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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177861
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】プラズマ生成機構及び光源装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20241217BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20241217BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03F1/84
H05G2/00 K
G03F7/20 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096232
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直樹
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H195BD02
2H195BD14
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA05
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AC09
(57)【要約】
【課題】プラズマ生成に伴って生じるデブリの堆積を防止することが可能なプラズマ生成機構及び光源装置を提供すること。
【解決手段】
本発明の一形態に係るプラズマ生成機構は、エネルギービームの照射により液状のプラズマ原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置が備えるプラズマ生成機構であって、回転体と、回転駆動源と、原料供給部と、遮蔽部と、加熱機構と、導液部とを具備する。前記回転体は、回転軸の周りに回転する面である回転面を有する。前記回転駆動源は、前記回転体を前記回転軸の周りに回転させる。前記原料供給部は、前記プラズマ原料を前記回転面に供給する。前記遮蔽部は、前記回転面のうち前記エネルギービームが照射される照射位置に対向する。前記加熱機構は、前記遮蔽部を前記プラズマ原料の融点以上の温度に加熱する。前記導液部は、前記遮蔽部から流入する前記プラズマ原料を前記原料供給部に導く。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギービームの照射により液状のプラズマ原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置が備えるプラズマ生成機構であって、
回転軸の周りに回転する面である回転面を有する回転体と、
前記回転体を前記回転軸の周りに回転させる回転駆動源と、
前記プラズマ原料を前記回転面に供給する原料供給部と、
前記回転面のうち前記エネルギービームが照射される照射位置に対向する遮蔽部と、
前記遮蔽部を前記プラズマ原料の融点以上の温度に加熱する加熱機構と、
前記遮蔽部から流入する前記プラズマ原料を前記原料供給部に導く導液部と
を具備するプラズマ生成機構。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって、
前記原料供給部は、前記導液部から流入する前記プラズマ原料を貯留する貯留槽を有し、
前記回転体は、前記回転面の一部が前記貯留槽に貯留された前記プラズマ原料に浸漬されている
プラズマ生成機構。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって、
前記加熱機構は、前記遮蔽部の前記回転体とは反対側に配置されている
プラズマ生成機構。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマ生成機構であって、
前記加熱機構は、前記貯留槽に配置されている
プラズマ生成機構。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって、
前記回転体を囲み、前記回転面と対向する対向面を有するカバーをさらに具備し、
前記対向面には開口が設けられ、
前記遮蔽部は、前記開口を介して前記照射位置に対向する遮蔽面を有する
プラズマ生成機構。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ生成機構であって、
前記遮蔽面は、前記対向面より前記回転面から離隔する
プラズマ生成機構。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマ生成機構であって、
前記原料供給部は、前記導液部から流入する前記プラズマ原料を貯留する貯留槽を有し、
前記対向面は、前記回転軸に垂直な方向から見て前記貯留槽の周縁に一致する
プラズマ生成機構。
【請求項8】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって、
前記回転体を囲み、前記回転面と対向する対向面を有するカバーをさらに具備し、
前記対向面は前記導液部と前記原料供給部の間に位置し、
前記導液部は、前記遮蔽部から流入する前記プラズマ原料を前記対向面上に流入させる
プラズマ生成機構。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマ生成機構であって、
前記遮蔽部は、前記照射位置に対向する遮蔽面を有し、
前記導液部は、前記遮蔽面から前記対向面に向かって次第に前記回転面に接近する導液面を有する
プラズマ生成機構。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマ生成機構であって、
前記導液面は傾斜面状である
プラズマ生成機構。
【請求項11】
請求項9に記載のプラズマ生成機構であって、
前記導液面は曲面状である
プラズマ生成機構。
【請求項12】
請求項9に記載のプラズマ生成機構であって、
前記遮蔽面は、前記プラズマ原料が流れる溝を有する
プラズマ生成機構。
【請求項13】
請求項9に記載のプラズマ生成機構であって、
前記遮蔽面及び前記導液面は前記照射位置から等距離の半球面状である
プラズマ生成機構。
【請求項14】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって、
前記回転体を囲み、前記回転面と対向する対向面を有するカバーをさらに具備し、
前記遮蔽部及び前記導液部を有し、前記カバーに対して着脱可能である遮蔽体を備える
プラズマ生成機構。
【請求項15】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって、
