(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177862
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】バルブタイミング制御装置
(51)【国際特許分類】
F01L 1/356 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
F01L1/356 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096234
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】田端 健吾
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018BA09
3G018BA29
3G018BA33
3G018CA19
3G018DA20
3G018DA63
3G018DA70
3G018DA73
3G018DA74
3G018EA02
3G018EA20
3G018EA33
3G018FA01
3G018FA07
3G018FA16
3G018GA02
3G018GA11
(57)【要約】
【課題】ベーンロータのロックを解除することが可能なバルブタイミング制御装置を提供することを課題とする。
【解決手段】穴を有するハウジングと、前記ハウジングに収納され、油圧により前記ハウジング内において回転可能なベーンロータと、前記ベーンロータに設けられ、前記穴に対向し、前記油圧により移動可能なロックピンと、バルブの開度を制御することで前記油圧を制御する制御部と、を具備し、前記ロックピンが前記穴に係合することで、前記ベーンロータの位置がロックされ、前記ロックピンが前記穴から離脱することで、前記ロックが解除され、内燃機関の回転数に基づき、前記制御部は前記バルブのデューティの上昇速度を制御するバルブタイミング制御装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴を有するハウジングと、
前記ハウジングに収納され、油圧により前記ハウジング内において回転可能なベーンロータと、
前記ベーンロータに設けられ、前記穴に対向し、前記油圧により移動可能なロックピンと、
バルブの開度を制御することで前記油圧を制御する制御部と、を具備し、
前記ロックピンが前記穴に係合することで、前記ベーンロータの位置がロックされ、
前記ロックピンが前記穴から離脱することで、前記ロックが解除され、
内燃機関の回転数に基づき、前記制御部は前記バルブのデューティの上昇速度を制御するバルブタイミング制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブタイミング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のバルブタイミングを制御する可変バルブタイミング機構(VVT)が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
VVTにおいては、油圧によってベーンロータの位置を変更することでバルブタイミングを変更する。ロックピンを穴に係合させることで、ベーンロータの位置をロックすることができる。油圧によりロックピンを押し出すことで、ロックを解除することができる。しかし、ロックピンが係合した状態で部品に挟まれ、ロック解除が困難なことがある。そこで、ベーンロータのロックを解除することが可能なバルブタイミング制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、穴を有するハウジングと、前記ハウジングに収納され、油圧により前記ハウジング内において回転可能なベーンロータと、前記ベーンロータに設けられ、前記穴に対向し、前記油圧により移動可能なロックピンと、バルブの開度を制御することで前記油圧を制御する制御部と、を具備し、前記ロックピンが前記穴に係合することで、前記ベーンロータの位置がロックされ、前記ロックピンが前記穴から離脱することで、前記ロックが解除され、内燃機関の回転数に基づき、前記制御部は前記バルブのデューティの上昇速度を制御するバルブタイミング制御装置によって達成することができる。
【発明の効果】
【0006】
ベーンロータのロックを解除することが可能なバルブタイミング制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は実施形態に係るバルブタイミング制御装置を例示する図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)はロックピンを拡大した断面図である。
【
図3】
図3(a)はトルクを例示する図である。
図3(b)はデューティの上昇速度を例示する図である。
