記二次電池が充電されるように前記充電制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1記載のバッテリー管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両に搭載される二次電池及び燃料電池を管理するバッテリー管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される走行用モーターを駆動するための電力供給源として、充放電を繰り返し行うことのできる二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)や、気体燃料の酸化還元反応を利用して電力を生成する燃料電池(例えば固体高分子形燃料電池)が知られている。このような二次電池の性能評価に関して、完全放電状態から定電流定電圧充電を実施した後に定電流放電を行うことで電池容量を測定する技術が知られている。また、燃料電池の性能評価に関して、カソード湿度を低下させたときのセル電圧の低下量に基づいて性能(触媒被毒の程度)を評価する技術も知られている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-040868号公報
【特許文献2】国際公開第2017/047353号
【特許文献3】特開2014-220094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の二次電池及び燃料電池を搭載した車両において、車両の利便性やユーザビリティを向上させるためには、各々の電池の性能を適宜判定するとともに、必要に応じてメンテナンスや交換を促すようなメッセージを車両ユーザーに報知することが好ましい。しかしながら、各々の電池の性能を判定するための制御には時間がかかるため、性能判定の頻度を高めることが難しいという課題がある。例えば、二次電池の電池容量の測定に際し、充電状態を完全放電状態と満充電状態との間で変化させるためには数十時間から数日を要し、測定自体が容易ではない。また、燃料電池の性能評価においても、カソード湿度を低下させるための操作に時間やコストがかかってしまう。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で二次電池及び燃料電池の性能を効率よく把握できるようにしたバッテリー管理装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のバッテリー管理装置は、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2以降の各態様は、何れもが付加的に適宜選択されうる態様であって、何れもが省略可能な態様である。態様2以降の各態様は、何れもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0007】
態様1.開示のバッテリー管理装置は、車両に搭載される二次電池及び燃料電池を管理するバッテリー管理装置である。このバッテリー管理装置は、前記車両の停車中に、前記燃料電池の発電電力で前記二次電池を充電する充電制御を実施する制御手段と、前記充電制御の実施中に、前記二次電池及び前記燃料電池の双方の性能を判定する判定手段とを備える。
【0008】
態様2.上記の態様1において、前記判定手段が、前記充電制御を開始してからの経過時間に応じて設定される複数の期間において、前記燃料電池の性能を判定することが好ましい。
態様3.上記の態様2において、前記判定手段が、前記燃料電池の性能の判定に際し、前記燃料電池の出力電圧の変化速度と所定の速度閾値との大小関係を判定する第一判定と、前記燃料電池の出力電圧と所定の電圧閾値との大小関係を判定する第二判定とを実施することが好ましい。
【0009】
態様4.上記の態様1を含む態様において、前記判定手段が、前記二次電池への入力電流の積算値から算出される電池容量に基づいて前記二次電池の性能を判定することが好ましい。
態様5.上記の態様1を含む態様において、前記制御手段は、前記車両の停車時間が所定時間以上になることが見込まれる場合に、前記二次電池の新品時容量を前記所定時間で除した値に対応する低Cレート相当の電流値で前記二次電池が充電されるように前記充電制御を実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
