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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177884
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】自閉扉の制動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20241217BHJP
   E05F 1/12 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E05F5/02 E
E05F1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096268
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴宏
【テーマコード(参考)】
2E050
【Fターム(参考)】
2E050AA02
2E050BA04
2E050CA04
2E050EA02
2E050EB02
(57)【要約】
【課題】扉体が閉じ位置から前後の両側に開放可能に回動支持される自閉扉に適用できる制動装置を提供する。
【解決手段】制動装置は、扉側面2Aに設置されたリニアダンパ7を含む付勢体10と、扉側面2Aに対峙する開口部1の左右の開口縦枠1Aに固定されて、付勢体10の被操作部20を操作する操作体8とを備える。付勢体10は、リニアダンパ7を構成するシリンダ11と、シリンダ11に対して出退可能に設けられたロッド12と、進出位置に向かう方向の付勢力をロッド12に付与する付勢ばね14と、付勢ばね14の付勢力を受けて扉側面2Aから突出する被操作部20とを備える。操作体8は、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成された操作面22を備え、前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるとき、被操作部20が操作面22に接触して、ロッド12がシリンダ11内に押し込まれるように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(1)を閉鎖する扉体(2)と、当該扉体(2)を回動支持する自閉式のピボットヒンジ(3)とを備える自閉扉に適用される制動装置であって、
ピボットヒンジ(3)は、扉体(2)が開口部(1)を閉鎖する閉じ位置と、開口部(1)を開く前後の開放位置との間で、前後の両方向に開放できるように扉体(2)を回動支持しており、
制動装置は、ピボットヒンジ(3)で支持される扉体(2)の基端部側の扉側面(2A)に設置されたリニアダンパ(7)を含む付勢体(10)と、扉側面(2A)に対峙する開口部(1)の左右の開口縦枠(1A)に固定されて、付勢体(10)の被操作部(20)を操作する操作体(8)とを備え、
付勢体(10)は、リニアダンパ(7)を構成するシリンダ(11)と、シリンダ(11)に対して出退可能に設けられたロッド(12)と、進出位置に向かう方向の付勢力をロッド(12)に付与する付勢ばね(14)と、付勢ばね(14)の付勢力を受けて扉側面(2A)から突出する被操作部(20)とを備え、
操作体(8)は、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成された操作面(22)を備えており、
前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体(2)が回動変位されるとき、被操作部(20)が操作面(22)に接触して、ロッド(12)がシリンダ(11)内に押し込まれるように構成されていることを特徴とする自閉扉の制動装置。
【請求項2】
リニアダンパ(7)を構成するロッド(12)は、付勢ばね(14)の付勢力を受けて扉側面(2A)から突出しており、当該扉側面(2A)から突出するロッド(12)の先端が被操作部(20)とされている請求項1に記載の自閉扉の制動装置。
【請求項3】
リニアダンパ(7)は、ロッド(12)が外部に突出する状態でダンパケース(16)内に収容されており、
ダンパケース(16)が締結具(19)で扉側面(2A)に固定されている請求項2に記載の自閉扉の制動装置。
【請求項4】
開口部(1)を閉鎖する扉体(2)と、当該扉体(2)を回動支持する自閉式のピボットヒンジ(3)とを備える自閉扉に適用される制動装置であって、
ピボットヒンジ(3)は、扉体(2)が開口部(1)を閉鎖する閉じ位置と、開口部(1)を開く前後の開放位置との間で、前後の両方向に開放できるように扉体(2)を回動支持しており、
制動装置は、ピボットヒンジ(3)で支持される扉体(2)の基端部側の扉側面(2A)に対峙する開口部(1)の左右の開口縦枠(1A)に設置されたリニアダンパ(7)を含む付勢体(10)と、前記扉体(2)の扉側面(2A)に設けられて、付勢体(10)の被操作部(20)を操作する操作体(8)とを備え、
付勢体(10)は、リニアダンパ(7)を構成するシリンダ(11)と、シリンダ(11)に対して出退可能に設けられたロッド(12)と、進出位置に向かう方向の付勢力をロッド(12)に付与する付勢ばね(14)と、付勢ばね(14)の付勢力を受けて開口縦枠(1A)から突出する被操作部(20)とを備え、
操作体(8)は、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成された操作面(22)を備えており、
前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体(2)が回動変位されるとき、被操作部(20)に操作面(22)が接触して、ロッド(12)がシリンダ(11)内に押し込まれるように構成されていることを特徴とする自閉扉の制動装置。
【請求項5】
