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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177887
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】車両用除電装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/06 20060101AFI20241217BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241217BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B60R16/06 Z
B60J5/04 Z
H05F3/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096274
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 直一
(72)【発明者】
【氏名】前田 登
(72)【発明者】
【氏名】前田 和宏
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA18
5G067DA02
(57)【要約】
【課題】正の空気イオンが車両表面に寄ってくることによる車両の操安性の悪化を抑制する。
【解決手段】車両用除電装置は、車両1、1’、1”の窓又はドアの非導電性部位に設けられた導電性の端子11、11a、11b、12、12a、12bと、車両のバッテリの負極又は車両のアース部分である除電部31、31a、31b、32、32a、32bに端子を導通させる配線21、21a、21b、22、22a、22bとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓又はドアの非導電性部位に設けられた導電性の端子と、
前記車両のバッテリの負極又は前記車両のアース部分である除電部に前記端子を導通させる配線と
を備える、車両用除電装置。
【請求項2】
前記配線上に配置された切替素子と、
前記切替素子を用いて前記端子と前記除電部との電気的な接続を制御する通電制御部と、
前記車両の旋回方向を検知する旋回検知部と
を備え、
前記端子は、前記車両の車幅中心線に対して一方の側に設けられた第1端子と、前記車幅中心線に対して他方の側に設けられた第2端子とを含み、
前記通電制御部は、前記車両の旋回方向に基づいて、前記第1端子及び前記第2端子のうち、前記除電部に導通させる端子を選択する、請求項1に記載の車両用除電装置。
【請求項3】
前記通電制御部は、前記第1端子及び前記第2端子のうち、前記車両の旋回方向に設けられた端子を前記除電部に導通させる、請求項2に記載の車両用除電装置。
【請求項4】
前記第1端子は、前記車両の前方に設けられた第1前方端子と、前記車両の後方に設けられた第1後方端子とを含み、
前記第2端子は、前記車両の前方に設けられた第2前方端子と、前記車両の後方に設けられた第2後方端子とを含み、
前記旋回検知部は前記車両の旋回角度を検知し、
前記通電制御部は、前記車両の旋回角度が所定値未満である場合には、前記第1端子及び前記第2端子のうち、前記車両の旋回方向に設けられた端子を前記除電部に導通させ、前記旋回角度が前記所定値以上である場合には、前記第1端子及び前記第2端子のうち、前記旋回方向において前記車両の前方に設けられた端子と、前記旋回方向とは反対の方向において前記車両の後方に設けられた端子とを前記除電部に導通させる、請求項2に記載の車両用除電装置。
【請求項5】
前記旋回検知部は、前記車両のナビゲーション装置によって設定された前記車両の走行ルート又は前記車両の方向指示器の信号に基づいて前記車両の旋回方向を検知する、請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体が正の静電気を帯電することに起因して、正の電荷を帯びた空気流が、車体の外表面から意図しない位置で剥離することを抑制すべく、自己放電式除電器によって負の空気イオンを生じさせることによって、車体に帯電した正の電位を低下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-124319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、本願の発明者は、車輪と路面との摩擦により発生した負の電荷が車両表面に溜まり、この負電荷に空気中の正の空気イオンが寄ってきて気流を変化させることで、車両の操安性が悪化するとの知見を得た。
【0005】