開示のバッテリー管理装置によれば、充電制御の実施中に二次電池及び燃料電池の双方の性能を同時に測定することで、二次電池及び燃料電池の劣化やメンテナンスの要否を効率よく判断できる。したがって、簡素な構成で二次電池及び燃料電池の性能を効率よく把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のバッテリー管理装置が適用された車両のブロック図である。
【
図2】燃料電池の電圧変化を例示するグラフである。
【
図3】二次電池の電圧変化を例示するグラフである。
【
図4】充電制御の開始条件の判定に係るフローチャートである。
【
図5】二次電池及び燃料電池の性能の判定に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示のバッテリー管理装置は、以下の実施例に示す車両に適用される。この車両には、少なくとも二次電池と燃料電池とが搭載される。燃料電池は、少なくとも二次電池を充電する機能を持つ。二次電池は、例えば走行用モーターを駆動するための電力供給源として機能するものであってもよいし、補機類を駆動するための電力供給源として機能するものであってもよい。以下の実施例に示す車両は電動車両であるが、本件に係る車両には、エンジン車両やハイブリッド車両等が含まれる。
【0013】
また、本件に係る車両には、プラグインハイブリッド自動車(PHEV,Plug-in Hybrid Electric Vehicle)が含まれる。プラグインハイブリッド自動車とは、走行用モーターの電力供給源としての二次電池(走行用バッテリー)に対する外部充電、又は、走行用バッテリーから各種電化製品への外部給電が可能なハイブリッド自動車を意味する。ここでいうプラグインハイブリッド自動車には、外部充電設備からの電力が供給される充電ケーブルを差し込むための充電口(インレット)や、外部給電用のコンセント(アウトレット)が設けられる。
【実施例0014】
[1.構成]
図1は、実施例としてのバッテリー管理装置10が適用される車両1の構成を示すブロック図である。この車両1には、モーター2,二次電池3,インバーター4が搭載される。モーター2は、車両1を走行させるための駆動力を生成する電動機であり、例えば三相交流式の同期型電動機兼発電機である。モーター2は、図示しない変速機構や差動機構を介して駆動輪に接続される。
【0015】
二次電池3は、モーター2を駆動するための電力供給源であり、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池である。二次電池3には、二次電池3の温度を上昇させるための昇温装置(ヒーター)や温度を低下させるための冷却装置(ファン)が内蔵される。二次電池3の状態は、バッテリー管理装置10によって管理される。また、インバーター4は、モーター2側の交流電力と二次電池3側の直流電力とを変換するための電力変換装置であり、モーター2と二次電池3とを繋ぐ電力供給経路に介装される。
【0016】
この車両1には、燃料電池5,燃料タンク6,コンプレッサー7,DCDCコンバーター8,操作パネル9が搭載される。燃料電池5は、気体燃料の酸化還元反応を利用して電力を生成する発電装置である。燃料電池5で生成された電力は、モーター2や二次電池3に供給されうる。燃料電池5の具体例としては、固体高分子型燃料電池(PEFC,Polymer Electrolyte Fuel Cell),固体酸化物型燃料電池(SOFC,Solid Oxide Fuel Cell),溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC,Molten Carbonate Fuel Cell)等が挙げられる。燃料電池5には、図示しないアノード(負極)及びカソード(正極)の温度を調節するための昇温装置(ヒーター)や冷却装置(ラジエータ)、湿度を調節するための加湿装置や除湿装置等が補機として設けられている。燃料電池5の状態は、バッテリー管理装置10によって管理される。
【0017】
図1に示す燃料電池5のアノード側には燃料タンク6が接続され、カソード側にはコンプレッサー7が接続される。燃料タンク6は、加圧された水素や一酸化炭素等の燃料ガスが貯留された容器である。図示しない燃料バルブを開放することで、燃料タンク6内の燃料ガスが燃料電池5のアノード側に供給される。コンプレッサー7は、外気(酸素を含む空気)を圧縮して燃料電池5に供給するための圧縮機である。コンプレッサー7を作動させることで、酸素を含む空気が燃料電池5のカソード側に供給される。