リニアダンパ(7)を構成するロッド(12)は、付勢ばね(14)の付勢力を受けて開口縦枠(1A)から突出しており、当該開口縦枠(1A)から突出するロッド(12)の先端が被操作部(20)とされている請求項4に記載の自閉扉の制動装置。
【請求項6】
リニアダンパ(7)は、ロッド(12)が外部に突出する状態でダンパケース(16)に収容されており、
ダンパケース(16)が締結具(19)で開口縦枠(1A)に固定されている請求項5に記載の自閉扉の制動装置。
【請求項7】
扉体(2)が閉じ位置にあるとき、ロッド(12)の中心軸線(C)で規定されるロッド(12)の伸び方向は左右方向と一致しており、
ピポットヒンジ(3)の垂直軸を回動軸心(R)と規定したとき、
回動軸心(R)を含んで左右方向に沿う平面内に、ロッド(12)の伸び方向が含まれるように構成されている請求項1または4に記載の自閉扉の制動装置。
【請求項8】
扉体(2)が開放位置から閉じ位置に向かって回動変位する際の操作面(22)との接触に伴うロッド(12)のシリンダ(11)に対する退入量が、閉じ位置に向かうに従って漸次大きくなるように構成されている請求項1または4に記載の自閉扉の制動装置。
【請求項9】
操作面(22)と被操作部(20)とが、点接触状、或いは線接触状に接触する請求項1または4に記載の自閉扉の制動装置。
【請求項10】
操作体(8)に、被操作部(20)が係合して扉体(2)を閉じ位置で保持する係合部(25)が設けられている請求項1または4に記載の自閉扉の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を閉鎖する扉体と、この扉体を閉じ位置から前後両側に開放できるように回動支持する自閉式のピボットヒンジとを備える自閉扉に適用され、扉体の自閉速度を制動する制動装置に関する。自閉式のピボットヒンジとしては、グラビティヒンジや自由蝶番などを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
本発明の制動装置は、扉体の自閉速度の制動要素としてリニアダンパを用いるが、このようにリニアダンパを制動要素とすることは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の蝶番は、主蝶片及び副蝶片と、両蝶片の端部どうしを枢支する軸と、軸の外周に設けられる復帰ばねと、主蝶片に固定され、制動装置を構成するリニアダンパ(ショックアブソーバー)などで構成される。主蝶片はリニアダンパが埋設された状態で柱等の支持部材に取り付けられ、副蝶片は扉体(扉)に取り付けられる。扉体が閉じた状態では、リニアダンパのロッドは、副蝶片で退入側へ移動されている。この状態から扉体を開放操作すると、復帰ばねがねじり操作されて回転動力が蓄えられていくとともに、ロッドは進出限界まで徐々に進出していく。扉体の開放操作を解除すると、扉体は復帰ばねの復元力で閉じ方向に自閉し、副蝶片がロッドに接触した時点から、主蝶片に対する副蝶片の近接移動がリニアダンパで制動され、閉じ位置の直前では扉体はゆっくりと閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願昭50-118017号(実開昭52-30562号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の蝶番は、旗丁番と称されるヒンジ構造を使用している。このため、特許文献1の発明は、扉体が前後の一方へのみ開放可能に回動支持される構成の自閉扉に対しては適用可能であるものの、扉体がピボットヒンジに支持される自閉扉のように、扉体が閉じ位置から前後の両側に開放可能に回動支持される形態の自閉扉に対しては適用することができない点に不利がある。
【0005】
本発明は、扉体が閉じ位置から前後の両側に開放可能に回動支持される自閉扉に適用できる制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、開口部1を閉鎖する扉体2と、当該扉体2を回動支持する自閉式のピボットヒンジ3とを備える自閉扉に適用される制動装置を対象とする。ピボットヒンジ3は、扉体2が開口部1を閉鎖する閉じ位置と、開口部1を開く前後の開放位置との間で、前後の両方向に開放できるように扉体2を回動支持している。制動装置は、ピボットヒンジ3で支持される扉体2の基端部側の扉側面2Aに設置されたリニアダンパ7を含む付勢体10と、扉側面2Aに対峙する開口部1の左右の開口縦枠1Aに固定されて、付勢体10の被操作部20を操作する操作体8とを備える。付勢体10は、リニアダンパ7を構成するシリンダ11と、シリンダ11に対して出退可能に設けられたロッド12と、進出位置に向かう方向の付勢力をロッド12に付与する付勢ばね14と、付勢ばね14の付勢力を受けて扉側面2Aから突出する被操作部20とを備える。操作体8は、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成された操作面22を備えている。そして、前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるとき、被操作部20が操作面22に接触して、ロッド12がシリンダ11内に押し込まれるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
リニアダンパ7を構成するロッド12は、付勢ばね14の付勢力を受けて扉側面2Aから突出しており、当該扉側面2Aから突出するロッド12の先端が被操作部20とされている。
【0008】
リニアダンパ7は、ロッド12が外部に突出する状態でダンパケース16内に収容されており、ダンパケース16が締結具19で扉側面2Aに固定されている。
【0009】
