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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177883
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20241217BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20241217BHJP
   H01L 29/06 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L29/86 301P
H01L29/06 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096267
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 敦
(72)【発明者】
【氏名】永岡 達司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(57)【要約】
【課題】 技術を提供する。
【解決手段】 半導体装置は、酸化物半導体により構成されており、上から見たときに第1方向に沿って伸びる一対の第1の辺と第1方向に直交する第2方向に沿って伸びる一対の第2の辺とにより画定される矩形状を有する半導体基板と、上部電極と、下部電極と、を備えている。半導体基板が、半導体基板を上から見たときに、半導体素子が形成された素子領域と、素子領域の周囲に配置されている外周領域とを有している。外周領域では、半導体基板の上面に、半導体基板よりも熱伝導率が高い材料により構成されているとともに素子領域を一巡するように配置された放熱層が設けられている。第1の辺の長さをL、第2の辺の長さをL、酸化物半導体の第1方向の熱伝導率をκ、酸化物半導体の第2方向の熱伝導率をκとしたときに、κ<κ、かつ、κ/L<κ/Lの関係が満たされる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(10)であって、
酸化物半導体により構成されており、上から見たときに第1方向に沿って伸びる一対の第1の辺(14)と前記第1方向に直交する第2方向に沿って伸びる一対の第2の辺(16)とにより画定される矩形状を有する半導体基板(12)と、
上部電極(70)と、
下部電極(72)と、
を備えており、
前記半導体基板が、前記半導体基板を上から見たときに、半導体素子が形成された素子領域(60)と、前記素子領域の周囲に配置されている外周領域(62)とを有しており、
前記上部電極が、前記素子領域内において前記半導体基板の上面(12a)に接しており、
前記下部電極が、前記半導体基板の下面(12b)に接しており、
前記外周領域では、前記半導体基板の前記上面に、前記半導体基板よりも熱伝導率が高い材料により構成されているとともに前記素子領域を一巡するように配置された放熱層(28)が設けられており、
前記第1の辺の長さをL、前記第2の辺の長さをL、前記酸化物半導体の前記第1方向の熱伝導率をκ、前記酸化物半導体の前記第2方向の熱伝導率をκとしたときに、κ<κ、かつ、κ/L<κ/Lの関係が満たされる、
半導体装置。
【請求項2】
>Lの関係が満たされる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
が6mm以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記放熱層は、前記半導体基板よりも絶縁破壊電界が高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記外周領域内の前記半導体基板の前記上面及び前記放熱層を覆う絶縁膜(29)と、
前記絶縁膜の上面に設けられるとともに前記上部電極に接続されている金属層(74)と、
をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板の前記素子領域には、第1種の半導体素子(80)と、前記第1種の半導体素子とは異なる第2種の半導体素子(82)と、が形成されており、
前記第1種の半導体素子と前記第2種の半導体素子は、前記第2方向に沿って配置されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記酸化物半導体は、β-Gaである、請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Ga系半導体により構成された半導体基板と、半導体基板の上面に設けられたアノード電極と、半導体基板の下面に設けられたカソード電極と、を備える半導体装置が開示されている。この半導体装置では、半導体基板の下面に凹部が設けられている。
【0003】