【0018】
DCDCコンバーター8は、燃料電池5の発電電力を変圧する(昇圧又は降圧させる)変圧装置である。変圧後の電力は、二次電池3とインバーター4との間の電力供給経路に供給される。このとき、電力供給経路に導入される電圧を二次電池3の電圧よりも高くすることで、二次電池3が充電される。本実施例のバッテリー管理装置10は、車両1の停車中に(例えば駐車時間を利用して)、燃料電池5の発電電力で二次電池3を低速で充電するとともに、充電中に二次電池3及び燃料電池5の双方の性能を判定する制御を実施する。
【0019】
操作パネル9は、ディスプレイの表面にタッチパネルが取り付けられた入出力装置である。操作パネル9は、例えば車両1のダッシュボードやインストルメントパネルに設けられ、バッテリー管理装置10に接続される。バッテリー管理装置10には、二次電池3,燃料電池5,燃料タンク6,コンプレッサー7,DCDCコンバーター8の作動状態等に関する情報が伝達されるとともに、操作パネル9を介して入力される情報が伝達されるようになっている。
【0020】
[2.制御]
バッテリー管理装置10は、二次電池3及び燃料電池5を管理する電子制御装置(コンピューター)である。バッテリー管理装置10の内部には、プロセッサー(中央処理装置),メモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置等が内蔵される。バッテリー管理装置10が実施する制御の内容(制御プログラム)は、メモリや記憶装置に保存されており、その内容がプロセッサーに適宜読み込まれることによって実行される。
【0021】
バッテリー管理装置10の主要な機能を以下に例示する。
・二次電池3の充電状態の管理
・二次電池3の入出力電圧の測定、入出力電流の測定、温度測定
・燃料電池5の発電状態の管理
・燃料電池5の発電電圧の測定、発電電流の測定、温度測定、湿度測定
・燃料タンク6の残圧測定、燃料ガスの流量制御
・コンプレッサー7の圧力測定、圧縮空気の流量制御
・二次電池3及び燃料電池5の性能判定
【0022】
図1に示すように、バッテリー管理装置10には、制御手段11と判定手段12とが設けられる。これらの要素は、二次電池3及び燃料電池5の双方の性能を判定するための機能を便宜的に分類して示したものである。これらの要素は、個々の要素を独立したプログラムとして記述されてもよいし、各要素の機能を兼ね備えた複合プログラムとして記述されてもよい。
【0023】
制御手段11は、車両1の停車中に燃料電池5の発電電力で二次電池3を充電する充電制御を実施する機能を持つ。充電制御は、好ましくは車両1の停車時間が所定時間以上(例えば、5~6時間以上)になることが見込まれる場合に実施される。具体例を挙げれば、車両1のユーザーが車両1を長時間駐車させる際に、操作パネル9を介して充電制御を開始する操作をした場合に、制御手段11が充電制御を開始する。あるいは、車両1の走行距離や使用年数が規定の距離,年数を超えた場合に、停車中の充電制御の実施を促す情報を操作パネル9に表示し、その後にユーザーが充電制御の実施を許可した場合に、制御手段11が充電制御を開始する。
【0024】
充電制御は、一般的な外部充電時と比較して二次電池3を低Cレートで充電する制御であることが好ましく、0.2~0.5[C]程度のCレート(充電速度)を設定することが好ましい。例えば、充放電容量(電池容量)が60[Ah]の二次電池3を0.2[C]のCレートで充電する場合には、12[A]の電流が二次電池3に供給し続けられるようにする。また、充電制御中のCレートは一定であることが好ましく、すなわち、二次電池3に対して定電流充電を実施することが好ましい。低Cレートで定電流充電を実施することで、二次電池3の容量測定精度が向上する。
【0025】
充電制御時のCレートは、予想される車両1の停車時間に応じた値に設定されてもよい。すなわち、車両1の停車時間が所定時間X以上になることが見込まれる場合に、二次電池3の新品時容量を所定時間Xで除した値に対応するCレートを設定してもよい。例えば、二次電池3の新品時容量(新品時の充放電容量)が60[Ah]であるものとして、ユーザーが車両1を12時間駐車させる場合には、5[A]の電流で二次電池3を定電流充電してもよい。このとき、実際の充電時間は充電開始時の残容量に応じて変化するが、たとえ充電開始時の残容量が0であったとしても、駐車中に二次電池3の充電を完了させることができる。したがって、駐車中に二次電池3の充電が完了しうる範囲で電流値を小さくすることができる。なお、所定時間Xの値は、操作パネル9を使ってユーザーに入力させてもよいし、車両1の使用履歴に基づいて予想される値を用いてもよい。