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の目的は、正の空気イオンが車両表面に寄ってくることによる車両の操安性の悪化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)車両の窓又はドアの非導電性部位に設けられた導電性の端子と、前記車両のバッテリの負極又は前記車両のアース部分である除電部に前記端子を導通させる配線とを備える、車両用除電装置。
【0008】
(2)前記配線上に配置された切替素子と、前記切替素子を用いて前記端子と前記除電部との電気的な接続を制御する通電制御部と、前記車両の旋回方向を検知する旋回検知部とを備え、前記端子は、前記車両の車幅中心線に対して一方の側に設けられた第1端子と、前記車幅中心線に対して他方の側に設けられた第2端子とを含み、前記通電制御部は、前記車両の旋回方向に基づいて、前記第1端子及び前記第2端子のうち、前記除電部に導通させる端子を選択する、上記(1)に記載の車両用除電装置。
【0009】
(3)前記通電制御部は、前記第1端子及び前記第2端子のうち、前記車両の旋回方向に設けられた端子を前記除電部に導通させる、上記(2)に記載の車両用除電装置。
【0010】
(4)前記第1端子は、前記車両の前方に設けられた第1前方端子と、前記車両の後方に設けられた第1後方端子とを含み、前記第2端子は、前記車両の前方に設けられた第2前方端子と、前記車両の後方に設けられた第2後方端子とを含み、前記旋回検知部は前記車両の旋回角度を検知し、前記通電制御部は、前記車両の旋回角度が所定値未満である場合には、前記第1端子及び前記第2端子のうち、前記車両の旋回方向に設けられた端子を前記除電部に導通させ、前記旋回角度が前記所定値以上である場合には、前記第1端子及び前記第2端子のうち、前記旋回方向において前記車両の前方に設けられた端子と、前記旋回方向とは反対の方向において前記車両の後方に設けられた端子とを前記除電部に導通させる、上記(2)に記載の車両用除電装置。
【0011】
(5)前記旋回検知部は、前記車両のナビゲーション装置によって設定された前記車両の走行ルート又は前記車両の方向指示器の信号に基づいて前記車両の旋回方向を検知する、上記(2)から(4)のいずれか1つに記載の車両用除電装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、正の空気イオンが車両表面に寄ってくることによる車両の操安性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る車両用除電装置が設けられた車両を示す図である。
図2図2は、本発明の第二実施形態に係る車両用除電装置が設けられた車両を示す図である。
図3図3は、本発明の第二実施形態に係る車両用除電装置が設けられた車両の構成の一部を示す図である。
図4図4は、本発明の第三実施形態に係る車両用除電装置が設けられた車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0015】
<第一実施形態>
以下、図1を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る車両用除電装置が設けられた車両1を示す図である。図1(a)には、車両1の左側面図が示され、図1(b)には、車両1の右側面図が示される。
【0016】
車両用除電装置は、導電性の第1端子11及び第2端子12と、第1配線21と、第2配線22とを備える。第1端子11は車両1の車幅中心線に対して一方の側に設けられ、第2端子12は車両1の車幅中心線に対して他方の側に設けられる。本実施形態では、第1端子11は車両1の左側に設けられ、第2端子12は車両1の右側に設けられる。
【0017】
第1端子11及び第2端子12はそれぞれ車両1の窓の非導電性部位に設けられる。本実施形態では、第1端子11は車両1の左前方側の窓に設けられ、第2端子12は車両1の右前方側の窓に設けられる。なお、第1端子11は車両1の左後方側の窓に設けられ、第2端子12は車両1の右後方側の窓に設けられてもよい。
【0018】
第1配線21は第1端子11を第1除電部31に導通させ、第2配線22は第2端子12を第2除電部32に導通させる。本実施形態では、第1除電部31及び第2除電部32はそれぞれ車両1のアース部分(アース端子)である。なお、第1除電部31及び第2除電部32は車両1における同一の部分であってもよい。
【0019】
車両1が走行するとき、車輪と路面との摩擦により負の電荷が発生し、この負の電荷が車両1の内部を通って車両表面に蓄積する。この結果、空気中の正の空気イオンが車両表面の負の電荷に引き寄せられ、車両1の側方の気流が変化し、車両1の操安性が悪化する。
【0020】