Ga系半導体は耐圧に優れる一方、放熱性が悪いという問題がある。特許文献1には、凹部が形成された範囲において半導体基板の厚みが薄くなっているため、半導体基板で生じた熱を放熱し易く、凹部が形成されていない範囲において半導体基板の厚みが厚くなっているため、半導体基板の機械的強度を保持することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-106191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の半導体装置では、半導体基板の厚みが位置によって大きく異なっており、半導体装置が動作したときの冷熱サイクルにより、局所的に応力が印加され易い。その結果、半導体基板にクラックが生じ得る。本明細書では、半導体基板に印加される意図しない応力を抑制しつつ、放熱性を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(10)は、酸化物半導体により構成されており、上から見たときに第1方向に沿って伸びる一対の第1の辺(14)と前記第1方向に直交する第2方向に沿って伸びる一対の第2の辺(16)とにより画定される矩形状を有する半導体基板(12)と、上部電極(70)と、下部電極(72)と、を備えている。前記半導体基板が、前記半導体基板を上から見たときに、半導体素子が形成された素子領域(60)と、前記素子領域の周囲に配置されている外周領域(62)とを有している。前記上部電極が、前記素子領域内において前記半導体基板の上面(12a)に接している。前記下部電極が、前記半導体基板の下面(12b)に接している。前記外周領域では、前記半導体基板の前記上面に、前記半導体基板よりも熱伝導率が高い材料により構成されているとともに前記素子領域を一巡するように配置された放熱層(28)が設けられている。前記第1の辺の長さをL、前記第2の辺の長さをL、前記酸化物半導体の前記第1方向の熱伝導率をκ、前記酸化物半導体の前記第2方向の熱伝導率をκとしたときに、κ<κ、かつ、κ/L<κ/Lの関係が満たされる。
【0007】
上記の半導体装置が動作すると、上部電極と下部電極の間に電流が流れ、素子領域内の半導体基板が発熱する。酸化物半導体は、熱伝導率に異方性を有するため、半導体基板で生じた熱は、熱コンダクタンスが高い方向に伝導し易い。上記の半導体装置では、第1方向と第2方向の熱コンダクタンスが、κ/L<κ/Lの関係を満たしている。このため、素子領域内で生じた熱は、まず、熱コンダクタンスがより高い第2方向に沿って伝導する。外周領域には、半導体基板よりも熱伝導率が高い放熱層が設けられているので、素子領域から第2方向に沿って外周領域まで伝導した熱は、放熱層を介して半導体基板の外部に放散される。このように、上記の半導体装置では、半導体基板の熱コンダクタンスを調整するとともに外周領域に放熱層を設けることにより、半導体基板に印加される意図しない応力を抑制しつつ、放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の半導体装置を上から見た平面図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3】実施例の半導体装置の製造工程を説明するための図。
図4】実施例の半導体装置の製造工程を説明するための図。
図5】実施例の半導体装置の製造工程を説明するための図。
図6】変形例の半導体装置の図2に対応する断面図。
図7】他の変形例の半導体装置の図1に対応する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、L>Lの関係が満たされてもよい。
【0010】
このような構成では、熱コンダクタンスが高い第2方向に沿う第2の辺が、第1の辺よりも短い。素子領域内で生じた熱が、外周領域までの距離が短い第2方向に沿って伝導し易いので、より放熱性を向上することができる。
【0011】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、Lが6mm以下であってもよい。
【0012】
半導体装置では、半導体基板の一辺が6mm以下になると、熱抵抗が顕著に高くなり、放熱性が悪化する。このため、本明細書に開示の技術は、上記の構成において、より効果的である。
【0013】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記放熱層は、前記半導体基板よりも絶縁破壊電界が高くてもよい。
【0014】
このような構成では、外周領域において高い耐圧を保持することができる。
【0015】
本明細書が開示する一例の半導体装置は、前記外周領域内の前記半導体基板の前記上面及び前記放熱層を覆う絶縁膜と、前記絶縁膜の上面に設けられるとともに前記上部電極に接続されている金属層と、をさらに備えてもよい。
【0016】
このような構成では、金属層によって外周領域の機械的強度を保持することができるとともに、放熱層に伝導された熱が金属層を介して放散されるため、放熱性をより向上させることができる。