別の本発明は、開口部1を閉鎖する扉体2と、当該扉体2を回動支持する自閉式のピボットヒンジ3とを備える自閉扉に適用される制動装置を対象とする。ピボットヒンジ3は、扉体2が開口部1を閉鎖する閉じ位置と、開口部1を開く前後の開放位置との間で、前後の両方向に開放できるように扉体2を回動支持している。制動装置は、ピボットヒンジ3で支持される扉体2の基端部側の扉側面2Aに対峙する開口部1の左右の開口縦枠1Aに設置されたリニアダンパ7を含む付勢体10と、前記扉体2の扉側面2Aに設けられて、付勢体10の被操作部20を操作する操作体8とを備える。付勢体10は、リニアダンパ7を構成するシリンダ11と、シリンダ11に対して出退可能に設けられたロッド12と、進出位置に向かう方向の付勢力をロッド12に付与する付勢ばね14と、付勢ばね14の付勢力を受けて開口縦枠1Aから突出する被操作部20とを備える。操作体8は、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成された操作面22を備えている。そして、前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるとき、被操作部20に操作面22が接触して、ロッド12がシリンダ11内に押し込まれるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
リニアダンパ7を構成するロッド12は、付勢ばね14の付勢力を受けて開口縦枠1Aから突出しており、当該開口縦枠1Aから突出するロッド12の先端が被操作部20とされている。
【0011】
リニアダンパ7は、ロッド12が外部に突出する状態でダンパケース16に収容されており、ダンパケース16が締結具19で開口縦枠1Aに固定されている。
【0012】
扉体2が閉じ位置にあるとき、ロッド12の中心軸線Cで規定されるロッド12の伸び方向は左右方向と一致している。ピポットヒンジ3の垂直軸を回動軸心Rと規定したとき、回動軸心Rを含んで左右方向に沿う平面内に、ロッド12の伸び方向が含まれるように構成されている。
【0013】
扉体2が開放位置から閉じ位置に向かって回動変位する際の操作面22との接触に伴うロッド12のシリンダ11に対する退入量が、閉じ位置に向かうに従って漸次大きくなるように構成されている。
【0014】
操作面22と被操作部20とは、点接触状、或いは線接触状に接触する。
【0015】
操作体8に、被操作部20が係合して扉体2を閉じ位置で保持する係合部25が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のように、制動装置をピボットヒンジ3で支持される扉体2の基端部側の扉側面2Aに設置されたリニアダンパ7を含む付勢体10と、扉側面2Aに対峙する開口部1の左右の開口縦枠1Aに固定されて、付勢体10の被操作部20を操作する操作体8とを備えるものとし、前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるとき、付勢体10の被操作部20が操作体8の操作面22に接触して、ロッド12がシリンダ11内に押し込まれるように構成されていると、前側に開放された扉体2が閉じ位置へと向かう際には、扉側面2Aから突出する被操作部20を後方向へ形成された操作面22に接触させることができ、また、後側に開放された扉体2が閉じ位置へと向かう際には、扉側面2Aから突出する被操作部20を前方向へ形成された操作面22に接触させることができる。以上のように、本発明の制動装置によれば、扉体2が前後の両側に開放され、閉じ位置へと向かう際に、被操作部20を操作面22に接触させて、リニアダンパ7を含む付勢体10により扉体2の自閉速度を制動することができる。また、自閉する扉体2の回動変位に伴って被操作部20が操作面22に接触するので、別途制動動作を実行させる機構を設ける必要もない。したがって、本発明の制動装置は、扉体2が閉じ位置から前後の両側に開放可能に回動支持される自閉扉に好適に適用できる。
【0017】
具体的には、リニアダンパ7を構成するロッド12が付勢ばね14の付勢力を受けて扉側面2Aから突出しており、この扉側面2Aから突出するロッド12の先端が被操作部20とされていると、前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるとき、ロッド12の先端が操作体8の操作面22に接触して、ロッド12がシリンダ11内に押し込まれて、扉体2の自閉速度を制動することができる。
【0018】
リニアダンパ7がロッド12が外部に突出する状態でダンパケース16に収容されており、ダンパケース16が締結具19で扉側面2Aに固定されていると、取付構造を備える専用のリニアダンパを用意することなく、取付構造を備えていない、一般に流通しているリニアダンパ7を使用して制動装置4を構成することができるので、制動装置4のコスト上昇を抑えることができる。
【0019】
本発明のように、制動装置をピボットヒンジ3で支持される扉体2の基端部側の扉側面2Aに対峙する開口部1の左右の開口縦枠1Aに設置されたリニアダンパ7を含む付勢体10と、扉体2の扉側面2Aに設けられて、付勢体10の被操作部20を操作する操作体8とを備えるものとし、前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるとき、進出位置において扉側面2Aから突出する被操作部20に、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成された操作体8の操作面22が接触して、ロッド12がシリンダ11内に押し込まれるように構成されていると、前側に開放された扉体2が閉じ位置へと向かう際には、開口縦枠1Aから突出する被操作部20に後方向へ形成された操作面22を接触させることができ、また、後側に開放された扉体2が閉じ位置へと向かう際には、開口縦枠1Aから突出する被操作部20に前方向へ形成された操作面22を接触させることができる。以上のように、本発明の制動装置によれば、扉体2が前後の両側に開放され、閉じ位置へと向かう際に、被操作部20に操作面22を接触させて、リニアダンパ7を含む付勢体10により扉体2の自閉速度を制動することができる。また、自閉する扉体2の回動変位に伴って被操作部20に操作面22が接触するので、別途制動動作を実行させる機構を設ける必要もない。したがって、本発明の制動装置は、扉体2が閉じ位置から前後の両側に開放可能に回動支持される自閉扉に好適に使用できる。