このため、車両1の操安性の悪化を抑制するためには、車両1に寄ってくる正の空気イオンを除去することが望ましい。これに対して、本実施形態では、第1端子11が第1配線21を介して第1除電部31に接続され、第2端子12が第2配線22を介して第2除電部32に接続される。このことによって、車輪と路面との摩擦により発生した負の電荷が車輪から車両表面まで伝わりやすくなり、車両表面において負の電荷による正の空気イオンの中和が促進される。したがって、本実施形態によれば、正の空気イオンが車両表面に寄ってくることによる車両1の操安性の悪化を抑制することができる。
【0021】
なお、第1除電部31及び第2除電部32はそれぞれ車両1のバッテリの負極であってもよい。また、第1端子11及び第2端子12はそれぞれ車両1のドアの非導電性部位に設けられてもよい。この場合、第1端子11は車両1の左前方側又は左後方側のドアに設けられ、第2端子12は車両1の右前方側又は右後方側のドアに設けられる。また、第1端子11は車両1の左側の窓及びドアにおいて複数設けられてもよい。同様に、第2端子12は車両1の右側の窓及びドアにおいて複数設けられてもよい。
【0022】
<第二実施形態>
図2は、本発明の第二実施形態に係る車両用除電装置が設けられた車両1’を示す図である。図2(a)には、車両1’の左側面図が示され、図2(b)には、車両1’の右側面図が示される。
【0023】
第二実施形態では、車両用除電装置は、第1端子11、第2端子12、第1配線21及び第2配線22に加えて、第1切替素子41及び第2切替素子42を備える。第1切替素子41は、第1配線21上に配置され、第1端子11と第1除電部31との導通をオンオフする。すなわち、第1切替素子41が開放されているときには、第1端子11と第1除電部31との導通が解除され、第1切替素子41が閉成されているときには、第1端子11と第1除電部31とが導通される。第1切替素子41は例えばリレーから構成される。
【0024】
第2切替素子42は、第2配線22上に配置され、第2端子12と第2除電部32との導通をオンオフする。すなわち、第2切替素子42が開放されているときには、第2端子12と第2除電部32との導通が解除され、第2切替素子42が閉成されているときには、第2端子12と第2除電部32とが導通される。第2切替素子42は例えばリレーから構成される。
【0025】
図3は、本発明の第二実施形態に係る車両用除電装置が設けられた車両1’の構成の一部を示す図である。車両用除電装置は電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)5を更に備える。ECU5、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機6及びナビゲーション装置7は車両1’に設けられる。第1切替素子41、第2切替素子42、GNSS受信機6及びナビゲーション装置7は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワーク等を介してECU5に電気的に接続される。
【0026】
GNSS受信機6は、複数(例えば3つ以上)の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両1’の現在位置(例えば車両1‘の緯度及び経度)を検出する。具体的には、GNSS受信機6は、複数の測位衛星を捕捉し、測位衛星から発信された電波を受信する。そして、GNSS受信機6は、電波の発信時刻と受信時刻との差に基づいて測位衛星までの距離を算出し、測位衛星までの距離及び測位衛星の位置(軌道情報)に基づいて車両1’の現在位置を検出する。GNSS受信機6の出力、すなわちGNSS受信機6によって検出された車両1’の現在位置はECU5に送信される。GNSS受信機にはGPS受信機が含まれる。
【0027】
ナビゲーション装置7は、地図情報を有し、GNSS受信機6によって検出された車両1’の現在位置、車両1’の乗員(例えばドライバ)による入力等に基づいて、目的地までの車両1’の走行ルートを設定する。ナビゲーション装置7によって設定された走行ルートはECU5に送信される。
【0028】
ECU5は車両1の各種制御を実行する。図1に示されるように、ECU5は、通信インターフェース51、メモリ52及びプロセッサ53を備える。通信インターフェース51及びメモリ52は信号線を介してプロセッサ53に接続されている。なお、本実施形態では、一つのECU5が設けられているが、機能毎に複数のECUが設けられていてもよい。
【0029】
通信インターフェース51は、ECU5を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。ECU5は通信インターフェース51を介して他の車載機器に接続される。
【0030】
メモリ52は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ52は、プロセッサ53によって各種処理が実行されるときに使用されるプログラム、データ等を記憶する。
