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特開2024-177875情報処理方法、情報処理装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177875
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20241217BHJP
   B63B 79/30 20200101ALI20241217BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20241217BHJP
   F17C 13/08 20060101ALI20241217BHJP
   B63B 79/10 20200101ALI20241217BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20241217BHJP
【FI】
G06F30/20
B63B79/30
B63B25/16 Z
F17C13/08 302Z
B63B79/10
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096258
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】今井 達也
(72)【発明者】
【氏名】白土 透
(72)【発明者】
【氏名】上田 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2G024
3E172
5B146
【Fターム(参考)】
2G024AD38
2G024BA11
2G024CA04
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB15
3E172BB06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172DA04
3E172DA90
3E172KA21
5B146AA05
5B146DC04
5B146DJ14
5B146FA00
(57)【要約】
【課題】計測器の設置箇所を最適化することが可能な、情報処理方法、情報処理装置、及びプログラムを得る。
【解決手段】情報処理装置は、構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得し、取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出し、算出した前記指標値を含む結果情報を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が、
構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得し、
取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出し、
算出した前記指標値を含む結果情報を出力する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記計画情報は、前記計測器の設置点数をさらに含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記計測器を設置するために必要な設置コストに関するコスト情報をさらに取得し、
前記コスト情報と前記計画情報とに基づいて、前記計画情報に応じて前記計測器を設置するために必要なコスト値をさらに算出し、
前記結果情報は、算出した前記コスト値をさらに含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記設置コストは、前記計測器の単価に応じた物品コスト、及び、前記設置箇所に応じた施工コストを含む、請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記結果情報は、前記計画情報と前記指標値との対応関係を表示するグラフを含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の標値を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記指標値を含む結果情報を出力する出力部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置を、
構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記指標値を含む結果情報を出力する出力手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法、情報処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、背景技術に係る状態推定システムが開示されている。当該システムは、船舶に設置された液化ガスタンクの状態を推定するシステムであって、計測ユニットと、計算ユニットと、データ同化ユニットと、評価ユニットとを備える。計測ユニットは、前記液化ガスタンクの強度に関する状態を計測する計測器を備える。計算ユニットは、前記液化ガスタンクの強度に関する状態を事前解析モデルによって計算する。データ同化ユニットは、前記計測ユニットで取得した計測結果を用いたデータ同化によって前記事前解析モデルを更新する。評価ユニットは、前記計算ユニットから出力された計算結果に基づいて前記液化ガスタンクの状態を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/145287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、計測器の設置箇所を最適化することについて、詳細な検討がなされていない。
