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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177879
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】圧縮機用エンクロージャの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
F04B39/00 101T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096263
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 保徳
(72)【発明者】
【氏名】萩田 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】藥師寺 俊輔
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003CE00
(57)【要約】
【課題】圧縮機を覆う第1カバーと、第1カバーを覆うとともに第1カバーに対応した形状の第2カバーとを簡便に製造することができる圧縮機用エンクロージャの製造方法を提供する。
【解決手段】圧縮機を内部に収容して包囲する第1カバー21と、第1カバー21を内部に収容して包囲するとともに、第1カバー21よりも密度が大きい第2カバー22と、を備えている圧縮機用エンクロージャの製造方法である。圧縮機用エンクロージャの製造方法は、金型30内で第2カバー22を成型する第1工程と、金型30内に成型後の第2カバー22を配置した状態で第1カバー21を成型する第2工程と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を内部に収容して包囲する第1カバーと、
前記第1カバーを内部に収容して包囲するとともに、前記第1カバーよりも密度が大きい第2カバーと、
を備えている圧縮機用エンクロージャの製造方法であって、
型内で前記第2カバー又は前記第1カバーを成型する第1工程と、
型内に成型後の前記第2カバー又は前記第1カバーを配置した状態で前記第1カバー又は前記第2カバーを成型する第2工程と、
を有する圧縮機用エンクロージャの製造方法。
【請求項2】
前記第1カバーを成型した後に、該第1カバーの内面および/または外面の表層を除去する工程を有する請求項1に記載の圧縮機用エンクロージャの製造方法。
【請求項3】
前記第2工程の前に、型内に配置された成型後の前記第2カバー又は前記第1カバーの上に離型層を形成する請求項1又は2に記載の圧縮機用エンクロージャの製造方法。
【請求項4】
前記離型層の厚さは、前記圧縮機に取り付けたときの前記第1カバーと前記第2カバーとの間の隙間に相当する請求項3に記載の圧縮機用エンクロージャの製造方法。
【請求項5】
前記離型層には、複数の穴が形成されている請求項3に記載の圧縮機用エンクロージャの製造方法。
【請求項6】
離型層を形成することなく前記第2工程を行う請求項1又は2に記載の圧縮機用エンクロージャの製造方法。
【請求項7】
前記第1工程と前記第2工程は、同一の樹脂材料を用い、
成型する前記第1カバー及び前記第2カバーに応じて成型温度を変化させる請求項1又は2に記載の圧縮機用エンクロージャの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機を内部に収容する圧縮機用エンクロージャの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車の空調用冷凍サイクルに用いられる圧縮機として、電動圧縮機が用いられる。電動圧縮機は、スクロール機構等を備えた圧縮部を電動モータによって駆動する構成となっている。電動圧縮機は、車両の停止時にも空調の要求に応じて動作するので、さらなる騒音の低減が求められる。
【0003】