【0017】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記半導体基板の前記素子領域には、第1種の半導体素子と、前記第1種の半導体素子とは異なる第2種の半導体素子と、が形成されてもよく、前記第1種の半導体素子と前記第2種の半導体素子は、前記第2方向に沿って配置されていてもよい。
【0018】
このような構成では、第1種の半導体素子と第2種の半導体素子の境界近傍において熱が籠り易い。このため、第1種の半導体素子と第2種の半導体素子とを第2方向に沿って配置することにより、効率良く放熱することができる。
【0019】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記酸化物半導体は、β-Gaであってもよい。
【0020】
(実施例)
図1及び図2に示す実施例の半導体装置10は、ショットキーバリアダイオードである。半導体装置10は、半導体基板12、上部電極70、下部電極72等を備えている。なお、図1では、図の見易さのため、半導体基板12の上面12a上の一部の部材の図示を省略している。
【0021】
半導体基板12は、酸化物半導体により構成されている。具体的には、半導体基板12は、β-Gaにより構成されている。ただし、半導体基板12の材料としては、β-Gaに限られず、例えば、(Ga,Rh)、(Ga,Ir)、(Ga,Bi)、ZnGa等の酸化ガリウム系半導体や他の酸化物半導体を用いてもよい。
【0022】
図1に示すように、半導体基板12は、上から見たときに、x方向に沿って伸びる一対の辺14と、y方向に沿って伸びる一対の辺16とにより画定される矩形状を有している。なお、図1のx方向及びz方向に沿う面がβ-Gaの(010)面であり、y方向及びz方向に沿う面がβ-Gaの(100)面であり、x方向及びy方向に沿う面がβ-Gaの(001)面である。すなわち、x方向が[100]方向であり、y方向が[010]方向であり、z方向が[001]方向である。また、β-Gaは、熱伝導率に異方性を有する。具体的には、[100]方向の熱伝導率が13.6W/mkであり、[010]方向の熱伝導率が22.8W/mkである。すなわち、[100]方向の熱伝導率が[010]方向の熱伝導率よりも低い。また、本実施例では、第1の辺14が第2の辺16よりも長い。例えば、第1の辺14が10mmであり、第2の辺16が6mmである。すなわち、[100]方向の熱コンダクタンス(熱伝導率を辺の長さで除した値)が[010]方向の熱コンダクタンスよりも低い。
【0023】
半導体基板12は、素子領域60と外周領域62を有している。図1に示すように、素子領域60は、半導体基板12を上から見たときに、半導体基板の中央部に配置されている。素子領域60は、半導体素子(本実施例ではダイオード構造)が形成された領域である。外周領域62は、半導体基板12を上から見たときに、半導体基板12の外周部であって、素子領域60の周囲に配置されている。
【0024】
図2に示すように、素子領域60内には、半導体基板12の上面12aに、複数のトレンチ22が設けられている。各トレンチ22は、x方向に直線状に長く伸びている。各トレンチ22は、y方向に間隔を空けて配置されている。各トレンチ22の内面は、酸化膜24によって覆われている。上部電極70は、素子領域60内において、各トレンチ22の内部から半導体基板12の上面12aに跨るように配置されている。また、上部電極70は、素子領域60から外周領域62の一部に跨って配置されている。各トレンチ22の内部では、上部電極70は、酸化膜24によって半導体基板12から絶縁されている。上部電極70は、半導体基板12の上面12aとショットキー接触している。上部電極70は、アノード電極として機能する。
【0025】
図2に示すように、外周領域62内には、半導体基板12の上面12aにメサ部26が設けられている。メサ部26の深さは、素子領域60内のトレンチ22の深さよりもわずかに深い。外周領域62内には、半導体基板12の上面12a(メサ部26の底面)に、複数の放熱層28が形成されている。図1に示すように、各放熱層28は、素子領域60の周囲を一巡するように同心状に配置されている。放熱層28は、半導体基板12よりも熱伝導率が高く、半導体基板12よりも絶縁破壊電界が高い材料によって構成されている。放熱層28は、例えばAlN(すなわち、窒化アルミニウム)によって構成されている。AlNの熱伝導率は230W/mKであり、AlNの絶縁破壊電界は12MV/cm(β-Gaは8MV/cm)である。放熱層28及び半導体基板12の上面12a(メサ部26の内面を含む)は、絶縁膜29によって覆われている。素子領域60内の酸化膜24と外周領域62内の絶縁膜29は、素子領域60と外周領域62の境界において接続されている。
【0026】