【0026】
判定手段12は、制御手段11が充電制御を実施している間に、二次電池3及び燃料電池5の双方の性能を判定する機能を持つ。燃料電池5の性能は、充電制御を開始してからの経過時間に応じて設定される複数の期間で判定されることが好ましい。例えば、予想される充電制御の実施期間の中から、充電初期の第一測定期間,充電中期の第二測定期間,充電終期の第三測定期間を設定し、各々の測定期間で燃料電池5の性能を判定する。具体例を挙げれば、充電制御の実施時間を5時間と仮定して、第一測定期間を充電開始から30~60分の期間とし、第二測定期間を135~165分の期間とし、第三測定期間を240~270分の期間とする。複数の測定期間での判定により、燃料電池5の充電制御中の性能低下が精度よく把握される。
【0027】
本実施例の判定手段12は、各々の測定期間において二種類の性能判定を実施する。
第一の判定は、燃料電池5の出力電圧の変化速度と所定の速度閾値A0との大小関係を判定するものである。燃料電池5の性能が良好である場合、出力電圧の変化速度はほぼ0のまま変化しない。一方、燃料電池5の性能が低下すると出力電圧の変化速度が負の値となり、性能低下が強まるにつれてその絶対値が大きくなる。したがって、出力電圧の変化速度と所定の速度閾値A0との大小関係を判定することで、燃料電池5の性能の低下が精度よく把握される。なお、所定の速度閾値A0は、0又は0に近い固定値であってもよいし、燃料電池5のセル温度や使用年数等に応じて設定される可変値であってもよい。
【0028】
第二の判定は、燃料電池5の出力電圧と所定の電圧閾値との大小関係を判定するものである。燃料電池5の性能が良好である場合、出力電圧はセル電圧及びセルスタック数に応じた所定の電圧閾値以上の値となる。一方、燃料電池5の性能が低下するにつれて出力電圧は低下する。したがって、出力電圧と所定の電圧閾値との大小関係を判定することで、燃料電池5の性能の低下が精度よく把握される。
【0029】
図2は、充電制御時における燃料電池5の出力電圧V
FCの経時変化を例示するグラフである。図中の時刻t
1~t
2は第一測定期間に相当し、時刻t
3~t
4は第二測定期間に相当し、時刻t
5~t
6は第三測定期間に相当する。OCVは燃料電池5の新品時の開回路電圧を表し、V
0は所定の電圧閾値を表す。判定手段12は、第一の判定に際し、第一測定期間,第二測定期間,第三測定期間の各々において出力電圧V
FCの変化速度A
1,A
2,A
3[mV/m]を算出し、各々の変化速度A
1,A
2,A
3と所定の速度閾値A
0との大小関係を判定する。また、第二の判定に際し、出力電圧V
FCと所定の電圧閾値V
0との大小関係を判定する。電圧閾値V
0の値は、予め設定された固定値であってもよいし、燃料電池5のセル温度や使用年数等に応じて設定される可変値であってもよい。
【0030】
判定手段12は、燃料電池5だけでなく二次電池3の性能を判定する機能を持つ。二次電池3の性能は、例えば二次電池3への入力電流の積算値から算出される充放電容量Bに基づいて判定される。定電流充電では二次電池3への入力電流がほぼ一定となるため、入力電流に充電時間を乗じることでその時点における充放電容量Bが把握される。この充放電容量Bは、二次電池3の性能が低下すると減少する。したがって、この充放電容量Bと所定の基準容量B0との大小関係を判定することで、二次電池3の性能の低下が精度よく把握される。
【0031】
図3は、充電制御時における二次電池3の端子電圧V
Liの経時変化を例示するグラフである。図中の満充電電圧V
MAXは二次電池3の充電が完了したと判断される端子電圧V
Liの値(すなわち充電終了電圧)を表し、Bは充電完了時の充放電容量を表し、B
0は所定の基準容量を表す。判定手段12は、二次電池3の端子電圧V
Liが満充電電圧V
MAXに達するまでの入力電流を積算することで二次電池3の充放電容量Bを算出し、この充放電容量Bと基準容量B
0との大小関係を判定する。基準容量B
0の値は、予め設定された固定値であってもよいし、二次電池3のセル温度や使用年数等に応じて設定される可変値であってもよい。
【0032】
[3.フローチャート]