圧縮機の騒音低減のためには、騒音源の音圧レベルを低減する方法と、発生する騒音を吸音・遮音する方法がある。後者の吸音・遮音する手段として、圧縮機に対して防音カバーを設ける構造が種々提案されている。例えば、特許文献1には、コンプレッサと吸音材と支持ブラケットを備えた構成で、吸音材であるカバー部と遮音部材を重ねた構造が開示されている。カバー部は発泡樹脂ウレタンとされ、遮音部材は塩化ビニル樹脂やポリオレフィン系樹脂とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-147641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引用文献1のように樹脂材料を用いた二重構造の防音カバーは、内側のカバーの外面に対して外側のカバーの内面が対応する形状となっている必要があり、これに対応する簡便な製造方法が求められる。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧縮機を覆う第1カバーと、第1カバーを覆うとともに第1カバーに対応した形状の第2カバーとを簡便に製造することができる圧縮機用エンクロージャの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る圧縮機用エンクロージャの製造方法は、圧縮機を内部に収容して包囲する第1カバーと、前記第1カバーを内部に収容して包囲するとともに、前記第1カバーよりも密度が大きい第2カバーと、を備えている圧縮機用エンクロージャの製造方法であって、型内で前記第2カバー又は前記第1カバーを成型する第1工程と、型内に成型後の前記第2カバー又は前記第1カバーを配置した状態で前記第1カバー又は前記第2カバーを成型する第2工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
圧縮機を覆う第1カバーと、第1カバーを覆うとともに第1カバーに対応した形状の第2カバーとを簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る圧縮機用エンクロージャを示した斜視図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る圧縮機を示した斜視図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る圧縮機を収容したエンクロージャを示した縦断面図である。
図4図3のエンクロージャの製造方法を示した概略図である。
図5】スキン層を除去して第1カバーを製造する工程を示した概略図である。
図6】本開示の第2実施形態に係る圧縮機を収容したエンクロージャを示した縦断面図である。
図7図6のエンクロージャの製造方法を示した概略図である。
図8】本開示の第3実施形態に係るエンクロージャの製造方法を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下に、本開示に係る第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、電動圧縮機の全体を覆うエンクロージャ(圧縮機用エンクロージャ)1が示されている。エンクロージャ1の本体部10は、電動圧縮機の外形に対応した形状とされており、分割面Pにて左右に2つの分割体10A,10Bに分割されている。
【0011】
分割面Pは、圧縮機の取付脚部3を下方とした場合に、鉛直方向に延在して設けられている。圧縮機の取付脚部3は、車両側の固定部に対して圧縮機を取り付けるための固定部である。
【0012】
エンクロージャ1の本体部10は、図3を用いて後述するが、第1カバー21と第2カバー22との二重構造とされている。
【0013】
図1に示した左右の分割体10A,10B同士の固定は、種々の固定方法を用いることができ、例えば、ボルト及びナット、爪部等を用いた係合などが用いられる。
【0014】
図2には、図1に示したエンクロージャ1を取り外した状態の圧縮機2が示されている。同図に示された圧縮機2は、図1に示されたエンクロージャ1に対して、例えば取付脚部3の数など厳密に一致する形状ではないが、エンクロージャ1によって遮音される圧縮機の説明としては大きな相違はない。すなわち、本実施形態に係るエンクロージャ1は、以下に説明する構造の圧縮機であれば広く適用することができる。
【0015】
圧縮機2は、車両の空調に用いられる冷凍サイクルの一部を構成し、蒸発器から導かれた冷媒を吸い込んだ後に圧縮し、凝縮器へと圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機2は、図2に示すように水平方向に長手軸線を有する略円筒形状とされている。圧縮機2は、電動圧縮機とされており、スクロール機構を有する圧縮部2Aと、スクロール機構を駆動する電動モータを備えたモータ部(電動モータ部)2Bとを備えている。
