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特開2024-177891半導体発光装置、および、半導体発光装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177891
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】半導体発光装置、および、半導体発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20241217BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20241217BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20241217BHJP
   H01L 33/54 20100101ALN20241217BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/58
H01L33/48
H01L33/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096280
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝明
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA58
5F142BA32
5F142CA03
5F142CA13
5F142CD02
5F142CD16
5F142CD17
5F142CD23
5F142CD32
5F142CD44
5F142CD47
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG23
5F142DB24
5F142FA03
5F142FA16
(57)【要約】
【課題】金属コアを挿入した繊維強化樹脂基板を用いた半導体発光装置であって、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じるのを防止する。
【解決手段】本発明の半導体発光装置は、基板と、基板上に搭載された半導体発光素子と、半導体発光素子の周囲を充填するように基板上に配置された樹脂製レンズとを有する。基板は、板状の繊維強化樹脂製基材と、基材を厚さ方向に貫通する貫通孔と、貫通孔内に配置された金属コアと、金属コアと貫通孔の内壁との間を充填する接着用樹脂と、少なくとも金属コアの上面を覆う金属パターンとを含む。半導体発光素子は、金属パターンの金属コアの直上領域にダイボンディングされる。基板の上面または裏面には、基材に到達する深さの脱気孔が1以上設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板上に搭載された半導体発光素子と、前記半導体発光素子の周囲を充填するように前記基板上に配置された樹脂製レンズとを有し、
前記基板は、板状の繊維強化樹脂製基材と、前記基材を厚さ方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔内に配置された金属コアと、前記金属コアと前記貫通孔の内壁との間を充填する接着用樹脂と、少なくとも前記金属コアの上面を覆う金属パターンとを含み、
前記半導体発光素子は、前記金属パターンの前記金属コアの直上領域にダイボンディングされ、
前記基板の上面または裏面には、前記基材に到達する深さの脱気孔が1以上設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記基材は、布状に編まれた1層以上の繊維層と、前記繊維層を構成する繊維間に含侵された樹脂と、前記繊維層の表面を覆う樹脂層とを有し、
前記脱気孔は、前記繊維層に到達していることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記基板の裏面には、実装電極が配置され、
前記脱気孔は、前記基材の上面に開口を有し、前記基材を貫通し、前記実装電極に到達し、前記実装電極を貫通していないことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記基材の上面には、前記金属パターンを取り囲むように、円環状配線パターンが配置され、
前記脱気孔は、前記基材の上面の前記基板の上面の前記円環状配線パターンよりも外側の領域、および/または、前記円環状配線パターンと前記金属パターンとの間の領域に設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記繊維強化樹脂製基材は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板であり、前記接着用樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項6】
基板上に、半導体発光素子を接合する工程と、
前記基板上の半導体発光素子の周囲を充填するように、封止部材を成形金型を用いて加熱して成形する工程とを有する半導体発光装置の製造方法であって、
