(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177867
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】異種金属接合継手の検査方法、異種金属接合継手の検査装置、溶接方法及び溶接システム
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20241217BHJP
B23K 9/02 20060101ALI20241217BHJP
B23K 9/23 20060101ALI20241217BHJP
B23K 9/127 20060101ALI20241217BHJP
B23K 9/007 20060101ALN20241217BHJP
G01B 11/02 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
B23K31/00 K
B23K9/02 M
B23K9/23 H
B23K9/127 509E
B23K31/00 D
B23K9/007
G01B11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096243
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 要
【テーマコード(参考)】
2F065
4E001
4E081
【Fターム(参考)】
2F065AA15
2F065AA24
2F065CC15
2F065FF09
2F065PP22
4E001AA04
4E001BB01
4E001BB07
4E001BB08
4E001BB12
4E001CA01
4E001CB01
4E001CB05
4E001DD02
4E001DD03
4E081BA02
4E081BA08
4E081BA16
4E081DA13
(57)【要約】
【課題】異種金属同士をスポット溶接する際に、継手強度を高い信頼性で検査でき、しかも、溶接後の即時の検査が可能で自動化が容易な異種金属接合継手の検査方法、異種金属接合継手の検査装置、溶接方法及び溶接システムを提供する。
【解決手段】板厚方向に貫通孔11aを有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材11と、非鉄金属製の第2部材13とを互いに重ね合わせた板組が、貫通孔11aの位置でスポット溶接された異種金属接合継手の検査方法は、スポット溶接により形成された溶接金属15が、第1部材11の第2部材13とは反対側の表面から突出した突出高さHを計測し、計測した突出高さHに応じてスポット溶接の溶接状態を判定するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組が、前記貫通孔の位置でスポット溶接された異種金属接合継手の検査方法であって、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さを計測し、
計測した前記突出高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、
異種金属接合継手の検査方法。
【請求項2】
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第2部材の前記第1部材とは反対側の裏面から突出した突出高さを計測し、
計測した前記表面からの突出高さと前記裏面からの突出高さとに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、
請求項1に記載の異種金属接合継手の検査方法。
【請求項3】
前記溶接金属の3点以上の前記突出高さを用いて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、
請求項1に記載の異種金属接合継手の検査方法。
【請求項4】
前記溶接金属の前記突出高さを、レーザー変位計により計測する、
請求項1に記載の異種金属接合継手の検査方法。
【請求項5】
前記溶接金属の前記突出高さを、イメージセンサにより検出された撮像画像から計測する、
請求項1に記載の異種金属接合継手の検査方法。
【請求項6】
前記第2部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金、若しくは、マグネシウム又はマグネシウム合金である、
請求項1に記載の異種金属接合継手の検査方法。
【請求項7】
前記スポット溶接の実施前に前記貫通孔の位置を計測し、
計測した前記貫通孔の位置に対応する前記溶接金属の前記突出高さに応じて前記溶接状態を判定する、
請求項1に記載の異種金属接合継手の検査方法。
【請求項8】
前記貫通孔の位置を、前記溶接金属の前記突出高さを計測する高さ計測器を用いて計測する、
請求項7に記載の異種金属接合継手の検査方法。
【請求項9】
板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組を、前記貫通孔の位置でスポット溶接して異種金属接合継手を形成する溶接工程と、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さと、前記スポット溶接により形成された溶接金属が前記第2部材の前記第1部材とは反対側の裏面から突出した突出高さとの少なくとも一方を計測する計測工程と、
計測した前記突出高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する判定工程と、
前記スポット溶接の溶接状態が不良と判定された場合に、当該スポット溶接の溶接位置を補修する補修工程と、
を有する溶接方法。
【請求項10】
前記スポット溶接前に、前記貫通孔の位置を計測する工程を有し、
前記溶接工程では、計測された前記貫通孔の位置を、前記スポット溶接の目標位置にフィードバック制御して、次の前記スポット溶接の施工位置を補正する、
請求項9に記載の溶接方法。
【請求項11】
板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組が、前記貫通孔の位置でスポット溶接された異種金属接合継手の検査装置であって、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さを計測する高さ計測部と、
計測した前記高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する判定部と、
を備える異種金属接合継手の検査装置。
【請求項12】
前記高さ計測部は、前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第2部材の前記第1部材側と反対側の裏面から突出した突出高さを計測し、
前記判定部は、計測した前記第1部材の前記表面からの突出高さと、前記第2部材の前記裏面からの突出高さとに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、
請求項11に記載の異種金属接合継手の検査装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の異種金属接合継手の検査装置と、
前記スポット溶接により前記第1部材と前記第2部材とを接合して前記異種金属接合継手を形成する溶接装置と、
を備え、
前記スポット溶接の溶接状態が不良と判定された場合に、前記溶接装置を駆動して不良と判定された前記スポット溶接の溶接位置を補修する補修機能を有する、
溶接システム。
