(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177878
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニット
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20241217BHJP
F04C 29/06 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F04B39/00 101T
F04C29/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096262
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 保徳
(72)【発明者】
【氏名】萩田 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】藥師寺 俊輔
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003AD03
3H003BA08
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB21
3H129BB32
3H129CC09
3H129CC28
(57)【要約】
【課題】圧縮機と第1カバーと第2カバーとの間の接触状態によって圧縮機から発生する騒音を低減できる圧縮機用エンクロージャを提供する。
【解決手段】圧縮機用エンクロージャ1は、圧縮機2を内部に収容して包囲する第1カバー21と、第1カバー21と圧縮機2との間に空間を形成した状態で第1カバー21と圧縮機2とを接続する複数の第1接続部11と、第1カバー21を内部に収容して包囲するとともに、第1カバー21よりも密度が大きい第2カバー22と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を内部に収容して包囲する第1カバーと、
前記第1カバーと前記圧縮機との間に空間を形成した状態で該第1カバーと該圧縮機とを接続する複数の第1接続部と、
前記第1カバーを内部に収容して包囲するとともに、前記第1カバーよりも密度が大きい第2カバーと、
を備えている圧縮機用エンクロージャ。
【請求項2】
前記第1カバーと前記第2カバーとの間に空間を形成した状態で該第1カバーと該第2カバーとを接続する複数の第2接続部を備えている請求項1に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項3】
前記第2接続部は、前記第1接続部を該第2カバーから見たときに、該第1接続部とは異なる位置に設けられている請求項2に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項4】
前記第1カバーは、発泡体とされ、
前記第1カバーの発泡面に対して前記第2接続部が結合されている請求項2に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項5】
前記第1カバーと前記第2カバーとの間に空間を形成しないように該第1カバーと該第2カバーとが接触している請求項1に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項6】
前記第1カバーは、発泡体とされ、
前記第1カバーの発泡面に対して前記第2カバーが結合されている請求項5に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項7】
前記発泡面は、前記第1カバーの表面が除去されて形成されている請求項4又は6に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項8】
請求項1に記載された圧縮機用エンクロージャと、
前記圧縮機用エンクロージャ内に収容された圧縮機と、
を備えている圧縮機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機を内部に収容する圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車の空調用冷凍サイクルに用いられる圧縮機として、電動圧縮機が用いられる。電動圧縮機は、スクロール機構等を備えた圧縮部を電動モータによって駆動する構成となっている。電動圧縮機は、車両の停止時にも空調の要求に応じて動作するので、さらなる騒音の低減が求められる。
【0003】