【0005】
本開示は、計測器の設置箇所を最適化することが可能な、情報処理方法、情報処理装置、及びプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、情報処理装置が、構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得し、取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出し、算出した前記指標値を含む結果情報を出力する。
【0007】
本開示の他の態様に係る情報処理装置は、構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の標値を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記指標値を含む結果情報を出力する出力部と、を備える。
【0008】
本開示のさらに他の態様に係るプログラムは、情報処理装置を、構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した前記指標値を含む結果情報を出力する出力手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、計測器の設置箇所が構造物の状態推定の精度に与える寄与度の指標値を出力することによって、計測器の設置箇所を最適化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】状態推定システムが適用される船舶である液化ガス貯留船を示す図である。
図2】本開示の実施形態に係る設計支援装置の構成を示す図である。
図3】情報処理部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図4】結果情報を表す画面の一例を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0012】
図1に、舶用液化ガスタンク状態推定システム(以下、単に「状態推定システム」という。)1が適用される船舶である液化ガス貯留船3を示す。この液化ガス貯留船3は、水上に浮かべられる船体5と、船体5に設置された液化ガスを貯留する液化ガスタンク(以下、単に「タンク」という。)7とを備えている。
【0013】
なお、本明細書において「液化ガス貯留船」とは、液化ガスを貯留する機能を有する船舶一般を指す。本実施形態における液化ガス貯留船3は液化ガス運搬船である。もっとも、液化ガス運搬船以外にも、例えば液化ガス燃料船や、液化ガスを他の船舶に供給するバンカリング船等が液化ガス貯留船3に含まれる。
【0014】
タンク7には、タンク7とその外部、例えば陸上の液化ガス貯留基地との間で液化ガスを移送するための図示しない配管が取り付けられている。図示の例では、タンク7は、上方に突出するドーム部7aを有しており、このドーム部7aに配管の一端が取り付けられている。配管は、タンク7の内部からドーム部7aを貫通してタンク7の外部へ延設されている。
【0015】
タンク7に貯留される液化ガスは、例えば、液化石油ガス(LPG、約-45℃)、液化エチレンガス(LEG、約-100℃)、液化天然ガス(LNG、約-160℃)、液化水素(LH2、約-250℃)、液化ヘリウム(LHe、約-270℃)などである。
【0016】
本実施形態では、タンク7に液化水素が貯留される。
【0017】
本実施形態では、液化ガス貯留船3の船体5に2つのタンク7が設置されている。これら2つのタンク7は、船体5の船長方向に並んでいる。ただし、船体5に搭載されるタンク7の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。各タンク7の構成は同一であるので、本明細書では、1つのタンク7のみについて説明する。
【0018】
図示の例に係るタンク7は、船体5とは独立に形成される独立型タンク7である。また、このタンク7は、円筒形状の両端部がドーム状に膨出している俵形状を有している。タンク7の上部は、船体5と一体に設けられたタンクカバー9によって覆われている。なお、タンク7の形状はこの例に限定されず、例えば球形であってもよいし、方形であってもよい。
【0019】
また、本実施形態では、タンク7は、内槽11および外槽13を有する二重殻タンク7として構成されている。例えば、内槽11と外槽13との間には真空断熱層が形成されている。もっとも、タンク7の構成はこの例に限定されない。例えば、タンク7は、断熱材で覆われた一重殻タンクであってもよい。この場合の断熱材は、例えば、複数の真空断熱パネルで構成されてもよいし、複数の発泡パネルで構成されてもよい。
【0020】