【請求項14】
前記スポット溶接の実施前に前記貫通孔の位置を計測し、計測された前記貫通孔の位置を、前記スポット溶接の目標位置にフィードバック制御して、前記スポット溶接の施工位置を補正する補正機能を有する、
請求項13に記載の溶接システム。
【請求項15】
前記溶接装置は、前記スポット溶接を行う溶接ロボットを有し、
前記高さ計測部は、前記溶接ロボットの可動部に設けられている、
請求項13に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属接合継手の検査方法、異種金属接合継手の検査装置、溶接方法及び溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両における乗員の安全性向上が求められており、係る目的のために車体の強度を向上させてきた。他方、地球温暖化問題等の深刻化を背景に、自動車の燃費改善の動きが加速している。燃費改善には車体の軽量化が有効であることが知られている。この車体の軽量化の一策として、現在の主要材料となっている鋼を軽量素材であるアルミニウム、マグネシウム等の軽金属に置換する試みが積極的に進められている。鋼と軽金属とを組み合わせるには、必然的にこれらを接合する箇所が設けられるが、これまでの同種材料同士を接合する溶接と比較して、異材同士の溶接は困難になることが多く、溶接部の信頼性、健全性を担保することが重要となっている。
【0003】
一般に、スポット溶接を含む構造物の溶接継手に対しては、溶接後に検査を行い、継手の信頼性、健全性を担保することが求められる。このことは、異材接合の分野においても同様である。例えば、アルミニウム溶接ワイヤを用いた鉄とアルミニウムとの異材接合法として、異種金属アークスポット溶接法(以下、DASW:Dissimilar Arc Spot Weldingともいう。)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、それ以外にもレーザー光を熱源として、レーザー光照射部に溶接ワイヤを供給するレーザー溶接や、レーザーとアークとを併用するハイブリッド溶接等による異材同士のスポット溶接法についても検討が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したDASW、レーザー溶接やハイブリッド溶接によるスポット溶接法によれば、鋼材とアルミニウム等の軽金属とを強固に接合できる。しかしながら、これら接合方法、接合機構においては、標準的な継手の検査方法が未だ確立されていない。一方で、従来から広く使用される抵抗スポット溶接による継手の検査方法はいくつか存在し、たがねによる破壊試験、超音波探傷試験(UT:Ultrasonic Testing)等による溶接部の非破壊検査が知られている。その他にも、放射線透過試験(RT:Radiographic Testing)、磁気探傷試験(MT:Magnetic Particle Testing)等の非破壊検査も知られている。しかし、これらの方法をDASWに適用するには、以下に示す課題がある。
【0006】
たがねを用いる破壊試験の場合、溶接部や母材へのダメージが避けられず、溶接後の状態に完全に復元することが難しい。超音波探傷試験の場合、DASWの溶接部は突起があるため、探触子を接触させ難いこと、また、溶接後の高温の状態で探触子を接触させられないため、即時の検査が難しいこと、そして、アルミニウムの溶接金属を対象とした場合、溶接金属内に細かなブローホールが存在していることが多く、所望の反射波を得るのが難しいこと、等の課題がある。レーザーUTでは、探触子を用いずに非接触で溶接部を検査できるが、ブローホールについては上記した課題が残る。また、溶接部における超音波の伝播特性には温度依存性があるため、溶接後の即時の検査へ適用することは難しい。放射線透過試験では、安全に配慮した設備の導入が不可欠となり、また、内部欠陥の確認には向いているが、重要となるナゲット径や余盛形状を判別することは困難である。磁気探傷試験は、磁性材料の鋼に対して用いられる方法であり、DASWのような異種金属接合では所望の検査結果が得られない。
【0007】
そこで本発明は、異種金属同士をスポット溶接する際に、継手強度を高い信頼性で検査でき、しかも、溶接後の即時の検査が可能で自動化が容易な異種金属接合継手の検査方法、異種金属接合継手の検査装置、溶接方法及び溶接システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組が、前記貫通孔の位置でスポット溶接された異種金属接合継手の検査方法であって、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さを計測し、
計測した前記突出高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、
異種金属接合継手の検査方法。
(2) 板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組を、前記貫通孔の位置でスポット溶接して異種金属接合継手を形成する溶接工程と、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さと、前記スポット溶接により形成された溶接金属が前記第2部材の前記第1部材とは反対側の裏面から突出した突出高さとの少なくとも一方を計測する計測工程と、
計測した前記突出高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する判定工程と、
前記スポット溶接の溶接状態が不良と判定された場合に、当該スポット溶接の溶接位置を補修する補修工程と、
を有する溶接方法。
(3) 板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組が、前記貫通孔の位置でスポット溶接された異種金属接合継手の検査装置であって、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さを計測する高さ計測部と、
計測した前記高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する判定部と、
を備える異種金属接合継手の検査装置。
(4) (3)に記載の異種金属接合継手の検査装置と、
前記スポット溶接により前記第1部材と前記第2部材とを接合して前記異種金属接合継手を形成する溶接装置と、
を備え、
前記スポット溶接の溶接状態が不良と判定された場合に、前記溶接装置を駆動して不良と判定された前記スポット溶接の溶接位置を補修する補修機能を有する、
溶接システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異種金属同士をスポット溶接する際に、継手強度を高い信頼性で検査できる。しかも、溶接後の即時の検査が可能で、自動化も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、異種金属接合継手の要部を示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、貫通孔を有する鋼板とアルミニウム板との異種金属接合継手の形成手順を示す工程説明図である。
【
図3B】
図3Bは、貫通孔を有する鋼板とアルミニウム板との異種金属接合継手の形成手順を示す工程説明図である。
【
図3C】
図3Cは、貫通孔を有する鋼板とアルミニウム板との異種金属接合継手の形成手順を示す工程説明図である。
【
図4】