【0016】
圧縮部2Aは、圧縮機2の前側(図2において左側)に位置しており、内部に固定スクロール及び旋回スクロールを備えている。旋回スクロールが固定スクロールに対して部分的に接触しつつ旋回運動を行うので、圧縮部2Aが主として圧縮機2の振動源ないし騒音源となっている。圧縮部2Aの上部には、圧縮した冷媒を吐出するための筒形状とされた吐出口(延出部)5が設けられている。
【0017】
モータ部2Bは、圧縮部2Aの後部に接続されており、圧縮機2の後側(図2において右側)に位置する。モータ部2Bは、固定子及び回転子を有する電動モータと、電動モータに電力を供給するインバータ部とを備えている。モータ部2Bの径は、圧縮部2Aの径よりも大きい。モータ部2Bの上部には、冷媒を圧縮機2内に吸い込むための筒形状とされた吸込口7が設けられている。さらに、モータ部2Bの上部でかつ吸込口(延出部)7の近傍には、圧縮機2の外部に対して電力ケーブルや信号線等のハーネスを導くための筒形状とされた配線ガイド筒(延出部)9が設けられている。
【0018】
図3には、図2の圧縮機2に対してエンクロージャ1を取り付けた状態の縦断面が示されている。なお、図3は、図2に示した圧縮機2とは左右が逆となっており、右側に圧縮部2A、左側にモータ部2Bが位置している。すなわち、図3は、図2の背面側から見た縦断面図となっている。
【0019】
図3に示すように、エンクロージャ1の本体部10は、第1カバー21と第2カバー22とを備え、二重構造とされている。
【0020】
第1カバー21は、圧縮機2の全体を内部に収容して包囲する。第1カバー21は、自重で撓む程度の剛性とされており、例えば発泡ウレタン(軟質PURフォーム)等の発泡樹脂材料が用いられる。したがって、第1カバー21は、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のような剛性のあるプラスチック材料よりも柔らかく密度が小さい(比重が小さく気泡率が大きい)。
【0021】
第1カバー21と圧縮機2との間には、例えば5mm~20mm程度の隙間が設けられた上で、複数ヶ所で第1接続部11を介して圧縮機2と接触している。第1接続部11は、第1カバー21の内面から突出した突起形状とされており、第1接続部11の先端が圧縮機2の外面と接触している。第1接続部11は、好ましくは、第1カバー21の材質よりも柔らかい材料が用いられ、例えば、エプトシーラー(登録商標)等のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡材のようなゴムスポンジ、連続気泡ポリエチレン等を用いることができる。第1接続部11は、好ましくは、第1カバー21の内面に対して接着等によって固定されている。
【0022】
第1接続部11は、主として圧縮機2のモータ部2Bに設けられている。より具体的には、モータ部2Bの前端部A1と、後端部A2と、これらの間の中間部A3とのそれぞれに設けられている。なお、中間部A3の第1接続部11は適宜省略することができる。また、第1接続部11は、圧縮機2の円周方向に対して複数ヶ所設けられている。例えば、図2に矢印Cで示すように、圧縮機2の下側と上側のそれぞれに設けられる。本実施形態のように、圧縮部2Aよりもモータ部2Bの方に多くの第1接続部11を設けることが好ましい。
【0023】
吐出口5に相当する位置には、吐出口5を挿通されるために本体部10に穴部が形成されている。この穴部の縁部と吐出口5の側周面との間の隙間を埋めるために、図3に示すように第1接続部11としてシール材14が設けられている。シール材14は、吐出口5の筒部の外周を巻回するように配置される。
【0024】
第2カバー22は、第1カバー21の全体を内部に収容して包囲する。第2カバー22は、第1カバー21よりも大きい密度とされており(比重が大きく気泡率が小さい)、自重で形状を保持できる程度の剛性とされている。例えば第1カバー21で用いられる材料を発泡させない又は発泡の程度が小さい硬質樹脂材料が用いられる。または、第2カバー22として、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のような剛性のあるプラスチック材料を用いることができる。