前記基板は、板状の繊維強化樹脂製基材と、前記基材を厚さ方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔内に配置された金属コアと、前記金属コアと前記貫通孔の内壁との間を充填する接着用樹脂と、少なくとも前記金属コアの上面を覆う金属パターンとを含み、
前記基板の上面または裏面には、前記基材に到達する深さの脱気孔が1以上設けられ、
前記接合する工程は、前記金属パターンの前記金属コアの直上領域にダイアタッチ材を塗布した後、加熱して、合金の接合層を形成することにより、前記半導体発光素子と前記金属パターンとを接合する工程であり、
前記接合する工程の後、前記成形する工程の前に、前記基板を加熱し、前記基板中に含まれるガスを前記脱気孔から放出させる脱気工程を行うことを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体発光装置に製造方法であって、前記成形する工程は、前記封止部材をトランスファーモールドにより成形する工程であることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線が設けられた樹脂基板上に半導体発光素子をダイボンティングした半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂基板上に配線パターンを形成し、その上に半導体発光素子(LED素子)をダイボンディングし、LED素子の周囲をレンズ形状の樹脂で充填した半導体発光装置が例えば特許文献1等により知られている。
【0003】
また、半導体発光装置のLED素子の熱を、半導体発光装置が実装される実装基板に対して効率よく伝導して放熱するために、LED素子を搭載する基板として、銅インレイ基板が用いられている。銅インレイ基板は、LED素子がダイボンティングされる領域の基板に、厚さ方向に貫通孔が設けられ、銅コア(銅インレイ)を挿入して固定した構造(非特許文献1)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-261041号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】https://www.showanet.jp/product/5/#sec5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
繊維強化樹脂基板の場合、繊維強化樹脂基板に空けられた貫通孔に銅コア(銅インレイ)を挿入した後、銅コアの周囲にプリプレグ(未硬化の接着用樹脂材料)を注入し、その後プリプレグを硬化させ、銅コアと繊維強化樹脂金とを接着用樹脂材料によって接着した構造となる。
【0007】
このような構造の繊維強化樹脂基板を用いて半導体発光装置を製造する場合、銅コア上に、AuSnはんだ等のダイアタッチ材を塗布してLED素子を接着固定する工程(素子接着固定工程)において、ダイアタッチ材の熱によって繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じることがあることがある。
【0008】
また、LED素子を接着固定した基板上にインサート成形によって、樹脂によりレンズを成形する工程(レンズ成形工程)においても、レンズ樹脂をインサートする前段階の予備加熱の際に、その熱によって繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じることがある。
【0009】
繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じる原因の一つとしては、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との熱膨張係数の差が考えられる。また、別の原因として、繊維強化樹脂基板に含有されている水分が、熱により膨張して、強化繊維に沿って繊維強化樹脂基板に設けられた貫通孔の壁面に到達し、接着用樹脂材料と境界から外部に抜ける際に剥離を生じさせている可能性も考えられる。
【0010】
繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じた場合、レンズ成形工程において、レンズ樹脂をインサート成形する段階で、硬化していないレンズ樹脂が、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料間の剥離部に進入し、基板裏面へ漏れる。基板の裏面にレンズ樹脂が漏れた場合、所定の形状のレンズが成形されないだけでなく、基板裏面の実装電極パターンに樹脂が付着し、反動会い発光装置を実装基板へ実装する際の妨げになる、等の問題が発生する。
【0011】