図3(c)は位相の変換速度を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態のバルブタイミング制御装置について説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては細部が省略されて描かれている場合もある。
【0009】
図1(a)および
図1(b)は実施形態に係るバルブタイミング制御装置100を例示する図である。バルブタイミング制御装置100は、ECU(Electronic Control Unit、制御部)10、オイルポンプ12、オイルコントロールバルブ(OCV)14、カムハウジング20、ベーンロータ22、オイル通路16、30および32、ロックピン40を有する。
図1(a)および
図1(b)では、オイル通路16を実線で示し、オイル通路30を破線で示し、オイル通路32を点線で示している。
【0010】
カムハウジング20の外周面にスプロケット21が設けられ、カムハウジング20の内部には空洞が設けられている。カムハウジング20の内部にベーンロータ22が収納されている。ベーンロータ22は複数のベーン23を有する。ベーン23の個数は例えば3個である。ベーン23はベーンロータ22の外に向けて突出している。カムハウジング20およびベーンロータ22は、同一の回転軸の周囲を回転することができる。Z軸はカムハウジング20およびベーンロータ22の厚さ方向を表し、回転軸に平行である。
【0011】
ベーンロータ22の位置によってバルブタイミングが制御される。ベーンロータ22の位置は油圧により制御される。カムハウジング20の内部に、油圧室24および26が形成されている。3つのベーン23のそれぞれの一方の側に油圧室24が位置し、他方の側に油圧室26が位置する。油圧室24および油圧室26に油圧が発生する。ベーン23が油圧室24の油圧、および油圧室26の油圧を受けることで、ベーンロータ22が回転する。図中のX1方向は左回転の方向である。X2方向は右回転の方向である。
【0012】
オイルポンプ12、OCV14、オイル通路は油圧回路を形成する。オイルポンプ12およびOCV14は、油圧を制御する。オイル通路16の1つの端部はオイルポンプ12に接続され、もう1つの端部はOCV14に接続されている。OCV14にはオイル通路30および32が接続されている。オイル通路30は、3つの油圧室24に接続されている。オイル通路32は、3つの油圧室26に接続されている。
【0013】
オイルポンプ12は、不図示のオイルパンから作動油(オイル)を汲み上げる。オイルはオイル通路16を流れ、OCV14に供給される。ECU10は、OCV14に信号を送信し、OCV14の開度を変化させることで、油圧を制御する。信号のデューティに応じて、OCV14はオイルを供給する通路を切り替える。例えばデューティのある値を閾値として、オイル通路30とオイル通路32との切り替えが行われる。
【0014】
OCV14がオイル通路30を選択すると、オイルはオイル通路30を流れ、油圧室24に供給される。油圧室24の油圧が増加することで、ベーンロータ22は左方向(X1方向)に回転する。OCV14がオイル通路32を選択すると、オイルはオイル通路32を流れ、油圧室26に供給される。油圧室26の油圧が増加することで、ベーンロータ22は右方向(X2方向)に回転する。
【0015】
図2(a)および
図2(b)はロックピン40を拡大した断面図である。ベーンロータ22の1つのベーン23は貫通孔を有する。貫通孔はベーン23をZ軸方向に貫通する。ロックピン40は、当該ベーン23の貫通孔に設けられており、Z軸方向に平行に配置されている。ロックピン40は、Z軸方向に移動可能である。ロックピン40は、カムハウジング20の穴25に対向する。ロックピン40の穴25とは反対側にはバネ42が設けられている。
【0016】
オイル通路44は、油圧室24および穴25に連通する。オイル通路44内にオイルが供給されることで、ロックピン40の先端に油圧がかかる。バネ42の付勢力と油圧とにより、ロックピン40の位置が定まる。
【0017】
図2(a)においては、バネ42の付勢力がオイル通路44内の油圧よりも大きい。ロックピン40は図中の下に付勢され、穴25に差し込まれている。ロックピン40が穴25に係合することで、ベーンロータ22は回転できなくなる。ベーンロータ22の位置がロックされる。
【0018】
図2(b)においては、油圧がバネ42の付勢力よりも大きい。ロックピン40は図中の上に付勢され、穴25との係合は解除される。ベーンロータ22は回転可能である。
【0019】
ロックピン40に横方向の力が作用することで、ロックピン40がカムハウジング20に押し付けられることがある。例えば
図2(a)の状態において、X1方向の力によって、ロックピン40のX1側の側面がカムハウジング20の穴25の内壁に押し付けられる。ロックピン40がカムハウジング20とベーンロータ22とに挟まれることで、ロックピン40が抜けにくくなる。すなわち、ベーンロータ22のロックの解除が困難である。