【0025】
第1カバー21の外面と第2カバー22の内面とが接触している。
【0026】
なお、第1カバー21と第2カバー22との間には、実質的に空間が形成されていないことで足り、例えば、第1カバー21と第2カバー22とを全体的に接触させる場合に不可避的に生じる空間については許容される。
【0027】
<製造方法>
次に、上記構成のエンクロージャ1の製造方法について説明する。
図4(a)に示すように、先ず金型30で第2カバー22を成型する。金型30は、上型31と下型32とを備えている。下型32の内面は成型後の第2カバー22の外面に対応した形状とされている。
【0028】
上型31は、3つシム33a,33b,33cによって4つの分割型34a,34b,34c,34dに分割されている。上方に位置する第1分割型34aは、上型31の上部の全体を形成しており、下面に形成された凹部に水平方向に延在する板状の第1シム33aが挿入されている。第1シム33aを挿入することによって第1分割型34aの下面が面一となっている。第1分割型34aの下面に接する状態で、左から順に第2分割型34b、第3分割型34c、第4分割型34dが水平方向に並べられている。第2分割型34bと第3分割型34cとの間には鉛直方向に延在する板状の第2シム33bが設けられ、第3分割型34cと第4分割型34dとの間には鉛直方向に延在する板状の第3シム33cが設けられている。第2分割型34bの下面、第2シム33bの下面、第3分割型34cの下面、第3シム33cの下面および第4分割型34dの下面によって形成される形状は、第2カバー22の内面の形状に対応している。
【0029】
上述した金型30は、第2カバー22の板厚となるようにキャビティ(空洞)がセットされている。この金型30のキャビティに対して、発泡剤を入れていない樹脂材料を供給して、20~30℃程度の低温で第2カバー22を成型する(第1工程)。樹脂材料としては、ポリウレタン、ポリイソシアヌレートを用いることができる。なお、樹脂材料としてPP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いても良い。
【0030】
次に、図4(b)に示すように、成型後の第2カバー22の内面に離型剤を塗布して離型層36を形成する。なお、離型剤に代えて、離型シートを用いても良い。
【0031】
そして、図4(c)に示すように、下型32に上記の第2カバー22及び離型層36を設置する。なお、図4(b)の第2カバー22に離型層36を形成する工程は、図4(a)の第1工程の後に上型31を取り外し、下型32内に第2カバー22を設置した状態で行っても良い。
【0032】
図4(c)に示すように、上型31は、3つのシム33a,33b,33cが取り外されて、4つの分割型34a,34b,34c,34dのみで構成されている。これにより、上型31と下型32との間に形成されるキャビティは、第1カバー21と第2カバー22の合計板厚となる。すなわち、3つのシム33a,33b,33cの厚さ及び長さを適宜調整することによって、第2カバー22を成型するときと、第2カバー22及び第1カバー21を成型するときで分割型34a,34b,34c,34dを共通して用いることができるようになっている。
【0033】
そして、発泡剤を混入した樹脂材料を、60℃以上とされた高温で第1カバー21を成型する(第2工程)。樹脂材料としては、ポリウレタン、ポリイソシアヌレートなどが用いられる。
【0034】
その後、金型30から第1カバー21及び第2カバー22を取り出し、離型層36を用いて第1カバー21と第2カバー22を分離する。
【0035】
分離した第1カバー21は、図4(d)に示すように、第1カバー21の内面及び外面をブラスト処理や機械加工などによって表面除去をする。成型後の第1カバー21は、図5(a)に示すように、発泡層となるコア層21bと、コア層21bの表面側及び裏面側に中実層となるスキン層21aとが形成されている。これらスキン層21aをブラスト処理や機械加工等によって除去することにより、図5(b)に示すように第1カバー21の表面に発泡による多数の凹みが露出した発泡面21cが現れる。
【0036】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