図4は、充電制御の開始条件の判定に係るフローチャートである。
図4に示すフローは、バッテリー管理装置10において所定の周期で繰り返し実行される。また、
図5は、二次電池3及び燃料電池5の性能の判定に係るフローチャートであり、充電制御が開始された後に実施される。
【0033】
図4のステップA1では、車両1のユーザーによる測定開始操作がなされたか否かが判定される。ここでは、例えばユーザーが操作パネル9を介して充電制御を開始する操作をしたか否かが判定される。ステップA1の条件が成立した場合に限り、制御がステップA2に進む。ステップA2では、図示しないセンサー類により二次電池3及び燃料電池5に関する各種情報が取得され、バッテリー管理装置10に入力されてステップA3に進む。
【0034】
ステップA3では、燃料タンク6に貯留された燃料ガスの残圧が所定圧以上であるか否かが判定される。所定圧は、予め設定された固定値であってもよいし、二次電池3の充電率が低いほど高い値に設定される可変値であってもよい。ここで、残圧が所定圧未満の場合には燃料電池5による発電ができないものと判断され、ステップA4に進む。ステップA4では、例えば操作パネル9を介して、二次電池3及び燃料電池5の性能測定をできないことがユーザーに報知される。一方、ステップA3で残圧が所定圧以上の場合には、燃料電池5による発電が可能であると判断され、ステップA5に進む。
【0035】
ステップA5~A9は、二次電池3の温度管理に関するステップである。ステップA5では、二次電池3のセル温度が第一温度未満(例えば25℃未満)であるか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップA6に進み、フラグF1が0に設定される。フラグF1が0であることは「二次電池3が冷態状態である(まだ充電に適した第一温度以上の状態になっていない)こと」を意味する。続くステップA7では、二次電池3を昇温させるために昇温装置が作動し、ステップA10に進む。一方、ステップA5の条件が成立しない場合にはステップA8に進み、フラグF1が1に設定される。フラグF1が1であることは「二次電池3が充電に適した第一温度以上の状態になっていること」を意味する。続くステップA9では、二次電池3を保温するために昇温装置や冷却装置が作動し、ステップA10に進む。
【0036】
ステップA10~A14は、燃料電池5の温度管理に関するステップである。ステップA10では、燃料電池5のセル温度が第二温度未満(例えば60~80℃未満)であるか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップA11に進み、フラグF2が0に設定される。フラグF2が0であることは「燃料電池5が冷態状態である(まだ発電に適した第二温度以上の状態になっていない)こと」を意味する。続くステップA12では、燃料電池5を昇温させるために昇温装置が作動し、ステップA15に進む。一方、ステップA10の条件が成立しない場合にはステップA13に進み、フラグF2が1に設定される。フラグF2が1であることは「燃料電池5が発電に適した第二温度以上の状態になっていること」を意味する。続くステップA14では、燃料電池5を保温するために昇温装置が作動し、ステップA15に進む。
【0037】
ステップA15では、フラグF
1,F
2がともに1であるか否かが判定される。この条件が成立しなければ制御がステップA5に戻り、両方のフラグF
1,F
2が1になるまで加熱や保温が繰り返される。ステップA15の条件が成立するとステップA16に進み、充電制御が開始されるとともに、充電制御を開始してからの経過時間が計測される。また、充電制御では燃料電池5による発電が開始され、その発電電力で二次電池3が充電されるとともに、
図5に示すフローが開始される。
【0038】
図5のステップB1では、図示しないセンサー類により二次電池3及び燃料電池5に関する各種情報が取得され、バッテリー管理装置10に入力されてステップB2に進む。ステップB2~B5は、充電初期の判定に関するステップである。ステップB2では、充電制御の経過時間が第一測定期間内(例えば
図2中の時刻t
1~t
2)に入っているか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップB3に進み、成立しない場合にはステップB6に進む。
【0039】