前記回転面における前記プラズマ原料の膜厚を調節する膜厚調整機構
をさらに具備するプラズマ生成機構。
【請求項16】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって、
前記エネルギービームは、レーザ光である
プラズマ生成機構。
【請求項17】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって、
前記放射線は、極端紫外光又はX線である
プラズマ生成機構。
【請求項18】
請求項1に記載のプラズマ生成機構であって
前記プラズマ原料は、スズ、リチウム、ガドリニウム、テルビウム、ガリウム、ビスマス又はこれらの材料のうちの少なくとも1つを含む合金である
プラズマ生成機構。
【請求項19】
エネルギービームの照射により液状のプラズマ原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、
回転軸の周りに回転する面である回転面を有する回転体と、前記回転体を前記回転軸の周りに回転させる回転駆動源と、前記プラズマ原料を前記回転面に供給する原料供給部と、前記回転面のうち前記エネルギービームが照射される照射位置に対向する遮蔽部と、前記遮蔽部を前記プラズマ原料の融点以上の温度に加熱する加熱機構と、前記遮蔽部から流入する前記プラズマ原料を前記原料供給部に導く導液部とを備えるプラズマ生成機構と、
前記照射位置に前記エネルギービームを入射させるビーム源と
を具備する光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギービーム照射位置にプラズマ原料を供給し、プラズマを生成するプラズマ生成機構及び光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線は、医療用用途、工業用用途、研究用用途に用いられてきた。医療用分野においては、X線は、胸部X線写真撮影、歯科X線写真撮影や、CT(Computer Tomogram)といった用途に用いられている。工業用分野においては、X線は、構造物や溶接部などの物質内部を観察する非破壊検査、断層非破壊検査といった用途に用いられている。研究用分野においては、X線は、物質の結晶構造を解析するためのX線回折、物質の構成元素を分析するためのX線分光(蛍光X線分析)といった用途に用いられている。X線のうち比較的波長の長い軟X線領域にある波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」ともいう)は、近年露光光として使用されている。
【0003】
EUVを発生させるEUV光源装置には、溶融したスズ又はリチウム等であるプラズマ原料にエネルギービームを照射して励起させることにより高温プラズマを発生させ、その高温プラズマからEUV光を取り出すものがある。エネルギービームとしてレーザ光を用いる方法はLPP(Laser Produced Plasma)、放電を用いる方法はDPP(Discharge Produced Plasma)又はLDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)と呼ばれている。
【0004】
LPP方式のEUV光源装置としては、プラズマ原料の液滴に対してレーザ光を集光することにより原料を励起させてプラズマを発生させるものが知られている。それに対して近年、回転体の遠心力によりレーザ光の照射領域へプラズマ原料を供給する方法が開発された(例えば、特許文献1参照)。この方法では、下部が貯留されたプラズマ原料に浸漬された状態で回転体が回転することにより、回転体表面にプラズマ原料が付着し、回転体表面上の照射領域にプラズマ原料が供給される。この方法は、プラズマ原料を液滴として供給する必要がないため、液滴にレーザ光を集光する方式と比べて比較的簡易な構成で、高輝度の放射線を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-216286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プラズマ原料に対してレーザ光を照射すると、プラズマ原料の蒸気及び煙霧であるデブリがプラズマと共に発生する。特許文献1に記載のようにプラズマ原料を塗布した回転体表面にレーザ光を照射すると、回転体表面の法線方向に多くのデブリが噴出し、回転体のカバーのうち照射領域に対向する領域(以下、対向領域)に付着する。
【0007】
貯留されているプラズマ原料はヒーターにより加熱され、溶融しているが、対向領域近傍まではその熱が及びにくく、対向領域に付着したデブリは固化する。デブリの噴出量が多いと、飛来してくる方向に向かってデブリが堆積し、EUVの発光機構に影響を与える恐れがある。
【0008】
さらに、回転体表面に付着したプラズマ原料のうち、レーザ光が照射されなかったプラズマ原料は貯留槽に戻り、再利用される。しかしながら、デブリが対向領域において堆積すると、その分のプラズマ原料が貯留槽に戻らず、貯留されているプラズマ原料が減少することになる。特にレーザ光の照射周波数が高いとプラズマ原料の減少量も増加するため、早期に補給を行う必要が生じる。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、プラズマ生成に伴って生じるデブリの堆積を防止することが可能なプラズマ生成機構及び光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るプラズマ生成機構は、エネルギービームの照射により液状のプラズマ原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置が備えるプラズマ生成機構であって、回転体と、回転駆動源と、原料供給部と、遮蔽部と、加熱機構と、導液部とを具備する。
前記回転体は、回転軸の周りに回転する面である回転面を有する。
前記回転駆動源は、前記回転体を前記回転軸の周りに回転させる。
前記原料供給部は、前記プラズマ原料を前記回転面に供給する。
前記遮蔽部は、前記回転面のうち前記エネルギービームが照射される照射位置に対向する。
前記加熱機構は、前記遮蔽部を前記プラズマ原料の融点以上の温度に加熱する。
前記導液部は、前記遮蔽部から流入する前記プラズマ原料を前記原料供給部に導く。
【0011】
この構成によれば、液状のプラズマ原料は原料供給部から回転面に供給されており、回転面上の照射位置にエネルギービームが照射されると、プラズマが生成すると共にデブリが噴出する。デブリは照射位置に対向する遮蔽部に到達するが、遮蔽部はプラズマ原料の融点以上に加熱されているため、遮蔽部に到達したデブリは溶融して液状のプラズマ原料となり、導液部を介して原料供給部に戻る。したがって、デブリとなったプラズマ原料を再利用することが可能となり、プラズマ原料の補給頻度を低減させることができる。また、デブリが遮蔽部上に堆積しないため、放射線の放出に対するデブリの悪影響を回避することができる。