圧縮機の騒音低減のためには、騒音源の音圧レベルを低減する方法と、発生する騒音を吸音・遮音する方法がある。後者の吸音・遮音する手段として、圧縮機に対して防音カバーを設ける構造が種々提案されている。例えば、特許文献1の防音カバーは、圧縮機を覆う吸音材であるカバー部と、カバー部を覆う遮音部材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引用文献1には、吸音材であるカバー部の外面を覆うように遮音部材を配置することが記載されているが、カバー部と遮音部材との間の接触状態に関しては具体的な記載がない。また、圧縮機とカバー部との間の接触状態に関しての具体的な記載はない。
【0006】
本発明者等は、鋭意検討した結果、圧縮機と第1カバー(吸音部材)と第2カバー(遮音部材)との間の接触状態によって圧縮機から発生する騒音を有効に低減できることを見出した。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧縮機と第1カバーと第2カバーとの間の接触状態によって圧縮機から発生する騒音を低減できる圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る圧縮機用エンクロージャは、圧縮機を内部に収容して包囲する第1カバーと、前記第1カバーと前記圧縮機との間に空間を形成した状態で該第1カバーと該圧縮機とを接続する複数の第1接続部と、前記第1カバーを内部に収容して包囲するとともに、前記第1カバーよりも密度が大きい第2カバーと、を備えている。
【0009】
本開示の一態様に係る圧縮機ユニットは、上記の圧縮機用エンクロージャと、前記圧縮機用エンクロージャ内に収容された圧縮機と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
圧縮機と第1カバーと第2カバーとの間の接触状態によって圧縮機から発生する騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る圧縮機用エンクロージャを示した斜視図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る圧縮機を示した斜視図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る圧縮機を収容したエンクロージャを示した縦断面図である。
【
図4】スキン層を除去して第1カバーを製造する工程を示した概略図である。
【
図5】本開示の第2実施形態に係る圧縮機を収容したエンクロージャを示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下に、本開示に係る第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、電動圧縮機の全体を覆うエンクロージャ(圧縮機用エンクロージャ)1が示されている。エンクロージャ1の本体部10は、電動圧縮機の外形に対応した形状とされており、分割面Pにて左右に2つの分割体10A,10Bに分割されている。
【0013】
分割面Pは、圧縮機の取付脚部3を下方とした場合に、鉛直方向に延在して設けられている。圧縮機の取付脚部3は、車両側の固定部に対して圧縮機を取り付けるための固定部である。
【0014】
エンクロージャ1の本体部10は、
図3を用いて後述するが、第1カバー21と第2カバー22との二重構造とされている。
【0015】
図1に示した左右の分割体10A,10B同士の固定は、種々の固定方法を用いることができ、例えば、ボルト及びナット、爪部等を用いた係合などが用いられる。
【0016】
図2には、
図1に示したエンクロージャ1を取り外した状態の圧縮機2が示されている。同図に示された圧縮機2は、
図1に示されたエンクロージャ1に対して、例えば取付脚部3の数など厳密に一致する形状ではないが、エンクロージャ1によって遮音される圧縮機の説明としては大きな相違はない。すなわち、本実施形態に係るエンクロージャ1は、以下に説明する構造の圧縮機であれば広く適用することができる。
【0017】
圧縮機2は、車両の空調に用いられる冷凍サイクルの一部を構成し、蒸発器から導かれた冷媒を吸い込んだ後に圧縮し、凝縮器へと圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機2は、
図2に示すように水平方向に長手軸線を有する略円筒形状とされている。圧縮機2は、電動圧縮機とされており、スクロール機構を有する圧縮部2Aと、スクロール機構を駆動する電動モータを備えたモータ部(電動モータ部)2Bとを備えている。
【0018】
圧縮部2Aは、圧縮機2の前側(