第2カバー22を成型した後に第2カバー22を金型30内に配置した状態で第1カバー21を成型することとした。これにより、第2カバー22の内面に対応する形状の外面を有する第1カバー21を簡便に成型することができる。
第1カバー21を収容するように第2カバー22を設けているので、圧縮機2で発生した音が第1カバー21を伝搬する際に熱エネルギに変換されて減衰する。そして、第1カバー21よりも密度が大きい第2カバー22で音が内部側に反射される。反射音は第1カバー21でさらに減衰する。これにより、低密度とされた第1カバー21と高密度とされた第2カバー22とによってエンクロージャ1の外部に圧縮機2の音が伝播することを低減できる。
【0037】
成型した後の第1カバー21のスキン層21aを除去することによって、スキン層21aでの音の反射を減らし、圧縮機2からの音や圧縮機2の固体伝播音を効率的に吸音することができる。
【0038】
離型層36を形成して第2工程を行うこととしたので、第1カバー21と第2カバー22とが接合されない。これにより、第1カバー21から第2カバー22への振動伝搬を低減することができる。また、第1カバー21と第2カバー22との境界面での音波の反射と減衰により、外気への音の伝搬を低減することができる。
【0039】
ポリウレタン、ポリイソシアヌレートのように第1カバー21と第2カバー22とで同一の樹脂材料を用いることとすれば、材料費のコストを低減できるとともに製造工程を簡素化することができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について説明する。第1実施形態のエンクロージャ1は第1カバー21と第2カバー22との間に空間が形成されていない構成とされていたが、本実施形態のエンクロージャ1は第1カバー21と第2カバー22との間に空間が形成されている点で相違する。本実施形態は。それ以外の構成については、第2実施形態は第1実施形態と同様なので、同一符号を付しその説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、第2カバー22と第1カバー21との間には、例えば5mm~20mm程度の隙間が設けられた上で、複数ヶ所で第2接続部12を介して第1カバー21と接触している。第2接続部12は、第2カバー22の内面から突出した突起形状とされており、第2接続部12の先端が第1カバー21の外面と接触している。
【0042】
第2接続部12は、第1接続部11を第2カバー22から見たときに、第1接続部11とは異なる位置に設けられている。すなわち、第1接続部11が存在する面積領域に対して第2接続部12が重なっていない。これにより、本体部10の厚さ方向に、第1接続部11、第1カバー21、第2接続部12及び第2カバー22が連続して存在することを回避している。
【0043】
<製造方法>
次に、上記構成のエンクロージャ1の製造方法について説明する。
図7(a)に示すように、先ず金型40で第1カバー21を成型する。金型40は、上型41と下型42とを備えている。下型42の内面は成型後の第1カバー21の内面に対応した形状とされている。
【0044】
上型41は、3つの分割型44a,44b,44cに分割されている。左から順に第1分割型44a、第2分割型44b、第3分割型44cが水平方向に接した状態で並べられている。第1分割型44aの下面、第2分割型44bの下面、第3分割型44cの下面によって形成される形状は、第1カバー21の外面の形状に対応している。
【0045】
上述した金型40は、第1カバー21の板厚となるようにキャビティがセットされている。この金型40のキャビティに対して、発泡剤を入れた樹脂材料を供給して、60℃以上の高温で第1カバー21を成型する(第1工程)。樹脂材料としては、ポリウレタン、ポリイソシアヌレートなどが用いられる。
【0046】
成型後の第1カバー21を取り外し、第1実施形態と同様に内面及び外面のスキン層21a(図5参照)を除去する。
【0047】
そして、図7(b)に示すように、第1カバー21の外面に離型層46を形成する。離型層46の厚さは、図6のようにエンクロージャ1として構成した際の第1カバー21と第2カバー22との間の隙間に相当する寸法とする。離型層46の所定の位置には第2接続部12(図6参照)に対応する位置に貫通孔(穴)を形成しておく。
【0048】