船体5には、各タンク7が設置される凹部15が形成されており、この凹部15がタンク7の間で隔壁17によって2つのセルに分割されている。各セルの底壁19に、一対のタンク支持部材21が配置されている。一対のタンク支持部材21は、タンク7の軸方向に互いに離間する位置でタンク7を支持する。各タンク支持部材21は底壁19から突設されている。タンク7は、タンク支持部材21上に設置されることにより、船体5のセルを形成する各壁から離間した状態で支持されている。本実施形態では、このような構成により、タンク7が船体5に取り付けられている。
【0021】
また、内槽11と外槽13との間には、内槽11を支持する内槽支持部材23が配置されている。この例では、内槽支持部材23はタンク支持部材21の延長上に設けられている。この内槽支持部材23によって内槽11と外槽13とが接続される。内槽支持部材23および外槽13を介して内槽11が船体5に支持されている。なお、内槽支持部材23は、内槽11と外槽13のいずれか一方のみに固定され、他方に接触するように設けられていてもよいし、両方に固定されていてもよい。また、内槽支持部材23は、タンク支持部材21の延長上に設けられていなくともよく、タンク支持部材21から船長方向にずれた位置に設けられてもよい。
【0022】
なお、船体5に対するタンク7の支持態様は、上記で説明した例に限定されず、タンク7および船体5の構造に応じて適宜選択してよい。例えば、タンク7が球形状である場合には、タンク7を船体5に対して支持する円筒状のタンク支持部材21および内槽11と外槽13の間に介装される円筒状の内槽支持部材23を採用することができる。
【0023】
次に、上記の構成を有する液化ガスタンク7の状態を推定する状態推定システム1およびこのシステムを用いた状態推定方法について説明する。図1に示すように、状態推定システム1は、計測ユニット31、計算ユニット33、データ同化ユニット35および評価ユニット37を備えている。
【0024】
計測ユニット31は、液化ガスタンク7の強度等の状態に関する物理量を計測する計測器39を備えており、計測器39によって前記物理量を計測する。計測ユニット31の計測器39によって計測する、「液化ガスタンク7の強度等の状態」とは、例えば、対象部分の変形(歪み)度合いや累積疲労損傷である。計測ユニット31が備える計測器39とは、例えば、歪みの度合いを上記物理量として計測する歪みセンサや、累積疲労損傷の算出に必要なき裂量を上記物理量として計測する疲労センサである。計測器39はこれらのパラメータのうち一種類のみを計測するセンサであってもよく、複数の種類を計測する複数の種類のセンサであってもよい。
【0025】
本実施形態において、計測器39は、タンク7から船体5への荷重伝達経路(以下、単に「荷重伝達経路」という。)LPを形成する部分に取り付けられている。より具体的には、この例では、計測器39は、荷重伝達経路LPを形成する部分であるタンク支持部材21および内槽支持部材23に取り付けられている。
【0026】
より具体的には、計測器39は、例えば、タンク支持部材21においてはタンク7に接触する部分の近傍および船体5に連結される部分の近傍に取り付けられている。計測器39は、例えば、内槽支持部材23においては内槽11および外槽13に接触する部分の近傍に取り付けられている。
【0027】
このように、計測器39を、疲労による強度低下が生じやすい部分である荷重伝達経路LPに取り付けることにより、効率的にタンク7の状態を計測することができる。なお、計測器39が取り付けられる荷重伝達経路LPを形成する部分は、上記で例示したタンク支持部材21および内槽支持部材23上に限定されず、タンク7や船体5におけるこれらの部材21,23の近傍も含む。また、計測器39は、荷重伝達経路LPに代えて、または追加して、他の部分に取り付けてもよい。さらに、タンク7の強度に影響を及ぼし得る部分であれば、船体5側に計測器39を取付けてもよい。タンク7又は船体5への計測器39の設置箇所及び設置点数の最適化は、設計段階において後述する設計支援装置50によって行われる。
【0028】
計算ユニット33は、タンク7の強度に関する状態を事前解析モデルによって計算する。事前解析モデルは、構造物の状態推定を行う解析モデル情報の一例である。事前解析モデルには、船体5およびタンク7の設計時における材料物性、境界条件、荷重条件等の条件が設定されている。計算ユニット33は、この事前解析モデルによって、応力、歪みといったタンク7の強度に関する状態を算出する。
【0029】
データ同化ユニット35は、計測ユニット31で取得した計測結果を用いたデータ同化によって前記事前解析モデルを更新する。データ同化は、数値モデルの不確定要因を実測値により統計的に修正する手法である。本実施形態では、データ同化ユニット35は、計算ユニット33で用いられる数値解析モデルに設定された上述の各種条件やパラメータを、計測ユニット31で取得した計測結果と比較し、有意差がある場合には計測結果を用いて修正することにより、事前解析モデルを更新する。
【0030】
評価ユニット37は、計算ユニット33から出力された計算結果に基づいて前記液化ガスタンク7の状態を評価する。具体的には、評価ユニット37は、計算ユニット33から出力された応力や歪みなどの値に基づいて累積疲労損傷の値を計算し、直ちに補修が必要か否か、あるいは補修が必要になるまでの推定期間を評価する。
【0031】