【0012】
前記原料供給部は、前記導液部から流入する前記プラズマ原料を貯留する貯留槽を有し、
前記回転体は、前記回転面の一部が前記貯留槽に貯留された前記プラズマ原料に浸漬されていてもよい。
【0013】
前記加熱機構は、前記遮蔽部の前記回転体とは反対側に配置されていてもよい。
【0014】
前記加熱機構は、前記貯留槽に配置されていてもよい。
【0015】
前記プラズマ生成機構は、前記回転体を囲み、前記回転面と対向する対向面を有するカバーをさらに具備し、
前記対向面には開口が設けられ、
前記遮蔽部は、前記開口を介して前記照射位置に対向する遮蔽面を有してもよい。
【0016】
前記遮蔽面は、前記対向面より前記回転面から離隔してもよい。
【0017】
前記原料供給部は、前記導液部から流入する前記プラズマ原料を貯留する貯留槽を有し、
前記対向面は、前記回転軸に垂直な方向から見て前記貯留槽の周縁に一致してもよい。
【0018】
前記回転体を囲み、前記回転面と対向する対向面を有するカバーをさらに具備し、
前記対向面は前記導液部と前記原料供給部の間に位置し、
前記導液部は、前記遮蔽部から流入する前記プラズマ原料を前記対向面上に流入させてもよい。
【0019】
前記遮蔽部は、前記照射位置に対向する遮蔽面を有し、
前記導液部は、前記遮蔽面から前記対向面に向かって次第に前記回転面に接近する導液面を有してもよい。
【0020】
前記導液面は傾斜面状であってもよい。
【0021】
前記導液面は曲面状であってもよい。
【0022】
前記遮蔽面は、前記プラズマ原料が流れる溝を有してもよい。
【0023】
前記遮蔽面及び前記導液面は前記照射位置から一定距離の半球面状であってもよい。
【0024】
前記プラズマ生成機構は、前記回転体を囲み、前記回転面と対向する対向面を有するカバーをさらに具備し、
前記遮蔽部及び前記導液部を有し、前記カバーに対して着脱可能である遮蔽体を備えてもよい。
【0025】
前記エネルギービームは、レーザ光であってもよい。
【0026】
前記放射線は、極端紫外光又はX線であってもよい。
【0027】
前記プラズマ原料は、スズ、リチウム、ガドリニウム、テルビウム、ガリウム、ビスマス又はこれらの材料のうちの少なくとも1つを含む合金であってもよい。
【0028】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光源装置は、エネルギービームの照射により液状のプラズマ原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、プラズマ生成機構と、ビーム源とを具備する。
前記プラズマ生成機構は、回転軸の周りに回転する面である回転面を有する回転体と、前記回転体を前記回転軸の周りに回転させる回転駆動源と、前記プラズマ原料を前記回転面に供給する原料供給部と、前記回転面のうち前記エネルギービームが照射される照射位置に対向する遮蔽部と、前記遮蔽部を前記プラズマ原料の融点以上の温度に加熱する加熱機構と、前記遮蔽部から流入する前記プラズマ原料を前記原料供給部に導く導液部とを備える。
前記ビーム源は、前記照射位置に前記エネルギービームを入射させる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、プラズマ生成に伴って生じるデブリの堆積を防止することが可能なプラズマ生成機構及び光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光源装置の模式図である。
図2】上記光源装置の一部構成の拡大図である。
図3】上記光源装置が備えるプラズマ生成機構の模式図である。
図4】上記プラズマ生成機構が備える回転体ユニットの斜視図である。
図5】上記回転体ユニットの断面図である。
図6】上記回転体ユニットの断面図である。
図7】上記回転体ユニットの分解斜視図である。
図8】上記回転体ユニットが備える第2カバー部材の斜視図である。
図9】上記第2カバー部材の斜視図である。
図10】上記第2カバー部材の断面図である。
図11】上記回転体ユニットの断面図である。
図12】上記回転体ユニットの一部構成の断面図である。
図13】上記回転体ユニットの動作を示す模式図である。
図14】他の構成を有する回転体ユニットの斜視図である。
図15】上記回転体ユニットの断面図である。
図16】他の構成を有する回転体ユニットの斜視図である。
図17】上記回転体ユニットの断面図である。
図18】上記回転体ユニットの一部構成の断面図である。
図19】他の構成を有する回転体ユニットの斜視図である。
図20】上記回転体ユニットの一部を拡大した斜視図である。
図21】上記回転体ユニットの断面図である。
図22】上記回転体ユニットの一部構成の断面図である。
図23】他の構成を有する回転体ユニットの斜視図である。
図24】上記回転体ユニットが備える遮蔽体の分解斜視図である。
図25】上記回転体ユニットの一部構成の断面図である。
図26】上記回転体ユニットが備える第2カバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る光源装置について説明する。
【0032】
[光源装置の基本構成]
図1は、本実施形態に係る光源装置100の構成例を示す模式図であり、図2は光源装置100の一部を拡大した模式図である。光源装置100は、LPP(Laser Produced Plasma)方式の光源装置である。即ち、光源装置100は、図2に示すようにプラズマ原料101にエネルギービームEBを照射することで、プラズマ原料101を励起してプラズマPを発生させ、プラズマPから放出される放射線Rを取り出して光源として用いる装置である。放射線RはEUV(Extreme Ultraviolet:極端紫外)光、X線又はその他の電磁波である。
【0033】
プラズマ原料101はスズ(Sn)、リチウム(Li)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)又はこれらの材料のうちの少なくとも1つを含む合金であり、液状である。放射線RとしてEUV光が出射される場合は、プラズマ原料101として溶融したSnやLiが用いられる。放射線RとしてX線が出射される場合は、プラズマ原料101として溶融したGaやGa合金、Sn化合物等が用いられる。
【0034】
図1は、光源装置100を設置面から所定の高さの位置で水平方向に沿って切断した場合の模式的な断面を、鉛直上方から見た場合の図である。図1では、光源装置100の構成及び動作を理解しやすいように、断面の構成等を説明する必要のない部分については、断面の図示を省略している。以下、X方向を水平方向のうち左右方向(X軸の正側が右側、負側が左側)、Y方向を水平方向のうち前後方向(Y軸の正側が前方側、負側が後方側)、Z方向を鉛直方向(Z軸の正側が上方側、負側が下方側)として説明を行う。もちろん、本技術の適用について、光源装置100が使用される向き等が限定される訳ではない。