【0020】
具体的には、リニアダンパ7を構成するロッド12が、付勢ばね14の付勢力を受けて開口縦枠1Aから突出しており、この開口縦枠1Aから突出するロッド12の先端が被操作部20とされていると、前後の両方向の開放位置から閉じ位置へと扉体2が向かって扉体2が回動変位されるとき、ロッド12の先端を操作体8の操作面に接触させて、ロッド12がシリンダ11内に押し込まれて、扉体2の自閉速度を制動することができる。
【0021】
リニアダンパ7がロッド12が外部に突出する状態でダンパケース16に収容されており、ダンパケース16が締結具19で開口縦枠1Aに固定されていると、取付構造を備える専用のリニアダンパを用意することなく、取付構造を備えていない、一般に流通しているリニアダンパ7を使用して制動装置4を構成することができるので、制動装置4のコスト上昇を抑えることができる。
【0022】
扉体2が閉じ位置にあるとき、ロッド12の中心軸線Cで規定されるロッド12の伸び方向は左右方向と一致しており、ピポットヒンジ3の垂直軸を回動軸心Rと規定したとき、回動軸心Rを含んで左右方向に沿う平面内に、ロッド12の伸び方向が含まれるように構成されていると、平面視において、前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるときのロッド12の軌跡を、回動軸心Rを含んで左右方向に沿う平面の前後で線対称状にすることができる。これによれば、例えば、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成された操作面22の形状を同一形状とすることで、前側の開放位置から閉じ位置へと向かう際におけるロッド12と操作面22との接触形態と、後側の開放位置から閉じ位置へと向かう際におけるロッド12と操作面22との接触形態とを、容易に一致させることができる。したがって、制動装置4による制動性能をより容易に設定することができる。
【0023】
扉体2が開放位置から閉じ位置に向かって回動変位する際の操作面22との接触に伴うロッド12のシリンダ11に対する退入量が、閉じ位置に向かうに従って漸次大きくなるように構成されていると、シリンダ11にロッド12を徐々に押し込ませることができるので、制動時の扉体2の動きがぎくしゃくすることを防ぐことができる。また、ロッド12がシリンダ11に対して徐々に押し込まれるようにしていると、ロッド12に大きな衝撃や負荷が作用すること抑えて、リニアダンパ7が破損することを抑えることができる。
【0024】
操作面22と被操作部20とが、点接触状、或いは線接触状に接触するように構成されていると、操作面22と被操作部20との間の摩擦力を低減することができるので、操作面22と被操作部20とをスムーズに摺動させて、制動時の扉体2の動きがぎくしゃくすることを防ぐことができる。
【0025】
操作体8に、被操作部20が係合して、扉体2を閉じ位置で保持する係合部25が設けられていると、ピボットヒンジ3に由来する閉じ位置における扉体2の保持に加え、制動装置4でも扉体2を閉じ位置に保持することができるので、扉体2を閉じ位置で適正に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る自閉扉の制動装置の要部を示す横断平面図であり、図3におけるA-A線断面図である。
図2】同制動装置が適用されたスイングドアの正面図である。
図3】同制動装置が適用されたスイングドアの縦断正面図である。
図4】扉体の制動動作を説明するための図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る自閉扉の制動装置の要部を示す横断平面図である。
図6】同制動装置が適用されたスイングドアの縦断正面図である。
図7】扉体の制動動作を説明するための図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る自閉扉の制動装置の要部を示す横断平面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る自閉扉の制動装置の要部を示す横断平面図である。
図10】本発明の第5実施形態に係る自閉扉の制動装置の要部を示す横断平面図である。
図11】本発明の第6実施形態に係る自閉扉の制動装置の要部を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態) 図1から図4に、本発明に係る自閉扉の制動装置をスイングドアに適用した第1実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、図面に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2においてスイングドアは、壁面に開口された開口部1を閉鎖するように設けられるものであり、左右一対の扉体2・2と、開口部1の左右に固定されて、各扉体2を回動自在に支持するピボットヒンジ3と、各扉体2の自閉速度を制動する制動装置4などで構成される。開口部1の左右は、開口縦枠1A・1Aで区画され、上下は開口横枠1B及び床面で区画されている。
【0028】