【0031】
プロセッサ53は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。なお、プロセッサ53は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。
【0032】
図3に示されるように、本実施形態では、プロセッサ53は通電制御部54及び旋回検知部55を有する。通電制御部54及び旋回検知部55は、ECU5のメモリ52に記憶されたプログラムをECU5のプロセッサ53が実行することによって実現される機能モジュールである。なお、これら機能モジュールは、それぞれ、プロセッサ53に設けられた専用の演算回路によって実現されてもよい。
【0033】
通電制御部54は、第1切替素子41を用いて第1端子11と第1除電部31との電気的な接続を制御する。具体的には、通電制御部54は、第1切替素子41を閉成することによって第1端子11と第1除電部31とを導通させ、第1切替素子41を開放することによって第1端子11と第1除電部31との導通を解除する。また、通電制御部54は第2切替素子42を用いて第2端子12と第2除電部32との電気的な接続を制御する。具体的には、通電制御部54は、第2切替素子42を閉成することによって第2端子12と第2除電部32とを導通させ、第2切替素子42を開放することによって第2端子12と第2除電部32との導通を解除する。
【0034】
旋回検知部55は車両1’の旋回方向を検知する。例えば、旋回検知部55は、ナビゲーション装置7によって設定された車両1’の走行ルートに基づいて車両1’の旋回方向を検知する。この場合、旋回検知部55は、GNSS受信機6によって検出された車両1’の現在位置が走行ルート上の右折地点に達したときに、車両1’の旋回方向を右と判別し、GNSS受信機6によって検出された車両1’の現在位置が走行ルート上の左折地点に達したときに、車両1’の旋回方向を左と判別する。
【0035】
なお、旋回検知部55は車両1’の方向指示器(ウィンカー)の信号に基づいて車両1’の旋回方向を検知してもよい。この場合、旋回検知部55は、方向指示器の信号が右側の方向指示器の点滅を示している場合には、車両1’の旋回方向を右と判別し、方向指示器の信号が左側の方向指示器の点滅を示している場合には、車両1’の旋回方向を左と判別する。
【0036】
また、車両1’が先行車両を追従する追従走行が実施されているときには、旋回検知部55は、車両1’の周辺情報検出装置(例えば、ミリ波レーダ、カメラ又はライダ(LIDAR:Laser Imaging Detection And Ranging))によって検出された先行車両の走行経路に基づいて車両1’の旋回方向を検知してもよい。この場合、旋回検知部55は、先行車両が右に旋回する場合には、車両1’の旋回方向を右と判別し、先行車両が左に旋回する場合には、車両1’の旋回方向を左と判別する。また、旋回検知部55は、車両1’のステアリングの舵角を検出する舵角センサの出力等に基づいて車両1’の旋回方向を検知してもよい。
【0037】
車両表面に寄ってくる正の空気イオンによって車両1’の側方において気流の渦が生じると、車両1’の中央方向に向かう力が車両1’に適用される。このため、車両1’の旋回方向と同じ側では、旋回を妨げる力が気流の渦によって生じ、車両1’の旋回方向と反対側では、旋回を助ける力が気流の渦によって生じる。一方、正の空気イオンが中和されて気流の渦が消滅すると、負圧が発生し、負圧によって、車両1’の外側に向かう力が車両1’に適用される。
【0038】
そこで、本実施形態では、通電制御部54は、車両1’の旋回方向に基づいて、第1端子11及び第2端子12のうち、除電部(第1除電部31又は第2除電部32)に導通させる端子を選択する。このことによって、車両1’の旋回を妨げる力が生じることを抑制することができ、旋回時における車両1’の操安性を向上させることができる。
【0039】
具体的には、通電制御部54は、第1端子11及び第2端子12のうち、車両1’の旋回方向に設けられた端子を除電部(第1除電部31又は第2除電部32)に導通させる。すなわち、通電制御部54は、車両1’が左に旋回するときには、第1切替素子41を閉成して第1端子11を第1除電部31に導通させ、第2切替素子42を開放して第2端子12と第2除電部32との導通を解除する。一方、通電制御部54は、車両1’が右に旋回するときには、第1切替素子41を開放して第1端子11と第1除電部31との導通を解除し、第2切替素子42を閉成して第2端子12を第2除電部32に導通させる。このことによって、車両1’の左右両側において、車両1’の旋回を助ける力を発生させることができ、車両1’の旋回操作を支援することができる。