【0035】
図1に示すように光源装置100は、筐体102、真空チャンバ103、エネルギービーム入射チャンバ104、放射線出射チャンバ105、プラズマ生成機構106、制御部107及びビーム源108を備える。
【0036】
図1に示す例では、筐体102は、おおよその外形が立方体形状となるように構成されている。なお筐体102の形状は立方体形状に限定されず、任意の立体形状が用いられてよい。筐体102は、前方面に形成される出射孔102aと、右側面に形成される入射孔102bと、左側面に形成される貫通孔102cとを有する。筐体102の材料は限定されず、例えば金属が用いられる。
【0037】
本実施形態では、前方面の出射孔102aを通り、略Y方向(前後方向)に延在するように、放射線Rの出射軸EAが設定されている。放射線Rは、出射軸EAに沿って取り出され、出射孔102aから前方側に向かって放出される。また本実施形態では、右側面の入射孔102bから、後方側に向かって左斜めに延在するように、エネルギービームEBの入射軸IAが設定されている。
【0038】
図1に示すように、筐体102の外部にはエネルギービームEBを出射するビーム源108が設置されている。ビーム源108は、入射軸IAに沿ってエネルギービームEBが筐体102の内部に入射するように設置されている。エネルギービームEBとしては、電子ビームやレーザ光を使用することが可能である。ビーム源108の構成としては、これらのエネルギービームEBを出射可能な任意の構成が採用されてよい。
【0039】
光源装置100には、複数のチャンバを含むチャンバ部Cが設けられている。具体的には、チャンバ部Cは、真空チャンバ103、エネルギービーム入射チャンバ(以下、単に入射チャンバという)104、及び放射線出射チャンバ(以下、単に出射チャンバという)105を含む。真空チャンバ103と入射チャンバ104は互いに連結され、真空チャンバ103と出射チャンバ105は互いに連結されている。
【0040】
入射チャンバ104は、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように構成され、出射チャンバ105は、放射線Rの出射軸EA上に位置するように構成されている。また真空チャンバ103には、プラズマPを発生させるプラズマ生成機構106が配置されている。
【0041】
本実施形態では、チャンバ本体109と、チャンバ本体109の前方面から前方側に突出する外側突出部109aと、チャンバ本体109の内周面から内部側に突出する2つの内側突出部109b及び109cとにより、チャンバ部C(真空チャンバ103、入射チャンバ104及び出射チャンバ105)が構成されている。チャンバ本体109の材料としては、金属材料が用いられる。
【0042】
チャンバ本体109は、おおよその外形が直方体形状となるように構成され、前後左右の各面が、筐体102の前後左右の各面とそれぞれ対向するように配置されている。また、チャンバ本体109は、前方面と右側面との間の右前角部が、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように配置される。
【0043】
図1に示すように、チャンバ本体109の前方面には、出射孔109dが形成されている。出射孔109dは、放射線Rの出射軸EA上で、筐体102の前方面の出射孔102aと並ぶ位置に形成される。チャンバ本体109の出射孔109dの周縁部から、前方側に突出するように外側突出部109aが形成されている。外側突出部109aは、筐体102の出射孔102aに内接するように、筐体102の出射孔102aよりも前方側に大きく突出するように構成されている。
【0044】
また、チャンバ本体109の内部側において、出射孔109dの周縁部から内部側に突出するように、内側突出部109bが形成されている。外側突出部109a及び内側突出部109bに囲まれた空間が、出射チャンバ105として機能する。出射チャンバ105を構成する外側突出部109a及び内側突出部109b自体を出射チャンバと呼ぶことも可能である。外側突出部109a及び内側突出部109bは、チャンバ本体109と一体的に形成されてもよいし、別個に形成されたのちにチャンバ本体109に接続されてもよい。また、内側突出部109bは設けられなくてもよい。
【0045】
出射チャンバ105は、放射線Rの出射軸EAを中心軸として、コーン形状となるように構成されている。出射チャンバ105は、放射線Rの出射軸EAに沿った方向において、中央部分の断面積が大きく、前後の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成されている。即ち、出射チャンバ105は、前後の端部に近づくにつれて絞られるような形状を有する。また出射チャンバ105は、前後の端部に放射線Rを通す開口部(アパーチャー)が設けられている。
【0046】
出射チャンバ105の前方側の端部(外側突出部109aの前方側の端部)には、マスク検査装置等の利用装置が接続される。図1に示す例では、利用装置の一部をなすチャンバとして、アプリケーションチャンバ110が接続されている。アプリケーションチャンバ110内の圧力は大気圧であってもよい。また、アプリケーションチャンバ110の内部は、必要に応じてガス注入路よりガス(例えば、不活性ガス)を導入してパージしてもよい。またアプリケーションチャンバ110の内部のガスは図示を省略した排気手段により排気されてもよい。
【0047】
出射チャンバ105とアプリケーションチャンバ110との間には、プラズマPが生成される領域とアプリケーションチャンバ110とを物理的に分離するフィルタ膜111が設けられている。フィルタ膜111は放射線Rを透過可能な構造を有し、プラズマPの発生に伴って飛散するプラズマ原料101やデブリのアプリケーションチャンバ110への進入を防止する。
【0048】
出射チャンバ105の内部には、出射チャンバ105の内に入射した放射線Rを利用装置内(アプリケーションチャンバ110内)に導光して集光するためのコレクタ(集光鏡)112が配置されている。図1では、出射チャンバ105に入射し集光される放射線Rの成分がハッチングにて図示されている。
【0049】
また出射チャンバ105の内部には、遮蔽部材(中央掩蔽)113が配置されている。遮蔽部材113は、放射線Rの出射軸EA上にて、チャンバ本体109の出射孔109d、筐体102の出射孔102a及びフィルタ膜111と並ぶように配置される。本実施形態では、遮蔽部材113により、コレクタ112によって集光されない放射線成分を遮光することが可能である。なお、遮蔽部材113は設けられてなくてもよい。
