(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177886
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】シミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096273
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】徳田 茂史
(72)【発明者】
【氏名】松本 健介
(72)【発明者】
【氏名】門井 優文
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 吉雄
(72)【発明者】
【氏名】伴 拓実
(72)【発明者】
【氏名】ショウ アンビ
(72)【発明者】
【氏名】加賀 智之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英男
(72)【発明者】
【氏名】宮原 謙太
(72)【発明者】
【氏名】山内 慎祐
(57)【要約】
【課題】前後に連続する作業間の連携を効果的に学習することができる技術を提供する。
【解決手段】シミュレーションシステムは、前後に連続する第1作業と第2作業を含む作業ラインのシミュレーションを行う。第1モデル動作は、第1対象作業者が第1作業の結果物を第2対象作業者に渡す際の手本となる動作を含む。第2モデル動作は、第2対象作業者が第1対象作業者から第1作業の結果物を受け取る際の手本となる動作を含む。仮想空間において第1対象作業者が第1作業に関連する動作を行う際、シミュレーションシステムは、第1モデル動作を行う第1モデル作業者を描画する。仮想空間において第2対象作業者が第2作業に関連する動作を行う際、シミュレーションシステムは、第2モデル動作を行う第2モデル作業者を描画する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間において作業ラインのシミュレーションを行うシミュレーションシステムであって、
前記作業ラインは、第1対象作業者が行う第1作業と、第2対象作業者が前記第1作業の結果物に対して行う第2作業とを含み、
第1モデル動作は、前記第1対象作業者が前記第1作業の前記結果物を前記第2対象作業者に渡す際の手本となる動作を含み、
第2モデル動作は、前記第2対象作業者が前記第1対象作業者から前記第1作業の前記結果物を受け取る際の手本となる動作を含み、
前記シミュレーションシステムは、1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記第1モデル動作と前記第2モデル動作の組み合わせを決定し、
前記仮想空間において前記第1対象作業者が前記第1作業に関連する動作を行う際、前記仮想空間において前記第1モデル動作を行う第1モデル作業者を描画し、
前記仮想空間において前記第2対象作業者が前記第2作業に関連する動作を行う際、前記仮想空間において前記第2モデル動作を行う第2モデル作業者を描画する
ように構成された
シミュレーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシミュレーションシステムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記第1対象作業者の第1特性と前記第2対象作業者の第2特性の少なくとも一方を示す特性情報を取得し、
前記第1特性と前記第2特性の前記少なくとも一方に基づいて、前記第1モデル動作と前記第2モデル動作の前記組み合わせを決定する
シミュレーションシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシミュレーションシステムであって、
前記特性情報は、少なくとも、前記第1対象作業者の前記第1特性を示し、
前記1又は複数のプロセッサは、前記第1対象作業者の前記第1特性に基づいて、前記第1作業の前記結果物を渡す際の前記第1対象作業者の負荷が閾値未満となるように前記第1モデル動作と前記第2モデル動作の前記組み合わせを決定する
シミュレーションシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のシミュレーションシステムであって、
前記特性情報は、少なくとも、前記第2対象作業者の前記第2特性を示し、
前記1又は複数のプロセッサは、前記第2対象作業者の前記第2特性に基づいて、前記第1作業の前記結果物を受け取る際の前記第2対象作業者の負荷が閾値未満となるように前記第1モデル動作と前記第2モデル動作の前記組み合わせを決定する
シミュレーションシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシミュレーションシステムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記仮想空間において前記第1対象作業者が前記第1作業の前記結果物を前記第2対象作業者に渡す際の第1動作の情報を取得し、
前記第1モデル動作からの前記第1動作の乖離度が閾値を超えた場合、前記第1動作によって渡される前記第1作業の前記結果物を受け取るように前記第2モデル動作を補正する
シミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮想空間において作業ラインのシミュレーションを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、学習支援システムを開示している。学習支援システムは、学習者の動作のお手本となる指導者のお手本動画を、学習者の視野映像に重ね合わせて表示する。学習者の基本情報は、学習者の年齢、利き手、視力、握力、等を含む。学習支援システムは、学習者の基本情報に応じて、お手本動画の表示内容を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業ラインでは、前後に連続する作業間の連携があり得る。本開示の1つの目的は、前後に連続する作業間の連携を効果的に学習することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの観点は、仮想空間において作業ラインのシミュレーションを行うシミュレーションシステムに関する。
作業ラインは、第1対象作業者が行う第1作業と、第2対象作業者が第1作業の結果物に対して行う第2作業とを含む。
第1モデル動作は、第1対象作業者が第1作業の結果物を第2対象作業者に渡す際の手本となる動作を含む。
第2モデル動作は、第2対象作業者が第1対象作業者から第1作業の結果物を受け取る際の手本となる動作を含む。
シミュレーションシステムは、1又は複数のプロセッサを備える。
1又は複数のプロセッサは、第1モデル動作と第2モデル動作の組み合わせを決定する。
仮想空間において第1対象作業者が第1作業に関連する動作を行う際、1又は複数のプロセッサは、仮想空間において第1モデル動作を行う第1モデル作業者を描画する。
仮想空間において第2対象作業者が第2作業に関連する動作を行う際、1又は複数のプロセッサは、仮想空間において第2モデル動作を行う第2モデル作業者を描画する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、第1モデル動作を行う第1モデル作業者と第2モデル動作を行う第2モデル作業者が仮想空間に描画される。第1モデル動作は、第1対象作業者が第1作業の結果物を第2対象作業者に渡す際の手本となる動作を含む。第2モデル動作は、第2対象作業者が第1対象作業者から第1作業の結果物を受け取る際の手本となる動作を含む。これにより、第1対象作業者と第2対象作業者は、第1作業と第2作業との間の効率的な連携を効果的に学習することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係るシミュレーションシステムの概要を説明するための概念図である。
【
図2】実施の形態に係るシミュレーションシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】作業ラインにおいて前後に連続する作業間の連携を説明するための概念図である。
【
図4】実施の形態に係る作業ラインのシミュレーションを説明するための概念図である。
【
図5】実施の形態に係る作業ラインのシミュレーションの変形例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.シミュレーションシステムの概要
実空間において作業者が行う所定の作業について考える。例えば、所定の作業は、実工場において行われる。所定の作業は、例えば、部品の組み立てである。本実施の形態によれば、所定の作業を行う作業者の訓練(学習)を効率的に行うために、シミュレーションが活用される。
【0009】
図1は、本実施の形態に係るシミュレーションシステム100の概要を説明するための概念図である。シミュレーションシステム100は、作業者が行う所定の作業についてのシミュレーションを仮想空間において行う。そのために、シミュレーションシステム100は、作業者が所定の作業を行う作業環境を仮想空間内に仮想的に再現する。例えば、シミュレーションシステム100は、DigitalTwin技術に基づいて、作業環境を仮想空間内に再現(描画)する。例えば、シミュレーションシステム100は、実工場を模擬した仮想工場(DigitalTwin工場)を仮想空間内に再現する。