図4は、高さ計測器が設けられた溶接ロボットを含む溶接システムの概略構成図である。
【
図5】
図5は、接合体の異種金属接合継手を、高さ計測器により高さ計測する様子を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図6は、異種金属接合継手の検査方法の基本的な手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、接合体の異種金属接合継手を、表側と裏側から高さ計測器により高さ計測する様子を模式的に示す説明図である。
【
図8A】
図8Aは、正常と判定された異種金属接合継手の切断面の断面写真である。
【
図8B】
図8Bは、不良と判定された異種金属接合継手の切断面の断面写真である。
【
図9】
図9は、高さ計測器からの計測データにより求めた高さプロファイルを示すグラフである。
【
図10】
図10は、高さプロファイルと基準高さ分布とを示すグラフである。
【
図11】
図11は、高さプロファイルと基準高さ分布とを示すグラフである。
【
図12】
図12は、第1部材の貫通孔を溶接前に計測した場合の高さプロファイルを示す説明図である。
【
図14】
図14は、計測された高さプロファイルと
図13に示す基準高さ分布とを比較した様子を示す説明図である。
【
図15】
図15は、計測された高さプロファイルと
図13に示す基準高さ分布とを比較した様子を示す説明図である。
【
図16】
図16は、溶接部の突出形状を溶接後に計測した場合の高さプロファイルを示す説明図である。
【
図18】
図18は、計測された高さプロファイルから抽出した代表点の位置関係を、基準と比較する様子を示す説明図である。
【
図19】
図19は、計測された高さプロファイルから抽出した代表点の位置関係を、基準と比較する様子を示す説明図である。
【
図20】
図20は、溶接後に計測した溶接金属の高さプロファイルと、溶接前の溶接位置である貫通孔を計測した高さプロファイルを示す説明図である。
【
図21】
図21は、溶接後に第1部材の貫通孔に形成される溶接金属の体積を説明する説明図である。
【
図22】
図22は、第1部材と第2部材とを接合する溶接金属の断面図と正面図を示す説明図である。
【
図23】
図23は、溶接金属の表余盛の外縁形状をXY面で示す説明図である。
【
図24】
図24は、溶接金属の表余盛の外縁形状をXY面で示す説明図である。
【
図25】
図25は、予備穴の位置の検知と、溶接及び高さ計測と、不良判定された溶接部の補修工程とを含む検査手順を示すフローチャートである。
【
図26】
図26は、
図25に示す検査を1点毎から複数点を纏めて実施するように変更した検査手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書においては、貫通孔を有する1枚の鋼板と、非鉄金属である1枚のアルミニウム板とを重ね合わせ、アークスポット溶接(MIG溶接)により相互に接合した異種金属接合継手を例に説明するが、継手の構成及び材料はこれに限らず、種々の変更が可能である。
【0012】
<異種金属接合継手の構成>
図1は、異種金属接合継手の要部を示す断面図である。異種金属接合継手100は、鋼板からなり板厚方向に貫通孔11aを有する第1部材11と、非鉄金属からなる第2部材13と、溶接金属15とを有する。ここで示す第2部材13は、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウム材ともいう)からなる。第1部材11,第2部材13は、板材に限らず、ダイキャスト、押出材等であってもよい。溶接金属15は、後述するアークスポット溶接によって形成され、重ね合わせた第1部材11と第2部材13とを互いに接合する。この溶接金属15は、接合補助部材(溶接ワイヤ)を溶融させて形成され、第2部材13と接合される。本構成の溶接金属15は、第2部材13の裏面(下面)から裏波(裏余盛)を形成しているが、裏余盛は設けなくてもよい。接合補助部材を形成する溶接ワイヤは、第2部材13と同じ材質であることが好ましい。本構成の場合は、アルミニウム合金製の溶接ワイヤにより形成される。
【0013】
図2は、
図1に示す異種金属接合継手100の平面図である。溶接金属15は、アークスポット溶接によって平面視で略円形状に形成され、第1部材11の表面(上面)に濡れ広がる表余盛15aを有する。また、第1部材11の貫通孔11aから第2部材13を貫通し、第2部材13の裏面から突出し形成される裏余盛15bを有してもよい。このように、第1部材11は、板厚方向の一端側に配置される表余盛15aと、第1部材11の他端側に配置され、溶接金属15と接続された第2部材13との間に挟まれて、第2部材13と接合される。なお、上記したように裏余盛15bの形成は任意であり、第2部材13から溶接金属15を突出させなくてもよい。
【0014】
異種金属接合継手100は、裏余盛15bが存在しなくても十分な継手強度が得られる。また、裏余盛15bを省略することで、接合部の軽量化に寄与できる。また、裏余盛15bを設ける場合、裏余盛15bが大きいほど継手強度を向上できるが、他の部品との干渉、消耗材の消費量の増加、重量の増加があるため、状況に応じて上記の事項をバランスさせて設定すればよい。
【0015】
第1部材11は、一枚の鋼板以外にも、同位置に貫通孔を有する鋼板を複数枚重ねた板組であってもよい。また、貫通孔11aの形状は円形に限らず、任意の形状にできる。また、第2部材13は、アルミニウム材以外にも、例えばマグネシウム、マグネシウム合金等の他の軽金属であってもよい。
【0016】
<異種金属接合継手の溶接>
図3A~
図3Cは、貫通孔を有する鋼板とアルミニウム板との異種金属接合継手100の形成手順を示す工程説明図である。
図1,
図2に示す異種金属接合継手100を形成するには、まず、
図3Aに示すように、第1部材11と第2部材13とを板厚方向に重ね合わせる。
【0017】
図3Bに示すように、重ね合わせた第1部材11の貫通孔11a(予備穴ともいう)と第2部材13により形成される凹部に向けて溶接トーチ17を配置し、溶接トーチ17に保持された溶接ワイヤ19の先端からアークAkを発生させて溶接ワイヤ19を溶融させる。このアーク溶接は、シールドガスG雰囲気内で行なわれる。第2部材13の予備穴の内側に表出する部分はアークAkによって溶融して、
図3Cに示すように板厚方向に貫通する貫通部13aが形成される。こうして、溶接ワイヤ19が溶融した溶接金属と第2部材13が溶融した溶融金属とによって、第1部材11の予備穴内と第2部材13の貫通部13a内が充填される。また、第1部材11の貫通孔11aの外側には、溶融金属が径方向外側に濡れ広がった表余盛15aが形成される。
【0018】
上記したアーク溶接としては、(a)溶極式ガスシールドアーク溶接が用いられるが、これ以外に、(b)ノンガスアーク溶接、(c)溶極式ガスタングステンアーク溶接、(d)プラズマアーク溶接、(e)被覆アーク溶接等の他の溶接法であってもよい。
【0019】
(a)溶極式ガスシールドアーク溶接法は、一般的にMAG(Metal Active Gas)溶接、やMIG(Metal Inert Gas)溶接と呼ばれる溶接法であり、ソリッドワイヤ又はフラックス入りワイヤをフィラー兼アーク発生溶極として用い、CO2、Ar又はHe等の不活性ガスで溶接部を大気から遮断して、健全な溶接部を形成する手法である。
(b)ノンガスアーク溶接法は、セルフシールドアーク溶接法とも呼ばれ、特殊なフラックス入りの溶接ワイヤをフィラー兼アーク発生溶極として用いる。この溶接法ではシールドガスGが不要となり、より健全な溶接部を形成する。