【0040】
<第三実施形態>
図4は、本発明の第三実施形態に係る車両用除電装置が設けられた車両1”を示す図である。図4(a)には、車両1”の左側面図が示され、図4(b)には、車両1”の右側面図が示される。
【0041】
第三実施形態では、車両用除電装置は、導電性の第1前方端子11a、第1後方端子11b、第2前方端子12a及び第2後方端子12bと、第1前方配線21aと、第1後方配線21bと、第2前方配線22aと、第2後方配線22bと、第1前方切替素子41aと、第1後方切替素子41bと、第2前方切替素子42aと、第2後方切替素子42bとを備える。第1前方端子11aは第1後方端子11bの前方に設けられ、第2前方端子12aは第2後方端子12bの前方に設けられる。
【0042】
第1前方端子11a及び第1後方端子11bを含む第1端子は車両1”の車幅中心線に対して一方の側に設けられ、第2前方端子12a及び第2後方端子12bを含む第2端子は車両1”の車幅中心線に対して他方の側に設けられる。本実施形態では、第1前方端子11a及び第1後方端子11bは車両1”の左側に設けられ、第2前方端子12a及び第2後方端子12bは車両1”の右側に設けられる。
【0043】
第1前方端子11a、第1後方端子11b、第2前方端子12a及び第2後方端子12bはそれぞれ車両1”の窓の非導電性部位に設けられる。本実施形態では、第1前方端子11aは車両1”の左前方側の窓に設けられ、第1後方端子11bは車両1”の左後方側の窓に設けられる。一方、第2前方端子12aは車両1”の右前方側の窓に設けられ、第2後方端子12bは車両1”の右後方側の窓に設けられる。
【0044】
第1前方配線21aは第1前方端子11aを第1前方除電部31aに導通させ、第1後方配線21bは第1後方端子11bを第1後方除電部31bに導通させる。一方、第2前方配線22aは第2前方端子12aを第2前方除電部32aに導通させ、第2後方配線22bは第2後方端子12bを第2後方除電部32bに導通させる。本実施形態では、第1前方除電部31a、第1後方除電部31b、第2前方除電部32a及び第2後方除電部32bはそれぞれ車両1”のアース部分(アース端子)である。なお、第1前方除電部31a、第1後方除電部31b、第2前方除電部32a及び第2後方除電部32bの少なくとも二つは車両1”における同一の部分であってもよい。
【0045】
第1前方切替素子41aは、第1前方配線21a上に配置され、第1前方端子11aと第1前方除電部31aとの導通をオンオフする。すなわち、第1前方切替素子41aが開放されているときには、第1前方端子11aと第1前方除電部31aとの導通が解除され、第1前方切替素子41aが閉成されているときには、第1前方端子11aと第1前方除電部31aとが導通される。第1前方切替素子41aは例えばリレーから構成される。
【0046】
第1後方切替素子41bは、第1後方配線21b上に配置され、第1後方端子11bと第1後方除電部31bとの導通をオンオフする。すなわち、第1後方切替素子41bが開放されているときには、第1後方端子11bと第1後方除電部31bとの導通が解除され、第1後方切替素子41bが閉成されているときには、第1後方端子11bと第1後方除電部31bとが導通される。第1後方切替素子41bは例えばリレーから構成される。
【0047】
第2前方切替素子42aは、第2前方配線22a上に配置され、第2前方端子12aと第2前方除電部32aとの導通をオンオフする。すなわち、第2前方切替素子42aが開放されているときには、第2前方端子12aと第2前方除電部32aとの導通が解除され、第2前方切替素子42aが閉成されているときには、第2前方端子12aと第2前方除電部32aとが導通される。第2前方切替素子42aは例えばリレーから構成される。
【0048】
第2後方切替素子42bは、第2後方配線22b上に配置され、第2後方端子12bと第2後方除電部32bとの導通をオンオフする。すなわち、第2後方切替素子42bが開放されているときには、第2後方端子12bと第2後方除電部32bとの導通が解除され、第2後方切替素子42bが閉成されているときには、第2後方端子12bと第2後方除電部32bとが導通される。第2後方切替素子42bは例えばリレーから構成される。
【0049】
車両用除電装置はECU5を更に備え、第1前方切替素子41a、第1後方切替素子41b、第2前方切替素子42a、第2後方切替素子42b、GNSS受信機6及びナビゲーション装置7は、CAN等の規格に準拠した車内ネットワーク等を介してECU5に電気的に接続される。ECU5は、第1前方切替素子41a、第1後方切替素子41b、第2前方切替素子42a及び第2後方切替素子42bを制御する。
【0050】