そして、図7(c)に示すように、離型層46を形成した第1カバー21を下型32に設置した上で、各シム43a,43b,43cを配置した上型41を設置する。第1シム43aは、上型41と下型42で形成されるキャビティの周囲に位置するように介挿される。第2シム43bは第1分割型44aと第2分割型44bとの間に介挿され、第3シム43cは第2分割型44bと第3分割型44cとの間に配置される。これらシム43a,43b,43cによって、第1カバー21、離型層46及び第2カバー22に相当する形状のキャビティが形成される。
【0049】
そして、発泡剤を入れない樹脂材料を、20~30℃程度の低温で第2カバー22を成型する(第2工程)。樹脂材料としては、第1カバーと同様のポリウレタン、ポリイソシアヌレートなどが用いられる。
【0050】
その後、図7(d)に示すように、金型40から第1カバー21及び第2カバー22を取り出し、離型層46を除去して第1カバー21と第2カバー22との間に空間を形成する。このとき、離型層46に形成した貫通孔によって第2接続部12が形成されている。第2接続部12の先端は第1カバー21の外面に現れた多数の凹みに埋め込まれた状態で接合されている。
【0051】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
第1カバー21を成型した後に第1カバー21を金型40内に配置した状態で第2カバー22を成型することとした。これにより、第1カバー21の外面に対応する形状の内面を有する第2カバー22を簡便に成型することができる。
【0052】
離型層46の厚さを、圧縮機2に取り付けたときの第1カバー21と第2カバー22との間の隙間に相当する厚さとした。これにより、所望の隙間を第1カバー21と第2カバー22との間に形成することができる。
第1カバー21と第2カバー22との間に空間を形成することで、第1カバー21から第2カバー22への振動伝搬を低減できる。
【0053】
離型層46に貫通孔を形成することとして、第2工程時に貫通孔を通過して樹脂材料が対向する第1カバーに流れ込むようにした。これにより、貫通孔に相当する成型部分が第2接続部12となり、第1カバー21と第2カバー22とを接続する。特に、第2カバー22の樹脂材料が第1カバー21の表面の多数の凹みに埋まり機械的な結合がより強固となる。
複数の第2接続部12によって第1カバー21と第2カバー22との間に空間を形成することができるので、第1カバー21から第2カバー22への振動伝搬を低減できる。
【0054】
ポリウレタン、ポリイソシアヌレートのように第1カバー21と第2カバー22とで同一の樹脂材料を用いることとしたので、第2接続部12と第1カバー21との接合部において化学的結合力を付加することができる。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で示したエンクロージャ1(図3参照)を製造する際に用いられる。
【0056】
<製造方法>
次に、上記構成のエンクロージャ1の製造方法について説明する。
図8(a)に示すように、先ず金型50で第1カバー21を成型する。金型40は、上型51と下型52とを備えている。下型52の内面は成型後の第1カバー21の内面に対応した形状とされている。
【0057】
上型51は、3つの分割型54a,54b,54cに分割されている。左から順に第1分割型54a、第2分割型54b、第3分割型54cが水平方向に接した状態で並べられている。第1分割型54aの下面、第2分割型54bの下面、第3分割型54cの下面によって形成される形状は、第1カバー21の外面の形状に対応している。
【0058】
上述した金型50は、第1カバー21の板厚となるようにキャビティがセットされている。この金型50のキャビティに対して、発泡剤を入れた樹脂材料を供給して、60℃以上の高温で第1カバー21を成型する(第1工程)。樹脂材料としては、ポリウレタン、ポリイソシアヌレートなどが用いられる。
【0059】
そして、図8(b)に示すように、成型後の第1カバー21を取り外し、第1実施形態と同様に内面及び外面のスキン層21a(図5参照)を除去する。
【0060】
そして、図8(c)に示すように、離型層を形成していない状態で第1カバー21を下型52に設置した上で、各シム53a,53b,53cを配置した上型51を設置する。第1シム53aは、上型51と下型52で形成されるキャビティの周囲に位置するように介挿される。第2シム53bは第1分割型54aと第2分割型54bとの間に介挿され、第3シム53cは第2分割型54bと第3分割型54cとの間に配置される。これらシム53a,53b,53cによって、第1カバー21及び第2カバー22に相当する形状のキャビティが形成される。