本発明の目的は、金属コアを挿入した繊維強化樹脂基板を用いた半導体発光装置であって、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、基板と、基板上に搭載された半導体発光素子と、半導体発光素子の周囲を充填するように基板上に配置された樹脂製レンズとを有する。基板は、板状の繊維強化樹脂製基材と、基材を厚さ方向に貫通する貫通孔と、貫通孔内に配置された金属コアと、金属コアと貫通孔の内壁との間を充填する接着用樹脂と、少なくとも金属コアの上面を覆う金属パターンとを含む。半導体発光素子は、金属パターンの金属コアの直上領域にダイボンディングされる。基板の上面または裏面には、基材に到達する深さの脱気孔が1以上設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂製レンズを成形する前に、基板を加熱することにより、脱気孔から基板中の水分等のガスが抜けるため、繊維強化樹脂製基材と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)および(b)は、実施形態の半導体発光装置1の断面図および下面図、(c)は、樹脂製レンズ30を取り除いた状態の半導体発光装置1の上面図、(d)は回路図。
図2】(a)~(c)実施形態の半導体発光装置1の脱気孔の断面図。
図3】(a)、(b)は、実施形態の半導体発光装置1の半導体発光素子20の上面図および断面図。
図4】(a)~(g)は、実施形態の半導体発光装置1の製造工程を示す断面図。
図5】(h)~(k)は、実施形態の半導体発光装置1の製造工程を示す断面図。
図6】(l)~(m)は、実施形態の半導体発光装置1の製造工程を示す断面図。
図7】(n)~(o)は、実施形態の半導体発光装置1の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態の半導体発光装置について以下に説明する。
【0016】
実施形態の半導体発光装置1の構成について図1(a)~(d)、図2(a)~(c)、図3(a)、(b)を用いて説明する。図1(a)、(b)は、半導体発光装置1の断面図および下面図であり、図1(c)は、樹脂製レンズ30を取り除いた状態の半導体発光装置1の上面図である。図1(d)は、回路図である。なお、図1(c)においては、金属で形成されたパターンと発光素子20と、脱気孔15a,15bの上面を明確にするため、上面図であるがハッチングを付している。図2(a)~(c)は、脱気孔の断面図である。図3(a)、(b)は、半導体発光素子20の上面図および断面図である。図3(a)では、上面図であるが、n型電極206にハッチングを付している。
【0017】
図1(a)に示すように、半導体発光装置1は、基板10と、基板10上に搭載された半導体発光素子20と、樹脂製のレンズ30とを備えて構成される。樹脂製のレンズ30は、半導体発光素子20の周囲を覆い封止するように基板10上に配置されている。
【0018】
レンズ30は、ドーム状であり、半導体発光素子20が発する光に対して透明な樹脂(例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂)によって形成されている。
【0019】
基板10は、板状の繊維強化樹脂製の基材11と、金属コア12と、接着用樹脂13とを含む。基材11には、厚さ方向に貫通する貫通孔11aが設けられ、貫通孔11aの中央に、角を丸めた柱状の金属コア12が配置されている。ここでは、金属コア12の上面形状は四角形であり、貫通孔11aの開口の形状は、円形である。金属コア12の材質は、例えば銅である。
【0020】
接着用樹脂13は、金属コア12と貫通孔11aの内壁との間を充填している。接着用樹脂13は、例えばエポキシ樹脂を用いる。
【0021】
繊維強化樹脂製基材11は、図2(a)~(c)に示すように、布状に編まれた1層以上の繊維層11bを含み、繊維層11bを構成する繊維間には樹脂が含侵している。また、繊維層11bの表面(上面及び下面)は、樹脂層11c、11dにより覆われている。繊維強化樹脂製基材11は、繊維層11bがガラスであり、含浸樹脂と樹脂層11c、11dがエポキシ樹脂であるガラス繊維強化エポキシ樹脂基材(FR4:Flame Retardant Type 4)を用いることができる。
【0022】
なお、銅の熱膨張係数は、17.7×10-6/℃、ガラス繊維強化エポキシ樹脂(FR4)基材の主平面方向の熱膨張係数は、14.0×10-6/℃、エポキシ樹脂の熱膨張係数は、4.5~6.5×10-5/℃である。
【0023】
基板10の上面には、金属コア12の上面を覆う金属パターン50が配置されている。金属パターン50の上面形状は、角を丸めた四角形であり、金属コア12の上面よりも大きく、かつ、基材11の貫通孔11aよりは一部が小さい。具体的には、四角形の4つの辺の中央部で小さく、各辺が交差する角部(四隅)で大きい。
【0024】
半導体発光素子20は、金属パターン50より小さく、金属パターン50の金属コア12の直上領域に接合層21を介してダイボンディングされている。接合層21としては、例えば、導電性の金錫合金(Au-Sn)層である。
【0025】
また、金属パターン50の周囲には、円環状の配線パターン60が配置されている。円環状の配線パターン60の内周と金属パターン50の縁との間には基材11が露出され、両者は接触していない。
【0026】
円環状の配線パターン60の内周61には、180度の間隔を開けて突起状の2つのボンディングパッド63が設けられている。2つのボンディングパッド63は、2本のボンディングワイヤ40により半導体発光素子20の上面電極209にそれぞれ接続されている。半導体発光素子20の詳しい構造については後述する。
【0027】
円環状の配線パターン60の内周61には、保護素子22を搭載するための突起状の保護素子配置部65が設けられている。保護素子配置部65が設けられている位置は、2つのボンディングパッド63の間の位置である。保護素子配置部65には、導電性の接合層(不図示)により、保護素子22の下面電極が接合されている。