図2に示すようにピボットヒンジ3は、グラビティヒンジからなる上下一対のヒンジ体3A・3Bで構成されており、各扉体2の外側端の上下を支持している。具体的には、左側の扉体2は左側の側端がピボットヒンジ3で支持されており、右側の扉体2は右側の側端がピボットヒンジ3で支持されている。ピボットヒンジ3で支持される各扉体2は、開口部1を閉鎖する閉じ位置と、開口部1を開く前後の開放位置との間で、前後の両方向に開放できるように構成されている。図1及び図3に示すように、ピボットヒンジ3の垂直軸からなる回動軸心Rは、扉体2の左右幅の内側かつ厚み方向の中央位置に配されており、各扉体2は、回動軸心Rまわりに前側(手前側)及び後側(奥側)の前後方向に回動可能に上下のヒンジ体3A・3Bで支持されている。常態における扉体2は、グラビティヒンジの構造に由来する自閉作用により開口部1を閉鎖する閉じ位置に保持されている。閉じ位置から前側或いは後側に回動操作されて開放位置へと変位された扉体2は、その回動操作を解除すると、自重とグラビティヒンジの作用により、閉じ位置側に自動で回動(自閉)して閉じ位置へ復帰する。
【0029】
例えば、制動装置4を備えていないスイングドアでは、扉体2を後側に開放したのち回動操作を解除すると、扉体2は自閉速度の勢いで閉じ位置よりも前側まで回動し、さらに勢いが残っていれば、再度閉じ位置よりも後側まで回動する。これを繰り返しながらピボットヒンジ3の内部摩擦で徐々に扉体2の自閉速度が減衰され、最終的に扉体2は閉じ位置で停止する。このような往復回動を早期に収束して、扉体2が閉じ位置に停止するまでに要する時間を短縮するために制動装置4が設けられている。本実施形態では、左右の扉体2・2は、左右勝手違いの構造であるため、以下では左側の扉体2についてのみ説明し、右側の扉体2については説明を省略する。
【0030】
図3に示すように制動装置4は、扉体2の上下にそれぞれ設けられて、ピボットヒンジ3に由来する扉体2の自閉速度を制動するものであり、扉体2に設置されるリニアダンパ7を含む付勢体10と、開口部1に固定される操作体8とを備えている。付勢体10は、回動軸心Rが配される左側の扉側面2Aに設けられ、操作体8は、扉側面2Aに対峙する左側の開口縦枠1Aに設けられている。
【0031】
図1に示すようにリニアダンパ7は、扉体2に固定される中空筒状のシリンダ11と、シリンダ11に対して出退自在に設けられるロッド12と、シリンダ11とロッド12との間に設けられ、ロッド12に減衰力を作用させる減衰構造13と、進出位置に向かう付勢力をロッド12に付与する付勢ばね14とを備えている。ロッド12はシリンダ11よりも小径の丸軸からなり、一端がシリンダ11から突出している。シリンダ11の内部に位置する他端には、シリンダ11の内径と略同一の外径を有し、シリンダ11内を摺動するピストン15が設けられている。付勢ばね14は圧縮コイルばねからなり、シリンダ11の底壁とピストン15との間に配されている。
【0032】
本実施形態のリニアダンパ7は、減衰構造13を備えるオイルダンパと称される、一般に流通している公知のもので構成される。具体的には、リニアダンパ7の減衰構造13は、減衰機構(不図示)と付勢ばね14とで構成されている。減衰機構13は、シリンダ11とピストン15とで区画される内部空間に充填された粘性流体と、ピストン15に設けられたオリフィスを備える流体通路からなる。常態におけるロッド12は、付勢ばね14の付勢力で、ピストン15がシリンダ11の一方端に押圧されて限界まで進出している進出位置に位置しており、シリンダ11に対してロッド12が押し込まれるとき、減衰構造13によりロッド12の退入移動に抵抗力が作用する。シリンダ11から突出するロッド12の先端は、半球状に形成されており、この先端が操作体8により操作される被操作部20とされている。
【0033】
リニアダンパ7は、ロッド12が外部に突出する状態でダンパケース16に収容されている。ダンパケース16は、シリンダ11を内包する中空筒状のケース本体17と、ケース本体17の一端(左端)に張り出し形成されるフランジ部18とで構成されており、フランジ部18側のシリンダ11の端部からロッド12が突出されている。ダンパケース16は、前後に分割された同一形状の半割体を接合して形成される。リニアダンパ7を収容したダンパケース16は、扉側面2Aに凹み形成された装着穴2Bにケース本体17が差し込まれ、フランジ部18をビス(締結具)19で扉側面2Aに締結することにより扉体2に固定される。扉体2に対してリニアダンパ7は、扉体2が閉じ位置にあるとき、ロッド12の中心軸線Cで規定されるロッド12の伸び方向は左右方向(水平方向)と一致しており、さらに回動軸心Rを含んで左右方向に沿う平面内に、ロッド12の伸び方向が含まれるように設置されている。扉体2に設置されたリニアダンパ7は、そのロッド12が扉側面2Aから突出している。
【0034】
図1に示すように操作体8は、左右に偏平な四角ブロック状に形成されており、操作体8の右側面には、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に操作面22が形成されている。具体的には、前後の操作面22の全体は、平面視において左側に窪む円弧状の湾曲面で構成されており、前方向及び後方向の操作面22は、回動軸心Rを通る左右方向に伸びる直線(ロッド12の中心軸線C)を対称線とする線対称状に形成されている。操作体8の右側面の四隅部には、操作体8を左右方向に貫通するビス孔23が形成されており、開口部1に対して操作体8は、ビス孔23を介して開口縦枠1Aにねじ込まれるビス24で締結される。リニアダンパ7のロッド12の中心軸線Cと操作体8の上下方向の中央とは同じ高さ位置に配される(図3参照)。
【0035】
前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるとき、進出位置にあるロッド12は操作面22に接触して、当該ロッド12がシリンダ11内に押し込まれる。図1及び図4において、付勢ばね14で進出位置へ変位されたロッド12の先端(被操作部20)の回転軌跡をロッド回転軌跡Tと規定したとき、操作体8は、前後に開放された扉体2が閉じ位置に至る所定角度手前から閉じ位置に掛けて回動する際にロッド12が変位する領域において、ロッド回転軌跡Tに重なるように設けられている。本実施形態では、扉体2の閉じ位置を間にして前後方向にそれぞれ約30度ずつ扉体2が回動変位する範囲において、ロッド回転軌跡Tの内側に操作体8が重なっており、当該ロッド回転軌跡Tに重なる操作体8の右側面に操作面22が存在する。扉体2が開放位置から閉じ位置に向かって回動変位する際の操作面22との接触に伴うロッド12のシリンダ11に対する退入量は、閉じ位置に向かうに従って漸次大きくなるように構成されている。このとき、ロッド12の先端は、半球状に形成されているので、ロッド12(被操作部20)と操作面22とは点接触状に接触する。