ステップB3では、第一測定期間内における出力電圧VFCの変化速度A1が算出される。続くステップB4では、変化速度A1が速度閾値A0以上であるか否かが判定される。ここで、変化速度A1が速度閾値A0以上である場合には、燃料電池5の性能低下がない(又は緩慢である)と判断されてステップB6に進む。一方、変化速度A1が速度閾値A0未満である場合には、燃料電池5が性能低下している(急激に劣化しつつある)と判断され、ステップB5に進む。
【0040】
ステップB5では、燃料電池5の出力電圧VFCが電圧閾値V0以上であるか否かが判定される。ここで、出力電圧VFCが電圧閾値V0以上である場合には、燃料電池5の性能が大きく損なわれてはいないと判断されてステップB6に進む。一方、出力電圧VFCが電圧閾値V0未満である場合には、燃料電池5の性能が大きく損なわれていると判断され、ステップB18に進む。ステップB18では、例えば操作パネル9を介して、燃料電池5の部品交換を推奨する旨の情報がユーザーに報知され、充電制御が終了する。
【0041】
ステップB6~B9は、充電中期の判定に関するステップであり、ステップB2~B5と同様の制御が実施される。ステップB6では、充電制御の経過時間が第二測定期間内(例えば
図2中の時刻t
3~t
4)に入っているか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップB7に進み、成立しない場合にはステップB10に進む。ステップB7では、第二測定期間内における出力電圧V
FCの変化速度A
2が算出され、続くステップB8では、変化速度A
2が速度閾値A
0以上であるか否かが判定される。ステップB8の条件が成立する場合にはステップB10に進み、成立しない場合にはステップB9に進む。ステップB9では、燃料電池5の出力電圧V
FCが電圧閾値V
0以上であるか否かが判定される。ステップB9の条件が成立する場合にはステップB10に進み、成立しない場合にはステップB18に進む。
【0042】
ステップB10~B13は、充電終期の判定に関するステップであり、ステップB2~B5と同様の制御が実施される。ステップB10では、充電制御の経過時間が第三測定期間内(例えば
図2中の時刻t
5~t
6)に入っているか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップB11に進み、成立しない場合にはステップB14に進む。ステップB11では、第三測定期間内における出力電圧V
FCの変化速度A
3が算出され、続くステップB12では、変化速度A
3が速度閾値A
0以上であるか否かが判定される。ステップB12の条件が成立する場合にはステップB14に進み、成立しない場合にはステップB13に進む。ステップB13では、燃料電池5の出力電圧V
FCが電圧閾値V
0以上であるか否かが判定される。ステップB13の条件が成立する場合にはステップB14に進み、成立しない場合にはステップB18に進む。
【0043】
ステップB14では、二次電池3が満充電状態になっているか否かが判定される。ここで、二次電池3の端子電圧VLiが満充電電圧VMAXに達していなければ、まだ満充電状態ではないと判断されて、制御がステップB1に戻る。これにより、充電制御の経過時間が第一,第二,第三測定期間に入っていない場合には、燃料電池5の発電と二次電池3の充電とが継続される。一方、二次電池3の端子電圧VLiが満充電電圧VMAXに達していれば二次電池3が十分に充電されたものと判断され、燃料電池5による発電及び二次電池3の充電が停止されてステップB15に進む。
【0044】
ステップB15では、二次電池3が満充電状態になるまでの間に供給された入力電流の積算値に基づき、二次電池3の充放電容量Bが算出される。続くステップB16では、充放電容量Bが基準容量B0以上であるか否かが判定される。この条件が成立する場合には二次電池3の性能が低下していないと判断されてステップB17に進む。ステップB17では、例えば操作パネル9を介して、二次電池3及び燃料電池5の性能に問題がない旨の情報がユーザーに報知され、充電制御が終了する。一方、ステップB16の条件が成立しない場合には、二次電池3の性能が低下していると判断されてステップB19に進む。ステップB19では、例えば操作パネル9を介して、二次電池3の交換を推奨する旨の情報がユーザーに報知され、充電制御が終了する。
【0045】
[4.効果]