【0050】
チャンバ本体109の右前角部には、入射窓114が設けられている。入射窓114は、エネルギービームEBの入射軸IA上で、筐体102の右側面の入射孔102bと並ぶ位置に配置されている。また、チャンバ本体109の右前角部の内部側において、入射窓114を囲む位置からエネルギービームEBの入射軸IAの方向に沿って突出するように、内側突出部109cが形成されている。
【0051】
チャンバ本体109の内部空間のうち、内側突出部109cに囲まれた空間が、入射チャンバ104として機能する。入射チャンバ104を構成する内側突出部109c及びチャンバ本体109の右前角部の部分自体を、入射チャンバと呼ぶことも可能である。内側突出部109cは、チャンバ本体109と一体的に形成されてもよいし、別個に形成されたのちにチャンバ本体109に接続されてもよい。
【0052】
入射チャンバ104は、エネルギービームEBの入射軸IAを中心軸として、コーン形状となるように構成されている。入射チャンバ104は、エネルギービームEBの入射軸IAの方向において、チャンバ本体109の内部側の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成されている。即ち、入射チャンバ104は、内部側の端部に近づくにつれて絞られるような形状を有する。また入射チャンバ104は、内部側の端部にエネルギービームEBを通す開口部(アパーチャー)が設けられている。
【0053】
入射チャンバ104の内部には、飛散したプラズマ原料101やデブリを捕捉するための捕捉機構が配置される。図1に示す例では、捕捉機構として、エネルギービームEBを透過し、プラズマ原料101やデブリを捕捉する板状の回転部材である回転式窓115が配置されている。回転式窓115を回転させることで、回転式窓115のビーム透過領域の実質的な面積が増大し、回転式窓115の交換頻度を低減することが可能となる。
【0054】
また、図1に示すように、出射チャンバ105及び入射チャンバ104には、ガス注入路116a及び116bがそれぞれ設けられ、図示を省略したガス供給装置から、出射チャンバ105及び入射チャンバ104の内部にガスが供給される。出射チャンバ105には、放射線Rに対して透過率の高いガスが供給される。また入射チャンバ104には、エネルギービームEBに対して透過率の高いガスが供給される。
【0055】
出射チャンバ105及び入射チャンバ104に供給されるガスは同じ種類のガスであってもよいし、異なる種類のガスであってもよい。例えばアルゴンやヘリウムは、エネルギービームEB及び放射線Rの両方に対して透過率の高いガスとして用いることが可能である。この他、出射チャンバ105及び入射チャンバ104に供給されるガスの種類は限定されない。ガスを供給することで、出射チャンバ105及び入射チャンバ104の内部圧力を真空チャンバ103の内部圧力よりも高い圧力に設定し、デブリ等の侵入を抑制することが可能となる。
【0056】
チャンバ本体109の内部空間のうち、出射チャンバ105として機能する内側突出部109bの内部空間及び入射チャンバ104として機能する内側突出部109cの内部空間を除く空間が、真空チャンバ103として機能する。真空チャンバ103を構成する部分自体を、真空チャンバと呼ぶことも可能である。
【0057】
図1に示すように、チャンバ本体109は、筐体102の左側面の貫通孔102cから筐体102の外部に突出する部分を有し、その先端が排気用ポンプ117に接続されている。排気用ポンプ117の具体的な構成は限定されず、真空ポンプ等の任意のポンプが用いられてよい。排気用ポンプ117により真空チャンバ103内が排気され、真空チャンバ103が減圧される。これにより、真空チャンバ103内にて生成される放射線Rの減衰が抑制される。真空チャンバ103内は、入射チャンバ104及び出射チャンバ105に対して減圧雰囲気であればよく、必ずしも真空雰囲気でなくてもよい。また、真空チャンバ103内に不活性ガスが供給されていてもよい。
【0058】
本実施形態では、入射軸IAと出射軸EAとの間の領域に向けて左右方向に延在するようにガス放出口118が設置されている。ガス放出口118は、チャンバ本体109の右側面に、シール部材等を介して設置される。ガス放出口118は、図示を省略したガス供給装置に接続され、チャンバ本体109内にガスを供給する。図1に示す例では、ガス放出口118から、入射軸IAと出射軸EAとの間の領域の右側から左右方向に沿って左側に向かってガスが吹き付けられる。これにより、プラズマPから放出されるデブリを、入射軸IA及び出射軸EAから遠ざかる方向に移動させることが可能となる。また、ガス放出口118はチャンバ本体109内にガスを供給できればよく、チャンバ本体109の他の場所に設けられてもよい。
【0059】
プラズマ生成機構106は、真空チャンバ103内にてプラズマPを生成し、放射線R(X線又はEUV光)を放出するための機構である。プラズマ生成機構106は、図2に示すように回転体120を備え、回転体120にはエネルギービームEBが入射する。回転体120は、エネルギービームEBの照射位置Iが入射軸IAと出射軸EAとの交点の位置に配置されるように、真空チャンバ103内に配置されている。プラズマ生成機構106の詳細については後述する。
【0060】
制御部107は、光源装置100が有する各構成要素の動作を制御する。例えば、制御部107により、ビーム源108や排気用ポンプ117の動作が制御される。制御部107は、例えばCPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア回路を有する。CPUがメモリに記憶されている制御プログラムをRAMにロードして実行することにより、種々の処理が実行される。制御部107として、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスが用いられてもよい。図1では、制御部107は機能ブロックとして模式的に図示されているが、制御部107が構成される位置等は任意に設計されてよい。
【0061】
また、図1に示すように、本実施形態では、チャンバ本体109の前面側にて真空チャンバ103と空間的に接続される領域に、放射線診断部119が設けられている。放射線診断部119は、放射線Rの出射軸EAとは異なる方向に放射される放射線Rが入射する位置に配置されている。放射線診断部119は、プラズマPからの放射線Rの状態を測定する。ここで放射線Rの状態とは、放射線Rの強度、波長、スペクトルといった放射線Rの物理的状態である。例えば、放射線Rの有無を検出する検出器や、放射線の出力を測定する測定器により放射線診断部119が構成される。放射線診断部119による測定結果は、放射線Rの診断や、以下で説明する原料滴下装置の動作制御に用いられる。