本実施形態では、評価ユニット37は、構造信頼性解析によって、推定対象物であるタンク7の強度に関する評価を行う。構造信頼性解析では、所定の期間中に対象の構造物が疲労損傷や静的破壊、脆性破壊などを生じる確率を算出する。本実施形態の例では、評価ユニット37は、構造信頼解析を用いて、上記の想定運航期間中にタンク7に疲労損傷を生じる確率を算出する。構造信頼解析の具体的な手法としては、例えば、一般的に知られている、数値積分法,Monte-Carloシミュレーション法,一次信頼性評価法,二次信頼性評価法,高次積率法,重点サンプリング法,応答面法などを用いることができる。
【0032】
このように構造信頼性解析を用いて評価を行うことにより、タンク7の状態についての評価結果を、補修の必要性等より実用的な情報として出力することが可能になる。もっとも、評価ユニット37によるタンク7状態の評価は、構造信頼性解析を用いずに、累積疲労損傷の確定値として出力してもよい。
【0033】
状態推定システム1は、さらに、評価ユニット37による評価結果を適宜の方法で報知する報知ユニット43を備えてもよい。報知ユニット43は、例えば、疲労強度低下の程度、所定の短期間内に疲労損傷が発生する確率に応じて、補修をすべき旨の警告や、荒天を回避すべき旨の警告を表示するように構成される。
【0034】
なお、状態推定システム1および状態推定方法が適用されるタンク7は、上記の例に限定されない。例えば、タンク7は方形の独立型タンクであってもよいし、独立型ではなく、船体5と一体的に形成された、いわゆるメンブレン型のタンクであってもよい。また、タンク7に限らず、任意の構造体であってもよい。
【0035】
図2は、本開示の実施形態に係る設計支援装置50の構成を示す図である。設計支援装置50は、専用の端末として構成されていてもよいし、汎用のコンピュータを用いて構成されていてもよいし、サーバ装置として構成されていてもよい。また、設計支援装置50の機能がこれら複数の装置に分散して実装されていてもよい。
【0036】
設計支援装置50は、情報処理部51、入力部52、記憶部53、及び表示部54を備えている。
【0037】
入力部52は、マウス、キーボード、又はタッチパネル等の任意の入力装置を用いて構成されている。
【0038】
表示部54は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の任意の表示装置を用いて構成されている。
【0039】
記憶部53は、HDD、SSD、又は半導体メモリ等を用いて構成されている。記憶部53は、解析モデル情報71、計画情報72、及びコスト情報73を記憶する。但し、コスト情報73は省略されてもよい。
【0040】
解析モデル情報71は、構造物の状態推定を行うためのモデルであり、本実施形態ではタンク7の強度に関する状態を推定する上記の事前解析モデルに相当する。
【0041】
計画情報72は、計測器39の設置箇所及び設置点数の計画に関する設計情報を含む。計画情報72には、設置箇所及び設置点数の少なくとも一方が異なる複数の計画情報が含まれる。但し、各設置箇所への設置点数を所定数(例えば「1」)に固定することにより、設置点数の情報は省略されてもよい。
【0042】
コスト情報73は、計測器39を設置するために必要な設置コストに関する情報である。コスト情報73は、物品コストDB(データベース)81及び施工コストDB82を含む。物品コストDB81は、計測器39の単価に応じた物品コストを示すデータベースであり、物品コストは計測器39の種類によって異なる。施工コストDB82は、計測器39の設置に伴う材料費及び人件費等の施工コストを示すデータベースであり、施工コストは計測器39の設置箇所によって異なる。
【0043】
情報処理部51は、CPU等のプロセッサを用いて構成されている。情報処理部51は、コンピュータ読み取り可能なROM等の不揮発性記録媒体から読み出したプログラムをプロセッサが実行することによって実現される機能として、取得部61、算出部62、及び出力部63を備えている。換言すれば、上記プログラムは、設計支援装置50に搭載される情報処理装置としての情報処理部51を、取得部61(取得手段)、算出部62(算出手段)、及び出力部63(出力手段)として機能させるためのプログラムである。
【0044】
図3は、情報処理部51が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
まずステップSP01において取得部61は、解析モデル情報71、計画情報72、及びコスト情報73を、記憶部53から読み出すことによって取得する。
【0046】
次にステップSP02において算出部62は、取得部61が取得した解析モデル情報71及び計画情報72に基づいて、計測器39の設置箇所が解析モデル情報71の状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出する。後述するように、本実施形態の例では当該指標値として経験的可観測性グラミアンの最小固有値を用いるが、この例に限られない。
【0047】
次にステップSP03において算出部62は、取得部61が取得したコスト情報73及び計画情報72に基づいて、計画情報72に応じて計測器39を設置するために必要なコスト値を算出する。なお、ステップSP03はステップSP02より前に実行されてもよいし、ステップSP02とステップSP03とが同時に実行されもよい。
【0048】