【0061】
そして、発泡剤を入れない樹脂材料を、20~30℃程度の低温で第2カバー22を成型する(第2工程)。樹脂材料としては、第1カバーと同様のポリウレタン、ポリイソシアヌレートなどが用いられる。この第2工程によって、第1カバー21と第2カバー22とが接合されたエンクロージャ1が得られる。
【0062】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
離型層を形成することなく成型された後の第1カバー21に対して、第2カバーを成型することとしたので、第1カバー21と第2カバー22とを強固に接合することができる。これにより、接合部が剥離して第1カバー21と第2カバー22との接触音の発生を抑制できる。第1カバー21と第2カバー22とが接合されていることで、第2カバー22の振動を第1カバー21が吸収・減衰させることができる。
【0063】
ポリウレタン、ポリイソシアヌレートのように第1カバー21と第2カバー22とで同一の樹脂材料を用いることとしたので、第2接続部12と第1カバー21との接合部において化学的結合力を付加することができる。
【0064】
なお、上述した各実施形態では、第1カバー21及び第2カバー22として発泡樹脂材料を前提として説明したが、他の多孔質樹脂材料であっても良い。例えば、発泡材を用いずに樹脂材料の混練時に窒素や二酸化炭素を吹き込んで多孔質とした多孔質樹脂材料であっても良い。この場合、第2カバー22を成型する際には、樹脂の混練時に窒素や二酸化炭素を吹き込まない。
【0065】
以上説明した各実施形態に記載の圧縮機用エンクロージャの製造方法は、例えば以下のように把握される。
【0066】
本開示の第1態様に係る圧縮機用エンクロージャ(1)の製造方法は、圧縮機(2)を内部に収容して包囲する第1カバー(21)と、前記第1カバーを内部に収容して包囲するとともに、前記第1カバーよりも密度が大きい第2カバー(22)と、を備えている圧縮機用エンクロージャの製造方法であって、型(30,40,50)内で前記第2カバー又は前記第1カバーを成型する第1工程と、型内に成型後の前記第2カバー又は前記第1カバーを配置した状態で前記第1カバー又は前記第2カバーを成型する第2工程と、を有する。
【0067】
第2カバーを成型した後に該第2カバーを型内に配置した状態で第1カバーを成型することとした。これにより、第2カバーの内面に対応する形状の外面を有する第1カバーを簡便に成型することができる。
または、第1カバーを成型した後に該第1カバーを型内に配置した状態で第2カバーを成型することとした。これにより、第1カバーの外面に対応する形状の内面を有する第2カバーを簡便に成型することができる。
第1カバーを収容するように第2カバーを設けているので、圧縮機で発生した音が第1カバーを伝搬する際に熱エネルギに変換されて減衰する。そして、第1カバーよりも密度が大きい第2カバーで音が内部側に反射される。反射音は第1カバーでさらに減衰する。これにより、低密度とされた第1カバーと高密度とされた第2カバーとによってエンクロージャの外部に圧縮機の音が伝播することを低減できる。
第1カバーの材質としては、例えば自重で撓む程度の剛性とされており、例えば、ポリウレタンやポリイソシアヌレート等を発泡させた発泡樹脂材料(軟質PURフォームなど)を用いることができる。
第2カバーの材質としては、例えば自重で撓まずに形状を保持できる剛性とされており、例えば、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のプラスチック材料や、第1カバーで用いられる材料を発泡させない又は発泡の程度が小さい硬質樹脂材料が用いられる。
【0068】
本開示の第2態様に係る圧縮機用エンクロージャの製造方法は、前記第1態様において、前記第1カバーを成型した後に、該第1カバーの内面および/または外面の表層を除去する工程を有する。
【0069】
成型した後の第1カバーには、厚さ方向の中心側に位置する多孔質とされたコア層と、内表面や外表面に形成された中実のスキン層とが形成される。スキン層を除去することによって、スキン層での音の反射を減らし、圧縮機からの音や圧縮機の固体伝播音を効率的に吸音することができる。