図2において左側)に位置しており、内部に固定スクロール及び旋回スクロールを備えている。旋回スクロールが固定スクロールに対して部分的に接触しつつ旋回運動を行うので、圧縮部2Aが主として圧縮機2の振動源ないし騒音源となっている。圧縮部2Aの上部には、圧縮した冷媒を吐出するための筒形状とされた吐出口(延出部)5が設けられている。
【0019】
モータ部2Bは、圧縮部2Aの後部に接続されており、圧縮機2の後側(
図2において右側)に位置する。モータ部2Bは、固定子及び回転子を有する電動モータと、電動モータに電力を供給するインバータ部とを備えている。モータ部2Bの径は、圧縮部2Aの径よりも大きい。モータ部2Bの上部には、冷媒を圧縮機2内に吸い込むための筒形状とされた吸込口7が設けられている。さらに、モータ部2Bの上部でかつ吸込口(延出部)7の近傍には、圧縮機2の外部に対して電力ケーブルや信号線等のハーネスを導くための筒形状とされた配線ガイド筒(延出部)9が設けられている。
【0020】
図3には、
図2の圧縮機2に対してエンクロージャ1を取り付けた状態の縦断面が示されている。なお、
図3は、
図2に示した圧縮機2とは左右が逆となっており、右側に圧縮部2A、左側にモータ部2Bが位置している。すなわち、
図3は、
図2の背面側から見た縦断面図となっている。
【0021】
図3に示すように、エンクロージャ1の本体部10は、第1カバー21と第2カバー22とを備え、二重構造とされている。
【0022】
第1カバー21は、圧縮機2の全体を内部に収容して包囲する。第1カバー21は、自重で撓む程度の剛性とされており、例えば発泡ウレタン(軟質PURフォーム)等の発泡樹脂材料が用いられる。したがって、第1カバー21は、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のような剛性のあるプラスチック材料よりも柔らかく密度が小さい(比重が小さく気泡率が大きい)。
【0023】
第1カバー21と圧縮機2との間には、例えば5mm~20mm程度の隙間が設けられた上で、複数ヶ所で第1接続部11を介して圧縮機2と接触している。第1接続部11は、第1カバー21の内面から突出した突起形状とされており、第1接続部11の先端が圧縮機2の外面と接触している。第1接続部11は、好ましくは、第1カバー21の材質よりも柔らかい材料が用いられ、例えば、エプトシーラー(登録商標)等のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡材のようなゴムスポンジ、連続気泡ポリエチレン等を用いることができる。第1接続部11は、好ましくは、第1カバー21の内面に対して接着等によって固定されている。
【0024】
第1接続部11は、主として圧縮機2のモータ部2Bに設けられている。より具体的には、モータ部2Bの前端部A1と、後端部A2と、これらの間の中間部A3とのそれぞれに設けられている。なお、中間部A3の第1接続部11は適宜省略することができる。また、第1接続部11は、圧縮機2の円周方向に対して複数ヶ所設けられている。例えば、
図2に矢印Cで示すように、圧縮機2の下側と上側のそれぞれに設けられる。本実施形態のように、圧縮部2Aよりもモータ部2Bの方に多くの第1接続部11を設けることが好ましい。
【0025】
吐出口5に相当する位置には、吐出口5を挿通されるために本体部10に穴部が形成されている。この穴部の縁部と吐出口5の側周面との間の隙間を埋めるために、
図3に示すように第1接続部11としてシール材14が設けられている。シール材14は、吐出口5の筒部の外周を巻回するように配置される。
【0026】
第2カバー22は、第1カバー21の全体を内部に収容して包囲する。第2カバー22は、第1カバー21よりも大きい密度とされており(比重が大きく気泡率が小さい)、自重で形状を保持できる程度の剛性とされている。例えば第1カバー21で用いられる材料を発泡させない又は発泡の程度が小さい硬質樹脂材料が用いられる。または、第2カバー22として、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のような剛性のあるプラスチック材料を用いることができる。
【0027】
第2カバー22と第1カバー21との間には、例えば5mm~20mm程度の隙間が設けられた上で、複数ヶ所で第2接続部12を介して第1カバー21と接触している。第2接続部12は、第2カバー22の内面から突出した突起形状とされており、第2接続部12の先端が第1カバー21の外面と接触している。
【0028】
第2接続部12は、第2カバー22と一体とされた樹脂とすることができる。この場合、第1カバー21の外面に対して第2接続部12の先端が接続される。第1カバー21として発泡樹脂を用いた場合、第1カバー21の外表面は、