【0036】
操作面22は、扉体2の閉じ位置を間にして前後方向に扉体2がそれぞれ20度以上、35度以下の範囲で回動変位したときに、ロッド回転軌跡Tに重なることが望ましい。これは、ロッド回転軌跡Tに重なる操作体8の範囲が閉じ位置から20度未満であると制動に必要な回動角度が不足し、十分に扉体2の自閉速度を制動できないことに拠る。また、ロッド回転軌跡Tに重なる操作体8の範囲が閉じ位置から35度を超えると、扉体2が制動される回動角度が大きく、扉体2が閉じ位置に至るまでの時間が長大化することに拠る。
【0037】
前方向及び後方向の操作面22の境界には、上下方向に伸びる係合溝(係合部)25が凹み形成されており、この係合溝25には、扉体2が閉じ位置にあるときロッド12の先端が係合する。ロッド12と係合溝25とは、扉体2が閉じ位置へと回動してきた際に、操作面22に接触するロッド12が進出することにより係合する。閉じ位置にある扉体2は、ピボットヒンジ3の自閉作用に加え、ロッド12と係合溝25とが係合することによって保持されている。
【0038】
図1に示す閉じ位置にある扉体2は、ピボットヒンジ3の自閉作用と、ロッド12と係合溝25との係合により保持されており、この状態から例えば、扉体2を後側(奥側)に開放する際には、ユーザーは、ピボットヒンジ3及びロッド12と係合溝25との係合による扉体2の保持力に逆らって、扉体2を手で奥側へ押し込む。以上のような扉体2の押し込みによって、ロッド12は係合溝25の溝縁に押し付けられ、その押し付け反力によりロッド12が退入移動することで、ロッド12は扉体2の回動に伴って係合溝25から分離する。このとき、扉体2の回動先端寄りを押し込み操作することにより、扉体2の回動軸心Rから操作位置までの距離を、扉体2の回動軸心Rからロッド12の先端までの距離に比べて十分に大きくすることができ、比較的軽い操作力でもロッド12を係合溝25から分離して、扉体2を開放操作することができる。ロッド12と係合溝25との係合が解除されたのちは、ピボットヒンジ3の自閉作用に逆らってさらに扉体2を押し続けることにより、扉体2を開放することができる。扉体2を開放するに従って、ロッド12は付勢ばね14の付勢力により進出方向に移動して、操作面22に接触していない状態では進出位置まで変位される。
【0039】
次いで、図4を用いて制動装置4による扉体2の制動動作について説明する。ユーザーが扉体2を開放した手を離すと、扉体2はピボットヒンジ3の自閉作用で閉じ方向へ向かって前側(手前側)に回動する。自閉する扉体2は閉じ位置の直前で、図4(a)に示すように、リニアダンパ7のロッド12の先端が操作体8の前側の操作面22に接触する。先に説明したように、操作面22との接触に伴うロッド12のシリンダ11に対する退入量は、閉じ位置に向かうに従って漸次大きくなるように構成されているため、操作面22に接触したロッド12は、図4(b)に示すように扉体2の回動に伴って操作面22上を摺動しつつ漸次押し込まれ、このロッド12の退入時の抵抗により扉体2の自閉速度が制動される。
【0040】
1度の制動で扉体2の自閉速度が十分に制動された場合には、閉じ位置でロッド12が係合溝25に係合することにより、扉体2は閉じ位置で保持される。1度の制動で扉体2の自閉速度が十分に制動されなかった場合には、扉体2は閉じ位置よりも前側まで回動し、ピボットヒンジ3の自閉作用で再び閉じ方向に向かって後側に自閉され、その後、上記と同様の動作により扉体2の自閉速度が制動され、最終的に閉じ位置でロッド12が係合溝25に係合されて、扉体2は閉じ位置で保持される。
【0041】
以上のように、本実施形態の制動装置4においては、扉体2が前後の両側に開放され、閉じ位置へと向かう際に、ロッド12を操作面22に接触させて、リニアダンパ7により扉体2の自閉速度を制動することができる。また、自閉する扉体2の回動変位に伴ってロッド12が操作面22に接触するので、別途制動動作を実行させる機構を設ける必要もない。したがって、本実施形態の制動装置4は、扉体2が閉じ位置から前後の両側に開放可能に回動支持される自閉扉に好適に適用できる。
【0042】
ロッド12が外部に突出する状態でリニアダンパ7を収容するダンパケース16をビス19で扉側面2Aに固定したので、取付構造を備える専用のリニアダンパを用意することなく、取付構造を備えていない、一般に流通しているリニアダンパ7を使用して制動装置4を構成して、制動装置4のコスト上昇を抑えることができる。
【0043】
扉体2が閉じ位置にあるとき、ロッド12の中心軸線Cで規定されるロッド12の伸び方向は左右方向と一致しており、ピポットヒンジ3の垂直軸を回動軸心Rと規定したとき、回動軸心Rを含んで左右方向に沿う平面内に、ロッド12の伸び方向が含まれるように構成したので、平面視において、前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるときのロッド12の軌跡を、回動軸心Rを含んで左右方向に沿う平面の前後で反転させたものとすることができる。これによれば、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成された操作面22の形状を同一形状とすることで、前側の開放位置から閉じ位置へと向かう際におけるロッド12と操作面22との接触形態と、後側の開放位置から閉じ位置へと向かう際におけるロッド12と操作面22との接触形態とを、容易に一致させることができる。したがって、制動装置4による制動性能をより容易に設定することができる。