【0070】
本開示の第3態様に係る圧縮機用エンクロージャの製造方法は、前記第1態様又は前記第2態様において、前記第2工程の前に、型内に配置された成型後の前記第2カバー又は前記第1カバーの上に離型層(36,46)を形成する。
【0071】
離型層を形成して第2工程を行うこととしたので、第1カバーと第2カバーとが接合されない。これにより、第1カバーから第2カバーへの振動伝搬を低減することができる。また、第1カバーと第2カバーとの境界面での音波の反射と減衰により、外気への音の伝搬を低減することができる。
離型層としては、液体の離型剤を塗布して形成しても良く、また、離型シートであっても良い。
【0072】
本開示の第4態様に係る圧縮機用エンクロージャの製造方法は、前記第3態様において、前記離型層の厚さは、前記圧縮機に取り付けたときの前記第1カバーと前記第2カバーとの間の隙間に相当する。
【0073】
離型層の厚さを、圧縮機に取り付けたときの第1カバーと第2カバーとの間の隙間に相当する厚さとした。これにより、所望の隙間を第1カバーと第2カバーとの間に形成することができる。
第1カバーと第2カバーとの間に空間を形成することで、第1カバーから第2カバーへの振動伝搬を低減できる。
【0074】
本開示の第5態様に係る圧縮機用エンクロージャの製造方法は、前記第3態様又は前記第4態様において、前記離型層には、複数の穴が形成されている。
【0075】
離型層に穴を形成することによって、第2工程時に穴を通過して樹脂材料が対向する第1カバー又は第2カバーに流れ込む。これにより、穴に相当する成型部分が接続部となり、第1カバーと第2カバーとを接続する。特に、第2カバーの樹脂材料が第1カバーの表面に流れ込んで成型される場合は、表面の多数の凹みに樹脂材料が埋まり機械的な結合がより強固となる。
複数の接続部によって第1カバーと第2カバーとの間に空間を形成することができるので、第1カバーから第2カバーへの振動伝搬を低減できる。
【0076】
本開示の第6態様に係る圧縮機用エンクロージャの製造方法は、前記第1態様又は前記第2態様において、離型層を形成することなく前記第2工程を行う。
【0077】
離型層を形成することなく成型された後の第1カバー又は第2カバーに対して、第2カバー又は第1カバーを成型することとしたので、第1カバーと第2カバーとを強固に接合することができる。これにより、接合部が剥離して第1カバーと第2カバーとの接触音の発生を抑制できる。第1カバーと第2カバーとが接合されていることで、第2カバーの振動を第1カバーが吸収・減衰させることができる。
【0078】
本開示の第7態様に係る圧縮機用エンクロージャの製造方法は、各前記第1態様から前記第6態様のいずれかにおいて、前記第1工程と前記第2工程は、同一の樹脂材料を用い、成型する前記第1カバー及び前記第2カバーに応じて成型温度を変化させる。
【0079】
同一の樹脂材料を用いているので、第1カバーと第2カバーとが接合される場合には化学的結合力も付加することができる。
同一の樹脂材料を用いる場合には、成型温度を変更することによって低密度である第1カバーと高密度である第2カバーとを成型することができる。例えば、樹脂材料としてポリウレタン又はポリイソシアヌレートを用い、発泡材としてアゾジカーボンアミドや炭酸塩、炭酸水素塩を用いる場合には、成型温度を60℃以上として第1カバーを成型し、成型温度を20~30℃程度として第2カバーを成型する。
【符号の説明】
【0080】
1 エンクロージャ(圧縮機用エンクロージャ)
2 圧縮機
2A 圧縮部
2B モータ部(電動モータ部)
3 取付脚部
5 吐出口(延出部)
7 吸込口(延出部)
9 配線ガイド筒(延出部)
10 本体部
10A,10B 分割体
11 第1接続部
12 第2接続部
14 シール材
21 第1カバー
21a スキン層
21b コア層
21c 発泡面
22 第2カバー
30,40,50 金型
31,41,51 上型
32,42,52 下型
33a,43a,53a 第1シム
33b,43b,53b 第2シム
33c,43c,53c 第3シム
34a,44a,54a 第1分割型
34b,44b,54b 第2分割型
34c,44c,54c 第3分割型
34d 第4分割型
36,46 離型層
P 分割面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8