図4(a)のように、スキン層21aが除去されて多数の凹みが露出された発泡面21cとされていることが好ましい。金型で60℃以上の高温でポリウレタン等を原材料として発泡樹脂を成型すると、
図4(a)に示すように、発泡層となるコア層21bと、コア層21bの表面側及び裏面側に中実層となるスキン層21aとが形成される。これらスキン層21aをブラスト処理や機械加工等によって除去することにより、
図4(b)に示すように第1カバー21の表面に発泡による多数の凹みが露出した発泡面21cが現れる。そして、第1カバー21に対して第2カバー22を樹脂成型することによって、第1カバー21の発泡面21cの多数の凹みに第2接続部12の樹脂が埋まり、第2接続部12の先端を第1カバー21の外面に対して機械的および/または化学的に結合することができる。
【0029】
なお、第2接続部12を第2カバー22と一体成型することに代えて、第2接続部12として、例えば、エプトシーラー(登録商標)等のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡材のようなゴムスポンジ、連続気泡ポリエチレン等を用いても良い。この場合第2接続部12は、第2カバー22の内面及び第1カバー21の外面のそれぞれに対して接着等によって固定されている。
【0030】
第2接続部12は、第1接続部11を第2カバー22から見たときに、第1接続部11とは異なる位置に設けられている。すなわち、第1接続部11が存在する面積領域に対して第2接続部12が重なっていない。これにより、本体部10の厚さ方向に、第1接続部11、第1カバー21、第2接続部12及び第2カバー22が連続して存在することを回避している。
【0031】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
複数の第1接続部11によって圧縮機2と第1カバー21の内面との間に空間を形成することができるので、圧縮機2から発生する騒音を効果的に抑制することができる。
第1カバー21を収容するように第2カバー22を設けた。これにより、圧縮機2で発生した音が第1カバー21を伝搬する際に熱エネルギに変換されて減衰する。そして、第1カバー21よりも密度が大きい第2カバー22で音が内部側に反射される。反射音は第1カバー21でさらに減衰する。これにより、低密度とされた第1カバー21と高密度とされた第2カバー22とによってエンクロージャ1の外部に圧縮機2の音が伝播することを低減できる。
【0032】
複数の第2接続部12によって第1カバー21と第2カバー22との間に空間を形成することができるので、第1カバー21から第2カバー22への振動伝搬を低減できる。また、第2接続部12と第1カバー21の境界面での音波の反射と減衰により、第2カバー22から外部への音の放射を低減することができる。
また、第2接続部12によって第1カバー21と第2カバー22との間に空間を形成することで、圧縮機2を備えた車体等の振動によって第1カバー21が振動し、第2カバー22と接触して音を発生することを防ぐことができる。
【0033】
第1接続部11を第2カバー22から見たときに、第2接続部12を第1接続部11とは異なる位置に設けることとしたので、圧縮機2からの音(振動)が第1接続部11、第1カバー21及び第2接続部12を介して第2カバー22に直接的に固体伝播することを回避できる。
第1接続部11から第1カバー21へ伝播する固体伝播音が第2カバー22に伝わる間に第1カバー21を通るため、音(振動)を吸収・減衰することができる。また、第2カバー22が第1カバー21と第2接続部12で接続されていることで、第2カバー22の振動を第1カバー21が吸収・減衰させることができる。
【0034】
第1カバー21の発泡面の表面に現れる多数の凹みに対して第2接続部12が機械的および/または化学的に結合されることで、結合部の信頼性が向上し、結合部が剥離して第1カバー21と第2接続部12との接触音が発生することを防ぐことができる。
【0035】
第1カバー21の製造時に形成された比較的密度が高い第1カバー21のスキン層21aを除去することによって表面での音の反射を減らすことで、圧縮機2からの音や、第2カバー22からの反射音、圧縮機2や第2カバー22の固体伝播音を効率的に吸音することができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について、
図5を用いて説明する。第1実施形態では第1カバー21と第2カバー22との間に第2接続部12を設けることで空間を形成されていたが、本実施形態は第1カバー21と第2カバー22との間に空間が形成されていない。それ以外の構成については、第2実施形態は第1実施形態と同様なので、同一符号を付しその説明を省略する。
【0037】