【0044】
扉体2が開放位置から閉じ位置に向かって回動変位する際の操作面22との接触に伴うロッド12のシリンダ11に対する退入量を、閉じ位置に向かうに従って漸次大きくなるように構成したので、シリンダ11にロッド12を徐々に押し込ませることができ、制動時において扉体2の動きがぎくしゃくすることを防ぐことができる。また、このようにロッド12がシリンダ11に対して徐々に押し込まれると、ロッド12に大きな衝撃や負荷が作用することを解消して、リニアダンパ7が破損することを抑えることができる。
【0045】
操作面22とロッド12とを、点接触状、或いは線接触状に接触するように構成したので、操作面22とロッド12との間の摩擦力を低減して、操作面22とロッド12とをスムーズに摺動させて、制動時の扉体2の動きがぎくしゃくすることを防ぐことができる。
【0046】
操作体8に扉体2を閉じ位置で保持する係合溝25を設けたので、ピボットヒンジ3に由来する閉じ位置における扉体2の保持に加え、制動装置4でも扉体2を閉じ位置に保持して、扉体2を閉じ位置で適正に保持することができる。
【0047】
(第2実施形態) 図5から図7に、本発明に係る自閉扉の制動装置をスイングドアに適用した第2実施形態を示す。本実施形態では、制動装置4の付勢体10を構成するリニアダンパ7が開口部1に設置され、操作体8が扉体2に固定されている点が、先の第1実施形態と相違する。
【0048】
図5及び図6に示すように、リニアダンパ7を収容したダンパケース16は、開口縦枠1Aに凹み形成された装着穴1Cにケース本体17が差し込まれ、フランジ部18をビス(締結具)19で開口縦枠1Aに締結することにより開口部1に固定される。開口縦枠1Aに対してリニアダンパ7は、扉体2が閉じ位置にあるとき、ロッド12の中心軸線Cで規定されるロッド12の伸び方向は左右方向(水平方向)と一致しており、さらに回動軸心Rを含んで左右方向に沿う平面内に、ロッド12の伸び方向が含まれるように設置されている。開口部1に設置されたリニアダンパ7は、そのロッド12が開口縦枠1Aから突出している。
【0049】
図5に示すように操作体8は、左側に円弧部を持つ弓形に形成されており、操作体8の左側面には、左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に操作面22が形成されている。具体的には、前後の操作面22の全体は、平面視において左側に膨らむ円弧状の湾曲面で構成されており、前方向及び後方向の操作面22は、回動軸心Rを通る左右方向に伸びる直線(ロッド12の中心軸線C)を対称線とする線対称状に形成されている。操作体8の左側面の四隅部には、操作体8を左右方向に貫通するビス孔23が形成されており、扉体2に対して操作体8は、ビス孔23を介して扉側面2Aにねじ込まれるビス24で締結され、扉体2に固定される。リニアダンパ7のロッド12の中心軸線Cと操作体8の上下方向の中央とは同じ高さ位置に配される(図3参照)。
【0050】
前後の両方向の開放位置から閉じ位置に向かって扉体2が回動変位されるとき、進出位置にあるロッド12は操作面22に接触して、当該ロッド12がシリンダ11内に押し込まれる。図7に示すように、平面視において進出位置にあるロッド12の外郭縁で囲まれる領域をロッド投影領域Pと規定したとき、操作体8は、前後に開放された扉体2が閉じ位置に至る所定角度手前から閉じ位置に掛けて回動するときにロッド12が変位する領域において、ロッド投影領域Pに重なるように設けられている。本実施形態では、扉体2の閉じ位置を間にして前後方向にそれぞれ約25度ずつ扉体2が回動変位する範囲において、ロッド投影領域Pの内側に操作体8が重なっており、当該ロッド投影領域Pに重なる操作体8の左側面に操作面22が存在する。扉体2が開放位置から閉じ位置に向かって回動変位する際の操作面22との接触に伴うロッド12のシリンダ11に対する退入量は、閉じ位置に向かうに従って漸次大きくなるように構成されている。その他の点は、先の第1実施形態と同じであるので、同一の構成、構造、および部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0051】
操作体8は、扉体2の閉じ位置を間にして前後方向に扉体2がそれぞれ20度以上、35度以下の範囲で回動変位するときに、ロッド投影領域Pに重なることが望ましい。これは、ロッド投影領域Pに重なる操作体8の範囲が閉じ位置から20度未満であると制動に必要な回動角度が不足し、十分に扉体2の自閉速度を制動できないことに拠る。また、ロッド投影領域Pに重なる操作体8の範囲が閉じ位置から35度を超えると、扉体2が制動される回動角度が大きく、扉体2が閉じ位置に至るまでの時間が長大化することに拠る。
【0052】
閉じ位置(図5参照)にある扉体2を開放する動作は先の第1実施形態を同様である。ユーザーが扉体2を開放した手を離すと、扉体2はピボットヒンジ3の自閉作用で閉じ方向へ向かって前側(手前側)に回動する。図7(a)に示すように、自閉する扉体2は閉じ位置の直前で、リニアダンパ7のロッド12の先端に操作体8の後側の操作面22が接触する。先に説明したように、操作面22との接触に伴うロッド12のシリンダ11に対する退入量は、閉じ位置に向かうに従って漸次大きくなるように構成されているので、ロッド12に接触した操作面22は、図7(b)に示すように扉体2の回動に伴ってロッド12の先端を摺動しつつ漸次押し込み、このロッド12の退入時の抵抗により扉体2の自閉速度が制動される。
【0053】
以上のように、本実施形態の制動装置4においては、扉体2が前後の両側に開放され、閉じ位置へと向かう際に、ロッド12を操作面22に接触させて、リニアダンパ7により扉体2の自閉速度を制動することができる。また、自閉する扉体2の回動変位に伴ってロッド12が操作面22に接触するので、別途制動動作を実行させる機構を設ける必要もない。したがって、本実施形態の制動装置4は、扉体2が閉じ位置から前後の両側に開放可能に回動支持される自閉扉に好適に適用できる。