【0010】
訓練対象の作業者(以下、「対象作業者TW」と呼ぶ)は、体験デバイスを利用することによって、仮想空間において所定の作業を体験することができる。例えば、体験デバイスは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のウェアラブルデバイスである。ヘッドマウントディスプレイは、シミュレーションシステム100によって再現される仮想空間を表示する。実空間における対象作業者TWの動作(例:手の動作)は、モーションキャプチャ技術により認識される。例えば、カメラによって対象作業者TWを撮影することにより、対象作業者TWの動作が認識される。他の例として、対象作業者TWの身体に慣性センサ(ジャイロセンサ、加速度センサ、等)が取り付けられ、その慣性センサによる検出結果に基づいて対象作業者TWの動作が認識されてもよい。シミュレーションシステム100は、認識された対象作業者TWの動作を仮想空間に重畳して描画する。例えば、シミュレーションシステム100は、認識された対象作業者TWの手の動きを仮想空間に重畳して描画する。これにより、対象作業者TWは、仮想空間内で所定の作業を行っているような感覚を得ることができる。つまり、対象作業者TWは、仮想空間において所定の作業を体験することができる。
【0011】
また、シミュレーションシステム100は、モデル動作を行う仮想的なモデル作業者MWを仮想空間に重畳して描画してもよい。モデル動作は、対象作業者TWが所定の作業を行う際にお手本となる動作である。仮想空間において、仮想的なモデル作業者MWはモデル動作を行う。モデル作業者MWを“ゴースト作業者”と呼ぶこともできる。対象作業者TWは、仮想空間において、モデル作業者MWが行うモデル動作を真似て所定の作業を行う。これにより、効率的且つ効果的な訓練が可能となる。
【0012】
図2は、本実施の形態に係るシミュレーションシステム100の構成例を示すブロック図である。シミュレーションシステム100は、センサ110、入力装置120、出力装置130、及び体験デバイス140を含んでいる。
【0013】
センサ110は、実空間に配置され、様々な情報を検出する。例えば、センサ110は、実空間における作業者の動作を検出する。作業者の動作を検出するセンサ110としては、カメラ、赤外線センサ、慣性センサ、等が例示される。例えば、カメラによって作業者を撮影することにより、作業者の動作を検出することができる。他の例として、作業者の身体に慣性センサ(ジャイロセンサ、加速度センサ、等)が取り付けられ、その慣性センサによって作業者の動作が検出されてもよい。
【0014】
他の例として、センサ110は、実空間における作業者の身体的特性を検出してもよい。身体的特性としては、利き手、手の大きさ、握力、身長、筋肉量、視力、等が例示される。例えば、カメラによって撮影される作業者の動作に基づいて、作業者の利き手が検出される。他の例として、カメラによって撮影される作業者の画像に基づいて、手の大きさ、身長、等が検出される。その他、センサ110は、身長計、体重計、体組成計、握力計、視力計、等を含んでいてもよい。
【0015】
更に他の例として、センサ110は、実空間における作業者の生体情報を検出する生体センサを含んでいてもよい。生体情報としては、体温、心拍数、疲労度、ストレス度、等が例示される。
【0016】
入力装置120としては、タッチパネル、キーボード、マウス、マイク、等が例示される。出力装置130としては、ディスプレイ、タッチパネル、スピーカ、等が例示される。
【0017】
体験デバイス140は、訓練対象の対象作業者TWが仮想空間において作業環境及び所定の作業を体験するために用いられる。例えば、体験デバイス140は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のウェアラブルデバイスである。ヘッドマウントディスプレイは、シミュレーションシステム100によって再現される仮想空間を表示する。
【0018】
シミュレーションシステム100は、更に、1又は複数のプロセッサ150(以下、単に「プロセッサ150」と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置160(以下、単に「記憶装置160」と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ150は、各種処理を実行する。プロセッサ150として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、等が例示される。記憶装置160は、各種情報を格納する。記憶装置160としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、等が例示される。