(c)ガスタングステンアーク溶接法は、ガスシールドアーク溶接法の一種で非溶極式であって、一般的にTIG(Tungsten Inert Gas)溶接とも呼ばれる。シールドガスGとしてAr又はHeの不活性ガスが用いられる。タングステン電極と母材との間にアークが発生し、フィラーワイヤはアークに横から送給される。一般的に、フィラーワイヤは通電されないが、通電させて溶融速度を高めるホットワイヤ方式TIGもある。この場合、フィラーワイヤにはアークは発生しない。
(d)プラズマアーク溶接法は、TIGと原理は同じであるが、ガスの2重系統化と高速化によってアークを緊縮させ、アーク力を高めた溶接法である。
(e)被覆アーク溶接法は、金属の芯線にフラックスを塗布した被覆アーク溶接棒をフィラーとして用いるアーク溶接法であり、シールドガスは不要となる。
なお、ここではアークを用いたスポット溶接の場合を説明するが、アークに限らず、レーザー溶接、レーザー及びアークの両方を用いるハイブリッド溶接によるスポット溶接であってもよい。その場合、さらに制御性よく高精度なスポット接合が行える。
【0020】
<異種金属接合継手の検査>
上記したようなスポット溶接後の溶接金属15の高さを計測する高さ計測器として、接触式のハイトゲージ、非接触式のレーザー変位計、画像センサー(カメラ)等を使用できる。画像センサーでは、1つのセンサーを使用して複数の方向から撮像した撮像データを用いて高さを算出してもよく、二眼カメラ、3Dカメラのように、2つ以上のセンサーからの情報から高さを算出してもよい。接触式のハイトゲージは、高温部に接触させることが難しく、溶接直後の計測には向かないが、直接的に高さを計測できるため信頼性が高い。一方、非接触式のレーザー変位計、画像センサー等は、溶接直後の高温な溶接部に対しても計測できる。
【0021】
計測方法としては、ある1点の変位(高さ)を計測する方法、ある1点の変位を計測することと計測位置をずらすことを繰り返して複数点の変位を計測する方法、ある1つのラインの変位分布を取得する方法、1つのラインの変位分布を取得することと計測位置をずらすことを繰り返して複数ラインの変位分布を計測する方法、三次元の変位分布を一括で取得する方法等が挙げられる。
【0022】
計測された各種の計測データは、ノイズ除去、データ処理高速化等のために、前処理として平均化フィルター、ガウシアンフィルター等の各種フィルター処理、データの間引き処理等を行ってもよい。
【0023】
高さ計測により得られる計測データは、2次元(例えばx座標と高さ)のデータ、又は3次元(例えばx,y座標と高さ)のデータの場合がある。これら2次元又は3次元のデータをそのまま処理してもよいし、低次元化の処理を行ってもよい。例えば、3次元のデータのうち、ある特定のライン上の高さ値を抜き出して2次元のデータにすることで、以降の処理を簡単化できる。ラインの選択方法としては、第1部材11の貫通孔11a(予備穴)の中心を通る直径線等でもよく、予め設定した高さ値を有する線でもよく、特定のアルゴリズムにより選択した線でもよい。また、上記した各種の線を含む複数のラインを選択してもよい。
【0024】
<溶接システム>
高さ計測器21は、スポット溶接を行う溶接装置に搭載されていてもよい。
図4は、高さ計測器21が設けられた溶接ロボット23を含む溶接システム200の概略構成図である。一例として示す溶接ロボット23は、多軸ロボットであって、ロボットアームの先端軸25に溶接トーチ17が設けられている。
【0025】
図4に示す溶接システム200は、前述した(a)溶極式ガスシールドアーク溶接を行う溶接システムを例示している。この溶接システム200は、高さ計測器21を備えた溶接ロボット23と、制御装置31と、判定装置(判定部)33とを備える。制御装置31は、溶接ロボット23を駆動するロボット制御部35と、不図示の電源装置、及び不図示の溶接ワイヤを溶接トーチ17に送給するワイヤ送給装置を制御する溶接制御部37とを有する。判定装置33は、制御装置31に含まれていてもよい。また、高さ計測器21は、溶接ロボット23に配置される構成のほか、特定の位置に固定されていてもよく、高さ計測器21を動作させる他の駆動機構に配置してもよい。
【0026】
溶接トーチ17の位置と姿勢は、ロボットアームの制御によって自在に設定できる。高さ計測器21は、ロボットアームの先端軸25又は先端軸25の近傍に支持され、溶接トーチ17の動作と同様に、ロボットアームの駆動制御によって計測位置及び計測方向を自在に設定できる。計測時のロボットアームの移動は、2次元平面の領域内を走査する動きであってもよい。このように、溶接トーチ17を保持するロボットアームの先端軸25に高さ計測器21を取り付けた場合、溶接ロボット23に溶接と検査の機能が共に備わることになるため、設置スペース、設備投資のコストを削減できる。また、溶接後、即時に検査することが簡単に行え、タクトタイムを短縮する効果も得られる。
【0027】
溶接ロボット23は、多軸ロボットに限らず1軸又は直交2軸の可動式のステージであってもよい。例えば、可動式のステージに高さ計測器21を取り付けて、溶接継手を走査するように計測してもよい。また、高さ計測器21を可動ではない固定部に固定して、測定対象となる溶接継手を高さ計測器21の位置まで搬送して計測してもよい。
【0028】
溶接ロボット23と制御装置31は、スポット溶接を行う溶接装置として機能する。また、溶接ロボット23、制御装置31、判定装置33及び高さ計測器21は、溶接部の溶接金属の突出高さを計測して溶接状態を判定する検査装置として機能する。
【0029】
図5は、接合体27の異種金属接合継手100を、高さ計測器21により高さ計測する様子を模式的に示す説明図である。ここで示す接合体27は、長手方向に直交する断面形状がハット形の鋼材である第1部材11と、アルミニウム材である平板状の第2部材13との接合体である。第1部材11の一対の鍔部11b,11cは、複数の貫通孔11aを有しており、鍔部11b,11cと第2部材13とが重なり合った領域内の複数箇所に、異種金属接合継手100が形成される。
図5では、手前側の鍔部11bの長手方向一端部の1箇所に、スポット溶接により異種金属接合継手100を形成した状態を示している。
【0030】
<検査手順>
次に、上記した異種金属接合継手100の検査方法の手順を説明する。
図6は、異種金属接合継手100の検査方法の基本的な手順を示すフローチャートである。
図5に示す例で説明すると、まず、上記したように第1部材11と第2部材13とを重ね合わせて、制御装置31(
図4)からの指令に基づき、貫通孔11a(予備穴)の位置でスポット溶接を行う(S1)。
【0031】
次に、制御装置31は、スポット溶接後の溶接金属15の高さH(
図1)を高さ計測器21により計測させる(S2)。具体的には、ロボット制御部35が溶接ロボット23を駆動して、
図5に示すような高さ計測位置に高さ計測器21を配置する。ここで例示する高さ計測器21はレーザー変位計であって、計測位置の溶接金属15を含む所定の検査領域Atにレーザー光LBを照射して、溶接金属15の高さHを計測する。
【0032】
高さ計測器21による計測結果は判定装置33に入力される。判定装置33は、得られた高さHの計測データと予め定めた基準とを比較して、異種金属接合継手100が所望の条件を満足するか否かを判定する(S3)。判定装置33は、条件を満足している場合は、正常であると判定し(S4)、条件を満足していない場合は不良と判定する(S5)。
【0033】