【0054】
ロッド12が外部に突出する状態でリニアダンパ7を収容するダンパケース16をビス19で開口縦枠1Aに固定したので、取付構造を備える専用のリニアダンパを用意することなく、取付構造を備えていない、一般に流通しているリニアダンパ7を使用して制動装置4を構成して、制動装置4のコスト上昇を抑えることができる。
【0055】
(第3実施形態) 図8に、本発明に係る自閉扉の制動装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態の制動装置4では、扉体2に固定される付勢体10の構成が先の第1実施形態と相違する。具体的には、先の第1実施形態では、リニアダンパ7を構成するロッド12が、付勢ばね14の付勢力を受けて扉側面2Aから突出しており、この扉側面2Aから突出するロッド12の先端が被操作部20とされていたのに対して、この第3実施形態では、リニアダンパ7を構成するシリンダ11が、付勢ばね14の付勢力を受けて扉側面2Aから突出しており、この扉側面2Aから突出するシリンダ11の先端が被操作部20とされている。シリンダ11の先端は、半球状に形成されている。
【0056】
(第4実施形態) 図9に、本発明に係る自閉扉の制動装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態の制動装置4では、扉体2に固定される付勢体10の構成が先の第3実施形態と相違する。具体的には、先の第3実施形態では、リニアダンパ7を構成するシリンダ11の先端が扉側面2Aから突出して被操作部20とされていたのに対して、この第4実施形態では、付勢体10の先端に、リニアダンパ7で押圧される押圧片30を設けて、この押圧片30の先端が扉側面2Aから突出する被操作部20とされている。具体的には、付勢体10は、中空筒状のケース本体17と、ケース本体17の一端(左端)に張り出し形成されるフランジ部18とで構成されるダンパケース16と、ケース本体17内に収納されるリニアダンパ7と押圧片30とで構成される。押圧片30は、ケース本体17内の一端(左端)側に左右方向にスライド可能に配設されており、その先端は、ダンパケース16の一端(左端)から突出するとともに、扉側面2Aから突出している。この押圧片30の先端は、操作体8により操作される被操作部20とされている。
【0057】
(第5実施形態) 図10に、本発明に係る自閉扉の制動装置の第5実施形態を示す。この第5実施形態の制動装置4では、開口縦枠1Aに固定される付勢体10の構成が先の第2実施形態と相違する。具体的には、先の第2実施形態では、リニアダンパ7を構成するロッド12が、付勢ばね14の付勢力を受けて開口縦枠1Aから突出しており、この開口縦枠1Aから突出するロッド12の先端が被操作部20とされていたのに対して、この第5実施形態では、リニアダンパ7を構成するシリンダ11が、付勢ばね14の付勢力を受けて開口縦枠1Aから突出しており、この開口縦枠1Aから突出するシリンダ11の先端が被操作部20とされている。シリンダ11の先端は、半球状に形成されている。
【0058】
(第6実施形態) 図11に、本発明に係る自閉扉の制動装置の第6実施形態を示す。この第6実施形態の制動装置4では、開口縦枠1Aに固定される付勢体10の構成が先の第5実施形態と相違する。具体的には、先の第5実施形態では、リニアダンパ7を構成するシリンダ11の先端が開口縦枠1Aから突出して被操作部20とされていたのに対して、この第6実施形態では、付勢体10の先端に、リニアダンパ7で押圧される押圧片30を設けて、この押圧片30の先端が開口縦枠1Aから突出する被操作部20とされている。具体的には、付勢体10は、中空筒状のケース本体17と、ケース本体17の一端(右端)に張り出し形成されるフランジ部18とで構成されるダンパケース16と、ケース本体17内に収納されるリニアダンパ7と押圧片30とで構成される。押圧片30は、ケース本体17内の一端(右端)側に左右方向にスライド可能に配設されており、その先端は、ダンパケース16の一端(右端)から突出するとともに、開口縦枠1Aから突出している。この押圧片30の先端は、操作体8により操作される被操作部20とされている。
【0059】
上記実施形態では、扉体2に2個の制動装置4を設けたが、扉体2の自重やリニアダンパ7の制動力に応じて、制動装置4を設ける数を適宜変更することができる。左右方向を挟んで前方向と後方向の両方向に形成される操作面22は、線対称状ではなく異なる形状に形成することもできる。この場合には、前側の開放位置から閉じ位置へ向かうときの制動動作(制動力や制動距離)と、後側の開放位置から閉じ位置へ向かうときの制動動作とを異なるものとすることができる。リニアダンパ7の減衰構造13は、粘性流体を用いるものとしたが、気体を用いた制動構造や、その他公知の制動構造を備えるものであってもよい。減衰構造13による抵抗力は、一定に発揮されるもの以外に、ロッド12の位置によって抵抗力が可変するものであってもよい。ロッド12は、先端に垂直軸まわりに回転可能なローラーを設けて、該ローラーを被操作部20として操作面22に接触させることもできる。このとき、ローラーを円柱状に形成した場合には、ローラー(被操作部20)と操作面22とは線接触状に接触し、ローラーをそろばん玉状に形成した場合には、ローラー(被操作部20)と操作面22とは点接触状に接触する。
【符号の説明】
【0060】
1 開口部
1A 開口縦枠
2 扉体
2A 扉側面
3 ピボットヒンジ
7 リニアダンパ
8 操作体
10 付勢体
11 シリンダ
12 ロッド
14 付勢ばね
16 ダンパケース
20 被操作部
22 操作面
25 係合部
C ロッドの中心軸線
R ピポットヒンジの回動軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11