図5に示すように、第1カバー21と第2カバー22との間に第1実施形態の第2接続部12(
図3参照)を設けず、第1カバー21の外面と第2カバー22の内面とが接触している。第1カバー21と第2カバー22とは接合されて一体化されていても良いし、接合させずに単に重ね合わせることとしても良い。
【0038】
なお、第1カバー21と第2カバー22との間には、実質的に空間が形成されていないことで足り、例えば、第1カバー21と第2カバー22とを全体的に接触させる場合に不可避的に生じる空間については許容される。
【0039】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
第1カバー21と第2カバー22との間に空間を形成しないように第1カバー21と第2カバー22とを接触させるようにした。これにより、第2カバー22の振動を第1カバー21が効率良く吸収・減衰させることができる。
【0040】
第1実施形態と同様に、複数の第1接続部11によって圧縮機2と第1カバー21の内面との間に空間を形成することができるので、圧縮機2から発生する騒音を効果的に抑制することができる。
【0041】
第1実施形態と同様に、第1カバー21を収容するように第2カバー22を設けた。これにより、圧縮機2で発生した音が第1カバー21を伝搬する際に熱エネルギに変換されて減衰する。そして、第1カバー21よりも密度が大きい第2カバー22で音が内部側に反射される。反射音は第1カバー21でさらに減衰する。これにより、低密度とされた第1カバー21と高密度とされた第2カバー22とによってエンクロージャ1の外部に圧縮機2の音が伝播することを低減できる。
【0042】
第1実施形態と同様に、スキン層21a(
図4(a)参照)を除去して第1カバー21の発泡面の表面に多数の凹みを出現させても良い。これにより、第2カバー22が機械的および/または化学的に結合されることで、結合部の信頼性が向上し、結合部が剥離して第1カバー21と第2カバー22との接触音が発生することを防ぐことができる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、第1カバー21及び第2カバー22として発泡樹脂材料を前提として説明したが、他の多孔質樹脂材料であっても良い。例えば、発泡材を用いずに樹脂材料の混練時に窒素や二酸化炭素を吹き込んで多孔質とした多孔質樹脂材料であっても良い。この場合、第2カバー22を成型する際には、樹脂の混練時に窒素や二酸化炭素を吹き込まない。
【0044】
以上説明した各実施形態に記載の圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニットは、例えば以下のように把握される。
【0045】
本開示の第1態様に係る圧縮機用エンクロージャ(1)は、圧縮機(2)を内部に収容して包囲する第1カバー(21)と、前記第1カバーと前記圧縮機との間に空間を形成した状態で該第1カバーと該圧縮機とを接続する複数の第1接続部(11)と、前記第1カバーを内部に収容して包囲するとともに、前記第1カバーよりも密度が大きい第2カバー(22)と、を備えている。
【0046】
複数の第1接続部によって圧縮機と第1カバーの内面との間に空間を形成することができるので、圧縮機から発生する騒音を効果的に抑制することができる。
第1カバーを収容するように第2カバーを設けた。これにより、圧縮機で発生した音が第1カバーを伝搬する際に熱エネルギに変換されて減衰する。そして、第1カバーよりも密度が大きい第2カバーで音が内部側に反射される。反射音は第1カバーでさらに減衰する。これにより、低密度とされた第1カバーと高密度とされた第2カバーとによってエンクロージャの外部に圧縮機の音が伝播することを低減できる。
第1カバーの材質としては、例えば自重で撓む程度の剛性とされており、例えば、ポリウレタンやポリイソシアヌレート等を発泡させた発泡樹脂材料(軟質PURフォームなど)を用いることができる。
第2カバーの材質としては、例えば自重で撓まずに形状を保持できる剛性とされており、例えば、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のプラスチック材料や、第1カバーで用いられる材料を発泡させない又は発泡の程度が小さい硬質樹脂材料が用いられる。
第1接続部及び第2接続部は、エンクロージャを圧縮機に対して取り付けた状態で対向する2つの部材を接続していれば足り、一体成型や接着等によって対向する部材に固定されていても良いし、接着等を用いずに取り外し可能に圧縮力で押さえつけられて固定されていても良い。
【0047】