第二実施形態と同様に、ECU5のプロセッサ53は通電制御部54及び旋回検知部55を有する。通電制御部54は、旋回検知部55によって検知された車両1”の旋回方向に基づいて、第1前方端子11a、第1後方端子11b、第2前方端子12a及び第2後方端子12bのうち、除電部(第1前方除電部31a、第1後方除電部31b、第2前方除電部32a又は第2後方除電部32b)に導通させる端子を選択する。
【0051】
第三実施形態では、旋回検知部55は、車両1”の旋回方向に加えて、車両1”の旋回角度を検知する。例えば、旋回検知部55は、車両1”のステアリングの舵角を検出する舵角センサの出力に基づいて車両1”の旋回角度を検知する。
【0052】
車両1”の右左折時のように車両1”の旋回角度が深いときには、車両1”の旋回を円滑にするために、車両1”の中心を軸とする旋回方向のモーメントを発生させることが望ましい。このため、車両1”の旋回角度が所定値以上である場合には、通電制御部54は、第1前方端子11a、第1後方端子11b、第2前方端子12a及び第2後方端子12bのうち、車両1”の旋回方向において車両1”の前方に設けられた端子と、車両1”の旋回方向とは反対の方向において車両1”の後方に設けられた端子とを除電部(第1前方除電部31a、第1後方除電部31b、第2前方除電部32a又は第2後方除電部32b)に導通させる。一方、車両1”の旋回角度が所定値未満である場合には、通電制御部54は、第1前方端子11a、第1後方端子11b、第2前方端子12a及び第2後方端子12bのうち、車両1”の旋回方向に設けられた端子を除電部(第1前方除電部31a、第1後方除電部31b、第2前方除電部32a又は第2後方除電部32b)に導通させる。このことによって、車両1”の旋回角度に応じて、車両1”の旋回をより適切に支援することができる。
【0053】
例えば、車両1”の左への旋回角度が所定値以上である場合には、通電制御部54は、第1前方切替素子41aを閉成して第1前方端子11aを第1前方除電部31aに導通させ、第2後方切替素子42bを閉成して第2後方端子12bを第2後方除電部32bに導通させ、第1後方切替素子41bを開放して第1後方端子11bと第1後方除電部31bとの導通を解除し、第2前方切替素子42aを開放して第2前方端子12aと第2前方除電部32aとの導通を解除する。一方、車両1”の右への旋回角度が所定値以上である場合には、通電制御部54は、第2前方切替素子42aを閉成して第2前方端子12aを第2前方除電部32aに導通させ、第1後方切替素子41bを閉成して第1後方端子11bを第1後方除電部31bに導通させ、第2後方切替素子42bを開放して第2後方端子12bと第2後方除電部32bとの導通を解除し、第1前方切替素子41aを開放して第1後方端子11bと第1後方除電部31bとの導通を解除する。
【0054】
また、車両1”の左への旋回角度が所定値未満である場合には、通電制御部54は、第1前方切替素子41aを閉成して第1前方端子11aを第1前方除電部31aに導通させ、第1後方切替素子41bを閉成して第1後方端子11bを第1後方除電部31bに導通させ、第2前方切替素子42aを開放して第2前方端子12aと第2前方除電部32aとの導通を解除し、第2後方切替素子42bを開放して第2後方端子12bと第2後方除電部32bとの導通を解除する。一方、車両1”の右への旋回角度が所定値未満である場合には、通電制御部54は、第2前方切替素子42aを閉成して第2前方端子12aを第2前方除電部32aに導通させ、第2後方切替素子42bを閉成して第2後方端子12bを第2後方除電部32bに導通させ、第1前方切替素子41aを開放して第1前方端子11aと第1前方除電部31aとの導通を解除し、第1後方切替素子41bを開放して第1後方端子11bと第1後方除電部31bとの導通を解除する。
【0055】
なお、第1前方除電部31a、第1後方除電部31b、第2前方除電部32a及び第2後方除電部32bはそれぞれ車両1”のバッテリの負極であってもよい。また、第1前方端子11a、第1後方端子11b、第2前方端子12a及び第2後方端子12bはそれぞれ車両1”のドアの非導電性部位に設けられてもよい。この場合、第1前方端子11a、第1後方端子11b、第2前方端子12a及び第2後方端子12bは、それぞれ、車両1”の左前方側のドア、左後方側のドア、右前方側のドア及び右後方側のドアに設けられる。
【0056】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1’、1” 車両
11 第1端子
11a 第1前方端子
11b 第1後方端子
12 第2端子
12a 第2前方端子
12b 第2後方端子
21 第1配線
21a 第1前方配線
21b 第1後方配線
22 第2配線
22a 第2前方配線
22b 第2後方配線
31 第1除電部
31a 第1前方除電部
31b 第1後方除電部
32 第2除電部
32a 第2前方除電部
32b 第2後方除電部
図1
図2
図3
図4