【0028】
また、保護素子配置部65の近くの金属パターン50の外周には、突起状の保護素子用ボンディングパッド51が設けられている。保護素子22の上面電極(不図示)と、保護素子用ボンディングパッド51は、ボンディングワイヤ41により接続されている。
【0029】
また、円環状の配線パターン60の内周61の1箇所には、基材11を貫通する導電ビア64が配置され、導電ビア64の上面は、円環状の配線パターン60に電気的に接続されている。
【0030】
導電ビア64の下面は、基板10の裏面に設けられた実装電極(カソード)93に電気的に接続されている。
【0031】
なお、基材11上にはカソードマーク300も設けられている。
【0032】
一方、基板10の裏面には、実装電極(カソード)93の他に、互いに連結された実装電極(アノード)91,92が設けられている。実装電極(アノード)92は、金属コア12の下面と接し、両者は電気的に導通している。
【0033】
これにより、実装電極(カソード)93と、実装電極(アノード)91との間に電流を供給することにより、半導体発光素子20と保護素子22に電流を供給することができ、半導体発光素子20を発光させることができる。
【0034】
金属パターン50、配線パターン60及び実装電極91、92、93は、主材層が銅(Cu)層であり、主材層の表面を覆う被覆層としてニッケル(Ni)、金(Au)がこの順にメッキされている。また、導電ビア64は主材層であるCuが連通している。なお、主材層または被覆層は良導性の金属であるアルミニウム(Al)、銀(Ag)、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)等であってもよい。
【0035】
半導体発光素子20と保護素子22は、図1(d)のように逆並列に接続されている。保護素子22は、ツェナーダイオードであり、半導体発光素子20に印加される電圧を一定に保って保護する。
【0036】
半導体発光素子20が発した光は、レンズ30により集光されて外部に出射される。
【0037】
本実施形態では、基板10の上面または裏面には、基材に到達する深さの脱気孔15a、15bが1以上設けられている。脱気孔15a、15bは、前記繊維層に到達していることが望ましい。
【0038】
脱気孔15a、15bは、基材11に含まれているガスを基材11の外へ放出する作用をする孔である。基材11内には、基材11の製造時に繊維層11bに樹脂を含侵させる際の残留ガスや、樹脂が吸収した大気成分や水分が含有されている。半導体発光装置1の製造工程において基材11が加熱されると、これらのガスは、繊維層11bの繊維に沿って、基材11内部を基材11の主平面に平行な方向に流れ、繊維層11bの断面から外部に放出される。
【0039】
実施形態においては、脱気孔15a,15bを繊維層11bに到達するように設けている。この構造により、基材11に含有されたガスは、繊維層11bの断面となる脱気孔15a,15bの内壁面から外部へ放出される。よって、基材11の繊維層11bの端面となる貫通孔11aの内壁と接着用樹脂13との境界面が、熱によって気化又は膨張したガスによって剥離(クラック)することを防止できる。
【0040】
なお、脱気孔15bは、円環状の配線パターン60よりも外側の領域に配置されているのに対し、脱気孔15aは、円環状の配線パターン60と金属パターン50との間の領域に開口を有するように設けられている。これにより、脱気孔15aは、レンズ30と接触し、レンズ30成形工程において、レンズ30を形成する樹脂を脱気孔15a内に充填することができる。このような構成にすることにより、脱気孔15aは、レンズ30を強固に基材11に固着させるアンカー孔としても機能する。
【0041】
なお、脱気孔15a,15bの形状は、図2(a)のように底部が平らであってもよいし、図2(b)のように、底部が円錐形状であってもよい。また、図2(c)のように、脱気孔15a,15bは、基材11を貫通していてもよい。
【0042】
図2(c)の場合、脱気孔15a,15bの下端に、実装電極91~93のいずれかが位置するようにしている。この構成により、脱気孔15a,15bをレーザー加工で形成する場合に、実装電極91~93が貫通防止層となる。
【0043】
本実施形態では、脱気孔15a,15bを基材11に設けたことにより、製造工程において、熱が接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11を加わった場合でも、基材11内のガスを、脱気孔15a,15bから外部に逃がすことができ、接着用樹脂13が貫通孔11aの開口の内壁から剥離するのを抑制することができる。
【0044】
よって、半導体発光装置1の製造工程において、硬化していない状態のレンズ30の樹脂が、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界面を通過することがなく、硬化していない樹脂が基板10の裏面に達して実装電極91~93に付着するのを防止することができる。
【0045】
次に、半導体発光素子20の構成について図3(a)、(b)を用いて説明する。
【0046】