ここで得られる計測データと基準との比較は、予め定めた基準高さとの比較以外にも、溶接金属15の高さ分布の情報として捉え、予め定めた閾値分布との比較により行ってもよく、高さHの最大値又は予め設定した位置の高さと、予め定めた閾値との比較により行ってもよい。また、高さHの計測以外にも、レーザー変位計を用いる場合には計測位置からの反射率、画像センサーを用いる場合には撮像画像の輝度を用いるなどして、溶接金属15の余盛部分を抽出し、余盛部分の幅W(
図1)を含めて正常又は不良の判定を行ってもよい。さらに、計測データの1階微分(差分)、2階微分(差分の差分)等を用いた処理を行うと、溶接金属15の形状の特徴量が正確に捉えられ、これにより正確な判定が行える。
【0034】
上記のように、ステップS3~S5において、判定装置33が、計測データ又は計測後に適宜に処理したデータを用いて異種金属接合継手100の健全性を判定する。健全性の判定には、高さ計測器21が取得したデータから溶接金属15の余盛部分となる表余盛15aの高さH、幅W等の各種特徴量の代表値を算出し、各代表値が予め設定した条件を満たす場合に、計測した異種金属接合継手100が良好な継手であると判定してもよい。このときの判定条件は、継手に用いる板組(材料種類、熱処理、板厚等の条件)、要求する継手性能、等に応じて適切な条件に変更できる。例えば、余盛の高さHとして、高さの計測データの最大値を使用してもよく、余盛の幅Wの中心における高さ、その他、任意の特定位置における高さを使用してもよい。また、それら複数種の高さ又は高さの分布を用いてもよい。さらには、余盛の高さH、幅W以外にも、溶接金属15の接触角、重心等の値を用いて判定してもよい。取得した計測データから溶接金属15の余盛部分の体積を算出し、算出した体積値を用いて判定してもよい。
【0035】
このように、上記した余盛部分の高さを計測して判定する異種金属接合継手100の検査方法によれば、溶接部や母材を破壊することなく検査が行え、溶接直後の高温な状態であっても即時の検査が可能となる。また、特に大がかりな設備を要することなく、簡便に、かつ安全性を維持した検査が行え、しかも自動化が容易に行える。
【0036】
図7は、接合体27の異種金属接合継手100を、表側と裏側から高さ計測器21により高さ計測する様子を模式的に示す説明図である。前述した異種金属接合継手100の溶接部において、表側(
図7の上側)の溶接金属15の高さ計測に加え、裏側(
図7の下側)の溶接金属15の高さを計測してもよい。つまり、
図1に示す溶接金属15の裏余盛15bの第2部材13からの突出高さhを計測し、継手の健全性の判定に用いてもよい。その場合、より高精度な検査が可能となる。また、裏側の溶接金属15の高さhの計測データのみから継手の健全性を判定することもできる。溶接部の裏側の高さhを計測する場合は、表側を計測する高さ計測器21を用いて計測してもよく、高さ計測器21を複数用意して、表側と裏側とを別々の計測器で計測してもよい。
【0037】
さらに、溶接金属15の裏側の高さhの代わりに、表側の溶接金属15の余盛部分である表余盛15aの体積を計測し、この体積と貫通孔11aの内容積、及び消耗材(溶接ワイヤ19)の消費量を勘案して、裏側の溶接金属15の裏余盛15bの形状を推測してもよい。このような溶接金属15の体積に基づく推定は、特に、第2部材13がアルミニウム押出材である場合、構造的な理由により裏側の余盛を観察できない場合、短時間で検査したい場合及び計測機器のコストを抑えたい場合等に特に有益となる。
【0038】
溶接金属15の高さ等の特徴量の計測を多数実施する場合には、機械学習を用いて学習モデルを生成して、この学習モデルを用いて接合継手の健全性を判定してもよい。
【0039】
図8Aは、正常と判定された異種金属接合継手100の切断面の断面写真である。
図8Bは、不良と判定された異種金属接合継手100の切断面の断面写真である。
図8Aに示すように、異種金属接合継手100は、第1部材11の貫通孔11aより大径の表余盛15aが貫通孔11aを覆って板厚方向に突出して形成される。本例の裏余盛15bは、第2部材13の裏側面(第1部材11側とは反対側の面)における第2部材13の貫通部13aの径よりも大径となって、板厚方向へ突出して形成されている。この裏余盛15bは必要に応じて設ければよく、その形状も任意にできる。また、表余盛15aについても同様に、その形状は任意であり、省略してもよい。
【0040】
その場合、溶接金属15の表余盛15aが第1部材11と隙間なく密着して、第1部材11と第2部材13との接合強度が向上する。つまり、溶接による接合強度に加えて、表余盛15aと裏余盛15bとが第1部材11及び第2部材13を挟み込むことによるアンカー効果が発揮され、板厚方向の外部応力に対して、更に強固な接合が得られる。また、板面方向のせん断力に対しては、第1部材11及び第2部材13を貫通する溶接金属15の軸部15cによって高いせん断強度が得られる。
【0041】
一方、
図8Bに示すように、異種金属接合継手100の溶接金属15が第1部材11の表側面から殆ど突出せず、貫通孔11aから第2部材13側に抜け落ちた状態では、溶接金属15と第1部材11との接合強度が低下する。この場合、前述したアンカー効果も得られないため、継手の健全性が不十分となる。
【0042】
<異種金属接合継手の健全性の判定基準>
判定装置33は、異種金属接合継手100の健全性の判定基準を、前述した
図1に示す溶接金属15の余盛り部分となる表余盛15aの幅W、第1部材11の表面からの高さH等の種々の基準により設定できる。
【0043】
図9は、高さ計測器21からの計測データにより求めた高さプロファイルMを示すグラフである。
図9に示す高さプロファイルMは、溶接部の形状を高さ計測器21により計測した際、高さ計測器21から出力された計測データを一軸(ライン)上の高さ分布として表したものである。前述したように、計測データは各種のフィルター処理、間引き処理等を行ってもよい。高さプロファイルMは、溶接金属15の第1部材11からの突出形状を表しており、高さプロファイルMから、溶接金属15の余盛り部分の幅W、高さHが演算により求められる。求めた幅W、高さH等の情報は、
図6のステップS3における基準との比較、即ち、基準幅W
0、基準高さH
0との比較に供される。
【0044】
図10は、高さプロファイルMと基準高さ分布SFとを示すグラフである。前述したように、継手の健全性は、
図9に示す高さプロファイルMから溶接金属15の幅W,高さH等のパラメータを抽出して判定できるが、それ以外にも、基準高さ分布SFとの比較で判定してもよい。ここでは、基準となる高さを位置毎に設定した基準高さ分布SFを用意し、高さプロファイルMが基準高さ分布SFの高さ以上である(M≧SF)かを判定条件としている。
図10に示す高さプロファイルMは、いずれの位置でも基準高さ分布SFより高く、判定条件(M≧SF)を満足するため「正常」と判定される。
【0045】
図11は、高さプロファイルMと基準高さ分布SFとを示すグラフである。
図11に示す高さプロファイルMは、溶接部の突出形状の高さが、基準高さ分布SFより低くなっている(M<SFの領域)。この場合、判定条件(M≧SF)を満足しないため「不良」と判定される。
【0046】
上記した基準高さ分布SFは、異種金属接合継手100の貫通孔11aの直径、狙い高さ、溶接ワイヤの送給速度、溶接電流、溶接電圧、溶接時間等の予め定めた設計条件に基づいて設定できる。また、理想形状に作成されたサンプル品の高さを計測し、そのサンプル品の計測結果に基づき基準高さ分布を設定してもよい。
【0047】
図12は、第1部材11の貫通孔11aを溶接前に計測した場合の高さプロファイルMを示す説明図である。