次にステップSP04において出力部63は、算出部62が算出した上記指標値及び上記コスト値を含む結果情報を生成して出力する。出力部63が出力した結果情報は、表示部54に入力される。本実施形態の例では、結果情報は、計画情報72と指標値とコスト値との対応関係を表示するグラフを含む画面90の画像データであるが、この例に限られない。ユーザは、表示部54に表示された画面90を視認することによって複数の計画情報に対応する複数の結果情報を比較検討でき、例えば最良の結果が得られた計画情報を採用することによって、計測器39の設置箇所及び設置点数を設計段階で最適化することができる。
【0049】
なお、重み係数を用いた指標値とコスト値との加重和を算出部62が評価値として算出し、出力部63が当該評価値を出力することにより、当該評価値に基づいて最適な計画情報を自動選択する構成としてもよい。
【0050】
図4は、結果情報を表す画面90の一例を簡略化して示す図である。
【0051】
画面90の左上の領域には、計画情報72に含まれる複数の計画情報に対応する複数の計測パターンP1~P3が表示されている。この例では、計測パターンP1は○印で示す3個の計測器39を含み、計測パターンP2は□印で示す4個の計測器39を含み、計測パターンP3は×印で示す6個の計測器39を含む。
【0052】
画面90の左下の領域には、計測器39の設置箇所に応じた上記寄与度の大きさを色分けして図示したコンター図が表示されている。
【0053】
画面90の右側領域には、横軸をコスト値とし、縦軸を寄与度の指標値とし、各計測パターンP1~P3の結果をプロットしたグラフが表示されている。原点Oを通る直線Lは、ユーザによって任意に設定される境界線を示している。ユーザは、直線Lよりも上側の領域に結果がプロットされている計画情報(この例では計測パターンP1)を採用でき、直線Lよりも下側の領域に結果がプロットされている計画情報(この例では計測パターンP2,P3)を採用できない。
【0054】
以下、算出部62による指標値の算出手法について詳細に説明する。
【0055】
システムの状態方程式は、式(1)及び式(2)によって示される。
【0056】
【数1】
【0057】
【数2】
【0058】
は状態ベクトルであり、ある時刻tにおける状態(節点変位又は応力など)を表す。
【0059】
f(・)はシミュレーションモデルであり、例えばFEM(Finite Element Method)を用いた解析モデルである。
【0060】
はシステムノイズであり、シミュレーションの不確実性を表すベクトルである。
【0061】
は観測ベクトルであり、xから観測値を取り出したベクトルを表す。
【0062】
Hは観測行列であり、xから観測値を取り出すための行列である。各計画情報における計測器39の設置箇所は、観測行列Hによって与えられる。
【0063】
は観測ノイズであり、観測の不確実性を表す。
【0064】
線形システムである場合は、式(1)は式(3)の線形結合で表される。
【0065】
【数3】
【0066】
この場合、式(4)の可観測性グラム行列Gが正則であれば状態推定可能と判断でき、可観測性グラム行列Gの固有値の大小によって計測点の優劣を評価可能である。式(4)においてτは積分変数を示す。なお、可観測性とは、システムにおいて計測値から状態を推定可能か判断する指標を意味する。
【0067】
【数4】
【0068】
一方、非線形システムである場合は、可観測性グラム行列Gの厳密解が求められない。従って、非線形システムである場合は、可観測性グラム行列Gに代えて、式(5)で示される経験的可観測性グラム行列G’を用い、例えばその最小固有値を、状態推定精度への寄与度を示す指標値として用いる。なお、指標値としては、経験的可観測性グラム行列G’の最小固有値、最大固有値、トレース、又はこれらの平均値等を用いることができ、ユーザ又はサービス提供者等によって任意に選択できてもよい。
【0069】
【数5】
【0070】
式(5)中のYは、式(6)で与えられる。kは時間ステップである。
【0071】
【数6】
【0072】
式(6)中のnはユーザによって定義された摂動の数を表す。摂動については後述する。
【0073】
式(6)中のΔy(k,n)は、式(7)で与えられる。これは、初期値xに微小な摂動δuを加えた際の観測ベクトルyの差分を示す。
【0074】
【数7】
【0075】
式(7)中のρは摂動δuのノルムであり、式(8)で与えられる。
【0076】
【数8】
【0077】
なお、上記の例では算出部62は関数式を用いて指標値を算出したが、変形例として、機械学習による学習済みモデル又はルックアップテーブル等を用いて指標値を算出する構成としてもよい。
【0078】
以下、摂動δuの求め方の一例について説明する。
【0079】
まず、シミュレーションの状態ベクトルxを列方向に時間発展を取るように並べた式(9)のSnapshot行列Xに対し、式(10)の分散共分散行列Sを定義する。
【0080】
【数9】
【0081】
【数10】
【0082】
次に、分散共分散行列Sの固有値分解(主成分分析)を行い、固有値及び固有ベクトルを求める。計算の簡略化のため、実際は式(11)の条件で特異値分解し、式(12)における対角行列Dの各値を固有値とし、Uの各列を固有ベクトルとする。
【0083】
【数11】
【0084】
【数12】
【0085】
最後に、得られた固有値を大きい順に並べる。用いる固有値の数cを任意に決定し、固有値に対応する固有ベクトルを摂動δu(1<n<c)とする。
【0086】