図2に示すように、素子領域60内の上部電極70の上面、及び、外周領域62内の絶縁膜29の上面は、パッシベーション膜30によって覆われている。パッシベーション膜30は、図示しない位置に開口を有しており、当該位置において上部電極70が外部(例えばボンディングパッド)に接続されている。
【0027】
下部電極72は、半導体基板12の下面12bに配置されている。下部電極72は、半導体基板12の下面12bの略全域に形成されている。下部電極72は、半導体基板12の下面12bとオーミック接触している。下部電極72は、カソード電極として機能する。
【0028】
図2に示すように、半導体基板12の内部には、n型半導体層40、n型半導体層42、n型半導体層44が設けられている。n型半導体層40は、素子領域60及び外周領域62に跨って下部電極72に接する位置に設けられている。n型半導体層42は、n型半導体層40の上側に設けられている。n型半導体層42は、n型半導体層40よりもn型不純物濃度が低い。n型半導体層42は、素子領域60及び外周領域62に跨って設けられている。素子領域60内では、n型半導体層42は、n型半導体層40の上端から半導体基板12の上面12aに達する位置まで伸びている。外周領域62内では、n型半導体層42の上側にn型半導体層44が設けられている。n型半導体層44は、n型半導体層42よりもn型不純物濃度が低い。n型半導体層44は、n型半導体層42の上端から半導体基板12の上面12a(メサ部26の底面)に達する位置まで伸びている。
【0029】
本実施例の半導体装置10では、上部電極70と下部電極72の間に順方向バイアスを印加すると、上部電極70と半導体基板12(n型半導体層42)との界面のショットキー障壁が低下し、上部電極70から下部電極72に向かって電流が流れる。一方、上部電極70と下部電極72の間に逆方向バイアスを印加すると、上部電極70と半導体基板12(n型半導体層42)との界面のショットキー障壁が高くなり、電流が停止する。
【0030】
このように半導体装置10が動作すると、上部電極70と下部電極72の間に電流が流れ、素子領域60内の半導体基板12が発熱する。上述したように、β-Gaは、熱伝導率に異方性を有するため、半導体基板12で生じた熱は、熱コンダクタンスが高い方向に伝導し易い。本実施例の半導体装置10では、第1の辺14([100]方向に沿う辺)が第2の辺16([010]方向に沿う辺)よりも長く、[100]方向の熱コンダクタンスが[010]方向の熱コンダクタンスよりも低い。このため、素子領域60内で生じた熱は、熱コンダクタンスがより高い[010]方向に沿って伝導する。[010]方向は、外周領域62までの距離が短いので、迅速に素子領域60内の熱を外周領域62に伝導させることができる。そして、外周領域62には、半導体基板12よりも熱伝導率が高い放熱層28が設けられているので、素子領域60から[010]方向に沿って外周領域62まで伝導した熱は、放熱層28を介して半導体基板12の外部に放散される。このように、本実施例の半導体装置10では、半導体基板12の熱コンダクタンスを調整するとともに外周領域62に放熱層28を設けることにより、半導体基板12に印加される意図しない応力を抑制しつつ、放熱性を向上させることができる。
【0031】
また、本実施例の半導体装置10では、第2の辺16が6mmとなっている。半導体装置10では、半導体基板12の一辺が6mm以下になると、熱抵抗が顕著に高くなり、放熱性が悪化する。このため、上述した技術は、本実施例のように半導体基板12のサイズが比較的小さい場合により効果的である。
【0032】
また、本実施例では、放熱層28の絶縁破壊電界が、半導体基板12の絶縁破壊電界よりも高い。このため、外周領域62において高い耐圧を保持することができる。
【0033】
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。まず、図3に示すように、β-Gaにより構成されたn型半導体層40と、β-Gaにより構成されたn型半導体層42と、を有する半導体基板12を準備し、半導体基板12の上面12aに複数のトレンチ22及びメサ部26を形成する。加工前の半導体基板12は、例えば、n型半導体層40の上面にエピタキシャル成長によってn型半導体層42を形成することで製造することができる。また、この工程では、各トレンチ22を素子領域60内に形成し、メサ部26を外周領域62内に素子領域60の周囲を一巡するように形成する。
【0034】
次に、図4に示すように、外周領域62内において、半導体基板12の上面12a及びメサ部26の底面に露出する範囲にp型不純物(例えば、Feイオン、Nイオン、Mgイオン等)を注入することにより、n型半導体層42よりもn型不純物濃度が低いn型半導体層44を形成する。その後、外周領域62内の半導体基板12の上面12aに、AlNにより構成された複数の放熱層28を形成する。放熱層28は、素子領域60の周囲を一巡するように同心状に形成される。放熱層28は、例えば、半導体基板12の上面12aの全体にCVD(chemical vapor deposition)法等によりAlNを成膜した後、選択的に当該AlNをエッチングすることにより形成することができる。