【0019】
シミュレーションプログラム170は、上述の仮想空間におけるシミュレーションを行うためのコンピュータプログラムであり、プロセッサ150によって実行される。シミュレーションプログラム170を実行するプロセッサ150と記憶装置160との協働により、シミュレーションシステム100による各種処理が実現されてもよい。シミュレーションプログラム170は、記憶装置160に格納される。シミュレーションプログラム170は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0020】
作業環境情報180は、仮想空間に再現される作業環境(例:実工場)の情報である。例えば、作業環境情報180は、作業環境内の構造物(ライン、機械、壁、柱、等)の3次元配置を示す。例えば、構造物の3次元配置は、CADデータで表現される。作業環境情報180は、記憶装置160に格納される。
【0021】
記憶装置160には更にデータベース200が格納される。データベース200は、作業者特性データベース210、作業実績データベース220、及びモデル動作データベース230を含んでいる。
【0022】
作業者特性データベース210は、各作業者の身体的特性を示すデータベースである。身体的特性としては、利き手、手の大きさ、握力、身長、筋肉量、視力、等が例示される。例えば、各作業者の身体的特性は、上述のセンサ110により検出される。他の例としては、各作業者は、入力装置120を用いて自身の身体的特性を入力してもよい。身長等の数値で表される身体的特性については、所定幅毎にグループ分けされてもよい。
【0023】
作業実績データベース220は、様々な作業者が行った所定の作業の実績を示すデータベースである。例えば、作業実績データベース220は、所定の作業中の作業者の映像を含む。作業者の映像は、上述のセンサ110に含まれるカメラによって撮影される。他の例として、作業実績データベース220は、所定の作業中に作業者が行った動作の内容を示していてもよい。更に他の例として、作業実績データベース220は、作業者が所定の作業を完了させるまでにかかった時間を示していてもよい。このような作業実績データベース220は、上述のセンサ110によって検出される作業者の動作に基づいて生成される。
【0024】
モデル動作データベース230は、対象作業者TWが所定の作業を行う際にお手本となるモデル動作に関するデータベースである。所定の作業に関するモデル動作は、作業実績データベース220に基づいて予め作成されてもよい。
【0025】
プロセッサ150は、作業環境情報180に基づいて、作業者が所定の作業を行う作業環境を仮想空間内に再現する。例えば、プロセッサ150は、DigitalTwin技術に基づいて、作業環境を仮想空間内に再現(描画)する。
【0026】
また、プロセッサ150は、センサ110を用いて、訓練対象の対象作業者TWの動作を認識する。実空間における対象作業者TWの動作は、モーションキャプチャ技術により認識される。例えば、カメラによって対象作業者TWを撮影することにより、対象作業者TWの動作が認識される。他の例として、対象作業者TWの身体に慣性センサが取り付けられ、その慣性センサによる検出結果に基づいて対象作業者TWの動作が認識されてもよい。プロセッサ150は、認識された対象作業者TWの動作を仮想空間に重畳して描画する。例えば、プロセッサ150は、認識された対象作業者TWの手の動きを仮想空間に重畳して描画する。対象作業者TWは、体験デバイス140を介して、仮想空間内で所定の作業を行っているような感覚を得ることができる。つまり、対象作業者TWは、体験デバイス140を介して、仮想空間において所定の作業を体験することができる。
【0027】
更に、プロセッサ150は、モデル動作データベース230に基づいて、対象作業者TWが所定の作業を行う際にお手本となるモデル動作を決定する。そして、プロセッサ150は、モデル動作を行う仮想的なモデル作業者MWを仮想空間に重畳して描画する。対象作業者TWは、仮想空間において、モデル作業者MWが行うモデル動作を真似て所定の作業を行う。これにより、効率的且つ効果的な訓練が可能となる。
【0028】
2.作業ラインのシミュレーション
2-1.概要
次に、作業ラインにおいて前後に連続する作業間の連携について考える。