なお、本開示にて開示する情報処理部51をはじめとする各要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0087】
本実施形態に係る設計支援装置50によれば、計測器39の設置箇所がタンク7の状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出し、算出した指標値を含む結果情報を出力することによって、状態推定の精度に応じて計測器39の設置箇所を最適化することが可能となる。
【0088】
また、計画情報72が計測器39の設置点数を含むことにより、状態推定の精度に応じて計測器39の設置点数を最適化することが可能となる。
【0089】
また、コスト情報73を用いることにより、計測器39の設置コストに応じて計測器39の設置箇所を最適化することが可能となる。
【0090】
また、コスト情報73が物品コストDB81及び施工コストDB82を含むことにより、適切な設置コストを算出することが可能となる。
【0091】
また、結果情報が、計画情報72と指標値との対応関係を表示するグラフを含む画面90の画像データであることにより、計画情報72と指標値との対応関係をユーザに分かりやすく提示することが可能となる。
【0092】
また、構造物が、船舶に設置された液化ガスタンクであることにより、船舶に設置された液化ガスタンクの状態推定を高精度な解析モデルを用いて行うことが可能となる。
【0093】
<本開示のまとめ>
以上説明した本開示の実施形態をまとめると、以下のとおりである。
【0094】
本開示の第1の態様に係る情報処理方法は、情報処理装置が、構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得し、取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出し、算出した前記指標値を含む結果情報を出力する。
【0095】
第1態様によれば、計測器の設置箇所が構造物の状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出し、算出した指標値を含む結果情報を出力することによって、状態推定の精度に応じて計測器の設置箇所を最適化することが可能となる。
【0096】
本開示の第2態様に係る情報処理方法は、第1態様において、前記計画情報は、前記計測器の設置点数をさらに含むと良い。
【0097】
第2態様によれば、状態推定の精度に応じてさらに計測器の設置点数を最適化することが可能となる。
【0098】
本開示の第3態様に係る情報処理方法は、第1又は第2態様において、前記計測器を設置するために必要な設置コストに関するコスト情報をさらに取得し、前記コスト情報と前記計画情報とに基づいて、前記計画情報に応じて前記計測器を設置するために必要なコスト値をさらに算出し、前記結果情報は、算出した前記コスト値をさらに含むと良い。
【0099】
第3態様によれば、さらに計測器の設置コストに応じて計測器の設置箇所を最適化することが可能となる。
【0100】
本開示の第4態様に係る情報処理方法は、第3態様において、前記設置コストは、前記計測器の単価に応じた物品コスト、及び、前記設置箇所に応じた施工コストを含むと良い。
【0101】
第4態様によれば、適切な設置コストを算出することが可能となる。
【0102】
本開示の第5態様に係る情報処理方法は、第1~第4態様のいずれか一つにおいて、前記結果情報は、前記計画情報と前記指標値との対応関係を表示するグラフを含むと良い。
【0103】
第5態様によれば、計画情報と指標値との対応関係をユーザに分かりやすく提示することが可能となる。
【0104】
本開示の第6態様に係る情報処理装置は、構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記指標値を含む結果情報を出力する出力部と、
を備える。
【0105】
第6態様によれば、計測器の設置箇所が構造物の状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出し、算出した指標値を含む結果情報を出力することによって、状態推定の精度に応じて計測器の設置箇所を最適化することが可能となる。
【0106】
本開示の第7態様に係るプログラムは、情報処理装置を、構造物の状態推定を行う解析モデル情報と、前記構造物の状態に関する物理量を計測する計測器の設置箇所を含む計画情報とを取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記解析モデル情報と前記計画情報とに基づいて、前記設置箇所が前記状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した前記指標値を含む結果情報を出力する出力手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0107】
第7態様によれば、計測器の設置箇所が構造物の状態推定の精度に与える寄与度の指標値を算出し、算出した指標値を含む結果情報を出力することによって、状態推定の精度に応じて計測器の設置箇所を最適化することが可能となる。
【符号の説明】
【0108】
50 設計支援装置
51 情報処理部
61 取得部
62 算出部
63 出力部
71 解析モデル情報
72 計画情報
73 コスト情報
81 物品コストDB
82 施工コストDB
90 画面
図1
図2
図3
図4