(1)上記の実施例に係るバッテリー管理装置10は、車両1に搭載される二次電池3及び燃料電池5を管理するものであって、制御手段11と判定手段12とを備える。制御手段11は、車両1の停車中に、燃料電池5の発電電力で二次電池3を充電する充電制御を実施する。判定手段12は、充電制御の実施中に、二次電池3及び燃料電池5の双方の性能を判定する。
【0046】
このような制御により、二次電池3及び燃料電池5の劣化やメンテナンスの要否を効率よく判断できる。すなわち、車両1が停車している空き時間を利用して、二次電池3及び燃料電池5の性能を同時に測定できる。また、二次電池3及び燃料電池5の性能測定を個別に実施した場合と比較して、短時間で性能測定を完了させることができる。したがって、簡素な構成で二次電池3及び燃料電池5の性能を効率よく把握できる。
【0047】
また、上記の充電制御は、例えばユーザーが車両1を長時間駐車させる際に、操作パネル9から充電制御を開始する操作をすることで実施される。これにより、一般的な外部充電時と比較して二次電池3を低Cレートで充電することができ、小さい電流でゆっくりと二次電池3を充電することができる。したがって、二次電池3の電池容量(充放電容量B)の算出精度を高めることができ、燃料電池5の性能を精度よく把握できる。また、充電レートが低い(充電電流が小さい)ことから、燃料電池5の発電量も比較的小さくて済み、燃料ガスの浪費を抑えることができる。
【0048】
(2)上記の判定手段12は、充電制御を開始してからの経過時間に応じて設定される複数の期間において、燃料電池5の性能を判定しうる。
図2に示す例では、充電初期の第一測定期間(時刻t
1~t
2),充電中期の第二測定期間(時刻t
3~t
4),充電終期の第三測定期間(時刻t
5~t
6)が設定され、各々の測定期間で燃料電池5の性能が判定されている。
【0049】
このような制御により、燃料電池5の性能の低下を精度よく判定できる。例えば、二次電池3の充電中に何らかの理由によって燃料電池5が急激に劣化したような場合であっても、その劣化を迅速に発見して部品交換をユーザーに促すことができる。また、充電制御の終了時に燃料電池5の性能評価を実施するような制御と比較して、性能評価の回数を増加させることができ、評価の信頼性を高めることができる。
【0050】
(3)上記の判定手段12は、燃料電池5の性能の判定に際し、第一判定及び第二判定を実施しうる。第一判定は、燃料電池5の出力電圧VFCの変化速度A1~A3と所定の速度閾値A0との大小関係を判定するものである。また第二判定は、燃料電池5の出力電圧VFCと所定の電圧閾値V0との大小関係を判定するものである。このような二段階の判定により、燃料電池5の性能の低下を精度よく判定でき、判定結果の信頼性をさらに高めることができる。
【0051】
(4)上記の判定手段12は、二次電池3への入力電流の積算値から算出される電池容量(充放電容量B)に基づいて二次電池3の性能を判定しうる。このように、定電流充電に係る入力電流の積算値を算出することで、精度の高い電池容量(充放電容量B)を把握できる。したがって、二次電池3の劣化を高精度に判定することができ、判定結果の信頼性をさらに高めることができる。
【0052】
(5)一般に、定電流充電時の電流値を小さくするほど、電池容量(充放電容量B)の算出精度が向上する。このような特性を踏まえ、上記の制御手段11は、車両1の停車時間が所定時間X以上になることが見込まれる場合に、二次電池3の新品時容量を所定時間Xで除した値に対応する低Cレート相当の電流値で二次電池3が充電されるように充電制御を実施しうる。このような制御により、駐車中に二次電池3の充電が完了しうる範囲で電流値を小さくして充電することができ、車両1の利便性を損なうことなく二次電池3の劣化を高精度に判定できる。
【0053】
[5.その他]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は必要に応じて取捨選択でき、あるいは、適宜組み合わせることができる。
【0054】
上記の実施例では、
図2に示すように、充電制御中の3つの期間で燃料電池5の性能を判定する制御について詳述したが、燃料電池5の性能を判定するタイミングはこれらの期間に限定されることがなく、判定回数もこれに限定されない。また、上記の実施例では、燃料電池5の性能を二段階に判定する制御を例示したが、何れか一方の判定を実施することにしてもよい。少なくとも一回の充電制御で二次電池3及び燃料電池5の双方の性能を判定することで、二次電池3及び燃料電池5の性能を効率よく把握でき、上述の実施例と同様の効果を獲得できる。