半導体発光素子20は、下面に下面電極(アノード)208を、上面に一対の上面電極(カソード)209を備え、上方に光(ここでは赤外光)を出射する構造である。その断面構造はどのような構造であってもよいが、例えば、図2(a)、(b)のように支持基板(シリコン)201上に、p側電極(反射性)202、p型半導体層203、発光層(MQW:multi quantum well)204、n型半導体層205、および、n側電極206が順に積層された積層体構造のものを用いることができる。n側電極206の形状は、図3(a)で示したように格子状である。n側電極206の一部に上面電極(n側電極パッド)209が配置されている。また、上面電極209の上面を除き、上記積層体の上面及び側面は、保護膜207により覆われている。
【0047】
次に、本実施形態の半導体発光装置の製造工程について、図4図7を用いて以下説明する。
<ステップS1:コア形成工程>
まず、金属コア12を形成するため、図4(a)のように、金属コア12の厚さと同等の厚さの銅基材112を用意し、上面に支持フィルム(樹脂フィルム)113を貼る。
【0048】
銅基材112の下面に金属コア12となる部分を覆うマスクを設けて、銅基材112が露出した部分をエッチングで除去し、図3(b)のように支持フィルム113で支持された金属コア12を作製する。
【0049】
<ステップS2:穴あけ工程>
一方、基材110として成型済のガラス繊維強化エポキシ樹脂基材を用意する。基材110は、幅が図2の半導体発光装置の基材11と同等の幅であり、長手方向に複数の基材11が連続した形状である。基材110の下面に被覆フィルム(樹脂フィルム)114を貼る。
【0050】
基材110には、一単位の基材11の領域ごとに、金属コア12を挿入するための貫通孔11aと、導電ビア64を形成するための貫通孔(不図示)を型抜きにより形成する。
【0051】
<ステップS3:重ね合せ工程>
図4(e)のように、ステップS1で作製した金属コア12を、ステップS2で作製した一単位の基材11ごとの貫通孔11aの中心に、位置合わせして挿入する。
【0052】
<ステップS4:プリプレグ貼り合せ工程>
図4(f)のように、ステップS3で金属コア12が挿入された貫通孔11aの下面を覆うように、基材110の下面の被覆フィルム114の下に、硬化前のエポキシ樹脂製の層(プリプレグ層115)を貼り合わせる。
【0053】
<ステップS5:圧入・硬化工程>
図4(g)のように、プレス機で加圧して、プリプレグ層115を、基材110の貫通孔11aの内壁と金属コア12の外壁との間隙に圧入した後、加熱してプリプレグ層115を硬化させる。これにより、金属コア12と基材110の内壁とをエポキシ樹脂製の接着用樹脂13により接着する。
【0054】
<ステップS6:フィルム除去工程>
図5(h)のように、金属コア12の支持フィルム113を剥離するとともに、基材110の下面の被覆フィルム114をその下面の硬化したプリプレグ層115と共に剥離し、除去する。
【0055】
<ステップS7:メッキ工程>
図5(i)のように、無電解メッキおよび電界メッキを行い、基材110の上面と下面にそれぞれ銅層150、190を形成する。同時に、基材110の導電ビア用の貫通孔に銅層が充填され、導電ビア64が形成される。
【0056】
<ステップS8:配線電極形成工程>
図5(j)のように、基材110の上面と下面の銅層150、190の表面にそれぞれマスクを形成し、不要部をエッチングして除去する。
【0057】
これにより、基材110の上面に、一単位の基材11の領域ごとに金属パターン50と、円環状の配線パターン60が形成されるとともに、基材11の裏面には、実装電極91,92,93が形成される。
【0058】
その後、金属パターン50、配線パターン60、および、実装電極91,92,93の表面に、Ni及びAuをこの順にメッキを施す。
【0059】
<ステップS9:脱気孔形成工程>
図5(k)のように、レーザー加工またはマイクロドリル加工により基材11上面から孔をあけ、脱気孔15a,15bを形成する。脱気孔15a、15bを形成する位置は、図1(b)、(c)に示した位置である。
【0060】
脱気孔15a、15bの深さは、レーザー光の照射条件を調節することにより、マイクロドリル加工ではマイクロドリルの下降深さにより設定する。図5(k)、図2(c)のように基材11を貫通し、実装電極91,92,93を貫通しない深さであってもよいし、図2(a),(b)のように基材11の繊維層11bに到達する深さであってもよい。
【0061】
<ステップS10:素子実装工程>
(ダイボンディング)
金属パターン50上に、ダイアタッチ材としてAu-Snゾルダーペーストはんだを塗布する。
【0062】
ゾルダーペーストはんだ上に半導体発光素子20をマウントする。
【0063】
リフロー炉で所定の温度及び時間(例えば320℃で30秒)で加熱してAu-Snを溶融及び固化させて接合層21を形成し、接合層21により半導体発光素子20を金属パターン50に接合する(図6(l)参照)。
(ワイヤボンディング)
また、半導体発光素子20の2つの上面電極209と、対応する配線パターン60の2つのボンディングパッド63とを、ボンディングワイヤ(例えば、金ワイヤ)40で接続する(図6(l)参照)。
【0064】
<ステップS11:金型セット工程>