図13は、
図12に示す中心線CLに基づき作成した基準高さ分布SFを示す説明図である。
図12に示すように、計測された高さプロファイルMから、貫通孔11a(予備穴)の中心線CLを算出できる。この中心線CLの位置を中心に所定の範囲で基準高さを設定して、
図13に示すような基準高さ分布SFを設定できる。このように、スポット溶接の実施前に予備穴の位置を計測、記録しておき、溶接後に計測した溶接金属15の高さプロファイルMと、予め記録しておいた予備穴の位置情報を含む基準高さ分布SFとを照らし合わせて継手の健全性を判定してもよい。この場合、予備穴の位置にずれが生じた場合でも、予備穴の位置を実際に計測して求め、予備穴のずれ量に応じた比較、判定を行うため、判定の信頼性を向上できる。このため、位置ずれによる影響が判定結果に及ぶことがない。
【0048】
図14、
図15は、計測された高さプロファイルMと
図13に示す基準高さ分布SFとを比較した様子を示す説明図である。
図14に示すように、高さプロファイルMが基準高さ分布SF以上の高さである場合は「正常」と判定される。一方、
図15に示すように、高さプロファイルMの少なくとも一部に基準高さ分布SFより低い高さが生じる場合には、「不良」と判定される。このように、基準高さ分布SFが、本来の中心線CLの位置から偏って設定されると、正確な判定が難しくなるが、上記したように、基準高さ分布SFの中心位置が正確に設定されていれば、高精度な判定を安定して実施できる。
【0049】
図16は、溶接部の突出形状を溶接後に計測した場合の高さプロファイルMを示す説明図である。
図17は、
図15に示す中心線CLの位置に基づき作成した基準高さ分布SFを示す説明図である。
図16に示すように、溶接金属15の第1部材11からの突出形状が計測された高さプロファイルMから、溶接金属15の高さ分布の中心線CLを算出できる。この中心線CLの位置を中心に、
図17に示す基準高さ分布SFを設定できる。つまり、溶接後に計測した溶接金属15の突出形状の中心位置である中心線CLを求め、この中心線CLを中心に閾値を設定することで、実際に形成された溶接金属15の位置を基準とした基準高さ分布SFを設定できる。
【0050】
上記に示す判定では、計測された高さプロファイルMと基準高さ分布SFとをプロファイル全体で判定しているが、特定の代表点を用いて比較することでもよい。
図18、
図19は、計測された高さプロファイルMから抽出した代表点の位置関係を、基準と比較する様子を示す説明図である。
図18に示すように、計測された高さプロファイルMから突出形状の最大高さとなる頂点P1と、頂点P1の両脇における立ち上がりの端点P2,P3とを抽出する。
【0051】
ここで、高さプロファイルMの頂点P1から、頂点P1の鉛直方向下方で端点P2とP3を結ぶ線と交差する点P4までの高さを突出高さHと定義する。また、端点P2とP3を結ぶ線から鉛直方向上方に向けて突出が必要となる最小高さを基準高さHthとする。また、端点P2とP3を結ぶ線分の長さを溶接金属が突出する幅Wと定義し、その幅Wの許容できる最小幅を基準幅Wthとする。つまり、この場合の判定条件はH≧Hth、W≧Wthとなる。
【0052】
図18に示す高さプロファイルMを、高さHと幅Wで評価すると、突出高さHが基準高さH
thより高く、幅Wが基準幅W
thより長いことから、H≧H
th、W≧W
thの条件を満足し、「正常」と判定される。一方、
図19に示す高さプロファイルMでは、幅Wは基準幅W
thより長いが、突出高さHが基準高さH
thより低く、H≧H
th、W≧W
thの条件を満足しない。そのため、「不良」と判定される。
【0053】
さらに、溶接金属15の体積に基づいて判定してもよい。ここでは、溶接後に計測した溶接金属15の高さプロファイルMと、溶接時に送給した溶接ワイヤ19の総量とから、溶接部の裏側の裏余盛15bの状態(体積、形状)を予測する手法を示す。
図20は、溶接後に計測した溶接金属15の高さプロファイルMと、溶接前の溶接位置である貫通孔11a(予備穴)を計測した高さプロファイルM
0を示す説明図である。
図21は、溶接後に第1部材11の貫通孔11aに形成される溶接金属15の体積を説明する説明図である。
【0054】
図20に示すように、溶接金属15の貫通孔11aに充填された部分と、表余盛15aを含む第1部材11から突出した部分を形成する体積は、計測された高さプロファイルM,M
0から推定できる。また、溶接金属15は、送給した溶接ワイヤの総量に応じた体積を有しており、上記した各部の体積の関係から裏余盛15bの体積を推定できる。
【0055】
具体的には、裏余盛15bの体積Vbは、送給した溶接ワイヤ19の体積Vwと、溶接後に計測した高さプロファイルMから算定した溶接金属15の突出する部分の体積Vout及び貫通孔11a内部の体積Vhとの関係から、式(1)で表される。
Vb= Vw-Vout-Vh-C ・・・ 式(1)
ここで、Cは定数であって、溶接時に発生するスパッタ等による損失、第1部材11と第2部材13との板間ギャップへの溶接金属のはみ出し等の影響を補正する項である。定数Cの値は、経験則的に設定してもよく、機械学習により設定してもよく、ゼロに設定してもよい。
【0056】
また、溶接位置に形成された溶接金属15の表余盛15aを平面視した場合の表余盛15aの面積で判定してもよい。
図22は、第1部材11と第2部材13とを接合する溶接金属15の断面図と正面図を示す説明図である。ここでは、板厚方向をZ方向、Z方向に直交する板面方向をX方向、Y方向としている。溶接金属15の表余盛15aは、第1部材11と密着してアンカー効果を発揮する部位であり、正面視(XY面上)で十分な面積を有することが好ましい。そこで、表余盛15aの面積を計測して求め、予め定めた基準面積と比較して継手の健全性を評価する。
【0057】
図23、
図24は、溶接金属15の表余盛15aの外縁形状をXY面で示す説明図である。表余盛15aの形状は、前述したレーザー変位計の高さ計測器21(
図4)によっても計測できるが、画像センサーを用いて、撮像して得た画像データから表余盛15aの外縁形状を検出するなど、複数の計測情報を組み合わせて検出してもよい。
【0058】
図23に示すように、溶接後に計測した溶接金属15の表余盛15aの外縁を表すプロファイルPrfが、予め定めた基準高さ分布SPを覆い隠すように面積が大きい場合には「正常」と判定する。一方、
図24に示すように、計測した表余盛15aの外縁を表すプロファイルPrfが、予め定めた基準高さ分布SPより小さくなったり、基準高さ分布SPの中心からずれて偏ることで、プロファイルPrfから基準高さ分布SPがはみ出したりする場合には「不良」と判定する。上術したように、計測されたプロファイルPrfと比較する基準は、種々の形態のものを採用できる。
【0059】
<不良箇所の補修>
上記した溶接部の検査において、「不良」と判定された溶接部を補修する工程を更に設けてもよい。
図25は、予備穴の位置の検知と、溶接及び高さ計測と、不良判定された溶接部の補修工程とを含む検査手順を示すフローチャートである。
図25に示す検査手順においては、その前提として、
図4に示す制御装置31は、第1部材11と第2部材13とを接合するための溶接手順の情報を含むプログラムに従って動作されるものとする。このプログラムには、第1部材11の貫通孔11a(予備穴)の位置である溶接位置の情報、及び溶接電流、溶接電圧、溶接ワイヤの送給速度等の溶接条件が登録されている。制御装置31は、用意されたプログラムを読み込み、プログラムに従って溶接ロボット23を駆動して、指定された予備穴の位置でスポット溶接を実施する。