図3は、作業ラインにおいて前後に連続する作業間の連携を説明するための概念図である。作業ラインは、上流側の第1作業と、下流側の第2作業を含んでいる。第1作業者W1は、上流側の第1作業を行う。例えば、第1作業者W1は、ある部品を組み立てる。第1作業者W1は、第1作業の結果物(例:組み立てた部品)を下流側の第2作業者W2に渡す。第1作業者W1は、結果物を直接渡してもよいし、ベルトコンベヤ等を介して間接的に渡してもよい。下流側の第2作業者W2は、第1作業者W1から第1作業の結果物を受け取る。第2作業者W2は、結果物を直接受け取ってもよいし、ベルトコンベヤ等を介して間接的に受け取ってもよい。そして、第2作業者W2は、受け取った第1作業の結果物に対して下流側の第2作業を行う。
【0029】
このような第1作業と第2作業との間の連携を効果的に学習することが望まれる。以下の説明において、訓練対象の第1作業者W1を「第1対象作業者TW1」と呼び、訓練対象の第2作業者W2を「第2対象作業者TW2」と呼ぶ。
【0030】
図4は、本実施の形態に係る作業ラインのシミュレーションを説明するための概念図である。シミュレーションシステム100は、仮想空間において作業ラインのシミュレーションを行う。
【0031】
「第1モデル動作MO1」は、第1作業に関連するモデル動作である。第1モデル動作は、第1対象作業者TW1が第1作業の結果物を第2対象作業者TW2に渡す際の手本となる動作を含む。更に、第1モデル動作は、第1対象作業者TW1が第1作業を行う際に手本となる動作を含んでいてもよい。
【0032】
一方、「第2モデル動作MO2」は、第2作業に関連するモデル動作である。第2モデル動作は、第2対象作業者TW2が第1対象作業者TW1から第1作業の結果物を受け取る際の手本となる動作を含む。更に、第2モデル動作は、第2対象作業者TW2が第2作業を行う際に手本となる動作を含んでいてもよい。
【0033】
シミュレーションシステム100は、第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせを決定する。典型的には、シミュレーションシステム100は、所定の条件を満たすように第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせを決定する。第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の決定方法の様々な例は後述される。第1作業と第2作業との組み合わせに対する第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせは、モデル動作データベース230に登録される。
【0034】
第1モデル作業者MW1は、第1モデル動作MO1を行うモデル作業者MWである。第2モデル作業者MW2は、第2モデル動作MO2を行うモデル作業者MWである。シミュレーションシステム100は、モデル動作データベース230に基づいて、第1モデル作業者MW1と第2モデル作業者MW2を仮想空間に描画する。
【0035】
より詳細には、仮想空間において第1対象作業者TW1が第1作業に関連する動作を行う際、シミュレーションシステム100は、仮想空間において第1モデル動作MO1を行う第1モデル作業者MW1を描画する。第1対象作業者TW1は、第1モデル作業者MW1が行う第1モデル動作MO1を真似て第1作業に関連する動作を行う。また、仮想空間において第2対象作業者TW2が第2作業に関連する動作を行う際、シミュレーションシステム100は、仮想空間において第2モデル動作MO2を行う第2モデル作業者MW2を描画する。第2対象作業者TW2は、第2モデル作業者MW2が行う第2モデル動作MO2を真似て第2作業に関連する動作を行う。これにより、第1対象作業者TW1と第2対象作業者TW2は、第1作業と第2作業との間の効率的な連携を効果的に学習することが可能となる。
【0036】
2-2.第1モデル動作と第2モデル動作の決定方法の例
以下、第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の決定方法の様々な例を説明する。典型的には、「所定の条件」を満たすように第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせが決定される。
【0037】
2-2-1.第1の例
第1の例において、シミュレーションシステム100は、第1対象作業者TW1の第1特性を示す特性情報を取得する。第1対象作業者TW1の第1特性は、第1対象作業者TW1の身体的特性(例:利き手、身長、等)を含む。第1対象作業者TW1の身体的特性は、作業者特性データベース210から得られる。シミュレーションシステム100は、第1対象作業者TW1の身体的特性に基づいて、第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせを決定する。
【0038】