図6(m)のように、半導体発光素子20を実装した基板10を樹脂成型機(インサート成形機)の金型160にセットする。金型160内の空間は、基材110の長手方向については連通している。
【0065】
金型160を145℃に加熱することにより基板10を加熱し、基板10内に含まれているガス成分を脱ガスする。具体的には、基材11内に含まれる残留ガスや、樹脂が吸収した大気成分や水分を、加熱によりガス化させ、繊維層11bの繊維に沿って基材11内部を基材11の主平面に平行な方向に移動させ、脱気孔15b、15bの内壁の繊維層11bの断面から外部に放出させる。
これにより、基材11の貫通孔11aの内壁と接着用樹脂13との境界面からガスが放出されるのを抑制し、基材11と接着用樹脂13と境界面に剥離(クラック)が発生することを防止する。
【0066】
<ステップS12:レンズ形成工程>
図7(n)のように、金型160の空間部にレンズ30用の樹脂130を注入し、例えば120秒(キュアタイム)保持する。
【0067】
このとき、金型160および樹脂130の熱が、基材11に伝導するが、基材11内のガスや水分はすでに脱気孔15a,15bから放出済みであるので、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11との境界面で剥離は生じない。
【0068】
よって、硬化前の樹脂130は液体状であるが、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界面では、入り込まず、基材11の裏面にも到達しない。
【0069】
樹脂材料の注入後、例えば150℃2時間(アフターキュア)加熱してレンズ用樹脂130を硬化させる。これにより、半導体発光素子20の周囲の空間を充填し、かつ、表面が所望のレンズ形状のレンズ30をトランスファーモールドにより形成することができる。
【0070】
なお、トランスファーモールドに限らず、圧縮成形や、射出成形によりレンズ30を成形することも可能である。
【0071】
<ステップS13:個片化工程>
(四隅の穴形成)
基材11上の半導体発光装置1の1単位となる四隅にドリル等で貫通穴を空ける。
【0072】
四隅に貫通孔を開けることにより、後段のダイシングにおいて半導体発光装置1の四隅に切りばりが発生せず、綺麗に切断できる。
【0073】
(ダイシング)
図7(o)のように、基材11を、半導体発光装置1の各単位の境界線においてダイシングブレード140で切断し、個片化する。これにより、半導体発光装置1を製造することができる。
【0074】
このように、実施形態の半導体発光装置1は、脱気孔15a,15bを設けたことにより、繊維強化樹脂製基材と接着用樹脂材料との境界面で剥離が生じるのを防止することができる。よって、レンズ30の形成工程において、繊維強化樹脂製基材11と接着用樹脂13との境界面に未硬化の樹脂が入り込むことがなく、未硬化の樹脂が基材11の裏面に達することもない。
【0075】
したがって、設計通りの形状のレンズ30を成形することができる。また、基板10の裏面の実装電極91,92,93に樹脂が付着することがなく、半導体発光装置1を実装基板上に実装する際の歩留まりを向上させることができる。
【0076】
上述してきた実施形態では、半導体発光素子20の周囲を被覆及び封止する樹脂の表面をレンズ30の形状にしているが、必ずしもレンズ30の形状でなくてもよく、半導体発光素子20の周囲を封止する構造であればよい。
【0077】
<<比較例>>
比較例として、脱気孔15a,15bを設けない形状として、他の条件は実施例と同様にして、複数の比較例の半導体発光装置のサンプルを製造したところ、一部の比較例のサンプルにおいて基板10の下面に樹脂が漏れていることが確認された。
【0078】
また、比較例の接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11との境界面を確認したところ、ステップS10の素子実装工程の後に、境界面の剥離が一部で確認された。
【0079】
実施例と比較例の検証結果を表1にまとめて示す。
【0080】
【表1】
【0081】
上述してきた実施形態の半導体発光装置は、一般用の光源、分析機等の観測用光源等に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 半導体発光装置
10 基板
11 基材
11a 貫通孔
11b 繊維層
11c 樹脂層
12 金属コア
13 接着用樹脂
15a 脱気孔
15b 脱気孔
20 半導体発光素子
21 接合層
22 保護素子
22 保護素子配置部
30 レンズ
40 ボンディングワイヤ
41 ボンディングワイヤ
50 金属パターン
51 保護素子用ボンディングパッド
60 配線パターン
61 内周
63 ボンディングパッド
64 導電ビア
65 保護素子配置部
91 実装電極
110 基材
112 銅基材
113 支持フィルム
114 被覆フィルム
115 プリプレグ層
130 樹脂
140 ダイシングブレード
150 銅層
160 金型
203 p型半導体層
205 n型半導体層
206 n側電極
207 保護膜
209 上面電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7