【0062】
[プラズマ生成機構の構成]
プラズマ生成機構106は上述のように、真空チャンバ103内にてプラズマPを生成し、放射線R(X線又はEUV光)を放出するための機構である。図3はプラズマ生成機構106の模式図である。図2及び図3に示すようにプラズマ生成機構106は、回転体120、回転駆動源131、軸部132、貯留槽133、膜厚調整機構134を備える。
【0063】
回転駆動源131は、真空チャンバ103外に配置され、回転体120の回転動力を生成する。回転駆動源131は例えばモータである。軸部132は、チャンバ本体109及び筐体102を貫通して回転駆動源131と回転体120を接続し、回転駆動源131において生成された回転動力を回転体120に伝達する。貯留槽133は回転体120の鉛直下方に配置され、プラズマ原料101を貯留する。
【0064】
回転体120は、真空チャンバ103内に配置され、軸部132と接続されている。回転体120は図3に矢印Sで示すように、軸部132の回転により回転する。以下、回転体120及び軸部132の回転軸を回転軸Mとする。
【0065】
図3に示すように回転体120は円板形状を有する。以下、軸部132と反対側の回転体120の面を回転面120aとする。回転軸Mは、例えば水平方向(X-Y方向)に平行であり、回転面120aが鉛直方向に平行となるように配置されている。回転面120aは一部が貯留槽133に貯留されたプラズマ原料101に浸漬されており、回転に伴ってプラズマ原料101が付着する。回転面120aに付着したプラズマ原料101は回転体120の回転に伴って照射位置Iに輸送され、照射位置Iに照射されるエネルギービームEBによりプラズマ化される。
【0066】
膜厚調整機構134は図3に示すように回転体120に配置され、回転面120aに付着したプラズマ原料101の膜厚を調整する。膜厚調整機構134は例えばチャネル構造を有する構造体であって、その内側に回転体120を挟むように所定の間隙をもって配置され、間隙に流入しなかったプラズマ原料101を削ぎ取ることでプラズマ原料101の膜厚を調整する。膜厚調整機構134は回転体120の回転方向において照射位置Iの上流側に設けられ、照射位置Iでのプラズマ原料101の膜厚を規定する。
【0067】
プラズマ生成機構106では、上述のように貯留槽133に貯留されたプラズマ原料101が回転体120の回転面120aに付着し、回転体120の回転によって照射位置Iに輸送される。したがって、貯留槽133はプラズマ原料101を回転面120aに供給する「原料供給部」として機能する。
【0068】
[回転体ユニットの構成について]
プラズマ生成機構106は、回転体120を収容する回転体ユニットを備える。図4は回転体ユニット150の構成を示す斜視図である。同図に示すように回転体ユニット150は回転体120、カバー160及び加熱機構180を備え、回転体120はカバー160内に収容されている。なお、図1乃至図3ではカバー160及び加熱機構180の図示は省略されている。図5及び図6は回転体ユニット150の断面図である。図5図4のA1-A1線(X-Y平面)での断面図であり、図6図4のA2-A2線(Y-Z平面)での断面図である。
【0069】
カバー160は、回転体120を囲んでデブリの飛散を防止すると共に、貯留槽133を形成する。カバー160は第1カバー部材161及び第2カバー部材162から構成されている。図7は第1カバー部材161と第2カバー部材162を分解して示す回転体ユニット150の分解斜視図である。同図に示すように、カバー160の内部には回転体120が収容されている。また、カバー160の鉛直下方部分にはプラズマ原料101が貯留されており、カバー160の鉛直下方部分は貯留槽133を構成する。貯留槽133の周囲には図示しない加熱機構が設けられており、貯留槽133に貯留されたプラズマ原料101を加熱し、溶融させる。
【0070】
第1カバー部材161は図7に示すように底部161aと側壁部161bを有する。底部161aは円板形状を有し、図5に示すように中央部に貫通孔161cが設けられている。貫通孔161cは軸部132が挿通される孔である。側壁部161bは円筒形状を有し、底部161aの周縁に連続する。
【0071】
第2カバー部材162は図7に示すように第1カバー部材161の側壁部161bに接合される。図8は回転面120aとは反対側から見た第2カバー部材162の斜視図であり、図9は回転面120a側から見た第2カバー部材162の斜視図である。図10は第2カバー部材162の断面図であり、図8及び図9におけるA3-A3線(Y-Z平面)での断面図である。
【0072】
図8乃至図10に示すように、第2カバー部材162は平板部163、遮蔽部164及び導液部165を有する。平板部163は平板形状を有し、図7に示すように回転体120の回転面120aに対向する。図9に示すように、回転面120aと対向する平板部163の表面を対向面163aとする。対向面163aは回転面120aと平行な面であり、例えば鉛直方向に平行な面である。
【0073】
図9に示すように平板部163には、開口163b、入射孔166及び出射孔167が設けられている。開口163bは対向面163aに対して遮蔽部164が陥没して設けられていることにより形成された開口である。入射孔166は第2カバー部材162を貫通して設けられ、エネルギービームEBが入射する孔である。出射孔167も第2カバー部材162を貫通して設けられ、放射線Rが出射する孔である。
【0074】
対向面163aは、図7に示すように第1カバー部材161と共に貯留槽133を形成する。図11は回転体ユニット150の断面を回転軸Mに垂直な方向(Z方向)から見た平面図であり、図4のA4-A4線(X-Y平面)での断面図である。同図において貯留槽133の周縁T(破線)を示す。周縁Tは貯留槽133に貯留されているプラズマ原料101の液面の周縁である。同図に示すように対向面163aは回転軸Mに垂直な方向(Z方向)から見て周縁Tに一致する。
【0075】
遮蔽部164は照射位置Iに対向し、プラズマ生成に伴って生じるデブリを遮蔽する。図12は回転体ユニット150の遮蔽部164近傍の断面図であり、図4のA2-A2線(Y-Z平面)での断面図である。同図に示すように遮蔽部164は、回転面120aの照射位置Iに対向する遮蔽面164aを有する。遮蔽面164aは回転面120aと平行であり、例えば鉛直方向に平行な面とすることができる。また遮蔽面164aは回転面120aと平行な面でなくてもよく、後述するように曲面や傾斜面であってもよい。
【0076】
遮蔽面164aは対向面163aから陥没して設けられており、対向面163aよりも回転面120aから離隔し、対向面163aの開口163b(図10参照)を介して照射位置Iに対向する。遮蔽部164には図8に示すように、入射孔166及び出射孔167が平板部163に連続して設けられている。