【0060】
このような溶接手順において、制御装置31は、プログラムに従って溶接ロボット23を駆動して、高さ計測器21を溶接位置となる予備穴の位置に配置する。そして、高さ計測器21により予備穴の高さ計測を行い、予備穴の正確な位置を検出する(S11)。制御装置31は、検出された予備穴の位置と、プログラムに登録されている予備穴の位置とを比較して、相互の位置にずれが生じている場合、溶接位置が検出された予備穴の位置になるように溶接ロボット23の教示位置を変更する(S12)。例えば、プログラムに登録されている予備穴の位置情報を補正し、補正後の位置情報を溶接ロボット23に目標位置情報として出力する。
【0061】
このように、溶接前に計測した予備穴の位置を溶接システム200にフィードバックし、予め溶接点として教示したポイントを修正することで、溶接時のずれを減少させ、より品質の高い接合継手が得られる。この目標位置の修正は、予備穴の中央位置を修正することが好ましいが、板組や部品形状、求められる性能等によって中央からずらした位置を目標位置に設定してもよい。また、予備穴の深さを計測することで、第1部材11と第2部材13との板隙を推測できる。例えば、板厚が1.4mmの鋼板を用いた場合に予備穴の深さが1.9mmであるとすると、板隙は0.5mmであると推測できる。これを溶接条件にフィードバックし、溶接電流値、アークタイム等の溶接条件を板隙に適した条件に変更することで、より品質の高い接合継手が得られる。
【0062】
次に、制御装置31は、プログラムに従って溶接動作を開始して、溶接トーチ17を補正された予備穴の位置に位置決めして、スポット溶接を実施する(S13)。溶接後、前述したように溶接部における溶接金属15の高さを計測する(S14)。判定装置33は、高さ計測器21により計測した高さプロファイル等の情報から、条件を満足するかを確認し(S15)、「正常」か「不良」かを判定する(S16,S17)。「正常」と判定された場合には、処理を終了し、「不良」と判定された場合には、補修が可能かを判断する(S18)。補修が可能である場合は、再び溶接トーチ17を予備穴に位置決めして補修溶接を実施し(S19)、溶接部の高さを計測するステップS14からやり直す。補修溶接では、溶接金属が不足した部分を埋めるように選択的に溶接することでもよく、溶接電流、溶接電圧、溶接ワイヤの送給速度等の条件を変更してスポット溶接してもよく、条件を変更せずに再度スポット溶接してもよい。補修溶接は、計測した高さプロファイルに応じて処理内容を設定することが好ましい。一方、補修が難しい場合は、別工程にてチェックが必要であると判定して(S20)、処理を終了する。
【0063】
本手順では、上記の各ステップS18、S19,S20が補修工程STとして追加されている。このように、溶接部の判定結果を溶接システム200にフィードバックして、不良と判定された場合に補修工程STを実施しておくことで、不良箇所を後工程で補修する手間を削減できる。補修工程STの具体的な処置内容は、不良の判定パターン毎に複数用意しておくのが好ましい。例えば、余盛高さが不足しているパターン、予備穴に対して溶接金属が大きくずれているパターン等、状況に応じて適切な処置が可能となる。また、不良と判定された場合に、そのときの溶接電流、溶接電圧等の溶接条件、変位量等の計測データを保存してデータベースを構築することで、不良判定となった原因の究明に役立てることができる。
【0064】
このように、本溶接システム200は、スポット溶接の施工位置を補正する補正機能と、必要に応じて溶接部の補修を行う補修機能とを有している。
【0065】
上記の手順では、1点溶接する毎に検査しているが、複数点を溶接した後に複数点を纏めて検査してもよい。
図26は、
図25に示す検査を1点毎から複数点を纏めて実施するように変更した検査手順を示すフローチャートである。この検査手順においては、まず、前述した予備穴位置の検出(S31)と、教示位置の変更(S32)とを溶接する全点について繰り返し実施する(S33)。そして、溶接トーチ17を補正された予備穴の位置に位置決めして、スポット溶接を実施する(S34)。この処理を溶接する全点について繰り返す(S35)。
【0066】
溶接後、前述したように溶接部における溶接金属15の高さを計測し(S36)。条件を満足するかを確認して(S37)、「正常」か「不良」かを判定する。「不良」と判定された場合には、前述した補修工程STと同様に、補修可能であれば補修処置を実施して(S38)、溶接部の高さを計測するステップS36からやり直す。なお、補修が困難である場合は、次の溶接部の高さの計測に進む(S36)。「正常」と判定された場合には、全ての溶接部の検査を終了するまで上記のステップS36からの処理を繰り返す(S39)。本手順によれば、複数の溶接部を連続して溶接、判定、補修を行うことができ、効率よく接合体27を製造できる。
【0067】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせること、及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0068】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組が、前記貫通孔の位置でスポット溶接された異種金属接合継手の検査方法であって、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さを計測し、
計測した前記突出高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、
異種金属接合継手の検査方法。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、第1部材と第2部材とをスポット溶接して形成される溶接金属の第1部材からの突出高さを計測することで、この突出高さに応じて継手強度等の溶接状態を判定できる。
【0069】
(2) 前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第2部材の前記第1部材とは反対側の裏面から突出した突出高さを計測し、
計測した前記表面からの突出高さと前記裏面からの突出高さとに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、(1)に記載の異種金属接合継手の検査方法。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、溶接金属の第2部材からの突出高さを計測することで、この突出高さに応じて継手強度等の溶接状態をより高精度に判定できる。
【0070】
(3) 前記溶接金属の3点以上の前記突出高さを用いて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、(1)又は(2)に記載の異種金属接合継手の検査方法。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、3点以上の突出高さから突出した最大高さ、幅を求めることができ、判定処理を簡単化できる。
【0071】
(4) 前記溶接金属の前記突出高さを、レーザー変位計により計測する、(1)から(3)のいずれか1つに記載の異種金属接合継手の検査方法。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、レーザー光の照射によって計測対象と非接触で即時の検査が行える。
【0072】