【0020】
カムハウジング20の回転に応じて、ベーンロータ22およびロックピン40にはトルクが作用する。トルクF1はX1方向に作用する。トルクF2はX2方向に作用する。トルクF2がX2方向に作用することで、ロックピン40が穴25の内壁から離間し、抜けやすくなる。
【0021】
図3(a)はトルクを例示する図である。横軸は時間を表す。縦軸はトルクを表す。トルクのうち0より高い値(正の値)はX1方向のトルクである。0より低い値(負の値)はX2方向のトルクである。
図3(a)に示すように、カムハウジング20の回転に応じて、ベーン23に作用するトルクは周期的に変化する。X2方向のトルク(負のトルク)がベーン23にかかる際、ロックピン40はカムハウジング20から離間し、押し付けられない。このためロックピン40は抜けやすい。
【0022】
エンジンの回転数が高いほど、カムハウジング20の回転数も高くなり、
図3(a)に示すトルク変動の周波数が高くなる。すなわち、トルクがX2方向を向く回数が多くなる。このためロックピン40が抜けやすい。一方、エンジンの回転数が低いほど、カムハウジング20の回転数も低くなり、トルク変動の周波数が低下する。トルクがX2方向を向く回数が少なくなる。実施形態では、回転数が低いときにもロックピン40を抜けやすくする。
【0023】
図3(b)はデューティの上昇速度を例示する図である。横軸はエンジンの回転数を表す。縦軸はデューティの上昇速度を表す。ECU10は、エンジンの回転数に応じて、
図3(b)のようにデューティの上昇速度を設定する。回転数が高いほどデューティの上昇速度は大きい。デューティの上昇速度が大きいほど、オイル通路30とオイル通路32との間で切り替えが素早く行われる。回転数が低いほどデューティの上昇速度は小さい。デューティの上昇速度が小さいほど、切り替えは遅くなる。例えば回転数がR1のとき、デューティ上昇速度はD1である。回転数がR1より高いR2のとき、デューティ上昇速度はD1より大きいD2である。
【0024】
図3(c)は位相の変換速度を表す図である。横軸はOCV14のデューティ(OCV-duty)を表す。縦軸はVVTの位相の変換速度を表す。OCV14のデューティに応じて、位相変換速度が変化する。0より高い値は進角側への位相変換速度である。ベーン23は進角側に移動させるような油圧を受ける。0より低い値は遅角側への位相変換速度である。ベーン23は遅角側に移動させるような油圧を受ける。位相変換速度が0付近の部分は不感帯である。不感帯では、油圧室24の油圧と油圧室26の油圧とが同程度の大きさであり、つり合いに近くなる。このためベーン23が回転しにくい。
【0025】
図3(c)中の破線は、デューティ上昇速度がD1の例である。実線は、デューティ上昇速度がD2の例である。破線の例に比べて、実線の例では位相変換速度が遅く変化し、不感帯を通る時間が長い。長い時間にわたってベーン23が回転しにくいため、ロックピン40も押し付けられない。ロックピン40が抜けやすくなる。
【0026】
本実施形態によれば、ベーンロータ22にロックピン40が設けられている。ロックピン40が穴25に係合することで、ベーンロータ22はロックされる。ロックピン40が穴25から離脱することで、ロックは解除される。ECU10は、内燃機関の回転数に基づいて、OCV14のデューティの上昇速度を制御する。
図3(b)に示すように、回転数が低いほど、デューティの上昇速度は低下する。
図3(a)に示すように、デューティの上昇速度が低下することで、不感帯の通過時間が長くなる。ロックピン40がカムハウジング20に押し付けられないため、抜けやすくなる。ベーンロータ22のロックを解除することが可能である。
【0027】
図3(a)に示すように、トルクは周期的に変化する。X2方向のトルクが作用するとき、ロックピン40が抜けやすい。エンジンの回転数が高いほど、トルクがX2方向を向く回数が多くなる。このためロックピン40が抜けやすい。一方、エンジンの回転数が低いほど、トルクがX2方向を向く回数は少なくなる。実施形態によれば、回転数が低いときにはデューティ上昇速度を低下させ、不感帯の通過時間を長くする。ロックピン40が抜けやすくなる。すなわち、エンジンの回転数に関わらずロックピン40が抜けやすいため、ベーン23のロックを解除することができる。
【0028】
図3(b)の例ではECU10は、デューティの上昇速度を回転数に対して線形に変化させる。ECU10は、デューティの上昇速度を回転数に対して非線形に変化させてもよい。
【0029】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 ECU、12 オイルポンプ、14 OCV、16、30、32、44 オイル通路、20 カムハウジング、21 スプロケット、22 ベーンロータ、23 ベーン、24、26 油圧室、25 穴、40 ロックピン、42 バネ、100 バルブタイミング制御装置