【0077】
導液部165は遮蔽部164と平板部163の間に設けられ、遮蔽部164から流入するプラズマ原料101を、原料供給部である貯留槽133に導く。具体的には導液部165は図12に示すように、遮蔽面164aと対向面163aの間に位置する導液面165aを有する。
【0078】
導液面165aは遮蔽面164a上から流入するプラズマ原料101を貯留しない形状を有する。具体的には導液面165aは遮蔽面164aから対向面163aに向かって次第に回転面120aに接近する形状を有する。図10においては曲面状の導液面165aを示す。また、導液面165aは後述するように傾斜面状であってもよい。さらに導液面165aは全体が次第に回転面120aに接近する形状でなくてもよく、少なくとも一部が水平面状であってもよい。
【0079】
加熱機構180は遮蔽部164をプラズマ原料101の融点以上の温度に加熱する。加熱機構180は図12に示すように、遮蔽部164の遮蔽面164aとは反対側に配置され、遮蔽部164に接触する。また、加熱機構180は導液部165の導液面165aとは反対側にも配置されてもよい。さらに、加熱機構180として、貯留槽133に配置され、貯留槽133に貯留されたプラズマ原料101を溶融させるための加熱機構を利用してもよい。加熱機構180は例えば抵抗加熱式ヒーターである。
【0080】
[光源装置の動作及び効果]
光源装置100の動作及び効果について説明する。図13は光源装置100の動作を示す模式図である。回転体ユニット150においては上述のように回転体120が回転すると、貯留槽133に貯留されたプラズマ原料101が回転面120aに付着する(図3参照)。この状態でビーム源108(図1参照)からエネルギービームEBが出射されると、エネルギービームEBは入射孔166(図4参照)を介して回転面120a上の照射位置Iに入射する。
【0081】
エネルギービームEBは照射位置Iにおいてプラズマ原料101をプラズマ化し、図13に示すようにプラズマPを発生させる。プラズマPからは放射線R(図2参照)が放出され、出射孔167(図4参照)を介して出射される。このプラズマ化に伴い、図13に示すように照射位置Iからはプラズマ原料101の蒸気及び煙霧であるデブリDが噴出する。デブリDは主に回転面120aの法線方向H(Y方向)に沿って噴出する。
【0082】
ここで、回転体ユニット150においては照射位置Iに対向して遮蔽面164aが設けられているため、照射位置Iから噴出したデブリDは遮蔽面164aに到達する。遮蔽面164aは加熱機構180によってプラズマ原料101の融点以上に加熱されているため、遮蔽面164aに到達したデブリDは溶融し、液状のプラズマ原料101となって遮蔽面164a上を流下する(図中、矢印F1)。
【0083】
遮蔽面164a上を流下したプラズマ原料101は導液面165a上に流入し、導液面165a上を流下する。導液面165aはプラズマ原料101を貯留しない形状を有しているため、プラズマ原料101は導液面165a上を流下し(図中、矢印F2)、対向面163a上に流入する。対向面163a上に流入したプラズマ原料101は対向面163a上を流下し(図中、矢印F3)、貯留槽133に流入する。
【0084】
これにより、デブリDとなって噴出したプラズマ原料101を貯留槽133に回収し、再利用することが可能となる。仮に遮蔽部164が設けられていなければ、デブリDは第2カバー部材162のうち照射位置Iに対向する領域に到達して固化し、堆積する。すると堆積したデブリDによって入射孔166及び出射孔167の閉塞等が生じ、放射線Rの放出に悪影響が生じるおそれがある。また、デブリDが堆積するとその分のプラズマ原料101が貯留槽133に戻らず、プラズマ原料101の消費量が増大するため、プラズマ原料101の補給を短期間で行う必要が生じる。
【0085】
これに対して光源装置100では、デブリDは遮蔽面164a上に堆積しないため、放射線Rの放出に悪影響が生じない。また、デブリDとなって噴出したプラズマ原料101は貯留槽133に戻るため、プラズマ原料101の消費量を抑制し、プラズマ原料101の補給頻度を低減させることが可能となる。
【0086】
さらに遮蔽面164aは対向面163aに対して回転面120aから離隔して設けられている(図13参照)。遮蔽面164aが回転面120aに接近していると、遮蔽面164a上で溶融しているプラズマ原料101がエネルギービームEBの照射による衝撃波により飛散するおそれがある。特に照射位置Iにおいては膜厚調整機構134によりプラズマ原料101の膜厚が調整されているが、この膜厚が飛散したプラズマ原料101により変動するおそれがある。
【0087】
また、遮蔽面164aが回転面120aに接近していると、噴出したデブリDが遮蔽面164aに衝突して反射され、溶融せずに回転面120aに付着するおそれもある。照射位置Iにおけるプラズマ原料101の膜厚変動や異物の付着は放射線Rの出力を不安定とする原因となる。したがって、遮蔽面164aを回転面120aから離隔して設けることにより、これらの問題を解消し、放射線Rの出力を安定化させることが可能となる。
【0088】
なお、遮蔽面164aと共に対向面163aを回転面120aから離隔させることも可能であるが、その場合、貯留槽133の容積が増加し、貯留されているプラズマ原料101を溶融させるためのエネルギーが増大する。このため、対向面163aに対して遮蔽面164aを回転面120aから離隔させる方が好適である。
【0089】
[遮蔽部及び導液部の形状について]
遮蔽部164及び導液部165は以下のような形状とすることも可能である。図14は遮蔽部164及び導液部165が他の形状を有する回転体ユニット150の斜視図である。図15はこの回転体ユニット150の断面図であり、図14のA5-A5線(X-Y平面)での断面図である。これらの図に示すように遮蔽部164と平板部163の間には間隙168が設けられてもよい。上述のように照射位置Iにおいて生じるデブリDは主に回転面120aの法線方向H(Y方向)に沿って噴出する(図13参照)ため、間隙168が設けられていてもデブリDのほぼ全量が遮蔽面164aに到達し、再利用される。
【0090】
図16は遮蔽部164及び導液部165が別の形状を有する回転体ユニット150の斜視図である。図17及び図18はこの回転体ユニット150の断面図であり、図17図16のA6-A6線(X-Y平面)での断面図、図18図14のA7-A7線(Y-Z平面)での断面図である。これらの図に示すように遮蔽部164及び導液部165は半球状であり、遮蔽面164a及び導液面165aは照射位置Iを中心とする半球面状である。換言すれば導液面165aは遮蔽面164aから対向面163aに向かって次第に回転面120aに接近する曲面状である。
【0091】