(5) 前記溶接金属の前記突出高さを、イメージセンサにより検出された撮像画像から計測する、(1)から(3)のいずれか1つに記載の異種金属接合継手の検査方法。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、撮像画像の情報から高さ情報を抽出するため、計測対象と非接触で即時の検査が行える。
【0073】
(6) 前記第2部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金、若しくは、マグネシウム又はマグネシウム合金である、(1)から(5)のいずれか1つに記載の異種金属接合継手の検査方法。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、鋼材と、アルミニウム、マグネシウム等の軽金属との接合継手の強度を高精度に判定できる。
【0074】
(7) 前記スポット溶接の実施前に前記貫通孔の位置を計測し、
計測した前記貫通孔の位置に対応する前記溶接金属の前記突出高さに応じて前記溶接状態を判定する、(1)から(6)のいずれか1つに記載の異種金属接合継手の検査方法。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、貫通孔の位置に対応させて溶接金属の突出高さを計測することで、計測位置を正確に位置決めでき、計測精度を向上できる。
【0075】
(8) 前記貫通孔の位置を、前記溶接金属の前記突出高さを計測する高さ計測器を用いて計測する、(7)に記載の異種金属接合継手の検査方法。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、突出高さを計測する高さ計測器を用いて貫通孔の位置を計測するため、貫通孔の位置が簡単な工程の追加によって計測でき、装置コストも抑えられる。
【0076】
(9) 板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組を、前記貫通孔の位置でスポット溶接して異種金属接合継手を形成する溶接工程と、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さと、前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第2部材の前記第1部材とは反対側の裏面から突出した突出高さとの少なくとも一方を計測する計測工程と、
計測した前記突出高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する判定工程と、
前記スポット溶接の溶接状態が不良と判定された場合に、当該スポット溶接の溶接位置を補修する補修工程と、
を有する溶接方法。
この溶接方法によれば、溶接工程によって第1部材と第2部材とをスポット溶接して形成される異種金属接合継手について、計測工程によって溶接金属の第1部材又は第2部材からの突出高さの少なくとも一方を計測する。計測した突出高さに応じて判定工程にてスポット溶接の溶接状態を判定する。溶接状態が不良と判定された場合には、補修工程で溶接位置を補修する。このように、溶接状態の判定結果をフィードバックして、不良と判定された箇所を補修しておくことで、不良箇所を後工程で補修する手間を削減できる。
【0077】
(10) 前記スポット溶接前に、前記貫通孔の位置を計測する工程を有し、
前記溶接工程では、計測された前記貫通孔の位置を、前記スポット溶接の目標位置にフィードバック制御して、次の前記スポット溶接の施工位置を補正する、(9)に記載の溶接方法。
この溶接方法によれば、位置ずれが補正された正確な位置でスポット溶接を実施できるため、所望の継手強度が得やすくなる。
【0078】
(11) 板厚方向に貫通孔を有する少なくとも1枚の鋼製の第1部材と、非鉄金属製の第2部材とを互いに重ね合わせた板組が、前記貫通孔の位置でスポット溶接された異種金属接合継手の検査装置であって、
前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第1部材の前記第2部材とは反対側の表面から突出した突出高さを計測する高さ計測部と、
計測した前記高さに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する判定部と、
を備える異種金属接合継手の検査装置。
この異種金属接合継手の検査装置によれば、高さ計測部が、第1部材と第2部材とをスポット溶接して形成される溶接金属の第1部材からの突出高さを計測することで、判定部が、この突出高さに応じて継手強度等の溶接状態を判定できる。
【0079】
(12) 前記高さ計測部は、前記スポット溶接により形成された溶接金属が、前記第2部材の前記第1部材側と反対側の裏面から突出した突出高さを計測し、
前記判定部は、計測した前記第1部材の前記表面からの突出高さと、前記第2部材の前記裏面からの突出高さとに応じて前記スポット溶接の溶接状態を判定する、(11)に記載の異種金属接合継手の検査装置。
この異種金属接合継手の検査方法によれば、溶接金属の第2部材からの突出高さを計測することで、この突出高さに応じて継手強度等の溶接状態をより高精度に判定できる。
【0080】
(13) (11)又は(12)に記載の異種金属接合継手の検査装置と、
前記スポット溶接により前記第1部材と前記第2部材とを接合して前記異種金属接合継手を形成する溶接装置と、
を備え、
前記スポット溶接の溶接状態が不良と判定された場合に、前記溶接装置を駆動して不良と判定された前記スポット溶接の溶接位置を補修する補修機能を有する、溶接システム。
この溶接システムによれば、溶接装置によって第1部材と第2部材とをスポット溶接して形成される異種金属接合継手について、検査装置によって溶接金属の第1部材又は第2部材からの突出高さの少なくとも一方を計測する。計測した突出高さに応じて判定工程にてスポット溶接の溶接状態を判定する。溶接状態が不良と判定された場合には、補修装置によってその溶接位置を補修する。このように、溶接状態の判定結果をフィードバックして、不良と判定された箇所を補修しておくことで、不良箇所を後工程で補修する手間を削減できる。
【0081】
(14) 前記スポット溶接の実施前に前記貫通孔の位置を計測し、計測された前記貫通孔の位置を、前記スポット溶接の目標位置にフィードバック制御して、前記スポット溶接の施工位置を補正する補正機能を有する、(13)に記載の溶接システム。
この溶接システムによれば、位置ずれが補正された正確な位置でスポット溶接を実施できるため、所望の継手強度が得やすくなる。
【0082】
(15) 前記溶接装置は、前記スポット溶接を行う溶接ロボットを有し、
前記高さ計測部は、前記溶接ロボットの可動部に設けられている、(13)又は(14)に記載の溶接システム。
この溶接システムによれば、設置スペース、設備投資のコストを削減できる。また、溶接ロボットの駆動により、高さ計測部を所望の計測位置に容易に配置できるため、溶接後、即時に検査することが簡単に行える。また、タクトタイムを短縮できる。
【符号の説明】
【0083】
11 第1部材
11a 貫通孔
11b,11c 鍔部
13 第2部材
13a 貫通部
15 溶接金属
15a 表余盛
15b 裏余盛
15c 軸部
17 溶接トーチ
19 溶接ワイヤ
21 高さ計測器
23 溶接ロボット
25 先端軸
27 接合体
31 制御装置
33 判定装置(判定部)
35 ロボット制御部
37 溶接制御部
100 異種金属接合継手
200 溶接システム
Ak アーク
At 検査領域
G シールドガス
LB レーザー光