本開示の第2態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第1態様において、前記第1カバーと前記第2カバーとの間に空間を形成した状態で該第1カバーと該第2カバーとを接続する複数の第2接続部(12)を備えている。
【0048】
複数の第2接続部によって第1カバーと第2カバーとの間に空間を形成することができるので、第1カバーから第2カバーへの振動伝搬を低減できる。また、第2接続部と第1カバーの境界面での音波の反射と減衰により、第2カバーから外部への音の放射を低減することができる。
また、第2接続部によって第1カバーと第2カバーとの間に空間を形成することで、圧縮機を備えた車体等の振動によって第1カバーが振動し、第2カバーと接触して音を発生することを防ぐことができる。
【0049】
本開示の第3態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第1態様において、前記第2接続部は、前記第1接続部を該第2カバーから見たときに、該第1接続部とは異なる位置に設けられている。
【0050】
第1接続部を第2カバーから見たときに、第2接続部を第1接続部とは異なる位置に設けることとしたので、圧縮機からの音(振動)が第1接続部、第1カバー及び第2接続部を介して第2カバーに直接的に固体伝播することを回避できる。
第1接続部から第1カバーへ伝播する固体伝播音が第2カバーに伝わる間に第1カバーを通るため、音(振動)を吸収・減衰することができる。また、第2カバーが第1カバーと第2接続部で接続されていることで、第2カバーの振動を第1カバーが吸収・減衰させることができる。
【0051】
本開示の第4態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第2態様又は前記第3態様において、前記第1カバーは、発泡体とされ、前記第1カバーの発泡面(21c)に対して前記第2接続部が結合されている。
【0052】
第1カバーの発泡面の表面に現れる多数の凹みに対して第2接続部が機械的および/または化学的に結合されることで、結合部の信頼性が向上し、結合部が剥離して第1カバーと第2接続部との接触音が発生することを防ぐことができる。
【0053】
本開示の第5態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第1態様において、前記第1カバーと前記第2カバーとの間に空間を形成しないように該第1カバーと該第2カバーとが接触している。
【0054】
第1カバーと第2カバーとの間に空間を形成しないように第1カバーと第2カバーとを接触させるようにした。これにより、第2カバーの振動を第1カバーが効率良く吸収・減衰させることができる。
なお、「空間を形成しないように」とは、実質的に空間を形成しないことを意味し、例えば、第1カバーと第2カバーとを全体的に接触させる場合に不可避的に生じる空間については許容されるものである。
【0055】
本開示の第6態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第5態様において、前記第1カバーは、発泡体とされ、前記第1カバーの発泡面に対して前記第2カバーが結合されている。
【0056】
第1カバーの発泡面の表面に現れる多数の凹みに対して第2カバーが機械的および/または化学的に結合されることで、結合部の信頼性が向上し、結合部が剥離して第1カバーと第2カバーとの接触音が発生することを防ぐことができる。
【0057】
本開示の第7態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第4態様又は前記第6態様において、前記発泡面は、前記第1カバーの表面が除去されて形成されている。
【0058】
第1カバーの製造時に形成された比較的密度が高い第1カバーの表面を除去することによって表面での音の反射を減らすことで、圧縮機からの音や、第2カバーからの反射音、圧縮機や第2カバーの固体伝播音を効率的に吸音することができる。
なお、第1カバーの表裏の両面のスキン層を除去することが好ましい。これにより、第1カバーの表裏面での音の反射を抑制できるからである。
【0059】
本開示の第1態様に係る圧縮機ユニットは、前記のいずれかの態様の圧縮機用エンクロージャと、前記圧縮機用エンクロージャ内に収容された圧縮機と、を備えている。
【符号の説明】
【0060】
1 エンクロージャ(圧縮機用エンクロージャ)
2 圧縮機
2A 圧縮部
2B モータ部(電動モータ部)
3 取付脚部
5 吐出口(延出部)
7 吸込口(延出部)
9 配線ガイド筒(延出部)
10 本体部
10A,10B 分割体
11 第1接続部
12 第2接続部
14 シール材
21 第1カバー
21a スキン層
21b コア層
21c 発泡面
22 第2カバー
P 分割面