例えば、第1対象作業者TW1の利き手を考慮して、第1対象作業者TW1が第1作業の結果物を第2対象作業者TW2に渡しやすいように第1モデル動作MO1が決定される。第1モデル動作MO1が決定されると、第1モデル動作MO1によって渡される結果物を受け取れるように第2モデル動作MO2が決定される。
【0039】
他の例として、第1対象作業者TW1の身長を考慮して、第1対象作業者TW1が第1作業の結果物を置きやすい目標位置が決定される。第1モデル動作MO1は、第1作業の結果物を目標位置に置くように決定される。第2モデル動作MO2は、第1作業の結果物を目標位置から取るように決定される。
【0040】
第1対象作業者TW1の第1特性は、第1対象作業者TW1の熟練度を含んでいてもよい。第1対象作業者TW1の熟練度は、作業実績データベース220に基づいて推定される。例えば、第1作業に関連する動作が速くなるほど熟練度は高いと推定される。第1対象作業者TW1の熟練度が低い場合、第1モデル動作MO1はなるべくシンプルになるように決定される。第1モデル動作MO1が決定されると、第1モデル動作MO1によって渡される結果物を受け取れるように第2モデル動作MO2が決定される。
【0041】
一般化すると、第1の例における所定の条件は、「第1作業の結果物を渡す際の第1対象作業者TW1の負荷が閾値未満となること」である。第1作業の結果物を渡す際の負荷は、身体の捻り具合、動作時間、等に基づいて算出される。様々な動作パターンに対する負荷は、作業実績データベース220から得られる、あるいは、シミュレーションを通して得られる。シミュレーションシステム100は、第1対象作業者TW1の第1特性に基づいて、第1作業の結果物を渡す際の第1対象作業者TW1の負荷が閾値未満となるように第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせを決定する。第1対象作業者TW1の第1特性が考慮されるため、更に効率的な連携を学習することが可能となる。
【0042】
2-2-2.第2の例
第2の例において、シミュレーションシステム100は、第2対象作業者TW2の第2特性を示す特性情報を取得する。第2対象作業者TW2の第2特性は、第2対象作業者TW2の身体的特性(例:利き手、身長、等)を含む。第2対象作業者TW2の身体的特性は、作業者特性データベース210から得られる。シミュレーションシステム100は、第2対象作業者TW2の身体的特性に基づいて、第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせを決定する。
【0043】
例えば、第2対象作業者TW2の利き手を考慮して、第2対象作業者TW2が第1作業の結果物を受け取りやすいように第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の一方が決定される。第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の一方が決定されると、第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の他方が決定される。
【0044】
他の例として、第2対象作業者TW2の身長を考慮して、第2対象作業者TW2が第1作業の結果物を取りやすい目標位置が決定される。第1モデル動作MO1は、第1作業の結果物を目標位置に置くように決定される。第2モデル動作MO2は、第1作業の結果物を目標位置から取るように決定される。
【0045】
第2対象作業者TW2の第2特性は、第2対象作業者TW2の熟練度を含んでいてもよい。第2対象作業者TW2の熟練度は、作業実績データベース220に基づいて推定される。例えば、第2作業に関連する動作が速くなるほど熟練度は高いと推定される。第2対象作業者TW2の熟練度が低い場合、第2モデル動作MO2はなるべくシンプルになるように決定される。第2モデル動作MO2が決定されると、それに合わせて第1モデル動作MO1が決定される。
【0046】
一般化すると、第2の例における所定の条件は、「第1作業の結果物を受け取る際の第2対象作業者TW2の負荷が閾値未満となること」である。第1作業の結果物を受け取る際の負荷は、身体の捻り具合、動作時間、等に基づいて算出される。様々な動作パターンに対する負荷は、作業実績データベース220から得られる、あるいは、シミュレーションを通して得られる。シミュレーションシステム100は、第2対象作業者TW2の第2特性に基づいて、第1作業の結果物を受け取る際の第2対象作業者TW2の負荷が閾値未満となるように第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせを決定する。第2対象作業者TW2の第2特性が考慮されるため、更に効率的な連携を学習することが可能となる。
【0047】
2-2-3.第3の例