この構造においては遮蔽面164a及び導液面165aが照射位置Iから等距離となる。上述したエネルギービームEBの照射による衝撃波は等方的に広がるため、遮蔽面164a及び導液面165aにおける衝撃波を抑制することができる。また、遮蔽面164a及び導液面165aによるデブリDの反射も抑制することが可能となる。
【0092】
図19は遮蔽部164及び導液部165が別の形状を有する回転体ユニット150の斜視図である。図20は遮蔽部164の拡大図である。図21及び図22はこの回転体ユニット150の断面図であり、図21図19のA8-A8線(X-Y平面)での断面図、図22図19のA9-A9線(Y-Z平面)での断面図である。これらの図に示すように遮蔽部164及び導液部165は平面構造主体の形状である。
【0093】
具体的には遮蔽面164aは中心部が水平面(X-Y平面)内において回転面120aから最も離隔する形状を有する。導液面165aは中心部が水平面(X-Y平面)内において回転面120aから最も離隔し、かつ遮蔽面164aから対向面163aに向かって次第に回転面120aに接近する傾斜面状である。以下、遮蔽面164a及び導液面165aの中心部において回転面120aから最も離隔した谷状部分を集液部169とする。
【0094】
図20及び図21に示すように遮蔽面164aには溝170が設けられている。溝170は、溝170を伝うプラズマ原料101を導液面165aに導くものであり、溝170を伝うプラズマ原料101が集液部169に集まり、集液部169から対向面163a上に流れやすくなっている。遮蔽部164及び導液部165を平面構造主体の形状とすることで製造が容易となる。なお、図19において加熱機構180は遮蔽部164上のみに設けられているが、導液部165上にも設けられてもよい。
【0095】
図23は遮蔽部164及び導液部165が他の構成を有する回転体ユニット150の斜視図であり、図24はその一部構成の分解斜視図である。図25は、この回転体ユニット150の断面図であり、図23のA10-A10線(X-Y平面)での断面図である。これらの図に示すように、回転体ユニット150は第2カバー部材162に対して着脱可能な遮蔽体190を有し、遮蔽体190が遮蔽部164及び導液部165を有するものであってもよい。
【0096】
図26はこの場合の第2カバー部材162の斜視図である。同図に示すように第2カバー部材162には遮蔽部164及び導液部165が設けられておらず、平板部163には開口163b、貫通孔163c、入射孔166及び出射孔167が設けられている。
【0097】
図24に示すように遮蔽体190は、遮蔽部164、導液部165、係合部191及び貫通孔192を有する。同図に示すように、貫通孔163cにスタッド193が挿入される。遮蔽体190は、係合部191が開口163bに係合し、ネジ194が貫通孔192を介してスタッド193にネジ留めされることで第2カバー部材162に固定される。遮蔽体190はネジ194を外すことで第2カバー部材162から取り外すことが可能である。スタッド192の数は例えば2本であるが、1本又は3本以上であってもよい。
【0098】
係合部191は、導液部165の遮蔽部164とは反対側の端部に設けられ、開口163bの周囲において対向面163aに当接し、遮蔽体190の下方を第2カバー部材162に対して固定する。係合部191はプラズマ原料101が漏出しないように、導液面165aから連続して対向面163a上に重畳する形状が好適である。
【0099】
この構成においては、遮蔽体190が第2カバー部材162に対して着脱可能であることにより、遮蔽体190の交換が可能である。上述のように遮蔽面164aは照射位置Iから噴出するデブリが直接に到達する面であるため、所定時間毎に交換が必要である。この構成では遮蔽体190の交換が可能であるため、メンテナンス性に優れる。
【0100】
この他にも遮蔽部164及び導液部165は各種構成とすることができ、遮蔽部164は照射位置Iに対向するものであればよい。導液部165は遮蔽部164から流入するプラズマ原料101を貯留槽133に導くことが可能なものであればよい。各種の構成において遮蔽面164aには、プラズマ原料101を導液面165aに導く溝170を設けることができる。
【0101】
(本開示について)
本開示において、「略」という文言が使用される場合、これはあくまで説明の理解を容易とするための使用であり、「略」という文言の使用/不使用に特別な意味があるわけではない。即ち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円形状」「円弧形状」「矩形状」「長方形状」「多角形状」「リング形状」「立方体形状」「直方体形状」「円柱形状」「円盤形状」「コーン形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円形状」「実質的に円弧形状」「実質的に矩形状」「実質的に長方形状」「実質的に多角形状」「実質的にリング形状」「実質的に立方体形状」「実質的に直方体形状」「実質的に円柱形状」「実質的に円盤形状」「実質的にコーン形状」等を含む概念とする。例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円形状」「完全に円弧形状」「完全に矩形状」「完全に長方形状」「完全に多角形状」「完全にリング形状」「完全に立方体形状」「完全に直方体形状」「完全に円柱形状」「完全に円盤形状」「完全にコーン形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。従って、「略」の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」を付加して表現される概念が含まれ得る。反対に、「略」を付加して表現された状態について、完全な状態が排除される訳ではない。
【0102】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含まない概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0103】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。即ち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0104】
100…光源装置
101…プラズマ原料
106…プラズマ生成機構
108…ビーム源
120…回転体
131…回転駆動源
132…軸部
133…貯留槽
134…膜厚調整機構
150…回転体ユニット
160…カバー
161…第1カバー部材
162…第2カバー部材
164…遮蔽部
165…導液部
170…溝
180…加熱機構
190…遮蔽体
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