【0035】
次に、図5に示すように、素子領域60内において、半導体基板12の上面12a及びトレンチ22の内面を覆う酸化膜24を形成し、外周領域62内において、半導体基板12の上面12a及びメサ部26の内面を覆う絶縁膜29を形成した後、半導体基板12に対してアニール処理を行う。その後、素子領域60内の半導体基板12の上面12aを覆う部分の酸化膜24をエッチングにより選択的に除去した後、上部電極70、下部電極72、パッシベーション膜30を形成することにより、図2に示す半導体装置10が完成する。
【0036】
上述した実施例において、図6に示すように、外周領域62内において、絶縁膜29の上面に設けられるとともに上部電極70に接続されている金属層74をさらに備えてもよい。このような構成では、金属層74によって外周領域62の機械的強度を保持することができるとともに、放熱層28に伝導された熱が金属層74を介して放散されるため、放熱性をより向上させることができる。
【0037】
また、上述した実施例では、素子領域60内に半導体素子としてショットキーバリアダイオードが形成されている例を説明したが、素子領域60内に形成される半導体素子は、例えば、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)やIGBT(insulated-gate bipolar transistor)であってもよい。また、図7に示すように、単一の半導体基板12の素子領域60内に2種類の半導体素子80、82(例えば、ダイオードとMOSFET)が形成されてもよい。この場合、図7に示すように、半導体素子80、82は、熱コンダクタンスがより高い[010]方向に沿って配置されてもよい。このような構成とすることで、半導体素子80と半導体素子82の境界近傍において籠り易い熱を、効率良く放熱することができる。
【0038】
なお、上述した実施例では、第1の辺14が第2の辺16よりも長かったが、第1の辺14の長さと第2の辺16の長さの大小関係はこれに限られない。[100]方向の熱コンダクタンスが[010]方向の熱コンダクタンスよりも低ければ、第1の辺14が第2の辺16より短くてもよいし、第1の辺14と第2の辺16が等しい長さでもよい。
【0039】
以下に、本明細書に開示の構成を列記する。
(構成1)
半導体装置であって、
酸化物半導体により構成されており、上から見たときに第1方向に沿って伸びる一対の第1の辺と前記第1方向に直交する第2方向に沿って伸びる一対の第2の辺とにより画定される矩形状を有する半導体基板と、
上部電極と、
下部電極と、
を備えており、
前記半導体基板が、前記半導体基板を上から見たときに、半導体素子が形成された素子領域と、前記素子領域の周囲に配置されている外周領域とを有しており、
前記上部電極が、前記素子領域内において前記半導体基板の上面に接しており、
前記下部電極が、前記半導体基板の下面に接しており、
前記外周領域では、前記半導体基板の前記上面に、前記半導体基板よりも熱伝導率が高い材料により構成されているとともに前記素子領域を一巡するように配置された放熱層が設けられており、
前記第1の辺の長さをL、前記第2の辺の長さをL、前記酸化物半導体の前記第1方向の熱伝導率をκ、前記酸化物半導体の前記第2方向の熱伝導率をκとしたときに、κ<κ、かつ、κ/L<κ/Lの関係が満たされる、
半導体装置。
(構成2)
>Lの関係が満たされる、構成1に記載の半導体装置。
(構成3)
が6mm以下である、構成1又は2に記載の半導体装置。
(構成4)
前記放熱層は、前記半導体基板よりも絶縁破壊電界が高い、構成1~3のいずれかに記載の半導体装置。
(構成5)
前記外周領域内の前記半導体基板の前記上面及び前記放熱層を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜の上面に設けられるとともに前記上部電極に接続されている金属層と、
をさらに備える、構成1~4のいずれかに記載の半導体装置。
(構成6)
前記半導体基板の前記素子領域には、第1種の半導体素子と、前記第1種の半導体素子とは異なる第2種の半導体素子と、が形成されており、
前記第1種の半導体素子と前記第2種の半導体素子は、前記第2方向に沿って配置されている、構成1~5のいずれかに記載の半導体装置。
(構成7)
前記酸化物半導体は、β-Gaである、構成1~6のいずれかに記載の半導体装置。
【0040】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
10:半導体装置、12:半導体基板、12a:上面、12b:下面、14:第1の辺、16:第2の辺、28:放熱層、29:絶縁膜、60:素子領域、62:外周領域、70:上部電極、72:下部電極、74:金属層
図1
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図7