上述の第1の例と第2の例の組み合わせも可能である。第1対象作業者TW1の第1特性と第2対象作業者TW2の第2特性の両方が考慮されるため、更に効率的な連携を学習することが可能となる。
【0048】
2-2-4.第4の例
第4の例において、所定の条件は、「第1対象作業者TW1から第2対象作業者TW2への第1作業の結果物の受け渡し時間が所定の時間を下回ること」である。この所定の条件を満たす第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の組み合わせは、作業実績データベース220から検索されてもよいし、シミュレーションを通して探索されてもよい。第4の例によっても、効率的な連携を学習することが可能となる。
【0049】
2-2-5.第5の例
第5の例において、第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2のうち少なくとも一方は、ベテラン作業員の実動作に設定される。第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2の両方が、ベテラン作業員の実動作に設定されてもよい。ベテラン作業員の実動作は、作業実績データベース220から得られる。第5の例によれば、ベテラン作業員による効率的な連携を効果的に学習することが可能となる。
【0050】
2-3.効果
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、第1モデル動作MO1を行う第1モデル作業者MW1と第2モデル動作MO2を行う第2モデル作業者MW2が仮想空間に描画される。第1モデル動作MO1は、第1対象作業者TW1が第1作業の結果物を第2対象作業者TW2に渡す際の手本となる動作を含む。第2モデル動作MO2は、第2対象作業者TW2が第1対象作業者TW1から第1作業の結果物を受け取る際の手本となる動作を含む。これにより、第1対象作業者TW1と第2対象作業者TW2は、第1作業と第2作業との間の効率的な連携を効果的に学習することが可能となる。
【0051】
3.変形例
図5は、変形例を説明するための概念図である。上述の通り、第1モデル動作MO1と第2モデル動作MO2は予め設定される。第1対象作業者TW1は、第1モデル作業者MW1が行う第1モデル動作MO1を真似て第1作業に関連する動作を行う。但し、第1対象作業者TW1の実際の動作は、必ずしも第1モデル動作MO1の通りにはならない。第1対象作業者TW1の実際の動作は、第1モデル動作MO1から逸脱(乖離)してしまう可能性もある。その場合、下流側の第2対象作業者TW2は、予め設定された第2モデル動作のままでは、第1作業の結果物をうまく受け取ることができない。
【0052】
そこで、本変形例では、シミュレーションシステム100は、第1対象作業者TW1の動作結果に応じて第2モデル動作MO2をダイナミックに補正する。
【0053】
より詳細には、第1動作WO1は、仮想空間において第1対象作業者TW1が第1作業の結果物を第2対象作業者TW2に渡す際の実際の動作である。シミュレーションシステム100は、センサ110によって第1対象作業者TW1の第1動作WO1の情報を取得する。続いて、シミュレーションシステム100は、第1動作WO1と第1モデル動作MO1を比較して、第1モデル動作MO1からの第1動作WO1の乖離度を算出する。その乖離度が閾値を超えた場合、シミュレーションシステム100は、第1動作WO1によって渡される第1作業の結果物を受け取ることができるように第2モデル動作MO2を補正する。言い換えれば、シミュレーションシステム100は、第1動作WO1に追従するように第2モデル動作MO2を補正する。
【0054】
補正第2モデル動作MO2’は、第2モデル動作MO2の補正結果である。シミュレーションシステム100は、仮想空間において補正第2モデル動作MO2’を行う第2モデル作業者MW2を描画する。第2対象作業者TW2は、第2モデル作業者MW2が行う補正第2モデル動作MO2’を真似て第2作業に関連する動作を行う。
【0055】
以上に説明されたように、変形例によれば、上流側の第1対象作業者TW1の第1動作が第1モデル動作MO1から逸脱(乖離)しても、下流側の第2対象作業者TW2の訓練を継続することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
100…シミュレーションシステム, 110…センサ, 120…入力装置, 130…出力装置, 140…体験デバイス, 150…プロセッサ, 160…記憶装置, 170…シミュレーションプログラム, 180…作業環境情報, 200…データベース, 210…作業者特性データベース, 220…作業実績データベース, 230…モデル動作データベース